ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03F |
---|---|
管理番号 | 1357131 |
審判番号 | 不服2018-7472 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-05-31 |
確定日 | 2019-11-14 |
事件の表示 | 特願2012-218641「感光性樹脂組成物の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月21日出願公開、特開2014- 71373〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年9月28日の出願であって、その後の手続の経緯は、以下のとおりである。 平成28年6月14日付け:拒絶理由通知書 平成28年10月26日:意見書、手続補正書の提出 平成29年2月23日付け:拒絶理由通知書 平成29年4月19日:意見書の提出 平成29年8月9日付け:拒絶理由通知書 平成29年10月6日:意見書、手続補正書の提出 平成30年2月22日付け:拒絶査定 平成30年5月31日:審判請求書、手続補正書の提出 令和元年5月17日付け:拒絶理由通知書(この拒絶理由通知書によって通知された拒絶の理由を、以下、「当審拒絶理由通知」という。) 令和元年7月19日:意見書、手続補正書(この手続補正書による手続補正を、以下、「本件補正」という。)の提出 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりの、次のものである。 「 (A)酸性の官能基を有するアルカリ可溶性樹脂; (B)光酸発生剤;及び (C)25℃における蒸気圧が10Pa?250Paであり、かつ25℃における密度が0.7g/cm^(3)?1.02g/cm^(3)である溶媒; を含むスピンコート用感光性樹脂組成物の製造方法であって、 前記酸性の官能基は、フェノール性水酸基及びカルボキシル基から選ばれる少なくとも1つの基であり、 該スピンコート用感光性樹脂組成物の25℃における密度を、0.75g/cm^(3)?1.1g/cm^(3)の範囲内に調整し、そして 該スピンコート用感光性樹脂組成物の25℃における粘度を、0.5Pa・s?2Pa・sの範囲内に調整する、前記スピンコート用感光性樹脂組成物の製造方法。」 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は、この出願の請求項1?8、11及び12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3.特開2010-204624号公報 4.特開2010-77380号公報 E.特開2013-154612号公報(参考文献) F.特開2009-258553号公報(参考文献) 第4 引用文献の記載事項及び引用発明 1 引用文献3の記載事項 当審拒絶理由で引用され、本件出願前に頒布された刊行物である、特開2010-204624号公報(平成22年9月16日公開。以下「引用文献3」という。)には、以下のとおり記載されている。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。 (1)「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、解像性と耐熱性に優れたパターンを形成することができ、高温焼成が不要で、熱処理工程において水分等のアウトガスを殆ど発生することなく、かつ、アルカリ現像可能なポジ型レジスト組成物又はネガ型レジスト組成物に関する。 ・・・(省略)・・・ 【0009】 しかし、従来知られている感光性接着剤では、露光及び現像によりパターンを形成するフォトリソグラフの手法によって接着剤パターンを形成する際に、パターン形成の精度が不充分であり、また、接着力や耐熱性の不足やプロセス中の加熱工程での気泡(ボイド)の発生等、接合の信頼性に欠ける等の問題点があった。 ・・・(省略)・・・ 【0012】 本発明は、解像性と耐熱性に優れたパターンを形成することができ、高温焼成が不要で、熱処理工程において水分等の低分子成分を殆ど発生することなく、かつ、アルカリ水溶液による現像が可能なポジ型レジスト組成物又はネガ型レジスト組成物を提供することを目的とする。」 (2)「【0013】 本発明1は、アルカリ可溶性樹脂、光反応により酸を発生する光反応性化合物、及び、溶媒を含有するポジ型レジスト組成物であって、上記アルカリ可溶性樹脂は、ベンゾオキサジン環の開環により生じるフェノール性水酸基を有するものであるポジ型レジスト組成物である。 本発明2は、アルカリ可溶性樹脂、重合性不飽和化合物、光反応開始剤、及び、溶媒を含有するネガ型レジスト組成物であって、上記アルカリ可溶性樹脂は、ベンゾオキサジン環の開環により生じるフェノール性水酸基を有するものであるネガ型レジスト組成物である。 ・・・(省略)・・・ 【0016】 本発明1のポジ型レジスト組成物及び本発明2のネガ型レジスト組成物(以下、共通する場合は単に「本発明のレジスト組成物」ともいう)は、ベンゾオキサジン環の開環により生じるフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂を含有する。このようなアルカリ可溶性樹脂を用いることにより、本発明のレジスト組成物は、高温焼成が不要で、熱処理時に水等のアウトガスを殆ど発生することなく、解像性や耐熱性に優れたパターンを形成することができる。 なお、ベンゾオキサジン環構造を下記式(1)、ベンゾオキサジン環の開環構造の例を下記式(2)に示した。 【0017】 【化1】 【0018】 式(1)中、R^(1)?R^(5)のうち少なくとも1つは、ポリマーの主鎖又は側鎖への連結基を表す。連結基以外の置換基である場合、R^(1)は脂肪族基、脂環式基又は芳香族基を表し、R^(2)?R^(4)は同一でも異なってもよく、水酸基、水素原子、脂肪族基、脂環式基又は芳香族基を表す。またR^(2)?R^(4)のうちいずれかが一体となって環を形成していてもよい。 【0019】 式(2)中、R^(6)?R^(11)のうち、R^(6)はポリマーの主鎖又は側鎖への連結基を表す。また、R^(7)?R^(11)については、ポリマーの主鎖または側鎖への連結基であっても、連結基以外の置換基であってもよい。連結基以外の置換基である場合、R^(7)は脂肪族基、脂環式基又は芳香族基を表し、R^(8)?R^(11)は同一でも異なってもよく、水酸基、水素原子、脂肪族基、脂環式基又は芳香族基を表す。またR^(8)?R^(11)のうちいずれかが一体となって環を形成していてもよい。 