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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1356702
審判番号 不服2018-4960  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-11 
確定日 2019-11-06 
事件の表示 特願2015-510363「靱帯を糸で切断するための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月 7日国際公開,WO2013/165900,平成27年 6月11日国内公表,特表2015-516232〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2013年(平成25年)4月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年(平成24年)4月30日 米国,2013年(平成25年)4月25日 米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年10月 8日 :国内書面提出
平成27年 3月16日 :手続補正書提出
平成29年 2月24日付け:拒絶理由通知書
平成29年 7月26日 :意見書,手続補正書の提出
平成29年12月 5日付け:拒絶査定
平成30年 4月11日 :審判請求書,手続補正書の提出
平成30年 8月30日 :上申書の提出

第2 平成30年4月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年4月11日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。)
「体内の軟組織を切断するためのシステムであって,
実質的に滑らかで摩耗のない表面を有する柔軟な糸状の切断要素と,
前記軟組織に隣接する体内への伸長と,前記糸状の切断要素の両端が前記体の単一のアクセス口から伸長するように,前記糸状の切断要素の前記軟組織の周りへの経路指定とを容易にするように構成された,中空の誘導の経路指定器具と,
を備え,
前記経路指定器具は,経路指定過程において,液体を前記体内に注入して各種組織を分離するために手術部位を膨張させ,経路を経路指定するためのアクセスを提供するように構成され,
前記経路指定器具による前記経路指定過程において,前記切断要素が前記体内の前記軟組織の第1の側面を通過し,そして,生体の外に戻り,そして前記体内の前記軟組織の第2の側面を通過し,ループを形成する,
システム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,平成29年7月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「体内の軟組織を切断するためのシステムであって,
50μm以下の平均的な表面粗さを有する実質的に滑らかで摩耗のない表面を有する柔軟な糸状の切断要素と,
前記軟組織に隣接する体内への伸長と,前記糸状の切断要素の両端が前記体の単一のアクセス口から伸長するように,前記糸状の切断要素の前記軟組織の周りへの経路指定とを容易にするように構成された経路指定器具と,
を備えるシステム。」

2 補正の適否
(1)補正の目的について
本件補正は,本件補正前の請求項1に「50μm以下の平均的な表面粗さを有する実質的に滑らかで摩耗のない表面を有する柔軟な糸状の切断要素」という記載を,「実質的に滑らかで摩耗のない表面を有する柔軟な糸状の切断要素」という記載に補正して本件補正後の請求項1とするものであるところ,本件補正前の請求項1に記載されていた「50μm以下の平均的な表面粗さを有する」という発明特定事項を削除する補正事項を含むものに相当する。
したがって,本件補正は,直列的に記載された発明特定事項の削除を行うものであって,上記削除によって上位概念から下位概念への変更を行うものともいえないから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。
また,上記補正事項が,請求項の削除,誤記の訂正あるいは明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは,明らかである。

(2)むすび
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり,同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年4月11日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成29年7月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1に係る発明は,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1:米国特許出願公開第2011/0087255号明細書

3 引用文献に記載された発明
(1)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,米国特許出願公開第2011/0087255号明細書(2011年(平成23年)4月14日出願公開。以下「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある(日本語訳は当審において翻訳したものであり,下線は当審で付したものである。)。
「[0004]As shown in FIG. 1 , which illustrates a normal or non-compressed carpal tunnel, the carpal tunnel 5 is the area of the wrist and palm of the hand 10 formed by a U-shaped cluster of bones 15 that form a hard floor and two walls of the tunnel 5. The roof of the tunnel is formed by the transverse carpal ligament (TCL) 20 which attaches to the wrist bones. Within the confines of the tunnel 5 is the median nerve 25 and the flexor tendons 30 of the thumb and fingers.」
(日本語訳:正常又は非圧縮の手根管を示す図1を参照すると,手根管5は,硬い床と手根管の2つの壁を形成するU字型の骨の群15によって形成された手10の手首と手のひらの領域である。手根管の屋根は,手首の骨に取り付けられている横手根靱帯(TCL)20によって形成されている。手根管5の中には,親指及び指の正中神経25及び屈筋腱30がある。)

