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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G02B |
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管理番号 | 1356853 |
異議申立番号 | 異議2019-700524 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-07-03 |
確定日 | 2019-11-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6448182号発明「画像表示装置、偏光板複合体の製造方法、偏光板セットの製造方法、画像表示装置の製造方法及び画像表示装置の視認性改善方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6448182号の請求項1ないし17に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6448182号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?17に係る特許についての出願は、平成25年9月30日に出願され、平成30年12月14日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成31年1月9日に特許掲載公報が発行され、その特許に対し、令和元年7月3日に特許異議申立人 笠原 佳代子(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1?17に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明17」といい、総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、 バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体を備えた画像表示装置であって、 前記光透過性基材(1)は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、リタデーションが3000nm以上であり、膜厚が70?150μmであり、 前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置され、 前記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり、 前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されている ことを特徴とする画像表示装置。 【請求項2】 光透過性基材(1)と光学機能層との間にプライマー層を有し、 前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の遅相軸方向の屈折率(nx)及び前記光学機能層の屈折率(nf)よりも大きい場合(np>nx,nf)、又は、 前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)及び前記光学機能層の屈折率(nf)よりも小さい場合(np<ny,nf)、 前記プライマー層の厚みが3?30nmである請求項1記載の画像表示装置。 【請求項3】 光透過性基材(1)と光学機能層との間にプライマー層を有し、 前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の遅相軸方向の屈折率(nx)よりも大きく、前記光学機能層の屈折率(nf)よりも小さい場合(nx<np<nf)、又は、 前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)よりも小さく、前記光学機能層の屈折率(nf)よりも大きい場合(nf<np<ny)、 前記プライマー層の厚みが65?125nmである請求項1記載の画像表示装置。 【請求項4】 光透過性基材(1)と光学機能層との間にプライマー層を有し、 前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)と前記光透過性基材(1)の遅相軸方向の屈折率(nx)との間に存在する(ny<np<nx)請求項1記載の画像表示装置。 【請求項5】 光透過性基材(2)と偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±15°又は90°±15°となるように積層されている請求項1、2、3又は4記載の画像表示装置。 【請求項6】 光透過性基材(2)は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.01以上である請求項1、2、3、4又は5記載の画像表示装置。 【請求項7】 光透過性基材(2)の屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)と、前記光透過性基材(2)の平均屈折率(N)とが、下記式の関係を有し、かつ、 前記進相軸と偏光子(2)の透過軸とのなす角度が0°±2°である 請求項1、2、3又は4記載の画像表示装置。 nx>N>ny 【請求項8】 面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有する光学積層体が、偏光子(1)上に設けられ、画像表示装置の表面に配置して用いられる偏光板(1)と、 バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板(2)とを有する偏光板セットを備えた画像表示装置であって、 前記光透過性基材(1)は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、リタデーションが3000nm以上であり、膜厚が70?150μmであり、 前記光学積層体と前記偏光子(1)とは、前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記偏光子(1)の吸収軸とが垂直となるように配置され、 前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置され、 前記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり、 前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されている ことを特徴とする画像表示装置。 【請求項9】 光透過性基材(1)と光学機能層との間にプライマー層を有し、 前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の遅相軸方向の屈折率(nx)及び前記光学機能層の屈折率(nf)よりも大きい場合(np>nx,nf)、又は、 前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)及び前記光学機能層の屈折率(nf)よりも小さい場合(np<ny,nf)、 前記プライマー層の厚みが3?30nmである請求項8記載の画像表示装置。 【請求項10】 光透過性基材(1)と光学機能層との間にプライマー層を有し、 前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の遅相軸方向の屈折率(nx)よりも大きく、前記光学機能層の屈折率(nf)よりも小さい場合(nx<np<nf)、又は、 前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)よりも小さく、前記光学機能層の屈折率(nf)よりも大きい場合(nf<np<ny)、 前記プライマー層の厚みが65?125nmである請求項8記載の画像表示装置。 【請求項11】 光透過性基材(1)と光学機能層との間にプライマー層を有し、 前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)と前記光透過性基材(1)の遅相軸方向の屈折率(nx)との間に存在する(ny<np<nx)請求項8記載の画像表示装置。 【請求項12】 バックライト光源として白色発光ダイオードを備えたVAモード又はIPSモードの液晶表示装置である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の画像表示装置。 【請求項13】 バックライト光源と面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)との間に、偏光分離フィルムを有する請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12記載の画像表示装置。 【請求項14】 面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、 バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体の製造方法であって、 前記光透過性基材(1)は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、リタデーションが3000nm以上、膜厚が70?150μmであるものを用い、 前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、前記光学積層体を配置する工程と、 前記光透過性基材(2)と前記偏光子とを、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する工程を有する ことを特徴とする偏光板複合体の製造方法。 【請求項15】 面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有する光学積層体が、偏光子(1)上に設けられ、画像表示装置の表面に配置して用いられる偏光板(1)と、 バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板(2)とを有する偏光板セットの製造方法であって、 前記光透過性基材(1)は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、リタデーションが3000nm以上、膜厚が70?150μmであるものを用い、 前記光学積層体と前記偏光子(1)とは、前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記偏光子(1)の吸収軸とが垂直となるように配置され、 前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置する工程と、 前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する工程を有する ことを特徴とする偏光板セットの製造方法。 【請求項16】 面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、 少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、画像表示装置のバックライト光源側に配置して用いられる偏光板を備えた画像表示装置の製造方法であって、 前記光透過性基材(1)は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、リタデーションが3000nm以上、膜厚が70?150μmであるものを用い、 前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、前記光学積層体を配置する工程と、 前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とを、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する工程を有する ことを特徴とする画像表示装置の製造方法。 【請求項17】 面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、 少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、画像表示装置のバックライト光源側に配置して用いられる偏光板を備えた画像表示装置の視認性改善方法であって、 前記光透過性基材(1)は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、リタデーションが3000nm以上、膜厚が70?150μmであるものを用い、 前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、前記光学積層体を配置するとともに、 前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とを、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する ことを特徴とする画像表示装置の視認性改善方法。」 第3 申立理由の概要 異議申立人は、証拠として以下の甲第1号証?甲第5号証を提出するとともに、次の申立て理由を主張している。 申立て理由(特許法第29条第2項) 本件特許の請求項1?17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。したがって、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。 (異議申立人提出の甲号証) 甲第1号証:特開2009-169389号公報 (当合議体注:甲第1号証が主引用例である。) 甲第2号証:国際公開第2011/162198号 甲第3号証:梅本清司、「大型液晶ディスプレイ用光学補償フィルム」、月刊ディスプレイ、2007年10月号別冊、2007年10月17日、株式会社テクノタイムズ社発行、45?53頁 甲第4号証:特開2013-174852号公報 甲第5号証:特開2010-107542号公報 (以下、「甲第1号証」?「甲第5号証」を、それぞれ「引用例1」?「引用例5」という。) 第4 引用例1に記載された事項 本件特許の出願前に頒布された刊行物である引用例1には、次の事項が記載されている(下線は、当審にて付した。)