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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1357139
審判番号 不服2018-12801  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-26 
確定日 2019-11-14 
事件の表示 特願2016-230222「農作管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月 8日出願公開、特開2017-102924〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年9月26日に出願した特願2012-213253号の一部を平成28年11月28日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 1月31日付け:拒絶理由通知書
平成30年 4月 2日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 6月19日付け:拒絶査定
平成30年 9月26日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 平成30年9月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年9月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「農作物収穫機によって収穫作業が行われる農地に関する農地情報と、前記収穫作業で得られた農作物に関する農作物情報とを管理する農作管理システムであって、
前記農地情報として収穫作業位置を示す収穫位置データと、前記農作物情報として前記農地で収穫された農作物の収穫量を示す収穫量データ及びその品質を示す品質データとを、前記農作物収穫機から受け取るデータ入力部と、
前記農地情報と前記農作物情報とを互いに関連付け可能に記録するデータベースサーバと、
前記農地情報と前記農作物情報とに基づいて前記農地の農作評価を行う農作評価部と、
前記農作評価部によって生成された農作評価データを送り出すデータ出力部と、を備え、
前記収穫位置データは、前記収穫作業位置を示す座標値であり、
前記農作評価部は、前記農地における微小区画の範囲内に含まれる前記収穫作業位置を示す前記収穫位置データに関連付けられた前記収穫量データ及び前記品質データに基づいて、前記微小区画で収穫された農作物の収穫量及びその品質を評価し、
1つの前記微小区画で収穫された農作物の収穫量及びその品質は、前記データ入力部が受け取った前記収穫位置データのうち、その前記微小区画の範囲内に含まれる前記収穫作業位置を示す全ての前記収穫位置データに関連付けられた前記収穫量データ及び前記品質データに基づいて評価される農作管理システム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年4月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「農作物収穫機によって収穫作業が行われる農地に関する農地情報と、前記収穫作業で得られた農作物に関する農作物情報とを管理する農作管理システムであって、
前記農地情報として収穫作業位置を示す収穫位置データと、前記農作物情報として前記農地で収穫された農作物の収穫量を示す収穫量データ及びその品質を示す品質データとを、前記農作物収穫機から受け取るデータ入力部と、
前記農地情報と前記農作物情報とを互いに関連付け可能に記録するデータベースサーバと、
前記農地情報と前記農作物情報とに基づいて前記農地の農作評価を行う農作評価部と、
前記農作評価部によって生成された農作評価データを送り出すデータ出力部と、を備え、
前記農作評価部は、前記農地における微小区画の範囲内に含まれる前記収穫作業位置を示す前記収穫位置データに関連付けられた前記収穫量データ及び前記品質データに基づいて、前記微小区画で収穫された農作物の収穫量及びその品質を評価する農作管理システム。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、「収穫作業位置を示す収穫位置データ」を、「収穫作業位置を示す座標値」である「収穫位置データ」に限定するとともに、「農作評価部」における農作物の収穫量及び品質の「評価」を、「1つの前記微小区画で収穫された農作物の収穫量及びその品質は、前記データ入力部が受け取った前記収穫位置データのうち、その前記微小区画の範囲内に含まれる前記収穫作業位置を示す全ての前記収穫位置データに関連付けられた前記収穫量データ及び前記品質データに基づいて評価」するように限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
(2-1)引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開平11-53674号公報(平成11年2月26日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は当審において付加した。

