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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1357108 |
審判番号 | 不服2018-9178 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-07-03 |
確定日 | 2019-12-03 |
事件の表示 | 特願2015- 57445「タッチパネル部材、タッチパネル及びタッチパネル表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月 6日出願公開、特開2016-177557、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成27年3月20日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年10月19日付け 拒絶理由通知書 平成29年12月15日 意見書,手続補正書の提出 平成30年 3月26日付け 拒絶査定(以下,「原査定」という。) 平成30年 7月 3日 審判請求書,手続補正書の提出 平成30年 8月 7日 手続補正書の提出 令和 元年 6月26日付け 拒絶理由通知書(以下,「当審拒絶理由 通知」という。) 令和 元年 8月19日 意見書,手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(平成30年3月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 この出願の請求項1ないし13に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開2014-178922号公報 2.特開2014-240955号公報 3.特開2007-212815号公報 4.特開2014-108541号公報 5.特開2009-173910号公報 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由通知の概要は次のとおりである。 この出願の請求項1ないし11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開2014-178922号公報 4.特開2014-108541号公報 第4 本願発明 本願請求項1ないし11に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明11」という。)は,令和元年8月19日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 透明基板、 透明電極、及び、 前記透明電極を覆うように設けられた厚さ1.0?10μmの保護層、をこの順で少なくとも有し、 前記保護層の少なくとも一部において、透明基板側から透明基板と反対側に向けて屈折率が連続的に漸次小さくなる層であり、 前記透明基板側から透明基板と反対側に向けて屈折率が連続的に漸次小さくなる層が、屈折率調整材の含有量が透明基板側から透明基板と反対側に向けて連続的に漸次小さくなる層であり、 前記透明基板側から透明基板と反対側に向けて屈折率が連続的に漸次小さくなる層が、前記保護層の厚さ方向において60nm以上の厚さを有し、 前記屈折率調整材が、金属酸化物粒子、及び/又は、金属アルコキシド化合物の縮合物であり、 前記保護層が、下記式1及び式2を満たすことを特徴とする タッチパネル部材。 |n(電極)-n(保護電)|≦0.2 (1) 0.2≦n(保護電)-n(保護表面) (2) 式中、前記透明電極の屈折率をn(電極)とし、前記保護層の透明電極側界面の屈折率をn(保護電)とし、前記保護層の透明基板と反対側界面の屈折率をn(保護表面)とする。」 なお,本願発明2ないし11は,本願発明1を減縮した発明である。 第5 引用文献,引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由通知に引用された引用文献1(特開2014-178922号公報)には,図面ともに次の事項が記載されている。(下線は,当審で付与した。以下同じ。) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、タッチパネル用積層体およびタッチパネル用積層体の製造方法に関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 特許文献1および特許文献2のようにハードコート層や粘着シートをガラス板の表面に貼付することである程度の外部衝撃を受けて破損したときのガラスの破片を飛散させることを防止することができるが、本発明者らが検討した結果、不十分であることがわかった。 【0008】 そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために検討を進めた。本発明が解決しようとする課題は、外部衝撃を受けて破損したときのガラスの破片の飛散を防止できるタッチパネル用積層体、およびその製造方法を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0009】 上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、ガラス基板、透明電極層、保護層、およびポリマー層の順で積層させ、前記ガラス基板が、ガラス中のカリウムイオンよりもイオン半径が小さいイオンの一部または全部をカリウムイオンに置換する化学強化処理を行ったガラスを用いた場合にも外部衝撃を受けて破損したときのガラスの破片の飛散を防止できることを見出し、本発明に至った。 上記課題を解決するための具体的な手段である本発明は、以下の構成を有する。」 「【発明を実施するための形態】 【0013】 以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「?」を用いて表される数値範囲は「?」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。 【0014】 [タッチパネル用積層体] 本発明のタッチパネル用積層体は、ガラス基板と、透明電極層と、前記透明電極層を覆う保護層と、ポリマー層と、をこの順で有し、前記ガラス基板がガラス中のカリウムイオンよりもイオン半径が小さいイオンの一部または全部をカリウムイオンに置換する化学強化処理をされてなることを特徴とする。 【0015】 本発明では、このような構成、即ち、ポリマー層を有する構成とすることでガラス基板におけるガラスの破片の飛散を防止することができる。 また、後述の本発明のより好ましい構成とすることで光反射が低減して透明電極パターンが見えにくくなり、視認性、すなわちヘイズに優れる。 図1は、本発明のタッチパネル用積層体の一例を示した断面模式図である。本発明のタッチパネル用積層体は、最表面側(視認側)から、ガラス基板100、透明電極層101、透明電極層101を覆うように形成されている保護層102、およびポリマー層103をこの順で有する。 保護層102とポリマー層103との間には、必要に応じて易接着層104を有していてもよい。また、本発明のタッチパネル用積層体は、必要に応じて、ポリマー層103の保護層102側の面とは反対側の面にハードコート層105を有していてもよく、ハードコート層105とポリマー層103との間には易接着層106を有していてもよい。また、ガラス基板1の視認側の面と反対側の面の端部には加飾層107を有していてもよい。 また、透明電極層101と保護層102との間には、反射防止層(図示せず)を有していてもよく、ガラス基板100の透明導電層101が形成されている面の反対側にハードコート層(図示せず)を有していてもよい。 【0016】 本発明のタッチパネル用積層体の厚みとしては、0.3?1mmであることが好ましく、0.5?1mmであることがより好ましく、0.7?1mmであることがさらに好ましい。 