。 1 「【技術分野】 【0001】 本発明は、液晶パネル用偏光板のセット、ならびにこれを用いた液晶パネルおよび液晶表示装置に関する。 【背景技術】 【0002】 偏光板は、液晶表示装置の主要部材である液晶パネルの構成部品であり、通常、二色性色素が吸着配向したポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの片面または両面に、接着剤層を介して、保護フィルム、たとえば、トリアセチルセルロースに代表される酢酸セルロース系の透明樹脂フィルムを積層した構成となっている。これを、必要により他の光学フィルムを介して、粘着剤を用いて液晶セルに貼り合わせることにより、液晶パネルが得られる。 【0003】 液晶表示装置は、液晶テレビ、液晶モニター、パーソナルコンピュータなど、薄型の表示画面として、用途が急拡大している。特に液晶テレビの市場拡大は著しく、また、低コスト化の要求も非常に強い。液晶テレビ用の偏光板としては、従来、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムの両面にトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)を水系接着剤を用いて積層し、その偏光板の片面に粘着剤を介して位相差フィルムを貼付したものが用いられている。偏光板に積層される位相差フィルムとしては、ポリカーボネート系樹脂フィルムの延伸加工品やシクロオレフィン系樹脂フィルムの延伸加工品などが使用されているが、液晶テレビ用には、高温における位相差ムラの非常に少ないシクロオレフィン系樹脂フィルムからなる位相差フィルムが多用されている。 【0004】 偏光板と延伸シクロオレフィン系樹脂フィルムからなる位相差フィルムとの貼合品については、生産性の向上および製品コストの低減を目的として、構成部品の点数の低減や製造プロセスの簡略化の試みがなされている。たとえば、特許文献1(特に実施例4参照)には、偏光フィルムの片面にTACフィルムを積層し、これとは反対側にTACフィルムを介することなく、位相差機能を有するシクロオレフィン系(ノルボルネン系)樹脂フィルムを積層する構成が開示されている。 ・・・略・・・ 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 また、大画面液晶テレビ用途においては、たとえば壁掛けテレビ用途等として、液晶表示装置のさらなる薄型化および軽量化のニーズが顕在化している。この場合、液晶パネルおよびその構成部品に関し、以下の点が課題となる。 (1)液晶パネルの薄型大画面化に対応して、パネルの強度を補強する必要がある。 (2)液晶テレビの薄型化に対応して、使用する部材の薄肉化が必要となる。 (3)液晶パネルと背面のバックライトシステムとの隙間が狭くなり、液晶パネルとバックライトシステムとの接触に起因する、円形状のムラや、ニュートンリングを防止する必要がある。 【課題を解決するための手段】 【0006】 上記課題を解決するためには、フィルムの機械的強度およびコスト面で優れる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを偏光板の保護フィルムとして使用することが考えられる。しかし、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、液晶表示装置に配置して映像を見た場合、その位相差の影響により、斜め方向から見たときに色ムラ(干渉ムラ、虹ムラともいう)が目立ち、視認性に劣るという問題を有している。特に、液晶表示装置のバックライトと液晶パネルとの間に輝度向上シートを設置した場合の色ムラが著しい。 【0007】 本発明者らは、かかる課題を解決するため鋭意研究を行なった結果、液晶パネルの構成部品である2つの偏光板として、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの片面に延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層した偏光板と、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの片面に延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層した偏光板であって、該偏光板のヘイズ値が45%以上80%以下の範囲である偏光板との組み合わせとすることにより、液晶パネルの強度が補強され、液晶パネルの反りを防止でき、また、液晶表示装置を斜めから観察したときの色ムラも抑制され、視認性に優れた液晶表示装置が得られることを見出し、本発明に到達した。 【0008】 すなわち本発明によれば、第1の偏光板および第2の偏光板からなる液晶パネル用偏光板のセットであって、該第1の偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる第1の偏光フィルムと、該第1の偏光フィルムの片面に積層された第1の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとを有し、該第2の偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる第2の偏光フィルムと、該第2の偏光フィルムの片面に積層された第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを有し、該第2の偏光板のヘイズ値が45%以上80%以下の範囲である偏光板のセットが提供される。ここで、第2の偏光板の内部ヘイズ値が45%以上80%以下の範囲であってもよい。 【0009】 第1の偏光板は、第1の偏光フィルムにおける第1の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層された面とは反対側の面に積層された光学補償フィルムまたは保護フィルムをさらに有していてもよい。また、第2の偏光板は、第2の偏光フィルムにおける第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層された面とは反対側の面に積層された光学補償フィルムまたは保護フィルムをさらに有していてもよい。また、第2の偏光板は、ヘイズを有する粘着剤層をさらに有していてもよく、該粘着剤層は、たとえば第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に積層される。 【0010】 また、本発明によれば、上記第1の偏光板、液晶セル、および上記第2の偏光板がこの順で配置されてなる液晶パネルが提供される。本発明の液晶パネルにおいて、第1の偏光板は、第1の偏光フィルムにおける第1の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層された面とは反対側の面が、液晶セルに対向するように配置される。また、第2の偏光板は、第2の偏光フィルムにおける第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層された面とは反対側の面が、液晶セルに対向するように配置される。 【0011】 さらに、本発明によれば、バックライト、光拡散板、輝度向上シートおよび液晶パネルをこの順で備え、該液晶パネルが上記本発明の液晶パネルである液晶表示装置が提供される。本発明の液晶表示装置において、該液晶パネルは、第1の偏光板が輝度向上シートに対向するように配置される。 【発明の効果】 【0012】 本発明に従う、特定の偏光板のセット(組み合わせ)によれば、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの使用による液晶パネルの機械的強度の向上、薄肉化および反り防止が達成されるとともに、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが有する位相差に起因する、斜め方向から観察したときの色ムラが改善される。かかる偏光板のセットおよびこれを用いた液晶パネルは、大画面液晶テレビ用液晶表示装置、特には壁掛け可能な液晶テレビ用液晶表示装置に好適に適用することができる。」 2 「【発明を実施するための最良の形態】 【0013】 <偏光板> 本発明の偏光板のセットは、第1の偏光板および第2の偏光板の2つの偏光板からなり、これらは液晶パネルの構成部品として用いられるものである。液晶パネルは、液晶セルの一方の面に第1の偏光板を積層し、他方の面に第2の偏光板を積層することにより作製できる。第1の偏光板は、液晶パネルの背面側偏光板として用いられ、第2の偏光板は、液晶パネルの前面側偏光板として用いられる。ここで、「背面側偏光板」とは、液晶パネルを液晶表示装置に搭載した際の、バックライト側に位置する偏光板を意味し、「前面側偏光板」とは、液晶パネルを液晶表示装置に搭載した際の、視認側に位置する偏光板を意味する。以下、各偏光板について詳細に説明する。 【0014】 (第1の偏光板) 第1の偏光板は、液晶パネルの背面側偏光板として用いられるものであり、ポリビニルアルコール系樹脂からなる第1の偏光フィルムの片面に、第1の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層して作製される。第1の偏光フィルムは、具体的には、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたものである。 ・・・略・・・ 【0017】 かかるポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、第1の偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの厚みは特に限定されないが、たとえば、10μm?150μm程度である。 ・・・略・・・ 【0025】 こうしてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、およびホウ酸処理が施され、第1の偏光フィルムが得られる。第1の偏光フィルムの厚みは、たとえば5?40μm程度とすることができる。 【0026】 本発明に係る第1の偏光板は、上記ポリビニルアルコール系樹脂からなる第1の偏光フィルムの片面に、延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムを積層して作製される。延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムは、機械的性質、耐溶剤性、耐スクラッチ性、コストなどに優れたフィルムであり、このようなポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして用いた偏光板は、機械的強度等に優れるとともに、厚みの低減を図ることができる。 ・・・略・・・ 【0029】 上記原料樹脂をフィルム状に成形し、延伸処理を施すことにより、延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムを作製することができる。延伸処理を行なうことにより、機械的強度の高いポリエチレンテレフタレートフィルムを得ることができる。延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムの作製方法は任意であり、特に限定されるものではないが、上記原料樹脂を溶融し、シート状に押出し成形された無配向フィルムを、ガラス転移温度以上の温度において一軸延伸または二軸延伸後、熱固定処理を施す方法を挙げることができる。この場合、延伸温度は80?130℃、好ましくは90?120℃であり、延伸倍率は2.5?6倍、好ましくは3?5.5倍である。延伸倍率が低いと、ポリエチレンテレフタレートフィルムが十分な透明性を示さない傾向にある。 ・・・略・・・ 【0032】 延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みd_(PET)は、20?60μm程度とすることが好ましく、30?50μmとすることがより好ましい。延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みd_(PET)が20μm未満であると、ハンドリングしにくい傾向にあり、厚みd_(PET)が60μmを超えると、薄肉化のメリットが薄れる傾向にある。また、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの面内位相差値R_(PET)は、1000nm以上であることが好ましく、より好ましくは3000nm以上である。面内位相差値R_(PET)が1000nm未満であると、正面からの色つきが目立つ傾向にある。なお、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの面内位相差値R_(PET)は、下記式(1)で表される。 R_(PET)=(n_(a)-n_(b))×d_(PET) (1) ここで、n_(a)は延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの面内遅相軸方向の屈折率、n_(b)は面内進相軸方向(面内遅相軸方向と直交する方向)の屈折率である。 ・・・略・・・ 【0035】 延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムには、2%?40%程度のヘイズが付与されていてもよい。 ・・・略・・・ 【0037】 以上、第1の偏光板の片面に積層される保護フィルムとして、延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる場合を説明したが、延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、延伸されたポリエチレンナフタレートフィルムを用いることもでき、この場合にも上記と同様の効果を得ることができる。 【0038】 第1の偏光板において、第1の偏光フィルムにおける上記ポリエチレンテレフタレートフィルムが貼合される面とは反対側の面には、液晶セルと偏光板とを貼合するための、接着剤あるいは粘着剤の層が形成されてもよい。また、第1の偏光フィルムにおける上記ポリエチレンテレフタレートフィルムが貼合される面とは反対側の面に、たとえば保護フィルムや光学補償フィルムなどとしての透明フィルムを積層し、該透明フィルム上に接着剤あるいは粘着剤の層を形成してもよい。