• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01B
管理番号 1357174
審判番号 不服2018-5661  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-24 
確定日 2019-11-11 
事件の表示 特願2015-41862「ワイヤーハーネスの製造方法及び製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年9月5日出願公開、特開2016-162662〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成27年3月3日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年8月21日付け:拒絶理由通知書
平成29年10月27日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年1月18日付け:拒絶査定
平成30年4月24日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成30年4月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年4月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。なお、下線部は補正箇所を示す。
「 【請求項1】
ワイヤーハーネスの組立工程に対応した画像データを前記組立工程の進行状況に応じて画像を切り替えて複数の表示部に表示するワイヤーハーネスの製造方法であって、
前記ワイヤーハーネスの組立工程における前記画像データは、布線する電線を示す電線画像及び布線した前記電線を複数本束ねる位置を表示する画像を含み、
前記画像データに基づいて前記電線を配置する工程、前記画像データに基づいて前記電線を複数本束ねる工程及び前記複数の表示部における前記組立工程の進行状況を作業者の操作により戻す情報を含む進行情報を取得する工程を含む、ワイヤーハーネス製造方法。
【請求項2】
画像を表示する複数の表示部と、
ワイヤーハーネスの組立工程に対応した画像データを記憶する記憶部と、
前記記憶部が記憶する前記画像データに基づいて、前記組立工程の進行状況に応じて画像を切り替えて表示するように前記複数の表示部を制御する制御部と、
前記複数の表示部における前記組立工程の進行状況を作業者の操作により戻す情報を含む進行情報を取得する取得手段と、
を備え、
前記ワイヤーハーネスの組立工程における前記画像データは、布線する電線を示す電線画像及び布線した前記電線を複数本束ねる位置を表示する画像を含むワイヤーハーネス製造装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成29年10月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
ワイヤーハーネスの組立工程に対応した画像データを前記組立工程の進行に応じて画像を切り替えて複数の表示部に表示するワイヤーハーネスの製造方法であって、
前記ワイヤーハーネスの組立工程における前記画像データは、布線する電線を示す電線画像及び布線した前記電線を複数本束ねる位置を表示する画像を含み、
前記画像データに基づいて前記電線を配置する工程、前記画像データに基づいて前記電線を複数本束ねる工程及び前記複数の表示部における前記組立工程の進行状況を示す進行情報を取得する工程を含む、ワイヤーハーネス製造方法。
【請求項2】
画像を表示する複数の表示部と、
ワイヤーハーネスの組立工程に対応した画像データを記憶する記憶部と、
前記記憶部が記憶する前記画像データに基づいて、前記組立工程の進行に応じて画像を切り替えて表示するように前記複数の表示部を制御する制御部と、
前記複数の表示部における前記組立工程の進行状況を示す進行情報を取得する取得手段と、
を備え、
前記ワイヤーハーネスの組立工程における前記画像データは、布線する電線を示す電線画像及び布線した前記電線を複数本束ねる位置を表示する画像を含むワイヤーハーネス製造装置。
【請求項3】
一列に配列され、画像を表示する複数の表示部と、
ワイヤーハーネスの組立工程に対応した画像データを記憶する記憶部と、
前記記憶部が記憶する前記画像データに基づいて、前記組立工程の進行に応じて画像を切り替えて分割した分割画像を表示するように前記複数の表示部を制御する制御部と、
を備え、
前記ワイヤーハーネスの組立工程における前記画像データは、布線する電線を示す電線画像及び布線した前記電線を複数本束ねる位置を表示する画像を含むワイヤーハーネス製造装置。」

2.補正の適否
請求項1及び2についての本件補正は、本件補正前の請求項1及び2に記載された発明を特定するために必要な事項である「進行情報」について、上記1.(1)のとおり「前記複数の表示部における前記組立工程の進行状況を作業者の操作により戻す情報を含む」という限定を付加することを含むものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、少なくとも特許法17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、請求項3についての本件補正は、特許法17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。
そこで、まず、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1.(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用発明等
ア.国際公開第2014/181060号
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された国際公開第2014/181060号には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、括弧内で示した仮訳は、引用文献1のパテントファミリーである特表2016-526255号公報の記載を参考にし、当該公表特許公報中の段落番号も付した。また、仮訳中の下線は当審で付与した。

(ア)「

」(第1頁第5行?第9行)
(【0001】
本発明は、ケーブルハーネスの生産に関する。より詳細には、本発明は、このようなハーネスの生産支援に関する。
【0002】
ケーブルハーネスは、ケーブル(またはワイヤ)により互いに連結されたコネクタのアセンブリを含む。これらのケーブルは、例えば電気ケーブル、光ファイバケーブルまたは他のケーブルである。)