以下、本発明のタッチパネル用積層体を構成する各部材について説明する。 【0017】 <ガラス基板> 本発明のタッチパネル用積層体に用いるガラス基板は、ガラス中のカリウムイオンよりもイオン半径が小さいイオンの一部または全部をカリウムイオンに置換する化学強化処理をされてなる。 本発明で使用するガラスは特に限定されないが、JIS R3103-2(2001年)に準拠した方法で得られる歪点温度が500℃?520℃であることが好ましい。また、ガラスの変形が生じやすい当該温度付近、すなわち溶融塩の温度を490?530℃とすることが好ましい。例えば、フロート法で製造される所謂ソーダライムガラスと呼ばれるSiO_(2)-Na_(2)O-K_(2)O-CaO-MgO-Al_(2)O_(3)系ガラスの表面を化学強化処理により圧縮層が形成されたものが好ましい。 【0018】 圧縮層を形成する化学強化処理としては、ガラスを溶融塩に浸漬させ、ガラス中のナトリウムイオンと溶融塩中のカリウムイオンとを交換させることで圧縮層が形成される。圧縮層は、圧縮応力値において、200?650MPaの値を有するもので、当該値を有するように、ガラスを化学強化する際に、浸漬させるための溶融塩の温度を450?550℃、浸漬時間を1時間?3時間とすることが好ましい。 【0019】 ガラス基板の厚みとしては、0.3?1.0mmであることが好ましく、0.4?0.8mmであることがさらに好ましい。ガラス基板の厚みを0.3mm以上とすることで、強度不足を解消することができる。 【0020】 <透明電極層> 本発明のタッチパネル用積層体は、ガラス基板上に透明電極層を有し、パターン状に配置されていることが好ましい。 前記透明電極層の屈折率は1.75?2.1であることが好ましい。 前記透明電極層の材料は特に制限されることはなく、公知の材料を用いることができる。例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透光性の導電性金属酸化膜で作製することができる。このような金属膜としては、ITO膜;Al、Zn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mo等の金属膜;SiO_(2)等の金属酸化膜などが挙げられる。この際、各要素の、膜厚は10?200nmとすることができる。また、焼成により、アモルファスのITO膜を多結晶のITO膜とするため、電気的抵抗を低減することもできる。その他、ITO等によって透明電極層における導電性パターン等を形成する場合には、特許第4506785号公報の段落[0014]?[0016]等を参考にすることができる。その中でも、前記透明電極パターンは、ITO膜であることが好ましい。 本発明の透明積層体は、前記透明電極パターンが屈折率1.75?2.1のITO膜であることが好ましい。 【0021】 透明電極層の厚みとしては、10?200nmが好ましく、20?150nmがより好ましく、30?100nmがさらに好ましい。 【0022】 <<透明電極パターン>> 本発明の積層体を後述する静電容量型入力装置に用いる場合、透明電極パターンは行方向と列方向の略直交する2つの方向にそれぞれ第一の透明電極パターンおよび第二の透明電極パターンとして設けられることがある(例えば、図4参照)。例えば図4の構成では、本発明の積層体における透明電極パターンは、第二の透明電極パターン4であっても、第一の透明電極パターン3のパッド部分3aであってもよい。言い換えると、以下の本発明の透明積層体の説明では、透明電極パターンの符号を「4」で代表して表すことがあるが、本発明の透明積層体における透明電極パターンは、本発明の静電容量型入力装置における第二の透明電極パターン4への使用に限定されるものではなく、例えば第一の透明電極パターン3のパッド部分3aとして使用してもよい。 【0023】 前記透明電極パターンの屈折率は1.75?2.1であることが好ましい。 前記透明電極パターンの材料は特に制限されることはなく、公知の材料を用いることができる。例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透光性の導電性金属酸化膜で作製することができる。このような金属膜としては、ITO膜;Al、Zn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mo等の金属膜;SiO_(2)等の金属酸化膜などが挙げられる。この際、各要素の、膜厚は10?200nmとすることができる。また、焼成により、アモルファスのITO膜を多結晶のITO膜とするため、電気的抵抗を低減することもできる。また、前記第一の透明電極パターン3と、第二の透明電極パターン4と、後述する導電性要素6とは、前記導電性繊維を用いた光硬化性樹脂層を有する感光性フィルムを用いて製造することもできる。その他、ITO等によって第一の導電性パターン等を形成する場合には、特許第4506785号公報の段落[0014]?[0016]等を参考にすることができる。その中でも、前記透明電極パターンは、ITO膜であることが好ましい。 前記透明電極パターンが屈折率1.75?2.1のITO膜であることが好ましい。 【0024】 <保護層> 本発明のタッチパネル用積層体は、透明電極層を覆う保護層を有し、保護層は、透明電極層の腐食を防止する機能を有することが好ましい。ここでいう透明電極層の腐食の防止は、ハロゲンを含む化合物の除去、特に光重合開始剤を脱ハロゲン化して行うことが好ましい。 【0025】 保護層は、金属酸化物粒子、樹脂(好ましくはアルカリ可溶性樹脂)、重合性化合物、重合開始剤または重合開始系を含むことが好ましい。さらに、添加剤などが用いられるがこれに限られたものではない。 【0026】 保護層は、透明樹脂膜であっても、無機膜であってもよい。 前記無機膜としては、特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報および特開2010-257492号公報などに用いられている無機膜を用いることができ、これらの文献に記載されている低屈折率材料と高屈折率材料の積層構造の無機膜や、低屈折率材料と高屈折率材料の混合膜の無機膜を用いることが屈折率を制御する観点から好ましい。前記低屈折率材料と前記高屈折率材料は、上記の特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報および特開2010-257492号公報に用いられている材料を好ましく用いることができ、これらの文献の内容は本明細書中に組み込まれる。 前記無機膜は、SiO_(2)とNb_(2)O_(5)の混合膜であってもよく、その場合はスパッタによって形成されたSiO_(2)とNb_(2)O_(5)の混合膜であることがより好ましい。 【0027】 本発明では、保護層が、透明樹脂膜であることが好ましい。 前記透明樹脂膜の屈折率を制御する方法としては特に制限はないが、所望の屈折率の透明樹脂膜を単独で用いたり、金属微粒子や金属酸化物微粒子などの微粒子を添加した透明樹脂膜を用いたりすることができる。 【0028】 前記透明樹脂膜に用いられる樹脂組成物は、屈折率や光透過性を調節することを目的として、金属酸化物粒子を含有することが好ましい。金属酸化物粒子は、透明性が高く、光透過性を有するため、高屈折率で、透明性に優れた組成物が得られる。 前記金属酸化物粒子は、当該粒子を除いた材料からなる樹脂組成物の屈折率より屈折率が高いものであることが好ましく、具体的には、400?750nmの波長を有する光における屈折率が1.50以上の粒子がより好ましく、屈折率が1.70以上の粒子が更に好ましく、1.90以上の粒子が特に好ましい。 ここで、400?750nmの波長を有する光における屈折率が1.50以上であるとは、上記範囲の波長を有する光における平均屈折率が1.50以上であることを意味し、上記範囲の波長を有する全ての光における屈折率が1.50以上であることを要しない。また、平均屈折率は、上記範囲の波長を有する各光に対する屈折率の測定値の総和を、測定点の数で割った値である。 