透明フィルムとしては、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)などのセルロース系フィルム、オレフィン系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどが挙げられる。さらに、上記透明フィルム上に、後述する光学機能性フィルムを積層し、該光学機能性フィルム上に接着剤あるいは粘着剤の層を形成することもできる。 【0039】 上記セルロース系フィルムは、セルロースの部分エステル化物または完全エステル化物からなるフィルムであり、たとえば、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、それらの混合エステルなどからなるフィルムを挙げることができる。 ・・・略・・・ 【0040】 また、セルロース系フィルムからなる光学補償フィルムとしては、たとえば、セルロース系フィルムに位相差調整機能を有する化合物を含有させたフィルム、セルロース系フィルム表面に位相差調整機能を有する化合物を塗布したフィルム、セルロース系フィルムを一軸延伸または二軸延伸して得られるフィルムなどが挙げられる。 ・・・略・・・ 【0041】 上記オレフィン系フィルムからなる光学補償フィルムとしては、たとえば、シクロオレフィン系樹脂フィルムを一軸延伸または二軸延伸して得られる光学補償フィルムを挙げることができる。大型液晶テレビ用液晶パネル、特に垂直配向(VA)モードの液晶セルを備える液晶パネルに本発明の偏光板のセットを用いる場合には、上記光学補償フィルムとしては、シクロオレフィン系樹脂フィルムの延伸品が、光学特性、耐久性の点からも好適である。 ・・・略・・・ 【0047】 延伸されたシクロオレフィン系樹脂フィルムの厚みdは、厚すぎると、加工性に劣るものとなり、また、透明性が低下したり、偏光板の重量が大きくなったりするなどの問題が生じやすい。そこで、延伸されたシクロオレフィン系樹脂フィルムの厚みdは、40μm?80μm程度であるのが好ましい。 【0048】 延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上、および/または、第1の偏光フィルムにおける当該延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが貼合される面とは反対側の面に積層された光学補償フィルムまたは保護フィルムとしての透明フィルム上には、接着剤または粘着剤を介して光学機能性フィルムを貼着してもよい。光学機能性フィルムとしては、上述したセルロース系フィルムまたはシクロオレフィン系フィルムを基材とする光学補償フィルムのほか、たとえば、基材表面に液晶性化合物が塗付され、配向されている光学補償フィルム、ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する輝度向上シート(反射型偏光フィルムとも呼ばれる。)、ポリカーボネート系樹脂からなる位相差フィルム、表面に凹凸形状を有する防眩機能付きフィルム、表面反射防止処理付きフィルム、表面に反射機能を有する反射フィルム、反射機能と透過機能とを併せ持つ半透過反射フィルムなどが挙げられる。・・・略・・・ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する輝度向上シート(反射型偏光フィルム)に相当する市販品としては、3M Company(3M社)(日本では住友スリーエム(株))から販売されている「DBEF」(商品名)などがある。 ・・・略・・・ 【0059】 ・・・略・・・乾燥後の接着剤層の厚みは、通常0.001?5μm程度であり、好ましくは0.01μm以上、また好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。接着剤層の厚みが大きくなりすぎると、偏光板の外観不良となりやすい。 ・・・略・・・ 【0061】 ・・・略・・・なお、活性エネルギー線照射後の接着剤層の厚みは、通常0.001?5μm程度であり、好ましくは0.01μm以上、また好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。」 ・・・略・・・ 【0063】 (第2の偏光板) 第2の偏光板は、液晶パネルの前面側(視認側)偏光板として用いられるものであり、ポリビニルアルコール系樹脂からなる第2の偏光フィルムと、その片面に積層された第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとを備える。第2の偏光板のヘイズ(全体ヘイズとも称する。)値は、45%以上80%以下の範囲である。第2の偏光フィルムは、具体的には、延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたものであり、第1の偏光フィルムについて説明したものを同様に用いることができる。第1の偏光フィルムと第2の偏光フィルムとは、外形(厚み等)、材質および製造方法などに関し、同じであっても異なっていてもよい。 【0064】 また、第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、第1の偏光板について記述したものを同様に用いることができる。すなわち、一軸延伸または二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムである。第1の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとは、外形、材質および製造方法などに関し、同じであっても異なっていてもよい。延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムを第2の偏光フィルムの保護フィルムとして用いることにより、液晶パネルの機械的強度をより向上させることができるとともに、液晶パネルのさらなる薄肉化を達成することが可能となる。また、第2の偏光板においても保護フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることにより、第1の偏光板に用いる保護フィルムと第2の偏光板に用いる保護フィルムとが同じ材質から構成されることとなるため、液晶パネルの反りを防止することができる。これにより、薄型の液晶表示装置に適用した場合においても、液晶パネルとバックライトシステムとの接触に起因する円形状のムラやニュートンリングを防止することが可能となる。 【0065】 第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みは、20?60μm程度とすることが好ましく、30?50μmとすることがより好ましい。第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みが20μm未満であると、ハンドリングしにくい傾向にあり、厚みが60μmを超えると、薄肉化のメリットが薄れる傾向にある。 【0066】 第2の偏光板のヘイズ(全体ヘイズ)値は、45%以上80%以下の範囲であり、好ましくは、45%より大きい。より好ましくは、60%以上80%以下である。第2の偏光板のヘイズ値を45?80%の範囲内にすることにより、第1の偏光板および第2の偏光板に用いる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが有する位相差に起因する、斜め方向から観察したときの色ムラ、特には液晶表示装置のバックライトと液晶パネルとの間に輝度向上シートを設置した場合の色ムラが改善され、視認性に優れた液晶表示装置を提供することが可能となる。第2の偏光板のヘイズ値が45%より低いと、バックライトと液晶パネルとの間に輝度向上シートを設置した場合、明瞭な色ムラが発生し、視認性が阻害される。また、80%より高いと画面が著しく白ちゃけて視認性が低下する傾向にある。 ・・・略・・・ 【0069】 第2の偏光板に上記範囲内のヘイズを付与する方法としては、特に限定されないが、たとえば次の方法を挙げることができる。 (i)上記した第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として、その表面に微細な表面凹凸形状を有するハードコート層を積層する方法。 ・・・略・・・ 【0070】 上記方法(i)としては、第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、硬化性樹脂組成物からなるバインダー成分と無機微粒子または有機微粒子とを含有する塗布液を塗布し硬化させる方法などを例示することができる。これにより、第2の偏光板に表面ヘイズおよび内部ヘイズを付与することができる。ハードコート層を形成することにより、偏光板の硬度を向上させることができるため、表面の傷付きを防止する効果も得ることができる。無機微粒子としては、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、アルミノシリケート、アルミナ-シリカ複合酸化物、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等を代表的なものとして用いることができる。また、有機微粒子としては、架橋ポリアクリル酸粒子、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリメチルメタクリレート粒子、シリコーン樹脂粒子、ポリイミド粒子などの樹脂粒子を用いることができる。 ・・・略・・・ 【0083】 ハードコート層の厚みは、特に限定されないが、2μm以上30μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以上30μm以下である。ハードコート層の厚みが2μm未満であると、十分な硬度が得られず、表面が傷付きやすくなる傾向にあり、また、30μmより厚くなると、割れやすくなったり、ハードコート層の硬化収縮により延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムがカールして生産性が低下したりする傾向がある。 ・・・略・・・ 【0098】 第2の偏光板において、第2の偏光フィルムにおける第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが貼合される面とは反対側の面には、液晶セルと偏光板とを貼合するための、接着剤あるいは粘着剤の層が形成されてもよい。上記ヘイズを有する粘着剤層の形成は、その一例である。また、第2の偏光フィルムにおける第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが貼合される面とは反対側の面には、たとえば保護フィルムや光学補償フィルムなどとしての透明フィルムを積層し、該透明フィルム上に接着剤あるいは粘着剤の層を形成してもよい。透明フィルムとしては、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)などのセルロース系フィルム、オレフィン系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどが挙げられる。さらに、上記透明フィルム上に、光学機能性フィルムを積層し、該光学機能性フィルム上に接着剤あるいは粘着剤の層を形成することもできる。光学補償フィルムおよび光学機能性フィルムとしては、第1の偏光板について記述したものを同様に用いることができる。 【0099】 第2の偏光フィルムに第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムおよび/または保護フィルムや光学補償フィルムなどとしての透明フィルムを積層する方法については、第1の偏光板について記述した方法を同様に採用することができる。第2の偏光フィルムの両面に接着剤を用いる場合は、両面同種の接着剤を用いてもよく、また異種の接着剤を用いてもよい。また、第1の偏光板の作製に使用される接着剤と第2の偏光板の作製に使用される接着剤は、同じであっても、異なっていてもよい。」 3 「【0100】 <液晶パネルおよび液晶表示装置> 本発明の液晶パネルは、上記偏光板のセットを用いた液晶パネルであり、具体的には、上記第1の偏光板、液晶セル、および上記第2の偏光板をこの順で配置してなる。ここで、第1の偏光板は、第1の偏光フィルムにおける第1の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層された面とは反対側の面が、液晶セルに対向するように配置され、第2の偏光板は、第2の偏光フィルムにおける第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層された面とは反対側の面が、液晶セルに対向するように配置される。すなわち、第1の偏光板は、第1の偏光フィルムにおける第1の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層された面とは反対側の面を接着面として、接着剤あるいは粘着剤を用いて液晶セルに貼付されるか、または第1の偏光フィルムにおける第1の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層された面とは反対側の面に積層された保護フィルムや光学補償フィルムなどとしての透明フィルム、あるいは、さらにその上に積層された光学機能性フィルムを介して液晶セルに貼付される。同様に、第2の偏光板は、第2の偏光フィルムにおける第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層された面とは反対側の面を接着面として、接着剤あるいは粘着剤を用いて液晶セルに貼付されるか、または第2の偏光フィルムにおける第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層された面とは反対側の面に積層された保護フィルムや光学補償フィルムなどとしての透明フィルム、あるいは、さらにその上に積層された光学機能性フィルムを介して液晶セルに貼付される。 【0101】 液晶セルとしては、従来公知の構成を採用することができ、たとえばツイステッドネマティック(TN)モード、垂直配向(VA)モードなど各種方式の液晶セルを用いることができる。 