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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65D
管理番号 1357211
審判番号 不服2019-4413  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-04 
確定日 2019-12-03 
事件の表示 特願2014-260983「小出し可能な複合液出しキャップ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年7月7日出願公開、特開2016-120938、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年12月24日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年8月9日付け :拒絶理由通知
平成30年10月11日 :意見書の提出
平成30年12月20日付け :拒絶査定
平成31年4月4日 :審判請求書の提出、同時に手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成30年12月20日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-4に係る発明は、以下の引用文献1-3に記載された発明、引用文献4に例示される周知技術及び例示するまでもない周知技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2009-040451号公報
2.特開2005-075357号公報
3.特開2010-126191号公報
4.実願昭51-132231号(実開昭53-049709号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正によって請求項1に「前記連通孔は前記頂板部の片側部における特定領域に配設され、前記液溜め部は前記特定領域以外の領域に配設されており、」という事項を追加する補正がなされた。
当該補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか、また、新規事項を追加するものではないかについて検討する。
まず、当該補正は、当該補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「連通孔」及び「液溜め部」について、その配設箇所を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、「連通孔」及び「液溜め部」については、出願当初の図面、特に図1(本発明の複合液出しキャップの代表的な形態の側断面を容器口部と共に示す図。)、図5(図1の複合液出しキャップについて、上蓋及び第2の液出しキャップが開放された状態での第1の液出しキャップの上面を、第2の液出しキャップ及び上蓋と共に示す図。)及び図7(図1の複合キャップにおいて、第2の液出しキャップが閉じられた状態で内容液を小出しする際の液溜め部の状態を示す側断面図。)と共に、出願当初の明細書には「上記の第1の液出しキャップの頂板部9には、無端状スコア19aが形成されており、このスコア19aで囲まれる領域には、立ち上がって延びている支柱19bを介して引っ張りリング19cが設けられており、このリング19cを引っ張り上げることにより、無端状スコア19aが引き裂かれ、無端状スコア19aで囲まれた領域が容器の内部に通じる連通孔20となるようになっている。このような無端状スコア19a(連通孔20)の近傍には、頂板部9の上面から液溜め用仕切り壁21が無端状に立ち上がっている。この仕切り壁21により囲まれる領域が液溜め部Zとなり、第2の液出しキャップ3から一定量の内容液を小出しするために、この液溜め部Zに内容液が一時的に収容されることとなる(後述する図7参照)。」(段落0017)、「・・・図示の実施形態(図4、図5参照)においては、これらバンドの中心軸線X、Yが90度の角度をなすように離れて位置している。・・・」(段落0022)及び「・・・この複合キャップの軸線Pに対して傾斜した形態を有している。・・・」(段落0033)と記載されているから、前記補正によって限定された事項は、出願当初の明細書等の記載からみて自明な事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-4に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」乃至「本願発明9」という。)は、平成31年4月4日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定されるとおりの発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
容器口部に装着される第1の液出しキャップと、第1の液出しキャップに開閉自在にヒンジ連結された第2の液出しキャップとからなる複合液出しキャップであって、