【0029】 なお、前記金属酸化物粒子の金属には、B、Si、Ge、As、Sb、Te等の半金属も含まれるものとする。 光透過性で屈折率の高い金属酸化物粒子としては、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ce、Gd、Tb、Dy、Yb、Lu、Ti、Zr、Hf、Nb、Mo、W、Zn、B、Al、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Te等の原子を含む酸化物粒子が好ましく、酸化チタン、チタン複合酸化物、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、インジウム/スズ酸化物、アンチモン/スズ酸化物がより好ましく、酸化チタン、チタン複合酸化物、酸化ジルコニウムが更に好ましく、酸化チタン、酸化ジルコニウムが特に好ましく、二酸化チタンが最も好ましい。二酸化チタンとしては、特に屈折率の高いルチル型が好ましい。これら金属酸化物粒子は、分散安定性付与のために表面を有機材料で処理することもできる。 【0030】 樹脂組成物の透明性の観点から、前記金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、1?200nmが好ましく、3?80nmが特に好ましい。ここで粒子の平均一次粒子径は、電子顕微鏡により任意の粒子200個の粒子径を測定し、その算術平均をいう。また、粒子の形状が球形でない場合には、最も長い辺を径とする。 【0031】 また、前記金属酸化物粒子は、1種単独で使用してよいし、2種以上を併用することもできる。 前記樹脂組成物における金属酸化物粒子の含有量は、樹脂組成物により得られる光学部材に要求される屈折率や、光透過性等を考慮して、適宜決定すればよいが、前記樹脂組成物の全固形分に対して、5?80質量%とすることが好ましく、10?70質量%とすることがより好ましい。 前記透明樹脂膜が、ZrO_(2)粒子およびTiO_(2)粒子のうち少なくとも一方を有することが、反射防止層の屈折率の範囲に屈折率を制御する観点から好ましく、ZrO_(2)粒子がより好ましい。 【0032】 透明樹脂膜に用いられる樹脂(バインダー、ポリマーという言う)やその他の添加剤としては本発明の趣旨に反しない限りにおいて特に制限は無い。 【0033】 保護層に用いられる樹脂(バインダー、ポリマーという言う)としてはアルカリ可溶性樹脂が好ましく、前記アルカリ可溶性樹脂としては、特開2011-95716号公報の段落[0025]、特開2010-237589号公報の段落[0033]?[0052]に記載のポリマーを用いることができる。 【0034】 前記重合性化合物としては、特許第4098550号の段落[0023]?[0024]に記載の重合性化合物を用いることができる。 前記重合開始剤または重合開始系としては、特開2011-95716号公報に記載の[0031]?[0042]に記載の重合性化合物を用いることができる。 【0035】 さらに、保護層には、添加剤を用いてもよい。前記添加剤としては、例えば特許第4502784号公報の段落[0017]、特開2009-237362号公報の段落[0060]?[0071]に記載の界面活性剤や、特許第4502784号公報の段落[0018]に記載の熱重合防止剤、さらに、特開2000-310706号公報の段落[0058]?[0071]に記載のその他の添加剤が挙げられる。 【0036】 保護層の厚みとして、1?50nmであることが好ましく、2?30nmであることがより好ましい。 また、保護層の屈折率が、1.5?1.53であることが好ましく、1.5?1.52であることがより好ましく、1.51?1.52であることが特に好ましい。」 「【0168】 <反射防止層> 本発明のタッチパネル用積層体は、透明電極層と保護層との間に反射防止層を有していてもよい。反射防止層を有することで透明電極層のパターン視認性が向上する。 【0169】 反射防止層としては、屈折率が1.6以上であることが好ましく、1.65以上であることが好ましい。上限値については特に制限はないが、1.78以下であることが実用上好ましく、1.74以下であってもよい。 【0170】 反射防止層は、金属酸化物粒子、樹脂(好ましくはアルカリ可溶性樹脂)、重合性化合物、重合開始剤または重合開始系を含むことが好ましい。さらに、添加剤などが用いられるがこれに限られたものではない。 【0171】 反射防止層は、透明樹脂膜であっても、無機膜であってもよい。 前記無機膜としては、特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報および特開2010-257492号公報などに用いられている無機膜を用いることができ、これらの文献に記載されている低屈折率材料と高屈折率材料の積層構造の無機膜や、低屈折率材料と高屈折率材料の混合膜の無機膜を用いることが屈折率を制御する観点から好ましい。前記低屈折率材料と前記高屈折率材料は、上記の特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報および特開2010-257492号公報に用いられている材料を好ましく用いることができ、これらの文献の内容は本明細書中に組み込まれる。 前記無機膜は、SiO_(2)とNb_(2)O_(5)の混合膜であってもよく、その場合はスパッタによって形成されたSiO_(2)とNb_(2)O_(5)の混合膜であることがより好ましい。 【0172】 本発明では、反射防止層が、透明樹脂膜であることが好ましい。 【0173】 前記透明樹脂膜である反射防止層の屈折率を制御する方法としては特に制限はないが、所望の屈折率の透明樹脂膜を単独で用いたり、金属微粒子や金属酸化物微粒子などの微粒子を添加した透明樹脂膜を用いたりすることができる。本発明では、前記反射防止層が粒子を含むことが好ましく、金属酸化物粒子を含むことがより好ましい。 【0174】 前記透明樹脂膜である反射防止層に用いられる樹脂組成物は、屈折率や光透過性を調節することを目的として、金属酸化物粒子を含有することが好ましい。金属酸化物粒子は、透明性が高く、光透過性を有するため、高屈折率で、透明性に優れた組成物が得られる。 前記金属酸化物粒子は、当該粒子を除いた材料からなる樹脂組成物の屈折率より屈折率が高いものであることが好ましく、具体的には、前記反射防止層が、400?750nmの波長を有する光における屈折率1.60?3.00である粒子を含むことが好ましく、屈折率が1.50以上の粒子がより好ましく、屈折率が1.70以上の粒子が更に好ましく、1.90以上の粒子が特に好ましい。 ここで、400?750nmの波長を有する光における屈折率が1.50以上であるとは、上記範囲の波長を有する光における平均屈折率が1.50以上であることを意味し、上記範囲の波長を有する全ての光における屈折率が1.50以上であることを要しない。また、平均屈折率は、上記範囲の波長を有する各光に対する屈折率の測定値の総和を、測定点の数で割った値である。 【0175】 なお、前記金属酸化物粒子の金属には、B、Si、Ge、As、Sb、Te等の半金属も含まれるものとする。 光透過性で屈折率の高い金属酸化物粒子としては、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ce、Gd、Tb、Dy、Yb、Lu、Ti、Zr、Hf、Nb、Mo、W、Zn、B、Al、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Te等の原子を含む酸化物粒子が好ましく、酸化チタン、チタン複合酸化物、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム、インジウム/スズ酸化物、アンチモン/スズ酸化物がより好ましく、酸化チタン、チタン複合酸化物、酸化錫、酸化ジルコニウムが更に好ましく、酸化ジルコニウム粒子が最も好ましい。これら金属酸化物粒子は、分散安定性付与のために表面を有機材料で処理することもできる。 