「[0020]Disclosed herein is a system for releasing the transverse carpal ligament to decompress the median nerve. 」
(日本語訳:本明細書に開示されているのは,横手根靱帯を解放して正中神経の圧迫を軽減するためのシステムである。)

「[0168]As can be understood from FIGS.12A-12D, the elongated body 40 may be introduced through an introducer 35 into the carpal tunnel region and into its proper position beneath the TCL but without exiting the hand 10 (FIG.12A). As indicated in FIG.12B, a second elongated body 85 having a hook end 90 is introduced through the introducer 35 into the subcutaneous tissue above the TCL. The hook end 90 of the second elongated body 85 is advanced towards the distal end 43 of the elongated body 40, such as the ball point tip 42 of the elongated body 40, and coupled to the distal end 43 of the elongated body 40. In some embodiments, the first elongated body 40 and/or the second elongated body 85 may be formed of an abrasive material such as abrasive sutures and introduced to the carpal tunnel region via a sled member 70 as discussed above with reference to FIGS.10A-11C.」
(日本語訳:図12A-図12Dから理解できるように,細長い本体40は,導入器35を通して手根管領域内およびTCLの真下の適切な位置に導入され得るが,手10から出ることはない(図12A)。図12Bを参照すると,フック端90を有する第2の細長い本体85が導入器35を通してTCLより上の皮下組織に導入される。第2の細長い本体85のフック端部90は,細長い本体40のボールポイント尖端42などの細長い本端40の遠位端43に向かって前進させられ,細長い本体40の遠位端43に結合される。いくつかの実施形態では,第1の細長い本体40および/または第2の細長い本体85は,研磨縫合糸などの研磨材料で形成され,図10A乃至図11Cを参照して上述したようにスレッド部材70を介して,手根管領域に導入され得る。)

「[0169]As can be understood from FIG. 12C, the second elongated body 85 is withdrawn through the introducer, thereby pulling the first elongated body 40 through the subcutaneous space above the TCL and creating a loop structure 95. A cutting member may be exposed within the loop structure to facilitate release of the TCL. As shown in FIG.12D, a proximal end 92, and a distal end 43 of the elongated body 40 is coupled to a handle member 50 and each handle member 50 is displaced in the opposite direction relative to the other to create a sawing or cutting motion as the loop structure 95 releases the TCL thereby decompressing the median nerve.」
(日本語訳:図12Cから理解できるように,第2の細長い本体85は,導入器を通って引き出され,それによって第1の細長い本体40をTCLより上の皮下空間を通して引っ張り,ループ構造95を形成する。切断部材は,TCLの解放を容易にするためにループ構造内に露出されてもよい。図12Dに示されるように,細長い本体40の近位端92,および遠位端43は,ハンドル部材50に結合され,そしてハンドル部材50の一方は,ループ構造95がTCLを解放し,それによって正中神経の圧迫を軽減するよう,鋸引き又は切断運動を生じさせるべく他方に対して反対方向に変位される。)

「[0170]As can be understood from FIGS.13A-13B, the elongated body 40 may be introduced through an introducer 35 into the carpal tunnel region and into its proper position beneath the TCL but without exiting the hand 10. In some embodiments, the elongated body may be an abrasive material, such as an abrasive suture. As shown in FIG.13A, a forceps device 105 may also be introduced through the introducer 35 into the subcutaneous tissue above the TCL. As indicated in FIG.13B, the distal end 110 of the forceps 105 is coupled to the ball point tip 42 of the elongated body 40 to securely hold the elongated body 40 about the TCL. The forceps device 105 may be withdrawn subcutaneously, thereby pulling the elongated body 40 into the subcutaneous space above the TCL and creating a loop structure, as described above with reference to FIGS.12C and 12D. A cutting member 45 may be exposed at the loop of the loop structure. The proximal and distal ends of the elongated body 40 may be attached to a handle member (such as those depicted in FIGS.7A-8D or 21A- 21G) and the elongated body may be displaced in a sawing or cutting motion. The sawing or cutting motion releases the TCL thereby decompressing the median nerve.」
(日本語訳:図13A-13Bから理解できるように,細長い本体40は,導入器35を通って手根管領域内及びTCLの真下の適切な位置に導入され得るが,手10から出ることはない。いくつかの実施形態では,細長い本体は,研磨縫合糸などの研磨材料であり得る。図13Aを参照すると,鉗子105はまた,導入器35を通してTCLより上の皮下組織に導入されてもよい。図13Bを参照すると,鉗子105の遠位端110は,細長い本体40をTCLの周りでしっかりと保持するために,細長い本体40のボールポイント尖端42に結合される。そして鉗子105が皮下に沿って引き抜かれ,それにより,細長い本体40をTCLより上の皮下空間に引き込み,図12Cおよび図12Dを参照して上述したように,ループ構造を形成する。切断部材45は,ループ構造のループ部分に露出してもよい。細長い本体40の近位端および遠位端は,ハンドル部材(図7A-8D又は図21A-図21Gに示されるものなど)に取り付けられてもよく,細長い本体は鋸引き又は切断動作で変位されてもよい。鋸引き又は切断動作は,TCLを解放し,正中神経の圧迫を軽減する。)