【0102】 かかる本発明の偏光板のセットを用いた液晶パネルは、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを第1の偏光板の保護フィルムおよび第2の偏光板の保護フィルムとして用いていることから、機械的強度の向上および薄肉化、さらに、反り防止が実現されている。また、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの位相差に起因する色ムラ(干渉ムラ)、特に、バックライトと液晶パネルとの間に輝度向上シートを設置した場合の色ムラは、第2の偏光板のヘイズ値を45%以上80%の範囲とすることより低減されている。 【0103】 図1は、本発明の液晶表示装置の層構成の一例を示す概略断面図である。図1に示される液晶表示装置は、バックライト10、光拡散板50、輝度向上シート51、および、液晶セル40と、液晶セル40の一方の面に貼付された背面側偏光板としての第1の偏光板20と、液晶セル40の他方の面に貼付された前面側偏光板としての第2の偏光板30とからなる液晶パネルをこの順で配置してなる。第1の偏光板20は、第1の偏光フィルム21を、光学補償フィルム23と第1の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム25とで挟持した構成を有しており、光学補償フィルム23が液晶セル40に対向するように配置されている。また、第2の偏光板30は、第2の偏光フィルム31を、光学補償フィルム33と第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム35を基材としてその表面に微細な凹凸形状を有するハードコート層36を積層したヘイズを有する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム34とで挟持した構成を有しており、光学補償フィルム33が液晶セル40に対向するように配置されている。この例において、第2の偏光板30は、上記した方法(i)によってヘイズが付与されている。図1に示される本発明の液晶表示装置において、液晶パネルは、背面側偏光板である第1の偏光板20がバックライト側となるように、すなわち、第1の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム25が輝度向上シート51と対向するように配置される。 ・・・略・・・ 【0105】 光拡散板50と液晶パネルとの間には、輝度向上シート51を設けることが好ましい。輝度向上シートとは、第1の偏光板の説明において述べたように、反射型偏光フィルムとも呼ばれ、ある方向の偏光光を透過し、それと直交方向の偏光光を反射する機能を有する。光拡散板50と液晶パネルとの間に輝度向上シート51を設けることにより、ある方向の偏光光が増え、光の利用効率が上げるため、結果的に輝度を向上させることができる。輝度向上シート(反射型偏光フィルム)に相当する市販品としては、3M Company(3M社)(日本では住友スリーエム(株))から販売されている「DBEF」(商品名)などがある。・・・略・・・本発明の偏光板のセットは、特に、輝度向上シートを備える液晶表示装置に適用する際に有用である。 【0106】 また、光拡散板50と液晶パネルとの間には、輝度向上シートに加えて、または輝度向上シートの代わりに、たとえばプリズムシート(集光シートとも呼ばれ、たとえば、3M社製の「BEF」などが該当する)、光拡散シートなど、他の光学機能性を示すシートを配置することもできる。他の光学機能性を示すシートは、必要に応じて複数種類配置することも可能である。 【0107】 かかる本発明の液晶表示装置は、本発明の液晶パネルを用いたものであり、液晶パネルと同様に、機械的強度の向上および薄肉化が実現されているとともに、色ムラ(干渉ムラ)が改善されている。また、液晶パネルの反りが抑制されていることから、液晶パネルとバックライトシステムとの接触に起因する、円形状のムラや、ニュートンリングの発生が効果的に抑制されている。なお、本発明の液晶表示装置は、図1に示される構成に限定されるものではなく、種々の変形を加えることができる。たとえば、上記したように、光学補償フィルム23および/または光学補償フィルム33は、必ずしも必要ではなく省略されてもよい。また、光学補償フィルム23および/または光学補償フィルム33の代わりに、保護フィルムが用いられてもよい。さらに、当該保護フィルム上および/または第1の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム25上には、上記した光学機能性フィルムが積層されてもよい。」 4 「【実施例】 【0108】 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%および部は、特記ないかぎり重量基準である。 【0109】 [製造例1]偏光フィルムの作製 平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬した。引き続き、8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得た。延伸は、主に、ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行ない、トータル延伸倍率は5.3倍であった。 【0110】 [製造例2]ヘイズを有するポリエチレンテレフタレートフィルムの作製 次の各成分が酢酸エチルに固形分濃度60%で溶解されており、硬化後に1.53の屈折率を示す紫外線硬化性樹脂組成物を用意した。 【0111】 ペンタエリスリトールトリアクリレート 60部 多官能ウレタン化アクリレート(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物) 40部 次に、この紫外線硬化性樹脂組成物の固形分100重量部に対して、多孔質シリカ粒子「サイリシア」(商品名、富士シリシア化学(株)製)と、光重合開始剤である「ルシリン TPO」(BASF社製、化学名:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)を5重量部添加して塗布液を調製した。 【0112】 この塗布液を、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ40μm)上に塗布し、80℃に設定した乾燥機中で3分間乾燥させた。乾燥後のフィルムの紫外線硬化性樹脂組成物層側より、強度20mW/cm^(2)の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で300mJ/cm^(2)となるように照射し、紫外線硬化性樹脂組成物層を硬化させて、表面に凹凸を有するハードコート層(硬化樹脂)と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとの積層体からなる、以下のヘイズ値を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(A)?(D)を得た。ヘイズ値の調整は、多孔質シリカ粒子の添加量を変えることにより行なった。ヘイズは、JIS K 7136に準拠した(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメーター「HM-150」型を用いて測定した。また、ヘイズの測定に際しては、フィルムの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて、ハードコート層の凹凸面が表面となるように、ポリエチレンテレフタレートフィルム面をガラス基板に貼合してから測定に供した。 【0113】 ヘイズを有するポリエチレンテレフタレートフィルム(A): ヘイズ45% ヘイズを有するポリエチレンテレフタレートフィルム(B): ヘイズ75% ヘイズを有するポリエチレンテレフタレートフィルム(C): ヘイズ85% ヘイズを有するポリエチレンテレフタレートフィルム(D): ヘイズ35% ・・・略・・・ 【0116】 <実施例1> (a)背面側偏光板の作製 製造例1で得られた偏光フィルムの片面に、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ40μm)を、その貼合面にコロナ処理を施した後、接着剤を介して貼合した。偏光フィルムの反対面には、二軸延伸ノルボルネン系樹脂からなる光学補償フィルム(厚さ73μm、面内位相差値63nm、厚み方向位相差値225nm)を、その貼合面にコロナ処理を施した後、接着剤を介して貼合し、背面側偏光板を得た。なお、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムおよび二軸延伸ノルボルネン系樹脂からなる光学補償フィルムは、それらの遅相軸が偏光フィルムの延伸軸とそれぞれ直交するように貼合した。次に、該背面側偏光板の二軸延伸ノルボルネン系光学補償フィルム面に粘着剤(厚さ25μm)の層を設けた。 【0117】 (b)前面側偏光板の作製 製造例1で得られた偏光フィルムの片面に、製造例2で得られたヘイズを有するポリエチレンテレフタレートフィルム(A)を、接着剤を介して貼合し、偏光フィルムの反対面にはケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm)を、接着剤を介して貼合して、前面側偏光板を得た。なお、ヘイズを有するポリエチレンテレフタレートフィルム(A)は、その延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸が該偏光フィルムの延伸軸と直交するように貼合した。該前面側偏光板のトリアセチルセルロースフィルム面に粘着剤(厚さ25μm)の層を設けた。なお、該前面側偏光板のヘイズ値は、ヘイズを有するポリエチレンテレフタレートフィルム(A)のヘイズ値と略同一である。 【0118】 (c)液晶パネルおよび液晶表示装置の作製 垂直配向モードの液晶表示素子が搭載された市販の液晶テレビ(シャープ(株)製の「LC-42GX1」)の液晶セルから両面の偏光板を剥離し、液晶セルの背面(バックライト側)には、上記背面側偏光板を、液晶セルの前面(視認側)には、上記前面側偏光板を、いずれも偏光板の吸収軸が、元々液晶テレビに貼付されていた偏光板の吸収軸方向と一致するように、粘着剤層を介して貼り合わせて、液晶パネルを作製した。次に、この液晶パネルを、バックライト/光拡散板/拡散シート/拡散シート/輝度向上シート/液晶パネルの構成で組み立てて、液晶表示装置を作製した。当該液晶表示装置について、斜め方向から見たときの色ムラ(干渉ムラ)は小さかった。また、液晶パネルの反りも小さかった。 ・・・略・・・ 【0125】 今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。 【図面の簡単な説明】 【0126】 【図1】本発明の液晶表示装置の層構成の一例を示す概略断面図である。 【符号の説明】 【0127】 10 バックライト、20 第1の偏光板、21 第1の偏光フィルム、23,33 光学補償フィルム、25 第1の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、30 第2の偏光板、31 第2の偏光フィルム、34 ヘイズを有する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、35 第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、36 ハードコート層、40 液晶セル、50 光拡散板、51 輝度向上シート。」 5 「【図1】 」 6 引用例1の上記4の記載に基づけば、引用例1には、「実施例1」において作製された「液晶表示装置」の発明として、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明」という。)。 「平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬し、その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬し、引き続き、8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得て、ここで、延伸は、主に、ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行ない、トータル延伸倍率は5.3倍として、偏光フィルムを作製し、 得られた偏光フィルムの片面に、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ40μm)を、その貼合面にコロナ処理を施した後、接着剤を介して貼合し、偏光フィルムの反対面には、二軸延伸ノルボルネン系樹脂からなる光学補償フィルム(厚さ73μm、面内位相差値63nm、厚み方向位相差値225nm)を、その貼合面にコロナ処理を施した後、接着剤を介して貼合し、ここで、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムおよび二軸延伸ノルボルネン系樹脂からなる光学補償フィルムは、それらの遅相軸が偏光フィルムの延伸軸とそれぞれ直交するように貼合され、二軸延伸ノルボルネン系光学補償フィルム面に粘着剤(厚さ25μm)の層を設けることにより、背面側偏光板を作製し、 偏光フィルムの片面に、表面に凹凸を有するハードコート層(硬化樹脂)と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ40μm)との積層体からなる、45%のヘイズ値を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(A)を、接着剤を介して貼合し、偏光フィルムの反対面にはケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm)を、接着剤を介して貼合し、ここで、ヘイズを有するポリエチレンテレフタレートフィルム(A)は、その延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸が偏光フィルムの延伸軸と直交するように貼合され、トリアセチルセルロースフィルム面に粘着剤(厚さ25μm)の層を設けることにより、前面側偏光板を作製し、 垂直配向モードの液晶表示素子が搭載された市販の液晶テレビ(シャープ(株)製の「LC-42GX1」)の液晶セルから両面の偏光板を剥離し、液晶セルの背面(バックライト側)には、背面側偏光板を、液晶セルの前面(視認側)には、前面側偏光板を、いずれも偏光板の吸収軸が、元々液晶テレビに貼付されていた偏光板の吸収軸方向と一致するように、粘着剤層を介して貼り合わせて、液晶パネルを作製し、この液晶パネルを、バックライト/光拡散板/拡散シート/拡散シート/輝度向上シート/液晶パネルの構成で組み立てて作製した、斜め方向から見たときの色ムラ(干渉ムラ)は小さく、また、液晶パネルの反りも小さい、液晶表示装置。」 