【0176】 透明樹脂膜である反射防止層の透明性の観点から、前記金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、1?200nmが好ましく、3?80nmが特に好ましい。ここで粒子の平均一次粒子径は、電子顕微鏡により任意の粒子200個の粒子径を測定し、その算術平均をいう。また、粒子の形状が球形でない場合には、最も長い辺を径とする。 【0177】 また、前記金属酸化物粒子は、1種単独で使用してよいし、2種以上を併用することもできる。 前記透明樹脂膜である反射防止層における金属酸化物粒子の含有量は、樹脂組成物により得られる光学部材に要求される屈折率や、光透過性等を考慮して、適宜決定すればよいが、前記透明樹脂膜である反射防止層の全固形分に対して、5?95質量%とすることができ、5?80質量%とすることが好ましく、40?80質量%とすることがより好ましい。 前記透明樹脂膜である反射防止層が、ZrO_(2)粒子およびTiO_(2)粒子のうち少なくとも一方を有することが、反射防止層の屈折率の範囲に屈折率を制御する観点から好ましく、ZrO_(2)粒子がより好ましい。 【0178】 透明樹脂膜である反射防止層に用いられる樹脂(バインダー、ポリマーという言う)やその他の添加剤としては本発明の趣旨に反しない限りにおいて特に制限は無い。前記反射防止層が透明樹脂膜である場合、前記反射防止層の前記粒子以外の成分は、前記保護層と同様のものを用いることができる。 【0179】 反射防止層に用いられる樹脂(バインダー、ポリマーという言う)としてはアルカリ可溶性樹脂が好ましく、前記アルカリ可溶性樹脂としては、特開2011-95716号公報の段落[0025]、特開2010-237589号公報の段落[0033]?[0052]に記載のポリマーを用いることができる。 【0180】 前記重合性化合物としては、特許第4098550号の段落[0023]?[0024]に記載の重合性化合物を用いることができる。 前記重合開始剤または重合開始系としては、特開2011-95716号公報に記載の[0031]?[0042]に記載の重合性化合物を用いることができる。 【0181】 さらに、反射防止層には、添加剤を用いてもよい。前記添加剤としては、例えば特許第4502784号公報の段落[0017]、特開2009-237362号公報の段落[0060]?[0071]に記載の界面活性剤や、特許第4502784号公報の段落[0018]に記載の熱重合防止剤、さらに、特開2000-310706号公報の段落[0058]?[0071]に記載のその他の添加剤が挙げられる。 【0182】 反射防止層の厚みとして、500nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。反射防止層の厚みが55?100nmであることが特に好ましく、60?90nmであることがより特に好ましく、70?90nmであることがさらによ り特に好ましい。」 したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「光反射を低減し,透明電極パターンが見えにくくし,視認性,すなわちヘイズに優れるタッチパネル用積層体であって, ガラス基板と, 透明電極層と, 前記透明電極層を覆う保護層と, 先記透明電極層と保護層の間の反射防止層と有し, 透明電極層の屈折率は,1.75?2.1であり, 保護層は,透明樹脂膜であって,屈折率や光透過性を調整することを目的として金属酸化物粒子を含有し,屈折率が1.5?1.53,厚みが1?50nmであり, 反射防止層は,保護層と同じ透明樹脂膜であって,屈折率や光透過性を調整することを目的として金属酸化物粒子を含有し,屈折率が1.6?1.78,厚みが500nm以下であることを特徴とする, タッチパネル用積層体。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2014-240955号公報)には,図面ともに次の事項が記載されている。 「【背景技術】 【0002】 従来、偏光板、画像表示装置の画面及び/又はタッチパネルのような光学部材において、傷付きや光反射を防止するために、これらの部材にハードコートフィルムが設けられる場合がある。ハードコートフィルムは、透明フィルムと、その透明フィルムの上に設けられたハードコート層と、を有する。ハードコート層は、通常、熱硬化型樹脂又は紫外線硬化型樹脂のような電離放射線硬化型樹脂などを含むハードコート層形成材料を製膜した薄い塗膜から構成されている。 【0003】 従来のハードコートフィルムにおいては、透明フィルムとハードコート層の間にかなりの程度の屈折率差が存在する。このため、ハードコート層の表面に僅かな凹凸があると、干渉縞を生じるという問題がある。なお、干渉縞とは、ハードコート層の表面などに蛍光灯などの三波長光源からの光が当たり、それが反射することに起因する、縞模様の外観である。このような干渉縞は、ハードコートフィルムの表面の視認性を低下させる原因となるという問題がある。 【0004】 また、視認性を向上させるために、ハードコートフィルム表面に層間充填を採用する場合がある。そのためにはハードコートフィルムを層間充填に対応可能とする必要がある。具体的には、層間充填剤が均一に塗布されている状態を長時間維持するために、層間充填剤がハードコート層表面ではじかれてしまわないよう、ハードコートフィルムの塗工性を向上させる必要がある。 【0005】 ハードコートフィルムを層間充填に対応可能とする方法として、親水化による表面改質処理をする方法がある。しかし、この方法だと、生産における工程数が増加して生産性が低下するだけでなく、耐擦傷性が低下するという問題がある。 【0006】 ここで、上記の干渉縞の発生を防止する方法として、透明フィルムとハードコート層との間からハードコート層の厚み方向中途部までの領域において屈折率が厚み方向に連続的に変化しているハードコートフィルムが提案されている(特許文献1参照)。しかし、このハードコートフィルムを層間充填に対応可能にしようとすると、耐擦傷性が低下し、白モヤ等の外観不良が発生するという問題がある。 【0007】 以上のように、干渉縞の発生が防止され、且つ、層間充填可能なハードコートフィルムが求められている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0008】 【特許文献1】特開2011-237789号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 従って、本発明の目的は、干渉縞の発生が防止され、且つ、層間充填に対応可能なハードコートフィルムを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0010】 そこで、本発明者らが、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ハードコート層から透明フィルムに至る屈折率変化を高度に制御し、さらに、表面自由エネルギーが30mN/m以上であるハードコート層を用いることにより、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成させた。 【0011】 すなわち、本発明は、 透明フィルムと、該透明フィルム上に設けられたハードコート層と、を有するハードコートフィルムであって、 前記ハードコート層の表面自由エネルギーが30mN/m以上であり、 前記ハードコートフィルムが、前記透明フィルムの成分と前記ハードコート層の成分が混在している混在領域を有し、 前記混在領域の屈折率がハードコートフィルムの厚み方向に向かって連続的に変化しており、 式(1)に規定する屈折率変化傾斜a(μm-1)が0.003≦a≦0.018を満たす、ハードコートフィルムを提供する。 a=|nA-nB|/L・・・(1) 式(1)中、nAは前記ハードコート層固有の屈折率、nBは前記透明フィルム固有の屈折率、Lは前記混在領域の厚み(μm)を表す。」 