(イ)「

」(第4頁第23行?第24行)
(【0037】
支持体は特に支持体のサイズに応じて1つ、2つまたは他のあらゆる数のスクリーンを含むことができる。)

(ウ)「

」(第9頁第13行?第21行)
(【0071】
支持体は、1つの支え構造100を含み、この構造上に少なくとも1つのスクリーン101が載っている。スクリーンは、ユーザー102に対してケーブルハーネス生産支援データを表示するように構成されている。これらのデータに基づき、ユーザーは、生産すべきハーネスを形成するためのケーブルを固定表面103上に配置する。このために、ユーザーは固定表面上にケーブル進行要素を固定する。ユーザーは同様に固定表面上に、ケーブルを接続するためのコネクタを配置することもできる。ユーザーは同様に、固定表面上に、生産すべきハーネスを形成する他のあらゆる要素を配置することもできる。)

(エ)「

」(第13頁第3行?第5行)
(【0099】
支持体は、複数のスクリーンを含むことができ、これは、大きな寸法の電気ハーネスの生産用の大きなサイズの支持体のために有用であることが考えられる。)

(オ)「

」(第14頁第19行?第23行)
(【0107】
以下では、電気ハーネス生産支援方法が、図6を参照しながら説明される。この方法は、情報処理モジュール、例えば電気ハーネス生産支持体の情報処理モジュールによって実施可能である。この方法は同様に、以上で言及された監視デバイスによっても実施され得る。)

(カ)「

」(第14頁第24行?第15頁第12行)
(【0108】
ステップ600において、電気ハーネス配線図を含むファイルが、メモリー内にロードされて、ハーネスの生産支援データと共にスクリーン上に表示される。
【0109】
配線図データは、例えば同じファイル内で生産支援データに結びつけられる。2つのタイプのデータは同様に、全く異なるファイルに属していてもよい。
【0110】
データ(配線データおよび/またはハーネス生産支援データ)は、例えば、監視デバイスに由来してもよいし、あるいは記録媒体または通信網からロードされてもよい。
【0111】
その後、配線図は、スクリーン上にステップ601において表示される。
【0112】
このような配線図700は、図7aに表わされている。この図は、生産すべきハーネスの異なるケーブルの進行レイアウトを含む。図の一部の部分において、ケーブルは同じ進路をたどる。別の部分では、ケーブルはそれぞれ独自の進路をたどる。ケーブルの各端部は、この端部を識別する番号が表示されている。この番号には、例えば、それを表わすバーコードが随伴している。
【0113】
こうして、この例においては、ケーブル701が端部P3015とA4817の間に配置されている。端部C8510とP25001の間にはケーブル702が配置されている。端部B3651とC8510の間にはケーブル703が配置されている。)

(キ)「

」(第15頁第19行?第25行)
(【0116】
ひとたび配線図が表示されると、ユーザーが(例えば上述の通りの吸盤付きの)ケーブル進行要素を利用できかつケーブル自体を図に準じて配置できるようにするため、ケーブル生産支持体上に配設すべきケーブルを表わすリストが、ステップ602においてスクリーンに表示される。
【0117】
このようなリストが、図7aの要素を再び取上げている図7bに表わされている。)

(ク)「

」(第16頁第3行?第10行)
(【0120】
電気ハーネス生産支持体上に配置すべき現行の電気ケーブルが次に、ステップ603において決定される。
【0121】
ケーブルリストが表示された場合、ユーザーは、支持体上に配置すべきケーブルを選択することができる。このために、ユーザーは例えば、ユーザーインターフェイスのマウスを用いてウィンドウ704内の1つのケーブル番号をクリックすることができる。タッチスクリーンである場合、ユーザーは同様にスクリーン上で直接クリックすることもできる。ユーザーはまた、キーボードを介してケーブル番号を直接入力することもできる。)

(ケ)「

」(第16頁第15行?第28行)
(【0123】
ユーザーが配置すべきケーブルを選択した後、あるいはこのケーブルが自動的に決定された後、決定されたケーブルの進行データがステップ604において表示される。
【0124】
例えば、図7cに示されている通り、ユーザーは、ウィンドウ704のリストの要素705をクリックする。要素705は、支持体上に配置すべき電気ケーブルの識別子を表わす。この要素はこのとき、ハイライトされる。
【0125】
図7cの例において、ユーザーはケーブル701を選択した。
【0126】
支持体上に配置すべきケーブルの決定後、決定されたケーブルの進行が、図上で明らかにされる。例えば、決定されたケーブルにたどらせるべき進路のレイアウトが、図の残りの部分を表示するために使用される色とは異なる色で表示される。さらに例えば、ケーブルにたどらせるべき進路のレイアウトは破線706で包囲されている。)