7 引用例1の上記4の記載に基づけば、引用例1には、「実施例1」の「背面側偏光板及び前面側偏光板の作製方法」の発明として、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「引用背面側・前側偏光板作製方法発明」という。)。 「平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬し、その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬し、引き続き、8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得て、ここで、延伸は、主に、ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行ない、トータル延伸倍率は5.3倍として、偏光フィルムを作製し、 得られた偏光フィルムの片面に、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ40μm)を、その貼合面にコロナ処理を施した後、接着剤を介して貼合し、偏光フィルムの反対面には、二軸延伸ノルボルネン系樹脂からなる光学補償フィルム(厚さ73μm、面内位相差値63nm、厚み方向位相差値225nm)を、その貼合面にコロナ処理を施した後、接着剤を介して貼合し、ここで、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムおよび二軸延伸ノルボルネン系樹脂からなる光学補償フィルムは、それらの遅相軸が偏光フィルムの延伸軸とそれぞれ直交するように貼合され、二軸延伸ノルボルネン系光学補償フィルム面に粘着剤(厚さ25μm)の層を設けることにより、背面側偏光板を作製し、 偏光フィルムの片面に、表面に凹凸を有するハードコート層(硬化樹脂)と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ40μm)との積層体からなる、45%のヘイズ値を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(A)を、接着剤を介して貼合し、偏光フィルムの反対面にはケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm)を、接着剤を介して貼合し、ここで、ヘイズを有するポリエチレンテレフタレートフィルム(A)は、その延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸が偏光フィルムの延伸軸と直交するように貼合され、トリアセチルセルロースフィルム面に粘着剤(厚さ25μm)の層を設けることにより、前面側偏光板を作製する、背面側偏光板及び前面側偏光板の作製方法であって、 背面側偏光板及び前面側偏光板は、垂直配向モードの液晶表示素子が搭載された市販の液晶テレビ(シャープ(株)製の「LC-42GX1」)の液晶セルから両面の偏光板を剥離し、液晶セルの背面(バックライト側)には、背面側偏光板を、液晶セルの前面(視認側)には、前面側偏光板を、いずれも偏光板の吸収軸が、元々液晶テレビに貼付されていた偏光板の吸収軸方向と一致するように、粘着剤層を介して貼り合わせて、液晶パネルを作製し、この液晶パネルを、バックライト/光拡散板/拡散シート/拡散シート/輝度向上シート/液晶パネルの構成で組み立てて作製した、斜め方向から見たときの色ムラ(干渉ムラ)は小さく、また、液晶パネルの反りも小さい、液晶表示装置とするものである、 背面側偏光板及び前側偏光板の作製方法。」 8 引用例1の上記4の記載に基づけば、引用例1には、「実施例1」において、「斜め方向から見たときの色ムラ(干渉ムラ)は小さ」く、「また、液晶パネルの反りも小さ」い「液晶表示装置」の作製方法の発明として、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「引用液晶表示装置作製方法発明」という。)。 「斜め方向から見たときの色ムラ(干渉ムラ)は小さく、また、液晶パネルの反りも小さい液晶表示装置の作製方法であって、 平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬し、その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬し、引き続き、8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得て、ここで、延伸は、主に、ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行ない、トータル延伸倍率は5.3倍として、偏光フィルムを作製し、 得られた偏光フィルムの片面に、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ40μm)を、その貼合面にコロナ処理を施した後、接着剤を介して貼合し、偏光フィルムの反対面には、二軸延伸ノルボルネン系樹脂からなる光学補償フィルム(厚さ73μm、面内位相差値63nm、厚み方向位相差値225nm)を、その貼合面にコロナ処理を施した後、接着剤を介して貼合し、ここで、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムおよび二軸延伸ノルボルネン系樹脂からなる光学補償フィルムは、それらの遅相軸が偏光フィルムの延伸軸とそれぞれ直交するように貼合され、二軸延伸ノルボルネン系光学補償フィルム面に粘着剤(厚さ25μm)の層を設けることにより、背面側偏光板を作製し、 偏光フィルムの片面に、表面に凹凸を有するハードコート層(硬化樹脂)と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ40μm)との積層体からなる、45%のヘイズ値を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(A)を、接着剤を介して貼合し、偏光フィルムの反対面にはケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm)を、接着剤を介して貼合し、ここで、ヘイズを有するポリエチレンテレフタレートフィルム(A)は、その延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸が偏光フィルムの延伸軸と直交するように貼合され、トリアセチルセルロースフィルム面に粘着剤(厚さ25μm)の層を設けることにより、前面側偏光板を作製し、 垂直配向モードの液晶表示素子が搭載された市販の液晶テレビ(シャープ(株)製の「LC-42GX1」)の液晶セルから両面の偏光板を剥離し、液晶セルの背面(バックライト側)には、背面側偏光板を、液晶セルの前面(視認側)には、前面側偏光板を、いずれも偏光板の吸収軸が、元々液晶テレビに貼付されていた偏光板の吸収軸方向と一致するように、粘着剤層を介して貼り合わせて、液晶パネルを作製し、この液晶パネルを、バックライト/光拡散板/拡散シート/拡散シート/輝度向上シート/液晶パネルの構成で組み立てて液晶表示装置を作製する、 液晶表示装置の作製方法。」 9 引用例1の上記4の記載に基づけば、引用例1には、「実施例1」として、「引用液晶表示装置作製方法発明により液晶表示装置を作製することにより、液晶表示装置を斜め方向から見たときの色ムラ(干渉ムラ)を小さくする方法」の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用色ムラ解消方法」という。)。 第5 当審の判断 1 本件発明1について (1) 対比 本件発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明における「背面側偏光板」は、「偏光フィルムの片面に、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ40μm)を」「貼合し」、「偏光フィルムの反対面に」、「二軸延伸ノルボルネン系樹脂からなる光学補償フィルム(厚さ73μm、面内位相差値63nm、厚み方向位相差値225nm)を」「貼合し」、「ここで、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムおよび二軸延伸ノルボルネン系樹脂からなる光学補償フィルムは、それらの遅相軸が偏光フィルムの延伸軸とそれぞれ直交するように貼合され、二軸延伸ノルボルネン系光学補償フィルム面に粘着剤(厚さ25μm)の層を設けることにより」「作製し」たものである。 イ 引用発明における「前面側偏光板」は、「偏光フィルムの片面に、表面に凹凸を有するハードコート層」「と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ40μm)との積層体からなる」「45%のヘイズ値を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(A)を」「貼合し、偏光フィルムの反対面に」「トリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm)を」「貼合し」、「ここで、ヘイズを有するポリエチレンテレフタレートフィルム(A)は、その延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸が偏光フィルムの延伸軸と直交するように貼合され、トリアセチルセルロースフィルム面に粘着剤(厚さ25μm)の層を設けることにより」「作製し」たものである。 ウ 引用発明の「液晶表示装置」は、「垂直配向モードの液晶表示素子が搭載された市販の液晶テレビ(シャープ(株)製の「LC-42GX1」)の液晶セルから両面の偏光板を剥離し、液晶セルの背面(バックライト側)に」「背面側偏光板を、液晶セルの前面(視認側)に」「前面側偏光板を、いずれも偏光板の吸収軸が、元々液晶テレビに貼付されていた偏光板の吸収軸方向と一致するように、粘着剤層を介して貼り合わせて、液晶パネルを作製し、この液晶パネルを、バックライト/光拡散板/拡散シート/拡散シート/輝度向上シート/液晶パネルの構成で組み立てて作製」したものである。 エ 「光学積層体」について (ア) 上記イより、引用発明の「前面側偏光板」の「45%のヘイズ値を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(A)」は、「表面に凹凸を有するハードコート層」「と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ40μm)との積層体からなる」。 引用発明の「表面に凹凸を有するハードコート層」は、本件発明1の「光学機能層」に相当する。 また、引用発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルム(A)」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、技術的にみて、面内に複屈折を有するものである。さらに、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、光透過性を有することは技術常識である。 そうすると、引用発明の「前面側偏光板」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件発明1の「光透過性基材(1)」に相当し、引用発明の「前面側偏光板」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件発明1の「光透過性基材(1)」の「面内に複屈折率を有する」との要件を具備する。 (イ) 上記(ア)より、引用発明の「45%のヘイズ値を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(A)」は、本件発明1の「光学積層体」に相当し、本件発明1の「光学積層体」の「面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し」との要件を具備する。 (ウ) 上記イより、引用発明の「前面側偏光板」においては、「ポリエチレンテレフタレートフィルム(A)」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の「遅相軸が偏光フィルムの延伸軸と直交する」。 また、上記ウより、引用発明の「前面側偏光板」は、「垂直配向モードの液晶表示素子が搭載された市販の液晶テレビ(シャープ(株)製の「LC-42GX1」)の液晶セルから両面の偏光板を剥離し」、「液晶セルの前面(視認側)に」、「偏光板の吸収軸が、元々液晶テレビに貼付されていた偏光板の吸収軸方向と一致するように」、「貼り合わせ」られる。 また、引用発明の「液晶表示装置」は、本件発明1の「画像表示装置」に相当する。 そうすると、上記(ア)、(イ)より、引用発明の「45%のヘイズ値を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(A)」は、本件発明1の「光学積層体」の「画像表示装置の表面に配置して用いられる」との要件を具備する。 (エ) 垂直配向(VA)モードの液晶表示装置においては、視認側の偏光板の偏光子の「吸収軸」が液晶表示装置の「水平方向」とされる(言い換えると、偏光子の「透過軸」が液晶表示装置の「上下方向」とされる)ことは技術常識である(例えば、引用例3の47頁右欄の記載及び図5や、国際公開第2012/026341号の[0006]の「出願人(当合議体注:当該国際出願の出願人は「シャープ株式会社」である。)が、世界に先駆けMVAモードの液晶表示パネルを用いた液晶テレビを量産し市場に供給した際、クロスニコルに配置される2つの偏光板の内の、観察者側の偏光板の透過軸を表示面内の垂直方向(時計の文字盤に例えると6時-12時に平行な方向)に配置することにした。この偏光板の透過軸の配置は、現在、VAモード(MVAモードおよびRTNモードを含む)の液晶表示パネル(特にTV用などの大型液晶表示パネル)において業界標準になっている。」