第1の液出しキャップは、容器口部に係合固定される筒状側壁と、該筒状側壁の上端部を閉じるように設けられている頂板部とを含み、
前記頂板部には、容器内部に通じる連通孔と、一定量の液を溜める液溜め部と、第2の液出しキャップを保持するための第1の係合突起とが形成されており、前記連通孔は前記頂板部の片側部における特定領域に配設され、前記液溜め部は前記特定領域以外の領域に配設されており、
第2の液出しキャップは、第1の液出しキャップの筒状側壁にヒンジ連結され且つ前記第1の係合突起と係合し得る第2の係合突起を備えた環状壁と、該環状壁の上端を閉じるように形成され且つ液出し用案内筒とを備えた天井部とを含み、
前記液出し用案内筒には、液小出し用パイプの先端が嵌合固定されており、
第2の液出しキャップを閉じた状態では、前記液小出し用パイプの他端が前記液溜め部の底面部に対面するように位置し、前記連通孔を通して該液溜め部に収容された容器内容液が該液小出し用パイプから液出しされると共に、
第2の液出しキャップを開放した状態では、第1の液出しキャップの前記連通孔を通して容器内容液の液出しが行われること、
を特徴とする複合液出しキャップ。」
本願発明2乃至本願発明4は、本願発明1を引用した発明である。

第5 引用文献、引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面と共に次の事項が記載されている。なお、以下の下線は、理解の便宜のため、当審で付した。
「合成樹脂製の一体的な蓋付きキャップにして、
頂板部を上下に貫通して、該頂板部から上方に所定長さ突出する外側吐出筒部からなる大径の第一の注口を備えると共に、該第一の注口内において橋絡、保持され、該第一の注口から開口部を通じて外方に所定長さ突出する内側吐出筒部からなる、該第一の注口よりも開口径の小さな小径の第二の注口を備えた、容器の口頸部に取り付けられるキャップ本体と、
頂板部の下面から所定長さ垂下して、該キャップ本体における前記外側吐出筒部の外周面に液密に嵌合せしめられるように構成された筒状栓体を備えると共に、前記内側吐出筒部の上部外周部に液密に嵌合せしめられる、該頂板部の中央部を上下に貫通して設けられた開口部を有する一方、該キャップ本体の上部周縁部の一ヶ所において該キャップ本体に一体的に連結された第一のヒンジ部を有し、該キャップ本体の上部周縁部に着脱可能に嵌着せしめられ得るように構成された第一の蓋体と、
頂板部の下面から所定長さ垂下して、前記キャップ本体における前記第二の注口に液密に嵌合せしめられるように構成された突状栓体を備えると共に、前記第一のヒンジ部とは周方向において異なる位置となるように、該第一の蓋体の上部周縁部に対してその一ヶ所において一体的に連結された第二のヒンジ部を有し、該第一の蓋体の上部周縁部に着脱可能に嵌着せしめられるように構成された第二の蓋体とを、
有していることを特徴とする蓋付きキャップ。」(特許請求の範囲、請求項1)
「そこにおいて、蓋付きキャップ2を構成するキャップ本体4は、二つの蓋体6,8を開蓋せしめてなる、図3に示される形態の蓋付きキャップ2の平面形態説明図や正面形態説明図である図4(a),(b)、更には図4(a)におけるVa-Va断面説明図、Vb-Vb断面説明図である図5(a),(b)から明らかな如く、有底円筒形状を呈し、その底壁部である頂板部(天板部)10のほぼ中央部を上下に貫通して、かかる頂板部10から上方に所定長さ突出する外側吐出筒部12からなる大径の第一の注口14を備えている。また、かかる第一の注口14内には、外側吐出筒部12の内径よりも小さな外径を有し、略円筒形状とされた内側吐出筒部24が、第一の注口14から更にその開口部を通じて外方に所定長さ突出するように、高さ(図5(a)において、上下方向長さ)が外側吐出筒部12よりも或る程度高い高さとされると共に、外側吐出筒部12とほぼ同軸的に位置するように、配設されている。なお、この内側吐出筒部24には、その軸方向中心部において、上下に貫通するように貫通孔が設けられており、そのような貫通孔によって、第一の注口14よりも開口径の小さな小径の第二の注口26が構成されているのである。また、このような構成とされた内側吐出筒部24は、外側吐出筒部12の内周面から、内側吐出筒部24の下部外周部に向かって、径方向に斜め上方に延びるように一体的に形成され、且つ、周方向においてそれぞれ90°の位相差をもって配設された、4つの板状連結部23により、第一の注口14内において、同軸的に橋絡、保持せしめられているのである。」(段落0019)
「なお、かかるキャップ本体4の筒壁部内面には、らせん状のねじ16が刻設されて、所定の容器の口頸部外周面に設けられるネジ部に対して螺合せしめられることにより、キャップ本体4が、所定の容器に液密に取り付けられ得るようになっている。・・・」(段落0020)