(コ)「

」(第17頁第12行?第15行)
(【0131】
現行のケーブル用の進行要素全てをユーザーが配設した時点で、ユーザーは、ケーブル進行要素のケーブル固定要素に対してケーブルを固定することにより表示された図にしたがってケーブルを配設することができる。)

(サ)「

(第17頁第16行?第24行)
(【0132】
現行のケーブルについて、ケーブル進行データがひとたび表示されたならば、電気ハーネス生産支持体上に配置すべき他のケーブルが残っているか否かが、ステップ605において決定される。例えば、ウィンドウ704のリストの全ケーブルが考慮されたか否かが確認される。
【0133】
リスト内の後続する電気ケーブルに移行することが可能であるか否かを知るためには、(例えばリスト内の別の識別子をクリックすることあるいはキーボード他の上で別の識別子を入力することによって)リスト内の別のケーブルをユーザーが選択するのを待つこと、あるいはユーザーがウィンドウ704を閉鎖して全ケーブルの配置を確認するのを待つことが可能である。)

(シ)「

」(第18頁第13行?第18行)
(【0137】
ステップ605において別のケーブルを考慮しなければならないこと(はい)が決定された場合には、すでに説明したステップ603に戻る。
【0138】
そうでない場合(いいえ)、固定用支持体上に配置すべきコネクタのリストが、ステップ606においてスクリーンに表示される。この表示には、電気ハーネス生産支持体上に配置すべきケーブルのリストに関するウィンドウ704の消去が随伴する。)

(ス)「

」(第22頁第5行?第13行)
(【0169】
ステップ615において、他のコネクタを支持体上に配置すべきであることが決定された場合(はい)、すでに説明したステップ606に戻る。
【0170】
そうでない場合(いいえ)、ハーネスの仕上げステップに進むことができ、このステップにおいて、ハーネス内にマーキング要素(ラベル)が設置される。仕上げステップに関する情報がステップ616において表示される。
【0171】
図にしたがって支持体上にケーブルが配置され、ケーブルが接続された時点で、ハーネスを(例えば一部のケーブルを互いに固定することによって)仕上げることができ、ハーネスを支持体から再度取上げることができる。)

上記(ア)によれば、引用文献1には、ケーブルハーネスの生産に関する発明が記載されており、当該ケーブルハーネスは、ケーブルまたはワイヤにより互いに連結されたコネクタのアセンブリを含むものであり、これらのケーブルは例えば電気ケーブルである。
また、上記(イ)及び(ウ)によれば、支持体は複数のスクリーンを含み、スクリーンは、ユーザーに対してケーブルハーネス生産支援データを表示し、これらのデータに基づき、ユーザーは、生産すべきハーネスを形成するためのケーブルを配置する。そして、上記(エ)によれば、複数のスクリーンを含むことは、大きな寸法の電気ハーネスの生産用の大きなサイズの支持体のために有用である。
さらに、上記(オ)によれば、電気ハーネス生産支援方法は、電気ハーネス生産支持体の情報処理モジュールによって実施可能であり、当該電気ハーネス生産支援方法は、上記(カ)ないし(ス)並びに図6に示される、下記[a]ないし[h]の工程を含むものである。なお、[a]ないし[h]という符号は、電気ハーネス生産支援方法の各工程を識別するために、便宜上当審で付与したものである。
ここで、引用文献1には「電気ハーネス」(上記(エ))、「電気ハーネス生産支援方法」(上記(オ))、「電気ハーネス生産支持体」(上記(オ)(ク)(サ)(シ))、「電気ハーネス配線図」(上記(カ))のように「電気ハーネス」という用語が用いられているが、上記(ア)におけるケーブルハーネスについての記載内容を勘案すると、当該「電気ハーネス」は、電気ケーブルを含むケーブルハーネスを意味していると解される。

[a]
電気ハーネス配線図が、スクリーン上に表示される。この電気ハーネス配線図は、図7aに表されているように、生産すべきハーネスの異なるケーブル(ケーブル701、702、703)の進行レイアウトを含む。(上記(カ)、ステップ601参照。)
[b]
ひとたび配線図が表示されると、ユーザーがケーブル自体を図に準じて配置できるようにするため、ケーブル生産支持体上に配設すべきケーブルを表わすリストが、図7bに表されているように、スクリーンに表示される。(上記(キ)、ステップ602参照。)
[c]
ケーブルリストが表示された場合、ユーザーは、支持体上に配置すべきケーブルを選択する。それによって、電気ハーネス生産支持体上に配置すべき現行の電気ケーブルが決定される。(上記(ク)、ステップ603参照。)
[d]
ユーザーが配置すべきケーブルを選択した後、決定されたケーブルの進行データが表示される。例えば、ユーザーがケーブル701を選択した図7cの例のように、決定されたケーブルにたどらせるべき進路のレイアウトが、図の残りの部分を表示するために使用される色とは異なる色で表示され、さらに、ケーブルにたどらせるべき進路のレイアウトは破線706で包囲されている。(上記(ケ)、ステップ604参照。)
[e]
ユーザーは、表示された図にしたがってケーブルを配設する。(上記(コ)参照。)
[f]
電気ハーネス生産支持体上に配置すべき他のケーブルが残っているか否かが決定される。別のケーブルを考慮しなければならないこと(はい)が決定された場合には、上記[c](ステップ603)に戻る。(上記(サ)、(シ)、ステップ605参照。)
[g]
ハーネスの仕上げステップにおいて、仕上げステップに関する情報が表示される。(上記(ス)、ステップ616参照。)
[h]
ユーザーは、一部のケーブルを互いに固定することによって、ハーネスを仕上げる。(上記(ス)参照。)