との記載や、[0007]の「上記の偏光板の透過軸の配置は、偏光サングラスをかけた観察者にも映像がみえるようにするために選ばれた。なお、偏光サングラスは、特に屋外でのぎらつきの原因となる水平な表面からの反射光に多く含まれるS偏光(偏光軸は水平方向)を除去するために、その偏光軸は垂直方向(鉛直方向)になるように配置されている。」との記載を参照。)。 そうすると、「垂直配向モードの液晶表示素子が搭載された市販の液晶テレビ(シャープ(株)製の「LC-42GX1」)の液晶セル」を利用する引用発明においては、「偏光板の吸収軸が、元々液晶テレビに貼付されていた偏光板の吸収軸方向と一致するように」「貼り合わせ」られるのであるから、「貼り合わせ」後、引用発明の「液晶表示装置」は、当然、視認側の偏光板の偏光子の「吸収軸」が液晶表示装置の「水平方向」(長手方向)となり、「透過軸」が液晶表示装置の「上下方向」となる。 そして、偏光フィルムの「延伸軸」は「吸収軸」に対応することが技術常識であるところ、引用発明においては、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の「遅相軸が偏光フィルムの延伸軸」(「吸収軸」)「と直交」しているから、引用発明においては、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の「遅相軸」は、結局、「液晶表示装置」の「水平方向」と直交に配列、すなわち、「液晶表示装置」の「上下方向」と平行に配列されているということができる。 そうすると、引用発明は、本件発明1の「光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置され」との要件を具備する。 オ 「偏光板」について (ア) 上記アの「背面側偏光板」の積層構造、上記イの「前面側偏光板」の積層構造及び上記ウの「液晶表示装置」の積層構造からみて、引用発明の「液晶表示装置」は、「バックライト/光拡散板/拡散シート/拡散シート/輝度向上シート/延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ40μm)/偏光フィルム/二軸延伸ノルボルネン系樹脂からなる光学補償フィルム(厚さ73μm、面内位相差値63nm、厚み方向位相差値225nm)/粘着剤(厚さ25μm)/液晶セル/粘着剤(厚さ25μm)/トリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm)/偏光フィルム/延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ40μm)/ハードコート層」からなる積層構造を有する。 (イ) 上記エ(ア)と同様、引用発明の「背面側偏光板」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件発明1の「光透過性基材(2)」に相当し、引用発明の「背面側偏光板」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件発明1の「光透過性部材(2)」の「面内に複屈折率を有する」との要件を具備する。 (ウ) 引用発明の「背面側偏光板」の「偏光フィルム」は、本件発明1の「偏光子(2)」に相当する。 (エ) 上記(ア)?(ウ)より、引用発明の「背面側偏光板」は、本件発明1の「偏光板」に相当し、引用発明の「背面側偏光板」は、本件発明1の「偏光板」の「バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる」との要件を具備する。 (オ) 引用発明の「輝度向上シート」は、「バックライト」からの照明光を特定の方向の直線偏光とするとともに輝度を向上して液晶セル側に出力するものであることは、当業者の技術常識である。 そうすると、上記(ア)より、引用発明においては、「輝度向上シート」からの特定の方向の直線偏光が、「背面側偏光板」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ40μm)」に入射する。 そうしてみると、引用発明は、本件発明1の「前記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり」との要件を具備する。 (カ) 上記アより、引用発明の「背面側偏光板」においては、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」「の遅相軸が偏光フィルムの延伸軸とそれぞれ直交するように貼合され」る。 そうすると、引用発明の「背面側偏光板」においては、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の「遅相軸」方向と直交する屈折率が小さい方向である進相軸と、「偏光フィルムの延伸軸」(吸収軸)と直交する「透過軸」とが平行となる。 そうしてみると、上記(ア)と(エ)より、引用発明は、本件発明1の「前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されている」との要件を具備する。 カ 「偏光板複合体」について 上記ア?オより、引用発明の「液晶表示装置」における「45%のヘイズ値を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(A)」及び「背面側偏光板」は、本件発明1の「偏光板複合体」に相当し、引用発明の「液晶表示装置」における「45%のヘイズ値を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(A)」及び「背面側偏光板」は、本件発明1の「偏光板複合体」の「光学積層体と、」「偏光板とを有する」との要件を具備する。 キ 上記エ?カより、引用発明の「液晶表示装置」は、本件発明1の「画像表示装置」の「光学積層体と、」「偏光板とを有する偏光板複合体を備えた」との要件を具備する。 ク 以上の対比結果を踏まえると、本件発明1と、引用発明は、 「面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、 バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体を備えた画像表示装置であって、 前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置され、 前記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり、 前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されている 画像表示装置。」である点で一致し、次の相違点において相違する。 (相違点1) 「光透過性基材(1)」が、 本件発明1においては、「屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、リタデーションが3000nm以上であり」、「膜厚が70?150μmであ」るのに対して、 引用発明においては、「差(nx-ny)」及び「リタデーション」がそのようなものであるのか明らかでなく、また、「膜厚」が「40μm」である点。 (2) 判断 上記相違点1について検討する。 ア 引用例1の【0001】?【0012】の記載によれば、引用例1における「発明」は、「液晶パネル用偏光板のセット、ならびにこれを用いた液晶パネルおよび液晶表示装置」(【0001】)に係るものであって、「壁掛けテレビ用途等」の「大画面液晶テレビ用途において」、「液晶表示装置のさらなる薄型化および軽量化のニーズが顕在化している」ところ、「液晶パネルおよびその構成部品に関し」、(1)液晶パネルの薄型大画面化に対応して、パネルの強度を補強する必要がある、「(2)液晶テレビの薄型化に対応して、使用する部材を薄肉化する必要がある、及び(3)液晶パネルと背面のバックライトシステムとの隙間が狭くなり、液晶パネルとバックライトシステムとの接触に起因する、円形状のムラや、ニュートンリングを防止する必要があることを「発明が解決しようとする課題」とするものである(【0005】)。 また、さらに、これら(1)?(3)の課題を解決するために、フィルムの機械的強度およびコスト面で優れる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを偏光板の保護フィルムとして使用した際、液晶表示装置に配置して映像を見た場合、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの位相差の影響により、斜め方向から見たときに色ムラ(干渉ムラ、虹ムラともいう)が目立ち、視認性に劣る(特に、特に、液晶表示装置のバックライトと液晶パネルとの間に輝度向上シートを設置した場合の色ムラが著しい)ことを解決することを課題とするものである(【0006】)。 そして、これらの課題を解決する手段を、液晶パネルの構成部品である2つの偏光板として、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの片面に延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層した偏光板と、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの片面に延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層した偏光板であって、該偏光板のヘイズ値が45%以上80%以下の範囲である偏光板とを組み合わせた偏光板のセットとして、このような偏光板のセットにより液晶パネルの強度が補強され、液晶パネルの反りを防止でき、また、液晶表示装置を斜めから観察したときの色ムラも抑制され、視認性に優れた液晶表示装置が得られるようにしたことを、その技術的特徴とするものである(【0007】、【0008】等)。 イ そして、引用例1(【0013】?【0062】)には、「発明を実施するための最良の形態」として、引用例1における「本発明」の「偏光板のセット」を構成する「液晶パネルの背面側偏光板として用いられる」「第1の偏光板」について、 「第1の偏光フィルムの厚みは、たとえば5?40μm程度とすることができる。」(【0025】)、 「本発明に係る第1の偏光板は、上記ポリビニルアルコール系樹脂からなる第1の偏光フィルムの片面に、延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムを積層して作製される。延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムは、機械的性質、耐溶剤性、耐スクラッチ性、コストなどに優れたフィルムであり、このようなポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして用いた偏光板は、機械的強度等に優れるとともに、厚みの低減を図ることができる。」(【0026】)、 「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みd_(PET)は、20?60μm程度とすることが好ましく、30?50μmとすることがより好ましい。延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みd_(PET)が20μm未満であると、ハンドリングしにくい傾向にあり、厚みd_(PET)が60μmを超えると、薄肉化のメリットが薄れる傾向にある。また、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの面内位相差値R_(PET)は、1000nm以上であることが好ましく、より好ましくは3000nm以上である。」(【0032】)、 「延伸されたシクロオレフィン系樹脂フィルムの厚みdは、厚すぎると、加工性に劣るものとなり、また、透明性が低下したり、偏光板の重量が大きくなったりするなどの問題が生じやすい。そこで、延伸されたシクロオレフィン系樹脂フィルムの厚みdは、40μm?80μm程度であるのが好ましい。」(【0047】)との記載がある。 ウ また、引用例1(【0063】?【0099】)には、「発明を実施するための最良の形態」として、引用例1における「本発明」の「偏光板のセット」を構成する「液晶パネルの前面側(視認側)偏光板として用いられる」「第2の偏光板」について、 「第1の偏光フィルムと第2の偏光フィルムとは、外形(厚み等)、材質および製造方法などに関し、同じであっても異なっていてもよい。」(【0063】)、 「第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、第1の偏光板について記述したものを同様に用いることができる。・・・略・・・第1の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとは、外形、材質および製造方法などに関し、同じであっても異なっていてもよい。延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムを第2の偏光フィルムの保護フィルムとして用いることにより、液晶パネルの機械的強度をより向上させることができるとともに、液晶パネルのさらなる薄肉化を達成することが可能となる。また、第2の偏光板においても保護フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることにより、第1の偏光板に用いる保護フィルムと第2の偏光板に用いる保護フィルムとが同じ材質から構成されることとなるため、液晶パネルの反りを防止することができる。これにより、薄型の液晶表示装置に適用した場合においても、液晶パネルとバックライトシステムとの接触に起因する円形状のムラやニュートンリングを防止することが可能となる。 」(【0064】)、 「第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みは、20?60μm程度とすることが好ましく、30?50μmとすることがより好ましい。第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みが20μm未満であると、ハンドリングしにくい傾向にあり、厚みが60μmを超えると、薄肉化のメリットが薄れる傾向にある。」