「また、第一の蓋体6は、上記の図4及び図5に加えて、図4(a)の形態における右側面図(但し、キャップ本体4省略)を示す図6(a)や、図4(a)におけるVI-VI断面説明図である図6(b)から明らかな如く、浅底の有底円筒形状を呈し、その頂板部22のほぼ中央部を上下に貫通して設けられた開口部21を有している。加えて、かかる開口部21においては、図5(a)及び図6(b)から明らかなように、頂板部22の下面から下方(図では上方)に延びる大径の下側筒部25と、頂板部22の上面から上方(図では下方)に延びる、下側筒部25よりも小径とされた上側筒部27が形成されている。そして、後述するように、第一の蓋体6が、キャップ本体4の上部周縁部に嵌着せしめられるとき、キャップ本体4における外側吐出筒部12の外周面に第一の蓋体6における下側筒部25が液密に外嵌せしめられると共に、キャップ本体4における内側吐出筒部24の上部外周部に第一の蓋体6における上側筒部27が液密に外嵌せしめられ得るようになっている。従って、ここでは、下側筒部25及び上側筒部27が、それぞれ、第一の蓋体6における下方に垂下した筒状栓体及び上方に突出した筒状突部を構成している。」(段落0021)
「さらに、かかる第一の蓋体6は、キャップ本体4に対して、それに設けられた面取り部20とは周方向において対称となる位置(約180°の位相差を与える位置)において、図3や図4等に示される如く、所定幅を有する薄肉のフィルム状乃至はシート状の第一のヒンジ部28によって、周方向に所定長さに亘って連結され、この第一のヒンジ部28の屈曲作用によって、第一の蓋体6が、キャップ本体4上に嵌着されて、閉蓋状態とされる一方、キャップ本体4の上部から離脱させられて、開蓋せしめられ得るようになっている。・・・」(段落0022)
「すなわち、その際において、第一の蓋体6は、キャップ本体4に嵌着せしめられていると共に、その第一の蓋体6の下側筒部25が、キャップ本体4の外側吐出筒部12の外周面に液密に嵌合される一方、その上側筒部27が、その内周部において、キャップ本体4に設けられた内側吐出筒部24の上部外周部に液密に嵌合せしめられるようになっているところから、キャップ本体4における第一の注口14が第一の蓋体6にて閉塞せしめられることとなり、以て、所定の容器内の液体等が、キャップ本体4における第二の注口26から、外部に注ぎ出され得るようになるのである。」(段落0029)
「また、キャップ本体4における外側吐出筒部12によって与えられる第一の注口14から、容器内の液体等を、大きな注出し量において外部に注ぎ出す場合にあっては、第一の蓋体6における突起30に対して指先を掛け、キャップ本体4から隔離するように、上方に向かって力を加えることにより、キャップ本体4に対する第一の蓋体6の嵌着が解除され、そして、第一のヒンジ部28の屈曲による更なる回動によって、キャップ本体4が、図9及び図10に示される如き開蓋状態とされた後、容器内の液体等が第一の注口14から外部に注ぎ出されることとなる。なお、この際、第一の蓋体6と第二の蓋体8とは、互いに嵌着せしめられた状態において、第一のヒンジ部28によって一体的に回動されて、図示の如き形態となるように構成されている。」(段落0030)
また、段落0022の記載と併せ図面をみると、「浅底の有底円筒形状を呈し」ている「第一の蓋体」には、「有底円筒形状を呈し」ている「キャップ本体」と同様に、浅底の有底円筒形状の底壁部である「頂板部」と筒壁部といえる部位が存在し、この「第一の蓋体」の筒壁部と「キャップ本体」の「筒壁部」とが「所定幅を有する薄肉のフィルム状乃至はシート状の第一のヒンジ部によって、周方向に所定長さに亘って連結され」ていることがわかる。
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「容器の口頸部に取り付けられるキャップ本体と、該キャップ本体の上部周縁部の一ヶ所において該キャップ本体に一体的に連結された第一のヒンジ部を有し、該キャップ本体の上部周縁部に着脱可能に嵌着せしめられ得るように構成された第一の蓋体とを有している蓋付きキャップであって、
キャップ本体は、その内面に、容器の口頸部外周面に設けられるネジ部に対して螺合せしめられるらせん状のねじが刻設された筒壁部と、有底円筒形状の底壁部である頂板部からなる有底円筒形状を呈し、
頂板部を上下に貫通して、該頂板部から上方に所定長さ突出する外側吐出筒部からなる大径の第一の注口を備えると共に、該第一の注口内において橋絡、保持され、該第一の注口から開口部を通じて外方に所定長さ突出する内側吐出筒部からなる、該第一の注口よりも開口径の小さな小径の第二の注口を備えており、
第一の蓋体は、キャップ本体の筒壁部に所定幅を有する薄肉のフィルム状乃至はシート状の第一のヒンジ部によって、周方向に所定長さに亘って連結された筒壁部と、上側筒部が形成された浅底の有底円筒形状の底壁部である頂板部を有し、
上側筒部に内側吐出筒部の上部外周部が外嵌せしめられ得るようになっており、
第一の蓋体を、キャップ本体に嵌着せしめると、キャップ本体における外側吐出筒部からなる大径の第一の注口が第一の蓋体にて閉塞せしめられることとなり、以て、所定の容器内の液体等が、キャップ本体における内側吐出筒部からなる第二の注口から、外部に注ぎ出され得るようになり、
キャップ本体に対する第一の蓋体の嵌着が解除されると、キャップ本体が、開蓋状態とされた後、容器内の液体等が外側吐出筒部からなる大径の第一の注口から外部に注ぎ出される、
蓋付きキャップ。」

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面と共に次の事項が記載されている。
