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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1357180
審判番号 不服2018-11240  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-17 
確定日 2019-11-11 
事件の表示 特願2016-160816号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月10日出願公開、特開2016-190131号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成24年9月3日に出願した特願2012-193624号(以下、「原出願」という。)の一部を平成28年8月18日に新たな特許出願(特願2016-160816号)としたものであって、同年11月30日に手続補正書が提出され、平成29年9月6日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月25日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年5月15日付け(送達日:同年同月18日)で拒絶査定がなされ、それに対して、同年8月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、令和1年5月9日付けで拒絶の理由が通知され、同年同月17日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明

本願請求項1に係る発明は、令和1年5月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の事項により特定されるとおりのものであると認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、分説してAないしPの符号を付与すると、次のとおりのものである(なお、下線は上記手続補正書による補正箇所を示す。)。

「【請求項1】
A 遊技者の操作によって遊技媒体が打込まれる遊技領域を有した遊技盤と、
B 前記遊技盤を脱着可能に支持する本体枠と、
C 前記本体枠の前面に対して開閉可能に支持されると共に閉鎖した時に前記本体枠に支持された前記遊技盤の少なくとも前記遊技領域が遊技者側へ臨む遊技窓を有した扉枠と、
D 前記遊技窓の下方に形成され、前方に膨出して前記遊技媒体を貯留可能な皿部と、発光装飾可能な発光装飾部と、遊技者によって操作可能な複数の操作部と、を有する皿発光装飾手段と、
E 前記皿発光装飾手段に近接して設けられ、前記遊技窓の外周の所定領域を装飾し、遊技者側へ向けて発光可能とされた第一発光装飾手段と、
F 前記遊技窓の外周の前記所定領域とは異なる領域を装飾し、前記第一発光装飾手段よりも前方に膨出し発光可能な膨出部を有する第二発光装飾手段と、
を備え、
G 前記皿発光装飾手段を上方からみたときの前記皿発光装飾手段による装飾と前記遊技盤と対向した遊技者から見える前記第二発光装飾手段による装飾とで一体的な装飾をなしており、
H 前記第一発光装飾手段による装飾は、前記遊技盤と対向した遊技者から見える前記第二発光装飾手段と前記皿発光装飾手段を上方からみたときの前記皿発光装飾手段による前記一体的な装飾とは異なる装飾をなしており、
I 前記皿発光装飾手段は、前記第二発光装飾手段の前記膨出部よりもさらに前方に膨出して形成され、
J 前記本体枠の前面に対して開閉可能に支持された前記扉枠の開放側に前記膨出部が位置し、
K 前記複数の操作部のうちの特定の操作部に対して、第一操作態様にて操作させる第一操作演出と、前記第一操作態様とは異なる第二操作態様にて操作させる第二操作演出とを含む複数の操作演出を実行可能であり、
L 前記第一操作演出が実行される場合と、前記第二操作演出が実行される場合とで操作前の前記皿発光装飾手段の前記発光装飾部の発光態様が異なり、
M 発光可能な前記膨出部は、前記遊技盤と対向した遊技者から視認容易となる内側面部と、前記遊技盤と対向した遊技者から視認困難となる外側面部とを有し、
N 前記第二発光装飾手段からの発光は、前記遊技盤と対向した遊技者から視認容易となる前記内側面部を介し前記遊技窓側である遊技機内側にむけて発光される内側発光と、前記遊技盤と対向した遊技者から視認困難となる前記外側面部を介し遊技機外側にむけて発光される外側発光と、があるとともに、前記外側面部が視認容易な遊技ホールの従業員に対して様々な情報を報知するための複数種類の報知光を前記外側発光として、前記外側面部を介し遊技機外側にむけて発光可能とされ、
O 前記遊技盤と対向した遊技者から視認困難な前記外側面部の前記報知光が発光される箇所は、演出光も発光可能とされているとともに、前記報知光及び前記演出光を拡散させる拡散部を有している
P ことを特徴とする遊技機。」

第3 令和1年5月9日付け拒絶理由の概要

当審による令和1年5月9日付け拒絶理由の概要は、請求項1に係る発明に対する拒絶理由を含むものであって、以下のとおりのものである。

理由1:請求項1に係る発明は、原出願の出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1ないし5に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、原出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物1:特開2011-189022号公報
刊行物2:特開2012-157442号公報
刊行物3:意匠登録第1336205号公報
刊行物4:特開2001-178883号公報
刊行物5:特開2007-143884号公報

第4 刊行物に記載された事項及び引用発明

1 刊行物1

(1) 記載事項

当審における拒絶理由に引用され、本願の原出願前に頒布された刊行物1には、以下の記載がある(下線は当審が付与した。以下同様。)。

刊1-ア
「【0016】
まず、本発明の遊技機の一例であるパチンコ遊技機の全体の構成について説明する。図1は、パチンコ遊技機1(以下、パチンコ遊技機1と略称する)を正面からみた正面図である。図2は、パチンコ機を示す背面図である。尚、以下の説明において、図1の手前側をパチンコ機の前面側、奥側を背面側として説明する。尚、本実施例におけるパチンコ機の前面とは、遊技者側からパチンコ遊技機1を見たときに該遊技者と対向する対向面である。
【0017】
図1に示すように、パチンコ遊技機1は、縦長の方形状に形成された外枠100(図2参照)と、外枠100に開閉可能に取り付けられた前面枠101(図5参照)と、で主に構成されている。前面枠101の前面には、ガラス扉枠102及び下扉枠103がそれぞれ一側を中心に開閉可能に設けられている。尚、本実施例では、下扉枠103は前面枠101に対して一側を中心に開閉可能に設けられているが、開放可能に設けられていなくてもよく、例えばネジ等により前面枠101の前面に止着されていてもよい。
【0018】
ガラス扉枠102の下方に取り付けられた下扉枠103の前面上部には、遊技媒体(遊技球)としてのパチンコ球(打球)を貯留可能な遊技球貯留部としての打球供給皿(上皿とも言う)3が上面に形成された上皿部3aが、パチンコ遊技機1の前方に向けて突設されている。この上皿部3aの上面左右方向の中央部には、後述するチャンスボタン516が遊技者により押圧操作可能に設けられている。また、この上皿部3aの下方には、上面に余剰球貯留皿(下皿とも言う)4が形成された下皿部4a(突出部)が、パチンコ遊技機1の前方に向けて突設されている。その右側方には、パチンコ球を発射する打球操作ハンドル(操作ノブ)5が設けられている。また、下扉枠103の前面左右側には、左右一対のスピーカ27c,27dが配設されている。
【0019】
ガラス扉枠102の背面には、前面枠101に対して着脱可能に取り付けられた遊技盤6が配置されている。尚、遊技盤6は、それを構成する板状体と、その板状体に取り付けられた種々の部品とを含む構造体である。また、遊技盤6の前面には遊技領域7が形成されている。」