そして、電気ハーネス生産支援方法の上記[a][b][d][g]の表示に従って、ユーザーが前記[c][e][h]の作業を行うことによって、電気ハーネスが生産されるから、電気ハーネスの生産方法として上記(ア)ないし(ス)並びに図面の記載を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「複数のスクリーンを含む電気ハーネス生産支持体を用いた電気ハーネスの生産方法であって、
[a]生産すべき電気ハーネスの異なるケーブルの進行レイアウトを含む電気ハーネス配線図が、スクリーン上に表示され、
[b]前記電気ハーネス配線図が表示されると、電気ハーネス生産支持体上に配設すべきケーブルを表わすケーブルリストが、スクリーンに表示され、
[c]前記ケーブルリストが表示された場合、ユーザーは、電気ハーネス生産支持体上に配設すべきケーブルを選択し、
[d]ユーザーが配設すべきケーブルを選択した後、選択されたケーブルにたどらせるべき進路のレイアウトを表示するための進行データが表示され、
[e]ユーザーは、表示された進行データにしたがってケーブルを配設し、
[f]電気ハーネス生産支持体上に配設すべき他のケーブルが残っているか否かが決定され、残っている場合には、上記[c]に戻り、
[g]ハーネスの仕上げステップにおいて、仕上げステップに関する情報が表示され、
[h]ユーザーは、一部のケーブルを互いに固定することによって、ハーネスを仕上げる、
ことを含む電気ハーネスの生産方法。」

イ.特開2010-201550号公報
原査定において、周知技術を示す文献(拒絶査定の引用文献4)として引用された特開2010-201550号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

(ア)「【0002】
大型車両に用いられる空気ブレーキには、様々な径及び長さのブレーキチューブが使用されている。車両の製造ラインでは、ブレーキチューブの設置作業の効率化のため、ブレーキチューブを複数本束ねてコンパクトにまとめた組立部品(以下、ブレーキ配管部品という)が使用される。また、車両の電気配線材についても同様な理由から、複数の電気配線材を束ねたワイヤーハーネスが製造ラインに供給される。
【0003】
ブレーキ配管部品は、作業者が作業台上に所定の長さに切断されたブレーキチューブを複数本載置し、このブレーキチューブの所定箇所に結束テープや結束バンドを巻き付けて組み立てている。この組立作業において、作業者に対して、作業台の近くに設置された作業指示書又は見本等で作業指示を行っている(例えば、特許文献1など)。また、見本や作業指示書に代えて、実物大の図面を作業台に投影して作業者に組立作業の内容を指示する方法が知られている(例えば、特許文献2など)。
(中略)
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、組み立てるべきブレーキ配管部品が複雑化、多品種化すると、見本や作業図面の準備作業が煩雑となり、品種の変更に迅速に対応するのが困難となる。
【0006】
また、ブレーキチューブは長尺で柔軟であるため、組立作業に伴って動きやすい。ブレーキチューブがドラム等に巻きつけて保管されている場合には、保管時の形状が癖として残っている場合もある。このため、見本又は図面を作業者に示すだけでは、その通りにブレーキチューブを配置して組立作業を行うのが困難である。さらに、ブレーキ配管部品が複雑化すると、組立作業の途中にブレーキチューブが動くことで、組立ミスや組立作業のやり直しにつながる場合があり、作業効率が極端に低下するおそれがある。同様の問題は、長尺で柔軟な電気配線を束ねるワイヤーハーネスの組立作業でも生じる。
【0007】
そこで、長尺で柔軟な部品の組立作業の効率を向上させることのできる組立作業支援装置を提供することを目的とする。」