【0020】 上記アルカリ可溶性樹脂は、ベンゾオキサジン環の開環構造由来のフェノール性水酸基(すなわち式(2)中に示した水酸基)に加え、更に共重合成分由来のフェノール性水酸基を有することが好ましい。このようなフェノール性水酸基を有することにより、上記アルカリ可溶性樹脂のアルカリ可溶性が向上し、現像性、解像性を改善することができる。 【0021】 上記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量の好ましい下限は1000、好ましい上限は2万である。上記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量が1000未満であると、レジスト組成物の保持力が弱く、パターンを形成することができないことがある。上記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量が2万を超えると、樹脂自体の合成が困難であり、また、アルカリ現像性が劣ることがある。 ・・・(省略)・・・ 【0055】 本発明のレジスト組成物は、溶媒を含有する。 ・・・(省略)・・・ 【0056】 上記溶媒の配合量としては特に限定されないが、本発明のレジスト組成物の固形分濃度が10?60重量%、より好ましくは15?50重量%となるように配合することが、塗工性や塗膜均一性等の点から好ましい。 ・・・(省略)・・・ 【0063】 本発明の感光性絶縁材料を用いて半導体集積回路を製造する方法を説明する。 まず、シリコンウエハ、金属基板、セラミック基板、ガラス基板、有機基板等の基板上に、本発明の感光性絶縁材料を塗工して塗膜を形成する。 上記塗工方法は特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法、スクリーン印刷法、回転塗布(スピンコート)法等の従来公知の方法を用いることができる。形成された塗膜は、適度に加熱乾燥して溶媒を蒸発させることにより、粘着性のない塗膜とすることができる。 【0064】 次いで、得られた塗膜上に、所望のパターンが描かれたフォトマスクを通して活性光線又は化学線を照射する。活性光線又は化学線を照射には、例えば、超高圧水銀灯を用いるコンタクト/プロキシミテイ露光機、ミラープロジェクション露光機、i線ステッパ、g線ステッパ、その他の紫外線、可視光源や、X線、電子線を用いることができる。 照射後に、必要に応じて露光後加熱(PEB、post exposure bake)処理を行ってもよい。 【0065】 次いで、アルカリ現像して所望のパターンの塗膜を得る工程を行う。上記塗膜の活性光線が照射された部分では、成分として含まれている光反応性化合物から酸が発生し、その部分が現像液に可溶となる。活性光線又は化学線を照射後、照射部を現像液で溶解除去することにより所望のパターンに塗膜がパターン化される。 ・・・(省略)・・・ 【0072】 本発明1のポジ型レジスト組成物を含有する感光性接着剤もまた、本発明の1つである。 本発明の感光性接着剤は、上述した本発明の感光性絶縁材料と同様にして基板上に所望の形状にパターン化された接着剤パターンを形成することができる。 【0073】 形成した接着剤パターンの厚みは特に限定されないが、2?100μmの範囲であることが好ましく、10?50μmの範囲であることがより好ましい。」 (3)「【発明を実施するための形態】 【0085】 以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されない。 【0086】 〈アルカリ可溶性樹脂の合成〉 (合成例1[方法1]) 500mL容のビーカーに、p-クレゾール21.6g(0.2mol)、パラホルムアルデヒド13.2g(0.44mol)、アニリン18.6g(0.2mol)を投入し、常温で30分間攪拌してスラリー状にした後、攪拌を行いながら170℃に加熱し、10分間反応させることにより、1分子中に1個のベンゾオキサジン環を有する化合物を得た。 【0087】 得られた1分子中に1個のベンゾオキサジン環を有する化合物を、更に200℃で1時間反応させて、ベンゾオキサジン環の開環構造を有するアルカリ可溶性樹脂を得た。得られたアルカリ可溶性樹脂を乳酸エチルに溶かし、固形分30重量%の溶液とした。 ・・・(省略)・・・ 【0097】 〈ポジ型レジスト組成物の作製及び評価〉 (実施例1?5) 合成例1?5で得られた固形分30重量%の樹脂溶液20.0g、光反応により酸を発生する光反応性化合物として2,3,4,4’-テトラメチルベンゾフェノンに平均して3個の5-ナフトキノンジアジドスルホニル基を結合させた化合物(東洋合成社製、「4NT-300」)1.5g、フッ素系界面活性剤(OMNOVA SOLUTIONS社製、「PF-3320」)0.015g、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル16.1gを混合し、固形分20重量%のポジ型レジスト組成物を得た。 【0098】 得られたポジ型レジスト組成物を、スピンコーターを用いてシリコンウエハ上に厚さ3μmとなるように塗布した後、ホットプレート上で100℃に加熱し、2分間乾燥させて塗膜を得た。 得られた塗膜に対して、4?20μmのドットパターン及びラインアンドスペースパターンを有するマスクを介して400mJ/cm^(2)の紫外線照射を行った。紫外線照射後、2.38%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液を用いて30秒間現像し、水で洗浄してパターン形成を行った。 【0099】 得られたパターンを光学顕微鏡で観察し、解像度の評価を行った。 また、得られたパターンを、更に220℃、60分間加熱処理した後、シリコンウエハ上から削り取り、熱重量測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、「TG/DTA320」)により耐熱性評価を行った。100℃まで昇温して吸着水分を除去した後、この重量を100%とし、10℃/分の昇温速度で500℃まで加熱して5%重量減少温度を測定した。 結果を表2に示す。 【0100】 〈ネガ型レジスト組成物の作製及び評価〉 (実施例6?10) 合成例1?5で得られた固形分30重量%の樹脂溶液20.0g、重合性不飽和化合物としてペンタエリスリトールトリアクリレート6.0g、光反応開始剤として2-メチル-1(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(チバ・ジャパン社製、「イルガキュア907」)1.0g、フッ素系界面活性剤(OMNOVA SOLUTIONS社製、「PF-3320」)0.015g、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル38.1gを混合し、固形分20重量%のネガ型レジスト組成物を得た。 