「【0018】 [1.ハードコートフィルムの概要] 本発明のハードコートフィルムは、透明フィルムと、該透明フィルム上に設けられたハードコート層と、を有する。また、ハードコート層の表面自由エネルギーは30mN/m以上である。さらに、ハードコートフィルムは、透明フィルムの成分とハードコート層の成分が混在している混在領域を有する。混在領域の屈折率はハードコートフィルムの厚み方向に連続的に変化し、式(1)に規定する屈折率変化傾斜a(μm-1)が0.003≦a≦0.018を満たす。 a=|nA-nB|/L・・・(1) 式(1)中、nAは上記ハードコート層固有の屈折率、nBは上記透明フィルム固有の屈折率、Lは上記混在領域の厚み(μm)を表す。」 「【0028】 [1-1.混在領域] (屈折率が厚み方向に連続的に変化) 上記のとおり、混在領域の屈折率は、ハードコートフィルムの厚み方向において連続的に変化している。 【0029】 本明細書において「連続的に変化」とは、屈折率が部分的に一定である場合も含む概念である。より詳細には、「連続的に変化」とは、混在領域の屈折率がハードコートフィルムの厚み方向において不連続値を有さないことを意味する。ハードコートフィルムの厚み方向における任意の2点X及びYにおける混在領域の屈折率nX及びnYを用いて得られる式(2)に規定する屈折率変化傾斜b(μm-1)は、例えば、0.003≦b≦0.018を満たし、好ましくは0.004≦b≦0.008を満たす。 b=|nX-nY|/D・・・(2) 式(2)中、Dは2点X-Y間の厚み方向の距離(μm)を表す。 【0030】 これらの屈折率は、プリズムカプラを用いる方法により測定することができる。 プリズムカプラではプリズムを介して薄膜中にレーザー光を導入し、その導入される光の強度が特定の入射角度においてある周期性(薄膜導波条件に合致した角度)を持って強くなる状態を検出する。 屈折率が深さ方向で連続的に変化していない薄膜において、この特定の入射角とその周期性はその薄膜の屈折率と膜厚から一義的に決まることから、得られた複数の(モードと呼ばれる)入射角から薄膜の屈折率と膜厚が算出できる。 一方で深さ方向に屈折率が変化している薄膜においては、その入射角と周期性とに薄膜導波条件からのズレが生じるために、それを解析することで薄膜の深さ方向に対する屈折率変化を定量的に求めることができる。 【0031】 (屈折率変化傾斜) 上記ハードコートフィルムにおいて、上記式(1)に規定する屈折率変化傾斜a(μm-1)は0.003≦a≦0.018を満たす。また、aは、0.004≦a≦0.008を満たすことがより好ましい。上記範囲内であると、ハードコートフィルムの干渉縞をより確実に抑制でき、より高い耐擦傷性が確保される。 【0032】 式(1)において、nA<nBの場合、nAは、1.30≦nA≦1.66を満たすことが好ましく、1.38≦nA≦1.55を満たすことがより好ましい。 nBは、1.33≦nB≦1.66を満たすことが好ましく、1.47≦nB≦1.55を満たすことがより好ましい。 このような範囲であれば、干渉縞がより確実に抑制できる。 【0033】 nB<nAの場合、nAは、1.33≦nA≦1.90を満たすことが好ましく、1.47≦nA≦1.74を満たすことがより好ましい。 nBは、1.33≦nB≦1.66を満たすことが好ましく、1.47≦nB≦1.55を満たすことがより好ましい。 このような範囲であれば、干渉縞がより確実に抑制できる。 【0034】 nA<nBであっても良く、nB<nAであっても良いが、nB<nAであることが好ましい。この場合、干渉縞がより確実に抑制できる。 【0035】 |nA-nB|は、通常0≦|nA-nB|≦0.42であり、好ましくは0.03≦|nA-nB|≦0.26であり、より好ましくは0.04≦|nA-nB|≦0.10である。このような範囲であれば、干渉縞がより確実に抑制できる。 【0036】 混在領域の厚みLは、通常2.0μm以上であり、好ましくは3.0μm以上であり、より好ましくは4.5μm以上である。このような範囲であれば、干渉縞がより確実に抑制できる。 【0037】 [1-2.ハードコート層] ハードコート層の表面自由エネルギーは、30mN/m以上であり、32mN/m以上であることが好ましい。上記範囲内であると、ハードコート層上で塗工液がはじかれることなく濡れ広がりやすくなり、ハードコート層の層間充填剤への対応の自由度が一層向上し得る。また、親水化による表面改質処理をする必要が一層低下し、生産性の低下、耐擦傷性の低下という問題を一層確実に回避できる。上記表面自由エネルギーについては、液滴法により測定されることができる。ハードコート層の詳細については、3項で後述する。 【0038】 [1-3.界面] 上記ハードコートフィルムは、上記1項で説明した通り、界面を有していてもよい。界面は、透明フィルムの成分とハードコート層の成分とによって形成され得る。界面は、反射スペクトルの解析によって検出され得る。 【0039】 ハードコートフィルムの厚み方向において、反射スペクトルの解析によって検出可能な界面は1つだけ存在していることが好ましい。つまり、ハードコートフィルムには、1つの界面を除いて、反射スペクトルの解析によって検出可能な光学的な界面が存在しないことが好ましい。換言すると、ハードコートフィルム中には、反射スペクトルの解析によって検出できる界面が2以上存在しないことが好ましい。 【0040】 反射スペクトルの解析によって検出可能であるとは、例えば、瞬間マルチ測光システム(大塚電子(株)製、製品名「MCPD3700」)を用いて検出可能であることである。具体的な方法は、後述する[界面の確認方法]に従って行うことできる。 【0041】 続いて、本願発明のハードコートフィルムのさらなる詳細について説明する。 【0042】 [2.ハードコートフィルム] 上記ハードコートフィルムの態様について、より具体的に説明する。 ハードコートフィルム1は、所定形状(例えば、平面視長方形状など)に形成されていてもよい。ハードコートフィルム1の厚みとしては、例えば、20μm?1000μmであり、好ましくは20μm?500μmである。 【0043】 [2-1.屈折率の連続的な変化] 上記混在領域における屈折率の連続的な変化は、透明フィルムを形成する成分がハードコート層3の表面3aに向かって減少していることによって実現され得る。本明細書において、ハードコート層の表面とは、透明フィルムに積層されたハードコート層の、ハードコート層と透明フィルムとの境界とは反対側の面を指す。 【0044】 透明フィルム2の固有の屈折率とハードコート層3の固有の屈折率は、異なっていてもよい。透明フィルム2の固有の屈折率は、ハードコート層3の固有の屈折率よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。 【0045】 本明細書において、透明フィルム2の固有の屈折率とは、透明フィルム単独(ハードコート層が設けられていない状態の透明フィルム)に対して測定された屈折率をいう。また、本明細書において、ハードコート層3の固有の屈折率とは、ハードコート層単独の屈折率(ハードコート層を形成する成分が本来有する屈折率)をいう。 以下、透明フィルムを形成する成分(透明フィルム内に含まれるハードコート層を形成する成分を除く)を、「フィルム成分」と、ハードコート層を形成する成分(ハードコート層内に含まれる透明フィルムを形成する成分を除く)を、「ハードコート成分」とそれぞれ略記する場合がある。 【0046】 干渉縞の発生を防止するためには、透明フィルム2とハードコート層3の屈折率の差はゼロであることが理論上望ましい。もっとも、透明フィルム2の屈折率とハードコート層3の屈折率が同じ値となる材料を選択することは現実的には困難である。本発明のハードコートフィルム1は、混在領域31において屈折率が厚み方向に連続的に変化し且つ混在領域31中に界面を有しない構造であることが好ましい。この場合、干渉縞の発生をより確実に抑制できる。屈折率の差がある程度大きい透明フィルム2とハードコート層3を用いることも可能である。