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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1356766
審判番号 不服2018-14103  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-24 
確定日 2019-11-07 
事件の表示 特願2016-197512「電子機器及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月23日出願公開、特開2017- 60170〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成22年2月19日に出願した特願2010-35010号の一部を数次の分割を経て平成28年10月5日に新たな特許出願としたものであって、その手続の概要は以下のとおりである。
平成28年12月16日 手続補正
平成29年 7月24日付け 拒絶理由通知
平成29年11月29日 意見書の提出
平成30年 2月23日付け 拒絶理由通知
平成30年 6月28日 意見書の提出
平成30年 7月13日付け 拒絶査定
平成30年10月24日 審判請求
平成30年12月13日 手続補正(請求の理由)

2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成28年12月16日付け手続補正による特許請求の範囲の請求項1?9に記載した事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
なお、本願発明の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成(A)、構成(B)などと称する。

(本願発明)
(A)撮像部を有する外部機器と通信する第1通信部と、
(B)外部機器と通信する、前記第1通信部と異なる第2通信部と、
(C1)前記第1通信部による通信を行った後に前記第2通信部により前記外部機器との通信を行う第1処理と、
(C2)前記第1通信部による通信を行うことなく前記第2通信部により前記外部機器との通信を行う第2処理とを行う制御部と、を備え、
(D)前記制御部は、前記第2通信部により外部機器と通信を行うと、前記外部機器の撮像部で撮像された画像を表示部に表示させる
(E)電子機器。

3 引用発明
(1)引用文献6の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(国際公開第03/021876号)には、「情報処理装置および方法、並びに記録媒体」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。
なお、下線は強調のために当審で付したものである。

ア「図2は、携帯電話機1-1の構成例を示すブロック図である。
(中略)
通信部22は、いわゆる、ブルートゥースモジュールである。通信部22は、例えば、携帯電話機1-2のブルートウースモジュールとピコネットを形成し、CPU11からの指示に基づいて、各種のデータを送受信する。」(第6頁第4行?第20行)

イ「図5は、リ一ダライタ23の詳細な構成例を示すブロック図である。
(中略)
CPU91は、ROM101に格納されている制御プログラムをRAM102に展開し、携帯電話機1-2のRFタグから送信されてきた応答データや、図2のCPU11から供給されてきた制御信号に基づいて、各種の処理を実行する。例えば、CPU91は、携帯電話機1-2のRFタグに送信するコマンドを生成し、それを、バス95を介してSPU92に出力したり、携帯電話機1-2のRFタグから送信されてきたデータの認証処理などを行う。
また、CPU91は、携帯電話機1-2が近傍に配置され、後述する各部の処理によりブルートゥースのデバイス名が通知されてきたとき、CPU11の指示に基づいて、それを通信部22に通知するなどの処理を行う。」(第11頁第17行?第12頁第3行)

ウ「図8に示すように、携帯電話機1-1の右側と携帯電話機1-2の左側が近接されたとき、図9に示す、携帯電話機1-1のリーダライタ23-3-1と、携帯電話機1-2のRFタグ24-2-2とが通信を実行するか、または、携帯電話機1-2のリーダライタ23-2-2と、携帯電話機1-1のRFタグ24-3-1とが通信を実行する。

図8


図9

」(第15頁第13行?第17行)

エ「携帯電話機1-1のリーダライタ23-3-1は、近傍に配置された携帯電話機1-2のRFタグ24-2-2に、ブルートゥースデバイスである通信部22-2のデバイス名を要求する。
携帯電話機1-2のRFタグ24-2-2は、携帯電話機1-1のリーダライタ23-3-1からの要求に対応して、通信部22-2のデバイス名を携帯電話機1-1のリ一ダライタ23-3-1に送信する。
携帯電話機1-1のリ一ダライタ23-3-1は、携帯電話機1-2のRFタグ24-2-2から通信部22-2のデバイス名を受信したとき、デバイス名を通信部22-1に供給する。」(第15頁第25行?第16頁第6行)

オ「携帯電話機1-1の通信部22-1は、携帯電話機1-2のRFタグ24-2-2から供給された、通信部22-2のデバイス名を基に、携帯電話機1-2の通信部22-2と接続し、通信リンクを設定する。」(第16頁第7行?第9行)

