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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02M
管理番号 1356309
審判番号 不服2018-10324  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-27 
確定日 2019-10-16 
事件の表示 特願2017-83626「高圧流体レール」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月5日出願公開、特開2017-180465〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年4月10日(パリ条約による優先権主張2011年4月15日、欧州特許庁)に出願した特願2012-89732号(以下「もとの出願」という。)の一部を平成29年4月20日に新たな特許出願としたものであって、同年5月16日に手続補正書及び上申書が提出され、平成30年1月23日付けで特許法第50条の2の通知を伴う拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同年2月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年3月20日付けで決定をもって同年2月27日付けの手続補正が却下され、同日付けで拒絶査定(発送日:同年3月29日)がされ、これに対して、同年7月27日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、同年8月29日に手続補正書(方式)が提出され、同年12月7日に上申書が提出されたものである。

第2 平成30年7月27日の手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成30年7月27日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本願補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前(平成29年5月16日の手続補正書)の請求項1に、

「【請求項1】
高圧流体を複数の流体インジェクタに供給するための蓄圧器ユニットを有し、前記蓄圧器ユニットは外周面を有するとともに前記蓄圧器ユニットの長手方向軸に略沿って延びるとともに内周面を有する中央ボアを備え、少なくとも1つの半径方向ボアが前記中央ボアから前記蓄圧器ユニットの前記外周面に延びる、大型内燃エンジン用コモンレールシステムのための高圧流体供給装置であって、
前記半径方向ボアは、前記蓄圧器ユニットの前記長手方向軸に垂直な平面で計測された幅を有し、
前記幅は、前記外周面より前記内周面において大きく、前記内周面から前記外周面に、好ましくは前記内周面と前記外周面との間の距離の少なくとも半分に対して、連続的に減少し、
前記半径方向ボアは第1の外側壁および第2の外側壁を有し、
前記幅は、前記半径方向ボアの中心軸を含むとともに前記蓄圧器ユニットの前記長手方向軸と垂直に配置された平面における、前記半径方向ボアの前記第1の外側壁と前記第2の外側壁との間の距離として計測される、
高圧流体供給装置。」
とあったものを、

「【請求項1】
高圧流体を複数の流体インジェクタに供給するための蓄圧器ユニットを有し、前記蓄圧器ユニットは外周面を有するとともに前記蓄圧器ユニットの長手方向軸に略沿って延びるとともに内周面を有する中央ボアを備え、少なくとも1つの半径方向ボアが前記中央ボアから前記蓄圧器ユニットの前記外周面に延びる、大型内燃エンジン用コモンレールシステムのための高圧流体供給装置であって、
前記半径方向ボアは、前記蓄圧器ユニットの前記長手方向軸に垂直な平面で計測された幅を有し、
前記幅は、前記外周面より前記内周面において大きく、前記内周面から前記外周面に、好ましくは前記内周面と前記外周面との間の距離の少なくとも半分に対して、連続的に減少し、
前記半径方向ボアは第1の外側壁および第2の外側壁を有し、
前記幅は、前記半径方向ボアの中心軸を含むとともに前記蓄圧器ユニットの前記長手方向軸と垂直に配置された平面における、前記半径方向ボアの前記第1の外側壁と前記第2の外側壁との間の距離として計測され、
前記半径方向ボアは、前記内周面において、前記長手方向軸と平行な方向に画定された厚さを有し、前記内周面における前記厚さは、前記内周面における前記幅よりも小さい、
高圧流体供給装置。」
と補正するものである(下線は補正箇所を示すために審判請求人が付した。)。

本件補正は、発明を特定するために必要な事項である「半径方向ボア」について「前記半径方向ボアは、前記内周面において、前記長手方向軸と平行な方向に画定された厚さを有し、前記内周面における前記厚さは、前記内周面における前記幅よりも小さい」と限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2 引用文献
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用され、もとの出願の優先日前に頒布された特開平10-213045号公報(以下「引用文献1」という。)には、「コモンレールにおける分岐接続体の接続構造」に関して、図面(特に、図1ないし図3参照)とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審による。以下同様。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般にディーゼル内燃機関における高圧燃料用の多岐管からなる本管レール或いはブロック・レールなどのようなコモンレールにおける分岐枝管もしくは分岐金具などのような分岐接続体の接続構造に関するものである。」