「液状物が収納される弾性圧縮可能な胴部を有する容器本体の口部に、前記液状物を噴霧させるキャップ本体とチューブ管と小容器からなる噴射用部材が装着されているスプレー容器であって、該噴射用部材はキャップ本体のキャップの外側の上面中央にスプレー用ノズル部を具備し、該スプレー用ノズル部の上側に液状物が霧状に噴霧されるノズル孔が形成され、さらに垂直断面がU字型で上側周縁に容器本体の液状物を貯液部に一定量注ぎ込み貯える切り欠け口部が形成され、キャップ本体の内側に係合されている小容器とスプレー用ノズル部の内側に挿入され小容器内の液状物を吸い上げるチューブ管が一体化され具備されていることを特徴とするスプレー容器。」(特許請求の範囲、請求項1)
「次に、図2は本発明のスプレー容器の噴射用部材(300)の一実施例を示す斜視図である。噴射用部材(300)はキャップ本体(2)とキャップ本体に接続挿入されているチューブ管(4)と垂直断面がU字型の小容器(3)から構成されている。噴射用部材のキャップ本体(2)は図2に示すようにキャップ本体(2)の後方にヒンジ部(6)を介して開閉蓋(14)が形成され、キャップ本体(2)のスプレー用ノズル部(10)が設けられている反対方向の内側面に支持リブ部が施され、その支持リブ部にチューブ管(4)が接続挿入され、さらにキャップ本体(2)の頂壁部(7)の下側面に形成している環状周壁部および鍔壁部に垂直断面がU字型の小容器(3)の貯液環状周壁部(25)が係合して一体化される。」(段落0038)
したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「液状物が収納される弾性圧縮可能な胴部を有する容器本体の口部に装着される、前記液状物を噴霧させるキャップ本体とチューブ管と小容器からなる噴射用部材であって、キャップ本体のスプレー用ノズル部が設けられている反対方向の内側面に支持リブ部が施され、その支持リブ部にチューブ管が接続挿入され、さらにキャップ本体の頂壁部の下側面に形成している環状周壁部および鍔壁部に垂直断面がU字型の小容器の貯液環状周壁部が係合して一体化された噴射用部材。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明1の「容器の口頸部」、「キャップ本体」、「該キャップ本体の上部周縁部の一ヶ所において該キャップ本体に一体的に連結された第一のヒンジ部を有し、該キャップ本体の上部周縁部に着脱可能に嵌着せしめられ得るように構成された」という態様及び「第一の蓋体」は、それぞれ本願発明1の「容器口部」、「第1の液出しキャップ」、「第1の液出しキャップに開閉自在にヒンジ連結された」という態様及び「第2の液出しキャップ」に相当するから、引用発明1の「蓋付きキャップ」は、本願発明1の「複合液出しキャップ」に相当する。
引用発明1の「キャップ本体」における「その内面に、容器の口頸部外周面に設けられるネジ部に対して螺合せしめられるらせん状のねじが刻設された筒壁部」、「有底円筒形状の底壁部である頂板部」及び「頂板部を上下に貫通して、該頂板部から上方に所定長さ突出する外側吐出筒部からなる大径の第一の注口」は、それぞれ本願発明1の「第1の液出しキャップ」における「容器口部に係合固定される筒状側壁」、「該筒状側壁の上端部を閉じるように設けられている頂板部」及び「容器内部に通じる連通孔」に相当する。
引用発明1の「第一の蓋体」における「キャップ本体の筒壁部に所定幅を有する薄肉のフィルム状乃至はシート状の第一のヒンジ部によって、周方向に所定長さに亘って連結された筒壁部」は、「第1の液出しキャップの筒状側壁にヒンジ連結された環状壁」という限りで、本願発明1の「第2の液出しキャップ」における「第1の液出しキャップの筒状側壁にヒンジ連結され且つ前記第1の係合突起と係合し得る第2の係合突起を備えた環状壁」に一致し、引用発明1の「第一の蓋体」における「上側筒部」、「浅底の有底円筒形状の底壁部である」という態様及び「頂板部」は、それぞれ本願発明1の「第2の液出しキャップ」における、「液出し用案内筒」、「該環状壁の上端を閉じるように形成され」という態様及び「天井部」に相当する。
引用発明1の「内側吐出筒部」は、本願発明1の「液小出し用パイプ」に相当するから、引用発明1の「上側筒部に内側吐出筒部の上部外周部が外嵌せしめられ得るようになっており」という態様は、「前記液出し用案内筒には、液小出し用パイプの先端が嵌合され得るようになっており」という限りで、本願発明1の「前記液出し用案内筒には、液小出し用パイプの先端が嵌合固定されており」という態様に一致する。
引用発明1の「キャップ本体に対する第一の蓋体の嵌着が解除されると、キャップ本体が、開蓋状態とされた後、容器内の液体等が外側吐出筒部からなる大径の第一の注口から外部に注ぎ出される」という態様は、本願発明1の「第2の液出しキャップを開放した状態では、第1の液出しキャップの前記連通孔を通して容器内容液の液出しが行われる」という態様に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「容器口部に装着される第1の液出しキャップと、第1の液出しキャップに開閉自在にヒンジ連結された第2の液出しキャップとからなる複合液出しキャップであって、