(【0065】) 、 「第2の偏光板のヘイズ(全体ヘイズ)値は、45%以上80%以下の範囲であり・・・略・・・第2の偏光板のヘイズ値を45?80%の範囲内にすることにより、第1の偏光板および第2の偏光板に用いる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが有する位相差に起因する、斜め方向から観察したときの色ムラ、特には液晶表示装置のバックライトと液晶パネルとの間に輝度向上シートを設置した場合の色ムラが改善され、視認性に優れた液晶表示装置を提供することが可能となる。第2の偏光板のヘイズ値が45%より低いと、バックライトと液晶パネルとの間に輝度向上シートを設置した場合、明瞭な色ムラが発生し、視認性が阻害される。また、80%より高いと画面が著しく白ちゃけて視認性が低下する傾向にある。」(【0066】)、 「ハードコート層の厚みは、特に限定されないが、2μm以上30μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以上30μm以下である。ハードコート層の厚みが2μm未満であると、十分な硬度が得られず、表面が傷付きやすくなる傾向にあり、また、30μmより厚くなると、割れやすくなったり、ハードコート層の硬化収縮により延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムがカールして生産性が低下したりする傾向がある。」(【0083】)、 「光学補償フィルム・・・略・・・としては、第1の偏光板について記述したものを同様に用いることができる。」(【0098】)との記載がある。 エ 引用発明は引用例1における「本発明」の「実施例1」であるから、引用発明は、上記アで述べた技術思想に基づいて、液晶パネルの強度が補強され、使用する部材の薄肉化、液晶テレビの薄型化ができ、液晶パネルの反りを防止でき、また、液晶表示装置を斜めから観察したときの色ムラも抑制され、視認性に優れた液晶表示装置が得られるものであって、引用例1における「本発明」の偏光板のセット及び当該偏光板のセットを備えた液晶表示装置を具体化したものと認められるところ、引用発明の「液晶表示装置」は、「バックライト/光拡散板/拡散シート/拡散シート/輝度向上シート/延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ40μm)/偏光フィルム/二軸延伸ノルボルネン系樹脂からなる光学補償フィルム(厚さ73μm、面内位相差値63nm、厚み方向位相差値225nm)/粘着剤(厚さ25μm)/液晶セル/粘着剤(厚さ25μm)/トリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm)/偏光フィルム/延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ40μm)/ハードコート層」からなる積層構造を有している(上記(1)オ(ア)参照)。 ここで、引用例1における「本発明」の「偏光板のセット」に係る「前面側偏光板」の「第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の厚みについては、上記ウのとおり、「20?60μm程度とすることが好ましく、30?50μmとすることがより好まし」く、「厚みが20μm未満であると、ハンドリングしにくい傾向にあり、厚みが60μmを超えると、薄肉化のメリットが薄れる傾向にある」こと(【0065】)から、引用発明の「前面側偏光板」の「厚さ40μm」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、薄肉化の観点からより好ましい厚みとなっている。そうすると、引用発明において、「前面側偏光板」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の膜厚を、「70μ?150μm」の膜厚へと調整・変更する動機付けは引用例1の記載には見当たらない。 また、上記ウの引用例1の【0065】の「偏光板のセット」に係る「前面側偏光板」の「第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の好ましい厚みについての記載・示唆に基づき、当業者が引用発明の構成の調整・変更を試みたとしても、「前面側偏光板」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の膜厚は「20?60μm」の範囲内のものとなる。 さらに、引用発明は、引用例1における「本発明」の偏光板のセット及び当該偏光板のセットを備えた液晶表示装置を実施例1として具体化したものであるところ、引用発明において、前面側偏光板の膜厚として、「70?150μm」を採用することには、阻害要因があるともいえる。 なぜならば、引用発明は「液晶パネルの反り」が「小さい」ものであって、上記の引用例1の段落【0064】の「第2の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、第1の偏光板について記述したものを同様に用いることができる。・・・略・・・延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムを第2の偏光フィルムの保護フィルムとして用いることにより、液晶パネルの機械的強度をより向上させることができる・・・略・・・また、第2の偏光板においても保護フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることにより、第1の偏光板に用いる保護フィルムと第2の偏光板に用いる保護フィルムとが同じ材質から構成されることとなるため、液晶パネルの反りを防止することができる。」等の記載や、引用発明の上記の積層構造からみて、「前面側偏光板」における「40μm」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」及び「73μm」の「二軸延伸ノルボルネン系樹脂からなる光学補償フィルム」と、「背面側偏光板」における「80μm」の「トリアセチルセルロースフィルム」及び「40μm」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」等の構成により、液晶セルの前面側と背面側の応力をバランスさせて、液晶パネルの反りを抑制していると技術的に理解されるところ、引用発明において、「前側偏光板」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の膜厚を、「40μm」から、「70?150μm」とすると、液晶セルの前面側と背面側の応力のバランスを崩し、液晶パネルの反りを防止するという引用例1の「本発明」の課題が解決できなくなるからである(当合議体注:仮に、液晶パネルの反りを考慮し、引用発明の「前面側偏光板」及び「背面側偏光板」双方の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の膜厚を同時に「70?150μm」とすることを考えた場合には、やはり、引用例1の「本発明」の使用する部材の薄肉化、液晶テレビの薄型化の課題の達成を妨げることとなることから、同様に阻害要因があるということができる。)。 オ さらに、引用例2に、液晶表示装置の出射光側の視認側に設けられる、10000nm以上のレタデーションが得られる延伸PETフィルムとして、厚み100μm以上のものが記載されていた(引用例2の[0057]、[0079][表1]実施例2、実施例7等)としても、引用例2には、引用発明の構成や引用例1の「偏光板のセット」に係る上記記載・示唆を前提として、引用発明において、相違点1に係る本件発明1の構成を採用する動機付けとなる記載は見当たらない。 同様に、液晶表示装置の薄肉化を実現するための膜厚範囲として、偏光板に関する技術分野において、ポリステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)の厚みの上限を100μmや75μmとするものが含まれることが、特開2009-157343号公報や特開2010-54913号公報に記載されているように、当業者に周知であったとしても、引用発明の構成や引用例1の「偏光板のセット」に係る上記記載・示唆を前提として、引用発明において、相違点1に係る本件発明1の構成を採用する動機付けはない。 カ さらに、引用例2に記載された、液晶表示装置の出射光側の視認側に設けられる延伸PETフィルムを参考にすると仮定しても、引用発明において、相違点1に係る本件発明1の構成を採用するとはいえない。 なぜならば、引用例1の「偏光板のセット」に係る上記記載・示唆を考慮する当業者であれば、20?60μmの膜厚が好ましい(30?50μmの膜厚がより好ましい)「前側偏光板」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」として、引用例2の[0079][表1]に示された「虹斑観察」の結果が「◎(:いずれの方向からも虹斑の発生無し。)」([0058])である、実施例1(厚み50μm、Δn=0.104、Re=5177nm)、実施例6(厚み50μm、Δn=0.104、Re=5177)の延伸PETフィルムを採用することがあるとしても、あえて厚みが75μm、あるいは100μmの延伸PETフィルムを選ぶ必然性はないから、相違点1に係る「膜厚が70?150μmであ」る構成に至るとはいえない。 さらに加えて、引用例4(甲第4号証)、引用例5(甲第5号証)等の記載を考慮したとしても、同様である。 キ 上記ア?カのとおりであるから、特許異議申立書における異議申立人の主張には理由がない。 ク よって、本件発明1は、引用例1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 本件発明2?7について 本件発明2?7は、いずれも前記相違点1に係る本件発明1の構成を具備する発明である。 よって、本件発明1と同様の理由により、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明2?7は、引用例1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 本件発明8について (1) 対比 本件発明8と引用発明とを対比する。 ア 「偏光板(1)」について (ア) 上記1(1)ア?ウ及びエ(ア)、(イ)における対比は同様である。 (イ) 引用発明の「前面側偏光板」の「偏光フィルム」は、本件発明8の「偏光子(1)」に相当する。 引用発明の「前面側偏光板」は、本件発明8の「偏光板(1)」に相当する。 そうすると、上記(ア)より、引用発明1の「前側偏光板」は、本件発明8の「偏光板(1)」の「面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有する光学積層体が、偏光子(1)上に設けられ」との要件を具備する。 (ウ) 上記1(1)エ(ウ)における対比は同様である。 そうすると、上記(ア)、(イ)より、引用発明は、本件発明8の「前記光学積層体と前記偏光子(1)とは、前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記偏光子(1)の吸収軸とが垂直となるように配置され」との要件を具備する。 また、引用発明の「液晶表示装置」は、本件発明1の「画像表示装置」に相当する。 そうすると、上記(ア)、(イ)より、引用発明の「前面側偏光板」は、本件発明8の「偏光板(1)」の「画像表示装置の表面に配置して用いられる」との要件を具備する。 (エ) 上記1(1)エ(エ)における対比は同様である。 そうすると、引用発明は、本件発明8の「光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置され」との要件を具備する。 イ 「偏光板(2)」について 上記1(1)オ(ア)?(カ)における対比は同様である。 ウ 「偏光板複合体」について 上記アとイより、引用発明の「液晶表示装置」における「前面側偏光板」及び「背面側偏光板」は、本件発明8の「偏光板セット」に相当し、引用発明の「液晶表示装置」における「前面側偏光板」及び「背面側偏光板」は、本件発明8の「偏光板セット」の「偏光板(1)と、」「偏光板(2)とを有する」との要件を具備する。 エ 上記ア?ウより、引用発明の「液晶表示装置」は、本件発明8の「画像表示装置」の「偏光板(1)と、」「偏光板(2)とを有する偏光板セットを備えた」との要件を具備する。 オ 以上の対比結果を踏まえると、本件発明8と、引用発明は、 「面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有する光学積層体が、偏光子(1)上に設けられ、画像表示装置の表面に配置して用いられる偏光板(1)と、 バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板(2)とを有する偏光板セットを備えた画像表示装置であって、 前記光学積層体と前記偏光子(1)とは、前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記偏光子(1)の吸収軸とが垂直となるように配置され、 前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置され、 前記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり、 前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されている 画像表示装置。」である点で一致し、次の相違点において相違する。 (相違点2) 「光透過性基材(1)」が、 本件発明8においては、「屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、リタデーションが3000nm以上であり」、「膜厚が70?150μmであ」るのに対して、 引用発明においては、「差(nx-ny)」及び「リタデーション」がそのようなものであるのか明らかでなく、また、「膜厚」が「40μm」である点。 (2) 判断 相違点2は、相違点1と同じである。 してみると、上記1(2)において検討した理由と同様な理由により、本件発明8は、引用例1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 4 本件発明9?11について 本件発明9?11は、いずれも前記相違点2に係る本件発明8の構成を具備する発明である。 