ア 「【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る作物の情報管理システムについて説明する。図1に示すように、この情報管理システムは、作物収穫機としてのコンバインKOに、作物の収穫に伴って作物の品質を計測する作物品質計測手段SKと、その作物品質計測手段SKにて計測された前記品質の計測情報を機外に出力可能な情報出力手段JSとが備えられるとともに、情報出力手段JSから出力される複数の収穫場所の各々に対応する前記品質の計測情報を収集する計測情報収集手段100と、この計測情報収集手段100にて収集された収集情報に基づいて、複数の収穫場所に対応する作物の地域毎の品質マップを求めて出力する品質マップ作成手段101と、作物を収穫する生産者を識別するための生産者識別情報と、この計測情報収集手段100にて収集された収集情報とに基づいて、各生産者毎の作物の生産管理用情報を求めて出力する生産管理情報作成手段102とを備えて構成されている。
【0020】図3に作物収穫機の一例であるコンバインKOを示している。このコンバインKOは、機体の前部に、機体の走行に伴って植立穀稈を刈り取るとともに、機体後方に向けて搬送する刈取前処理部1を備え、左右一対のクローラ走行装置2を備えた機台上に、操縦部3、エンジン4、刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置6、脱穀された穀粒(作物の一例)を貯留するグレンタンク7等を備えて構成されている。
【0021】このコンバインKOには、図2に示すように、作物(穀粒)の品質を計測する作物品質計測手段SKと、その作物品質計測手段SKにて計測された作物の品質の計測情報を出力可能な情報出力手段JSとが備えられている。詳述すると、前記グレンタンク7の内部に、作物の品質として、収穫された穀粒の含有水分を計測する水分計8、穀粒の食味を計測する食味計9、穀粒の外観品位を計測する外観品位計10の夫々が備えられている。これらの水分計8、食味計9、外観品位計10の夫々が作物品質計測手段SKに相当する。水分計8及び外観品位計10は、従来より穀物乾燥処理施設等において慣用されている周知構造のものである。前記食味計9は、近赤外光の吸収スペクトルを利用した成分分析方法を用いた周知構造のものであって、近赤外光を穀粒に当てて、その透過光の分光分析に基づいて吸収スペクトルを解析して、その解析結果により、穀粒に含まれる例えばタンパク質、アミロース等の成分量を判別して、それらに基づいて食味を計測するようになっている。そして、これらの計測手段は、刈取収穫作業に伴って連続的にグレンタンク7内に供給される穀粒を適宜サンプリングして、上記したような計測を行うようになっている。尚、グレンタンク7の下部には、タンク内に貯留される穀粒の重量を計測する計量手段としての計量機11も設けられている。
【0022】又、このコンバインには、複数の人工衛生からの電波を受信することにより自己の現在位置を検出することができる、周知技術である所謂、GPS(Global-Positioning-System)を利用した位置検出装置12が備えられている。この位置検出装置12は、コンバインの現在位置を、予め計測されている各圃場の位置情報と対応可能な状態で座標データとして検出できるようになっている。」

イ 「【0024】そして、前記水分計8、食味計9、外観品位計10及び位置検出装置12の夫々の検出情報が入力されるとともに、それらの入力情報に基づいて、夫々の計測情報を、位置検出情報と対応つけた状態で通信装置14を介して無線通信にて機外に出力させるべく制御するコンバイン側の制御装置Hとが備えられている。従って、制御装置H、通信装置14により情報出力手段JSが構成されることになる。
【0025】上記コンバインKOによって、ある圃場で収穫作業を実行するに先立って、作業者は、前記操作パネル13を利用して、予め設定されている自己の生産者識別コード、収穫作業の対象となる圃場識別コード、その圃場で生産されている作物の品種コード等を予め入力して、制御装置Hにて記憶させておく。そして、コンバインKOによる収穫作業を実行するに伴って、穀稈が刈り取られて脱穀処理が行われ、脱穀後の穀粒が連続的にグレンタンク7内に供給されることになるが、上記したように、これらの穀粒を適宜サンプリングして含有水分、食味、外観品位が夫々計測される。それと並行して、その計測された位置が位置検出装置12により座標データとして検出される。そして、制御装置Hは、計測位置情報と対応つけられた各計測データ、並びに、圃場での収穫量データ、予め入力されている各種の識別データの夫々を通信装置14を介して無線通信にて機外に出力するのである。」

ウ 「【0027】このようにして、コンバインKOから出力される無線通信情報は、対象となる複数の圃場に対応する地域の所定場所に設置された管理施設に設けられた通信装置15にて受信されるとともに、受信された情報が中央管理装置TUにて管理されることになる。尚、1つのコンバインKOからの受信要求があったときに、別のコンバインKOからの情報を受信している等により受信要求を発信したコンバインKOに対して応答信号が通信されないことがあるが、このような場合には、当該コンバインKOにおける制御装置は、計測データを半導体メモリや磁気ディスク等の記憶部に記憶させておいて、受信要求に対する応答があれば、そのようなデータを送信することになる。
【0028】前記中央管理装置TUは、例えばパーソナルコンピュータを利用して構成され、図2に示すように、コンバインKOから無線通信される情報を通信装置15により受信して、その通信装置15から出力されるデータを逐次取り込み、記憶手段Mに記憶するとともに、複数の収穫場所の各々に対応する状態で前記品質の計測情報を収集管理するデータ管理手段DKと、このデータ管理手段DKにて収集管理される情報に基づいて、複数の収穫場所に対応する作物の地域毎の品質マップを求めて出力する品質マップ作成手段101と、上記したようにコンバインKOから通信される情報に含まれる生産者識別情報と、収集された収集情報とに基づいて、各生産者毎の作物の生産管理用情報を求めて出力する生産管理情報作成手段102と、前記品質マップ及び生産管理用情報を印刷情報や磁気記憶情報等にて取り出し可能な状態で出力する出力手段103とが備えられることになる。前記データ管理手段DK、品質マップ作成手段101、及び、生産管理情報作成手段102は、夫々、制御プログラムにて構成されることになる。又、データ管理手段DKと記憶手段Mとにより計測情報収集手段100が構成されることになる。」

