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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B64G
管理番号 1357468
審判番号 不服2019-4212  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-01 
確定日 2019-12-17 
事件の表示 特願2016-507603号「宇宙機並びに熱制御システム及び熱制御パネル」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月16日国際公開、WO2014/168923、平成28年 7月21日国内公表、特表2016-521225号、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)4月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年4月9日(US)米国 2014年3月4日 (US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成30年1月30日付けで拒絶理由が通知され、同年6月19日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月26日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成31年4月1日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年11月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1?7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


<引用文献等一覧>
1.特開平3-114999号公報
2.特開2008-265522号公報
3.特開2012-140120号公報(周知技術を示す文献)

なお、本願請求項8?18に係る発明については、拒絶査定の対象とされていない。

第3 本願発明
本願請求項1?18に係る発明は、平成31年4月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定されるところ、本願請求項1?7に係る発明(以下「本願発明1」等という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
宇宙機であって、
宇宙空間との間で熱伝達を可能とすることができる露出領域を有する側面と、
前記露出領域を有する側面に結合されたものであり、その自由端が第1の距離にあって前記露出領域に隣接して位置決めされる折り畳み位置と、前記自由端が前記第1の距離より大きい第2の距離にあって前記露出領域から離間している拡張位置との間で移動可能である少なくとも1つの拡張可能部材と、
第1及び第2の側面を備えたものであり、前記第1の側面が前記第2の側面の放射率より低い放射率を有しており、前記第1の側面が少なくとも0.50の吸収率及び0.20未満の放射率を有し、前記第2の側面が少なくとも0.80の吸収率及び少なくとも0.80の放射率を有するパネル本体と、前記パネル本体を宇宙機に結合するための前記第2の側面上の結合領域とを具備し、前記拡張可能部材の自由端に結合されている熱制御パネルと、を備え、
前記拡張可能部材が拡張可能な可撓性ソーラーアレイを備え、前記可撓性ソーラーアレイが内面及び外面を有する上パネルを備え、前記内面が少なくとも1つの太陽電池を備え、前記熱制御パネルが前記外面に結合されており、
前記拡張可能部材の折り畳み位置では、前記熱制御パネルが周囲光を吸収して熱を前記露出領域に向けて放出し、これによって前記露出領域を有する側面からの熱損失を最小限に抑えるように構成され、前記拡張可能部材の拡張位置では、前記露出領域を有する側面からの熱伝達が前記熱制御パネルによって実質的に抑制されずに行われるように構成された、宇宙機。
【請求項2】
前記少なくとも1つの拡張可能部材が前記露出領域を有する側面に結合されている、請求項1に記載の宇宙機。
【請求項3】
太陽光利用デバイスを更に備え、前記拡張可能部材の折り畳み位置では、前記太陽光利用デバイスの太陽電池が周期光に露出されない状態とされる、請求項1に記載の宇宙機。
【請求項4】
前記太陽光利用デバイスが前記露出領域に隣接した側面に結合されている、請求項3に記載の宇宙機。
【請求項5】
前記太陽光利用デバイスが前記露出領域を有する側面に結合された拡張可能な可撓性ソーラーアレイを備え、前記熱制御パネルが前記可撓性ソーラーアレイの上パネルの外面に結合されている、請求項3に記載の宇宙機。
【請求項6】
前記拡張可能部材の折り畳み位置では前記熱制御パネルの第2の側面が前記露出領域に面し、前記拡張可能部材の拡張位置では前記熱制御パネルの第2の側面が前記露出領域から離れた方向に面する、請求項1に記載の宇宙機。
【請求項7】
宇宙機の熱損失を最小限に抑えるための熱制御システムであって、
第1及び第2の端部を有するものであり、前記第1及び第2の端部が第1の距離で離間している折り畳み位置と、前記第1及び第2の端部が前記第1の距離より大きい第2の距離で離間している拡張位置との間で移動可能である拡張可能部材と、
前記第1の端部に取り付けられ、第1及び第2の側面を備えたものであり、前記第1の側面が前記第2の側面の放射率より低い放射率を有しており、前記第1の側面が少なくとも0.50の吸収率及び0.20未満の放射率を有し、前記第2の側面が少なくとも0.80の吸収率及び少なくとも0.80の放射率を有するパネル本体と、前記パネル本体を宇宙機に結合するための前記第2の側面上の結合領域とを具備し、前記拡張可能部材の第2の端部から離間するように前記折り畳み位置から前記拡張位置に移動可能である熱制御パネルと、を備え、
前記拡張可能部材が少なくとも1つの拡張可能な可撓性ソーラーアレイを備え、前記可撓性ソーラーアレイが外面及び内面を有する上パネルを備え、前記内面が少なくとも1つの太陽電池を備え、前記熱制御パネルが前記上パネルの外面に取り付けられている、熱制御システム。」