刊1-イ
「【0030】
遊技領域7の外側、つまりパチンコ遊技機1の前面周縁に沿って形成される周縁領域Z(図23(a)中、右斜め上方に傾斜する斜線で示す領域)における左右上角部には、効果音を発する2つのスピーカ27a,27bが設けられ、左右下角部には、効果音を発する2つのスピーカ27c,27dが設けられている。また、周縁領域Zには、天枠LED28a、左枠上LED28b、右枠上LED28c(図3参照)が内蔵される天発光部28Hと、左枠下LED28d、左枠LED28f(図3参照)が内蔵される左発光部28Lと、右枠下LED28e、右枠LED28g(図3参照)が内蔵される右発光部28Rと、が設けられている。尚、遊技領域7における各構造物(大入賞口等)の周囲には装飾LEDが設置されている。
【0031】
そして、この例では、左発光部28Lの所定箇所に、賞球払出中に点灯する賞球LED51が設けられ、右発光部28Rの所定箇所に、補給球が切れたときに点灯する球切れLED52が設けられている。
【0032】
賞球LED51、球切れLED52、装飾LED25a、ステージ装飾LED25b、天枠LED28a、左枠上LED28b、右枠上LED28c、左枠下LED28d、右枠下LED28e、左枠LED28f、右枠LED28gの各種発光手段は、主基板31から出力される演出制御コマンドに基づき演出制御用マイクロコンピュータ81から出力されるシリアル信号に基づいて点灯制御(LED制御)される。また、スピーカ27a?27dからの音発生制御(音制御)は、後述する音声出力基板70によって行なわれる。
【0033】
遊技者の打球操作ハンドル5の操作により図示しない打球発射装置から発射されたパチンコ球は、打球誘導レール(図示略)を通って遊技領域7に入り、その後、遊技領域7を下りてくる。パチンコ球が、第1始動口15aに入り第1始動口スイッチ14aで検出されるか、または、第2始動口15bに入り第2始動口スイッチ14bで検出されると、特別図柄の変動表示を開始できる状態であれば、特別図柄表示器8において特別図柄が変動表示を始める。特別図柄の変動表示を開始できる状態でなければ、保留記憶数を1増やす。」

刊1-ウ
「【0149】
また、ガラス扉枠102の前面周縁に設けられた天発光部28H,左発光部28L,右発光部28Rは、後述する各種レンズカバーにより前方に膨出する立体形状に形成され、中央の遊技領域7の周囲を覆うように形成されており、遊技領域7の周囲の装飾性が高められている。尚、左発光部28Lと右発光部28Rとの突出長さは非同一であり、右発光部28Rの方が左発光部28Lよりも前方に膨出されている。このように天発光部28H,左発光部28L,右発光部28Rを前方に膨出させることにより、遊技領域7を狭めることなく発光面積を拡大して装飾性を高めることが可能となる。」

刊1-エ
「【0162】
図10及び図11に示すように、ガラス扉枠102は、遊技盤6の遊技領域7を前面側から透視可能とするためのガラス板(図示略)からなる視認窓900が中央に形成される四角枠状の枠体にて構成されている。また、左側下部に形成された軸穴666を前面枠101の左側辺上部に取り付けられた軸ピン(図示略)に挿通した状態で、左側上部の軸ピン662を前面枠101の左側辺略中央部に設けられたガイド溝(図示略)に挿通することで、前面枠101に対して左側辺を中心として回動自在に軸支され、前面枠101の前面上半部を開閉可能とする。また、ガラス扉枠102の前面には、後述する各種レンズユニットが取り付けられ、視認窓900の周囲が光により装飾されるようになっている。
【0163】
図12に示すように、ガラス扉枠102は、該ガラス扉枠102の躯体を構成する前板ベースユニット901と、前板ベースユニット901の前面上辺部にネジ902aにより取り付けられる天レンズユニット902と、前板ベースユニット901の前面左辺部にネジ903aにより取り付けられる前板左サイドレンズユニット903と、前板ベースユニット901の前面右辺部にネジ904aにより取り付けられる前板右サイドレンズユニット904と、前板ベースユニット901の前面下辺部にネジ905aにより取り付けられる前板下飾りユニット905と、から主に構成されている。
【0164】
(前板ベースユニット)
図13に示すように、前板ベースユニット901は、合成樹脂材により中央に視認窓900を構成する視認開口906を有する四角枠状に形成された前板ベース907により構成されている。前板ベース907の背面上側には、前板補強板金上908がネジ908aにより取り付けられ、前板ベース907の背面左側には、前板補強板金左セット909がネジ909aにより取り付けられ、前板ベース907の背面右側には、前板補強板金右セット910がネジ910aにより取り付けられ、前板ベース907の前面下側には、前板補強板金下911がネジ911aにより取り付けられ、上下左右辺部が補強されている。」

刊1-オ
「【0169】
図14に示すように、前板ベース907の前面上部には、センター中継基板920がネジ920aにより取り付けられている。前板ベース907の前面左側には、縦長の左前板基板473aがネジ926aにより取り付けられている。左前板基板473aの前面上部には、賞球LED51が設けられるとともに、その下方には、複数の左枠LED28fが上下方向に向けて列設されている。前板ベース907の前面右側には、縦長の右前板基板473bがネジ926bにより取り付けられている。右前板基板473bの前面上部には、球切れLED52が設けられるとともに、その下方には、複数の右枠LED28gが上下に向けて列設されている。」

刊1-カ
「【0269】
(上皿ベースユニット)
図39に示すように、上皿ベースユニット1080は、前面側に膨出する上皿部3aが上部に形成された左右方向に延びる上皿ベース1085にて外形が構成されている。この上皿部3aにおける左右側には、複数の開口1086a,1086bが左右方向に形成されている。
【0270】
左側の開口1086aの背面側には、前面に複数のLEDが配設された上皿左基板1090Lが開口1086aの臨むようにネジ1090aにより取り付けられている。また、開口1086aの前面側には、上皿前インナーレンズ左1089Lがネジ1089aにより取り付けられるとともに、その背面側に配置される複数の透光孔が形成された上皿前飾り左1088L及びその背面に配置される上皿左基板保護シート1087Lが、上皿前インナーレンズ左1089Lにより上皿ベース1085の前面との間に挟持されている。
【0271】
右側の開口1086bの背面側には、前面に複数のLEDが配設された上皿右基板1090Rが開口1086bに臨むようにネジ1090bにより取り付けられている。また、開口1086bの前面側には、上皿前インナーレンズ右1089Rがネジ1089bにより取り付けられるとともに、その背面側に配置される複数の透光孔が形成された上皿前飾り右1088R及びその背面に配置される上皿右基板保護シート1087Rが、上皿前インナーレンズ右1089Rにより上皿ベース1085の前面との間に挟持されている。」

