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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1356313
審判番号 不服2018-10831  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-08 
確定日 2019-11-06 
事件の表示 特願2017-158209「ゲーム装置、ゲーム装置のプログラム、及び、ゲームシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月 7日出願公開、特開2019- 33996、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年8月18日に出願した出願であって、平成30年1月16日付けで拒絶理由が通知され、同年3月29日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月8日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、それに対して、同年8月8日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、その後、当審において平成31年3月5日付けで拒絶理由が通知され、令和1年5月8日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月8日付けで拒絶理由が通知され、同月19日に意見書及び手続補正書(以下、当該手続補正書によってされた補正を「本件補正」という。)が提出されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の概要
平成30年3月29日付け手続補正書における請求項1ないし12に係る発明は、以下の引用文献Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2002-351806号公報

第3 当審拒絶理由の概要
1 平成31年3月5日付け拒絶理由
(1)平成30年8月8日付け手続補正書における請求項6ないし10に係る発明は、明細書の発明の詳細な説明に記載されたものでないため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(2)当該手続補正書における請求項1ないし12に係る発明は、明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(3)当該手続補正書における請求項1ないし12に係る発明は、以下の引用文献1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2014-79400号公報(当審において新たに引用した文献)
2.特開2002-351806号公報(拒絶査定時の引用文献A)
3.”PSO2 新ロビアク、228「エア居合」で斬られてみたw”,[online],2016年4月25日,[平成31年2月28日検索],インターネット<URL:http://maucha.blog100.fc2.com/blog-entry-1648.html>(当審において新たに引用した文献)
4.電撃PlayStation,株式会社KADOKAWA,2016年4月14日,第22巻,第12号,p.186?191(特に、p.191の下段「「新体験への出航」こぼれ情報 新ロビーアクション編」の記載)(当審において新たに引用した文献)

2 令和1年7月8日付け拒絶理由
(1)令和1年5月8日付け手続補正書における請求項1ないし11に係る発明は、明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(2)当該手続補正書における請求項6ないし10に係る発明は、明細書の発明の詳細な説明に記載されたものでないため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