カ「携帯電話機1-1は、設定された通信リンクを介して、携帯電話機1-2に、”あいうえおかきくけこ・・・”からなる電子メールを送信する。
(中略)
図12に示すように、携帯電話機1-2は、電子メールの各行の5文字目を、さらに表示し、電子メールの全体を表示する。」

図12

」(第16頁第10行?第17頁第18行)

キ「なお、携帯電話機1-1と携帯電話機1-2との間で、データとして、電子メールが授受されると説明したが、電子メールに限らず、例えば、画像、音声、数値データ、所定のアプリケーションプログラム用のデータ(ファイル)、またはプログラムが授受されるようにしてもよい。例えば、画像または数値データが授受されるとき、携帯電話機1-1および携帯電話機1-2は、授受される画像または数値データを表示し、上述したように、表示を更新する。(中略)
また、携帯電話機1-1および携帯電話機1-2がデータを授受すると説明したが、携帯電話機に限らず、PDA、携帯型パーソナルコンピュータ、ポータブルデバイス、デジタルカメラ、携帯型ゲーム機、デジタルビデオカメラ、または情報処理機能付き腕時計など、いずれの携帯型の機器でもよい。」(第31頁第7行?第21行)

ク「図27は、電波の出力電力を制御することにより、通信相手の端末を特定させる通信システムの構成例を示す図である。
例えば、ブルートゥースによる通信相手を特定し、その相手との間で通信を確立する場合、携帯電話機1-1は、始めに、通信部22-1の出力電力を必要最小限に抑制し、輻射される電波が、例えば、数センチメートルの範囲内にのみ到達するように制御する。このように、電波の出力電力が抑制される微小電力モードが設定されている状態において、通信部22-1は、「Inquiry (問い合わせ)」を繰り返し行い、その電波の届く範囲(例えば、数センチメー トル範囲内)に存在する端末(通信部)を探索する。
そして、ユーザにより携帯電話機1-1が携帯電話機1-2に近接され、通信部22-1により輻射される電波が携帯電話機1-2の通信部22-2(無線モジュール)により受信された場合、通信部22-2からは、Inquiryに対する応答が行われるため、通信22-1は、通信部22-2との間で、上述したように、Inquiry,Page (呼び出し)を行い、通信リンクを確立する。
(中略)
以上のように、 携帯電話機1-1にブルートゥースデバイス名などの識別情報が記憶されているRFタグが設けられていない場合であっても、通信モジュールの出力電力を制御させるようにすることにより、ユーザは、携帯電話機1-1を携帯電話機1-2に近接させるだけで、ブルートゥースによる通信を確立させることができる。

図27

」(第32頁第16行?第33頁18行)

ケ「次に、図30のフローチャートを参照して、図27の通信システムの動作について説明する。この例においては、ブルートゥースによる通信相手を特定し、通信を確立する場合について説明する。
例えば、ユーザによりブルートゥースによる通信を行うことが指示されたとき、携帯電話機1-1の通信部22-1は、CPU11-1からの制御に基づいて起動し、ステップS201において、自分自身の電力モードとして微小電力モードを設定する。また、通信部22-1は、ステップS202に進み、Inquiryを繰り返し実行し、近接されている端末を探索する。ステップS202で実行されるInquiryにおいては、微小電力モードが設定され、電波の到達範囲が必要最小限に抑制されているため、例えば、アンテナ107-1(携帯電話機1-1の通信部22-1のアンテナ)から数センチメートルの範囲内に、IQパケット(Inquiryパケット)が繰り返しブロードキャストされる。
(中略)
以上のようにして、近接された端末を通信相手の端末として特定する図27の通信システムが、図1に示される通信システムに適用され、例えば、携帯電話機1-1から携帯電話機1-2にブルートゥースにより送信されるメールの表示が、近接された端末の向きによって制御される。
(中略)
そして、近接され、通信リンクが確立された通信部によって、送信されるデータの表示が制御される。」(第35頁第5行?第37頁第8行)