イ 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来の分岐接続体の接続構造はいずれも、本管レール1のようなコモンレールの断面円形の流通路1-1の中心と分岐枝管2のような分岐接続体の流路2-1の中心とが一致した構造となっており、その流通路1-1に通ずる分岐孔1-2はコモンレールとしての本管レール1の流通路1-1の中心線上に開口し、その開口端部にはエッジがあるため、コモンレールの内部に内圧が作用したときコモンレールの断面円形の流通路1-1の開口端部Pに最も大きな応力が発生し、この開口端部Pが起点となって亀裂が生じ易く、燃料の洩れを招く可能性があった。
【0005】本発明は従来技術の有する前記問題に鑑みてなされたものであり、分岐接続体の流路のコモンレール開口端部に発生する最大応力値を下げて内圧疲労強度をより向上させることが可能な高圧燃料用のコモンレールにおける分岐接続体の接続構造を提供することを目的とするものである。」

ウ 「【0012】図1に示す分岐接続体の接続構造は、図8に示すものと同様、予め分岐接続体としての分岐枝管2側に組込んだナット4と螺合する螺子面3-1bを内周面に設けた筒状のスリーブニップル3bを継手部分となしてその基端部を前記受圧座面1-3付近の本管レール1の外周壁に該受圧座面部を囲むように分岐孔1-2と同心円上に溶接し、分岐枝管2側の接続頭部2-2のなす押圧座面2-3を本管レール1側の受圧座面1-3に当接係合せしめ、前記スリーブニップル3bに螺合するナット4を締着して接続構成するものである。ここで、コモンレールとしての本管レール1は、例えば管径20m/m、肉厚8m/m程度の比較的厚肉で細径の金属管であって、その軸芯内部を断面円形の流通路1-1となして軸方向の周壁部に間隔を保持して複数からなる外方に開口する周面を受圧座面1-3となす分岐孔1-2を流通路1-1に連通して設けてなるものである。一方、分岐接続体は、前記したような分岐枝管2或いは分岐金具からなるものであって、その内部に前記流通路1-1に通ずる流路2-1を有してその端部に先細円錐状の挫屈成形による拡径した接続頭部2-2のなす押圧座面2-3を設けてなるものである。
【0013】本発明では、本管レール1の周壁部に外方に開口する周面を受圧座面1-3となし当該本管レール1の断面円形の流通路1-1に連通する分岐孔1-2の流通路1-1開口端部を円弧状に面取りしてエッジ部を有しない曲面に形成したR面取部1-2aとするものである。また、このR面取部1-2aの内周面における輪郭は真円に限らず、図2に示すごとく断面ほぼ円形の流通路1-1の直径方向に長径の楕円形状としてもよい。また、R面取部の断面形状としては、図3(A)に示すごとく、分岐孔の垂直部の内周面1-2bと半径r_(1)の滑らかな曲面1-2cで連なったテーパー面1-2dと、該テーパー面と本管レール流通路内周面1-1aが半径r_(2)の滑らかな曲面1-2eで連なった形状、または同(B)に示すごとく、分岐孔の垂直部の内周面1-2bと連なった半径r_(3)の滑らかな曲面1-2fと本管レール流通路内周面1-1aが半径R_(1)の滑らかな曲面1-2で連なった回転放物線面、同(C)に示すごとく、分岐孔の垂直部の内周面1-2bと連なった半径R_(2)の滑らかな曲面1-2hと本管レール流通路内周面1-1aが半径r_(4)の滑らかな曲面1-2iで連なった回転双曲線面とすることができる。なお、前記各R面取部の半径R、R_(1)、R_(2)、r_(1)、r_(2)、r_(3)、r4は特に限定されるものではなく、コモンレールとしての本管レールやブロック・レールの肉厚に応じて適宜設定する。
【0014】このように本管レール1の断面ほぼ円形の流通路1-1に連通する分岐孔1-2の流通路1-1開口端部をエッジのないR面取部とした場合には、本管レール1に内圧が作用したときに分岐孔1-2の流通路1-1開口端部に発生する最大応力は大幅に軽減される。したがって、開口端部Pが起点となって亀裂が生じるという問題はほとんど解消される。」

エ 「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るコモンレールにおける分岐接続体の接続構造例のコモンレールとしての本管レール側を一部切欠いて示す拡大断面図である。
【図2】図1に示す接続構造例における分岐孔のコモンレール側開口端部のR面取部の内周面における輪郭の一例を示す図1矢視図である。」

オ ディーゼル内燃機関におけるコモンレールの分岐枝管が高圧燃料を流体インジェクタに供給することは技術常識であるから、引用文献1の本管レール1が高圧燃料を流体インジェクタに供給することは自明である。