(イ)「【0030】
図6は、表示パネルに表示される作業図面の例を示す模式図である。図6では連結した2台の作業台20の表示パネル23で1枚の作業図面を表示した例を示している。ここでは、説明を簡単にするため、2本のブレーキチューブを結束してブレーキ配管部品を組み立てる例について説明する。
【0031】
図6において、符号W1で示す部分には、一方のブレーキチューブの設置位置が実物大の大きさで表示され、符号W2で示す部分には、別のブレーキチューブの設置位置が実物大の大きさで表示される。これらのブレーキチューブW1,W2の設置位置は、所定の色(例えば青色や水色等)で表示される。
【0032】
符号Hで示す部分には、ホルダー32の設置位置がブレーキチューブの設置位置と異なる色(例えば緑色等)で表示される。また、符号Tで示す部分には、ブレーキチューブを結束する結束テープの取り付け位置が、ホルダー32の設置位置及びブレーキチューブの設置位置と異なる配色(例えば白色や赤色等)で表示される。なお、ホルダー32の設置位置とともにアーム33及び本体31を含む保持具30全体の設置位置を表示するようにしてもよい。
【0033】
また、特に図示しないが、ブレーキチューブ、ホルダー及び結束テープの設置位置の表示の近くには、ブレーキチューブの部品番号、ホルダーの種別、結束テープの種別や寸法などを示す文字が表示される。」

(ウ)「【0038】
つぎに、図7(b)に示すように、表示パネル23に表示された結束テープの取り付け位置Tで結束テープ90をブレーキチューブ81,82に巻きつけてブレーキチューブを束ねる。その後、結束したブレーキチューブをホルダー32から取り外すことにより、1つのブレーキ配管部品の組立作業が完了する。以後、同じ種類のブレーキ配管部品の組立作業を続ける場合には、ホルダー32(保持具30)の位置を変えずにブレーキチューブ81,82の設置及び結束テープ90による結束作業を繰り返せばよい。」

(エ)「【0042】
上述の例では、組立作業支援装置10をブレーキ配管部品の組立作業に用いる例について説明したが、本実施形態の組立作業支援装置10はこれに限定されるものではなく、長尺で柔軟な部品を組み立てる工程全般に用いることができる。例えば、ワイヤーハーネス等の電気配線材の組立作業に用いてもよい。また、長尺で柔軟な部品以外であっても、例えば複雑な形状を有し、組立作業において、保持具による仮固定が必要場合に、本実施形態の組立作業支援装置10を用いてもよい。」

ウ.特開2011-134217号公報
周知技術を示す文献として新たに引用する特開2011-134217号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

(ア)「【0001】
本発明は、各種機器の組立現場における組立作業を支援する組立作業支援システムおよびその動作を行うためのプログラムに係り、不具合情報の共有化を行う技術に関する。」

(イ)「【0020】
PC130には、表示装置兼入力装置として機能するタッチパネル式のLCD131が接続されている。LCD131には、作業者140に提示される各種の情報が表示される。また、作業者140がLCD131のタッチパネル機能を利用して操作を行うことで、作業者140による各種の操作や各種の情報の入力が行われる。図1には、作業者140の一名が示されているが、実際には、セル生産を行う作業者は複数人であり、その作業者毎にPCおよびLCDが用意されている。」

(ウ)「【0022】
作業者情報テーブル102には、作業者名と作業者IDを関連付けした情報が記録されている。作業者習熟度設定テーブル103には、作業者IDと作業シナリオ毎における作業者の習熟度が関連付けされたものが記録されている。ここで、作業シナリオというのは、組立の対象となる製品(例えば、電子機器や事務機器等)の組立手順を示す説明書(組立マニュアル)のことをいう。作業シナリオは、文書、図、写真、フロー図等が適宜組み合わされて作業の手順を示す内容とされている。」

(エ)「【0029】
図1には、LCD131における操作画面の一例が示されている。図1に示す操作画面には、組立方法表示画面のタイトル表示、作業(戻る)画面のタイトル表示、不具合記録入力画面のタイトル表示、作業者情報設定画面のタイトル表示が示されている。
【0030】
この操作画面において、組立方法表示画面のタイトル表示の部分を作業者140が指やタッチペンで触れると、作業シナリオテーブル106へのアクセスが行われ、組立方法を表示する画面のリスト表示(作業選択画面)に切り替わる。そして、更にこのリストの中から表示させる作業シナリオを選択すると、選択した作業シナリオが表示される。
(中略)
【0032】
作業(戻る)選択画面のタイトル表示に触れると、作業シナリオテーブル106へのアクセスが行われ、戻ることができる作業工程の一覧が表示された工程シナリオ選択画面が表示される。そして、その中から目的の工程の作業シナリオを選択すると、その工程における作業の内容が示された作業のシナリオ(これを工程シナリオと呼ぶ)が表示される。なお、戻ることができる工程は、その時点で既に終了している工程である。なお、作業(戻る)選択画面のタイトル表示は、作業シナリオが表示される画面上にも表示されており、作業シナリオが表示されている画面から、戻ることができる工程の一覧が表示された作業単位選択画面に戻ることができる仕様とされている。
【0033】
また、PC130には、押しボタンスイッチを利用した戻るボタン132が接続されている。戻るボタン132は、作業者140の手の届きやすい場所に配置されている。戻るボタン132の機能は、上述した作業(戻る)選択画面のタイトル表示と同じである。作業者は、タッチパネル式のLCD131または戻るボタン132を操作することで、組立支援システム100に作業を戻る旨を伝えることができる。」

