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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D
管理番号 1356605
審判番号 不服2019-511  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-16 
確定日 2019-10-31 
事件の表示 特願2014-117557号「連続帳票」拒絶査定不服審判事件〔平成27年3月19日出願公開、特開2015-51625号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年6月6日(優先権主張平成25年7月23日、平成25年8月7日)の出願であって、平成30年3月20日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年5月28日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年10月4日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成31年1月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年5月28日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明は以下のとおりのものである。なお、A?Iは本願発明の構成を分説するため当審で付した。

「【請求項1】
A 単位帳票が用紙搬送方向に切り離し可能に複数連接されてなる連続帳票において、
B 前記単位帳票は少なくとも感圧複写部を有するプリンター印字可能な帳票であって、
C 第一基材と第二基材と第三基材が積層されてなり、
D 前記第一基材は第一印刷領域と第二印刷領域と第三印刷領域に区分され、
E 前記第一印刷領域に対応する前記第一基材と前記第二基材の間ならびに前記第二基材と前記第三基材の間には感圧複写構造が設けられ、
F 第二印刷領域と第三印刷領域に対応する前記第一基材は接着剤層を介して前記第二基材と接着され、
G 前記第三印刷領域に対応する前記第二基材は接着剤層を介して前記第三基材と接着され、
H 前記第一基材には、前記第一印刷領域と前記第二印刷領域との間、ならびに第二印刷領域と第三印刷領域との間に用紙搬送方向に沿って切断線が設けられ、
I 前記第二基材には、前記第二印刷領域と前記第三印刷領域との間に用紙搬送方向に沿って切断線が設けられていること
を特徴とする連続帳票。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の理由のうち、請求項1に係る拒絶の理由の概略は、以下のとおりである。

(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前日本国内において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2009-51071号公報(以下、「引用文献1」という。)
2.特開平10-138664号公報(周知慣用技術を示す文献、以下「引用文献2」という。)