エ 「【0030】前記データ管理手段DKは、通信装置15を介してコンバインKOから情報が通信されてくると、その情報を逐次、磁気ディスク等の記憶手段Mに記憶する。記憶手段Mに記憶される計測データとしては、図4に示すように、生産者識別コード、圃場識別コード、品種コード等を含み、前記作物品質計測手段SKにて位置情報に対応つけられた水分計測値、食味計測値、及び、外観計測値等が逐次、書き込み記憶されるとともに、圃場毎の収穫量も合わせて記憶される。
【0031】そして、データ管理手段DKに対して予め登録設定されている複数のコンバインKOについて全ての情報が入力されると、記憶手段Mに記憶されている計測データに基づいて、前記品質マップ作成手段101が、複数の収穫場所に対応する作物の地域毎の品質マップを求めて出力することになる。図5に品質マップの一例としての食味マップを示している。この食味マップでは、予め指定している地域別に、圃場識別コード毎にその圃場での食味の平均値及び品種コードが記載されている。このような品質マップは食味に限らず、水分値や外観品位等も合わせて記載してもよく、それらを各別に記載するようにしてもよい。
【0032】前記生産管理情報作成手段102は、記憶手段Mに記憶されている計測データ及び生産者識別コード情報に基づいて、各生産者毎の作物の生産管理用情報を求めて出力することになる。生産管理用情報としては、例えば、生産者別の前記計測データの一欄、圃場毎におけるその圃場内での穀粒品質のバラツキデータ、昨年度あるいはそれ以前のデータと今年のデータとの比較表等が挙げられる。図6には、圃場内での品質バラツキデータ(品質マップ)の一例を示している。このデータでは、食味計測値に基づいて、食味ランクを5段階に分けて評価するようにして、その圃場内における各位置での食味ランク評価値を表すようにしている。尚、詳述はしないが、このような食味ランクに加えて、水分値や外観計測値等に関するバラツキデータも作成されることになる。又、このように食味や水分値等、品質項目別に品質マップを作成するのに代えて、1つの品質マップ上に、上位各品質項目の計測情報を同時に表示させるような品質マップを作成してもよい。」

【図4】


【図5】


【図6】


上記記載から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「作物収穫機としてのコンバインKOに、作物の収穫に伴って作物の品質を計測する作物品質計測手段SKと、その作物品質計測手段SKにて計測された前記品質の計測情報を機外に出力可能な情報出力手段JSとが備えられるとともに、前記情報出力手段JSから出力される複数の収穫場所の各々に対応する前記品質の計測情報を収集する計測情報収集手段100と、この計測情報収集手段100にて収集された収集情報に基づいて、複数の収穫場所に対応する作物の地域毎の品質マップを求めて出力する品質マップ作成手段101を備えて構成された、情報管理システムにおいて(【0019】)、
前記コンバインKOは、機体の前部に、機体の走行に伴って植立穀稈を刈り取るとともに、機体後方に向けて搬送する刈取前処理部1や刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置6、脱穀された穀粒(作物の一例)を貯留するグレンタンク7等を備えて構成されており(【0020】)、
前記グレンタンク7の内部に、前記作物品質計測手段SKとして、収穫された穀粒の含有水分を計測する水分計8、穀粒の食味を計測する食味計9、穀粒の外観品位を計測する外観品位計10が備えられ、これらの計測手段は、刈取収穫作業に伴って連続的にグレンタンク7内に供給される穀粒を適宜サンプリングして、計測を行うようになっており、また、グレンタンク7の下部には、タンク内に貯留される穀粒の重量を計測する計量手段としての計量機11も設けられており(【0021】)、
前記コンバインKOには、GPS(Global-Positioning-System)を利用した位置検出装置12が備えられ、前記コンバインKOの現在位置を、予め計測されている各圃場の位置情報と対応可能な状態で座標データとして検出でき(【0022】)、
前記水分計8、食味計9、外観品位計10及び位置検出装置12の夫々の検出情報が入力されるとともに、それらの入力情報に基づいて、夫々の計測情報を、位置検出情報と対応つけた状態で通信装置14を介して無線通信にて機外に出力させるべく制御するコンバイン側の制御装置Hが備えられ(【0024】)、
前記コンバインKOによる収穫作業を実行するに伴って、穀稈が刈り取られて脱穀処理が行われ、脱穀後の穀粒が連続的にグレンタンク7内に供給され、これらの穀粒を適宜サンプリングして含有水分、食味、外観品位が夫々計測されるとともに、それと並行して、その計測された位置が位置検出装置12により座標データとして検出され、前記制御装置Hが、計測位置情報と対応つけられた各計測データ、並びに、圃場での収穫量データを通信装置14を介して無線通信にて機外に出力し(【0025】)、
前記コンバインKOから出力される無線通信情報は、中央管理装置TUにて管理され(【0027】)、
前記中央管理装置TUには、前記コンバインKOから無線通信される情報を通信装置15により受信して、その通信装置15から出力されるデータを逐次取り込み、記憶手段Mに記憶するとともに、複数の収穫場所の各々に対応する状態で前記品質の計測情報を収集管理するデータ管理手段DKと、このデータ管理手段DKにて収集管理される情報に基づいて、複数の収穫場所に対応する作物の地域毎の品質マップを求めて出力する品質マップ作成手段101と、前記品質マップを印刷情報や磁気記憶情報等にて取り出し可能な状態で出力する出力手段103とが備えられ(【0028】)、
前記記憶手段Mに記憶される計測データとしては、図4に示すように、生産者識別コード、圃場識別コード、品種コード等を含み、前記作物品質計測手段SKにて位置情報に対応つけられた水分計測値、食味計測値、及び、外観計測値等が逐次、書き込み記憶されるとともに、圃場毎の収穫量も合わせて記憶され(【0030】【図4】)、
前記記憶手段Mに記憶されている計測データに基づいて、前記品質マップ作成手段101が、複数の収穫場所に対応する作物の地域毎の品質マップを求めて出力し、例えば、品質マップの一例としての食味マップ(図5)には、予め指定している地域別に、圃場識別コード毎にその圃場での食味の平均値及び品種コードが記載されており(【0031】【図5】)、
さらに、圃場内での品質バラツキデータ(品質マップ)の一例(図6)として、食味計測値に基づいて、食味ランクを5段階に分けて評価するようにして、その圃場内における各位置での食味ランク評価値を表す(【0032】【図6】)、
情報管理システム。」