【0101】 得られたネガ型レジスト組成物を、スピンコーターを用いてシリコンウエハ上に厚さ3μmとなるように塗布した後、ホットプレート上で100℃に加熱し、2分間乾燥させて塗膜を得た。 得られた塗膜に対して、4?20μmのドットパターン及びラインアンドスペースパターンを有するマスクを介して400mJ/cm^(2)の紫外線照射を行った。紫外線照射後、2.38%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液を用いて30秒間現像し、水で洗浄してパターン形成を行った。 【0102】 得られたパターンを光学顕微鏡で観察し、解像度の評価を行った。 また、得られたパターンを、更に220℃、60分間加熱処理した後、シリコンウエハ上から削り取り、熱重量測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、「TG/DTA320」)により耐熱性評価を行った。100℃まで昇温して吸着水分を除去した後、この重量を100%とし、10℃/分の昇温速度で500℃まで加熱して5%重量減少温度を測定した。 結果を表3に示す。 【0103】 【表1】 【0104】 【表2】 【0105】 【表3】 」 2 引用発明1 前記1の記載事項(3)に基づけば、引用文献3には、実施例1として、「ポジ型レジスト組成物の製造方法」に関する事項が記載されている。そうしてみると、引用文献3には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていたと認められる。なお、段落【0087】に記載の「固形分30重量%の溶液」と、段落【0097】に記載の「固形分30重量%の樹脂溶液」は、同じ材料であるため、両者とも「固形分30重量%の樹脂溶液」に用語を統一した。 「 ビーカーに、p-クレゾール、パラホルムアルデヒド、アニリンを投入し、攪拌を行いながら加熱し、反応させることにより、1分子中に1個のベンゾオキサジン環を有する化合物を得、 得られた1分子中に1個のベンゾオキサジン環を有する化合物を、更に反応させて、ベンゾオキサジン環の開環構造を有するアルカリ可溶性樹脂を得、 得られたアルカリ可溶性樹脂を乳酸エチルに溶かし、固形分30重量%の樹脂溶液とし、 得られた固形分30重量%の樹脂溶液、光反応により酸を発生する光反応性化合物として2,3,4,4’-テトラメチルベンゾフェノンに平均して3個の5-ナフトキノンジアジドスルホニル基を結合させた化合物、フッ素系界面活性剤、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルを混合することからなる、 スピンコーターを用いてシリコンウエハ上に塗布した後、加熱し、乾燥させて塗膜を得るために使用される、 固形分20重量%のポジ型レジスト組成物の製造方法。」 3 引用文献4の記載事項 当審拒絶理由で引用され、本件出願前に頒布された刊行物である、特開2010-77380号公報(平成22年4月8日公開。以下「引用文献4」という。)には、以下のとおり記載されている。 (1)「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、レジスト組成物に好適な高いアルカリ可溶性を有し、高温焼成が不要で、熱処理工程において水分等の低分子成分を殆ど発生することなく、解像性や耐熱性に優れた硬化物を生成することができるアルカリ可溶性樹脂に関する。また、該アルカリ可溶性樹脂を用いたポジ型レジスト組成物及びネガ型レジスト組成物に関する。 ・・・(省略)・・・ 【0004】 これに対し、ベンゾオキサジン樹脂は、絶縁性や耐熱性等に優れ、熱硬化時に揮発成分を発生することがない樹脂として知られている。しかしながら、従来のベンゾオキサジン樹脂はアルカリ水溶液に対する溶解性が無い(又は極めて低い)ため、レジスト組成物のアルカリ可溶性樹脂としてはほとんど用いられていなかった。 ・・・(省略)・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、レジスト組成物に好適な高いアルカリ可溶性を有し、熱処理工程において水分等の低分子成分を殆ど発生することなく、高温焼成が不要で、解像性や耐熱性に優れた硬化物を生成することができるアルカリ可溶性樹脂を提供することを目的とする。また、該アルカリ可溶性樹脂を用いたポジ型レジスト組成物及びネガ型レジスト組成物を提供することを目的とする。」 (2)「【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明は、下記一般式(1-1)又は(1-2)で表される繰り返し単位からなるアルカリ可溶性樹脂である。 【0008】 【化1】 【0009】 式(1-1)中、Ar^(1)は下記一般式(2-1)、(2-2)又は(2-3)で表される4価の芳香族基を表し、R^(1)は脂肪族基、脂環式基、又は、芳香族基を表し、R^(2)?R^(4)は、同一でも異なってもよく、水酸基、水素原子、脂肪族基、脂環式基、又は、芳香族基を表す。 式(1-2)中、Xは2価の有機基を表す。R^(1)?R^(4)は、同一でも異なってもよく、水素原子、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、又は、ハロゲン基を示す。R^(5)?R^(7)は、同一でも異なってもよく、水酸基、水素原子、脂肪族基、脂環式基、又は、芳香族基を示す。 【0010】 【化2】 【0011】 式(2-1)、(2-2)、(2-3)中、**印は酸素原子への結合部位を表し、他はメチレン基への結合部位を表す。また、各芳香環の水素は、炭素数1?10の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、又は、置換若しくは無置換フェニル基で置換されていてもよい。式(2-1)において、Xは、直接結合手(原子又は原子団が存在しない)、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、及び、下記群Aからなる群より選択される少なくとも1つであるヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい脂肪族、脂環式、又は、芳香族の炭化水素基を表す。 【0012】 【化3】 【0013】 群Aに含まれる各式中、*印は式(2-1)における芳香環への結合部位を表す。 ・・・(省略)・・・ 【0015】 本発明のアルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量の好ましい下限が1000、好ましい上限が2万である。重量平均分子量が1000未満であると、レジスト組成物としたときの保持力が弱く、パターンを形成することができないことがある。重量平均分子量が2万を超えると、樹脂自体の合成が困難であり、また、アルカリ現像性が劣ることがある。 なお、本明細書において重量平均分子量とは、例えば、昭和電工社製Shodex LF-804等のカラムを用い、テトラヒドロフランを展開溶媒としたGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)法により測定された値であって、ポリスチレン換算されたものを意味する。 ・・・(省略)・・・ 【0053】 本発明のポジ型レジスト組成物、ネガ型レジスト組成物は、粘度等を調整する目的で、溶剤を含有することが好ましい。 上記溶剤としては特に限定されず、例えば、芳香族炭化水素化合物、飽和又は不飽和炭化水素化合物、エーテル類、ケトン類、エステル類等が挙げられる。 ・・・(省略)・・・ 上記エーテル類は特に限定されず、例えば、・・・(省略)・・・ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、・・・(省略)・・・等が挙げられる。 ・・・(省略)・・・ 【0054】 上記溶剤の配合量としては特に限定されないが、本発明のポジ型レジスト組成物、ネガ型レジスト組成物の固形分濃度が10?60重量%、より好ましくは15?50重量%となるように配合することが、塗工性や塗膜均一性等の点から好ましい。」 (3)「【発明を実施するための形態】 【0058】 以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。 【0059】 〈アルカリ可溶性樹脂の合成〉 (合成例1) 500mL容のビーカーに、ビスフェノールA45.6g(0.2mol)、パラホルムアルデヒド26.4g(0.88mol)、アニリン37.2g(0.4mol)を投入し、常温で30分間攪拌してスラリー状にした後、ホットプレート上で170℃に加熱し、10分間反応させた。反応液をフッ素樹脂製のシート上に流延し、室温まで冷却して得た固形物を乳鉢ですり潰して、1分子中に2個のベンゾオキサジン環を有する化合物を得た。 【0060】 還流管を備えた500mL容のフラスコに、得られた1分子中に2個のベンゾオキサジン環を有する化合物46.2g(0.10mol)、ピロガロール12.6g(0.10mol)、乳酸エチル137.2gを投入し、120℃で30分間反応させて、本発明のアルカリ可溶性樹脂の溶液(固形分30重量%)を得た。 ・・・(省略)・・・ 【0069】 〈ポジ型レジスト組成物の作製及び評価〉 (実施例1?5) 合成例1?5で得られた固形分30重量%の樹脂溶液20.0g、光酸発生剤として2,3,4,4’-テトラメチルベンゾフェノンに平均して3個の5-ナフトキノンジアジドスルホニル基を結合させたもの(4NT-300、東洋合成社製)1.5g、フッ素系界面活性剤(PF-3320、OMNOVA SOLUTIONS社製)0.015g、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル16.1gを混合し、固形分20重量%のポジ型レジスト組成物を得た。 【0070】 得られたポジ型レジスト組成物を、スピンコーターを用いてシリコンウエハ上に厚さ3μmとなるように塗布した後、ホットプレート上で100℃に加熱し、2分間乾燥させて塗膜を得た。 得られた塗膜に対して、4?20μmのドットパターン及びラインアンドスペースパターンを有するマスクを介して400mJ/cm^(2)の紫外線照射を行った。紫外線照射後、2.38%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液を用いて30秒間現像し、水で洗浄してパターン形成を行った。 【0071】 得られたパターンを光学顕微鏡で観察し、解像度の評価を行った。 また、得られたパターンを、更に220℃、60分間加熱処理した後、シリコンウェハ上から削り取り、熱重量測定装置(TG/DTA320、セイコーインスツルメンツ社製)により耐熱性評価を行った。100℃まで昇温して吸着水分を除去した後、この重量を100%とし、10℃/分の昇温速度で500℃まで加熱して5%重量減少温度を測定した。 結果を表2に示す。 【0072】 〈ネガ型レジスト組成物の作製及び評価〉 (実施例6?10) 合成例1?5で得られた固形分30重量%の樹脂溶液20.0g、重合性不飽和化合物としてペンタエリスリトールトリアクリレート6.0g、光重合開始剤として2-メチル-1(4-メチルチオ)フェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ社製)1.0g、フッ素系界面活性剤(PF-3320、OMNOVA SOLUTIONS社製)0.015g、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル38.1gを混合し、固形分20重量%のネガ型レジスト組成物を得た。 【0073】 得られたネガ型レジスト組成物を、スピンコーターを用いてシリコンウエハ上に厚さ3μmとなるように塗布した後、ホットプレート上で100℃に加熱し、2分間乾燥させて塗膜を得た。 得られた塗膜に対して、4?20μmのドットパターン及びラインアンドスペースパターンを有するマスクを介して400mJ/cm^(2)の紫外線照射を行った。紫外線照射後、2.38%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液を用いて30秒間現像し、水で洗浄してパターン形成を行った。 【0074】 得られたパターンを光学顕微鏡で観察し、解像度の評価を行った。 また、得られたパターンを、更に220℃、60分間加熱処理した後、シリコンウェハ上から削り取り、熱重量測定装置(TG/DTA320、セイコーインスツルメンツ社製)により耐熱性評価を行った。100℃まで昇温して吸着水分を除去した後、この重量を100%とし、10℃/分の昇温速度で500℃まで加熱して5%重量減少温度を測定した。 結果を表3に示す。 【0075】 【表1】 【0076】 【表2】 【0077】 【表3】 」 4 引用発明2 前記3の記載事項(3)に基づけば、引用文献4には、実施例1として、「ポジ型レジスト組成物の製造方法」に関する事項が記載されている。