第4 引用文献の記載事項等
1 引用文献1について
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付加した。以下同様。)。
(1a)「(従来の技術)
従来より、人工衛星においては、搭載機器の温度制御を行う手段として、衛星本体の周囲壁に熱制御用の放熱面を設け、この放熱面を利用して搭載機器の発熱等による温度を制御する方法が採られている。この場合、放熱面の面積は人工衛星の最大の運用状態となる静止軌道上の条件を満足するように設定される。そのため、地上より静止軌道上に到達するまでの間、放熱面からの放熱による搭載機器の温度低下を防止する加熱ヒータが備えられる。この場合、加熱ヒータの消費電力を最小限に抑えるために、通常、放熱面を静止軌道上に到達するのでの間、太陽電池パドル及び熱制御用のサーマルシールド部材を用いて遮蔽することにより、放熱を最小限に保つように構成される。
第5図はこのような従来の熱制御装置を示すもので、衛星本体1には放熱面2が搭載機器の最大運用時に対応して形成される。そして、この放熱面2に対応した衛星本体1には太陽電池パドル3が折り畳み展開自在に配設される。この太陽電池パドル3には熱制御用のサーマルシールド部材4が放熱面2に対応して取付けられる。サーマルシールド部材4は太陽電池パドル3の折り畳み状態で、放熱面2を遮蔽して放熱を阻止し得るように太陽電池パドル3に取付けられる。
ところが、上記熱制御装置では、その構成上、サーマルシールド部材4が太陽電池パドル3への太陽光の入射を遮蔽して、その発生電力を低下させたりすることがないように、サーマルシールド部材4を太陽電池パドル4に取付けなければならないために、その制作を含む取扱いが非常に面倒であるという問題を有していた。」(1頁左下欄下から3行?2頁左上欄9行;なお、「放熱面を静止軌道上に到達するのでの間」は、「放熱面を静止軌道上に到達するまでの間」の誤記と認める。)

(1b)第5図は次のとおりである。


(2)認定事項
(1c)上記(1b)から、「サーマルシールド部材4」は、「太陽電池パドル3」を展開した際の先端のパネルに取付けられていることが認定できる。

(1d)上記(1b)から、「放熱面2」は「衛星本体1」の側面に形成されていることが認定できる。また、「太陽電池パドル3」は当該側面に配設されていることも認定できる。

(3)引用発明
上記(1)、(2)から、引用文献1には、第5図に係る従来の技術に対応するものとして次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「人工衛星において、
衛星本体1にはその側面に放熱面2が搭載機器の最大運用時に対応して形成され、
この放熱面2に対応した衛星本体1の側面には太陽電池パドル3が折り畳み展開自在に配設され、
この太陽電池パドル3を展開した際の先端のパネルには熱制御用のサーマルシールド部材4が放熱面2に対応して取付けられ、
サーマルシールド部材4は太陽電池パドル3の折り畳み状態で、放熱面2を遮蔽して放熱を阻止し得るように太陽電池パドル3に取付けられる、人工衛星。」

2 引用文献2について
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、以下の事項が記載されてい
(2a)「【請求項1】
熱制御対象との間で熱のやりとりが可能な状態で接続されているベースプレートと、
前記ベースプレートに対して展開及び収納が可能な状態で取り付けられた1枚又は複数枚の熱交換パドルと、
前記ベースプレートの端部に設けられ、前記熱交換パドルの展開動作及び収納動作を駆動し、その展開角度を可変とするパドル駆動手段と、
前記ベースプレートと前記熱交換パドルとを接続するよう設けられた熱輸送素子とを含み、
前記ベースプレートの前記熱制御対象とは反対側の第1面、前記パドルの表側である第2面、前記熱交換パドルの裏側である第3面が、放熱面、吸熱面、断熱面、放射率可変面のうちのいずれかとされ、前記熱交換パドルの展開角度を可変としたことを特徴とする熱制御装置。」

(2b)「【0027】
[実施形態2]
続いて、流体ループを用いた中型または大型宇宙機用の熱制御装置を、実施形態2として図2及び図3を参照しながら説明する。図2及び図3は、実施形態2に係る熱制御装置21を中型または大型の宇宙機20に取り付けた状態を示しており、図2は、熱制御装置21の熱交換パドル23を展開した状態、図3は、熱交換パドル23を閉じた状態である。
【0028】
熱制御装置21は、発熱部22、熱交換パドル23、ベースプレート24、展開・収納機構25、流体ループ26を含んでいる。熱交換パドル23及びベースプレート24には、内部を流体が流通できる流路27が張りめぐらされている。流体ループ26は、発熱部22、熱交換パドル23、ベースプレート24の間を繋いでおり、さらに、流体の流通を駆動するメカニカルポンプ28と、発熱部22及び熱交換パドル23の裏面に毛細管力を発生させる蒸発部29、30を含んで構成されている。熱交換パドル23の表面とベースプレート24の表面には、放熱素材35が取り付けられ、熱交換パドル23の裏面には吸熱素材36が取り付けられている。
【0029】
本実施形態において、宇宙機内部の発熱部22の温度が高い場合には、展開・収納機構25が熱交換パドル23を展開するよう作動して熱交換パドル23を図2に示すように開く。これにより、熱交換パドル23の表面及び裏面と、ベースプレート24から放熱を行う。一方、宇宙機内部の発熱部22が所定の温度より低い場合は、展開・収納機構25が熱交換パドル23を収納するよう作動して熱交換パドル23を図3に示すように閉じる。これによりベースプレート24は熱交換パドル23の表面によって完全に覆い隠され、熱交換パドル23の裏面のみが宇宙空間に曝される状態となって、放熱が最小限に抑えられる。
【0030】
太陽光が当たり、熱交換パドル23の裏面が内部の温度よりも高くなる場合は、メカニカルポンプ28又は熱交換パドル23に組み込まれた蒸発部29を駆動することで内部の発熱部22まで太陽の熱エネルギーを輸送して、発熱部22の温度を上昇させる。」