カ 図1及び図2からみて、分岐孔1-2及び受圧座面1-3は、本管レール1の長手方向軸に垂直な平面で計測された幅を有し、当該幅は分岐孔1-2及び受圧座面1-3の中心軸を含むとともに本管レール1の長手方向軸と垂直に配置された平面における分岐孔1-2及び受圧座面1-3の一方の壁面(図1の紙面手前側の壁面)と他方の壁面(図1の紙面奥側の壁面)との間の距離として計測されるものであることが分かる。

キ 図1及び図2並びに上記ウの「本発明では、本管レール1の周壁部に外方に開口する周面を受圧座面1-3となし当該本管レール1の断面円形の流通路1-1に連通する分岐孔1-2の流通路1-1開口端部を円弧状に面取りしてエッジ部を有しない曲面に形成したR面取部1-2aとするものである。」(段落【0013】)との記載からみて、前記幅は、本管レール流通路内周面1-1aから外周壁面側に向う分岐孔1-2のR面取部1-2aにおいて連続的に減少することが分かる。

ク 上記ウの「また、このR面取部1-2aの内周面における輪郭は真円に限らず、図2に示すごとく断面ほぼ円形の流通路1-1の直径方向に長径の楕円形状としてもよい。」(段落【0013】)との記載及び上記エの「【図2】図1に示す接続構造例における分岐孔のコモンレール側開口端部のR面取部の内周面における輪郭の一例を示す図1矢視図である。」(【図面の簡単な説明】)との記載によれば、図2が図1矢視図であって、図2の楕円形状は、ほぼ円形の断面を備えた流通路1-1の直径方向に長径であるから、図1及び図2を合わせみると、分岐孔1-2及び受圧座面1-3は、本管レール流通路内周面1-1aにおいて、本管レール1の長手方向軸と平行な方向に画定された厚さ(図2の楕円形状の左端と右端との間の距離)を有し、本管レール流通路内周面1-1aにおける前記厚さは、本管レール流通路内周面1-1aにおける幅(図2の楕円形状の上端と下端との間の距離)よりも小さいことが分かる。

上記記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「高圧燃料を複数の流体インジェクタに供給するための本管レール1を有し、前記本管レール1は外周壁面を有するとともに前記本管レール1の長手方向軸に略沿って延びるとともに本管レール流通路内周面1-1aを有する流通路1-1を備え、少なくとも1つの分岐孔1-2及び受圧座面1-3が前記流通路1-1から前記本管レール1の前記外周壁面に延びる、ディーゼル内燃機関に用いられるコモンレールにおける分岐接続体の接続構造であって、
前記分岐孔1-2及び受圧座面1-3は、前記本管レール1の前記長手方向軸に垂直な平面で計測された幅を有し、
前記幅は、前記本管レール流通路内周面1-1aから前記外周壁面側に向う前記分岐孔1-2のR面取部1-2aにおいて、連続的に減少し、
前記分岐孔1-2及び受圧座面1-3は一方の壁面および他方の壁面を有し、
前記幅は、前記分岐孔1-2及び受圧座面1-3の中心軸を含むとともに前記本管レール1の前記長手方向軸と垂直に配置された平面における、前記分岐孔1-2及び受圧座面1-3の前記一方の壁面と前記他方の壁面との間の距離として計測され、
前記分岐孔1-2及び受圧座面1-3は、前記本管レール流通路内周面1-1aにおいて、前記長手方向軸と平行な方向に画定された厚さを有し、前記本管レール流通路内周面1-1aにおける前記厚さは、前記本管レール流通路内周面1-1aにおける前記幅よりも小さい、
分岐接続体の接続構造。」

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用され、もとの出願の優先日前に頒布された特開2011-33190号公報(以下「引用文献2」という。)には、「高圧接続部及び接続構成」に関して、図面(特に、図1及び図2参照)とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0003】
現代の大型ディーゼルエンジンには、具体的には、極めて高い圧力下で運搬される2つの媒体があり、これらの媒体は、一方では、1000バールよりも高い圧力で噴射ノズルに運搬される燃料であり、他方では、典型的にはサーボオイルと呼ばれる油圧媒体である。油圧媒体は、例えば、排気弁の油圧作動のために働く。これらの媒体は、ポンプによって圧力貯槽内に運搬され、圧力貯槽は圧力パイプとして作製され、全シリンダ領域に沿って延在する。これらの圧力貯槽(蓄圧室とも呼ばれる)から、媒体は噴射部材に、或いは、油圧式構成部品のための制御装置及び/又は運転装置に移動する。」