そうしてみると、引用文献4には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていたと認められる。 「 ビーカーに、ビスフェノールA、パラホルムアルデヒド、アニリンを投入し、攪拌してスラリー状にした後、加熱し反応させ、反応液を冷却して1分子中に2個のベンゾオキサジン環を有する化合物を得、 フラスコに、得られた1分子中に2個のベンゾオキサジン環を有する化合物、ピロガロール、乳酸エチルを投入し、反応させて、アルカリ可溶性樹脂の溶液(固形分30重量%)を得、 得られた固形分30重量%の樹脂溶液、光酸発生剤として2,3,4,4’-テトラメチルベンゾフェノンに平均して3個の5-ナフトキノンジアジドスルホニル基を結合させたもの、フッ素系界面活性剤、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルを混合することからなる、 スピンコーターを用いてシリコンウエハ上に塗布した後、加熱し、乾燥させて塗膜を得るために使用される、 固形分20重量%のポジ型レジスト組成物の製造方法。」 5 参考文献Eの記載事項 当審拒絶理由で参考文献として引用された刊行物である、特開2013-154612号公報(平成25年8月15日公開。以下「参考文献E」という。)には、以下のとおり記載されている。 「【0040】 また、ジエチレングリコールジエチルエーテルの蒸気圧は66.7Pa(20℃)であり、テトラエチレングリコールジメチルエーテルの蒸気圧は1.3Pa以下(20℃)であり、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルの蒸気圧は90.0Pa(25℃)である。」 6 参考文献Fの記載事項 当審拒絶理由で参考文献として引用され、本件出願前に頒布された刊行物である、特開2009-258553号公報(平成21年11月5日公開。以下「参考文献F」という。)には、以下のとおり記載されている。 「【0029】 ・・・(省略)・・・。なお、これら各溶剤の密度は以下の通りである。 ・ジエチレングリコールエチルメチルエーテル 密度;0.92g/ml」 7 引用文献Gの記載事項 本件出願前に頒布された刊行物である、特開平3-179724号公報(平成3年8月5日公開。以下「引用文献G」という。)には、以下のとおり記載されている。なお、刊行物に付されていた下線を省き、当合議体が引用発明の認定や判断等に活用した箇所に、新たに下線を付した。 「 第1実施例 第1実施例の下層材料を以下に説明するように調整する。なお、この第1実施例では、樹脂としてMP 1400-31フオトレジスト(シップレー社製)を用い、グラファイトとして単結晶グラファイトを用いる。 先ず、単結晶グラファイトをボールミルを用いて充分に微粉末化する。 次に、MP 1400-31フォトレジスト100ml中に微粉末化した上記単結晶グラファイト5gを加える。 次に、この混合物をポットミルに移し、その後、この混合物を24時間粉砕・混練して、第1実施例の下層形成材料を得る。 なお、MP 1400-31フォトレジストは、固形分を31重量%含んでいるので、このレジストの比重が約1であるとして、第1実施例の下層材料におけるグラファイトのおおよその含有量(重量%)は、5×100/(31+5)=14%である。 次に、下地としてのシリコンウェハ上に第1実施例の下層材料を2000回転/分の条件でスピンコートする。その後、ホットプレートを用い、このシリコンウエハを100℃の温度で1分間さらに220℃の温度で3分間ベーキングする。これにより、シリコンウエハ上に膜厚が2.5μmの下層を形成する。」(第3頁右下欄第19行?第4頁右上欄第5行) 8 引用文献Hの記載事項 本件出願前に頒布された刊行物である、特開2006-3861号公報(平成18年1月5日公開。以下「引用文献H」という。)には、以下のとおり記載されている。 「【発明が解決しようとする課題】 【0010】 以上の様な状況に鑑み、本発明の目的は、微細パターン形成が可能で、しかも安価なポジ型感光性レジスト材料およびそれに用いる酸感光性共重合体を提供することである。更に詳しくはスルーホールのある基板にも対応でき、近紫外光で露光して1%炭酸ナトリウム水溶液などの弱アルカリ現像液で現像することにより微細なパターン加工を解像性良くできるポジ型感光性レジスト材料を提供することである。 ・・・(省略)・・・ 【0074】 以上で得られたポジ型感光性レジスト材料を、プリント配線基板の回路パターン形成用のエッチングレジストとして使用する場合、まず必要に応じて塗布方法に適した粘度に調整した後、マザーボードやパッケージ基板、フレキシブルプリント基板用の銅張り積層基板、またはスルホールが形成された銅張り積層基板上にスクリーン印刷法、カーテンコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ディップコート法などの方法により塗布し、特に極薄基板(基板厚み0.1mm以下)でも対応が可能であり、また表面形状に左右されず、端面までコートが可能で、しかもスルホールの内面まで確実に塗布が可能であって、さらに、一度に数十枚の基板を同時に処理でき、処理効率が極めて良く、1枚あたりのタクト時間を大幅に短縮できるので、ディップコート法による塗布方法が特に好ましい。 【0075】 この時、本発明のポジ型感光性レジスト組成物の液比重は、乾燥速度を上げるために比重の小さい溶剤を使用するため0.800以上が好ましく、0.850以上がより好ましく、残留溶媒の為に基板同士の張り付き(残留タック)が無い様に0.990以下が好ましく、0.950以下がより好ましい。」 9 引用文献Iの記載事項 本件出願前に頒布された刊行物である、特開2002-246293号公報(平成14年8月30日公開。以下「引用文献I」という。)には、以下の記載がある。 「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、フォトレジストのコーティング方法(回転塗布方法)に関し、より詳しくは、高粘度フォトレジストの厚膜を、1回のスピンコート操作により基板表面に均一に、かつ気泡が巻き込まれることなく成膜することができるコーティング方法に関するものである。 ・・・(省略)・・・ 【0011】本発明のコーティング方法は、常温での粘度が1.4Pa・s以上、1.6Pa・s以下のフォトレジストをコーティングする場合に特に有効であり、膜厚10μm以上のフォトレジスト膜を、1回のコーティング操作で成膜することができる。粘度が1.4Pa・s未満では、これが難しくなる。また、粘度が1.6Pa・sを超えると、膜厚10μm以上のフォトレジスト膜を均一膜厚に制御するのが難しくなり、例えば1枚のウェハーにおいて中心部と外周部とで許容範囲を超える膜厚差が生じる。 ・・・(省略)・・・ 【0024】実施例1 本発明によるフォトレジスト成膜の実施例を説明する。この実施例1では、基板として口径4インチ、厚み0.3mmのシリコンウェハーを用いた。このウェハーを予めアセトンで超音波洗浄し、表面すなわちレジストコート面にゴミや染みがないことを確認した。なお、基板材料がシリコンなど、金属以外の材料の場合には、レジストの付着力を向上させるために、ヘキサメチルシラザン(例えば、東京応化工業製の「OAP」)を膜厚50nm?数百nmで成膜することが好ましい。なお、このOAP膜のベークは不要である。 【0025】上記予備洗浄の後、以下の手順でSIPR-9270(信越化学製のポジ型フォトレジスト:粘度1.4?1.6Pa・s)の成膜を行った。スピンコータのターンテーブルにウェハーをセットし、注入口の口径が30mmの容器の上記注入口をウェハー表面の直近に位置決めし、上記注入口からレジストをウェハー中央部に直接注いだ。使用したレジスト量は10ml(ミリリットル)?50mlであった。 【0026】なお、注入口をウェハー表面から離しすぎた場合には、注がれるレジスト液の太さにより、ウェハー表面での液の跳ね上がり量(レジスト液がウェハーに接触したときに飛び散る滴の量)が異なるようになる。この場合、レジスト液を細く絞って注ぎ込むと跳ね返り量が多くなって、塗布されたレジスト内に空気が進入しやすくなり、気泡の発生量が多くなるうえ、気泡が大きくなる。また、このような気泡巻き込みの問題を防止するには、容器の注入口をウェハー表面の直近に位置決めすることのほかに、レジスト容器をできるだけ揺らさずに保管・移動することが必要である。 【0027】上記レジスト滴下につづいて、ターンテーブルを回転させて成膜した。この場合、初めに500rpm×5秒間の条件で回転させ、ついで1000rpm×10秒間で、最後に1500rpm×60秒間の条件でそれぞれ回転させた。その後、成膜したウェハー表面のフォトレジスト膜を110℃×300秒の条件でベークした。 【0028】その結果、ベーク後のウェハー表面のフォトレジスト膜の厚みは均一で、しかもウェハー表面のフォトレジスト膜の全面について観察したところ、気泡は確認されなかった。」 10 引用文献Jの記載事項 本件出願前に頒布された刊行物である、特開平6-75365号公報(平成6年3月18日公開。以下「引用文献J」という。)には、以下のとおり記載されている。 「【0007】本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、微細な凹部を高い精度で形成することのできる凹版印刷版の製造方法を提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】このような目的を達成するために、本発明は基板表面に第1フォトレジスト層を形成し、該第1フォトレジスト層上にシリコンを含有した薄い第2フォトレジスト層を形成し、この基板に所定パターンのフォトマスクを介して紫外線を照射して前記第2フォトレジスト層を露光・現像して前記第2フォトレジスト層からなるマスクを形成し、次に、前記基板を真空チャンバー内に載置して前記マスク面に酸素のリアクティブイオンビームを照射して前記第1フォトレジスト層の前記マスク非存在部分をエッチングし、その後、前記マスク面にイオンビームを照射して前記基板の前記マスクおよび前記第1フォトレジスト層非形成部分をエッチングして前記基板に凹部を形成するような構成とした。 ・・・(省略)・・・ 【0016】第1フォトレジスト層2の形成に使用する通常のフォトレジストとしては、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール等に重クロム酸塩等の感光剤を添加したものを挙げることができる。また、第1フォトレジスト層2の厚さは基板との選択比を考慮して適宜決定することができ、通常2?10μm程度が好ましい。 ・・・(省略)・・・ 【0019】次に、実験例を示して本発明を更に詳細に説明する。 (実験例1)ガラス基板(厚さ2.3mm)の表面にポジ型の厚塗り用レジスト(東京応化製OFPR-800B、粘度=800cp)をスピンコート法により塗布して厚さ5μmの第1フォトレジスト層を形成した。次に、この第1フォトレジスト層上にシリコン含有フォトレジスト(シリコン含有量20重量%)をスピンコート法により塗布して厚さ0.6μmの第2フォトレジスト層を形成した。そして、線幅5μmの所定パターンを有するフォトマスクを介して第2フォトレジスト層に紫外線を照射して露光を行った。露光は超高圧水銀ランプを光源とし、照射量は436nmで80mJ/cm^(2) とした。そして、アルカリ系現像液により現像してパターニングされたマスクを形成した。」 11 引用文献Kの記載事項 本件出願前に頒布された刊行物である、特開2009-175399号公報(平成21年8月6日公開。以下「引用文献K」という。)には、以下のとおり記載されている。 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、電子放出素子の絶縁層を形成する際に用いる感光性組成物、感光性組成物の製造方法およびこれを用いた電子放出素子に関する。 ・・・(省略)・・・ 【0009】 本発明は、感光性有機成分、分散剤、無機粉末を含有してなる電子放出素子の絶縁層形成用感光性組成物であって、組成物100g中の粒径20μm以上の凝集体数が50個未満であることを特徴とする感光性組成物である。 ・・・(省略)・・・ 【0016】 感光性組成物の粘度調整は無機成分、増粘剤、有機溶媒、可塑剤および沈殿防止剤などの添加割合によって適宜調整されるが、その範囲は0.5?200Pa・sが好ましい。例えばガラス基板への塗布をスピンコート法で行う場合は、0.5?5Pa・sが好ましい。スクリーン印刷法で1回塗布して膜厚10?20μmを得るには、50?200Pa・sが好ましい。ブレードコーター法やダイコーター法などを用いる場合は、2?20Pa・sが好ましい。」 第5 対比 1 本件補正発明と引用発明1との対比 (1) 対比 ア 酸性の官能基を有するアルカリ可溶性樹脂 引用発明1の「ポジ型レジスト組成物」は、「ベンゾオキサジン環の開環構造を有するアルカリ可溶性樹脂」を含有する。 引用文献3の段落【0020】には、引用発明1の「アルカリ可溶性樹脂」が、「ベンゾオキサジン環の開環構造由来のフェノール性水酸基」を有することが記載されている。そして、「フェノール性水酸基」は、本願発明でいう「酸性の官能基」に該当する(本願明細書の段落【0029】)。 そうしてみると、引用発明1の「アルカリ可溶性樹脂」は、本件補正発明の「(A)酸性の官能基を有する」という要件を満たす「アルカリ可溶性樹脂」に相当する。 