• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C08G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 C08G
管理番号 1356686
審判番号 不服2018-11949  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-06 
確定日 2019-11-26 
事件の表示 特願2014-188299「難燃断熱材組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月23日出願公開、特開2015- 78357、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年9月16日(優先権主張 平成25年9月13日。以下、「優先日」という。)の出願であって、平成29年11月2日に手続補正書が提出され、平成30年2月8日付けで拒絶理由が通知され、同年4月13日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年6月5日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年9月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?7に係る発明は、平成30年4月13日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、請求項1?7に係る発明を、順に「本願発明1」等という。)。

「【請求項1】
ポリオール化合物、難燃剤、難燃助剤、整泡剤、発泡剤および三量化触媒を含むポリオール液(X)と、ポリイソシアネート化合物を含むイソシアネート液(Y)と、を少なくとも有し、
前記三量化触媒が、前記イソシアネート液(Y)に含まれるポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の三量化反応の触媒であり、
前記難燃剤が、赤リンおよびリン酸エステルを少なくとも含み、
前記難燃助剤が、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、金属水酸化物および針状フィラーからなる群より選ばれる少なくとも一つを含み、
前記ポリオール化合物と前記ポリイソシアネート化合物とからなるウレタン樹脂100重量部に対して、前記難燃剤が、5.5?80重量部の範囲であることを特徴とする、スプレーに使用するための難燃断熱材組成物。
【請求項2】
前記難燃助剤に含まれる、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、金属水酸化物および針状フィラーからなる群より選ばれる少なくとも一つが、それぞれ前記ウレタン樹脂100重量部に対して、3.0?90重量部の範囲である、請求項1に記載のスプレーに使用するための難燃断熱材組成物。
【請求項3】
前記三量化触媒が、前記ウレタン樹脂100重量部に対して、0.01?10重量部の範囲である、請求項1または2に記載のスプレーに使用するための難燃断熱材組成物。
【請求項4】
請求項1?3のいずれかに記載のスプレーに使用するための難燃断熱材組成物の使用方法であって、
前記ポリオール液(X)と、前記イソシアネート液(Y)とを、混合後に噴霧するステップ(1)、
または、
前記ポリオール液(X)と、前記イソシアネート液(Y)とを、噴霧後に混合するステップ(2)、
を有する、スプレーに使用するための難燃断熱材組成物の使用方法。
【請求項5】
前記スプレーに使用するための難燃断熱材組成物を、構造材にスプレーするステップを有する、請求項4に記載のスプレーに使用するための難燃断熱材組成物の使用方法。
【請求項6】
前記構造材上で、前記スプレーに使用するための難燃断熱材組成物を硬化させるステップを有する、請求項5に記載のスプレーに使用するための難燃断熱材組成物の使用方法。
【請求項7】
請求項4?6のいずれかに記載の難燃断熱材組成物の使用方法により、前記スプレーに使用するための難燃断熱材組成物を硬化して得られる、硬質ポリウレタンスプレーフォーム。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、以下のとおりである。

理由1(新規性).この出願の請求項1?7に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2(進歩性).この出願の請求項1?7に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2010-184974号公報
引用文献2:特開平5-209038号公報

第4 当審の判断
1 引用文献1に記載された事項及び引用発明
引用文献1には、以下のとおりの記載がある。

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも有機イソシアネート、活性水素含有化合物、水、ウレタン化触媒、難燃剤及び整泡剤を用いてなるポリウレタン発泡体からなり、加熱発泡させていない黒曜石粉末および膨張性黒鉛を、それぞれ活性水素含有化合物に対して重量比で40PHR以上、1500PHR以下、含有してなる耐火断熱被覆材。
【請求項2】
前記難燃剤として、液状燐酸エステル類及び/又は液状ハロゲン化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の耐火断熱被覆材。
【請求項3】
硼砂、硼酸、(ポリ)燐酸アンモニウム、セピオライト、カオリン、クレー、超微粉粒子状無水シリカ、及びホワイトカーボンから選ばれた1種または2種以上を含有してなる請求項1又は請求項2記載の耐火断熱被覆材。」

(2)「 【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は発泡ウレタンの優れた断熱性を損なうことなく、充分な防・耐火性を持ち、天井、壁、鉄骨等構造物を火炎から長時間にわたって保護できる耐火断熱被覆材を提供することにある。」

