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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02F 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G02F |
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管理番号 | 1356630 |
審判番号 | 不服2018-15895 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-11-30 |
確定日 | 2019-11-26 |
事件の表示 | 特願2015-158222「光変調装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月16日出願公開、特開2017- 37181、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年8月10日の出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。 平成30年 2月26日付け :拒絶理由通知 平成30年 4月25日 :意見書・手続補正書 平成30年 8月28日付け :拒絶査定(平成30年9月4日送達) 平成30年11月30日 :審判請求書・手続補正書 第2 原査定の概要 原査定(平成30年8月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 1.本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。 2.本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.国際公開第2014/034047号 第3 本願発明 本願請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年11月30日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 入力信号およびバイアス電圧に応じて光を変調する変調部と、前記バイアス電圧を設定するバイアス設定部と、前記バイアス電圧にパイロット信号を含ませるパイロット信号生成部と、前記変調部の出力光から前記パイロット信号を検出する検出部と、を備え、前記変調部は、印加電圧の変化に対して周期的に前記出力光の大きさが変化する特性を有し、前記バイアス設定部は、第1の刻み幅で前記バイアス電圧を変化させながら、前記検出部による検出値の大きさが極大値となるときのポインタ電圧を探索し、前記バイアス電圧に対する前記出力光の周期に基づき予め定められた電圧を、前記パイロット信号と前記検出値との極性の関係に応じて、前記ポインタ電圧に加算または前記ポンタ電圧から減算した電圧を前記探索開始電圧として決定し、前記第1の刻み幅よりも小さい第2の刻み幅で前記探索開始電圧から前記バイアス電圧を変化させながら、前記検出値の大きさが極小値となるときの前記バイアス電圧を探索し、前記探索開始電圧は、前記ポインタ電圧よりも、前記検出値の大きさが極小値となるときの前記バイアス電圧に近い値であることを特徴とする光変調装置。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 「以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。図1を参照すると、光送信機100は、光源1、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調器2、DATA Driver3、バイアス出力回路4、パイロット信号復調回路5、システム6を含んで構成される。システム6はフィードバック部61とトレーニング部62を備えている(図10)。」([0017]) 「図2は、図1に示す光送信機内における、変調器2内部の図である。変調器内部のフォトダイオード(Photodiode:PD)7を用いて光変調信号を光電変換し、光変調信号に含まれるパイロット信号成分をモニタすることで、変調器の最適バイアス電圧に対するズレ量を観測することができる。」([0018]) 「図3は、QPSK変調器のIアーム、QアームにおけるVπカーブ特性を示している。縦軸は光出力強度で、横軸が変調器印加電圧(バイアス電圧)である。印加電圧の変化により、光出力強度も変化する。