イ 光酸発生剤 引用発明1の「ポジ型レジスト組成物」は、「光反応により酸を発生する光反応性化合物」を含有する。 引用発明1の「光反応により酸を発生する光反応性化合物」は、その文言の意味する機能からみて、「光酸発生剤」である。 そうしてみると、引用発明1の「光反応により酸を発生する光反応性化合物」は、本件補正発明の「光酸発生剤」に相当する。 ウ 溶媒 引用発明1の「ポジ型レジスト組成物」は、「ジエチレングリコールメチルエチルエーテル」を含有する。 引用発明1の「ジエチレングリコールメチルエチルエーテル」は、引用発明1の「ポジ型レジスト組成物」の組成からみて、「溶媒」である。また、参考文献Eの段落【0040】の記載によると、引用発明1の「ジエチレングリコールメチルエチルエーテル」は、蒸気圧が90.0Pa(25℃)である。また、及び参考文献Fの段落【0029】の記載によると、引用発明1の「ジエチレングリコールメチルエチルエーテル」は、「密度;0.92g/ml」である。参考文献Fに記載された「ジエチレングリコールメチルエチルエーテル」は、技術常識からみて、25℃における密度が0.92g/cm^(3)、もしくは同程度であると認められる。 そうしてみると、引用発明1の「ジエチレングリコールメチルエチルエーテル」は、本件補正発明の「25℃における蒸気圧が10Pa?250Paであり、かつ25℃における密度が0.7g/cm^(3)?1.02cm^(3)である」という要件を満たす「溶媒」に相当する。 エ スピンコート用感光性樹脂組成物 引用発明1の「ポジ型レジスト組成物」は、「スピンコーターを用いてシリコンウエハ上に塗布した後、加熱し、乾燥させて塗膜を得る」ための組成物である。 引用発明1の「ポジ型レジスト組成物」は、技術常識からみて、「感光性樹脂組成物」である。また、引用発明1の「ポジ型レジスト組成物」は、「スピンコーターを用いてシリコンウエハ上に塗布」されるから、「スピンコート用」の組成物である。 そうしてみると、引用発明1「ポジ型レジスト組成物」は、本件補正発明の「スピンコート用感光性樹脂組成物」に相当する。 オ 酸性の官能基 前記アで述べたとおり、引用発明1の「アルカリ可溶性樹脂」は、「フェノール性水酸基を有する」から、本件補正発明の「前記酸性の官能基は、フェノール性水酸基及びカルボキシル基から選ばれる少なくとも1つの基であり」という要件を満たす。 (2) 一致点 以上のことから、本件補正発明と引用発明1は、以下の構成において一致する。 「 (A)酸性の官能基を有するアルカリ可溶性樹脂; (B)光酸発生剤;及び (C)25℃における蒸気圧が10Pa?250Paであり、かつ25℃における密度が0.7g/cm^(3)?1.02g/cm^(3)である溶媒; を含むスピンコート用感光性樹脂組成物の製造方法であって、 前記酸性の官能基は、フェノール性水酸基及びカルボキシル基から選ばれる少なくとも1つの基である、前記スピンコート用感光性樹脂組成物の製造方法。」 (3) 相違点 本件補正発明と引用発明1を対比すると、本件補正発明は、「該スピンコート用感光性樹脂組成物の25℃における密度を、0.75g/cm^(3)?1.1g/cm^(3)の範囲内に調整し」、「該スピンコート用感光性樹脂組成物の25℃における粘度を、0.5Pa・s?2Pa・sの範囲内に調整する」のに対し、引用発明1は、そのように特定されていない点。 (4) 判断 ア 引用文献Gには、「比重が約1」の「フォトレジスト」を使用して、「下層形成材料」を「調整する」こと(前記第4の「7」を参照。)や、引用文献Hには、「ポジ型感光性レジスト組成物」を「塗布方法に適した粘度に調整し」、「ポジ型感光性レジスト組成物の液比重」を「0.800以上」「0.990以下」とすることが記載されている(前記第4の「8」を参照。)。ここで、引用文献Gに記載された「比重」及び引用文献Hに記載された「液比重」は、技術常識からみて、本件補正発明でいう「密度」に該当する。 そうしてみると、感光性樹脂組成物の密度を「約1」または「0.800以上」「0.990以下」に調整することは、当該技術分野において周知の技術事項であったと認められる。 イ また、引用文献Iには、「常温での粘度」を「1.4Pa・s以上、1.6Pa・s以下」とすることにより、「膜厚10μm以上のフォトレジスト膜を」「1回のスピンコート操作により基板表面に均一に、かつ気泡が巻き込まれることなく成膜することができる」こと(前記第4の「9」を参照。)、引用文献Jには、「ガラス基板(厚さ2.3mm)の表面にポジ型の厚塗り用レジスト(東京応化製OFPR-800B、粘度=800cp)をスピンコート法により塗布して厚さ5μmの第1フォトレジスト層を形成」すること(前記第4の「10」を参照。)が記載されている。 そうしてみると、感光性樹脂組成物の粘度を1.4Pa・s以上、1.6Pa・s以下または800cp(=0.8Pa・s)程度とすることにより、感光性樹脂組成物からなる膜厚10μm以上または5μmの厚膜を、スピンコート法で作製することは、当該技術分野において周知の技術事項であったと認められる。 また、引用文献Kには、「ガラス基板への塗布をスピンコート法で行う場合は、0.5?5Pa・sが好ましい」と記載されているから(前記第4の「11」を参照。)、スピンコート用の感光性樹脂組成物の粘度を「1.4Pa・s以上、1.6Pa・s以下」、「800cp」または「0.5?5Pa・s」に調整することは、当該技術分野において周知の技術事項であったと認められる。 ウ 引用文献3の段落【0056】には、「レジスト組成物の固形分濃度が10?60重量%・・・(省略)・・・となるように配合すること」が記載されている。そして、本件明細書の段落【0158】に記載されているとおり、乳酸エチルの密度は1.05g/cm^(3)、参考文献Eに記載されているとおり、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルの密度は0.92g/cm^(3)であるから、引用発明1の「ポジ型レジスト組成物」は、溶媒の種類や組成物の固形分濃度に応じて、「0.7g/cm^(3)?1.1g/cm^(3)」という範囲に調整できるものである。 また、引用文献3の段落【0072】及び段落【0073】には、「本発明の感光性接着剤」で形成した「接着剤パターンの厚み」は、「2?100μmの範囲であることが好ましく、10?50μmの範囲であることがより好ましい」こと、引用発明1の「アルカリ可溶性樹脂」の「重量平均分子量」は、「ポジ型レジスト組成物」を使用したパターン形成に影響を及ぼすものであること(段落【0021】)が記載されている。そして、引用発明1の「ポジ型レジスト組成物」は、塗膜をスピンコート法で作製するものである。 