(3)「【0009】
すなわち、本発明においては水、ウレタン化触媒と有機イソシアネートと反応しうる活性水素含有基を2以上有する活性水素含有化合物成分(ポリオール)を含む第一液と、有機イソシアネート成分を含む第二液のポリウレタン発泡体形成組成物からなり、第一液及び/又は第二液に、加熱発泡させていない黒曜石粉末、膨張性黒鉛を一定量以上含み、難燃剤、整泡剤、発泡剤等さらに必要に応じ、硼砂、硼酸、(ポリ)燐酸アンモニウム、セピオライト、カオリン、クレー、超微粉粒子状無水シリカ、ホワイトカーボンから選ばれた1種または2種以上を配合したことを特徴とする耐火断熱被覆材(発泡性耐火化合物)を提供するものである。ここで前記無機物粉体はスプレー等によって吹き付け施工される場合、その一部または全部を吹き付け時に粉体のまま同時に吹き付け、より高濃度に配合できるようにすることが出来る。」

(4)「【0014】
黒曜石粉末及び膨張性黒鉛の含有量は、ポリウレタン樹脂の種類、所望の膨張倍率等によって適宜設定することが出来るが、通常は活性水素含有化合物100質量部に対し、重量比で40PHR以上望ましくは60PHR以上、1500PHR以下で使用する。なんとなればポリウレタン樹脂、難燃剤等が熱分解し消失しても、40PHR以上あればこれら黒曜石粉末及び膨張性黒鉛が膨張して耐火断熱燃焼殻を形成し、充分な難燃耐火性能を発揮するからであり1500PHRをこえると強度が著しく低下し、耐火断熱被覆材としての機能を果たせなくなるからである。尚、黒曜石粉末及び膨張性黒鉛の含有量が、活性水素含有化合物100質量部に対し、重量比で60PHR以上であると、充分な防・耐火性を有する燃焼殻が形成される利点がある。このため、この60PHR以上が黒曜石粉末及び膨張性黒鉛の含有量の望ましい範囲である。
【0015】
本発明においては、充分な難燃性、耐火性を実現するため、難燃剤を加えるが、この難燃剤は、燐酸化合物、ハロゲン化合物、アンチモン化合物、水酸化金属化合物、赤燐等が知られており、いずれも使用することができるが、望ましくは、液状燐酸エステル化合物、液状ハロゲン化合物等が望ましい。なんとなれば、液状品を用いることによって組成物の粘度を低く抑え、作業性を向上させることが出来、また黒曜石粉末及び膨張性黒鉛をより多量に配合することが出来るからである。液状燐酸エステル化合物、液状ハロゲン化合物等は使用する材料によっても変化するが、通常ポリオール成分に対して5PHR?200PHR望ましくは10PHR?150PHR程度が望ましい。5PHRより少ないと充分な難燃性を示すことが出来ず、200PHRより多いと発泡体の機械的強度が低下してしまい使用に耐えられない。」

(5)「【発明の効果】
【0017】
本発明の耐火断熱被覆材は、ポリウレタン発泡体を用いたものであるから、現場での発泡のしやすさや、優れた断熱性を有すると共に、難燃材により難燃性化したり、黒曜石粉末及び膨張性黒鉛が膨張して耐火断熱殻が形成され、充分な難燃耐火性能を発揮することになり、従来のポリウレタン発泡体の持つ断熱性を保持しながら充分な防・耐火性性能を付与でき、優れた耐火難燃材料を提供し得ることとなる。また、黒曜石粉末を加熱発泡させずに用いたものであるから、容積が嵩むことは無く、施工機器から吐出する際に粒径が小さく、多量に配合することができ、また比重が小さくて、均一となり、取り扱いが容易となる利点がある。
【0018】
この難燃剤として、液状燐酸エステル化合物、液状ハロゲン化合物を用いた場合には、液状品であるから、組成物の粘度を低く抑え、作業性を向上させることが出来、また黒曜石粉末及び膨張性黒鉛をより多量に配合することが可能となる。
【0019】
ここで硼砂、硼酸、(ポリ)燐酸アンモニウム、セピオライト、カオリン、クレー、超微粉粒子状無水シリカ、及びホワイトカーボンから選ばれた1種または2種以上を加えることにより、ポリウレタン樹脂が熱分解した後の耐火断熱殻をより安定させることができる利点がある。また、セピオライト、カオリン、クレー、超微粉粒子状無水シリカ、ホワイトカーボンは混合溶液の流動性を減らし、スプレー等を用いて組成物を壁面等に塗布したとき、垂れにくくして作業性を改善できる。」