(2)引用文献6に記載された発明
引用文献6に記載された発明を以下に認定する。

ア 引用文献6に記載された発明
(ア)上記(1)ウによれば、引用文献6には、「携帯電話機1-1のリーダライタ23-3-1と、携帯電話機1-2のRFタグ24-2-2とが通信を実行する」ことが記載されている。また、上記(1)オによれば、「携帯電話機1-1の通信部22-1は、携帯電話機1-2のRFタグ24-2-2から供給された、通信部22-2のデバイス名を基に、携帯電話機1-2の通信部22-2と接続し、通信リンクを設定する」ことが記載されている。
さらに、上記(1)キによれば、携帯電話機1-1及び携帯電話機1-2は、携帯電話機に限らずデジタルカメラでもよい。
よって、引用文献6には、「デジタルカメラ1-2のRFタグ24-2-2と通信を実行するリーダライタ23-3-1」、及び、「デジタルカメラ1-2の通信部22-2と接続し、通信リンクを設定する通信部22-1」を備える「デジタルカメラ1-1」が記載されている。

(イ)上記(1)アによれば、引用文献6の携帯電話機1-1の通信部22は、CPU11からの指示に基づいて、携帯電話機1-2とデータの送受信を行う。また、上記(1)イによれば、携帯電話機1-1のリーダライタ23のCPU91は、CPU11からの制御信号や指示に基づいて、処理を実行する。
以上から、引用文献6には、「リーダライタ23の処理及び通信部22の処理を制御するCPU11」を備える「デジタルカメラ1-1」が記載されていると認められる。

(ウ)上記(1)エによれば、引用文献6には、「携帯電話機1-1のリーダライタ23-3-1は、近傍に配置された携帯電話機1-2のRFタグ24-2-2に、ブルートゥースデバイスである通信部22-2のデバイス名を要求する」こと、及び、「携帯電話機1-1のリ一ダライタ23-3-1は、携帯電話機1-2のRFタグ24-2-2から通信部22-2のデバイス名を受信したとき、デバイス名を通信部22-1に供給する」ことが記載されている。
よって、引用文献6には、CPU11は、「リーダライタ23-3-1を制御することで、近傍に配置されたデジタルカメラ1-2のRFタグ24-2-2に、ブルートゥースデバイスである通信部22-2のデバイス名を要求する」こと、及び、「デジタルカメラ1-2のRFタグ24-2-2から通信部22-2のデバイス名を受信したとき、デバイス名を通信部22-1に供給する」ことが記載されている。

(エ)上記(1)オによれば、引用文献6には、「携帯電話機1-1の通信部22-1は、携帯電話機1-2のRFタグ24-2-2から供給された、通信部22-2のデバイス名を基に、携帯電話機1-2の通信部22-2と接続し、通信リンクを設定する」ことが記載されている。
よって、引用文献6には、CPU11は、「通信部22-1を制御することで、デジタルカメラ1-2のRFタグ24-2-2から供給された、通信部22-2のデバイス名を基に、デジタルカメラ1-2の通信部22-2と接続し、通信リンクを設定する」ことが記載されている。

(オ)上記(1)カによれば、引用文献6には、「携帯電話機1-1は、設定された通信リンクを介して、携帯電話機1-2に、”あいうえおかきくけこ・・・”からなる電子メールを送信する」こと、及び、「携帯電話機1-2は、電子メールの全体を表示する」ことが記載されている。
また、上記(1)キによれば、携帯電話機1-1及び携帯電話機1-2の間で、電子メールのみならず、画像が授受される。
したがって、引用文献6には、CPU11は、「設定された通信リンクを介して、デジタルカメラ1-2から画像を受信して表示させる」ことが記載されている。

