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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03H
管理番号 1356769
審判番号 不服2018-15890  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-30 
確定日 2019-11-07 
事件の表示 特願2013-169745「パッケージ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月26日出願公開、特開2015- 39133〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年8月19日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 4月17日付け:拒絶理由通知書
平成29年 6月14日 :意見書,手続補正書の提出
平成29年11月27日付け:拒絶理由通知書(最後)
平成30年 1月25日 :意見書,手続補正書の提出
平成30年 2月28日付け:拒絶理由通知書(最後)
平成30年 4月26日 :意見書の提出
平成30年 8月30日付け:拒絶査定
平成30年11月30日 :拒絶査定不服審判の請求

第2 本願発明
平成30年1月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりのものである(下線は請求人による。)。
「絶縁材からなり,平面視が矩形状の表面および裏面を有するパッケージ本体と,
上記パッケージ本体の表面の周辺部に沿って形成された平面視が枠状の金属層と,
上記金属層の上にロウ材を介して接合された平面視が矩形枠状で且つ四隅に屈曲部を有する金属枠と,
上記金属層に囲まれたパッケージ本体の表面に形成された水晶振動子を搭載するための一対の電極パッドと,
上記金属層に囲まれたパッケージ本体の表面のうち,上記一対の電極パッドを除いた位置に開口するキャビティの開口部と,を備え,
上記金属層,一対の電極パッド,およびキャビティの開口部が同一平面に位置しており,
上記電極パッドのそれぞれにおいて,上記金属枠の屈曲部に最も近い位置は,該電極パッドの外形が平面視で外向きに凸のアール形状となっている共に,
上記キャビティの深さは,該キャビティの底面を構成する絶縁材の厚みよりも大きい,
ことを特徴とするパッケージ。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は,次のとおりのものである(請求項2?5に係る発明については省略。)。
請求項1に係る発明は,本願の出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2?5に記載された周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開2005-79658号公報
2.特開2012-129775号公報
3.特開2010-103754号公報
4.特開2010-87650号公報
5.特開2005-101220号公報

第4 引用文献の記載,引用発明
1 引用文献1の記載及び引用発明
(1)原査定の拒絶の理由で引用された特開2005-79658号公報(以下「引用文献1」という。)には,次の記載がある(下線は当審による。)。
ア 「【0018】
図1は本発明の一実施形態に係る製造方法によって製作した圧電発振器の斜視図,図2は図1の圧電発振器の断面図であり,これらの図に示す圧電発振器は,圧電振動素子としての水晶振動素子5とIC素子6とが搭載されている基体1の上面に,水晶振動素子5及びIC素子6を囲繞するシールリング3を載置・固定するとともに,該シールリング3の上部に蓋体4の外周部を接合することにより,水晶振動素子5とIC素子6とが配置されている空間をシールリング3と蓋体4とで気密封止した構造を有している。
【0019】
前記基体1は,例えば,ガラス-セラミック等のセラミック材料によって概略直方体状をなすように形成されており,その上面にはIC素子6を収容するための凹部11が設けられ,該凹部11の開口部周辺に位置する基体1の上面には水晶振動素子5が搭載されている。
【0020】
一方,前記基体1の下面にはグランド端子,電源電圧端子,発振出力端子,発振制御端子等の外部端子9が設けられている。これらの外部端子9は,圧電発振器をマザーボード等の外部電気回路に搭載する際,外部電気回路の回路配線と電気的に接続されるようになっている。
【0021】
また前記基体1の上面には水晶振動素子5の振動電極に接続される一対の搭載パッドが,また前記凹部11の底面にはIC素子6の接続パッドに接続される複数個の電極パッド等がそれぞれ設けられており,対応するパッド(電極)同士を半田等の導電性接着剤を介して電気的・機械的に接続することによって水晶振動素子5が基体上面の所定位置に搭載され,IC素子6が凹部11内の所定位置に搭載されている。
・・・(中略)・・・
【0025】
一方,前記基体1の上面には,先に述べた水晶振動素子5や凹部11の開口部を囲繞するようにして金属製のシールリング3が載置・固定されており,かかるシールリング3上には金属製の蓋体4が取着されている。」