よって、本件発明1と同様の理由(上記1(2)参照)により、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明9?11は、引用例1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 5 本件発明12について 本件発明12は、前記相違点1に係る本件発明1の構成を具備する発明(請求項1?7の記載を引用した場合)、あるいは、前記相違点2に係る本件発明8の構成を具備する発明(請求項8?11の記載を引用した場合)である。 よって、上記1(2)において検討した理由と同様な理由により、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明12は、引用例1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 6 本件発明13について 本件発明13は、前記相違点1に係る本件発明1の構成を具備する発明(請求項1?7の記載を引用した場合)、あるいは、前記相違点2に係る本件発明8の構成を具備する発明(請求項8?11の記載を引用した場合)である。 よって、上記1(2)において検討した理由と同様な理由により、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明13は、引用例1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 7 本件発明14について (1) 対比 本件発明14と引用背面側・前側偏光板作製方法発明とを対比する。 ア 上記1(1)ア?カにおける対比は同様である。 イ そうすると、引用背面側・前側偏光板作製方法発明は、本件発明14の「前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、前記光学積層体を配置する工程と、前記光透過性基材(2)と前記偏光子とを、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する工程を有する」との要件を具備する。 ウ 上記アとイより、引用背面側・前側偏光板作製方法発明における「45%のヘイズ値を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(A)」及び「背面側偏光板」は、本件発明14の「偏光板複合体」に相当し、引用背面側・前側偏光板作製方法発明における「45%のヘイズ値を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(A)」及び「背面側偏光板」は、本件発明14の「偏光板複合体」の「光学積層体と、」「偏光板とを有する」との要件を具備する。 エ 上記ア?ウより、引用背面側・前側偏光板作製方法発明の「背面側偏光板及び前側偏光板の作製方法」は、本件発明14の「偏光板複合体の製造方法」に相当する。 オ 以上の対比結果を踏まえると、本件発明14と、引用背面側・前側偏光板作製方法発明は、 「面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、 バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体の製造方法であって、 前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、前記光学積層体を配置する工程と、 前記光透過性基材(2)と前記偏光子とを、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する工程を有する 偏光板複合体の製造方法。」である点で一致し、次の相違点において相違する。 (相違点3) 「光透過性基材(1)」が、 本件発明14においては、「屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、リタデーションが3000nm以上、膜厚が70?150μmであるものを用い」ているのに対して、 引用背面側・前側偏光板作製方法発明においては、「差(nx-ny)」及び「リタデーション」がそのようなものであるのか明らかでなく、また、「膜厚」が「40μm」である点。 (2) 判断 相違点3は、相違点1と同じである。 してみると、上記1(2)において検討した理由と同様な理由により、本件発明14は、引用例1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 7 本件発明15について (1) 対比 本件発明15と引用背面側・前側偏光板作製方法発明とを対比する。 ア 上記3(1)ア?ウにおける対比は同様である。 イ そうすると、引用背面側・前側偏光板作製方法発明は、本件発明15の「前記光学積層体と前記偏光子(1)とは、前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記偏光子(1)の吸収軸とが垂直となるように配置され、前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置する工程と、前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する工程を有する」との要件を具備する。 ウ 上記アとイより、引用背面側・前側偏光板作製方法発明の「前面側偏光板」及び「背面側偏光板」は、本件発明15の「偏光板セット」に相当し、引用背面側・前側偏光板作製方法発明の「前面側偏光板」及び「背面側偏光板」は、本件発明15における「偏光板セット」の「偏光板(1)と、」「偏光板(2)とを有する」との要件を具備する。 エ 上記ア?ウより、引用背面側・前側偏光板作製方法発明の「背面側偏光板及び前側偏光板の作製方法」は、本件発明15の「偏光板セットの製造方法」に相当する。 オ 以上の対比結果を踏まえると、本件発明15と、引用背面側・前側偏光板作製方法発明は、 「面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有する光学積層体が、偏光子(1)上に設けられ、画像表示装置の表面に配置して用いられる偏光板(1)と、 バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板(2)とを有する偏光板セットの製造方法であって、 前記光学積層体と前記偏光子(1)とは、前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記偏光子(1)の吸収軸とが垂直となるように配置され、 前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置する工程と、 前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する工程を有する 偏光板セットの製造方法。」である点で一致し、次の相違点において相違する。 (相違点4) 「光透過性基材(1)」が、 本件発明15においては、「屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、リタデーションが3000nm以上、膜厚が70?150μmであるものを用い」ているのに対して、 引用背面側・前側偏光板作製方法発明においては、「差(nx-ny)」及び「リタデーション」がそのようなものであるのか明らかでなく、また、「膜厚」が「40μm」である点。 (2) 判断 相違点4は、相違点1と同じである。 してみると、上記1(2)において検討した理由と同様な理由により、本件発明15は、引用例1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 8 本件発明16について (1) 対比 本件発明16と、引用液晶表示装置作製方法発明とを対比する。 ア 上記1(1)ア?カにおける対比は同様である。 イ 上記アより、引用液晶表示装置作製方法発明の「液晶表示装置」は、本件発明1の「画像表示装置」における「光学積層体と、」「偏光板を備えた」との要件を具備する。 ウ 上記アとイより、引用液晶表示装置作製方法発明は、本件発明16の「前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、前記光学積層体を配置する工程と、前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とを、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する工程を有する」との要件を具備する。 エ 上記ア?ウより、引用液晶表示装置作製方法発明の「液晶表示装置の作製方法」は、本件発明16の「画像表示装置の製造方法」に相当する。 オ 以上の対比結果を踏まえると、本件発明16と、引用液晶表示装置作製方法発明は、 「面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、 少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、画像表示装置のバックライト光源側に配置して用いられる偏光板を備えた画像表示装置の製造方法であって、 前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、前記光学積層体を配置する工程と、 前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とを、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する工程を有する 画像表示装置の製造方法。」である点で一致し、次の相違点において相違する。 (相違点5) 「光透過性基材(1)」が、 本件発明16においては、「屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、リタデーションが3000nm以上、膜厚が70?150μmであるものを用い、」ているのに対して、 引用液晶表示装置作製方法発明においては、「差(nx-ny)」及び「リタデーション」がそのようなものであるのか明らかでなく、また、「膜厚」が「40μm」である点。 (2) 判断 相違点5は、相違点1と同じである。 してみると、上記1(2)において検討した理由と同様な理由により、本件発明16は、引用例1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 9 本件発明17について (1) 対比 本件発明17と、引用色ムラ解消方法とを対比する。 ア 上記1(1)ア?カにおける対比は同様である。 イ 上記アより、引用色ムラ解消方法は、本件発明17における「前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、前記光学積層体を配置するとともに、前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とを、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する」との要件を具備する。 ウ 引用色ムラ解消方法において、「液晶表示装置を斜め方向から見たときの色ムラ(干渉ムラ)を小さくする」ことは、技術的にみて、液晶表示装置の視認性を改善しているということができる(引用例1の【0007】の「液晶表示装置を斜めから観察したときの色ムラも抑制され、視認性に優れた液晶表示装置が得られる」との記載からも確認できることである。)。 そうすると、「液晶表示装置を斜め方向から見たときの色ムラ(干渉ムラ)を小さくする」引用色ムラ解消方法は、本件発明17の「画像表示装置の視認性改善方法」に相当する。 エ 以上の対比結果を踏まえると、本件発明17と、引用色ムラ解消方法は、 「面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、 少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、画像表示装置のバックライト光源側に配置して用いられる偏光板を備えた画像表示装置の視認性改善方法であって、 前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、前記光学積層体を配置するとともに、 前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とを、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する 画像表示装置の視認性改善方法。」である点で一致し、次の相違点で相違する。 (相違点6) 「光透過性基材(1)」が、 本件発明17においては、「屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、リタデーションが3000nm以上、膜厚が70?150μmであるものを用い、」ているのに対して、 引用色ムラ解消方法においては、「差(nx-ny)」及び「リタデーション」がそのようなものであるのか明らかでなく、また、「膜厚」が「40μm」である点。 (2) 判断 相違点6は、相違点1と同じである。 してみると、上記1(2)において検討した理由と同様な理由により、本件発明17は、引用例1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?17に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2019-10-25 |
出願番号 | 特願2013-205733(P2013-205733) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(G02B)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 藤岡 善行 |
特許庁審判長 |
里村 利光 |
特許庁審判官 |
河原 正 高松 大 |
登録日 | 2018-12-14 |
登録番号 | 特許第6448182号(P6448182) |
権利者 | 大日本印刷株式会社 |
発明の名称 | 画像表示装置、偏光板複合体の製造方法、偏光板セットの製造方法、画像表示装置の製造方法及び画像表示装置の視認性改善方法 |
代理人 | 特許業務法人 安富国際特許事務所 |