なお、1(1)及び(2)並びに2(1)及び(2)の拒絶理由については後の第8で詳述する。

第4 本願発明
本願請求項1ないし11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明11」という。)は、本件補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
プロセッサを具備し、外部ゲーム装置と通信可能なゲーム装置のプログラムであって、
前記プロセッサを、
前記ゲーム装置を操作する第1ユーザの操作を受け付ける受付部と、
前記第1ユーザの操作に基づいてゲームの第1キャラクタに動作を実行させる動作実行部と、
して機能させ、
前記動作実行部は、前記外部ゲーム装置を操作する第2ユーザの操作に基づいて前記ゲームの第2キャラクタが伝達動作の準備動作を実行した場合に、前記伝達動作に対応する応答動作を特定し、前記第1ユーザの操作に基づいて前記第1キャラクタに前記応答動作を実行させ、
前記第1キャラクタによる前記応答動作の開始に応じたタイミングで、前記第2キャラクタによる前記伝達動作が開始され、
前記伝達動作は、前記第2ユーザが前記第1ユーザに対して意思表示をするための、前記第2キャラクタの動作である、
ことを特徴とする、ゲーム装置のプログラム。
【請求項2】
プロセッサを具備するゲーム装置のプログラムであって、
前記プロセッサを、
前記ゲーム装置を操作する第1ユーザの操作および前記ゲーム装置を操作する第2ユーザの操作を受け付ける受付部と、
前記第1ユーザの操作に基づいてゲームの第1キャラクタに動作を実行させ、前記第2ユーザの操作に基づいて前記ゲームの第2キャラクタに動作を実行させる動作実行部と、
して機能させ、
前記動作実行部は、前記ゲーム装置を操作する前記第2ユーザの操作に基づいて前記ゲームの前記第2キャラクタが伝達動作の準備動作を実行した場合に、前記伝達動作に対応する応答動作を特定し、前記第1ユーザの操作に基づいて前記第1キャラクタに前記応答動作を実行させ、前記第1キャラクタによる前記応答動作の開始に応じたタイミングで、前記第2キャラクタに前記伝達動作を開始させ、
前記伝達動作は、前記第2ユーザが前記第1ユーザに対して意思表示をするための、前記第2キャラクタの動作である、
ことを特徴とする、ゲーム装置のプログラム。
【請求項3】
前記動作実行部は、
前記ゲームに係る仮想空間において、
前記第1キャラクタと前記第2キャラクタとが所定の配置関係を有する場合に、
前記第1キャラクタに前記応答動作を実行させることが可能である、
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のゲーム装置のプログラム。
【請求項4】
前記プロセッサを、
前記仮想空間における前記第1キャラクタの位置と、前記仮想空間において前記第2キャラクタに対応して設けられた基準エリアの位置及び形状の少なくとも一方とに基づいて、前記第1キャラクタと前記第2キャラクタとが前記所定の配置関係を有するか否かを判定する判定部として更に機能させる、
ことを特徴とする、請求項3に記載のゲーム装置のプログラム。
【請求項5】
前記動作実行部は、
前記ゲームに係る仮想空間において、
前記第1キャラクタと前記第2キャラクタとの距離が基準距離以下である場合に、
前記第1キャラクタに前記応答動作を実行させることが可能である、
ことを特徴とする、請求項3に記載のゲーム装置のプログラム。
【請求項6】
前記動作実行部は、
前記ゲームにおいて、
前記第1キャラクタと前記第2キャラクタとが所定の協同関係を有する場合に、
前記第1キャラクタに前記応答動作を実行させることが可能である、
ことを特徴とする、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載のゲーム装置のプログラム。
【請求項7】
前記動作実行部は、前記第1ユーザの操作に基づいて前記第1キャラクタに伝達動作を実行させることが可能であり、
前記伝達動作は、前記第1ユーザが前記第2ユーザに対して意思表示をするための、前記第1キャラクタの動作であって、前記第1ユーザの操作に基づいて、複数の伝達候補動作の中から指定された動作であり、
前記複数の伝達候補動作は、複数の実行可能動作の中から、前記第1ユーザにより予め選択された動作を含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載のゲーム装置のプログラム。
【請求項8】
前記ゲーム装置は、
前記複数の実行可能動作を表す動作情報と、
前記複数の実行可能動作の各々について、前記第1ユーザが前記伝達動作として指定可能か否かを示す指定可否情報と、
を記憶する記憶部を備える、
ことを特徴とする、請求項7に記載のゲーム装置のプログラム。
【請求項9】
前記複数の実行可能動作は、
前記応答動作が前記複数の伝達候補動作に含まれない場合であっても、
前記第1キャラクタに前記応答動作を実行させることが可能な動作を含む、
ことを特徴とする、請求項7または8に記載のゲーム装置のプログラム。
【請求項10】
ゲーム装置であって、
前記ゲーム装置を操作する第1ユーザの操作および前記ゲーム装置を操作する第2ユーザの操作を受け付ける受付部と、
前記第1ユーザの操作に基づいてゲームの第1キャラクタに動作を実行させ、前記第2ユーザの操作に基づいて前記ゲームの第2キャラクタに動作を実行させる動作実行部と、
を備え、
前記動作実行部は、前記第2ユーザの操作に基づいて前記ゲームの前記第2キャラクタが伝達動作の準備動作を実行した場合に、前記伝達動作に対応する応答動作を特定し、前記第1ユーザの操作に基づいて前記第1キャラクタに前記応答動作を実行させ、前記第1キャラクタによる前記応答動作の開始に応じたタイミングで、前記第2キャラクタによる前記伝達動作を開始させ、
前記伝達動作は、前記第2ユーザが前記第1ユーザに対して意思表示をするための、前記第2キャラクタの動作である、
ことを特徴とするゲーム装置。
【請求項11】
第1ゲーム装置と、前記第1ゲーム装置と通信可能な第2ゲーム装置と、を備えるゲームシステムであって、
前記第1ゲーム装置は、
第1ユーザの操作を受け付ける第1受付部と、
前記第1ユーザの操作に基づいてゲームの第1キャラクタに伝達動作を実行させる第1動作実行部と、
を備え、
前記第2ゲーム装置は、
第2ユーザの操作を受け付ける第2受付部と、
前記第1キャラクタが前記伝達動作の準備動作を実行した場合に、前記伝達動作に対応する応答動作を特定し、前記第2ユーザの操作に基づいて前記ゲームの第2キャラクタに前記応答動作を実行させる第2動作実行部と、
を備え、
前記第1動作実行部は、前記第2キャラクタによる前記応答動作の開始に応じたタイミングで、前記第1キャラクタに前記伝達動作を開始させ、
前記伝達動作は、前記第1ユーザが前記第2ユーザに対して意思表示をするための、前記第1キャラクタの動作である、
ことを特徴とするゲームシステム。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1) 平成31年3月5日付け拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0022】
次に、図2を参照して、ゲームシステム1に実装されたコミュニケーション機能の概要を説明する。ゲームシステム1では、ユーザがネットワーク上でコミュニティを形成し、そのコミュニティに属するユーザが、ゲーム機3とユーザ端末装置4との間で、あるいはユーザ端末装置4同士の間でコメントを交換する等して情報を発信し、共有し、あるいは交換するサービスを享受することが可能である。そのサービスを総称してコミュニティサービスと呼び、特にユーザ間におけるコメントの交換に関連する機能をコメント機能と呼ぶ。コメント機能を利用することにより、ゲーム機3のユーザを受信者として、他のユーザからユーザ端末装置4等を利用して送信されたコメントを受信者のユーザがゲーム機3で受信し、その受信したコメントに対する返答のコメントを、ゲーム機3のユーザが元のコメントの送信者のユーザに対してゲーム機3から送信することが可能である。図2は、コメント機能に基づいてコメントが交換される様子を示している。ユーザ端末装置4にはコメントの閲覧画面100が表示される。閲覧画面100は、ユーザが送信したコメント、受信したコメントをスレッド形式で表示するといったSNS(ソーシャルネットワーキングサービスの略である。)等の公知のコミュニケーションサービスで利用される閲覧画面と同様である。一方、ゲーム機3のゲーム画面110上には、所定の手順でコメントウィンドウ112が表示される。そのウィンドウ112内にはユーザ端末装置4から送信されたコメントが表示される。なお、図2では、麻雀ゲームを実行中のゲーム画面110を示している。ただし、上述したように、麻雀ゲームは一例であり、ゲーム機3で実行されるべきゲームは適宜に選択可能である。
【0023】
ゲーム機3は入力装置としてゲーム画面110を覆うタッチパネルを備えている。ユーザは、コメントウィンドウ112に対して所定の返答操作を行うことにより、予め登録されている複数の返答コメントの候補から一つの候補を選択し、選ばれた返答コメントを元のコメントの送信者としてのユーザに返信することができる。図3A?図3Dはコメント受信から返答に至るまでのゲーム画面110におけるコメント関連の表示の変化を示している。まず、新着コメント(ユーザが未読のコメントを意味する。)が存在すると、図3Aに示す新着通知マーク111がゲーム画面110の適当な場所に表示される。新着通知マーク111には、新着コメントの存在及び新着コメントの件数を通知するメッセージが表示される。新着通知マーク111の表示位置は、ゲーム画面110内において、ユーザの手牌といったユーザに視認させることが必要な情報が表示されている箇所を避けるように設定されることが望ましい。」