具体的には、透明フィルム2とハードコート層3の固有の屈折率の差は、例えば、0?0.42であり、好ましくは、0.03?0.26である。両者の固有の屈折率の差は、フィルム成分とハードコート成分との屈折率の差である。 【0047】 本発明において、透明フィルム2とハードコート層3の屈折率の差は、混在領域によって低減されている。上述したように、上記式(1)に規定する屈折率変化傾斜a(μm-1)が0.003≦a≦0.018を満たすことにより、干渉縞の発生が抑制される。 【0048】 例えば、透明フィルム2の固有の屈折率がハードコート層3の固有の屈折率よりも小さい場合には、上記混在領域における屈折率は、ハードコート層3の表面3a側に向かうに従って徐々に大きくなり得る。つまり、図1?4に示す態様の場合、界面5を基準にして、その界面5からハードコート層3の表面3a側に向かうに従って、ハードコート層3の固有の屈折率に徐々に近づくように、屈折率が連続的に変化し得る。一方、透明フィルム2の固有の屈折率がハードコート層3の固有の屈折率よりも大きい場合には、混在領域31における屈折率は、ハードコート層3の表面3a側に向かうに従って徐々に小さくなり得る。 【0049】 混在領域31では、代表的には上記の通り、フィルム成分とハードコート成分が混在している。混在領域31は、フィルム成分のハードコート層3への移行により形成され得る。混在領域31中のフィルム成分は、反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、ハードコート層3の表面3aに向かうに従って減少し得る。この混在領域31の存在によって、透明フィルム2とハードコート層3は密着性に優れている。従って、ハードコートフィルム1を長期間使用しても、透明フィルム2とハードコート層3とは剥がれにくい。したがって、このハードコートフィルム1は、耐久性に優れている。また、混在領域31の存在によって、透明フィルム2とハードコート層3の屈折率の差は、低減されている。従って、ハードコートフィルム1は、透明フィルム2とハードコート層3との界面5に起因する干渉縞も抑制されている。 【0050】 混在領域31とハードコート層3の表面3aの間の領域(以下、ハードコート領域とも称する)32は、実質的にハードコート成分からなる。このハードコート層3の表面側にハードコート領域32を有することにより、高硬度のハードコート層3を構成できる。ただし、ハードコート領域32中には、上記フィルム成分が僅かに含まれていることもある。混在領域31とハードコート領域32との間にも上記界面を有しないことが好ましい。すなわち、ハードコート層3において、混在領域31とハードコート領域32とは、界面を生じることなく繋がっていることが好ましい。 【0051】 透明フィルム2中には、ハードコート成分が含まれていてもよいし、又は、ハードコート成分が含まれていなくてもよい。図2に示す態様のように、透明フィルム2にハードコート成分が含まれている場合、ハードコート成分は、透明フィルム2とハードコート層3との境界から透明フィルム2の厚み方向中途部までの領域に含まれる。その結果、上述したように、混在領域は、第1領域31と第2領域21とを含む。第2領域21は、ハードコート成分の透明フィルム2への移行により形成され得る。 【0052】 図2に示すように、透明フィルム2にハードコート成分が含まれている場合、ハードコート層3とは反対側の第2領域21の端部に界面5が存在していてもよい。なお、透明フィルム2の厚み方向中途部は、透明フィルム2とハードコート層3との境界と透明フィルム2の裏面との間の厚み方向の中央部を意味するわけではないことに留意されたい。また、その他の点でも、ハードコート層3の中途部と同様に考えることができる。 【0053】 第2領域21中のフィルム成分は、反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、ハードコート層3の表面3aに向かうに従って徐々に減少していることが好ましい。ただし、第2領域21の厚みは、第1領域31の厚みよりも小さくても良い。 【0054】 図3に示す実施形態においては、移行領域33は、透明フィルム2が膨潤または溶解することで形成され得る。この場合、移行領域33のハードコート層3側(実質的には、混在領域31側)の端部に界面5が認識される場合がある。」 上記記載から,引用文献2には以下の事項(以下,「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「ハードコートフィルムの耐擦傷性を向上するために, ハードコートフィルムに透明フィルムの成分とハードコート層の成分が混在し,屈折率がハードコートフィルムの厚み方向に向かって連続的に変化する混在領域を設け, ハードコート層の表面の僅かな凹凸による干渉縞の発生を防止すること。」 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2007-212815号公報)には,図面ともに次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、例えば液晶装置等の電気光学装置に用いられる電気光学装置用基板、該電気光学装置用基板を備えてなる電気光学装置及びその製造方法、並びに該電気光学装置を備えた、例えば液晶プロジェクタ等の電子機器の技術分野に関する。 【背景技術】 【0002】 この種の電気光学装置の一例である液晶装置では、ガラス基板、石英基板等の2枚の透明な基板間に液晶が封入される。一方の基板上にはITO(Indium Tin Oxide)膜からなる透明な画素電極が例えばマトリクス状に配列され、他方の基板上にはITO膜からなる対向電極が画素電極に対向して設けられる。画素電極及び対向電極間の液晶層に画像信号に基づく電圧を印加して、液晶分子の配向状態を変化させることにより画素毎の光の透過率を変化させる。このようにして液晶層を通過する光を画像信号に応じて変化させることで画像表示が行われる。 【0003】 このような画像表示の際、入射光は、液晶層に加えて画素電極及び対向電極等も通過するので、高品質な表示を行うためには画素電極及び対向電極の透過率を高めることが望まれる。例えば特許文献1では、画素電極及び対向電極を構成するITO膜に異種膜を積層することにより透過率を向上させる技術が開示されている。 【0004】 【特許文献1】特開2005-140836号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、特許文献1に開示された技術によれば、ITO膜に積層する異種膜の屈折率や膜厚などの組合せによっては効果的に透過率を向上させることが困難であるという技術的な問題点がある。 【0006】 本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、効果的に透過率を向上させることができ、高品質な表示が可能な電気光学装置、電気光学装置用基板、及び該電気光学装置の製造方法、並びに該電気光学装置を備えた電子機器を提供することを課題とする。」 「【0020】 本発明に係る第1の電気光学装置の他の態様では、前記光学薄膜の屈折率は、前記基板から前記光学薄膜の厚み方向に離れるに従って徐々に前記透明電極の屈折率に近づく。 【0021】 この態様によれば、光学薄膜の屈折率は、該光学薄膜の厚み方向、言い換えれば、基板上の積層方向(即ち、上層側へ向かう方向)に、基板から離れるに従って徐々に透明電極の屈折率に近づく。即ち、光学薄膜の屈折率は、光学薄膜における基板側から透明電極側へ向かって、例えば段階的或いは連続的に変化する。好ましくは、光学薄膜おける基板と接する第1部分の屈折率は、基板の屈折率と同一であり、光学薄膜おける透明電極と接する第2部分の屈折率は、透明電極の屈折率と同一であり、第1及び第2部分の間の部分は、基板からの距離に比例して変化する。よって、透明電極と光学薄膜との界面、及び光学薄膜と基板との界面における屈折率の差に起因した界面反射を低減或いは防止できる。