第4 引用文献1の記載及び引用発明
引用文献1には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0014】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る複写帳票1は、3枚の複写帳票片2a,2b,2cが重ね合わされ、それらの一端側で接着剤3により接着されて綴じ合わされている。
この複写帳票1は、ノンインパクトプリンタを用いて印字処理を行うが、接着剤3により綴じ合わされている一端側が、ノンインパクトプリンタに対して給紙する際の先頭側となる部分に設けられる。
図1に示す場合においては、ノンインパクトプリンタへの給紙方向4を上方向と設定した場合が示されているので、複写帳票1の上方向の一端側で綴じ合わされている。
【0015】
3枚の複写帳票片2a,2b,2cの表面には、それぞれ表面に記入事項を表示する記入事項表示部5が設けられている。
図1には示されていないが、記入事項表示部5は、3枚の複写帳票片2a,2b,2cの表面において、同位置に設けられている。
また、3枚の複写帳票片2a,2b,2cは、発色剤と顕色剤との反応により発色するノーカーボン複写方式により複写記入可能に構成されており、最上位にある複写帳票片2aの記入事項表示部5に記入された内容が、下位にある複写帳票片2b,2cの記入事項表示部5に対して複写可能に構成されている。」
【0016】
つまり、図2に示すように、複写帳票片2aの裏面には、発色剤層7が設けられ、また、複写帳票片2bの表面には、顕色剤層8が設けられ、複写帳票片2bの裏面には、発色剤層7が設けられ、更に、複写帳票片2cの表面には、顕色剤層8が設けられており、最上位にある複写帳票片2aの記入事項表示部5に記入された内容が、下位にある複写帳票片2b,2cの記入事項表示部5に対して複写可能に構成されている。
このように、複写帳票1は、複数枚の複写帳票片2a,2b,2cが、最上位のノーカーボントップ紙と、中位のノーカーボンミドル紙と、最下位のノーカーボンボトム紙とからなる3枚の複写帳票片により構成されている。
複数枚の複写帳票片2a,2b,2cは、同一形状を有し、同一寸法で形成されている。
【0017】
そして、複数枚の複写帳票片2a,2b,2cのうち、最上位の複写帳票片2aの表面には、複写帳票1を構成する複写帳票片の枚数と同じ数のノンインパクトプリンタ用印字部9が設けられている。
つまり、複写帳票1を構成する複写帳票片2a,2b,2cは、3枚であるので、複写帳票片2aの表面には、3つのノンインパクトプリンタ用印字部9が設けられている。
更に、最上位の複写帳票片2aには、各ノンインパクトプリンタ用印字部を含む領域を切り取るための切り取りミシン10,11が形成されている。
また、複写帳票片2bにも、切り取りミシン11と重なる位置に、切り取りミシン12形成されている。
【0018】
そして、最上位の複写帳票片2aの切り取りミシン10,11で切り取られる複写帳票片2aの紙片13,14は、下位に重ねられた複写帳票片2bと接着剤15で接着されている。
更に、複写帳票片2bの切り取りミシン12で切り取られる紙片16は、下位に重ねられた複写帳票片2cと接着剤17で接着されている。
【0019】
次に、本発明の実施形態に係る複写帳票1をノンインパクトプリンタで印字処理して使用する場合について説明する。
まず、複写帳票1をノンインパクトプリンタにより印字処理して、ノンインパクトプリンタ用印字部9に共通情報の印字を行う。
次に、複写帳票1の使用者が、最上位の複写帳票片2aの記入事項表示部5に必要事項の記入を行なうことで、ノーカーボン複写方式により記入事項が下位の複写帳票片2b,2cの記入事項表示部に複写記入される。
【0020】
その後、最上位の複写帳票片2aの切り取りミシン10,11と、複写帳票片2bの切り取りミシン12とから、それぞれ切り取る。
この切り取りにより、複写帳票片2aの紙片13は、複写帳票片2bに接着された状態で形成され、更に、複写帳票片2aの紙片14と、複写帳票片2bの紙片16とは、複写帳票片2cに接着された状態で形成される。
【0021】
これにより、複写帳票片2aには、記入事項表示部5に記入された必要事項と、ノンインパクトプリンタ用印字部9に印字された共通情報が表示され、また、複写帳票片2bには、記入事項表示部5に記入された必要事項がノーカーボン複写方式により複写されると共に、複写帳票片2b上に接着された紙片13のノンインパクトプリンタ用印字部9に印字された共通情報が表示され、更に、複写帳票片2cには、記入事項表示部5に記入された必要事項がノーカーボン複写方式により複写されると共に、複写帳票片2c上に接着された紙片16と紙片14から、紙片14のノンインパクトプリンタ用印字部9に印字された共通情報が表示された状態となる。
【0022】
これにより、複写帳票1を構成する複数枚の複写帳票片2a,2b,2cのそれぞれに、記入事項表示部5に記入された必要事項と、ノンインパクトプリンタで印字された共通情報とが表示されて、同一の情報を利用できるようになっている。
「【0023】
また、本発明の複写帳票は、ノンインパクトプリンタへの給紙方向を横方向と設定した場合には、ノンインパクトプリンタへの給紙する際の先頭となる部分であって、複写帳票1の横方向の一端側で綴じ合わされた構成とする。」


(認定事項1)
段落【0017】及び【0018】の記載を参酌すれば、図1及び図2の記載から、複写帳票片2aには、紙片13,14を除くノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片とノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片13との間、ならびにノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片13とノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片14との間に切り取りミシン10,11が形成されていることが見て取れる。

(認定事項2)
段落【0016】の記載を参酌すれば、図1及び図2の記載から、複写帳票片2aの紙片13,14を除くノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片に対応する箇所において、複写帳票片2aの裏面には発色剤層7が設けられ、複写帳票片2bの表面には顕色材層8が設けられ、また、複写帳票片2aの紙片13,14を除くノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片及びノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片13に対応する箇所において、複写帳票片2bの裏面には発色材層7が設けられ、複写帳票片2cの表面には顕色材層8が設けられていることが見て取れる。

(認定事項3)
段落【0023】の記載を参酌すれば、ノンインパクトプリンタへの給紙方向を横方向と設定した場合、図1に示される複写帳票片2aの切り取りミシン10,11及び図2に示される複写帳票片2bの切り取りミシン12は、ノンインパクトプリンタへの給紙方向に沿って形成されるものとなることは明らかである。

以上の記載事項及び認定事項から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、引用発明の構成b?iは本願発明の構成B?Iに対応している。