(6)「【0021】
本発明に使用される水は、ポリイソシアネート化合物との反応により、二酸化炭素を発生し発泡剤として作用する。その水の使用量は、目的とする発泡体の密度によって決められ、活性水素含有化合物100重量部に対して1.5?20重量部が適当である。水の使用量の割合が1.5重量部より低いと発泡体の密度が高くなりすぎ、逆に20重量部を超えると機械的強度が低下してしまい使用に耐えられない。
・・・
【0026】
本発明では水とともに発泡剤を用い、発泡させることができる。発泡剤としては、フッ素化炭化水素、メチレンクロライド、ペンタン、シクロペンタン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル等の低沸点溶剤などがあげられる。」

(7)「 【0029】
難燃剤として用いる液状燐酸エステル、液状ハロゲン化合物とはトリスフェニルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、トリスクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、トリス(t-ブチル化フェニル)フォスフェート、トリス(i-プロピル化フェニル)フォスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、1,3-フェニレンビス(ジフェニルフォスフェート)、1,3-フェニレンビス(ジキシレニル)フォスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルフォスフェート)等芳香族縮合燐酸エステル類、トリス(ジクロロプロピル)フォスフェート、トリス(クロロプロピル)フォスフェート、トリス(クロロエチル)フォスフェート、2,2ビス(クロロメチル)トリメチレンビス(ビス(2-クロロエチル)フォスフェート)、ポリオキシアルキレンビスジクロロアルキルフォスフェート、等の含ハロゲン縮合燐酸エステル類、トリメチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリブトキシエチルフォスフェート、トリラウリルフォスフェート、とリセチルフォスフェート、トリステアリルフォスフェート、トリオレイルフォスフェート等の正燐酸エステル類、塩素化パラフィン等が例示される。
【0030】
前記難燃剤に、難燃性を補助する等のため、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA及びこれのエポキシオリゴマー及びカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAビス(ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビス(アリールエーテル)、テトラブロモビス(ペンタブロモフェニル)エタン、1,2ビス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)エタン、2,4,6-トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン、臭素化ポリスチレン、ポリ臭素化スチレン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモベンジルアクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート等の臭素系難燃剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機系難燃剤等を加えることが出来る。」

(8)「【0032】
ポリウレタン樹脂の発泡方法としては、ポリウレタンの技術分野において公知の発泡方法を限定なく使用することができる。例えば、連続製造法、不連続製造法、スプレー法、注入法等が使用できる。特に、スプレー法は施工対象物に2成分の原液をスプレー装置で混合し吹き付ける方法で、対象物に到達すると発泡・硬化し、施工が容易なため、有効な方法である。また、連続製造法は連続コンベア上において、下面材上に混合原液を流し、上面材を供給して連続発泡させる方法であり、所定の長さに裁断することにより、サンドイッチパネルを製造することができる。このようにして得られた発泡性耐火化合物は、ポリウレタン発泡体塗装機により構造物の屋根、壁や間仕切りなど断熱、結露防止、防・耐火などを求められる部位に吹き付け、または空隙に注入することで、従来のポリウレタン発泡体の特性に更に防・耐火材として新たな用途に利用することが出来る。
【0033】
本発明の硬質の断熱耐火被覆材の密度は、10kg/m^(3)?900kg/m^(3)であることが好ましく、より好ましくは20?800kg/m^(3)である。」