変調器のバイアス電圧を制御するために、Iアーム、Qアームそれぞれのバイアス電圧に低周波数のパイロット信号を重畳して(バイアス出力回路4)、変調器のPD7から復調したパイロット信号を取り出して(パイロット信号復調回路5)、システム6に伝達し、バイアス出力回路4にフィードバック部61がフィードバックする。」([0019]) 「光出力強度を最大から半分(QUADRATURE点)となるようにバイアス電圧を合わせたとき、パイロット信号の振幅は最大である。そして、光出力強度が最小のNULL点にバイアス電圧を合わせたときも、パイロット信号の振幅は最小となる。また、NULL点を対称としたVπカーブのそれぞれのスロープにおけるパイロット信号は位相が180度反転する。従って、バイアス電圧の変化と、パイロット信号の振幅および、パイロット信号の位相の変化はVπカーブと連動している。このパイロット信号の変化をモニタすることで、NULL点にロックさせるフィードバック制御が可能となる」([0021]) 「本実施の形態におけるバイアス電圧の設定手順は、トレーニング80及びその後のフィードバック制御81を含む。トレーニング80では、起動時のバイアス電圧から出発してバイアス電圧の制御開始電圧(スタート電圧)及び制御方向を確定する。バイアス電圧の制御開始電圧とは、変調器2の動作点のずれを補償するための通常のフィードバック制御81を開始する際のバイアス電圧値の初期値を意味する。バイアス電圧の制御方向とは、通常のフィードバック制御81を開始する際にバイアス電圧を変更する方向(つまり、バイアス電圧の増加方向又は減少方向)を意味する。フィードバック制御81では、トレーニングにおいて確定された制御開始電圧から制御方向に沿ってバイアス電圧を逐次変更しながらパイロット信号を比較し、パイロット信号の振幅が最小(NULL点=バイアス最適点)となるように制御する。」([0022]) 「次に、制御方向の確定について説明する。まず、一点目で位相の正負をパイロット信号復調回路5でモニタする。それによりNULL点を境にした、Vπカーブの下り、又は上りのいずれかに位置しているかを判定する。Vπカーブの下りの場合は電圧を増加方向に、上りの場合は電圧を減少方向にフィードバック部61がバイアス出力回路4を通して制御する(図4A)。すなわち、初期状態において、初期電圧の位相が負(パイロット信号の振幅が負)の場合、変調器印加電圧(バイアス電圧)を増加方向に制御する。初期電圧の位相が正(パイロット信号の振幅が正)の場合、変調器印加電圧(バイアス電圧)を減少方向に制御する。」([0025]) 「図5A(a)及び図5D(d)に示すように、制御点からVπ/2以上離れた点に初期電圧(A[V])201がある場合(Y:整数、この時点でY=1)、パイロット信号の振幅値(B[V])と位相の正負を記憶する(ステップ202)。そして、位相の正負の判断(ステップ203)の後、ステップ204a及び204bでは、バイアス電圧をΔVの可変幅で増加(A+ΔV)又は減少(A-ΔV)させる(この時点でY=2)。なお、ここでは、トレーニングにおけるバイアス電圧の変更ステップ(変更幅)は、例えば、ΔV=Vπ/8とする。」([0027]) 「ステップ206a及び206bでは、この時点でのパイロット信号の振幅値C[V]と位相の正負を記憶する。ステップ207a及び207bでは、パイロット信号の振幅値がB>Cとなるか判断する。パターン(a)及び(d)のケースではB>Cとならないので、ステップ208a及び208bにおいて、バイアス電圧をさらにΔV増加又は減少させ、A-2ΔV又は、A+2ΔVと設定する(この時点でY=3)。そして、この時点でのパイロット信号の振幅値D[V]と位相の正負を記憶する(ステップ209a及び209b)。」([0028]) 「次に、パイロット信号の振幅値がC>Dか判断する(ステップ210a及び210b)。その結果、C>Dとならない場合は、振幅が最大となるまでY回繰り返し(ステップ211a及び211b)、ステップ208a及び208bに戻る。そして、ステップ210a及び210bの判断でC>Dと判断された場合、スタート電圧はA-(Y-1)×ΔV又は、A+(Y-1)×ΔVに変更される(ステップ212a及び212b)。ここでパイロット信号振幅が最大値又はその近傍となる。ここでパターン(a)又は(d)のトレーニング処理を終了とする230。図11の符号80は、上記のトレーニング処理を表している。」([0029]) 「続いてパターン(b)又は(c)の場合の場合について説明する。図5C(c)及び図5D(d)に示すように、変調器印加電圧(バイアス電圧)の増加(減少)に伴い、パイロット信号の振幅も減少する。このため、初期時点と初期時点から2点目のパイロット信号の振幅を比較し(ステップ207a及び207b)、2点目のパイロット信号の振幅が小さい場合は、この2点目のバイアス電圧値に基づいて制御開始電圧を決定する(ステップ220a及び220b)。