(オ)「【0037】
(作業中に不具合が発生した場合の作業フロー)
作業中に不具合が発生した場合の作業のフローを説明する。以下、作業中に不具合が見つかり、作業工程を溯って作業をやり直す場合のフローの一例を説明する。図3には、作業者140の視点から見たフロー(左側)と、制御部108が行う制御のフロー(右側)が記載されている。
【0038】
まず、作業者140が作業中に不具合を見つけると、ステップS301以下の作業が開始される。まず、作業者140は、LCD131上の作業(戻る)の表示(あるいは戻るボタン132)に触れ、戻ることが可能な工程シナリオの選択を行うための工程シナリオ選択画面を表示させる操作を行う(ステップS302)。これは、不具合を解消するために、既に終了している作業に戻る(作業をやり直す)ためである。作業者140によりステップ302の操作が行われると、それが制御部108において認識され、制御部108は、戻ることが可能な工程の一覧を表示した工程シナリオ選択画面をLCD131に表示させる制御を行う(ステップS310)。
【0039】
工程シナリオ選択画面が表示されたら、作業者140は、LCD131を操作し、どの作業(工程)に戻るかを選択する(ステップS303)。この際、制御部108は、ステップS303が行われたか否か、を判定し(ステップS311)、どの作業(工程)に戻るかの選択が行われた場合に、不具合内容記録テーブル104にアクセスし、当該記録テーブルを起動してLCD131に不具合記録入力画面を表示する(ステップS312)。この表示の切り替わりは、作業者140の意思に関係なく、作業者によるステップS303の操作が行われたことを契機として実行される。
【0040】
LCD131に不具合記録入力画面が表示されたら(ステップS304)、作業者140は、不具合情報の内容および共有レベルを入力する(ステップS305)。この入力された情報は、サーバ101内に登録される(ステップS306)。
【0041】
制御部108は、システムへの不具合情報の内容および共有レベルの入力を契機として、ステップS303において作業者140によって選択された工程シナリオをLCDに表示する(ステップS313)。これにより、作業者140に戻った先の工程シナリオが提示され、作業者140は、その工程シナリオに従って、再度作業をやり直し、不具合の解消を図る。」

エ.特開2000-164050号公報
周知技術を示す文献として新たに引用する特開2000-164050号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ワイヤーハーネスの組立各工程において、システムから作業者に具体的な作業手順、作業内容、作業ポイントを指示し、作業者はシテスムに対して操作や音声で情報を伝達することのできる作業支援システムに関するものである。」

(イ)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前記ワイヤーハーネスの支援システムでは、作業者は、図や文字を見ながら作業を進めることになるので、作業者に負担を強い、作業に時間がかかるという問題がある。そこで、従来の書面による作業内容の指示をモニターによる動画や静止画で表示して行うシステムが考えられる。これにより、作業者は文字を読む必要がなくなり、世界共通の標準とすることができるので、海外の工場で国ごとに、その国の言語に対応した標準を別途作る必要がなくなる。
【0006】また、この動画や静止画を使ったシステムを基にすれば、音声指示に対応して作業者がマウスを操作して応えることにより、ライン立ち上げ前の組立練習システムを構築することもできる。この組立練習システムでは、実際の組立対象部品や組立図板がなくてもイメージトレーニングが可能となる。このような組立練習システムを実際の組立ラインに設けられた作業確認用のセンサ等と組み合わせて使用することとすれば、作業者が理解しやすく、作業進捗の確認や部品の取り付け誤りを防止できる作業支援システムを実現することができる。
【0007】そこで、本発明は、ワイヤーハーネスの組立において、上述したようなビジュアルなシステムを採用して、作業能率の向上を図ることのできる作業支援システムを実現することを目的とする。」

(ウ)「【0018】一方、作業者は、アンテナ13cを通して通信装置34と通信するトランシーバ38を携帯している。このトランシーバー37は、作業者の肉声、例えば「もう一度繰り返して下さい」「次の指示をしてください」「最初に戻ってください」等の情報を処理装置13bに伝達するものである。処理装置13bには、公知の音声認識ソフトがロードされており、これらの肉声に基づく音声信号を認識して、意思内容を解読する。」