(9)「【実施例】
【0034】
<実施例1>
以下の、b?lの材料及び、水、発泡剤、整泡剤を、表1に示す配合で混合した。そして、この混合組成物と、材料a(4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート)を表1の配合で混合し、混合後に直ちに200mm角の離型処理した容器に注入し、発泡させて、実施例1の耐火断熱被覆材を得た。
【0035】
a)4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート:スミジュール44V-20(住化バイエルウレタン)、NCO%=31.0%
b)トリメチロールプロパンとプロピレンオキサイドを付加重合した分子量約400の3官能ポリオール
c)グリセリンとプロピレンオキサイドを付加重合した分子量約3000の3官能ポリオール
d)アジピン酸とネオペンチルグリコールを縮重合した水酸基当量500の2官能ポリオール
e)第4級アンモニウム塩触媒(Dabco TMR)(エアプロダクツ)
f)ジブチル錫ジラウレート12%液:TN-12(堺化学)
g)トリス(クロロプロピル)フォスフェート
h)黒曜石粉末:フヨーエクス0号(芙蓉パーライト)
i)膨張性黒鉛:SYZR1002(三洋貿易)
j)燐酸アンモニウム:タイエンS(太平化学産業)
k)水酸化アルミニウム:ハイジライトH-310(昭和電工)
l)セピオライト:ミラクレーLFC-2Z(近江鉱業)
整泡剤:ポリジメチルシロキサンのオキシアルキレン共重合体(SZ-580 東レ、ダウコーニング株式会社)
発泡剤:1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)
【0036】
<実施例2?5>
材料を表1の配合に変える他は、上記実施例1と同様にして、実施例2?5の耐火断熱被覆材を得た。
【0037】
<比較例1,2>
材料を表1の配合に変える他は、上記実施例1と同様にして、比較例1,2の耐火断熱被覆材を得た。
【0038】
<実施例6>
材料h(黒曜石粉末)を除いた、b?lの材料及び、水、発泡剤、整泡剤を、表1に示す配合で混合した。そして、スプレー装置(株式会社カワタ製)を用いて、混合した組成物と、材料a(4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート)を表1の配合でミキシングしながら、材料h(黒曜石粉末)を表1の配合となるように粉体のまま同時に吹き付け、硬化発泡させ耐火断熱被覆材を得た。
【0039】
【表1】

【0040】
<燃焼試験>
実施例1?6および比較例1,2の耐火断熱被覆材を、それぞれ、50mm×200mm×200mmの板状にカットして試験片とした。各試験片の表面を1300℃のバーナーで加熱するとともに、裏面温度の経時変化を測定し、耐火性能を評価した。結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
表2の結果に示されるように、実施例1?6の試験片は充分な耐火性を発揮したが、比較例の試験片は、時間の経過とともに耐火性が失われていった。
【0043】
また、上記燃焼試験において、バーナーで加熱した各試験片の外殻の安定性を評価した。その結果、比較例1の試験片は加熱後の外殻が弱く、また、外殻の剥離が認められた。比較例2の試験片の外殻は強度はあったものの、体積が減容しており、また外殻が所々で剥離しており、見た目にも耐火性を失っていると認められた。これに対して、実施例1?6の試験片は、バーナー加熱後であっても、外殻は十分な強度を有しており、また、外殻の剥離も認められず、実施例1?6の試験片の外殻は優れた安定性を有していることがわかった。」

引用文献1の実施例6(摘記(9))は、摘記(3)及び(8)にも着目すると、材料b及びcの活性水素含有化合物成分(ポリオール)、材料e、材料g、材料i?k、水及び整泡剤を、スプレー装置を用いて混合した第一液と、材料aの有機イソシアネート成分である第二液とをミキシングしたポリウレタン発泡体形成組成物と、材料hの黒曜石粉末を同時に吹き付け、これを硬化発泡して断熱耐火被覆材を得たものである。
ここで、実施例6のうち、ミキシングされスプレー装置で吹き付ける前の第一液と第二液との組成物に着目すると、引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる。

「トリメチロールプロパンとプロピレンオキサイドを付加重合した分子量約400の3官能ポリオール85重量部、グリセリンとプロピレンオキサイドを付加重合した分子量約3000の3官能ポリオール67重量部、第4級アンモニウム塩触媒(Dabco TMR(エアプロダクツ))1重量部、トリス(クロロプロピル)フォスフェート50重量部、膨張性黒鉛(SYZR1002(三洋貿易))50重量部、燐酸アンモニウム(タイエンS(太平化学産業))40重量部、水酸化アルミニウム(ハイジライトH-310(昭和電工))60重量部、水3重量部、及び整泡剤(ポリジメチルシロキサンのオキシアルキレン共重合体(SZ-580 東レ、ダウコーニング株式会社))3重量部を含む第一液と、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(スミジュール44V-20(住化バイエルウレタン)、NCO%=31.0%)150重量部を含む第二液とがミキシングされ、スプレー装置で吹き付けられるためのポリウレタン発泡体形成組成物。」(以下、「引用発明1」という。)

「引用発明1のスプレー装置で吹き付けられるためのポリウレタン発泡体形成組成物をスプレー装置で吹き付ける方法。」(以下、「引用発明2」という。)