イ 「【0029】
次に上述した圧電発振器の製造方法について図3を用いて説明する。
【0030】
(工程A)
まず,凹部11を有する基板領域Aと複数個の書込制御端子12を有する捨代領域Bとを相互に隣接させて,これらをマトリックス状に配置した母基板10を準備する。
・・・(中略)・・・
【0038】
(工程C)
次に,母基板10の各基板領域Aに,水晶振動素子5と凹部11の開口部とを囲繞するようにしてシールリング3を載置・固定し,しかる後,シールリング3の上部に蓋体4を取着させる。
【0039】
シールリング3及び蓋体4は,42アロイ等の金属を従来周知の金属加工法によって所定形状に成形することによってそれぞれ製作される。
【0040】
そして,前記シールリング3は,母基板10の各基板領域Aに凹部11の開口部や水晶振動素子5の搭載領域を囲繞するようにして予め被着させておいた環状の金属層に対してロウ付けすることによって母基板10に載置・固定され,前記蓋体4は,従来周知のシーム溶接(抵抗溶接)等を採用し,シールリング3の上部(上面)に蓋体4の外周部を接合させることによってシールリング3上に取着され,これによって水晶振動素子5やIC素子6を配設した空間がシールリング3及び蓋体4によって気密封止される。尚,シールリング3や蓋体4の表面には上述したロウ付けやシーム溶接のために予めNiメッキ層やAuメッキ層等が被着される。
・・・(中略)・・・
【0046】
そして母基板10の分割・切断は従来周知のダイシング等によって行なわれ,これによって母基板10が個々の基板領域に対応した複数個の基体1に分割される。」

ウ 図1


エ 図2


(2)上記(1)の記載について,次のことがいえる。
圧電発振器の基体1には,水晶振動素子5とIC素子6とが搭載される。(段落【0018】)
圧電発振器の基体1は,ガラス-セラミック等のセラミック材料によって概略直方体状をなすように形成され,その上面にはIC素子6を収容するための凹部11が設けられ,該凹部11の開口部周辺に位置する基体1の上面には水晶振動素子5が搭載される。(段落【0019】)
圧電発振器の基体1は,下面を有する。(段落【0020】)
基体1の上面には,水晶振動素子5の振動電極に接続される一対の搭載パッドが設けられる。(段落【0021】)
圧電発振器の基体1の上面には,水晶振動素子5や凹部11の開口部を囲繞するようにして金属製のシールリング3が載置・固定される。(段落【0025】)
圧電発振器の製造工程において,シールリング3は,母基板10の凹部11の開口部や水晶振動素子5の搭載領域を囲繞するようにして予め被着させておいた環状の金属層に対してロウ付けすることによって,母基板10に載置・固定され,その後,母基板10は複数個の基体1に分割される。(段落【0029】?【0046】(特に,段落【0040】,【0046】))

(3)上記(1)及び(2)から,引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ガラス-セラミック等のセラミック材料によって概略直方体状をなすように形成され,上面および下面を有する基体と,
上記基体に被着させた,IC素子を収容するための凹部の開口部や水晶振動素子の搭載領域を囲繞する,環状の金属層と,
上記金属層に対してロウ付けされた金属製のシールリングと,
上記基体の上面に設けられ,水晶振動子に接続される一対の搭載パッドと,
上記基体の上面に設けられる凹部の開口部であって,その周辺に水晶振動素子が搭載される,凹部の開口部と,を備え,
基体に水晶振動素子とIC素子とが搭載される,圧電発振器。」

第5 対比・判断
1 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ガラス-セラミック等のセラミック材料」,「上面」,「下面」,「基体」,「金属製のシールリング」,「一対の搭載パッド」,「凹部」は,それぞれ,本願発明の「絶縁材」,「表面」,「裏面」,「パッケージ本体」,「金属枠」,「一対の電極パッド」,「キャビティ」に相当する。
引用発明の「金属製のシールリング」が「金属層に対してロウ付けされ」ることは,本願発明の「金属枠」が「金属層の上にロウ材を介して接合され」ることに相当する。
引用発明の「基体」は,「概略直方体状をなすように形成され」るものであること,及び,引用文献1の図1から,その「上面」および「下面」の平面視が矩形状であることが明らかである。
引用発明の「金属層」は,「上記基体に被着させた,IC素子を収容するための凹部の開口部や水晶振動素子の搭載領域を囲繞する,環状の」ものであること,及び,引用文献1の図1,2から,「基体」の「上面」の周辺部に沿って形成された,平面視が枠状のものであることが明らかである。
引用発明の「金属製のシールリング」は,引用文献1の図1,2から,平面視が矩形枠状であることが明らかである。
引用発明の「金属層」は,「上記基体に被着させた,IC素子を収容するための凹部の開口部や水晶振動素子の搭載領域を囲繞する,環状の」ものであり,「一対の搭載パッド」は,「上記基体の上面に設けられ,水晶振動子に接続される」ものであり,また,「凹部の開口部」は,「上記基体の上面に設けられ」るものであって,「その周辺に水晶振動素子が搭載される」ものであるから,「一対の搭載パッド」は,「水晶振動子」を搭載するためのものであって,「金属層」に囲まれた,「基体」の「上面」に形成されており,また,「凹部の開口部」は,「金属層」に囲まれた,「基体」の「上面」のうち,「一対の搭載パッド」を除いた位置に開口しているといえる。
引用発明の「金属層」,「一対の搭載パッド」および「凹部の開口部」は,引用文献1の図1,2から,いずれも,「基体」の「上面」である同一平面に位置していることが明らかである。
引用発明の「圧電発振器」は,「基体」に「水晶振動素子とIC素子とが搭載される」から,本願発明でいう「パッケージ」に対応するものを備えていることは明らかである。

