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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01S
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01S
管理番号 1356727
審判番号 不服2018-3258  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-06 
確定日 2019-11-05 
事件の表示 特願2016- 92753「オプトエレクトロニクス半導体チップ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 1日出願公開,特開2016-157977〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,2010年3月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年3月30日,ドイツ)を国際出願日とする出願(以下「原々出願」という。)の一部を,平成27年2月12日に新たな特許出願としたもの(以下「原出願」という。)について,そのさらに一部を,平成28年5月2日に新たな特許出願としたものであって,以降の手続は次のとおりである。

平成29年 2月 1日 拒絶理由通知(同年同月6日発送)
同年 3月31日 手続補正書・意見書提出
同年 5月 2日 拒絶理由通知(同年同月15日発送)
同年 8月15日 手続補正書・意見書提出
同年11月 2日 拒絶査定(同年同月13日謄本送達)
平成30年 3月 6日 審判請求
同年11月16日 拒絶理由通知(同年同月19日発送)
平成31年 3月19日 手続補正書・意見書提出

平成30年11月16日付けの拒絶理由通知で通知された拒絶理由を,以下においては「当審拒絶理由」という。また,平成31年3月19日に提出された手続補正書による手続補正を,以下においては「本件補正」という。

2 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は,以下の理由1ないし理由4からなる。
(1)理由1(特許法第36条第6項第2号;明確性)
ア 請求項1について
本件補正前の請求項1に記載された積分形式の数式では,アルミニウム含有率kが急峻に変化して階段状となり,それぞれ一定のアルミニウム含有率kを有する各ゾーン及びその数が定まるもののみならず,アルミニウム含有率kがなめらかに変化するものも含まれると考えられるが,そのようにアルミニウム含有率kがなめらかに変化するものについて活性量子井戸中でゾーンがどのように定まるのか及びゾーンの数であるNがどのように定まるのか不明であり,本件補正前の請求項1の記載によって何が特定されるのか不明確である。
また,本件補正前の請求項1の「相互に重なったN個のゾーン」なる記載では,「ゾーン」が互いに領域として重なることを意味し得るものであり,日本語として不明確である。

イ 請求項2について
本件補正前の請求項2について,各ゾーン(A)内のアルミニウム含有率kが「一定」である場合に,そのアルミニウム含有率の「平均」とは何を意味するのか明確でない。

ウ 請求項3について
本件補正前の請求項3の,「前記少なくとも1つの活性量子井戸(2)は,前記ゾーン(A)には,ちょうど2つのゾーンを有する」との記載は,1つのゾーン中に2つのゾーンを有するように読める記載であることから,不明確なものである。

エ 請求項4について
本件補正前の請求項4において,「成長方向z」と「前記半導体チップ(1)のp端子側(p)からn端子側(n)に向かう方向」とが単に平行であると記載されているのみでは,これらの方向が同方向であるのか,それとも反対方向であるのか,その間の関係を明確に把握することはできず,「該成長方向zに対して平行に前記半導体チップ(1)のp端子側(p)からn端子側(n)に向かう方向における前記ゾーン(A)の少なくとも一部の平均アルミニウム含有率に,k_(i)>k_(i+1)かつk_(i+1)<k_(i+2)が適用される」との記載がどのようなことを特定しているのか明確でない。

(2)理由2(特許法第36条第4項第1号;委任省令要件)
ア 請求項1ないし6について
本件補正前の請求項1及び2に係る発明の技術的意義は,本願明細書に記載されているとおり,「動作中に高い効率で光を生成する,量子井戸構造を含むオプトエレクトロニクス半導体チップを実現すること」であるところ,本願明細書の段落【0078】?【0079】の記載とともに図16及び図17の記載を見ても,当該各図がインジウム含有率を変えた場合の図であることに加え,図にプロットされている各点が,どのような組成及び構造を有するオプトエレクトロニクス光半導体チップと対応しているのか,それぞれの各点で実際にどのような効率が得られたのか不明であるから,本件補正前の請求項1若しくは2の【数1】若しくは【数2】又は対応する数式である上記の【数7】又は【数15】も含め,オプトエレクトロニクス光半導体チップの活性量子井戸中のある元素の含有率及びその元素が一定の含有率を有する各ゾーンの幅をパラメータとする数式によって,オプトエレクトロニクス光半導体チップの効率が決まることを一般的に導くことはできない。
また,活性量子井戸のバンドギャップ構造は,活性量子井戸中の一定のアルミニウム含有率kを有する各ゾーンのアルミニウムの含有率k及び幅のみならず,活性量子井戸を挟む上下の層の組成や活性量子井戸中の他のインジウム等の含有率などの,他のパラメータによって変わり,それにより光の生成効率も変わるものであるから,本願の明細書及び図面の記載において,請求項1又は2に記載されている数式に対応する数式である【数7】又は【数15】について,活性量子井戸中のアルミニウムの含有率k及び一定のアルミニウム含有率kを有する各ゾーンの幅のみをパラメータとする数式を満たす活性量子井戸を有することのみでオプトエレクトロニクス半導体チップが高効率となるのか理解することができない。