「引用発明1のスプレー装置で吹き付けられるためのポリウレタン発泡体形成組成物と、黒曜石粉末(フヨーエクス0号(芙蓉パーライト))810重量部とを同時に吹き付けて硬化発泡させた、比重が0.6である耐火断熱被覆材。」(以下、「引用発明3」という。)

2 原査定の理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「トリメチロールプロパンとプロピレンオキサイドを付加重合した分子量約400の3官能ポリオール」及び「グリセリンとプロピレンオキサイドを付加重合した分子量約3000の3官能ポリオール」、並びに「第一液」は、それぞれ本願発明1の「ポリオール化合物」及び「ポリオール液(X)」に相当する。
引用発明1の「4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(スミジュール44V-20(住化バイエルウレタン)、NCO%=31.0%)」及び「第二液」は、それぞれ本願発明1の「ポリイソシアネート化合物」及び「イソシアネート液(Y)」に相当する。
引用発明1の「トリス(クロロプロピル)フォスフェート」は、難燃剤として用いられる含ハロゲン縮合燐酸エステル類であるから(摘記1(7))、本願発明1の「難燃剤」である「リン酸エステル」に相当する。
引用発明1の「水酸化アルミニウム(ハイジライトH-310(昭和電工))」は、難燃性を補助する等のため難燃剤に加えるものであるから(摘記1(7))、本願発明1の「難燃助剤」として用いられる「金属水酸化物」に相当する。
引用発明1の「水」は、発泡剤として作用するから(摘記1(6))、本願発明1の「発泡剤」に相当する。
引用発明1の「第4級アンモニウム塩触媒(Dabco TMR(エアプロダクツ))」は、引用文献2の段落【0029】によると、イソシアヌレート環を合成する三量化触媒として機能するものであるから、本願発明1の「三量化触媒」に相当する。

そうすると、本願発明1と引用発明1とは、
「ポリオール化合物、難燃剤、難燃助剤、整泡剤、発泡剤および三量化触媒を含むポリオール液(X)と、ポリイソシアネート化合物を含むイソシアネート液(Y)と、を少なくとも有し、
前記三量化触媒が、前記イソシアネート液(Y)に含まれるポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の三量化反応の触媒であり、
前記難燃剤が、リン酸エステルを少なくとも含み、
前記難燃助剤が、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、金属水酸化物および針状フィラーからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、スプレーに使用するための組成物。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:難燃剤に関して、本願発明1は、「赤リン及びリン酸エステルを少なくとも含み」、かつ、「前記ポリオール化合物と前記ポリイソシアネート化合物とからなるウレタン樹脂100重量部に対して、前記難燃剤が、5.5?80重量部の範囲である」のに対して、引用発明1は、含ハロゲン縮合燐酸エステルである「トリス(クロロプロピル)フォスフェート」を含むが、赤リンを含まないものである点。

相違点2:本願発明1は「難燃断熱材組成物」であるのに対して、引用発明1の「ポリウレタン発泡体形成組成物」が難燃断熱材になる組成物であるか否かが不明である点。

イ 判断
(ア)新規性について
上述のように、引用発明1は赤リンを含有しないものであるから、相違点1は実質的な相違点であり、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は引用発明1ではない。

(イ)進歩性について
まず、相違点1について検討する。
a 引用文献1には、難燃剤に関して、「この難燃剤は、燐酸化合物、ハロゲン化合物、アンチモン化合物、水酸化金属化合物、赤燐等が知られており、いずれも使用することができるが、望ましくは、液状燐酸エステル化合物、液状ハロゲン化合物等が望ましい。なんとなれば、液状品を用いることによって組成物の粘度を低く抑え、作業性を向上させることが出来、また黒曜石粉末及び膨張性黒鉛をより多量に配合することが出来るからである。」(摘記1(4))と記載され、難燃剤として、燐酸化合物又はハロゲン化合物と同列で、赤燐を使用できることが記載されている。
しかしながら、引用文献1には、上記燐酸化合物又はハロゲン化合物と赤燐とを同時に使用することは記載されていないし、難燃剤として液状燐酸エステル化合物や液状ハロゲン化合物が望ましいことが記載されるとおり、実施例では、液状燐酸エステル化合物又は液状ハロゲン化合物に該当するトリス(クロロプロピル)フォスフェートを用いており、赤燐を用いた実施例は記載されていない。
そうすると、引用発明1において、難燃剤として更に赤リンを添加して赤リンとリン酸エステルを併用し、ウレタン樹脂100重量部に対して、赤リン及びリン酸エステルを5.5?80重量部の範囲で添加することが動機付けられるとはいえない。