イ 「【0032】
次に、ゲーム機3には、ゲーム制御部31と記憶部32とが設けられる。ゲーム制御部31は、ゲーム機3のハードウエア(CPU及びその内部記憶装置としてのメモリを含む。)とソフトウエアとの組み合わせによって実現される論理的装置である。ゲーム制御部31は、ゲームの進行に必要な各種の演算制御を実行するとともに、センターサーバ2のゲームサーバ部21が提供するゲームサービスを享受するために必要な各種の処理を実行する。ゲーム制御部31には、さらなる論理的装置として、コメント処理部33が設けられている。コメント処理部33は、センターサーバ2を経由して送られるコメントをゲーム機3上に表示させ、ユーザの操作に基づいて返答のコメントを送信する処理を実行する。」

ウ 「【0043】
次に、図7を参照して、ゲーム機3のコメント処理部33が実行するコメント表示制御処理の手順を説明する。図7のコメント表示制御処理は、ユーザが受信したコメントをゲーム機3の表示装置36に表示させ、ユーザの指示に従って、複数の返答候補コメントから返答コメントを選択してこれを送信するために一定の周期で実行される。なお、図7の処理は、ゲーム機3のカードリーダ37がユーザのカード38のカードIDを読み取ってセンターサーバ2にユーザを認証させ、そのユーザに対応するプレイデータ51がゲーム機3に提供されてその記憶部32に保存されている状態で行われる処理である。センターサーバ2から提供されたプレイデータ51が記憶部32に記録されることにより、返答候補コメント及び返答選択情報を記憶手段に記憶させる手順が実現される。また、他のユーザがゲーム機3のユーザを宛先として送信したコメントはセンターサーバ2のコミュニティサービス処理部25によってセンターサーバ2における記憶部23の宛先となるユーザに対応したコミュニティデータ52に適宜保存される。
【0044】
コメント処理部33は、図7の処理を開始するとまず新着コメントの有無を判別する(ステップS1)。新着コメントとは、ゲーム機3に取り込まれたプレイデータ51に保持されている最新の受信コメントよりも受信日付が新しく、かつプレイデータ51に含まれたステータスに未読と記録されている受信コメントである。新着コメントの有無を判別するためには、センターサーバ2のコメント処理部24からコミュニティデータ52内のコメントデータを取得し、そのコメントデータに含まれる受信コメントと、自らが保持するプレイデータ51内の受信コメントとを比較すればよい。新着コメントが存在する場合には、ステップS1にてその新着コメントのデータをプレイデータ51中の受信コメントデータに記録する。
【0045】
ステップS1にて新着コメントが存在しないと判断された場合、コメント処理部33は図7の処理を終える。一方、新着コメントが存在すると判断された場合、コメント処理部33は、図3Aに示す新着通知マーク111をゲーム画面110の適当な場所に表示させることにより、新着コメントが存在することをユーザに通知する(ステップS2)。続いて、コメント処理部33はユーザが新着通知マーク111にタッチして新着コメントの表示を指示したか否かを判別し(ステップS3)、表示を指示しなければ新着通知マーク111を消去して図7の処理を終える。一方、ステップS3にてユーザが表示を指示したと判断された場合、コメント処理部33は新着コメントのうち、ゲーム画面110に表示させるべき一のコメントを対象コメントとして選択する(ステップS4)。対象コメントは、例えば受信日付が古いコメントから優先的に選択する等、適宜の手法で選んでよい。
【0046】
次に、コメント処理部33は、対象コメントを含むようにして、図3Bのコメントウィンドウ112をゲーム画面110上に表示させる(ステップS5)。続いて、コメント処理部33は、対象コメントに対してユーザが返答すると仮定した場合の返答候補コメントの優先度を返答選択情報に基づいて決定する(ステップS6)。この場合、既に説明したように、返答候補コメントが選択された回数、頻度、対象コメントの送信者とユーザとの関連性、あるいは、ユーザのゲームにおける状況等に基づいて返答候補コメントの優先度が決定される。
【0047】
次に、コメント処理部33は、ユーザがコメントウィンドウ112にタッチすることにより、返答候補の表示を指示したか否かを判別する(ステップS7)。ユーザが返答候補の表示を指示した場合、コメント処理部33は、所定の並び順で所定数(図3Cの例では3つ)の返答ウィンドウ114を表示させることにより、優先度が相対的に高いものから順に所定数の返答候補コメントをユーザに提示する(ステップS8)。このときの返答ウィンドウ114の並び順は、一例として、優先度が最も高い返答候補コメントを含む返答ウィンドウ114を左端(つまりゲーム画面110の中心に近い位置)に配置し、以下、右へ向かうほど返答候補コメントの優先度が低下するように設定される。ただし、優先度に応じた返答ウィンドウ114の配列は図3Cの例に限らない。優先度が相対的に高い返答候補コメントを含む返答ウィンドウ114を、優先度が相対的に低いものよりもユーザにとって目立つように表示する限りにおいて、表示手法は適宜に変更可能である。この点は後述する。
【0048】
返答ウィンドウ114の表示後、コメント処理部33は、ユーザがいずれかの返答ウィンドウ114にタッチすることにより返答を指示したか否かを判別する(ステップS9)。ユーザが返答を指示した場合、コメント処理部33はユーザがタッチした返答ウィンドウ114内のコメントを、対象コメントの送信者に対して送信する(ステップS10)。ここで送信されたコメントは、センターサーバ2のコメント処理部24を介して返答相手のコミュニティデータ52におけるコメントデータに保存される。その保存されたコメントデータはWebサーバ部22のコミュニティサービス処理部25の処理により、返答相手のユーザ端末装置4に適時に配信される。その配信は、いわゆるプッシュ型でもよいし、プル型でもよい。」