「b 3枚の複写帳票片2a,2b,2cが、発色剤と顕色剤との反応により発色するノーカーボン複写方式により複写記入可能に構成されており、最上位にある複写帳票片2aの記入事項表示部5に記入された内容が、下位にある複写帳票片2b,2cの記入事項表示部5に対して複写可能に構成され(【0015】)、ノンインパクトプリンタを用いて印字処理を行う複写帳票1(【0014】)であって、
c 3枚の複写帳票片2a,2b,2cが重ね合わされ(【0014】)、
d 前記複写帳票片2aには、紙片13,14を除くノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片とノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片13との間、ならびにノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片13とノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片14との間に切り取りミシン10,11が形成され(認定事項1)、
e 前記複写帳票片2aの紙片13,14を除くノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片に対応する箇所において、前記複写帳票片2aの裏面には発色剤層7が設けられ、複写帳票片2bの表面には顕色材層8が設けられ、また、前記複写帳票片2aの紙片13,14を除くノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片及びノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片13に対応する箇所において、複写帳票片2bの裏面には発色材層7が設けられ、複写帳票片2cの表面には顕色材層8が設けられ(認定事項2)、
f 前記複写帳票片2aの各ノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片13,14は、下位に重ねられた前記複写帳票片2bと接着剤15で接着され(【0017】、【0018】)、
g 前記複写帳票片2aのノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片14と接着して形成される前記複写帳票片2bの紙片16は、下位に重ねられた前記複写帳票片2cと接着剤17で接着され(【0017】、【0018】、【0020】)、
h 前記複写帳票片2aには、紙片13,14を除くノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片とノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片13との間、ならびにノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片13とノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片14との間に切り取りミシン10,11がノンインパクトプリンタへの給紙方向に沿って形成され(認定事項1、認定事項3)、
i 前記複写帳票片2bにも、ノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片13とノンインパクトプリンタ用印字部を含む紙片14との間の切り取りミシン11と重なる位置に、切り取りミシン12がノンインパクトプリンタの給紙方向に沿って形成されている(【0017】、認定事項1、認定事項3)
複写帳票1。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。なお、見出しの(b)?(i)は本願発明の構成B?Iに対応している。

(b)引用発明の「b 3枚の複写帳票片2a,2b,2cが、発色剤と顕色剤との反応により発色するノーカーボン複写方式により複写記入可能に構成されており、最上位にある複写帳票片2aの記入事項表示部5に記入された内容が、下位にある複写帳票片2b,2cの記入事項表示部5に対して複写可能に構成され」ている「複写帳票1」は、「記入」の圧力による「発色剤と顕色材との反応により」複写されるものであることは明らかであるから、「発色剤と顕色材」とからなる感圧複写部を有するものといえる。
また、引用発明の「ノンインパクトプリンタを用いて印字処理を行う複写帳票1」は、プリンター印字可能な帳票といえる。
したがって、引用発明の「b 3枚の複写帳票片2a,2b,2cが、発色剤と顕色剤との反応により発色するノーカーボン複写方式により複写記入可能に構成されており、最上位にある複写帳票片2aの記入事項表示部5に記入された内容が、下位にある複写帳票片2b,2cの記入事項表示部5に対して複写可能に構成され、ノンインパクトプリンタを用いて印字処理を行う複写帳票1」と、本願発明の「B 前記単位帳票は少なくとも感圧複写部を有するプリンター印字可能な帳票」とは、「B’帳票は少なくとも感圧複写部を有するプリンター印字可能な帳票」である点で共通する。

(c)引用発明の「複写帳票片2a」、「複写帳票片2b」及び「複写帳票片2c」は、それぞれ、本願発明の「第一基材」、「第二基材」及び「第三基材」に相当する。
したがって、引用発明の「c 3枚の複写帳票片2a,2b,2cが重ね合わされ」ることは、本願発明の「C 第一基材と第二基材と第三基材が積層されてな」ることに相当する。

(d)引用発明の「d 前記複写帳票片2aには、紙片13,14を除くノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片とノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片13との間、ならびにノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片13とノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片14との間に切り取りミシン10,11が形成され」ることは、「前記複写帳票片2a」が「紙片13,14を除くノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片」と「ノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片13」と「ノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片14」に区分されるものといえ、これは、本願発明の「D 前記第一基材は第一印刷領域と第二印刷領域と第三印刷領域に区分され」ることに相当する。