(2-2)引用文献2
同じく原査定に引用され、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2007-295932号公報(平成19年11月15日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当審において付加した。

ア 「【0007】
そこで、本発明では、車体フレーム上にグレンタンクを配設すると共に、同グレンタンク内に貯留される穀粒の重量を重量センサにより検出するようにしたコンバインにおいて、車速を検出する車速センサと、同車速センサと上記重量センサとをその入力側に接続したタイマー内蔵の制御手段と、同制御手段の出力側に接続した表示パネル部とを具備して、各センサの検出結果に基づいて制御手段により圃場内の区画毎の穀粒の重量を算出し、その重量算出結果を表示パネル部にマップ表示するようにしたことを特徴とするコンバインを提供するものである。」

イ 「【0048】
さらには、図9に示すように、圃場Bをマトリックス状に区画し、区画a1、a2・・・・毎の穀粒の重量を算出すると共に、算出した区画毎の穀粒の重量を、水分センサ25により検出した区画a1,a2・・・・毎の穀粒の水分値に基づいて、規定水分値における穀粒の重量に修正し、その修正重量を収穫量として表示パネル部46にマップ表示するようにしている(図10参照)。」

上記記載から、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。

「車体フレーム上にグレンタンクを配設すると共に、同グレンタンク内に貯留される穀粒の重量を重量センサにより検出するようにしたコンバインにおいて、圃場Bをマトリックス状に区画し、区画a1、a2・・・毎の穀粒の重量を算出するセンサの検出結果に基づいて、圃場内の区画毎の穀粒の重量を算出し、その重量算出結果を表示パネル部にマップ表示する(【0007】【0048】)、という技術。」

(2-3)引用文献3
同じく原査定に引用され、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2002-149744号公報(平成14年5月24日出願公開。以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当審において付加した。

ア 「【0007】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するため本発明にかかる農作業管理装置は、農作物の生産単位区画の位置情報と生産単位区画で栽培する農作物の種類と、生産単位区画で生産する生産者に関する情報とを記憶する手段と、前記生産単位区画内に複数設定された診断・施肥・防除・収穫等の作業を実施する作業単位区画毎に測定された土壌状態と生育状態とを生産者側から入力して記憶する手段と、前記作業単位区画毎の土壌状態及び/又は生育状態から収穫までの施肥支援計画と病害虫に対する防除支援計画と収穫時期予測とを求めて生産者側に提供する手段と、前記作業単位区画毎の施肥支援計画と防除支援計画に基づいて実際に行なわれた農作業の内容を生産者側から入力して記憶する手段と、前記生産単位区画毎に実際の収穫が行なわれた時期と作業単位区画毎の収穫量を生産者側から入力して記憶する手段と、出荷する農産物に添付する記録媒体へ記憶する出荷情報を出力する手段と、を具備することを特徴とする。
【0008】ここで図8に示すように、生産単位区画50とは例えば道路やあぜ道などで区画された同一農作物を生産する大きな区画を言い、作業単位区画55とは生産単位区画50をさらに複数に区画して、それぞれの区画で設定された診断・施肥・防除・収穫等の作業を実施する区画を言う。」