b また、当審が職権調査で発見した特開2012-97169号公報(以下、「引用文献3」という。)には、硬質ポリウレタンフォームの難燃剤としてリン酸エステルと赤燐を併用することが記載され(特に、請求項1、段落【0014】、【0025】、実施例)、国際公開第2013/003261号、特開2013-172049号公報及び特開昭62-89763号公報(以下、順に「引用文献4」、「引用文献5」及び「引用文献6」という。)には、ポリウレタン樹脂の難燃剤として赤リンとリン酸エステルを併用することが記載されている。しかしながら、引用文献3?6に記載される上記難燃剤は、いずれもスプレー装置で吹き付けられるポリウレタンフォーム用組成物に用いられるものではないし、引用文献4?6に記載される上記難燃剤は、ポリウレタンフォーム用組成物に用いられるものでもないから、スプレー装置で吹き付けられるためのポリウレタン発泡性形成組成物に用いられる難燃剤として、赤リンとリン酸エステルを併用することは、本願優先日前に周知の事項であるとはいえない。
そうすると、引用発明1において、引用文献3?6に記載された事項に基づき、難燃剤として更に赤リンを添加して、赤リンとリン酸エステルを併用し、ウレタン樹脂100重量部に対して、赤リン及びリン酸エステルを5.5?80重量部の範囲で添加することが動機付けられるとはいえない。

c また、ポリウレタン用難燃剤として赤リンを用いることは、本願優先日前に周知の事項であるといえるが(引用文献3?6を参照)、引用発明1が解決しようとする課題は、発泡ポリウレタンの優れた断熱性を損なうことなく、充分な防・耐火性を持つ耐火断熱被覆材の提供であり、引用発明1に黒曜石粉末を添加した組成物が加熱された際に、黒曜石粉末及び膨張性黒鉛が膨張して耐火断熱燃焼殻を形成することを解決手段とするものである(摘記1(4)及び(5))。そして、引用発明1のポリウレタン発泡体形成組成物には、必須成分である難燃剤として、上記aで述べたように、難燃剤として望ましい液状燐酸エステル化合物又は液状ハロゲン化合物に該当するトリス(クロロプロピル)フォスフェートを既に含有しており、このような引用発明1に上記周知の事項を適用して、更なる難燃剤として赤リンを添加し、ウレタン樹脂100重量部に対して、赤リン及びリン酸エステルを5.5?80重量部の範囲で添加することが動機付けられるとはいえない。

d そして、本願発明1は、「比重が小さく断熱性および難燃性に優れた硬質ポリウレタンフォームを簡単に得ることができる」(本願明細書の段落【0017】)という効果を奏するものであり、ISO-5660の試験方法に準拠した測定方法による総発熱量が小さく、総発熱量の測定後の試験サンプル(残渣状態)の縦横収縮が小さいという効果も、実施例1?22の評価結果から確認できる。
一方、引用文献1には、引用発明1に適量の黒曜石粉末を添加することにより、所定の強度を有する耐火断熱殻の形成に伴い防火・耐火性に優れるという効果(摘記1(5)及び(9))が示されているにとどまり、本願発明1の上記効果が予測し得るとはいえない。また、引用文献2(段落【0048】等)、引用文献3(段落【0014】等)、引用文献4(段落【0046】等)、引用文献5(段落【0011】及び【0014】等)、及び引用文献6(第2頁右下欄6?10行等)を見ても、ハロゲンフリーの難燃性ポリウレタンを提供できることなどが記載されているにとどまり、本願発明1の上記効果が予測し得るとはいえない。

e そうすると、引用発明1において、更に赤リンを添加し、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とからなるウレタン樹脂100重量部に対して、赤リン及びリン酸エステルを5.5?80重量部の範囲で添加することが、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

f 以上のとおりであるから、本願発明1は、相違点2について検討するまでもなく、引用発明1及び引用文献2?6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本願発明2及び3について
本願発明2及び3は、本願発明1を直接又は間接的に引用して、更に限定した発明であるから、上記(1)イで本願発明1について述べたのと同じ理由により、引用文献1に記載された発明であるとはいえないし、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本願発明4?6について
本願発明4?6は、本願発明1を直接又は間接的に引用する「スプレーに使用するための難燃断熱材組成物の使用方法」に係る発明であり、本願発明4は、上記難燃断熱材組成物において、「前記ポリオール液(X)と、前記イソシアネート液(Y)とを、混合後に噴霧するステップ(1)、または、前記ポリオール液(X)と、前記イソシアネート液(Y)とを、噴霧後に混合するステップ(2)、を有する」ものである。