イ 請求項4ないし6について
上記アと同様に,窒化物材料系のオプトエレクトロニクス半導体チップの活性量子井戸のバンドギャップ構造は,活性量子井戸中の一定のアルミニウム含有率kを有する各ゾーンのアルミニウムの含有率k,幅及びそのアルミニウム含有率kの大小のみによることはなく,活性量子井戸を挟む上下の層の組成や活性量子井戸中の他のインジウム等の含有率などの,他のパラメータによって変わり,それによって光の生成効率も変わるものであるから,本件補正前の請求項4ないし6に係る発明について,その記載によって特定される活性量子井戸を有することのみでオプトエレクトロニクス半導体チップが高効率となるのか理解することができない。

(3)理由3(特許法第36条第6項第1号;サポート要件)
前記(2)ア,イと同様に,窒化物材料系のオプトエレクトロニクス半導体チップの活性量子井戸のバンドギャップ構造は,活性量子井戸中の一定のアルミニウム含有率kを有する各ゾーンのアルミニウムの含有率k及び幅のみによることはないから,本件補正前の請求項1ないし6に係る発明について,その記載によって特定される活性量子井戸を有することのみでオプトエレクトロニクス半導体チップが必ず高効率となるとはいえない。
よって,本件補正前の請求項1ないし6に係る発明は,発明の詳細な説明によってサポートされていない。

(4)理由4(特許法第29条第2項;進歩性)
本件補正前の請求項4ないし6に記載された発明は,原々出願及び原出願の願書に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載されていないから,本願は分割要件を満たしておらず,出願日の遡及は認められない。
そして,本願請求項1ないし6に係る発明は,本願の原々出願に係る国際公開文献に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 当審の判断
(1)特許請求の範囲の記載
本件補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
窒化物材料系をベースとするオプトエレクトロニクス半導体チップ(1)であって,
前記オプトエレクトロニクス半導体チップ(1)は少なくとも1つの活性量子井戸(2)を有し,
動作中,前記活性量子井戸(2)において電磁波が生成され,
前記活性量子井戸(2)は,前記オプトエレクトロニクス半導体チップ(1)の成長方向zに対して平行な方向に,相互に連続したN個のゾーン(A)を有し,ただし,Nは2以上の自然数であり,
前記ゾーン(A)に,前記成長方向zに対して平行な方向に連続番号が付されており, 前記ゾーン(A)のうち少なくとも2つのゾーンは,相互に異なるアルミニウム含有率kを有しており,
前記活性量子井戸(2)は,条件
【数1】

を満たし,
k_(i)は,i番目のゾーン(A)のアルミニウム含有率であり,w_(i)は,当該i番目のゾーン(A)の幅であり,
前記ゾーン(A)に,前記成長方向zに対して平行な方向に連続番号が付されており, wは無次元で,nmで定められており,
前記各ゾーン(A)内のアルミニウム含有率kは一定である,
ことを特徴とする,オプトエレクトロニクス半導体チップ(1)。
【請求項2】
前記オプトエレクトロニクス半導体チップは,AlGaNをベースとしており,前記少なくとも1つの活性量子井戸(2)は,ちょうど2つの前記ゾーン(A)を有しており,
【数2】