イ 「【0018】農作業機械30は、例えば播種機、田植機、肥料施肥機、農薬散布機、収穫機、土壌診断機、作物生育診断機等であり、これら農作業機械30にはそれぞれ例えばマイクロコンピュータからなる端末装置31とGPS受信・位置検出手段(位置検出手段)37が取り付けられている。GPS受信・位置検出手段37はGPS(全地球測位システム)衛星からの電波を受信してその現在位置を正確に検出する装置である。端末装置31にはキーボードやタッチパネル等の入力装置33とディスプレイ等の表示装置35が取り付けられている。また端末装置31は前記メモリカード27が装着可能(着脱可能)になっている。端末装置31とGPS受信・位置検出手段37を含む全体を制御手段とする。」

ウ 「【0043】次にこのメモリカード27を取り出してその作業に用いる収穫機(農作業機械)30の端末装置31にセットする(ステップ10-2)。メモリカード27がセットされると、収穫機30の起動が可能になるので(ステップ10-3)、起動した収穫機30を前記GPSシステムによって農作業しようとする生産単位区画に導き(ステップ10-4)、所定の作業単位区画において収穫作業を実行し、その作業単位区画の収穫量を計測する(ステップ10-5)。計測装置は収穫機30自体に取り付けておくことが好ましい。そして収穫した作業単位区画の収穫量と位置情報とをメモリカード27に記録する(ステップ10-6)。
【0044】そして以上の収穫作業を所定の生産単位区画内の全ての作業単位区画で実行した後(ステップ10-7)、メモリカード27を端末装置31から取り外して生産者側装置20にセットし、上記実行した作業内容を農作業管理装置10に出力し、その農作業管理データベース15に記憶する(ステップ10-8)。別の生産単位区画で、同様の収穫作業を実行する場合は、ステップ10-1から10-8を繰り返す。」

エ 「【0048】〔ステップ13〕その後、出荷された出荷物が問屋やスーパーや消費者等のユーザに届いた際、図1に示すような端末装置41の入力装置(例えばバーコードリーダー等)43を用いて前記出荷物に添付された記録媒体の情報を読み込む。記録媒体に記録されている情報だけで充分な場合はこれを表示装置45に表示すればよい。一方記録媒体に記録されている情報だけでは必要とする情報が足りない場合は、記録媒体に記録されているアドレス等によって端末装置41から例えばインターネットを介して農作業管理装置10にアクセスし、前記出荷物の生産単位区画毎に記憶されている生産者に関する情報や、土壌状態や、生育状態や、収穫時期や、施肥の回数・量・種類や、防除の回数や農薬の量・種類や、収穫量等の詳細な各種情報の内の必要な情報を農作業管理データベース15から端末装置41に取り出す。」

上記記載から、引用文献3には、次の技術が記載されていると認められる。

「生産単位区画毎に、作業単位区画毎の収穫量を、生産者側から入力して記憶する手段を具備する農作業管理装置であって(【0007】)、
生産単位区画50とは、例えば、道路やあぜ道などで区画された同一農作物を生産する大きな区画を言い、作業単位区画55とは、前記生産単位区画50をさらに複数に区画して、それぞれの区画で収穫等の作業を実施する区画であり(【0008】)、
農作業機械30は、例えば収穫機等であって、端末装置31とGPS受信・位置検出手段(位置検出手段)37が取り付けられており、前記端末装置31は、メモリカード27が装着可能であって(【0018】)、
メモリカード27を収穫機30の端末装置31にセットし、所定の作業単位区画において収穫作業を実行し、その作業単位区画の収穫量を計測し、作業単位区画の収穫量と位置情報とをメモリカード27に記録し(【0043】)、
収穫作業を所定の生産単位区画内の全ての作業単位区画で実行した後、メモリカード27を端末装置31から取り外して生産者側装置20にセットし、農作業管理データベース15に記憶し(【0044】)、
端末装置41からインターネットを介して農作業管理装置10にアクセスし、生産単位区画毎に記憶されている収穫量等の詳細な各種情報を、農作業管理データベース15から端末装置41に取り出す(【0048】)、という技術。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。(下線は、当審で付した。)