エ 上記イで摘記した段落【0032】の記載において、コメント処理部33は、ゲーム制御部31に設けられており、コメント処理部33が、センターサーバ2を経由して送られるコメントをゲーム機3上に表示させ、ユーザの操作に基づいて返答のコメントを送信する処理を実行するためには、ゲーム制御部31が、プログラムによって動作する必要があることは技術常識である。
したがって、引用文献1には、ゲーム装置3のプログラムが開示されていることは自明である。

(2) 上記(1)アないしエから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「ゲーム機3のユーザを受信者として、他のユーザからユーザ端末装置4等を利用して送信されたコメントを受信者のユーザがゲーム機3で受信し、その受信したコメントに対する返答のコメントを、ゲーム機3のユーザが元のコメントの送信者のユーザに対してゲーム機3から送信することが可能であるゲーム装置3のプログラムであって、
ゲーム機3には、ゲーム制御部31と記憶部32とが設けられ、
ゲーム制御部31には、さらなる論理的装置として、コメント処理部33が設けられ、コメント処理部33に、他のユーザからゲーム機3のユーザを宛先として送信されセンターサーバ2を経由して送られるコメントをゲーム機3上に表示させ、ユーザの操作に基づいて返答のコメントを送信する処理を実行させ、
前記コメント処理部33は、新着コメントのうち、ゲーム画面110に表示させるべき一のコメントを対象コメントとして選択させ、対象コメントを含むようにして、コメントウィンドウ112をゲーム画面110上に表示させ、所定の並び順で所定数の返答ウィンドウ114を表示させることにより、優先度が相対的に高いものから順に所定数の返答候補コメントをユーザに提示させ、ユーザがいずれかの返答ウィンドウ114にタッチすることにより返答を指示したか否かを判別させ、ユーザが返答を指示した場合、コメント処理部33はユーザがタッチした返答ウィンドウ114内のコメントを、対象コメントの送信者に対して送信する、
ゲーム装置3のプログラム。」