更に、光学薄膜内の屈折率は徐々に変化するので、光学薄膜内における屈折率差に起因した界面反射は殆ど或いは実践上全く生じない。」 「【0077】 尚、光学薄膜91及び92は、ITOよりも安価な例えばシリコン窒化膜(SiN)或いはシリコン酸窒化膜(SiON)等からなるので、透過率を向上させつつ製造コストの低減も可能である。 <第3実施形態> 次に、第3実施形態に係る液晶装置について、図4及び図7を参照して説明する。ここに図7は、光学薄膜における屈折率の基板表面からの距離に対する依存性を示す説明図である。 【0078】 図4及び図7において、本実施形態の液晶装置は、光学薄膜91の屈折率が、層間絶縁膜89から離れるに従って徐々に画素電極9aの屈折率に近づくように形成されている点で、上述した第1実施形態に係る液晶装置と異なる。その他の点については、上述した第1実施形態に係る液晶装置と概ね同様である。 【0079】 即ち、図4及び図7において、本実施形態では特に、光学薄膜91の屈折率は、光学薄膜91における層間絶縁膜89側から画素電極9a側へ向かって連続的に変化する。より具体的には、図7に示すように、光学薄膜91おける層間絶縁膜89と接する部分の屈折率は、層間絶縁膜89の屈折率と同一であり(即ち、屈折率は1.4であり)、光学薄膜91おける画素電極9aと接する部分の屈折率は、画素電極9aの屈折率と同一であり(即ち、屈折率は2.0であり)、層間絶縁膜89と接する部分と画素電極9aと接する部分との間の部分は、層間絶縁膜89の表面からの距離d7に比例して変化する。即ち、光学薄膜91は、層間絶縁膜89側から画素電極9a側へ向かって、屈折率が1.4から2.0まで、距離d7に比例して大きくなるように形成されている。よって、画素電極9aと光学薄膜91との界面、及び光学薄膜91と層間絶縁膜89との界面における屈折率の差に起因した界面反射を低減或いは防止できる。更に、光学薄膜91内の屈折率は、距離d7に比例して徐々に変化するので、光学薄膜91内における屈折率差に起因した界面反射は殆ど或いは実践上全く生じない。尚、光学薄膜91の屈折率を、光学薄膜91における層間絶縁膜89側から画素電極9a側へ向かって段階的に変化するようにしてもよい。この場合にも、屈折率差に起因した界面反射を確実に低減或いは防止できる。 <製造方法> 次に、上述した第1又は第3実施形態に係る液晶装置を製造する液晶装置の製造方法について、図8を参照して説明する。ここに図8は、第1又は第3実施形態に係る液晶装置の光学薄膜の製造プロセスの各工程について順を追って示す工程図である。尚、ここでは、主に、第1又は第3実施形態に係る液晶装置のうち光学薄膜及び画素電極を形成する工程について説明する。 【0080】 先ず、図8(a)において、TFTアレイ基板10上に、画素スイッチング用のTFT30(図3参照)や走査線3a、データ線6a等の配線を、各種導電膜、半導体膜、絶縁膜等から形成して、層間絶縁膜89まで形成する。層間絶縁膜89は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、NSGを積層することにより形成する。尚、層間絶縁膜89は、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス、窒化シリコンや酸化シリコン等を積層することにより形成してもよい。このように形成される層間絶縁膜89の屈折率は約1.4となる。続いて、層間絶縁膜89上に、酸素(O2)ガスを供給しつつ窒化シリコン(SiN)を用いて、例えばCVD法等により膜厚が55?100nmの範囲内となるようにシリコン酸窒化膜(SiON)を積層して光学薄膜91を形成する。この際、光学薄膜91が層間絶縁膜89の屈折率と画素電極9aの屈折率との中間の大きさの屈折率(例えば、1.6?1.8の屈折率)を有するように、例えば供給する酸素ガスの量、圧力、温度等の環境条件を調節する。ここで、供給する酸素ガスの量をシリコン酸窒化膜(即ち、光学薄膜91)の膜厚が厚くなるのに従って少なくするように調節してもよい。このようにすれば、光学薄膜91の屈折率が、光学薄膜91における層間絶縁膜89側から画素電極9a側へ向かって段階的或いは連続的に変化するように、光学薄膜91を形成することができる。」 上記記載から,引用文献3には以下の事項(以下,「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「画素電極及び対向電極を構成するITO膜等の透明電極に,光学膜を積層する際に, 透明率を向上するために, 基板から光学薄膜の厚み方向に離れるに従って徐々に透明電極の屈折率に近づけること。」 4 引用文献4について 原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由通知に引用された引用文献4(特開2014-108541号公報)には,図面ともに次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、転写フィルムおよび透明積層体、それらの製造方法、静電容量型入力装置ならびに画像表示装置に関するものである。詳しくは、指の接触位置を静電容量の変化として検出可能な静電容量型入力装置とそれに用いることができる透明積層体、透明積層体を製造するために用いる転写フィルムと転写フィルムの製造方法、該転写フィルムを用いた透明積層体の製造方法、並びに、当該静電容量型入力装置を構成要素として備えた画像表示装置に関するものである。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0010】 これに対し、本発明者らがこれらの特許文献1?3に記載されている層構成を検討したところ、透明電極パターンが視認されてしまい、依然として透明電極パターンが視認される問題は完全には解決できていないことがわかった。 本発明が解決しようとする課題は、透明電極パターンが視認される問題がない透明積層体を形成することができる転写フィルムを提供することである。」 「【0062】 本発明の透明積層体は、前記透明膜および前記透明電極パターンが互いに隣接していることが好ましい。 図11には、前記透明膜11の一部の領域上に隣接して前記透明電極パターン4が積層している態様が示されている。 図11に示すように、前記透明電極パターン4の端部は、その形状に特に制限はないがテーパー形状を有していてもよく、例えば、前記透明基板側の面の方が、前記透明基板と反対側の面よりも広いようなテーパー形状を有していてもよい。 ここで、前記透明電極パターンの端部がテーパー形状であるときの透明電極パターンの端部の角度(以下、テーパー角とも言う)は、30°以下であることが好ましく、0.1?15°であることがより好ましく、0.5?5°であることが特に好ましい。 本明細書中におけるテーパー角の測定方法は、前記透明電極パターンの端部の顕微鏡写真を撮影し、その顕微鏡写真のテーパー部分を三角形に近似し、テーパー角を直接測定して求めることができる。 図10に透明電極パターンの端部がテーパー形状である場合の一例を示す。図10におけるテーパー部分を近似した三角形は、底面が800nmであり、高さ(底面と略平行な上底部分における膜厚)が40nmであり、このときのテーパー角αは約3°である。テーパー部分を近似した三角形の底面は、10?3000nmであることが好ましく、100?1500nmであることがより好ましく、300?1000nmであることが特に好ましい。なお、テーパー部分を近似した三角形の高さの好ましい範囲は、透明電極パターンの膜厚の好ましい範囲と同様である。」 5 引用文献5について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2009-173910号公報)には,図面ともに次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、シリル化メタロキサンオリゴマーをヒドロシリル化反応可能な硬化剤により硬化させる硬化性組成物に関し、とくに熱硬化性で屈折率が高く透明安定性に優れる硬化性樹脂組成物及び該樹脂組成物を硬化してなる硬化物に関する。 