刊1-キ
「図1



刊1-ク
「図4



刊1-ケ
「図5



刊1-コ
「図6



刊1-サ
「図7



刊1-シ
「図10



刊1-ス
「図11



刊1-セ
「図12



刊1-ソ
「図23



刊1-タ
「図25



刊1-チ
「図39



(2) 認定事項

ア 刊1-ソに示した図23(a)を参照すると、刊1-イに示した段落【0030】の周辺領域Zは、ガラス扉枠102に設けられるものであると認められる。

イ 刊1-キに示した図1、刊1-クに示した図4及び刊1-ソに示した図23を参照すると、左発光部28Lは周辺領域Zの左側に設けられ、右発光部28Rは周辺領域Zの右側に設けられる点が見て取れる。
また、図23(b)に記載された935Rの部材の周囲の点線が、右枠下LED28eからの光の散乱方向を示すことは当業者にとって明らかであり、その点線は、遊技者Yの方向に加えて、遊技者Yと対向しない方向に向けても示されており、図23(b)に示された光の散乱方向と、図4に示された右発光部28Rの位置関係を対照すると、右発光部28Rの光は、遊技者Yの方向に加えて、遊技者Yと対向しない方向にも散乱するものであることが認められる。
そして、左発光部28Lは上皿部3aから左側に連続して設けられており、右発光部28Rは上皿部3aから右側に連続して設けられている点も見て取れる。
さらに、上皿部3aと、右発光部28Rとは、共通の意匠で構成されている点も見て取れる。

ウ 刊1-クに示した図4、刊1-コに示した図6及び刊1-サに示した図7を参照すると、右発光部28Rよりも上皿部3aが前方に膨出する点が見て取れる。

エ 刊1-ウに示した段落【0149】には、「ガラス扉枠102の前面周縁に設けられた天発光部28H,左発光部28L,右発光部28Rは、後述する各種レンズカバーにより前方に膨出する立体形状に形成され」と記載されており、刊1-クに示した図4と、刊1-セに示した図12及び刊1-タに示した図25の記載を対比すると、前記図4に記載された左発光部28L及び右発光部28Rは、前記図12及び図25に記載された前板左サイドレンズユニット903及び前板右サイドレンズユニット904により、それぞれ構成される点が見て取れる。

オ 刊1-オに示した段落【0169】には、「前板ベース907の前面右側には、縦長の右前板基板473bがネジ926bにより取り付けられている。右前板基板473bの前面上部には、球切れLED52が設けられるとともに、その下方には、複数の右枠LED28gが上下に向けて列設されている。」と記載され、一方、刊1-イに示した段落【0031】には、「右発光部28Rの所定箇所に、補給球が切れたときに点灯する球切れLED52が設けられている。」と記載されていることから、球切れLED52が右発光部28Rの所定箇所に設けられるとともに、右発光部28Rのその下方に、上下に向けて列設された複数の右枠LED28gが発光する部位が設けられることは、当業者にとって明らかである。

カ 刊1-クに示した図4に記載された右発光部28Rの形状、刊1-セに示した図12及び刊1-タに示した図25に記載された右発光部28Rの構成部品である前板右サイドレンズユニット904の形状を参酌すると、右発光部28Rは、遊技盤側6の側面と、遊技盤6と反対側の側面を有する点が見て取れる。

キ 刊1-エに示した段落【0162】には、「ガラス扉枠102は」「前面枠101に対して左側辺を中心として回動自在に軸支され」る点が記載されており、上記認定事項アより、右発光部28Rは周辺領域Zの右側に設けられる点が認定できることから、右発光部28Rは、ガラス扉枠102において、軸支されていない側に設けられた点が認定できる。

(3) 引用発明

上記刊1-アないし刊1-チに摘記した刊行物1の記載、及び、上記認定事項アないしキに示した認定事項を総合すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。なお、aないしpの符号は、本願発明に付したAないしPの符号に対応させて、当審にて付与した。また、括弧内に示された段落番号は刊行物1における引用箇所を示すものである。

「a 遊技者の打球操作ハンドル5の操作により打球発射装置から発射されたパチンコ球が入る遊技領域7が前面に形成された遊技盤6と(段落【0019】、【0033】、図1)、
b 遊技盤6が着脱自在に取り付けられた前面枠101と(段落【0019】、図1、図4、図5)、
c 前面枠101の前面に一側を中心に開閉可能に設けられ、遊技盤6の遊技領域7を前面側から透視可能とするためのガラス板からなる視認窓900が中央に形成されたガラス扉枠102と(段落【0017】、【0162】、図1、図4、図10、図11)、 を備え、
d ガラス扉枠102の下方に取り付けられた下扉枠103の前面上部に、上皿3が上面に形成された上皿部3aがパチンコ遊技機1の前方に向けて突設され(段落【0018】、図1、図4)、
この上皿部3aの上面左右方向の中央部には、チャンスボタン516が遊技者により押圧操作可能に設けられ(段落【0018】、図1、図4)、
この上皿部3aにおける左右側には、複数の開口1086a,1086bが左右方向に形成され、複数の開口1086a、1086bの背面側に複数のLEDが配設された上皿左基板1090L、上皿右基板1090Rが取り付けられており(段落【0269】、【0270】、【0271】、図39)、
e ガラス扉枠102の遊技領域7の外側の周縁領域Zの左側には、左枠下LED28d、左枠LED28fが内蔵される左発光部28Lが設けられ、左発光部28Lは上皿部3aから連続して設けられており(段落【0030】、図1、図4、図23、認定事項ア、イ)、
f 周縁領域Zの右側には、右枠下LED28e、右枠LED28gが内蔵される右発光部28Rが設けられ、右発光部28Rは上皿部3aから連続して設けられ、右発光部28Rの方が左発光部28Lよりも前方に膨出されており(段落【0030】、【0149】、図1、図4、図23、認定事項ア、イ)、
g 上皿部3aと、右発光部28Rとは、共通の意匠で構成されており(段落【0018】、【0030】、図1、図4、認定事項イ)、
i 上皿部3aは右発光部28Rよりも前方に膨出して形成され(図6、認定事項ウ)、
j 右発光部28Rは、ガラス扉枠102において、軸支されていない側に設けられ(段落【0162】、図4、図6、図7、認定事項キ)、
m 右発光部28Rは、遊技盤6側の側面と、遊技盤6と反対側の側面を有し(図1、図4、図12、図25、認定事項カ)、
n ガラス扉枠102は、該ガラス扉枠102の躯体を構成する前板ベースユニット901と、前板ベースユニット901の前面上辺部にネジ902aにより取り付けられる天レンズユニット902と、前板ベースユニット901の前面左辺部にネジ903aにより取り付けられる前板左サイドレンズユニット903と、前板ベースユニット901の前面右辺部にネジ904aにより取り付けられる前板右サイドレンズユニット904と、前板ベースユニット901の前面下辺部にネジ905aにより取り付けられる前板下飾りユニット905と、から主に構成され(段落【0163】)、
左発光部28L及び右発光部28Rは、前板左サイドレンズユニット903及び前板右サイドレンズユニット904により、それぞれ構成され(段落【0149】、図4、図12、図25、認定事項エ)、
前板ベースユニット901は、合成樹脂材により中央に視認窓900を構成する視認開口906を有する四角枠状に形成された前板ベース907により構成され、前板ベース907の前面右側には、縦長の右前板基板473bが取り付けられ、右前板基板473bの前面上部には、球切れLED52が設けられるとともに、その下方には、複数の右枠LED28gが上下に向けて列設され(段落【0164】、【0169】、図14)、
右発光部28Rの所定箇所に、補給球が切れたときに点灯する球切れLED52が設けられ、その下方に、上下に向けて列設された複数の右枠LED28gが発光する部位が設けられ(段落【0031】、認定事項オ)、
右発光部28Rの光は、遊技者Yと対向する方向及び遊技者Yと対向しない方向に散乱するものである(図4、図23、認定事項イ)
p パチンコ遊技機1(段落【0016】)。」