イ 「【0039】
第二実施態様では、実施すべき重要な用途である大型ディーゼルエンジンが参照される。現代の大型ディーゼルエンジンでは、燃料噴射、ガス交換、及び、選択的に、水噴射及び補助システムが、コモンレールシステムによって運転される。この点に関して、それぞれの流体、例えば、噴射用の燃料、排気弁の運転のためのサーボオイルのような油圧媒体、又は、噴射の制御のための作動媒体は、高圧下でポンプを用いて、蓄圧室としても既知の圧力貯槽内に運搬される。その場合には、内燃機関の全シリンダは、それぞれの蓄圧室及び/又は弁からの加圧流体を備え、燃料噴射装置は、加圧液体によって制御される。典型的に、圧力貯槽は、パイプ状構成部品としてそれぞれ作製され、パイプ状構成部品は、両端で閉塞され、ほぼシリンダヘッドのレベルでエンジンに沿って延在する。」

3 対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「高圧燃料」は前者の「高圧流体」に相当し、以下同様に、「本管レール1」は「蓄圧器ユニット」に、本管レール1の「外周壁面」は蓄圧器ユニットの「外周面」に、「本管レール流通路内周面1-1a」は「内周面」に、「流通路1-1」は「中央ボア」に、「分岐孔1-2及び受圧座面1-3」は「半径方向ボア」に、「ディーゼル内燃機関に用いられるコモンレールにおける分岐接続体の接続構造」は「内燃エンジン用コモンレールシステムのための高圧流体供給装置」に、「一方の壁面」及び「他方の壁面」は便宜上「第1の外側壁」及び「第2の外側壁」にそれぞれ相当する。

また、後者の「前記幅は、前記本管レール流通路内周面1-1aから前記外周壁面側に向う前記分岐孔1-2のR面取部1-2aにおいて、連続的に減少」することと前者の「前記幅は、前記外周面より前記内周面において大きく、前記内周面から前記外周面に、好ましくは前記内周面と前記外周面との間の距離の少なくとも半分に対して、連続的に減少」することとは、「前記幅は、前記内周面から前記外周面側に向う部分において、連続的に減少」するという限りで一致する。

したがって、両者は、
「高圧流体を複数の流体インジェクタに供給するための蓄圧器ユニットを有し、前記蓄圧器ユニットは外周面を有するとともに前記蓄圧器ユニットの長手方向軸に略沿って延びるとともに内周面を有する中央ボアを備え、少なくとも1つの半径方向ボアが前記中央ボアから前記蓄圧器ユニットの前記外周面に延びる、内燃エンジン用コモンレールシステムのための高圧流体供給装置であって、
前記半径方向ボアは、前記蓄圧器ユニットの前記長手方向軸に垂直な平面で計測された幅を有し、
前記幅は、前記内周面から前記外周面側に向う部分において、連続的に減少し、
前記半径方向ボアは第1の外側壁および第2の外側壁を有し、
前記幅は、前記半径方向ボアの中心軸を含むとともに前記蓄圧器ユニットの前記長手方向軸と垂直に配置された平面における、前記半径方向ボアの前記第1の外側壁と前記第2の外側壁との間の距離として計測され、
前記半径方向ボアは、前記内周面において、前記長手方向軸と平行な方向に画定された厚さを有し、前記内周面における前記厚さは、前記内周面における前記幅よりも小さい、
高圧流体供給装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

〔相違点1〕
本願補正発明は、「大型」内燃エンジン用であるのに対し、
引用発明は、ディーゼル内燃機関が「大型」か否か不明である点。

〔相違点2〕
「前記幅は、前記内周面から前記外周面側に向う部分において、連続的に減少」することについて、本願補正発明は、「前記幅は、前記外周面より前記内周面において大きく、前記内周面から前記外周面に、好ましくは前記内周面と前記外周面との間の距離の少なくとも半分に対して、連続的に減少」するのに対し、
引用発明は、「前記幅は、前記本管レール流通路内周面1-1aから前記外周壁面側に向う前記分岐孔1-2のR面取部1-2aにおいて、連続的に減少」する点。