(エ)「【0022】次に、作業者が指示に従って、作業を行う様子を、具体例を用いて説明する。まず、リレーボックス及びコネクタの作業の内容について、この作業時に表示される画面を具体的に示して、それを参照しながら説明する。図4は、品番N1のリレーボックス及びコネクタの結線作業の概要を示す画面の一部である。同画面には、品番の表示40、部品置き場41、結線するリレーボックス42及びコネクタ43の写真、ナレーションボタン44等が示される。部品置き場30の各パーツ入れにはそれぞれカラーのシンボルマーク41a?41c,41eで示されるワイヤ等の部品が入っている。例えば、41aのシンボルマークは、所定の色のワイヤであること及び端子の形状を示している。
【0023】シンボルマーク41aの切圧電線をリレーボックス42の所定部位に挿入するという作業指示内容ならば、同図45に示すように、41aから所定部位への矢印45が現れ、指示内容が音声で示される。そこで、作業者は、実際の部品置き場の当該パーツ入れから切圧電線を取り出し、その端子をリレーボックスの矢印の先に相当する位置に挿入すればよい。
【0024】以上の作業を終えると、作業者は、音声で「終わりました」「終了」「次」などの意思表示をする。実組立ラインで作業をする前の教育、訓練の段階で行うイメージトレーニングの場合には、マウス13eを使って所定位置をクリックすることにより意思表示をする。
【0025】今度は図5に示すように、41cのワイヤの入っている引き出しから矢印が延び、端子の写真46が現れる。そして、この端子から、線47a,47bが延びて、リレーボックス42及びコネクタ43の所定部位に至る。これにより、作業者は、実際の部品置き場の当該パーツ入れからワイヤを取り出し、その端子をリレーボックス及びコネクタの矢印の先に相当する位置に挿入することができる。
【0026】もし、作業者が作業内容に不明な点があれば、音声で「もう一度」「戻れ」などの発声をすれば、CPU31はこれを解読して、同じ画面を繰り返す。あるいは、画面の指示が速すぎれば、「とまれ」「ゆっくり」といえば、画面がポーズしたり、ゆっくり流れたりする。イメージトレーニングの際には、以上の音声による指示は、マウス13eやーボード13dを使って画面上で行ってもよい。」

(3)対比
そこで、本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア.引用発明の「電気ハーネス」は、上記(2)アで説示したように、電気ケーブルを含むケーブルハーネスを意味していると解される。また、一般的に、ワイヤーハーネスは、ケーブルハーネスと呼称されることがあることや、引用文献1のフロントページに英文タイトルとして「WIRING HARNESS PRODUCTION MOUNTING」(下線は当審で付与した。)と記載されていることを勘案すると、引用発明の「電気ハーネス」は、本件補正発明の「ワイヤーハーネス」に相当する。
そうすると、引用発明の「電気ハーネスの生産方法」は、「ワイヤーハーネスの製造方法」であるということができ、引用発明の[a]ないし[h]の各工程は、「ワイヤーハーネスの組立工程」であるということができる。

イ.引用発明の電気ハーネス生産支持体に含まれる「複数のスクリーン」は、本件補正発明の「複数の表示部」に相当する。

ウ.引用発明においては、[a]の工程で「生産すべき電気ハーネスの異なるケーブルの進行レイアウトを含む電気ハーネス配線図」がスクリーンに表示され、[d]の工程で「選択されたケーブルにたどらせるべき進路のレイアウトを表示するための進行データ」がスクリーンに表示されるが、図7a及び図7cの記載からみて、それらはスクリーンに「画像」として表示されている。したがって、上記「生産すべき電気ハーネスの異なるケーブルの進行レイアウトを含む電気ハーネス配線図」及び上記「選択されたケーブルにたどらせるべき進路のレイアウトを表示するための進行データ」は、いずれも「ワイヤーハーネスの組立工程に対応した画像データ」であるということができる。そして、上記[a]の工程から上記[d]の工程に進行することによって、表示される画像が切り替わっているから、引用発明においても、「組立工程の進行状況に応じて画像を切り替えて」いるといえる。

エ.引用発明において、[a]の工程で表示される「生産すべき電気ハーネスの異なるケーブルの進行レイアウトを含む電気ハーネス配線図」は、本件補正発明の「布線する電線を示す電線画像」に相当する。そうすると、引用発明と本件補正発明は、「前記ワイヤーハーネスの組立工程における前記画像データ」に、「布線する電線を示す電線画像を含」む点で共通する。ただし、本件補正発明においては、「前記ワイヤーハーネスの組立工程における前記画像データ」に「布線した前記電線を複数本束ねる位置を表示する画像」も含むのに対して、引用発明においてはその旨の特定はされていない点で相違する。

オ.引用発明の[e]の「ユーザーは、表示された進行データにしたがってケーブルを配設し」という工程は、本件補正発明の「前記画像データに基づいて前記電線を配置する工程」に相当する。