(e)引用発明の「e 前記複写帳票片2aの紙片13,14を除くノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片に対応する箇所において、前記複写帳票片2aの裏面には発色剤層7が設けられ、複写帳票片2bの表面には顕色材層8が設けられ、また、前記複写帳票片2aの紙片13,14を除くノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片及びノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片13に対応する箇所において、複写帳票片2bの裏面には発色材層7が設けられ、複写帳票片2cの表面には顕色材層8が設けられ」ることは、複写帳票片2aの紙片13,14を除くノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片に対応する複写帳票片2aと複写帳票片2bの間ならびに複写帳票片2bと複写帳票片2cの間に発色剤層7と顕色材層8が設けられるといえるから、本願発明の「E 前記第一印刷領域に対応する前記第一基材と前記第二基材の間ならびに前記第二基材と前記第三基材の間には感圧複写構造が設けられ」ることに相当する。

(f)引用発明の「f 前記複写帳票片2aの各ノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片13,14は、下位に重ねられた前記複写帳票片2bと接着剤15で接着され」ることは、本願発明の「F 第二印刷領域と第三印刷領域に対応する前記第一基材は接着剤層を介して前記第二基材と接着され」ることに相当する。

(g)引用発明の「g 前記複写帳票片2aのノンインパクトプリンタ用印字部9を含む領域である紙片14と接着して形成される前記複写帳票片2bの紙片16は、下位に重ねられた前記複写帳票片2cと接着剤17で接着され」ることは、本願発明の「G 前記第三印刷領域に対応する前記第二基材は接着剤層を介して前記第三基材と接着され」ることに相当する。

(h)引用発明の「h 前記複写帳票片2aには、紙片13,14を除くノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片とノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片13との間、ならびにノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片13とノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片14との間に切り取りミシン10,11がノンインパクトプリンタへの給紙方向に沿って形成され」ることは、本願発明の「H 前記第一基材には、前記第一印刷領域と前記第二印刷領域との間、ならびに第二印刷領域と第三印刷領域との間に用紙搬送方向に沿って切断線が設けられ」ことに相当する。

(i)引用発明の「i 前記複写帳票片2bにも、ノンインパクトプリンタ用印字部9を含む紙片13とノンインパクトプリンタ用印字部を含む紙片14との間の切り取りミシン11と重なる位置に、切り取りミシン12がノンインパクトプリンタの給紙方向に沿って形成されている」ことは、本願発明の「I 前記第二基材には、前記第二印刷領域と前記第三印刷領域との間に用紙搬送方向に沿って切断線が設けられていること」に相当する。

してみると、本願発明と引用発明とは、
「B’帳票は少なくとも感圧複写部を有するプリンター印字可能な帳票であって、
C 第一基材と第二基材と第三基材が積層されてなり、
D 前記第一基材は第一印刷領域と第二印刷領域と第三印刷領域に区分され、
E 前記第一印刷領域に対応する前記第一基材と前記第二基材の間ならびに前記第二基材と前記第三基材の間には感圧複写構造が設けられ、
F 第二印刷領域と第三印刷領域に対応する前記第一基材は接着剤層を介して前記第二基材と接着され、
G 前記第三印刷領域に対応する前記第二基材は接着剤層を介して前記第三基材と接着され、
H 前記第一基材には、前記第一印刷領域と前記第二印刷領域との間、ならびに第二印刷領域と第三印刷領域との間に用紙搬送方向に沿って切断線が設けられ、
I 前記第二基材には、前記第二印刷領域と前記第三印刷領域との間に用紙搬送方向に沿って切断線が設けられている
帳票。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
帳票が、本願発明は「A 単位帳票が用紙搬送方向に切り離し可能に複数連接されてなる連続帳票」であるのに対し、引用発明は単一の帳票である点。

第6 判断
(相違点について)
帳票の技術分野において、プリンタによる印刷等を効率的に行うために、単位帳票が用紙搬送方向に切り離し可能に複数連接されてなる連続帳票を用いることは、例えば、引用文献2(下線は当審で付した。)に、

「【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面等を参照して、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本発明による配送伝票の第1実施形態を分解して示す斜視図である。また、図2は、図1の配送伝票の層構成を示す断面図である。この配送伝票20は、従来の配送伝票10と同様に、プリンタと係合するためのスプロケット孔を有するマージナル部が左右両側外縁部に設けられた連続帳票の一葉である。」