「FIG.12A



「FIG.12B



「FIG.12C



「FIG.12D



「FIG.13A



「FIG.13B



(2)上記記載から,引用文献1には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。
ア 引用文献1に記載された技術は,横手根靱帯(TCL)20を解放して正中神経の圧迫を軽減するためのシステムであり([0004][0020]),さらに鋸引き又は切断動作は,横手根靱帯(TCL)20を解放し,正中神経の圧迫を軽減する([0170])のであるから,当該システムは横手根靱帯(TCL)を切断するためのものといえる(FIG.12D)。

イ 第1の細長い本体40は,研磨縫合糸などの研磨材料で形成され([0168]),ループ構造95を形成するものであるので([0169]),柔軟な糸状のものである(FIG.12A-FIG.12C)。

ウ フック端90を有する第2の細長い本体85が導入器35を通して横手根靱帯(TCL)20より上の皮下組織に導入され([0168]),鉗子105も,導入器35を通して横手根靱帯(TCL)20より上の皮下組織に導入される([0170])ので,フック端90を有する第2の細長い本体85又は鉗子105は,導入器35を通して横手根靱帯(TCL)20より上の皮下組織へ導入されるといえる(FIG.12B,FIG.13A)。

エ 第2の細長い本体85は,導入器を通って引き出され,それによって第1の細長い本体40を横手根靱帯(TCL)20より上の皮下空間を通して引っ張り,ループ構造95を形成し([0169]),細長い本体40の近位端92,および遠位端43は,ハンドル部材50に結合される([0169])のであるから,糸状の第1の細長い本体40の近位端92および遠位端43が導入器35を通して伸長するといえる(FIG.12C)。

オ 第2の細長い本体85は,導入器を通って引き出され,それによって第1の細長い本体40を横手根靱帯(TCL)20より上の皮下空間を通して引っ張り,ループ構造95を形成し([0169]),また,鉗子105の遠位端110は,細長い本体40を横手根靱帯(TCL)20の周りでしっかりと保持するために,細長い本体40のボールポイント尖端42に結合される。そして鉗子105が皮下に沿って引き抜かれ,それにより,細長い本体40を横手根靱帯(TCL)20より上の皮下空間に引き込み,図12Cおよび図12Dを参照して上述したように,ループ構造を形成する([0170])であるから,フック端90を有する第2の細長い本体85又は鉗子105は,第1の細長い本体40を横手根靱帯(TCL)20より上の皮下空間を通して引っ張り,ループ構造95を形成するように構成されているといえる(FIG.12C,FIG.12D,FIG.13B)。

(3)上記(1)及び(2)から,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「横手根靱帯(TCL)20を切断するためのシステムであって,
研磨縫合糸などの研磨材料で形成された柔軟な糸状の第1の細長い本体40と,
導入器35を通して前記横手根靱帯(TCL)20より上の皮下組織への導入と,前記糸状の第1の細長い本体40の近位端92および遠位端43が前記導入器35を通して伸長するように,前記第1の細長い本体40を横手根靱帯(TCL)20より上の皮下空間を通して引っ張り,ループ構造95を形成するように構成されたフック端90を有する第2の細長い本体85又は鉗子105と,
を備えるシステム。」

4 引用発明との対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア 横手根靱帯(TCL)20は体内の軟組織であることは明らかであるから,引用発明の「横手根靱帯(TCL)20を切断するためのシステム」は,本願発明の「体内の軟組織を切断するためのシステム」に相当する。