2 引用文献2について
(1) 平成31年3月5日付け拒絶理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0036】図2?図4は、ゲームシステム1304のディスプレイに表示される表示画面の例を示す図である。図2(a)は、ゲームシステム1304-1(キャラクタ1を操作するゲームシステム)に表示される画面の一例を示している。図2(a)に示すように、画面には、文字入力領域4、及び、キャラクタに実行させる動作内容を選択するためのアイコン群8(以下、動作アイコン群8という。)が表示される。文字入力領域4は、キーボード等により入力された文字を表示する領域であり、とりわけ、キャラクタ1(自プレーヤキャラクタ)に発言させる文字が入力された際に表示するための領域である。また、動作アイコン群8には、複数種類の動作を示す動作アイコン8-1?4が表示される。
【0037】また、図2(b)は、図2(a)に示した複数の動作アイコン群8を拡大して示した図である。この図2(b)に示すように、各動作アイコン8-1?4には、それぞれ動作を示す静止画が表示される。なお、各動作アイコン8-1?4は、それぞれモーションデータとリンクさている。すなわち、プレーヤによって一の動作アイコンが選択されると、対応するモーションデータが読み出され、プレーヤにより入力された発言情報と共に、キャラクタ2を操作するゲームシステムに対して送信される。なお、プレーヤが、動作アイコン群8の中から一の動作アイコンを選択する方法としては、例えば、ポインティングデバイス等で所望の動作アイコン8-1?4をクリックすることにより選択する。図2(a)では、文字入力領域4に「こんにちは!」が入力され、お辞儀をする動作アイコン8-1が選択された場合を示している。同図においては、便宜上、太枠によって、選択された動作アイコン8-1を明示した。
【0038】このようにして、入力された発言情報(テキストデータ)と選択された動作情報(モーションデータ)とがチャットデータとしてサーバ1302を介してチャットの相手キャラクタ2を操作するゲームシステム(例えば、図1に示すゲームシステム1302-2(当審注「1302-2」は「1304-2」の誤記である。)に送信される。なお、以下では、各動作アイコンには各モーションを識別するための識別番号(以下、モーション番号という。)を対応させることとする。そして、プレーヤによって一の動作アイコンが選択されると、その動作アイコンに付されたモーション番号をチャットデータに付加して相手のゲームシステム1304-2に送信する。一方で、個々のモーションデータには、各モーション番号を対応付けて記憶する。すなわち、モーション番号を受信したゲームシステム1304-2は、その受信したモーション番号に対応するモーションデータを読み出して該当するキャラクタに動作を実行させることができる。なお、チャットデータを送信した側のゲームシステム(すなわち、ゲームシステム1302-1(当審注:「1302-1」は「1304-1」の誤記である。)においても、チャットデータの送信後に、プレーヤによって入力された発言情報を表示すると共に、選択された動作をキャラクタ1に実行させる。
【0039】また、以下では、発言情報の1回の送信に対して、1つの動作のみを選択できることとする。すなわち、1回の送信に係るチャットデータには、発言情報と共に、一のモーション番号が添付されることとなる。そして、チャットデータを受信した側のゲームシステムは、その受信した発言情報を表示すると同時に、受信したモーション番号に対応する動作を該当するキャラクタに実行させる。
【0040】図3、図4は、キャラクタ1が、図2(a)に示した表示画面において入力された言葉を発言し、且つ、選択された動作(例えば、お辞儀の動作)を行なっている表示画面例を示す図である。図3は、キャラクタ1を操作するゲームシステム1304-1における表示画面の例であり、図4は、キャラクタ2を操作するゲームシステム1304-2における表示画面例を示す図である。
【0041】図3、図4に示すように、キャラクタ1は、ゲームシステム1304-1において、プレーヤにより選択された動作を行なう。また、このとき、発言表示領域6(例えば、吹き出し形の領域)が表示される。そして、文字入力領域4に入力された文字(発言情報)が、キャラクタ1の発言として発言表示領域6に表示される。なお、以下では、発言表示領域6の表示期間を、キャラクタ1の一連の動作が開始してから終了するまでの時間とする。すなわち、図3、図4において、各ゲームシステム1304-1、2の処理系は、キャラクタ1にお辞儀を開始させると共に、発言表示領域6を表示し、お辞儀が終了したとき、発言表示領域6の表示を終了する。
【0042】このように、チャットの実行中において、キャラクタと文字メッセージ(発言情報)を表示すると共に、そのキャラクタに所望の動作を実行させることができる。したがって、文字メッセージだけでは伝わらない感情を表現したり、キャラクタの動作によって文字メッセージの印象を強調させたりできる。例えば、キャラクタが動作をせず(じっと立ったまま)「こんにちは!」と発言する場合に比べて、お辞儀の動作を行ないながら「こんにちは!」と発言する場合には、より丁寧な印象を他のゲームシステムのプレーヤに与えることが可能となる。
【0043】また、複数のプレーヤが同一のゲーム空間を同時に共有するタイプのネットワークゲームでは、そのゲーム空間にて使用言語の異なるプレーヤによって操作されるキャラクタと遭遇する場合がある。すなわち、他のキャラクタに遭遇してチャットを開始しても、相手キャラクタの発言表示領域6に表示される言語が理解できず、プレーヤ同士が歯痒い思いをすることも考えられる。本発明によれば、係る場合においても、プレーヤは、キャラクタの動作を通じて相手の伝えたい感情を理解することができる。例えば、相手プレーヤの使用する言語が日本語ではない場合には、「こんにちは!」とキャラクタ1が発言しても、相手プレーヤには理解されない可能性があるが、キャラクタ1がお辞儀をしたり、手を振る等の動作をすることにより、挨拶をしていることを伝えることができる。」

(2) 上記(1)で摘記した事項から、引用文献2には、「キャラクタ1を操作するゲームシステム1304-1に表示される画面には、文字入力領域4、及び、キャラクタに実行させる動作内容を選択するための動作アイコン群8が表示され、文字入力領域4は、キーボード等により入力された文字を表示する領域であり、とりわけ、キャラクタ1に発言させる文字が入力された際に表示するための領域であり、また、動作アイコン群8には、複数種類の動作を示す動作アイコン8-1?4が表示され、プレーヤによって入力された発言情報と選択された動作情報とがチャットデータとしてサーバ1302を介してチャットの相手キャラクタ2を操作するゲームシステム1304-2に送信され、キャラクタ1が、表示画面において入力された言葉を発言し、且つ、選択された動作を行う」という技術的事項が記載されているものと認められる。
そして、引用文献2に記載された技術的事項から、複数のユーザによりゲームを行う際に、ユーザ同士で意思表示をするための手段として、キャラクタによる動作を行うことは、本願出願前の周知技術であったと認められる。