【背景技術】 【0002】 光素子、例えば、各種レーザー、発光ダイオード、受光素子、複合光素子、光回路部品、光集積回路等、の封止等の目的に、従来、透明エポキシ樹脂が使用されてきた。しかしながら、光素子においては、性質の異なる層間の界面での光の反射による光の取り出し又は取り込み効率の低下等を考慮して、屈折率がエポキシ樹脂より高い樹脂が求められている。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 上述の現状に鑑みて、本発明は、シリル化ポリメタロキサン化合物をヒドロシリル化反応可能な硬化剤により硬化させる硬化性組成物を提供すること、とくに熱硬化性で屈折率が高く透明安定性に優れ、薄膜のみならず厚膜もしくはバルクとしても適用可能な樹脂組成物及び該樹脂組成物を硬化してなる硬化物を提供することを目的とする。」 「【発明の効果】 【0009】 本発明の組成物は上述の構成により、シリル化ポリジルコノキサン化合物やシリル化ポリチタノキサン化合物を、ヒドロシリル化反応により、1分子中にSi-H結合含有基を少なくとも二つ有する化合物を硬化剤として用いて硬化させることができる。その硬化物は、例えば、1.6前後またはそれ以上の高屈折率を示し、薄膜のみならず厚さ数mm程度の厚膜ないしバルクとしても適用可能である。本発明の組成物は、例えば、フィルム状レンズ、反射防止膜等の光学部品や、太陽電池、有機EL、LED等の光素子の高効率化に有用な高屈折率層形成用透明材料として使用することができ、更には太陽電池、有機EL、LED等の光素子の封止用樹脂としてエポキシ樹脂の代わりに使用することができ、高効率の発光素子を製造することができる。」 第6 対比・判断 1 本願発明1について 本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。 (1)引用発明の「ガラス基板」,「透明電極層」,「金属酸化物粒子」及び「タッチパネル用積層体」は,それぞれ,本願発明1の「透明基板」,「透明電極」,「金属酸化物粒子、及び/又は、金属アルコキシド化合物の縮合物」である「屈折率調整材」及び「タッチパネル部材」に相当する。 (2)引用発明の「保護層」と「反射防止層」からなる層は,「反射防止層」が「前記透明電極層と保護層の間」にあることから,本願発明1の「保護層」に相当する。 そして,「保護層」,「反射防止層」及び「電極層」の屈折率がそれぞれ,「1.5?1.53」,「1.6?1.78」及び「1.75?2.1」であることから,引用発明の「保護層」と「反射防止層」からなる層は,本願発明1の「前記保護層が、下記式1及び式2を満たす」, 「|n(電極)-n(保護電)|≦0.2 (1) 0.2≦n(保護電)-n(保護表面) (2) 式中、前記透明電極の屈折率をn(電極)とし、前記保護層の透明電極側界面の屈折率をn(保護電)とし、前記保護層の透明基板と反対側界面の屈折率をn(保護表面)とする。」 の関係を満たすと認められる。 (3)そうすると,本願発明1と引用発明とは以下の点で一致,又相違する。 [一致点] 「透明基板、 透明電極、及び、 前記透明電極を覆うように設けられた保護層、をこの順で少なくとも有し、 前記屈折率調整材が、金属酸化物粒子、及び/又は、金属アルコキシド化合物の縮合物であり、 前記保護層が、下記式1及び式2を満たすことを特徴とする タッチパネル部材。 |n(電極)-n(保護電)|≦0.2 (1) 0.2≦n(保護電)-n(保護表面) (2) 式中、前記透明電極の屈折率をn(電極)とし、前記保護層の透明電極側界面の屈折率をn(保護電)とし、前記保護層の透明基板と反対側界面の屈折率をn(保護表面)とする。」 [相違点1] 本願発明1の「保護層」の厚さは「1.0?10μm」であるのに対して,引用発明はそのようになっていない点。 [相違点2] 本願発明1は,「前記保護層の少なくとも一部において、透明基板側から透明基板と反対側に向けて屈折率が連続的に漸次小さくなる層であり、 前記透明基板側から透明基板と反対側に向けて屈折率が連続的に漸次小さくなる層が、屈折率調整材の含有量が透明基板側から透明基板と反対側に向けて連続的に漸次小さくなる層であり, 前記透明基板側から透明基板と反対側に向けて屈折率が連続的に漸次小さくなる層が、前記保護層の厚さ方向において60nm以上の厚さを有」するのに対して,引用発明は対応する層を有していない点。 (4)相違点についての判断 上記[相違点2]について検討すると,引用文献2記載事項の「屈折率がハードコートフィルムの厚み方向に向かって連続的に変化する混在領域」は,「ハードコート層の表面の僅かな凹凸による干渉縞の発生を防止」するためのものであるから,「タッチパネル用積層体」の「光反射を低減し,透明電極パターンが見えにくくし,視認性,すなわちヘイズに優れる」ものとする引用発明に適用する動機づけが認められない。 また,引用発明3記載事項の「透明率を向上するために,基板から光学薄膜の厚み方向に離れるに従って徐々に透明電極の屈折率に近づけること」を採用しても,引用発明は上記[相違点2]に係る構成を備えるものとはならない。 さらに,引用文献4及び5には,[相違点2]に係る構成は記載されていない。 そして,上記[相違点2]に係る構成は,周知の構成であるとも認められないので,上記[相違点1]について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び引用文献2ないし5に記載された事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし11について 本願発明2ないし11も,上記[相違点2]に係る構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2ないし5に記載された事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第7 原査定について 令和元年8月19日に提出された手続補正書により,本願発明1ないし11は,上記[相違点2]に係る技術的事項を有するものとなった。 当該[相違点2]に係る技術的事項は,上記第5及び6で検討したように,原査定における引用文献1ないし5には記載されておらず,本願出願前における周知技術でもないので,本願発明1ないし11は,当業者であっても,原査定における引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものではない。 したがって,原査定を維持することはできない。 第8 当審拒絶理由通知について 令和元年8月19日に提出された手続補正書により,本願発明1ないし11は,上記[相違点2]に係る技術的事項を有するものとなった。 当該[相違点2]に係る技術的事項は,上記第5及び6で検討したように,当審拒絶理由通知における引用文献1及び4には記載されておらず,本願出願前における周知技術でもないので,本願発明1ないし11は,当業者であっても,当審拒絶理由通知における引用文献1及び4に基づいて容易に発明できたものではない。 したがって,当審拒絶理由通知は解消された。 第9 むすび 以上のとおり,本願発明1ないし11は,当業者が引用発明及び引用文献2ないし5に記載持された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって,原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-11-18 |
出願番号 | 特願2015-57445(P2015-57445) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 菅原 浩二 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
小田 浩 野崎 大進 |
発明の名称 | タッチパネル部材、タッチパネル及びタッチパネル表示装置 |
代理人 | 特許業務法人太陽国際特許事務所 |