イ 引用発明の「前記横手根靱帯(TCL)20より上の皮下組織」は引用発明の「前記軟組織に隣接する体内」に相当し,引用発明の「導入」は本件発明の「伸長」に相当するので,引用発明の「導入器35を通して前記横手根靱帯(TCL)20より上の皮下組織への導入」は,本願発明の「前記軟組織に隣接する体内への伸長」に相当する。

ウ 引用発明の「近位端92および遠位端43」は,本願発明の「両端」に相当し,導入器35は体に挿入され単一の穴を確保するものであるから,引用発明の「前記糸状の第1の細長い本体40の近位端92および遠位端43が前記導入器35を通して伸長する」は,本願発明の「前記糸状の切断要素の両端が前記体の単一のアクセス口から伸長する」に相当する。

エ 引用発明の「フック端90を有する第2の細長い本体85又は鉗子105」のそれぞれは,本願発明の「経路指定器具」に相当し,また,引用発明の「TCL上の皮下空間を通して引っ張り,ループ構造95を形成するように構成」は,本願発明の「軟組織の周りへの経路指定とを容易にするように構成」に相当するので,引用発明の「前記第1の細長い本体40を横手根靱帯(TCL)20より上の皮下空間を通して引っ張り,ループ構造95を形成するように構成されたフック端90を有する第2の細長い本体85又は鉗子105」は,本願発明の「前記糸状の切断要素の前記軟組織の周りへの経路指定とを容易にするように構成された経路指定器具」に相当する。

オ 引用発明の「第1の細長い本体40」は,本願発明の「切断要素」に相当するので,引用発明の「研磨縫合糸などの研磨材料で形成された柔軟な糸状の第1の細長い本体40」と,本願発明の「50μm以下の平均的な表面粗さを有する実質的に滑らかで摩耗のない表面を有する柔軟な糸状の切断要素」は,「表面粗さを有する表面を有する柔軟な糸状の切断要素」という限りにおいて共通する。

(2)以上のことから,本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
【一致点】
「体内の軟組織を切断するためのシステムであって,
表面粗さを有する表面を有する柔軟な糸状の切断要素と,
前記軟組織に隣接する体内への伸長と,前記糸状の切断要素の両端が前記体の単一のアクセス口から伸長するように,前記糸状の切断要素の前記軟組織の周りへの経路指定とを容易にするように構成された経路指定器具と,
を備えるシステム。」

【相違点】
「表面粗さを有する表面を有する柔軟な糸状の切断要素」について,本願発明は,「50μm以下の平均的な表面粗さを有する実質的に滑らかで摩耗のない表面を有する柔軟な糸状の切断要素」であるのに対し,引用発明は,「研磨縫合糸などの研磨材料で形成された柔軟な糸状の第1の細長い本体40」である点。

5 判断
以下,相違点について検討する。
(1) 相違点について
横手根靱帯(TCL)の切断に用いるフレキシブルな切断ワイヤにおいて,患者への低侵襲性を可能とするために,ワイヤの直径を小さくしたり,平滑にしたり均質な円形の断面とすること,また十分高い硬度を有する素材から形成することは周知な事項である(例えば,特表2006-513818号公報の【要約】,【0014】,【0020】等の記載を参照。)。
そうすると,引用発明の「細長い本体40」において,低侵襲性を実現するという周知の課題を解決するために,その表面粗さを小さくすることは当業者であれば容易に想到する事項であり,さらにその平均的な表面粗さを「50μm以下」とし,「実質的に滑らか」なものとすることは,当業者が必要に応じて適宜なし得る設計事項である。
なお,相違点における「摩耗がない表面」は実現不可能な事項であるので,「摩耗が少ない表面」として検討すると,「摩耗が少ない表面」とすることも当業者が必要に応じて適宜なし得る設計事項である。
したがって,引用発明に基づいて,上記相違点に係る本願発明の如く構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。

(2)そして,本願発明の奏する作用効果は,引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

(3)したがって,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。

6 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-06-05 
結審通知日 2019-06-11 
審決日 2019-06-24 
出願番号 特願2015-510363(P2015-510363)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 57- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 健志  
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 莊司 英史
林 茂樹
発明の名称 靱帯を糸で切断するための方法および装置  
代理人 高岡 亮一  

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