例えば、2点目のバイアス電圧値を制御開始電圧としてもよい。また、2点目のバイアス電圧値と初期時点のバイアス電圧値の間の補間値を制御開始電圧としてもよい。パターン(b) 又は(c)ついては、ここでトレーニング処理を終了とする。」([0030]) 「なお、上述の例では、トレーニングにおけるバイアス電圧の変更ステップΔVをVπ/8とする例を示したが、この変更ステップΔVの値は一例にすぎない。つまり、トレーニングにおけるバイアス電圧の変更ステップΔVは、その後のフィードバック制御におけるバイアス電圧の変更ステップよりも大きい値であればよい。ただし、トレーニングにおけるバイアス電圧の変更ステップ(変更幅)を大きくし過ぎると、パターン(b)および(c)のときに制御点を大きく越えてしまう。起動時の急激な温度変化による変調器の温度ドリフトがある場合には、可変幅を大きくしすぎることは望ましくない。また、可変幅が小さいと、パターン(a)および (d)のときに制御開始電圧(スタート電圧)を探すトレーニングに時間がかかってしまう。」([0031]) 「次に、トレーニング後のフィードバック制御段階81、つまりバイアス最適点への制御段階について説明する(図11、図12)。制御開始電圧及び制御方向を上記トレーニング処理80で決定した後、一般的方法と同様に、制御開始電圧から制御方向に沿って変調器印加電圧(バイアス電圧)を増加(パターン(a)又は(d)の場合)または減少(パターン(b)又は(c)の場合)させながら、パイロット信号の振幅を逐次比較することにより、NULL点を検出する。」([0036]) したがって、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「光源1、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調器2、DATA Driver3、バイアス出力回路4、パイロット信号復調回路5、システム6を含んで構成される光送信機100であって、変調器2は、変調器内部のフォトダイオード(Photodiode:PD)7を用いて光変調信号を光電変換し、光変調信号に含まれるパイロット信号成分をモニタすることで、変調器の最適バイアス電圧に対するズレ量を観測して最適バイアス電圧を設定するものであり、バイアス電圧の設定手順は、トレーニング80及びその後のフィードバック制御81を含み、トレーニング80は、起動時のバイアス電圧から出発してバイアス電圧の制御開始電圧(スタート電圧)及び制御方向を確定し、フィードバック制御81では、トレーニングにおいて確定された制御開始電圧から制御方向に沿ってバイアス電圧を逐次変更しながらパイロット信号を比較し、パイロット信号の振幅が最小(NULL点=バイアス最適点)となるように制御し、 トレーニング80における制御開始電圧(スタート電圧)及び制御方向は、制御点からVπ/2以上離れた点に初期電圧(A[V])201がある場合(Y:整数、この時点でY=1)、パイロット信号の振幅値(B[V])と位相の正負を記憶し、バイアス電圧をΔVの可変幅で増加(A+ΔV)又は減少(A-ΔV)させ、この時点でのパイロット信号の振幅値C[V]と位相の正負を記憶し、パイロット信号の振幅値がB>Cとなるか判断し、次に、バイアス電圧をさらにΔV増加又は減少させ、A-2ΔV又は、A+2ΔVと設定し、この時点でのパイロット信号の振幅値D[V]と位相の正負を記憶し、パイロット信号の振幅値がC>Dか判断し、C>Dとならない場合は、振幅が最大となるまでY回繰り返し、C>Dと判断された場合、スタート電圧をA-(Y-1)×ΔV又は、A+(Y-1)×ΔVに変更し、また、制御点からVπ/2以上離れていない点に初期電圧(A[V])201がある場合、初期時点と初期時点から2点目のパイロット信号の振幅を比較し、2点目のパイロット信号の振幅が小さい場合は、この2点目のバイアス電圧値に基づいて制御開始電圧を決定し、 フィードバック制御段階81は、制御開始電圧から制御方向に沿って変調器印加電圧(バイアス電圧)を増加、または減少させながら、パイロット信号の振幅を逐次比較することにより、NULL点を検出し、トレーニングにおけるバイアス電圧の変更ステップΔVは、その後のフィードバック制御におけるバイアス電圧の変更ステップよりも大きい値である光送信機100。」 