そこで、各相違点を検討する。
(1)相違点1について
引用文献2に「現代の大型ディーゼルエンジンでは、燃料噴射、ガス交換、及び、選択的に、水噴射及び補助システムが、コモンレールシステムによって運転される。」(段落【0039】)と記載されるように、大型ディーゼルエンジンにおいてコモンレールシステムを用いて燃料噴射を行うことは、もとの出願の優先日前の周知技術であるから、引用発明に上記周知技術を適用して、大型のディーゼル内燃機関とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
本願明細書には、「高圧燃料貯蔵部の燃料圧力は高く、2000barでさえあり、それによって燃料アキュムレータは、構造材料に、特に燃料貯蔵壁部およびその鋭い縁の断面変化部の開口の領域に進展し得る亀裂をもたらす強い応力にさらされる。」(段落【0003】)との記載及び「高い燃料圧力が燃料スペース内に行き渡るため、材料の疲労に起因する亀裂および破壊が、本体10の材料に、特に放出路のための半径方向ボア13の領域に進展し得る。このような蓄圧器ユニットに対する損傷を防ぐために、半径方向ボア13は、蓄圧器ユニット7の長手方向軸14に垂直な平面で計測された幅を有する。この幅は、外周面16での幅より内周面15での幅が大きいとともに、図3乃至7に示されるように、内周面15から外周面16に連続的に減少する。」(段落【0033】)との記載がある。これらの記載によれば、本願発明は、燃料貯蔵壁部の開口の領域における鋭い縁の断面変化部に進展し得る亀裂を防ぐことを課題とするものである。
他方、引用文献1には、「流通路1-1に通ずる分岐孔1-2はコモンレールとしての本管レール1の流通路1-1の中心線上に開口し、その開口端部にはエッジがあるため、コモンレールの内部に内圧が作用したときコモンレールの断面円形の流通路1-1の開口端部Pに最も大きな応力が発生し、この開口端部Pが起点となって亀裂が生じ易く、燃料の洩れを招く可能性があった。」との記載(段落【0004】)及び「本管レール1の断面ほぼ円形の流通路1-1に連通する分岐孔1-2の流通路1-1開口端部をエッジのないR面取部とした場合には、本管レール1に内圧が作用したときに分岐孔1-2の流通路1-1開口端部に発生する最大応力は大幅に軽減される。したがって、開口端部Pが起点となって亀裂が生じるという問題はほとんど解消される。」(段落【0014】)との記載がある。これらの記載によれば、引用発明は、流通路1-1に通ずる分岐孔1-2の開口端部のエッジによって発生する亀裂を防ぐことを課題とするものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、解決しようとする課題において差異はない。

また、引用文献1に「前記各R面取部の半径R、R_(1)、R_(2)、r_(1)、r_(2)、r_(3)、r_(4)は特に限定されるものではなく、コモンレールとしての本管レールやブロック・レールの肉厚に応じて適宜設定する。」(段落【0013】)と記載されるように、引用発明におけるR面取部1-2aの半径Rは、本管レール1の肉厚や、分岐孔1-2の開口端部に発生する最大応力値によって適宜設定される設計的事項である。また、受圧座面1-3の大きさや深さは、本管レール1の肉厚や、高圧燃料の圧力によって適宜設定される設計的事項である。

そうしてみると、引用発明において、上記課題を解決するために、幅を「前記外周面より前記内周面において大きく」し、「好ましくは、前記内周面と前記外周面との間の距離の少なくとも半分に対して、連続的に減少」するように設定することは、当業者にとって格別困難ではなく、容易に想到し得たことである。

(3)効果について
本願補正発明は、全体としてみて、引用発明及び上記周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成29年5月16日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2〔理由〕1」に補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由の概要
本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1
・引用文献1及び2

引用文献2(段落【0001】等参照)には、高圧流体供給装置を大型内燃エンジンに適用した例が開示されており、このようなものは従来から周知であるといえるので、引用文献1に記載された発明を周知の大型内燃エンジンに用いる程度のことは、当業者が容易に想到し得たことである。

引用文献等一覧

1 特開平10-213045号公報
2 特開2011-33190号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用した引用文献1及び2、その記載事項、及び引用発明は、前記「第2〔理由〕2」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記「第2〔理由〕」で検討した本願補正発明における「半径方向ボア」についての「前記半径方向ボアは、前記内周面において、前記長手方向軸と平行な方向に画定された厚さを有し、前記内周面における前記厚さは、前記内周面における前記幅よりも小さい」との限定を省いたものである。
そうしてみると、本願発明の発明特定事項をすべて含んだものに実質的に相当する本願補正発明が、前記「第2〔理由〕3」に記載したとおり、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-05-22 
結審通知日 2019-05-23 
審決日 2019-06-05 
出願番号 特願2017-83626(P2017-83626)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F02M)
P 1 8・ 121- Z (F02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松永 謙一坂口 達紀櫻田 正紀  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 冨岡 和人
水野 治彦
発明の名称 高圧流体レール  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  
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