2 刊行物2

当審における拒絶理由に引用され、本願の原出願前に頒布された刊行物2には、以下の記載が存在する。

(1) 遊技者が操作可能なダイヤル操作部及び押圧操作部405に関して

刊2-ア
「【0264】
また、扉枠5では、遊技窓101の下側中央で皿ユニット300の上部中央に配置された操作ユニット400のダイヤル操作部401及び押圧操作部405と対応したLED430b,432dが、操作ユニット400を発光装飾させる操作部グループ109とされている。この操作部グループ109のLED430b,432dを適宜発光させることで、ダイヤル操作部401や押圧操作部405を発光装飾させることができ、ダイヤル操作部401や押圧操作部405の操作タイミングや操作方向等を遊技者に知らせることができるようになっている。」

上記記載より、遊技者によって操作可能な操作部がダイヤル操作部401及び押圧操作部405からなる複数の操作部である点が認定でき、また、ダイヤル操作部401の操作方向を遊技者に知らせることができるものであるから、第一操作態様にて操作させる第一操作演出と、前記第一操作態様とは異なる第二操作態様にて操作させる第二操作演出とを含む複数の操作演出を実行可能であり、前記第一操作演出が実行される場合と、前記第二操作演出が実行される場合とで操作前の前記皿発光装飾手段の前記発光装飾部の発光態様が異なるものである構成が認定できる。

よって、刊行物2には、
「遊技者によって操作可能な操作部に関して、前記操作部は複数の操作部であり、前記皿発光装飾手段が、前記複数の操作部のうちの特定の操作部に対して、第一操作態様にて操作させる第一操作演出と、前記第一操作態様とは異なる第二操作態様にて操作させる第二操作演出とを含む複数の操作演出を実行可能であり、前記第一操作演出が実行される場合と、前記第二操作演出が実行される場合とで操作前の前記皿発光装飾手段の前記発光装飾部の発光態様が異なるものである点」(以下、「刊行物2記載事項1」という。)が記載されている。

(2) 演出光を拡散させる構成に関して

刊2-イ
「【0250】
これらサイドレンズ210,250の後側には、サイドインナーレンズ212,252が配置されており、サイドインナーレンズ212,252は、その本体部212a,252aが周レンズ部210a,250aの後面に対して所定距離離間した位置となるように形成されていると共に、板状の導光部212b,252bが放射レンズ部210b,250bの後面に対して可及的に接近した位置まで延出するように形成されている。このサイドインナーレンズ212,252の本体部212a,252aには、詳細な図示は省略するが、その表面に微細なプリズムが複数形成されており、後側に配置された装飾基板214,216,254,256からの光を拡散させることができるようになっている。」

刊2-ウ
「図59



上記刊2-ウに示した図59の記載より、装飾基板214,216,254,256からの光が演出光であることは明らかであり、サイドインナーレンズ212,252が後ろ側に配置されるサイドレンズ210,250は、発光部であることも明らかであるから、上記刊2-イ及び刊2-ウの記載より、刊行物2には、演出光を発光させる発光部に前記演出光を拡散させる拡散部を設ける点(以下、「刊行物2記載事項2」という。)が記載されているといえる。

3 刊行物3

当審における拒絶理由に引用され、本願の原出願前に頒布された刊行物3には、遊技機枠の意匠に関して、以下の図面が記載されている。

「【左上方からみた斜視図】


【正面図】



上記の【左上方からみた斜視図】及び【正面図】を参照すると、中央に形成された窓状の部分の右側に膨出する部分と前記窓状の部分の下部とが一体的な装飾とされており、前記窓状の部分の左側の部分と、前記一体的な装飾とされた部分とが異なる装飾とされた構成が記載されており、「遊技機枠において、窓状の部分の左側に膨出する部分と、前記窓状の部分の右側に膨出する部分及び前記窓状の部分の下方に膨出する部分とが、異なる装飾とされた構成」(以下、「刊行物3記載事項」という。)が記載されているといえる。

第5 対比

引用発明1と本願発明とを対比する。なお、以下の見出し(a)ないし(p)は、本願発明のAないしPに対応させている。

(a) 引用発明1の構成aにおける「遊技者の打球操作ハンドル5の操作により打球発射装置から発射されたパチンコ玉が入る遊技領域7が前面に形成された遊技盤6」は、本願発明の「遊技者の操作によって遊技媒体が打込まれる遊技領域を有した遊技盤」に相当する。
よって、引用発明1の構成aは、本願発明の構成Aに相当する。

(b) 引用発明1の構成bにおける「遊技盤6が着脱自在に取り付けられた前面枠101」は、本願発明の「前記遊技盤を脱着可能に支持する本体枠」に相当する。
よって、引用発明1の構成bは、本願発明の構成Bに相当する。

(c) 引用発明1の構成cにおける「前面枠101の前面に一側を中心に開閉可能に設けられ」ることは、本願発明の「本体枠の前面に対して開閉可能に支持される」ことに相当する。
また、引用発明1の構成cにおける「遊技盤6の遊技領域7を前面側から透視可能とするためのガラス板からなる視認窓900」は、本願発明の「閉鎖した時に前記本体枠に支持された前記遊技盤の少なくとも前記遊技領域が遊技者側へ臨む遊技窓」に相当する。
そして、引用発明1の構成cにおける「視認窓900が中央に形成されたガラス扉枠102」は、本願発明の「遊技窓を有した扉枠」に相当する。
よって、引用発明1の構成cは、本願発明の構成Cに相当する。