(カ)上記(ア)ないし(オ)によると、引用文献6には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明1)
(a)デジタルカメラ1-2のRFタグ24-2-2と通信を実行するリーダライタ23-3-1と、
(b)デジタルカメラ1-2の通信部22-2と接続し、通信リンクを設定する通信部22-1と、
(c)リーダライタ23の処理及び通信部22の処理を制御するCPU11を備え、
前記CPU11は、
(c1-1)リーダライタ23-3-1を制御することで、近傍に配置されたデジタルカメラ1-2のRFタグ24-2-2に、ブルートゥースデバイスである通信部22-2のデバイス名を要求し、デジタルカメラ1-2のRFタグ24-2-2から通信部22-2のデバイス名を受信したとき、デバイス名を通信部22-1に供給し、
(c1-2)通信部22-1を制御することで、デジタルカメラ1-2のRFタグ24-2-2から供給された、通信部22-2のデバイス名を基に、デジタルカメラ1-2の通信部22-2と接続し、通信リンクを設定し、
(d)設定された通信リンクを介して、デジタルカメラ1-2から画像を受信して表示させる
(e)デジタルカメラ1-1。

(キ)上記(1)クによれば、引用文献6には、ブルートゥースデバイス名などの識別情報が記憶されているRFタグが設けられていない場合であっても、ブルートゥースによる通信を確立させることができる場合として、携帯電話機1-1の通信部22-1の出力電力を制御することで、通信部22-1と携帯電話機1-2の通信部22-2との間でブルートゥースによる通信リンクを確立することが記載されている。
よって、引用文献6には、「通信部22-1の出力電力を制御することで、通信部22-1とデジタルカメラ1-2の通信部22-2との間でブルートゥースによる通信リンクを確立するデジタルカメラ1-1」が記載されている。

(ク)上記(1)ケによれば、引用文献6には、「携帯電話機1-1の通信部22-1は、CPU11-1からの制御に基づいて起動する」こと、「通信リンクが確立された通信部によって、携帯電話機1-1から携帯電話機1-2にブルートゥースにより送信されるデータの表示が制御される」ことが記載されている。
よって、引用文献6には、CPU11-1は、「通信リンクが確立された通信部22-1によって、デジタルカメラ1-2から画像を受信して表示させる」こと、が記載されている。

(ケ)上記(ア)ないし(ク)によると、引用文献6には、RFタグとRFタグと通信を実行するリーダライタが設けられない構成として、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明2)
(b)デジタルカメラ1-2の通信部22-2との間で通信リンクを確立する通信部22-1と、
(c2)通信部22-1の出力電力を制御することで、通信部22-1と通信部22-2との間でブルートゥースによる通信リンクを確立するCPU11-1とを備え、
(d)前記CPU11-1は、通信リンクが確立された通信部22-1を制御することで、デジタルカメラ1-2から画像を受信して表示させる
(e)デジタルカメラ1-1。

4 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。

(1)本願発明の構成(A)について
引用発明1の構成(a)の「デジタルカメラ1-2」、「リーダライタ23-3-1」は、本願発明の構成(A)の「撮像部を有する外部機器」、「第1通信部」にそれぞれ相当する。
よって、本願発明の構成(A)は引用発明1の構成(a)と一致する。

(2)本願発明の構成(B)について
引用発明1の構成(b)の「通信部22-1」はブルートゥースデバイスであるため、引用発明1の構成(a)の「リーダライタ23-3-1」と異なることは明らかである。
したがって、引用発明1の構成(b)の「通信部22-1」は、本願発明の構成(B)の「前記第1通信部と異なる第2通信部」に相当する。
よって、本願発明の構成(B)は引用発明1の構成(b)と一致する。

(3)本願発明の構成(C1)について
引用発明1の構成(c1-1)、(c1-2)及び(d)によれば、リーダライタ23-3-1がデジタルカメラ1-2の通信部22-2のデバイス名を受信し、その受信したデバイス名を基に、通信部22-1が通信部22-2と通信リンクを設定して、デジタルカメラ1-2から画像の受信を行う。
よって、引用発明1の構成(c1-1)、(c1-2)及び(d)は、本願発明の構成(C1)の「前記第1通信部による通信を行った後に前記第2通信部により前記外部機器との通信を行う第1処理」と一致する。

(4)本願発明の構成(C2)について
本願発明の構成(C2)の制御部は、第1処理に加えて、「前記第1通信部による通信を行うことなく前記第2通信部により前記外部機器との通信を行う第2処理」を行うのに対して、引用発明1のCPU11は、第2処理を行わない点で相違する。