したがって、前記イでの検討事項も考慮すれば、引用発明1の「ポジ型レジスト組成物」は、その粘度が、「1.4Pa・s以上、1.6Pa・s以下」または「800cp」となる蓋然性が高い。仮に、粘度が「1.4Pa・s以上、1.6Pa・s以下」または「800cp」ではないとしても、引用発明1の「ポジ型レジスト組成物」は、溶媒の種類や配合量並びにアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量といった感光性樹脂組成物の材料組成を調整することにより、「0.5Pa・s?2Pa・s」という範囲に調整できるものである。 エ そして、引用文献3の段落【0056】に、「本発明のレジスト組成物の固形分濃度が10?60重量%、より好ましくは15?50重量%となるように配合することが、塗工性や塗膜均一性等の点から好ましい。」と記載され、引用文献Iの段落【0001】に、「フォトレジストのコーティング方法(回転塗布方法)に関し、より詳しくは、高粘度フォトレジストの厚膜を、1回のスピンコート操作により基板表面に均一に、かつ気泡が巻き込まれることなく成膜することができるコーティング方法に関する」と記載されているとおり、スピンコート法により塗膜を形成する際に、操作性や塗膜均一性を勘案することは、当該技術分野において自明の課題であるといえる。 オ そうしてみると、引用発明1の「ポジ型レジスト組成物の製造方法」において、スピンコート法により塗膜を作製する際の操作性や塗膜均一性を勘案した当業者が、溶媒の種類や配合量並びにアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量を調整し」、「該スピンコート用感光性樹脂組成物の25℃における密度を、0.75g/cm^(3)?1.1g/cm^(3)の範囲内に調整し」、「該スピンコート用感光性樹脂組成物の25℃における粘度を、0.5Pa・s?2Pa・sの範囲内に調整する」という2つの要件を満たす調整を行うことは、通常の創意工夫の範囲内の事項である。 カ 本願発明の効果に関して、請求人は、令和元年7月19日提出の意見書において、以下のとおり主張する。 「上記「2.補正の根拠」におきまして本件明細書の根拠段落0011、0112及び0113としても抜粋しましたとおり、本件の出願当初の明細書から、感光性樹脂組成物の製造方法において感光性樹脂組成物の25℃における密度と粘度とを特定の数値範囲に調整することによりまして、スピンコート膜作製時の吐出質量を飛躍的に削減し、かつ通常の半導体保護膜で必要とされる膜厚(最終硬化膜で3μm?20μm)をスピンコート法で適当な回転数(500rpm?5000rpm)で作製することを可能にせしめるという技術的思想が把握されることができます。 ・・・(省略)・・・ 引用文献3及び4には、感光性樹脂組成物が開示されておりますが、上記のような技術的思想に基づいて感光性樹脂組成物(例えば、溶剤を含むワニス)を製造する方法までが開示又は示唆されているわけではありません。 さらに、本件発明は、スピンコート用感光性樹脂組成物の25℃での粘度と密度を特定することによりまして、従来の水準より少ない吐出質量で、スピンコート法による塗膜作製時の濡れ広がり性に優れ、その塗膜の面内均一性に優れるという効果を奏します(明細書の段落0011及び0026など)。この効果は、本件実施例により裏付けられますが、引用文献3及び4では検討も評価もされておりませんので、際立って優れた効果又は異質な効果であると思料します。」 しかしながら、引用発明3及び4は、「ポジ型レジスト組成物の製造方法」が開示されており、「該スピンコート用感光性樹脂組成物の25℃における密度を、0.75g/cm^(3)?1.1g/cm^(3)の範囲内に調整し」、「該スピンコート用感光性樹脂組成物の25℃における粘度を、0.5Pa・s?2Pa・sの範囲内に調整する」という要件を満たすように設定することは、通常の創意工夫の範囲内の事項である。 また、本願明細書に記載の実施例及び比較例では、プリベーク膜の厚さが9.0μmなる一定の膜厚となるように感光性樹脂組成物0.9gをスピン塗布した上で、塗布面積の評価を行っている(厚さ及び重量を一定として面積を比較している)のであるから(段落【0212】)、密度が1.1g/cm^(3)を超えるような樹脂組成物に比して塗布面積が大きくなるという事象は、引用文献Gや引用文献Hに開示された(密度が1.1g/cm^(3)より小さい)周知の感光性樹脂組成物が塗布しうる面積を確認したにすぎない。したがって、本願発明の奏する作用効果は、引用発明1に記載された技術及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 2 本件補正発明と引用発明2との対比 前記1における検討事項と同様に、引用発明2の「ポジ型レジスト組成物の製造方法」において、スピンコート法により塗膜を作製する際の操作性や塗膜均一性を勘案した当業者が、溶媒の種類や配合量並びにアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量を調整し、「該スピンコート用感光性樹脂組成物の25℃における密度を、0.75g/cm^(3)?1.1g/cm^(3)の範囲内に調整し、」「該スピンコート用感光性樹脂組成物の25℃における粘度を、0.5Pa・s?2Pa・sの範囲内に調整する」という要件を満たすように設定することは、通常の創意工夫の範囲内の事項である。 そして、上記相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明1に記載された技術及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-09-10 |
結審通知日 | 2019-09-17 |
審決日 | 2019-09-30 |
出願番号 | 特願2012-218641(P2012-218641) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G03F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川口 真隆、倉持 俊輔 |
特許庁審判長 |
樋口 信宏 |
特許庁審判官 |
宮澤 浩 高松 大 |
発明の名称 | 感光性樹脂組成物の製造方法 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 齋藤 都子 |
代理人 | 三間 俊介 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 中村 和広 |