(ここで、「連続帳票の一葉」が単位帳票に相当し、連続帳票において、単位帳票が用紙搬送方向に切り離し可能に複数連接されてなるものであることは、技術常識である。)

と記載されているように慣用技術である。

そして、複数の帳票を作成する際にプリンタによる印刷等を効率的に行う目的で、引用発明に上記慣用技術を適用することに当業者にとって格別の困難性はなく、そのようにして相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

(効果について)
本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び慣用技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(請求人の主張について)
(1)請求人は、審判請求書において、引用文献1に記載された構成では、複写帳票1の一端側及び他端側において、複写帳票片2a、2b及び2cの間がそれぞれ接着剤で接着されているため、複写帳票1から複写帳票片2a、2bを分離する際に、これら複写帳票片が破損する可能性があり、したがって、引用文献1に記載された構成では、本願発明1のように、第二印刷領域に対応する第一基材、及び、第二印刷領域に対応する第一基材が接着された第二基材を破損させることなく容易に分離できるという効果を期待することはできない旨主張する。

しかし、本願の請求項1では、第一印刷領域に対応する第一基材と第二基材との間、及び、第一印刷領域と第二印刷領域とに対応する第二基材と第三基材との間には、接着剤層が設けられていない事項は特定されておらず、請求人の主張は請求項1の記載に基づくものではない。

(2)請求人は、審判請求書において、以下の補正案を提示しているので、念のため検討する(下線は変更箇所を示す)。

[補正案の請求項1]
「A 単位帳票が用紙搬送方向に切り離し可能に複数連接されてなる連続帳票において、
B 前記単位帳票は少なくとも感圧複写部を有するプリンター印字可能な帳票であって、
C 第一基材と第二基材と第三基材が積層されてなり、
D 前記第一基材は、印刷された必要事項の記入欄及び第一印刷領域と、第二印刷領域と、第三印刷領域と、に区分され、
E 前記記入欄及び前記第一印刷領域に対応する前記第一基材と前記第二基材の間ならびに前記第二基材と前記第三基材の間には感圧複写構造が設けられ、
F 第二印刷領域と第三印刷領域に対応する前記第一基材は接着剤層を介して前記第二基材と接着され、
G 前記第三印刷領域に対応する前記第二基材は接着剤層を介して前記第三基材と接着され、
H 前記第一基材には、前記記入欄及び前記第一印刷領域と前記第二印刷領域との間、ならびに第二印刷領域と第三印刷領域との間に用紙搬送方向に沿って切断線が設けられ、
I 前記第二基材には、前記第二印刷領域と前記第三印刷領域との間に用紙搬送方向に沿って切断線が設けられ、
J 前記第一基材、前記第二基材及び前記第三基材は、それぞれの前記第三印刷領域の帳票端に、スプロケットホールが形成されたマージナル片が設けられ、前記第三印刷領域に対応する前記第一基材と前記第二基材との間及び前記第二基材と前記第三基材との間は、接着剤層を介して接着され、
K 前記記入欄及び前記第一印刷領域に対応する前記第一基材と前記第二基材との間、及び、前記記入欄及び前記第一印刷領域と前記第2印刷領域とに対応する前記第二基材と前記第三基材との間には、接着剤層が設けられていないこと
を特徴とする連続帳票。」

そして、請求人は、
ア 補正案の請求項1に係る発明は、構成要件Jを備えることにより、第一基材から記入欄及び第一印刷領域と第二印刷領域とを分離し、第二基材から記入欄及び前記第一印刷領域に対応する部分及び第二印刷領域を分離しても、前記第三印刷領域に対応する第一基材、第二基材及び第三基材の部分を、それぞれのマージナル部が連設された状態で残すことができ(段落0045?0047参照)、各基材に設けられたマージナル部のスプロケット孔を利用して帳票を保管できるという効果を奏すること、

イ 補正案の請求項1に係る発明は、構成要件Kを備えることにより、記入欄及び第一印刷領域に対応する第一基材を第二印刷領域に対応する部分から分離する際に、切断線から切断しやすくなるという機能、作用を期待することができ、また、第二印刷領域に対応する第一基材と第1及び第二印刷領域に対応する第二基材とが接着された部分を第三印刷領域に対応する部分から分離する際に、切断線から切断しやすくなることにより、第二印刷領域に対応する第一基材、及び、第二印刷領域に対応する第一基材が接着された第二基材を、破損させることなく容易に分離できるという効果を奏すること