(5)本願発明の構成(D)について
引用発明1の構成(d)の「設定された通信リンク」は、引用発明1の構成(c)において、デジタルカメラ1-1の通信部22-1がデジタルカメラ1-2の通信部22-2と接続して設定した通信リンクである。
よって、引用発明1の構成(d)の「前記CPU11は、設定された通信リンクを介して、デジタルカメラ1-2から画像を受信して表示させる」ことは、本願発明の構成(D)の「前記制御部は、前記第2通信部により外部機器と通信を行うと、前記外部機器の撮像部で撮像された画像を表示部に表示させる」ことと一致する。

(6)本願発明の構成(E)について
引用発明1の構成(e)の「デジタルカメラ1-1」は本願発明の構成(E)の「電子機器」と一致する。

(7)まとめ
上記(1)ないし(6)の対比結果をまとめると、本願発明と引用発明1との[一致点]と[相違点]は以下のとおりである。

[一致点]
撮像部を有する外部機器と通信する第1通信部と、
外部機器と通信する、前記第1通信部と異なる第2通信部と、
前記第1通信部による通信を行った後に前記第2通信部により前記外部機器との通信を行う第1処理を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第2通信部により外部機器と通信を行うと、前記外部機器の撮像部で撮像された画像を表示部に表示させる
電子機器。

[相違点]
本願発明の制御部は、第1処理に加えて、「前記第1通信部による通信を行うことなく前記第2通信部により前記外部機器との通信を行う第2処理」を行うのに対して、引用発明1のCPU11は、第2処理を行わない点。

5 判断
(1)相違点について
引用発明2の構成(c2)及び(d)において、デジタルカメラ1-1は、通信部22-1の出力電力を制御することで、デジタルカメラ1-2の通信部22-2との間で通信リンクを確立し、デジタルカメラ1-2から画像を受信しており、リーダライタによる通信は行っていない。よって、引用発明2の構成(c2)及び(d)は、本願発明の「第1通信部による通信を行うことなく第2通信部により外部機器との通信を行う第2処理」に相当する。
ここで、引用発明1と引用発明2は、デジタルカメラ間で通信リンクを確立し、当該通信リンクを介して画像を送受信して表示させるという点で、共通の技術分野に属するものである。また、引用発明1において、通信リンクを確立する手段として、リーダライタとRFタグ間の近接通信以外の手段も設けて、利便性を向上させることは、当業者が適宜なし得る事項である。そして、その手段として、引用発明1と同じ引用文献6に記載されている引用発明2を採用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1に引用発明2を適用し、引用発明1のCPU11が、リーダライタとRFタグ間で通信を行った後にブルートゥースの通信部が通信を行う処理に加えて、引用発明2の(c2)及び(d)のブルートゥースの通信部の出力電力を制御して通信を行う処理も行う構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
そして、引用発明1に引用発明2を適用することで、本願発明における「前記第1通信部による通信を行うことなく前記第2通信部により前記外部機器との通信を行う第2処理」を行う構成となることは明らかである。

(2)効果等について
本願発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える格別顕著なものがあるとは認められない。

(3)請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「(3)本願発明が特許されるべき理由」において、「引用文献6では、少なくとも一方にRFタグがない場合にブルートゥース等の無線LANで画像データを送受信することの記載がありますが、RFタグがあるにもかかわらず、ブルートゥース等のみで画像データの送受信をすることについての記載はありません。そのため、請求項1のように、「第1通信部と第2通信部とを有し、第1通信部による通信を行った後に第2通信部により外部機器との通信を行う第1処理と、第1通信部による通信を行うことなく第2通信部により前記外部機器との通信を行う第2処理とを行う」ことの開示はありません。このように、引用文献6と請求項1の構成とは全く異なるものです。」と主張する。
しかしながら、上記(1)において検討したように、引用発明1に引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得たことであるから、上記請求人の主張は採用できない。

6 むすび
以上のとおり、以上のとおり、本願発明は、引用文献6に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-08-30 
結審通知日 2019-09-03 
審決日 2019-09-24 
出願番号 特願2016-197512(P2016-197512)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高野 美帆子  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 曽我 亮司
小池 正彦
発明の名称 電子機器及びプログラム  
代理人 永井 冬紀  
代理人 白石 直正  

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