(d)ア 引用発明1の構成dにおける「上皿3」は、本願発明の「前記遊技媒体を貯留可能な皿部」に相当する。
イ 引用発明1の構成dにおいて、「複数の開口1086a,1086bが左右方向に形成され、複数の開口1086a、1086bの背面側に複数のLEDが配設された上皿左基板1090L、上皿右基板1090Rが取り付けられ」た部位は、発光装飾が可能な部位であることは明らかであるから、当該部位は、本願発明の「発光装飾可能な発光装飾部」に相当する。
ウ 引用発明1の構成dにおける「遊技者により押圧操作可能に設けられた」「チャンスボタン516」は、本願発明の「遊技者によって操作可能な」「操作部」に相当し、引用発明1の構成dにおける「チャンスボタン516が遊技者により押圧操作可能に設けられ」ることと、本願発明の「遊技者によって操作可能な複数の操作部」「を有する」こととは、「遊技者によって操作可能な」「操作部」「を有する」点で共通する。
エ 引用発明1の構成dにおける「上皿部3a」は、「上皿3が上面に形成され」、発光装飾が可能な部位を備え、「チャンスボタン516が」「遊技者により押圧操作可能に設けられ」るものであるから、本願発明の「遊技媒体を貯留可能な皿部と、発光装飾可能な発光装飾部と、遊技者によって操作可能な」「操作部と、を有する皿発光装飾手段」に相当する。
オ 引用発明1の「ガラス扉枠102の下方に取り付けられた下扉枠103の前面上部に、」「上皿部3aがパチンコ遊技機1の前方に向けて突設され」ることは、本願発明の「前記遊技窓の下方に」「皿発光装飾手段」が「前方に膨出して」「形成され」ることに相当する。
カ よって、引用発明1と本願発明とは、「前記遊技窓の下方に形成され、前方に膨出して前記遊技媒体を貯留可能な皿部と、発光装飾可能な発光装飾部と、遊技者によって操作可能な」「操作部と、を有する皿発光装飾手段」を備える点で共通する。

(e) 引用発明1の構成eにおける「ガラス扉枠102の遊技領域7の外側の周縁領域Zの左側」は、本願発明の「前記遊技窓の外周の所定領域」に相当し、引用発明1の構成eにおける「左発光部28L」は、本願発明の「第一発光装飾手段」に相当し、引用発明1の構成eにおける「左発光部28L」が「上皿部3aから連続して設けられ」ることは、本願発明の「第一発光装飾手段」が「皿発光装飾手段に近接して設けられ」ることに相当する。
そして、引用発明1において、「左発光部28L」が装飾のために設けられ、遊技者側へ向けて発光可能とされることは当業者にとって明らかである。
よって、引用発明1の構成eは、本願発明の構成Eに相当する。

(f) 引用発明1の構成fにおける「周縁領域Zの右側」は、本願発明の「前記遊技窓の外周の前記所定領域とは異なる領域」に相当し、引用発明1の構成fにおける「右発光部28R」は、本願発明の「第二発光装飾手段」に相当し、引用発明1の構成fにおける「右発光部28Rの方が左発光部28Lよりも前方に膨出されて」いることは、本願発明の「第二発光装飾手段」が「前記第一発光装飾手段よりも前方に膨出し発光可能な膨出部を有する」ことに相当する。
よって、引用発明1の構成fは、本願発明の構成Fに相当する。

(g) 引用発明1の構成gにおける「上皿部3aと、右発光部28Rは、共通の意匠で構成されて」いることと、本願発明の「前記皿発光装飾手段を上方からみたときの前記皿発光装飾手段による装飾と前記第二発光装飾手段を内方から見たときの前記第二発光装飾手段による装飾とで一体的な装飾をなして」いることは、前記皿発光装飾手段による装飾と前記第二発光装飾手段による装飾とが関連するものである点で共通する。

(i) 引用発明1の構成iにおける「上皿部3aは右発光部28Rよりも前方に膨出して形成され」ることは、本願発明の「前記皿発光装飾手段は、前記第二発光装飾手段の前記膨出部よりもさらに前方に膨出して形成され」ることに相当する。
よって、引用発明1の構成iは、本願発明の構成Iに相当する。

(j) 引用発明1の構成jにおける「右発光部28Rは、ガラス扉枠102において、軸支側でない側に設けられた」ことは、本願発明の「前記本体枠の前面に対して開閉可能に支持された前記扉枠の開放側に前記膨出部が位置」することに相当する。
よって、引用発明1の構成jは、本願発明の構成Jに相当する。

(m) 上記(f)より、引用発明1の「右発光部28R」は「左発光部28Lよりも前方に膨出されて」いるものであるから、「右発光部28R」は、本願発明の「膨出部」に相当する部分を有するものであり、引用発明1の構成mにおける「右発光部28R」が「遊技盤6側の側面と、遊技盤6と反対側の側面を有」することは、本願発明の「前記第二発光装飾手段の前記膨出部」が「内側面部」と「外側面部とを有」することに相当し、引用発明1の「遊技盤6側の側面」が「遊技盤と対向した遊技者から視認容易となる」面であり、「遊技盤6と反対側の側面」が「遊技盤と対向した遊技者から視認困難となる」面であることは、当業者にとって明らかである。
よって、引用発明1の構成mは、本願発明の構成Mに相当する。