3 引用文献3及び4について
引用文献3の
「リアクション対応とは!?
ロビーアクションをしているプレイヤーに対して、ロビーアクション実行から「リアクション」を選択することで、相手のロビーアクションに応じたリアクションを取ることが可能。
つまり、ねこさんの居合いに対し私がリアクションを取ることで、私が居合いに応じたリアクションを取ることが出来ます!」」
という記載、及び
引用文献4の
「ロビーアクションを実行しているキャラクターに対してロビーアクション「リアクションを選択すると、相手の動きに合わせた動きができる新しいロビーアクションが登場。対応するロビーアクションの第1弾は「エア居合」。斬った側と斬られた側で、時代劇のような動きができます。」
という記載から、他のユーザによる他のキャラクタの動作に応答して、キャラクタの適切な動作を特定して、その動作を行うようにすることが、本願出願時の周知技術であったことが認められる。。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と、引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。

ア 引用発明の「ゲーム制御部31」、「ゲーム機3」及び「ユーザ」は、それぞれ、本願発明1の「プロセッサ」、「ゲーム装置」及び「第1ユーザ」に相当する。

イ 引用発明の「ゲーム機3」は、「他のユーザからユーザ端末装置4等を利用して送信されたコメントを受信者のユーザがゲーム機3で受信」するものであることから、「他のユーザ」の「ユーザ端末装置4」とネットワークを介して通信可能であるといえる。
引用発明の「ユーザ端末装置4」は、「他のユーザ」が用いるものであるから、引用発明の「他のユーザ」及び「ユーザ端末装置4」は、それぞれ、本願発明1の「第2ユーザ」及び「外部ゲーム装置」に相当する。
したがって、本願発明1の「ゲーム機3」と、引用発明の「ゲーム装置」とは、「外部ゲーム装置と通信可能」である点でも共通する。

ウ 引用発明の「ゲーム制御部31」は、「コメント処理部33」が設けられているが、このことは、「ゲーム制御部31」が、「コメント処理部33」として機能するようにプログラムが動作しているものであることは技術常識である。
そして、引用発明においては、コメント処理部33が、ユーザがいずれかの返答ウィンドウ114にタッチすることにより返答を指示したか否かを判別させ、ユーザが返答を指示した場合、コメント処理部33はユーザがタッチした返答ウィンドウ114内のコメントを、対象コメントの送信者に対して送信することから、コメント処理部33が設けられるゲーム制御部31が、ユーザの操作を受け付けているものと認められる。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「プロセッサを、前記ゲーム装置を操作する第1ユーザの操作を受け付ける受付部」として「機能させ」る点で共通する。

エ 上記ウで説示したとおり、引用発明の「コメント処理部33」は、ユーザがいずれかの返答ウィンドウ114にタッチすることにより返答を指示したか否かを判別させ、ユーザが返答を指示した場合、コメント処理部33はユーザがタッチした返答ウィンドウ114内のコメントを、対象コメントの送信者に対して送信するものであることから、ユーザの操作に基づいて、何らかのプロセスが実行させるものと認められる。
したがって、本願発明1の「動作実行部」と、引用発明の「コメント処理部33」とは、「前記第1ユーザの操作に基づいて」、何らかのプロセスを「実行させる」機能を果たす実行部である点において共通する。

オ 引用発明の「コメント処理部33」は、「他のユーザ」が「ゲーム機3のユーザを宛先として送信」し、「センターサーバ2を経由して送られるコメントをゲーム機3上に表示」し、「ユーザの操作に基づいて返答のコメントを送信」するものであり、「他のユーザ」は、「ユーザ端末装置4」を用いてコメントを送信するところ、本願発明1の「動作実行部」と、引用発明の「コメント処理部33」とは、「前記外部ゲーム装置を操作する第2ユーザの操作に基づいて」、何らかのプロセスを「実行した場合」に、前記何らかのプロセスに対応する返答になる何らかのプロセスを「特定し」、「前記第1ユーザの操作に基づいて」前記返答になる何らかのプロセスを「実行」する点でも共通する。

カ 引用発明において、他のユーザが、ユーザに送信する「コメント」は、他のユーザが、ユーザに対して何らかの意思表示をするためのものであることは明らかであるから、本願発明1における、「伝達動作」と、引用発明の「コメント」とは、「前記第2ユーザが前記第1ユーザに対して意思表示をするための」ものである点で共通する。

キ 上記アないしカより、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致する。

「プロセッサを具備し、外部ゲーム装置と通信可能なゲーム装置のプログラムであって、
前記プロセッサを、
前記ゲーム装置を操作する第1ユーザの操作を受け付ける受付部と、
前記第1ユーザの操作に基づいて何らかのプロセスを実行させる実行部と、
して機能させ、
前記実行部は、前記外部ゲーム装置を操作する第2ユーザの操作に基づいて何らかのプロセスを実行した場合に、当該何らかのプロセスに対応する返答になる何らかのプロセスを実行を特定し、前記第1ユーザの操作に基づいて前記第1キャラクタに当該何らかのプロセスに対応する返答になる何らかのプロセスを実行させ、
当該何からのプロセスは、前記第2ユーザが前記第1ユーザに対して意思表示をするためのものである、ゲーム装置のプログラム。」

ク そして、両者の発明は、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明1においては、「実行部」が、「第1ユーザの操作に基づいてゲームの第1キャラクタに動作を実行させる動作実行部」であるのに対して、引用発明においては、「コメント処理部33」であり、ゲームのキャラクタに動作を実行させるものではない点。