が成り立ち,
前記量子井戸は,285nmを上回り360nm以下である波長の波を放出するように調整されている,
請求項1記載のオプトエレクトロニクス半導体チップ(1)。
【請求項3】
前記オプトエレクトロニクス半導体チップは,AlGaNをベースとしており,
前記活性量子井戸(2)は,全体でちょうど5つのゾーンを有しており,
2番目および4番目のゾーン(A_(2),A_(4))によって形成された2つの中間バリアが設けられており,これにより,中間バリアとして形成された当該ゾーン(A_(2),A_(4))のアルミニウム含有率は,各々の隣接するゾーンと比較して高い,
請求項1記載のオプトエレクトロニクス半導体チップ(1)。」

(2)本願明細書の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の欄には,次の記載がある。

「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の解決すべき課題は,動作中に高い効率で光を生成する,量子井戸構造を含むオプトエレクトロニクス半導体チップを実現することである。」


「【0047】
さらに本願では,少なくとも1つの活性量子井戸においてアルミニウム含有率が変動するオプトエレクトロニクス半導体チップを開示する。
【0048】
少なくとも1つの実施形態では,オプトエレクトロニクス半導体チップは窒化物材料系をベースとし,少なくとも1つの活性量子井戸を有し,動作中には該少なくとも1つの活性量子井戸において電磁波が生成される。オプトエレクトロニクス半導体チップは,該オプトエレクトロニクス半導体チップの成長方向zに対して平行な方向に,相互に重ねられたN個のゾーンを有し,該N個のゾーンのうち少なくとも2つのゾーンの平均アルミニウム含有率kは相互に異なる。ここでは,Nは2以上の自然数である。ここでは,285nmを上回りとりわけ360nm以下である波長の光の場合,前記少なくとも1つの活性量子井戸は,
【数7】

を満たすか,または,285nm以下でありとりわけ210nm以上である波長の光の場合,前記少なくとも1つの活性量子井戸は,
【数8】

を満たす。
【0049】
活性量子井戸のゾーンの平均インジウム含有率が変動するオプトエレクトロニクス半導体チップの特徴は,アルミニウム含有率が変動する本発明のオプトエレクトロニクス半導体チップの開示内容でもあり,また,アルミニウム含有率が変動する本発明のオプトエレクトロニクス半導体チップの特徴は,活性量子井戸のゾーンの平均インジウム含有率が変動するオプトエレクトロニクス半導体チップの開示内容でもある。インジウム含有率が上昇するとバンドギャップは減少し,アルミニウム含有率が上昇するとバンドギャップは増大するので,活性量子井戸のゾーンの変動する平均アルミニウム含有率の場合には,インジウム含有率で使用された不等号を逆にしなければならない。」


「【0078】
図16および17に,オプトエレクトロニクス半導体チップの活性量子井戸2のゾーンAのインジウム含有率cおよび幅wのパラメータの変動を概略的に示す。パラメータの各変動に対し,項
【数14】

の値を横軸に沿ってプロットしている。ここでは,上記項の値を略してFoMと称する。図16では,各活性量子井戸がそれぞれ2つのゾーンAを有する。FoM値が40?80である場合,とりわけ50?70である場合に,オプトエレクトロニクス半導体チップの効率は高くなる。このオプトエレクトロニクス半導体チップの高効率は,たとえばレーザ性能に現れる。各活性量子井戸がそれぞれ3つのゾーンAを有する,図17のオプトエレクトロニクス半導体チップにも,同様のことが当てはまる。
【0079】
たとえば,FoM値が上記値範囲外にある場合より,上記値範囲内にある場合の方が,オプトエレクトロニクス半導体チップの効率は高い。このオプトエレクトロニクス半導体チップの効率は,放出光の出力パワーと,オプトエレクトロニクス半導体チップを動作させるための入力電力との商である。放出光の波長が約440nmであり,光出力パワーが30mWである場合,FoM値が上記範囲外にある場合の効率は6%未満となり,FoM値がとりわけ50?70である場合の効率は8%以上となる。波長が約480nmであり,出力パワーが5mWである場合,FoM値が上記範囲外にある場合の効率は0.5%を下回り,FoM値がとりわけ50?70である場合の効率は少なくとも0.6%であり,有利には0.8%となる。」


「【0080】
図18に示された実施例のオプトエレクトロニクス半導体チップ1では,活性量子井戸2の成長方向zにおいて2つのゾーンA1,A2におけるアルミニウム含有率kが異なるように調整されている。ゾーンA1,A2のアルミニウム含有率kおよび厚さは,活性量子井戸2が以下の条件を満たすように選択される:
【数15】