(ア)本件補正発明の「農作管理システム」に関して
引用発明の『コンバインKO』は、本件補正発明の「農作物収穫機」に相当する。そして、引用発明では、農作物収穫機が、作物の収穫に伴って当該作物の品質を計測するとともに、『収穫場所』に対応する『計測情報』を『中央管理装置TU』に送信し、当該『中央管理装置TU』は前記『計測情報』等を『管理』し、また、当該『計測情報』に基づいて『収穫場所』に対応する地域毎の作物の品質マップを出力する品質マップ作成手段101を備えていることから、引用発明の『収穫場所』及び『計測情報』は、それぞれ、本件補正発明の「農作物収穫機によって収穫作業が行われる農地に関する農地情報」及び「前記収穫作業で得られた農作物に関する農作物情報」に相当し、引用発明の『中央管理装置TU』は、本件補正発明の「農地情報」と「農作物情報」とを「管理」する「農作管理システム」に相当する。

(イ)本件補正発明の「データ入力部」に関して
引用発明の農作管理システムが農作物収穫機から受け取る、農作物収穫機の『位置検出装置12』により検出された『座標データ』は、収穫された作物の品質が『計測』された位置であるものの、圃場に関する情報として用いられている点で、本件補正発明の「前記農地情報として」の「位置データ」に対応する。また、引用発明における『圃場での収穫量データ』は、本件補正発明の「前記農作物情報として前記農地で収穫された農作物の収穫量を示す収穫量データ」に相当し、引用発明の『作物品質計測手段SK』によって計測された、各々の農地で収穫された農作物の『計測情報』は、本件補正発明の「その品質を示す品質データ」に相当する。
そして、引用発明では、『中央管理装置TU』における『データ管理手段DK』が、農作物収穫機から無線通信されるデータを『取り込む』ことから、引用発明の前記『データ管理手段DK』は、本件補正発明の「位置データ」が「収穫位置データ」である点を除いて、本件補正発明の、「前記農地情報として」の「位置データ」と、「前記農作物情報として前記農地で収穫された農作物の収穫量を示す収穫量データ」と、「その品質を示す品質データ」とを、「農作物収穫機から受け取るデータ入力部」に相当する。

(ウ)本件補正発明の「データベースサーバ」に関して
引用発明では、農作物収穫機から農作管理システムに情報が送信され、農作管理システムの『記憶手段M』に、位置情報に対応づけられた水分計測値、食味計測値、外観計測値等の『計測データ』が書き込み記憶されるとともに、『圃場毎の収穫量』も合わせて記憶されることから、引用発明の前記『記憶手段M』は、本件補正発明の「前記農地情報と前記農作物情報とを互いに関連付け可能に記録するデータベースサーバ」に相当する。

(エ)本件補正発明の「農作評価部」に関して
引用発明では、『品質マップ作成手段101』が、『収穫場所に対応する作物の地域毎の品質マップ』を求めて出力しており、ここで、当該『品質マップ』とは、作物の品質を収穫場所毎に「評価」したものであることは明らかであるから、引用発明の『収穫場所に対応する作物の地域毎の品質マップ』は、本件補正発明の「農地」を「農作評価」した結果に相当する。
したがって、引用発明において前記『品質マップ』を求めて出力する『品質マップ作成手段101』は、本件補正発明の「前記農地情報と前記農作物情報とに基づいて前記農地の農作評価を行う農作評価部」に相当する。

(オ)本件補正発明の「データ出力部」に関して
引用発明において、『品質マップ』とは『品質マップ作成手段101』によって出力されるものであり、また、上記(エ)のとおり、上記『品質マップ作成手段101』は本件補正発明の「農作評価部」に相当することから、引用発明の『品質マップ』は、本件補正発明の「前記農作評価部によって生成された農作評価データ」に相当する。
したがって、引用発明における、『品質マップ』を『印刷情報や磁気記憶情報等にて取り出し可能な状態で出力する出力手段103』は、「農作評価データ」を出力するという点において、本件補正発明の「前記農作評価部によって生成された農作評価データ」を送り出す「データ出力部」に対応する。