を主張する。

しかしながら、請求人の上記アの主張について、引用文献1の段落【0023】の、「ノンインパクトプリンタへの給紙方向を横方向と設定した場合」を認定した引用発明において、例えば、引用文献2に示されるような慣用技術である、プリンタと係合するためのスプロケット孔を有するマージナル部が左右両側外縁部に設けられた連続帳票とすることを適用すれば、引用文献1の図2の複写帳票片2a,2b,2cそれぞれの左端と右端にスプロケット孔を有するマージナル部が設けられることになる。そうすると、切り取りミシン10,11,12より3つに分離した場合、分離されたそれぞれがスプロケット孔を有するマージナル部が連接された状態で残すことができることとなり、分離されたそれぞれがマージナル部のスプロケット孔を利用して保管可能なことは明らかである。

また、請求人のイの主張について、引用文献1の接着剤3は、重ね合わせた3枚の複写帳票片をノンインパクトプリンタに対してスムーズに給紙するために、その先頭側となる部分を綴じ合わすためのものであることは明らかであり、また、単位帳票が用紙搬送方向に切り離し可能に複数連接されてなる連続帳票であれば、その切り離し部分に、必ずしも接着材が必要ではないことは、例えば、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平5-155183号公報(下線は当審で付した。)に、

「【0008】
【実施例】図1は本発明に係る帳票の一実施例を示す斜視図、図2は図1のA-Aにおける概略断面図である。帳票は個々の帳票1が図1の一点鎖線方向につながった連続用紙の形態をしているが、図1ではそのうちの1つの帳票1を示している。
【0009】帳票1は、上から順に印字用紙片2、複写用紙片3、説明文用紙片4を重ね合わせ左右の辺に沿って互いに糊付けされた状態となっている。左辺においては、印字用紙片2が下側に折り返され該折返し部分21の表面側が複写用紙片3における移送孔部31より内側の表面側にライン状の接着部分5aで糊付けされているとともに、説明文用紙片4が上側に折り返され該折返し部分41の裏面側が複写用紙片3における移送孔部31より内側の裏面側にライン状の接着部分5bで糊付けされている。また、右辺においては、印字用紙片2の裏面側と複写用紙片3の表面側が両紙片2,3における移送孔部22,32付近でライン状の接着部分6aで糊付けされ、複写用紙片3の裏面側と説明文用紙片4の表面側が両紙片3,4における移送孔部32,42付近でライン状の接着部分6bで糊付けされている。さらに、複写用紙片3には左辺の接着部分5a,5bより内側に切取り可能なミシン目7が長さ方向に設けられている。
【0010】なお、右側の接着部分6a,6bはライン状でなくスポット状に接着されていても、或いは紙ホッチキスのような仮止め的なものであってもよく、またこの部分が接着されていなくてもプリンターにかける上で差支えないものである。
【0011】帳票1は連続用紙の状態でプリンターにかけられ、左辺の移送孔部31及び右辺の移送孔部22,32,42の移送孔に送りピンが係合した状態で送られながら印字用紙片2の表側に所定の事項が打ち出される。この場合、同時に中間の複写用紙片3に同じ所定事項が複写される。このようして印字が行われた後、図2のX-X及びY-Yで示す位置でそれぞれ移送孔部31及び移送孔部22,32,42を含む両サイドがカットされるとともに、プリンター送りとクロスする方向にカットされて個々の状態となる。この場合、左側の移送孔部31は接着部分5a,5bを残すようにしてカットされ、また右側の移送孔部22,32,42は接着部分6a,6bとともにカットされる。」

と記載されているように、当業者の技術常識である。
そうすると、引用発明に、帳票の技術分野の慣用技術である、単位帳票が用紙搬送方向に切り離し可能に複数連接されてなる連続帳票を用いることを適用した際に、接着剤3を用いない構成とすることは当業者にとって容易になし得たものである。

(まとめ)
したがって、本願発明は、引用発明及び慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項については検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-08-28 
結審通知日 2019-09-03 
審決日 2019-09-18 
出願番号 特願2014-117557(P2014-117557)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 槙 俊秋  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤田 年彦
畑井 順一
発明の名称 連続帳票  
代理人 芝 哲央  
代理人 正林 真之  
代理人 林 一好  

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