第5 対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 引用発明における「QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調器2」、「フォトダイオード(Photodiode:PD)7」、「バイアス電圧をΔVの可変幅で増加(A+ΔV)又は減少(A-ΔV)させ」、「制御開始電圧(スタート電圧)」、「トレーニングにおけるバイアス電圧の変更ステップΔVは、その後のフィードバック制御におけるバイアス電圧の変更ステップよりも大きい値である」、「光送信機100」は、本願発明における「変調部」、「検出部」、「第1の刻み幅でバイアス電圧を変化」、「探索開始電圧」、「第1の刻み幅よりも小さい第2の刻み幅」、「光変調装置」にそれぞれ相当する。 引用発明における「QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調器2」が、入力信号およびバイアス電圧に応じて光を変調することは明らかであるといえる。 引用発明は、「バイアス出力回路4」を備えるが、バイアス電圧を出力するにあたっては、まず、バイアス電圧が設定されているのであるから、「バイアス電圧を設定するバイアス設定部」を備えることは明らかであるといえる。 引用発明は、「フォトダイオード(Photodiode:PD)7を用いて光変調信号を光電変換し、光変調信号に含まれるパイロット信号成分をモニタ」しているが、これは、本願発明において、「検出部」が「変調部の出力光から前記パイロット信号を検出」することに相当するといえる。また、引用発明は「パイロット信号成分をモニタ」しているのであるから、前提として、パイロット信号が生成されており、「パイロット信号生成部」を備えているの明らかであるといえる。 引用文献1には「図3は、QPSK変調器のIアーム、QアームにおけるVπカーブ特性を示している」と記載されており(上記第4 1)、引用文献1の図3も参酌すれば、引用発明の「QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調器2」は、「印加電圧の変化に対して周期的に前記出力光の大きさが変化する特性を有し」ているといえる。 引用発明における「フィードバック制御段階81」では、「一般的方法と同様に、制御開始電圧から制御方向に沿って変調器印加電圧(バイアス電圧)を増加、または減少させながら、パイロット信号の振幅を逐次比較することにより、NULL点を検出」しているから、引用発明は、「フィードバック制御段階81」で「探索開始電圧からバイアス電圧を変化させながら、検出値の大きさが極小値となるときのバイアス電圧を探索」しているといえる。 したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「入力信号およびバイアス電圧に応じて光を変調する変調部と、前記バイアス電圧を設定するバイアス設定部と、前記バイアス電圧にパイロット信号を含ませるパイロット信号生成部と、前記変調部の出力光から前記パイロット信号を検出する検出部と、を備え、前記変調部は、印加電圧の変化に対して周期的に前記出力光の大きさが変化する特性を有し、前記バイアス設定部は、第1の刻み幅で前記バイアス電圧を変化させて探索開始電圧を決定し、前記第1の刻み幅よりも小さい第2の刻み幅で前記探索開始電圧から前記バイアス電圧を変化させながら、前記検出値の大きさが極小値となるときの前記バイアス電圧を探索する光変調装置。」 (相違点) (相違点1) 探索開始電圧の決定につき、本願発明は、検出部による検出値の大きさが極大値となるときのポインタ電圧を探索し、バイアス電圧に対する出力光の周期に基づき予め定められた電圧を、パイロット信号と検出値との極性の関係に応じて、ポインタ電圧に加算またはポンタ電圧から減算した電圧としたのに対し、引用発明は、制御点からVπ/2以上離れた点に初期電圧(A[V])201がある場合(Y:整数、この時点でY=1)、パイロット信号の振幅値(B[V])と位相の正負を記憶し、バイアス電圧をΔVの可変幅で増加(A+ΔV)又は減少(A-ΔV)させ、この時点でのパイロット信号の振幅値C[V]と位相の正負を記憶し、パイロット信号の振幅値がB>Cとなるか判断し、次に、バイアス電圧をさらにΔV増加又は減少させ、A-2ΔV又は、A+2ΔVと設定し、この時点でのパイロット信号の振幅値D[V]と位相の正負を記憶し、パイロット信号の振幅値がC>Dか判断し、C>Dとならない場合は、振幅が最大となるまでY回繰り返し、C>Dと判断された場合、スタート電圧をA-(Y-1)×ΔV又は、A+(Y-1)×ΔVに変更し、また、制御点からVπ/2以上離れていない点に初期電圧(A[V])201がある場合、初期時点と初期時点から2点目のパイロット信号の振幅を比較し、2点目のパイロット信号の振幅が小さい場合は、この2点目のバイアス電圧値に基づいている点。 (相違点2) 本願発明が、探索開始電圧はポインタ電圧よりも、検出値の大きさが極小値となるときのバイアス電圧に近い値であるのに対し、引用発明では、明示されていない点。 2 相違点についての判断 (1)相違点2についての検討 事案に鑑み、まず、上記相違点2について検討する。 引用発明においては、制御開始電圧(スタート電圧)は、「制御点からVπ/2以上離れた点に初期電圧(A[V])201がある場合(Y:整数、この時点でY=1)、パイロット信号の振幅値(B[V])と位相の正負を記憶し、バイアス電圧をΔVの可変幅で増加(A+ΔV)又は減少(A-ΔV)させ、この時点でのパイロット信号の振幅値C[V]と位相の正負を記憶し、パイロット信号の振幅値がB>Cとなるか判断し、次に、バイアス電圧をさらにΔV増加又は減少させ、A-2ΔV又は、A+2ΔVと設定し、この時点でのパイロット信号の振幅値D[V]と位相の正負を記憶し、パイロット信号の振幅値がC>Dか判断し、C>Dとならない場合は、振幅が最大となるまでY回繰り返し、C>Dと判断された場合、スタート電圧をA-(Y-1)×ΔV又は、A+(Y-1)×ΔVに変更し、また、制御点からVπ/2以上離れていない点に初期電圧(A[V])201がある場合、初期時点と初期時点から2点目のパイロット信号の振幅を比較し、2点目のパイロット信号の振幅が小さい場合は、この2点目のバイアス電圧値に基づいて制御開始電圧を決定」しているのであるから、引用発明においても「探索開始電圧はポインタ電圧よりも、検出値の大きさが極小値となるときのバイアス電圧に近い値」になっているのは明らかであるといえ、この点は実質的な相違点であるとは認められない。 (2)相違点1についての検討 次に、上記相違点1について検討する。 まず、引用発明においては、特に「制御点からVπ/2以上離れていない点に初期電圧(A[V])201がある場合、初期時点と初期時点から2点目のパイロット信号の振幅を比較し、2点目のパイロット信号の振幅が小さい場合は、この2点目のバイアス電圧値に基づいて制御開始電圧を決定」しているのであるから、相違点1は実質的な相違点である。 してみれば、本願発明は引用発明であるということはできない。 次に、上記相違点1に係る本願発明の構成を採用することを当業者が容易に想到し得たか否かについて検討するに、引用発明において、初期時点と初期時点から2点目よりも、「制御点(NULL点)」から離れることになるQUADRATURE点(本願の「ポインタ電圧」)に電圧を設定する動機がない。なぜなら、引用発明は、引用文献1の[0025]?[0030]における、一連の「制御開始電圧」の設定方法をみる限り、できる限り「制御点(NULL点)」に近い場所を「制御開始電圧」としようとしていることが理解できるのであって、既にQUADRATURE点よりも「バイアス最適点(NULL点)」に近い電圧値であることが解っている場合に、あえて、QUADRATURE点に電圧値を変更する理由がないからである。 確かに、引用発明において「制御開始電圧(スタート電圧)は、「制御点からVπ/2以上離れた点に初期電圧(A[V])201がある場合」には、「スタート電圧をA-(Y-1)×ΔV又は、A+(Y-1)×ΔVに変更」しており、この場合には、QUADRATURE点(本願の「ポインタ電圧」)近傍に「制御開始電圧」が設定されることになり、続いて「フィードバック制御段階81」になったときの1回目の制御は、本願発明の「ポインタ電圧に加算または前記ポインタ電圧から減算した電圧を前記探索開始電圧として決定」することと明確に区別がつけられない、あるいは、相違があるとしても設計上の微差といい得るかもしれない。 しかしながら、本願発明は(引用発明における「初期電圧」がどのような値であるのかに関係なく)、まず、ポインタ電圧を探索し、次いでそのポインタ電圧に予め定められた電圧を加算または減算した電圧を探索開始電圧とするものなのであって、引用発明における制御とは発想が異なっているというべきである。 してみれば、本願発明は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-11-12 |
出願番号 | 特願2015-158222(P2015-158222) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G02F)
P 1 8・ 113- WY (G02F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 野口 晃一 |
特許庁審判長 |
小松 徹三 |
特許庁審判官 |
瀬川 勝久 近藤 幸浩 |
発明の名称 | 光変調装置 |
代理人 | 特許業務法人YKI国際特許事務所 |