【0081】
図18の実施例でも,たとえば図15の実施例と同様に,非活性量子井戸を設けたり,活性量子井戸を複数設けたり,クラッド層およびバリア層を設けることができる。
【0082】
また,活性量子井戸2のゾーンAのアルミニウム含有率kの調整と,たとえば図1,2および4?15に示されたようなインジウム含有率cの調整とを併用することもできる。」


ここで,図16及び図17は以下のものである。
図16


図17

(3)理由1(明確性)及び理由4(進歩性)について
ア 本件補正後の請求項1においては,積分形式の数式に代えて和の形式の数式によって記載され,また,相互に連続したN個のゾーン(A)を有するとの記載とされ,本件補正後の請求項1ないし3の記載においては,「平均アルミニウム含有率」との用語は用いられないものとなった。
さらに,本件補正前の請求項4ないし6は削除された。
以上のとおりであるから,理由1は全て解消された。

イ 本件補正により,本件補正前の特許請求の範囲の請求項4ないし6は削除されたので,本件補正前の特許請求の範囲の請求項4ないし6に記載された発明に起因する分割要件違反は解消され,これに伴い,理由4は解消された。

(4)理由2(委任省令)について
ア 前記(1)に摘記したとおり,本願請求項1には,「窒化物材料系をベースとするオプトエレクトロニクス半導体チップ(1)」が有する「活性量子井戸(2)」が,相互に連続したN個のゾーン(A)を有し,各ゾーンのアルミニウム含有率,及び各ゾーンの幅が【数1】で表される数式の条件を満たすものであることが記載されている。

イ 本願請求項1において特定される事項については,前記(2)に摘記したとおり,本願明細書の段落【0047】?【0049】及び段落【0080】?【0081】に記載されている。

ウ ところで,本願請求項1に係る発明の技術的意義は,前記(2)に摘記した段落【0003】に記載されているとおり,「動作中に高い効率で光を生成する,量子井戸構造を含むオプトエレクトロニクス半導体チップを実現すること」であるところ,本願明細書において,数式で定められた範囲内外における「効率」の差について記載されているのは,段落【0078】?【0079】である。
なお,上記段落【0078】?【0079】以外における本願明細書には,「(光生成)効率」についての記載はあるものの,数式で定められた範囲内であることと「(光生成)効率」との関係についての記載まではない。
ここで,当該段落【0078】においては,「活性量子井戸2のゾーンAのインジウム含有率cおよび幅wのパラメータの変動」に対する式の値(FoM)が40?80である場合,とりわけ50?70である場合に,オプトエレクトロニクス半導体チップの効率は高くなることが記載され,段落【0079】には,具体的な放出光の波長及び光出力パワーについて,FoMの範囲内外における効率の具体的な差が記載されている。

エ しかしながら,上記段落【0078】?【0079】の記載は,「活性量子井戸2のゾーンAのインジウム含有率cおよび幅wのパラメータの変動」に関するものであって,アルミニウム含有率kおよび幅wのパラメータ変動に関するものではない。また,一般に,オプトエレクトロニクス半導体チップの発光効率は,活性量子井戸のインジウム含有率および幅のみで定まるものではなく,オプトエレクトロニクス半導体チップを構成する各層を含む全体の構成が関係するものであるから,上記段落【0078】?【0079】の記載から,一般的に,「活性量子井戸2のゾーンAのインジウム含有率cおよび幅wのパラメータの変動」に対する式の値(FoM)が40?80である場合,とりわけ50?70である場合に,オプトエレクトロニクス半導体チップの効率が高くなると解することはできない。

オ それゆえ,本願明細書の記載からは,仮に,請求項1に係る【数1】で表される数式とアルミニウム含有率kおよび幅wのパラメータについて,上記段落【0078】?【0079】の記載と同様な場合が存在しうるとしても,一般的に,活性量子井戸2のゾーンAのアルミニウム含有率kおよび幅wのパラメータの変動に関して,請求項1に係る数式の範囲内である場合に,オプトエレクトロニクス半導体チップの効率が高くなると解することはできない。