(n)ア 引用発明1は、構成nにおいて「右発光部28Rの所定箇所に、補給球が切れたときに点灯する球切れLED52が設けられ、その下方に、上下に向けて列設された複数の右枠LED28gが発光する部位が設けられ」ていることが特定されているから、「右発光部28R」は発光するものである。
よって、引用発明1における「右発光部28R」の発光は、本願発明の「第二発光装飾手段からの発光」に相当する。
イ また、引用発明1は、構成mにおいて、「右発光部28Rは、遊技盤6側の側面と、遊技盤6と反対側の側面を有」するものであり、構成nにおいて「右発光部28Rの光は、遊技者Yと対向する方向及び遊技者Yと対向しない方向に散乱するものである」ことが特定されていることから、右発光部28Rは、遊技盤6側に向けた光と、遊技盤6と反対側に向けた光を放つことは当業者にとって明らかである。
ウ そして、引用発明1における右発光部28Rの遊技盤6側に向けた光は、本願発明の「前記遊技盤と対向した遊技者から視認容易となる前記内側面部を介し前記遊技窓側である遊技機内側にむけて発光される内側発光」に相当し、引用発明1における右発光部28Rの遊技盤6と反対側に向けた光は、本願発明の「前記遊技盤と対向した遊技者から視認困難となる前記外側面部を介し遊技機外側にむけて発光される外側発光」に相当する。
エ よって、本願発明と引用発明1は、「第二発光装飾手段からの発光は、」「遊技盤と対向した遊技者から視認容易となる」「内側面部を介し」「遊技窓側である遊技機内側にむけて発光される内側発光と、前記遊技盤と対向した遊技者から視認困難となる」「外側面部を介し遊技機外側にむけて発光される外側発光と、がある」点で共通する。
オ また、引用発明1の構成nにおける「補給球が切れたときに点灯する球切れLED52」は、遊技者及び遊技ホールの従業員に対する報知を目的として点灯可能であることは、当業者にとって明らかである。
カ よって、引用発明1における「補給球が切れたときに点灯する球切れLED52」を点灯可能とすることと、本願発明の「遊技ホールの従業員に対して、様々な情報を報知するための複数種類の報知光を前記外側発光として、前記外側面部を介し遊技機外側にむけて発光可能と」することとは、「遊技ホールの従業員に対して、」「情報を報知するための」「報知光を」「発光可能と」する点で共通する。
キ したがって、引用発明1の構成m、nにおける「右発光部28Rは、遊技盤6側の側面と、遊技盤6と反対側の側面を有し」、「右発光部28Rの光は、遊技者Yと対向する方向及び遊技者Yと対向しない方向に散乱するものであ」り、「右発光部28Rの所定箇所」に「球切れLED52」及び「その下方に、上下に向けて列設された複数の右枠LED28g」が設けられ、「補給球が切れたときに点灯する球切れLED52」を点灯可能とすることと、本願発明の「前記第二発光装飾手段からの発光は、前記遊技盤と対向した遊技者から視認容易となる前記内側面部を介し前記遊技窓側である遊技機内側にむけて発光される内側発光と、前記遊技盤と対向した遊技者から視認困難となる前記外側面部を介し遊技機外側にむけて発光される外側発光と、があるとともに、前記外側面部が視認容易な遊技ホールの従業員に対して、様々な情報を報知するための複数種類の報知光を前記外側発光として、前記外側面部を介し遊技機外側にむけて発光可能と」することとは、「第二発光装飾手段からの発光は」、「前記遊技盤と対向した遊技者から視認容易となる前記内側面部を介し前記遊技窓側である遊技機内側にむけて発光される内側発光と、前記遊技盤と対向した遊技者から視認困難となる前記外側面部を介し遊技機外側にむけて発光される外側発光と、があるとともに、」「遊技ホールの従業員に対して」「情報を報知するための」「報知光を」「発光可能と」する点で共通する。

(p) 引用発明1の構成pにおける「パチンコ遊技機1」は、本願発明の「遊技機」に相当する。

以上のことから、本願発明と引用発明1は、以下の点で一致する。

<一致点>
A 遊技者の操作によって遊技媒体が打込まれる遊技領域を有した遊技盤と、
B 前記遊技盤を脱着可能に支持する本体枠と、
C 前記本体枠の前面に対して開閉可能に支持されると共に閉鎖した時に前記本体枠に支持された前記遊技盤の少なくとも前記遊技領域が遊技者側へ臨む遊技窓を有した扉枠と、
D’ 前記遊技窓の下方に形成され、前方に膨出して前記遊技媒体を貯留可能な皿部と、発光装飾可能な発光装飾部と、遊技者によって操作可能な操作部と、を有する皿発光装飾手段と、
E 前記皿発光装飾手段に近接して設けられ、前記遊技窓の外周の所定領域を装飾し、遊技者側へ向けて発光可能とされた第一発光装飾手段と、
F 前記遊技窓の外周の前記所定領域とは異なる領域を装飾し、前記第一発光装飾手段よりも前方に膨出し発光可能な膨出部を有する第二発光装飾手段と、
を備え、
G’ 前記皿発光装飾手段による装飾と前記第二発光装飾手段による装飾とが関連するものであり、
I 前記皿発光装飾手段は、前記第二発光装飾手段の前記膨出部よりもさらに前方に膨出して形成され、
J 前記本体枠の前面に対して開閉可能に支持された前記扉枠の開放側に前記膨出部が位置し、
M 発光可能な前記膨出部は、前記遊技盤と対向した遊技者から視認容易となる内側面部と、前記遊技盤と対向した遊技者から視認困難となる外側面部とを有し、
N’ 前記第二発光装飾手段からの発光は、前記遊技盤と対向した遊技者から視認容易となる前記内側面部を介し前記遊技窓側である遊技機内側にむけて発光される内側発光と、前記遊技盤と対向した遊技者から視認困難となる前記外側面部を介し遊技機外側にむけて発光される外側発光と、があるとともに、遊技ホールの従業員に対して情報を報知するための報知光を発光可能とされた
P 遊技機。

そして、両者は、以下の点で相違する。

<相違点1> (構成D、K、Lに関して)
遊技者によって操作可能な操作部の構成及び皿発光装飾手段の演出に関して、本願発明は、前記操作部は複数の操作部であり、前記皿発光装飾手段が、前記複数の操作部のうちの特定の操作部に対して、第一操作態様にて操作させる第一操作演出と、前記第一操作態様とは異なる第二操作態様にて操作させる第二操作演出とを含む複数の操作演出を実行可能であり、前記第一操作演出が実行される場合と、前記第二操作演出が実行される場合とで操作前の前記皿発光装飾手段の前記発光装飾部の発光態様が異なるものであるのに対して、引用発明1は、そのような構成を有しない点。

<相違点2> (構成Gに関して)
皿発光装飾手段による装飾と第二発光装飾手段による装飾の関連に関して、本願発明は、前記皿発光装飾手段を上方からみたときの前記皿発光装飾手段による装飾と前記第二発光装飾手段を内方から見たときの前記第二発光装飾手段による装飾とで一体的な装飾をなしているのに対して、引用発明1は、上皿部3aと、右発光部28Rとは、共通の意匠で構成されてはいるものの、上皿部3aを上方からみたときの装飾と右発光部28Rを内方から見たときの装飾とが一体的な装飾をなすものか否かが特定されていない点。

<相違点3> (構成Hに関して)
第一発光装飾手段による装飾と、第二発光装飾手段と皿発光装飾手段による装飾の関連に関して、本願発明は、第一発光装飾手段による装飾は、第二発光装飾手段と皿発光装飾手段による一体的な装飾とは異なる装飾であるのに対して、引用発明1は、その点が特定されていない点。