(2)そうすると,本願発明と引用発明とは,
(一致点)「絶縁材からなり,平面視が矩形状の表面および裏面を有するパッケージ本体と,
上記パッケージ本体の表面の周辺部に沿って形成された平面視が枠状の金属層と,
上記金属層の上にロウ材を介して接合された平面視が矩形枠状である金属枠と,
上記金属層に囲まれたパッケージ本体の表面に形成された水晶振動子を搭載するための一対の電極パッドと,
上記金属層に囲まれたパッケージ本体の表面のうち,上記一対の電極パッドを除いた位置に開口するキャビティの開口部と,を備え,
上記金属層,一対の電極パッド,およびキャビティの開口部が同一平面に位置している,
パッケージ。」
という点で一致し,また,両者は以下の点で相違する。
(相違点1)本願発明は,「金属枠」が「四隅に屈曲部を有する」形状であるとともに,「上記電極パッドのそれぞれにおいて,上記金属枠の屈曲部に最も近い位置は,該電極パッドの外形が平面視で外向きに凸のアール形状となっている」のに対し,引用発明では,「金属製のシールリング」及び「一対の搭載パッド」の形状について,それらの特定がない点。
(相違点2)本願発明は,「上記キャビティの深さは,該キャビティの底面を構成する絶縁材の厚みよりも大きい」のに対し,引用発明では,「凹部」の深さについての特定がない点。

2 判断
(1)そこで,まず相違点1について検討する。
水晶振動子等を収容するパッケージにおいて,金属枠の四隅を屈曲部を有する形状として,その形状に対応させて,屈曲部に最も近い位置の電極パッドの外形を,平面視で外向きに凸のアール形状であるようにすることは,例えば,原査定の拒絶の査定で引用された特開2010-87650号公報(図1),特開2005-101220号公報(図2)のほか,特許第4167614号公報(図1)にも示されているように周知技術であり,引用発明の「金属製のシールリング」の形状及びそれに対する「搭載パッド」の形状の関係に当該周知技術を適用することは,当業者が適宜なし得ることである。

(2)次に,相違点2について検討する。
引用発明の「凹部」は,「IC素子を収容するため」のものであるから,「IC素子」の高さを考慮して,その収容が可能な程度に,「凹部」の深さを大きく設定すべきことが明らかである。
その一方で,引用発明の「基体」における,上記「凹部」の深さを除いた部分の「セラミック材料」の厚み,すなわち,「凹部」の底面を構成する「セラミック材料」の厚みは,「IC素子」を収容可能な程度の機械的強度が得られるように設定すべきであるとしても,「凹部」の深さ寸法との直接の関係はなく,IC素子は通常,小型軽量であるから,機械的強度を確保するために必要な厚みは比較的小さいといえる。
そうすると,引用発明において,「凹部」の深さと,「凹部」の底面を構成する「セラミック材料」の厚みとの大小関係は,単なる設計的事項にすぎず,前者を後者よりも大きくすることは,例えば,原査定の拒絶の査定で引用された特開2012-129775号公報(図6),特開2010-103754号公報(図2)に同様の大小関係が示されているように,当業者が適宜なし得ることである。

(3)また,本願発明の作用効果は,引用発明及び周知技術から当業者が予測できる程度のものである。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-09-03 
結審通知日 2019-09-04 
審決日 2019-09-25 
出願番号 特願2013-169745(P2013-169745)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H03H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 義昭橋本 和志  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 中野 浩昌
富澤 哲生
発明の名称 パッケージ  
代理人 中島 浩貴  

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