カ.引用発明の[h]の「ユーザーは、一部のケーブルを互いに固定することによって、ハーネスを仕上げる」という工程は、本件補正発明の「前記電線を複数本束ねる工程」に相当する。ただし、引用発明においては、当該工程より前の[g]の工程で「仕上げステップに関する情報が表示され」てはいるが、表示される情報が「布線した前記電線を複数本束ねる位置を表示する画像」であることまでは特定されていない。
すなわち、引用発明においては、「前記電線を複数本束ねる工程」を含んではいるものの、画像データが「布線した前記電線を複数本束ねる位置を表示する画像」を含むことや、当該「画像データに基づいて」電線を複数本束ねることまでは特定されていない点で、本件補正発明と相違する。

キ.引用発明においては、[c]の工程でユーザーが「電気ハーネス生産支持体支持体上に配設すべきケーブルを選択し」ており、この選択がなされることによって[d]の工程へと進み、新たな進行データが表示されるから、ユーザーによるこの選択に関する情報は、「前記複数の表示部における前記組立工程の進行状況を示す進行情報」であるといえる。そうすると、引用発明と本件補正発明は、「進行情報を取得する工程を含む」点で共通するが、本件補正発明においては、「進行情報」が「前記複数の表示部における前記組立工程の進行状況を作業者の操作により戻す情報」を含むのに対して、引用発明においては、その旨の特定がない点で相違する。

したがって、上記アないしキを勘案すると、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。

<一致点>
「ワイヤーハーネスの組立工程に対応した画像データを前記組立工程の進行状況に応じて画像を切り替えて複数の表示部に表示するワイヤーハーネスの製造方法であって、
前記ワイヤーハーネスの組立工程における前記画像データは、布線する電線を示す電線画像を含み、
前記画像データに基づいて前記電線を配置する工程、前記電線を複数本束ねる工程及び進行情報を取得する工程を含む、ワイヤーハーネス製造方法。」

<相違点1>
本件補正発明においては、画像データは「布線した前記電線を複数本束ねる位置を表示する画像」を含み、電線を複数本束ねる工程は「前記画像データに基づいて」行われるのに対して、引用発明においては、その旨の特定がなされていない点。

<相違点2>
進行情報が、本件補正発明においては、「前記複数の表示部における前記組立工程の進行状況を作業者の操作により戻す情報」を含むのに対して、引用発明においては、その旨の特定がなされていない点。

(4)判断
上記各相違点について検討する。

ア.相違点1について
ワイヤーハーネスの製造方法において、組立作業の効率を向上させるために、ワイヤーハーネスを結束する位置を画像として表示し、表示された位置でワイヤーハーネスを結束することは周知技術にすぎない(例えば、原査定で周知技術を示す文献として引用された特開2010-201550号公報(特に、上記(2)イの(ア)ないし(エ))を参照のこと)。
したがって、引用発明において、上記周知技術を採用して、[g]の工程で仕上げステップに関する情報を表示する際に、ワイヤーハーネスを結束する位置を表示するようにするとともに、それに続く[h]の工程で、表示された位置で結束するようにすることは、当業者が適宜なし得ることである。そして、そのようにする際には、画像データには、本件補正発明と同様に「布線した前記電線を複数本束ねる位置を表示する画像」が当然に含まれることになる。

イ.相違点2について
一般に、作業工程に対応する画像を用いて組立作業を支援する際に、作業者の操作(指示)によって、作業工程を戻すことができるようにすることは周知技術にすぎない(例えば、周知技術を示す文献として新たに引用する特開2011-134217号公報(特に、上記(2)ウの(ア)ないし(オ))及び特開2000-164050号公報(特に、上記(2)エの(ア)ないし(エ))を参照のこと。)から、引用発明において、作業工程すなわち組立工程の進行状況を作業者の操作によって戻すことができるようにすること、及び、そのために必要な情報を取得するようにすることは、当業者が適宜なし得ることである。

そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成30年4月24日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成29年10月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されたものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]の1.(2)に記載したとおりのものである。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし3に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:国際公開第2014/181060号

3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項、及び、原査定において周知技術を示す文献として引用された特開2010-201550号公報の記載事項は、上記第2の[理由]の2.(2)のア及びイにそれぞれ記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]の2.で検討した本件補正発明における「進行情報」について、「前記複数の表示部における前記組立工程の進行状況を作業者の操作により戻す情報を含む」という限定事項(上記第2の[理由]の2.(3)で説示した相違点2に係る発明特定事項)を実質的に削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]の2.(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-09-10 
結審通知日 2019-09-12 
審決日 2019-09-25 
出願番号 特願2015-41862(P2015-41862)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01B)
P 1 8・ 121- Z (H01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神田 太郎  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 宮本 秀一
國分 直樹
発明の名称 ワイヤーハーネスの製造方法及び製造装置  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