(カ)本件補正発明の「農作評価部」における処理動作に関して
引用発明の『圃場』は、本件補正発明の「微小区画」に相当する。
この点、本件補正発明の「微小区画」とは、文言上、その意義が明らかではないものの、本願明細書の段落【0034】に、「町や村などの地域全体の農地を処理対象農地とし、畦等によって囲まれた農地を微小区画として取り扱って、農作評価を行うことが可能である。」(下線は当審が付した。)と記載されており、「畦等によって囲まれた農地」を含むもの(なお、この場合は地域全体が「農地」となる)である。
引用発明では、農作評価部によって生成される農作評価データ(『圃場内での品質バラツキデータ(品質マップ)』)の例として、『圃場内における各位置での食味ランク評価値』が示されており(【図6】)、また、別の例として、『圃場識別コード毎にその圃場での食味の平均値』(【図5】)も示されており、この『平均値』は、その圃場に含まれる各位置の評価値の全てに基づいて評価されたものである。
したがって、引用発明では、圃場の範囲内に含まれる各位置に関連付けられた評価値の全てに基づいて、その圃場を評価しているといえる。
よって、引用発明の微小区画内の各位置における『評価値』(例えば、『食味ランク評価値』)は、本件補正発明の「農地における微小区画の範囲内に含まれる」「作業位置を示す」「位置データに」「関連付けられた」「品質データ」に相当し、引用発明において、品質データ(『評価値』)に基づいて評価される『圃場内での品質バラツキデータ(品質マップ)』は、本件補正発明の「1つの前記微小区画で収穫された農作物の」「品質」に相当する。
一方、引用発明では、微小区画内の『収穫量』は、微小区画毎に計測され記憶されているものの(【図4】)、微小区画内の「位置データに」「関連付けられた」ものではない点で本件補正発明と相違する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「農作物収穫機によって収穫作業が行われる農地に関する農地情報と、前記収穫作業で得られた農作物に関する農作物情報とを管理する農作管理システムであって、
前記農地情報として作業位置を示す位置データと、前記農作物情報として前記農地で収穫された農作物の収穫量を示す収穫量データ及びその品質を示す品質データとを、前記農作物収穫機から受け取るデータ入力部と、
前記農地情報と前記農作物情報とを互いに関連付け可能に記録するデータベースサーバと、
前記農地情報と前記農作物情報とに基づいて前記農地の農作評価を行う農作評価部と、
前記農作評価部によって生成された農作評価データを出力するデータ出力部と、を備え、
前記農作評価部は、前記収穫量データ及び前記品質データに基づいて、前記微小区画で収穫された農作物の収穫量及びその品質を評価し、
1つの前記微小区画で収穫された農作物の収穫量及びその品質は、前記データ入力部が受け取った前記位置データのうち、その前記微小区画の範囲内に含まれる前記作業位置を示す全ての前記位置データに関連付けられた前記収穫量データ及び前記品質データに基づいて評価される農作管理システム。」

<相違点>
<相違点1>
農地情報として、本件補正発明では、作物が「収穫」された位置を示す位置データを用いるのに対し、引用発明では、収穫した作物の品質が『計測』された位置を示す位置データを用いる点。

<相違点2>
本件補正発明は、農作評価データを「送り出す」データ出力部を備えるのに対し、引用発明は、農作評価データを『印刷情報や磁気記憶情報等にて取り出し可能な状態で出力する』データ出力部を備えるものの、当該データ出力部における上記『取り出し可能な状態で出力する』という動作をもって、本件補正発明のように農作評価データを「送り出す」と言えるか否か不明な点。

<相違点3>
本件補正発明では、「収穫量データ」が位置データに「関連付けられ」ているのに対し、引用発明では、品質データは位置データに関連付けられているものの、収穫量データは、圃場(本件補正発明の「微小区画」)毎に関連付けられており、位置データには関連付けられていない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。