第1の液出しキャップは、容器口部に係合固定される筒状側壁と、該筒状側壁の上端部を閉じるように設けられている頂板部とを含み、
前記頂板部には、容器内部に通じる連通孔とが形成されており、
第2の液出しキャップは、第1の液出しキャップの筒状側壁にヒンジ連結された環状壁と、該環状壁の上端を閉じるように形成され且つ液出し用案内筒とを備えた天井部とを含み、
前記液出し用案内筒には、液小出し用パイプの先端が嵌合され得るようになっており、
第2の液だしキャップを閉じた状態では、容器内容液が液小出し用パイプから液出しされると共に、
第2の液出しキャップを開放した状態では、第1の液出しキャップの前記連通孔を通して容器内容液の液出しが行われる複合液出しキャップ。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は、「第1の液出しキャップ」の「頂板部」に「一定量の液を溜める液溜め部」が形成されており、「前記連通孔は前記頂板部の片側部における特定領域に配設され、前記液溜め部は前記特定領域以外の領域に配設されて」おり、「第2の液出しキャップを閉じた状態では、前記液小出し用パイプの他端が前記液溜め部の底面部に対面するように位置し、前記連通孔を通して該液溜め部に収容された容器内容液が該液小出し用パイプから液出しされる」のに対し、引用発明1は、そのような構成を備えていない点。
(相違点2)本願発明1は、「第1の液出しキャップ」の「頂板部」に「第2の液出しキャップを保持するための第1の係合突起とが形成されて」おり、「第2の液出しキャップ」の「環状壁」に「前記第1の係合突起と係合し得る第2の係合突起を備え」ているのに対し、引用発明1はその点不明である点。
(相違点3)本願発明1は、「液出し用案内筒」に「液小出し用パイプの先端が嵌合固定されて」いるのに対し、引用発明1は、「上側筒部」が「内側吐出筒部の上部外周部が外嵌せしめられ得るようになって」おり、固定されない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点3から検討する。
相違点3に係る本願発明1の「液出し用案内筒」に「液小出し用パイプの先端が嵌合固定されて」いる構成は、以下に示すように引用発明1及び引用発明2に基いたとしても当業者が容易に想到できるものではない。
引用発明1の「第一の蓋体」に形成されている「上側筒部」に、「キャップ本体」に形成されている「内側吐出筒部」を固定してしまうと、「キャップ本体」に対する「第一の蓋体」の嵌着が解除され得なくなるため、引用発明1において、「キャップ本体」に形成されている「内側吐出筒部」を固定することには、阻害要因がある。
仮に、引用発明1に引用発明2を適用したとしても、引用発明1の「キャップ本体」に形成されている「内側吐出筒部」の内側面に、引用発明2の「支持リブ部」が施され、その「支持リブ部」に「チューブ管が接続挿入され」るだけであって、本願発明1の「第2の液出しキャップ」に相当する「第一の蓋体」が有する「上側筒部」に、引用発明2の「チューブ管が接続挿入され」ることはないから、引用発明1に引用発明2を適用したとしても、上記相違点3に係る本願発明1のように構成することは、当業者が容易に想到できたことではない。
したがって、本願発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2乃至本願発明4について
本願発明2乃至本願発明4も、本願発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに技術的限定を加える事項を発明特定事項とするものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1-3に記載された発明、引用文献4に例示される周知技術及び例示するまでもない周知技術に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定について
理由1(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1-4は「前記連通孔は前記頂板部の片側部における特定領域に配設され、前記液溜め部は前記特定領域以外の領域に配設されており、」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-3に記載された発明、引用文献4に例示される周知技術及び例示するまでもない周知技術に基いて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-11-19 
出願番号 特願2014-260983(P2014-260983)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 信秀  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 石井 孝明
井上 茂夫
発明の名称 小出し可能な複合液出しキャップ  
代理人 奥貫 佐知子  
代理人 小野 尚純  
代理人 小嶋 俊之  

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