カ さらに,請求項1に係る「窒化物材料系」にはAlInGaNが含まれるから,活性量子井戸を構成する材料は,AlGaNに限られず,AlInGaNも含まれる。そして,AlInGaNからなる活性量子井戸にあっては,具体的なバンドギャップ構造は,アルミニウム含有率kおよび幅wのみで定まるものではなく,インジウム含有率cのほか当該活性量子井戸の上下の層の組成も関係し,そのようにして定まる具体的なバンドギャップ構造が関与する光生成効率について,単に,活性量子井戸2のゾーンAのアルミニウム含有率kおよび幅wのパラメータの変動に関して,請求項1に係る【数1】で表される数式の範囲内である場合に高くなるとすることは,本願明細書の記載を見ても,理解できない。

キ 以上のとおりであるから,本願明細書の全ての記載を参照しても,請求項1に係る【数1】で表される数式の範囲内とすることのみで,動作中に高い効率で光を生成する,量子井戸構造を含むオプトエレクトロニクス半導体チップが実現できることになるか理解できない。

ク よって,本願の発明の詳細な説明の記載は,請求項1に係る発明の技術的な意義を当業者が理解できるように記載されたものでない。

(5)理由3(サポート要件)について
ア 本願請求項1に係る発明が解決しようとする課題は,前記(2)アに摘記したとおり,「動作中に高い効率で光を生成する,量子井戸構造を含むオプトエレクトロニクス半導体チップを実現すること」である。

イ 一方,前記(4)カに記載したとおり,AlInGaNからなる活性量子井戸にあっては,具体的なバンドギャップ構造は,アルミニウム含有率kおよび幅wのみで定まるものではなく,インジウム含有率cのほか当該活性量子井戸の上下の層の組成も関係するものであり,活性量子井戸2のゾーンAのアルミニウム含有率kおよび幅wのパラメータの変動に関して,請求項1に係る【数1】で表される数式の範囲内である場合であっても,前記インジウム含有率cのほか当該活性量子井戸の上下の層の組成によっては,必ずしも高い効率で光を生成するものとなるとはいえない。

ウ よって,請求項1の記載により特定される発明は,必ずしも,前記アに係る発明が解決しようとする課題が解決できるものとはいえないから,請求項1に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものでない。

(6)平成31年3月19日に提出された意見書について
ア 請求人は,平成31年3月19日に提出された意見書(以下「意見書」という。)において,参照文献1?4を提示しつつ,以下の主張をする。
(ア)AlGaN活性量子井戸のための外部のクラッド層およびバリア層に関しては,約25%を超えるAl成分を有するAlN層または非緩和AlGaN層に限られ(参照文献1,2),また,AlNバリア層またはAlGaNバリア層の使用は,量子効率に大きな影響を示さず,支配的な影響は欠陥密度である(参照文献3)。そして,バッファ層/クラッド層の品質が類似する場合,量子井戸効率は,量子井戸のデザイン,すなわち,新請求項1に記載のような,パラメータの集合k1,k2,w1,w2...に強く依存するものである。
(イ)量子井戸のスタッガード型のデザインが,実際に効率を向上可能であることは,参照文献4において実証されている。

イ しかしながら,上記ア(ア)の主張は,AlGaN活性量子井戸であることを前提とするものであり,活性量子井戸がAlInGaNである場合をも包含する請求項1に係る発明の構成に基づくものではない。
また,上記ア(イ)の主張については,いわゆるスタッガード型のデザインの量子井戸が参照文献4に記載されているとしても,当該記載から,請求項1に係る【数1】で表される数式の範囲内となるように各パラメータを設定することにより,動作中に高い効率で光を生成する,AlInGaN量子井戸構造を含むオプトエレクトロニクス半導体チップが実現できるといえるかは不明である。

ウ よって,提示された参照文献1?4を参照しても,前記意見書の主張は,前記理由2及び理由3に係る判断を覆すものではない。

(7)まとめ
前記(4)のとおりであるから,本願の発明の詳細な説明の記載は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさず,また,前記(5)のとおりであるから,本願請求項1の記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない。

3.むすび
以上のとおりであるから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-06-07 
結審通知日 2019-06-10 
審決日 2019-06-21 
出願番号 特願2016-92753(P2016-92753)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H01S)
P 1 8・ 537- WZ (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小濱 健太  
特許庁審判長 西村 直史
特許庁審判官 近藤 幸浩
森 竜介
発明の名称 オプトエレクトロニクス半導体チップ  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 二宮 浩康  
代理人 前川 純一  
代理人 上島 類  
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