ア <相違点1>について
引用文献2に記載された技術においては、圃場内における区画毎の穀粒の重量を算出してマップ表示しており、また、引用文献3に記載された技術においても、道路やあぜ道などで区画された「生産単位区画」を複数に区画した「作業単位区画」毎の収穫量を計測し、当該収穫量と位置情報とを記録しているように、農作物収穫機によって収穫作業が行われる農地に関する農地情報として、「収穫作業位置を示す収穫位置データ」を用いることは、引用文献2及び3に記載されているように周知技術であると認められる。
加えて、引用発明は、『収穫場所の各々に対応する前記品質の計測情報を収集する』ものであって、『収穫場所』に対応する計測情報を収集することを指向していることから、引用発明において、収穫した作物の品質が『計測』された位置を示す位置データに換えて、作物が「収穫」された位置を示す位置データを用いることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ <相違点2>について
引用発明におけるデータ出力部は、農作評価データを『磁気記憶情報等』にて『取り出し可能な状態』で『出力』するもの、すなわち、農作評価データを磁気記憶情報として外部に出力するものであることから、前記データ出力部として、具体的には、着脱可能な磁気記憶媒体等に農作評価データを書き込む装置等が想定される。
そうすると、引用発明のデータ出力部は、農作評価データを、データ出力部とは別体の磁気記憶媒体等に送出する処理動作を行っているといえ、そのような処理動作は、農作評価データを「送り出す」処理動作であるといえる。
また、仮に、引用発明のデータ出力部における処理動作が、農作評価データを「送り出す」という処理動作には相当しないとしても、引用文献3には、『農作業管理装置』に記憶されている収穫量等の情報を『インターネット』を介して『端末装置』が取り出すことが記載されており、さらに、例えば、本願出願前に公開された特開2006-81480号公報(【0044】-【0046】)にも、管理部50に格納された収穫データに、端末装置61からインターネットを介してアクセスして、前記データをダウンロード又は表示することが記載されており、同じく本願出願前に公開された特開2005-182153号公報(【0021】【0028】)にも、農作業管理装置50に記憶された圃場における各種データや収穫量のデータに、端末65からインターネットを介してアクセスして、前記データを取り出すことが記載されているように、農作評価データを「送り出す」データ出力部という構成は、本願出願時において周知技術であると認められることから、引用発明及び引用文献3に示された周知技術に基づいて、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ <相違点3>について
『圃場』又は『生産単位区画』(各々、本件補正発明の「微小区画」に相当)内の各位置に関連付けて、収穫量データを記録することは、上記アに示したとおり、引用文献2及び3に記載されており、本願出願日前において周知技術であると認められる。
したがって、引用発明に当該周知技術を適用し、収穫量データを微小区画毎に関連付けることに換えて、微小区画内の各位置に関連付けるようにし、上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

エ そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果、又は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(5)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、本件補正発明の構成によれば、座標値に対応付けられたデータをデータベースサーバに記録した後、農地における微小区画の区分け方を任意に変更することが可能である旨を主張している。
しかしながら、本件補正発明における「微小区画」に関して、請求項1には、
「前記農作評価部は、前記農地における微小区画の範囲内に含まれる前記収穫作業位置を示す前記収穫位置データに関連付けられた前記収穫量データ及び前記品質データに基づいて、前記微小区画で収穫された農作物の収穫量及びその品質を評価し、
1つの前記微小区画で収穫された農作物の収穫量及びその品質は、前記データ入力部が受け取った前記収穫位置データのうち、その前記微小区画の範囲内に含まれる前記収穫作業位置を示す全ての前記収穫位置データに関連付けられた前記収穫量データ及び前記品質データに基づいて評価される」(下線は当審が付した。)、
とのみ記載されており、座標値に対応付けられたデータをデータベースサーバに記録した後、農地における微小区画の区分け方を任意に変更することは記載されていないから、審判請求人の上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり採用できない。
加えて、本願明細書(【0033】)には、「まず、農地が複数の微小区画:A1,A2,A3,・・・に区分けされる。コンバイン1の収穫走行にともなって、所定時間:t1,t2,t3,・・・毎に、または所定距離:D1,D2,D3,・・・毎に、収穫量データ及び品質データが入力される」、「このようにして、微小区画毎に農作物情報(収穫量や品質)を割り当てることができる。」(下線は当審が付した。)と記載されているように、本願明細書にも、最初に「微小区画」が区分けされており、その後で、データが「微小区画」に割り当てられることは開示されているものの、審判請求人が主張するような、座標値に対応付けられたデータをデータベースサーバに記録した後、農地における微小区画の区分け方を任意に変更することは開示されていない。
なお、審判請求人の上記主張を、本件補正発明ではデータが座標値に対応付けられているため、実施しようとすれば、前記データを記録した後で微小区画の区分け方を任意に変更することも可能である、という趣旨だと捉えたとしても、引用発明における中央管理装置(本件補正発明の「農作管理システム」)の記憶手段(本件補正発明の「データベースサーバ」)にも、農地における作業位置を示す位置データとして座標データが記録されていることから、本件補正発明と同様、実施しようとすれば、この座標データに対して、微小区画の区分け方を任意に変更することも可能であって、この点を本件補正発明と引用発明との相違点とすることはできない。

(6)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年9月26日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年4月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし3に示された本願出願日前の周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開平11-53674号公報
引用文献2:特開2007-295932号公報
引用文献3:特開2002-149744号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし3及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)(2-1)ないし(2-3)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「収穫作業位置を示す収穫位置データ」及び「農作評価部」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2ないし3に示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2ないし3に示された本願出願日前の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-09-12 
結審通知日 2019-09-17 
審決日 2019-09-30 
出願番号 特願2016-230222(P2016-230222)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松田 岳士毛利 太郎月野 洋一郎  
特許庁審判長 佐藤 聡史
特許庁審判官 相崎 裕恒
田中 秀樹
発明の名称 農作管理システム  
代理人 特許業務法人R&C  

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