[相違点2]
本願発明1においては、「外部ゲーム装置を操作する第2ユーザの操作に基づいて前記ゲームの第2キャラクタが伝達動作の準備動作を実行」するのに対して、引用発明においては、他のユーザはコメントを送信しており、ゲームのキャラクタに伝達動作の準備動作を実行させてはいない点。

[相違点3]
本願発明1においては、「動作実行部」が、「伝達動作に対応する応答動作を特定」し、「第1ユーザの操作に基づいて前記第1キャラクタに応答動作を実行」させるのに対して、引用発明においては、動作を特定したり、キャラクタに動作を実行させるものではない点。

[相違点4]
本願発明においては、「第1キャラクタによる前記応答動作の開始に応じたタイミングで、前記第2キャラクタによる前記伝達動作が開始され」るのに対して、引用発明においては、キャラクタに動作を実行させるものではないので、動作の開始タイミングも特定されていない点。

[相違点5]
本願発明においては、「第2ユーザが前記第1ユーザに対して意思表示をするため」することが、「第2キャラクタの動作」である「伝達動作」であるのに対して、引用発明においては、コメントを送信することである点。

(2) 判断
事案に鑑みて、相違点4について判断する。
上記第5の2(2)で説示したように、複数のユーザによりゲームを行う際に、ユーザ同士で意思表示をするための手段として、キャラクタによる動作を行うことは、本願出願前の周知技術であり、上記第5の3で説示したように、他のユーザによる他のキャラクタの動作に応答して、キャラクタの適切な動作を特定して、その動作を行うようにすることも、本願出願前の周知技術である。
このことから、引用発明において、一方のキャラクタに動作によって意思表示を行い、それに対応する応答として適切な動作を特定し、他方のキャラクタに応答の動作させることまでは、当業者にとって容易であるいえるものの、「第2キャラクタに伝達動作の準備動作を実行」させ、「第1キャラクタによる」「応答動作の開始に応じたタイミングで、前記第2キャラクタによる前記伝達動作が開始され」ることまでは、容易とはいえず、そのようにすることが本願出願時において周知であったことを示す証拠もない。
そして、本願発明1は、第1キャラクタによる応答動作の開始と、第2キャラクタによる伝達動作の開始とのタイミングを合わせることが可能になるという、引用文献1ないし4に記載も示唆もされていない顕著な効果を奏する。
したがって、上記相違点4に係る、本願発明1の発明特定事項を導き出すことは、当業者が適宜なし得た設計変更ということはできない。

(3) 小括
以上のとおりであるから、上記相違点1ないし3及び5について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2、10及び11について
本願発明2、10及び11も、本願発明1の「前記第1キャラクタによる前記応答動作の開始に応じたタイミングで、前記第2キャラクタに前記伝達動作を開始させ」ることと、同一の構成を備えるものであるから、 本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明3ないし9について
本願発明3ないし6は、本願発明1または2を直接又は間接に引用し、本願発明7ないし9は、本願発明1を直接又は間接に引用する。
したがって、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
原査定で引用した引用文献A(上記引用文献2)には、上記第5の2(2)で説示したとおりの技術的事項が記載されており、引用文献Aに記載された技術的事項における「動作」は、本願発明1の「伝達動作」に相当するものではあるものの、引用文献Aには、「伝達動作に対応する応答動作を特定」し、「第1キャラクタによる前記応答動作の開始に応じたタイミングで、前記第2キャラクタによる前記伝達動作が開始され」ることに相当する事項は記載されておらず、また、このことが、引用文献1に記載されておらず、本願出願前の周知技術とはいえないことは、上記第6で検討したとおりである。
したがって、本願発明1ないし11は、当業者であっても、引用文献Aに基づいて容易に発明をすることができたものということはできない。
よって、原査定を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由で通知した記載不備について
1 平成31年3月5日付け拒絶理由通知書について
当審においては、平成31年3月5日付け拒絶理由通知書において、平成30年8月8日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲に対して、
(1) 請求項6の
「前記複数の伝達候補動作は、
複数の実行可能動作の中から、前記ユーザにより選択された動作である、」
という記載は、複数の伝達候補動作は、複数の実行可能動作の中から、ユーザにより選択された動作のみによって構成されているものと解されるが、このような態様は、発明の詳細な説明に記載されていない旨、
(2) 請求項8の
「前記動作実行部は、
前記応答動作が前記複数の伝達候補動作に含まれない場合であっても、
前記キャラクタに前記応答動作を実行させることが可能である、」
という記載は、伝達動作として実行することができない動作は、応答動作として実行することが常に可能であり、言い換えれば、伝達動作として実行することができない動作であって、且つ、応答動作としても実行することができない動作は存在しないと解されるが、このような態様は、発明の詳細な説明に記載されていない旨、
(3) 請求項1及び11の記載において、「他のユーザの操作に基づいて前記ゲームの他のキャラクタによる伝達動作」を「実行」させる主体が何ら特定されておらず、「他のキャラクタによる伝達動作」がなぜ判別できるのか明確でない旨、
(4) 請求項12の記載において、「第2ゲーム装置」は「前記第1キャラクタが前記伝達動作を実行」したことをなぜ判別できるのか明確でない旨、
(5) 請求項10の
「前記他のキャラクタは、
前記キャラクタによる前記応答動作の開始に応じたタイミングで、前記伝達動作を開始する」
という記載が、請求項1の記載と矛盾しており明確でない旨、
の拒絶理由をそれぞれ通知している。
2 令和1年7月8日付け拒絶理由通知書について
当審においては、平成31年3月5日付け拒絶理由通知書において、令和1年5月8日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲に対して、
(1) 請求項1及び10の「他のユーザ」及び「他のキャラクタ」という記載が、何に対する「他」を意味するのか明確でない旨、
(2) 請求項1及び10の「動作実行部」と「他のキャラクタ」の「動作」との関係が明確でない旨、
(3) 請求項11の記載において、「第1動作実行部」の果たす役割が明確でない旨、
(4) 請求項1、10及び11の「伝達動作の準備動作を実行しているか否かを判定」するという記載は、明細書の発明の詳細な説明に記載したものでない旨、
(5) 請求項6「前記複数の伝達候補動作は、複数の実行可能動作の中から、前記ユーザにより選択された動作を含む」という記載は、プレイヤキャラクタが動作を実行するために、予め、動作を入手しておくことが必要な動作が存在することしか記載されていない明細書の発明の詳細な説明と対応しない旨、
(6) 請求項9の「前記応答動作は、前記ユーザの操作に基づいて、複数の応答候補動作の中から指定された動作であり」という記載は、明細書の発明の詳細な説明に記載したものでない旨、
の拒絶理由をそれぞれ通知している。