本願発明4と引用発明2とを対比すると、引用発明2における第一液と第二液とが「ミキシングされ、スプレー装置で吹き付けられるためのポリウレタン発泡体形成組成物をスプレー装置で吹き付ける方法」は、本願発明4の「前記ポリオール液(X)と、前記イソシアネート液(Y)とを、混合後に噴霧するステップ(1)」に相当する。

そうすると、両者は以下の点で相違し、その余の点で一致する。
相違点3:本願発明4は、難燃断熱材組成物の難燃剤として「赤リン及びリン酸エステルを少なくとも含み」、「前記ポリオール化合物と前記ポリイソシアネート化合物とからなるウレタン樹脂100重量部に対して、前記難燃剤が、5.5?80重量部の範囲である」のに対して、引用発明2は、ポリウレタン発泡体形成組成物の難燃剤として、含ハロゲン縮合燐酸エステルである「トリス(クロロプロピル)フォスフェート」を含むが、赤リンを含まないものである点。

相違点4:本願発明4は、「スプレーに使用するための難燃断熱材組成物の使用方法」であるのに対して、引用発明2の「ポリウレタン発泡体形成組成物」が難燃断熱材になる組成物であるか否かが不明である点。

相違点3について検討すると、相違点3は相違点1と同内容であり、上記(1)アで述べたように、実質的な相違点であるから、相違点4について検討するまでもなく、本願発明4は引用文献1に記載された発明ではない。
また、本願発明1について上記(1)イで述べたのと同じ理由により、本願発明4は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そして、本願発明5及び6は、本願発明4を直接又は間接的に引用して、更に限定した発明であるから、本願発明5及び6についても、本願発明4と同様に、引用文献1に記載された発明でないし、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)本願発明7について
本願発明7は、本願発明1を間接的に引用し、上記組成物を「硬化して得られる」ことを特定しただけの硬質ポリウレタンスプレーフォームに係る発明である。

本願発明7と引用発明3とを対比すると、引用発明3の比重は0.6(密度600kg/m^(3))であり、硬質の断熱耐火被覆材における密度10?900kg/m^(3)(摘記1(8))に包含されるから、引用発明3の「吹き付け、硬化発泡させた比重0.6である耐火断熱被覆材」は、本願発明7の「硬質ポリウレタンスプレーフォーム」に相当する。

そうすると、両者は以下の点で相違し、その余の点で一致する。
相違点5:難燃剤に関して、本願発明7は、「赤リン及びリン酸エステルを少なくとも含み」、かつ、「前記ポリオール化合物と前記ポリイソシアネート化合物とからなるウレタン樹脂100重量部に対して、前記難燃剤が、5.5?80重量部の範囲である」のに対して、引用発明3は、含ハロゲン縮合燐酸エステルである「トリス(クロロプロピル)フォスフェート」を含むが、赤リンを含まないものである点。

相違点6:本願発明7は「難燃断熱材組成物を硬化して得られる、硬質ポリウレタンスプレーフォーム」であるのに対して、引用発明3は、「ポリウレタン発泡体形成組成物と、黒曜石粉末(フヨーエクス0号(芙蓉パーライト))810重量部とを同時に吹き付けて硬化発泡させた、比重が0.6である耐火断熱被覆材」であり、これが硬質ポリウレタンスプレーフォームであるか否かが不明である点。

相違点5について検討すると、相違点5は相違点1と同内容であり、上記(1)アで述べたように、実質的な相違点であるから、相違点6について検討するまでもなく、本願発明7は引用文献1に記載された発明ではない。
また、本願発明7は、本願発明1について上記(1)イで述べたのと同じ理由により、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)小括
したがって、本願発明1?7は、引用文献1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するものではないし、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。

第5 むすび
以上のとおり、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-11-12 
出願番号 特願2014-188299(P2014-188299)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (C08G)
P 1 8・ 121- WY (C08G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中村 英司  
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 近野 光知
井上 猛
発明の名称 難燃断熱材組成物  
代理人 田口 昌浩  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