<相違点4> (構成N、Oに関して)
第二発光装飾手段からの発光に関して、本願発明は、遊技ホールの従業員に対して、様々な情報を報知するための複数種類の報知光を前記外側発光として、前記外側面部を介し遊技機外側にむけて発光可能とし、前記報知光を発光する箇所は、遊技に対応した演出光も発光可能とされているのに対して、引用発明1は、その点が特定されていない点。

<相違点5> (構成Oに関して)
第二発光装飾手段の発光可能な箇所に関して、本願発明は、当該箇所に光を拡散させる拡散部を有するのに対して、引用発明1は、その点が不明である点。

第6 検討・判断

1 相違点についての検討

(1) 相違点1について

刊行物2には、上記「第4」「2 刊行物2」において指摘したように、刊行物2記載事項1が記載されている。
そして、引用発明1と刊行物2記載事項1は、遊技者が操作可能な操作部を有する遊技機という共通の技術分野に属し、また、遊技者の興趣性の向上という共通の課題を有するものであるから、引用発明1の遊技者によって操作可能な操作部の構成及び皿発光装飾手段の演出に、遊技者の興趣性の向上を動機付けにして、刊行物2記載事項1を採用し、本願発明の上記相違点1に係る構成を成すことは、当業者が容易に想到し得ることである。

(2) 相違点2について

引用発明1の構成gにおける「上皿部3aと、右発光部28Rは、共通の意匠で構成されて」いることは、そのことによって、遊技者に対し、それらが相互に関連して装飾効果をもたらすものであることが当業者にとって明らかである。
そして、その装飾効果が遊技中の遊技者から視認可能な部位において奏されるものであり、引用発明1において、遊技者にとって視認可能な部位が、上皿部3aの上面側及び右発光部28Rの内方側であることもまた当業者にとって明らかであるから、引用発明1においても、共通の意匠で構成されている上皿部3aと、右発光部28Rを、遊技者にとって視認可能な部位である上皿部3aの上面側及び右発光部28Rの内方側とで一体的な装飾をなすように構成されているものと認められ、本願発明の上記相違点2に係る構成は、実質的な相違点とは認められない。

(3) 相違点3について

刊行物3には、上記「第4」「3 刊行物3」において指摘したように、刊行物3記載事項が記載されている。
そして、引用発明1と刊行物3記載事項は、中央に形成された窓状の部分の右側に膨出する部分を有する遊技機という共通の技術分野に属し、また、遊技機における意匠性を高めるという共通の課題を有するものであるから、引用発明1における左発光部28L、右発光部28R及び上皿部3aの装飾に関して、刊行物3記載事項を適用し、左発光部28Lの装飾を、右発光部28R及び上皿部3aの装飾とは異なる装飾とし、本願発明の上記相違点3に係る構成を成すことは、当業者が容易に想到し得ることである。

(4) 相違点4について

引用発明1は、構成mにおいて特定されているように、右発光部28Rが、「遊技盤6側の側面と、遊技盤6と反対側の側面を有」するものであるから、上記「第5 対比」「(n)」「イ」において検討したように、右発光部28Rは、遊技盤6側に向けた光と、遊技盤6と反対側に向けた光を放つことは当業者にとって明らかである。そして、球切れLED52は、右発光部28Rに設けられるものであるから、球切れLED52の点灯に伴う光も、遊技盤6側に向けた光及び遊技盤6と反対側に向けた光として発光されることは明らかであり、引用発明1も、本願発明と同様に、報知光を外側発光として、外側面部を介し遊技機外側にむけて発光可能であると認められる。
してみると、本願発明の相違点4に係る構成のうち、報知光を外側発光として、外側面部を介し遊技機外側にむけて発光可能とする点は、引用発明1も備えていると認められ、その点は実質的な相違点ではない。
また、パチンコ遊技機において、扉枠に設けた発光装飾部が、遊技店の従業員に対して、様々な情報を報知するための複数種類の報知光を発光可能であるとともに、遊技者に対して行われる演出光を発光可能であることは、下記のア及びイに示すように、原出願前に周知の事項(以下、「周知事項1」という。)である。

ア 原出願前に頒布された刊行物である特許第3942254号公報には、以下の記載がある(下線は当審で付与した。以下、同様。)。

「【0039】
上記の手順にて取り付けた第1発光部21は、前面カバー部材15における上部に位置し、図4に示すように、第1ランプ基板40のLED40aが遊技者側(即ち、前方斜め下向き)に向いた状態(傾倒状態)で配置される。
そして、この状態で第1発光部21が発光した場合には、この第1発光部21が、前面カバー部材15の膨出部分における内周面15Bであって上縁部に設けてあるため、遊技者の位置からは第1発光部21の発光状態が視認し易い。
一方、近隣のパチンコ遊技機1で遊技を行っている遊技者等からは、前面カバー部材15の膨出部分が第1発光部21からの光を遮光するので、この第1発光部21の発光状態が視認し難い。
【0040】
また、第2発光部22は、前面カバー部材15における上端部に位置する。そして、第2発光部22を構成する第2ランプ基板に関し、その前方、上方及び左右両側方は、前面カバー部材15における外周面15Aの一部を構成すると共に、透光性を備えた第2レンズ部材44で覆われているので、第2ランプ基板43からの光は、第2レンズ部材44を通じてパチンコ遊技機1の前方や左右両側方から視認することができる。即ち、島設備の両脇からでも第2発光部22の発光状態を視認することができる。従って、遊技店の従業員の待機位置からもこの第2発光部からの光を容易に認識することができる。」
「【0046】
そして、役物制御装置46は、主として遊技者に知らせたい情報の報知を、第1ランプ基板40(第1発光部21)を発光させることにより行い(図6参照)、主として遊技店の従業員に知らせたい情報の報知を、第2ランプ基板43(第2発光部22)を発光させることにより行っている(図7参照)。さらに、遊技者と従業員の双方に知らせたい情報については、第1ランプ基板40と第2ランプ基板43の両方を発光させることにより行っている(図8参照)。」
「【0048】
また、不正行為に係る場合やパチンコ遊技機1の保守を必要とする場合については、主として遊技店の従業員に知らせたい情報として扱い、第2ランプ基板43(第2発光部22)の発光により報知を行っている。具体的に例示すると、前面カバー部材15や前面枠5が開放された場合の報知、球詰まり等のエラーの報知、パチンコ遊技機1に貯留してある遊技球の量が不足した場合等である。
そして、この報知は、従業員等からは視認し易く、尚且つ、遊技者からは視認し難いので、従業員は速やかに保守を行うことができると共に、不正行為の発見を確実にすることができる。
【0049】
さらに、補助遊技で大当たりした場合については、遊技者と従業員の双方に知らせたい情報として扱い、第1ランプ基板40と第2ランプ基板43の両方の発光により報知を行っている。
そして、この報知は、遊技者からも従業員等からも視認し易いので、遊技者は大当たりの喜びを得ることができるし、従業員は直ちに球箱を運んでくることができる。」