3 当審で通知した拒絶理由に対する手続補正
これらの当該拒絶理由に対して、
(1) 令和1年5月8日に提出された手続補正書による補正によって、
a 請求項6(令和1年7月19日付けの手続補正後の請求項7)の記載が、「前記複数の伝達候補は、複数の実行可能動作の中から、・・・選択された動作を含む」と補正され、
b 請求項8(令和1年7月19日付けの手続補正後の請求項9)の記載が、「「前記動作実行部は、前記応答動作が前記複数の伝達候補動作に含まれない場合であっても、 前記キャラクタに前記応答動作を実行させることが可能な動作を含む、」 と補正され、
(2) 本件補正によって、
a 請求項1、10の「ユーザ」及び「他のユーザ」が、それぞれ、「第1ユーザ」及び「第2ユーザ」と補正され、
b 請求項1、10の「キャラクタ」及び「他のキャラクタ」が、それぞれ、「第1キャラクタ」及び「第2キャラクタ」と補正され、
c 請求項1の「動作実行部」が、「前記外部ゲーム装置を操作する第2ユーザの操作に基づいて前記ゲームの第2キャラクタが伝達動作の準備動作を実行した場合に、前記伝達動作に対応する応答動作を特定し、前記第1ユーザの操作に基づいて前記第1キャラクタに前記応答動作を実行させ」ることが明確にされ、
d 請求項2を、「第1ユーザ」及び「第2ユーザ」が操作する「ゲーム装置のプログラム」に係る発明として独立請求項とすると共に、請求項2の「第1キャラクタ」が、「第1ユーザ」の操作に基づいて動作を実行するものであること、「第2キャラクタ」が、「第2ユーザ」に操作に基づいて動作を実行するものであることが明確にされ、
e 請求項2の「動作実行部」が、「前記ゲーム装置を操作する前記第2ユーザの操作に基づいて前記ゲームの前記第2キャラクタが伝達動作の準備動作を実行した場合に、前記伝達動作に対応する応答動作を特定し、前記第1ユーザの操作に基づいて前記第1キャラクタに前記応答動作を実行させ、前記第1キャラクタによる前記応答動作の開始に応じたタイミングで、前記第2キャラクタに前記伝達動作を開始させ」ることを明確にし、
f 請求項7の記載を、「前記複数の伝達候補動作は、複数の実行可能動作の中から、前記第1ユーザにより予め選択された動作を含む」と補正し、
g 令和1年5月8日付けの手続補正後の請求項9が削除され、
h 請求項10の「ユーザ」及び「他のユーザ」が、それぞれ、「第1ユーザ」及び「第2ユーザ」と補正され、
i 請求項10の「動作実行部」が、「前記第2ユーザの操作に基づいて前記ゲームの前記第2キャラクタが伝達動作の準備動作を実行した場合に、前記伝達動作に対応する応答動作を特定し、前記第1ユーザの操作に基づいて前記第1キャラクタに前記応答動作を実行させ、前記第1キャラクタによる前記応答動作の開始に応じたタイミングで、前記第2キャラクタによる前記伝達動作を開始させ」ることが明確にされ、
j 請求項11の「第1動作実行部」が、「前記第2キャラクタによる前記応答動作の開始に応じたタイミ
ングで、前記第1キャラクタに前記伝達動作を開始させ」ることが明確にされ、
これらの補正により、拒絶理由は解消した。

第9 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし11は、当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、原査定の理由又は当審で通知した拒絶の理由によっては、本願は拒絶することはできない。
また、ほかに本願を拒絶すべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-15 
出願番号 特願2017-158209(P2017-158209)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A63F)
P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上田 泰  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 塚本 丈二
尾崎 淳史
発明の名称 ゲーム装置、ゲーム装置のプログラム、及び、ゲームシステム  
復代理人 木地本 浩和  
代理人 大林 章  

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