イ 原出願前に頒布された刊行物である特開2010-12130号公報には、以下の記載がある。

「【0054】
また、貯留皿30、扉枠5の前面の遊技窓42及び扉枠5の周囲には遊技演出効果を奏するための扉枠装飾ランプ5aa,5b?5hを内蔵するランプカバーや装飾板によって覆われている。このランプカバーや装飾板は、図4及び図5に示すように凹凸をもって形成されている。」
「【1021】
・・・例えばホールの店員に対して遊技者の遊技を注意する旨を伝えるために注意演出として図140に示した扉枠装飾ランプ5gの点滅制御を行い・・・。」
「【1144】
・・・リトライ動作が異常状態であると判断すると、図186のリトライ動作監視処理におけるステップS552でリトライエラー情報を払出内蔵RAMの出力情報記憶領域にセット(記憶)する。これにより、上述したように、エラーLED表示器1730に「リトライエラー」である旨を報知する数字「5」が表示されるとともに、扉枠装飾ランプ5hが所定の色(本実施形態では、赤色)で発光してリトライ動作が異常状態である旨を報知することができる。・・・ホールの店員等は、計数スイッチ462と払出制御基板715とを電気的に接続するハーネスの断線や計数スイッチ462の不具合等を極めて早く把握することができる。」

そして、引用発明1と周知事項1とは、発光部を用いて遊技機の情報を報知するという共通の課題を有するものであるから、複数種類の情報を効率よく報知可能とすることの動機付けとして、引用発明1における球切れLED52を用いた構成に、周知事項1を適用することは、当業者が容易になし得ることである。
したがって、本願発明の上記相違点4に係る構成は、引用発明1に周知事項1を適用することによって、当業者が容易に想到し得ることである。

(5) 相違点5について

パチンコ遊技機において、発光可能な箇所に光を拡散させる拡散部を有することは、例えば、上記「第4」「2 刊行物2」「(2) 演出光を拡散させる構成に関して」において、刊行物2記載事項2として示したように、上記刊行物2にも記載されており、このような構成は、原出願前に周知の事項である(以下、「周知事項2」という。)。
したがって、本願発明の上記相違点5に係る構成は、引用発明1に周知事項2を適用することによって、当業者が容易に想到し得ることである。

(6) 本願発明の奏する作用効果について

本願発明の奏する作用効果は、引用発明1、刊行物2記載事項1、刊行物3記載事項、周知事項1、及び、周知事項2に基づき、当業者が予測できる範囲のものであり、格別なものではない。

2 令和1年5月17日付け意見書における請求人の主張への反論

請求人は、令和1年5月17日付け意見書の「[3]本願発明が特許されるべき理由」において、以下の主張を行っている。なお、下線は、当審において付与したものである。

「・・・引用文献1は審判合議体がご認定されております通り、本願発明の「膨出部」に相当する「右発光部28R」が開示され、加えて段落[0031]に「右発光部28Rの所定箇所に、補給球が切れたときに点灯する球切れLED52が設けられている。」と記載されておりますが、図14などから明らかなように「球切れLED52」は遊技盤と対向した遊技者から視認困難な箇所に配置されているものではありません。そもそも、引用文献1には遊技盤と対向した遊技者から視認困難な箇所として「右発光部28R」の右側面や「天発光部28H」の上面などを有しておりますが、図4-図6の記載から明らかなようにこのような遊技盤と対向した遊技者から視認困難な箇所に発光部が設けられておりません。
また、引用文献4においては、段落[0023]などに「補給球があらかじめ定められた貯留量を下回っているときに点灯する球切れランプ52が設けられている」という記載がされておりますが、引用文献3に記載の遊技機を正面からみた正面図である図1から明らかなように「球切れランプ52」は遊技盤と対向した遊技者から視認容易な箇所に設けられております。なお、引用文献3の段落[0249]には「また、上記の実施の形態では、賞球ランプ51と球切れランプ52とが分かれて設置されていたが、1つのランプ等の発光体で兼用してもよい。」といった記載もされておりますが、補正後の本願発明のように遊技盤と対応した遊技者から視認困難な箇所に「球切れランプ52」を設けるといった記載や示唆は一切されておりません。
さらに、引用文献5は段落[0014]に「遊技機には、異常が行われていることを報知するために音声および光の少なくとも一方を出力する報知部を設けても良い。報知部は、異常の報知専用としてもよいし、遊技中の演出に用いるスピーカやランプを兼用してもよい。」と記載がされておりますが、あわせて段落[0014]に「異常の報知がされていることを遊技者に認識させることで遊技者の注意を喚起するようにしたりすることが可能となる。」と記載されていることから、遊技ホールの従業員に対して行う異常の報知を遊技盤と対応した遊技者が気づき難くなるように視認困難な箇所で行っている補正後の本願発明と明らかに異なります。
なお、引用文献2および引用文献3は、いずれも遊技ホールの従業員に対して報知するための報知光を発光している箇所が設けられているといった記載は一切されておりません。仮に、引用文献2および引用文献3において報知光を発光する箇所が設けられていたとしても、遊技盤と対向した遊技者から視認困難と推定可能な箇所には発光部が備えられておりません。」

しかしながら、本願発明は、「前記外側面部が視認容易な遊技ホールの従業員に対して、様々な情報を報知するための複数種類の報知光を前記外側発光として、前記外側面部を介し遊技機外側にむけて発光可能と」する点が特定されたものであり、遊技盤と対向した遊技者から視認困難な箇所に報知光を発光する発光部を設ける点は、なんら特定されていない。
してみると、請求人の上記意見書における主張は、請求項1に記載された事項に基づかないものであり、採用することはできない。
そして、引用発明1においても、「前記外側面部が視認容易な遊技ホールの従業員に対して、様々な情報を報知するための複数種類の報知光を前記外側発光として、前記外側面部を介し遊技機外側にむけて発光可能」であることは、上記「1 相違点についての検討」「(4) 相違点4について」において検討したとおりである。

したがって、請求人の意見書における上記の主張を参酌しても、本願発明が格別な進歩性を有するものとは認められない。

第7 結語

以上のとおり、本願発明は、引用発明1に、刊行物2記載事項1、刊行物3記載事項、周知事項1、及び、周知事項2を適用することによって、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-09-18 
結審通知日 2019-09-19 
審決日 2019-10-01 
出願番号 特願2016-160816(P2016-160816)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 廣瀬 貴理  
特許庁審判長 ▲吉▼川 康史
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
田邉 英治
発明の名称 遊技機  

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