(2)認定事項
(2c)上記(2b)の段落【0028】より、「流体ループ26」は「流体の流通を駆動するメカニカルポンプ28と、発熱部22及び熱交換パドル23の裏面に毛細管力を発生させる蒸発部29、30を含んで構成されている」ものであるから、上記(2b)の段落【0030】を言い換えれば「太陽光が当たり、熱交換パドル23の裏面が内部の温度よりも高くなる場合は、流体ループ26により、内部の発熱部22まで太陽の熱エネルギーを輸送して、発熱部22の温度を上昇させる」ことが認定できる。

(3)記載された技術的事項
上記(1)、(2)からみて、引用文献2には次の技術的事項(以下「引用文献2技術」という。)が記載されているものと認める。
「中型または大型宇宙機用の熱制御装置21において、
宇宙機内部の発熱部22との間で熱のやりとりが可能な状態で接続されているベースプレート24と、
前記ベースプレート24に対して展開及び収納が可能な状態で取り付けられた熱交換パドル23と、
前記ベースプレート24の端部に設けられ、前記熱交換パドル23の展開動作及び収納動作を駆動し、その展開角度を可変とする展開・収納機構25と、
前記ベースプレート24と前記熱交換パドル23とを接続するよう設けられた流体ループ26とを含み、
熱交換パドル23の表面とベースプレート24の表面には、放熱素材35が取り付けられ、熱交換パドル23の裏面には吸熱素材36が取り付けられ、
宇宙機内部の発熱部22の温度が高い場合には、展開・収納機構25が熱交換パドル23を展開するよう作動して熱交換パドル23を開き、熱交換パドル23の表面及び裏面と、ベースプレート24から放熱を行い、
宇宙機内部の発熱部22が所定の温度より低い場合は、展開・収納機構25が熱交換パドル23を収納するよう作動して熱交換パドル23を閉じ、ベースプレート24は熱交換パドル23の表面によって完全に覆い隠され、熱交換パドル23の裏面のみが宇宙空間に曝される状態となって、放熱が最小限に抑えられ、
太陽光が当たり、熱交換パドル23の裏面が内部の温度よりも高くなる場合は、流体ループ26により、内部の発熱部22まで太陽の熱エネルギーを輸送して、発熱部22の温度を上昇させる、熱制御装置21。」

3 引用文献3について
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に周知技術の例示文献として引用された引用文献3には、以下の事項が記載されてい
(3a)「【0030】
図2は本発明による装置の一例の図を示す。本装置は複数の太陽電池を支持する可撓性の膜2と、支持構造を構成する複数のバネ式テープ1とを備える。代替として、前記膜2は半剛体か、又は可撓的に相互結合された細い平らな薄板のような、可撓性且つ剛性の高い要素で構成され得る。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 後者の「人工衛星」は、前者の「宇宙機」に相当する。また、後者の「太陽電池パドル3」と、前者の「可撓性ソーラーアレイ」とは、「ソーラーアレイ」の限りで一致するといえる。そして、後者の「サーマルシールド部材4」は、熱制御用のものであり、引用文献1の第5図(記載事項(1b))よりパネル状の形状であることが明らかであるから、前者の「熱制御パネル」に相当するといえる。

イ 後者の「側面」について検討するに、少なくとも「放熱面2」が形成されている箇所は、露出した場合に宇宙空間との間で熱伝達を可能とすることができるものであることか明らかである。
そうすると、後者の「衛星本体1には放熱面2が搭載機器の最大運用時に対応して形成された側面」は、前者の「宇宙空間との間で熱伝達を可能とすることができる露出領域を有する側面」に相当するといえる。

ウ 前者の「拡張可能部材」は「拡張可能な可撓性ソーラーアレイ」を備えるものであることから、後者の「太陽電池パドル3」は、前者の「拡張可能部材」にも相当するといえる。
そうすると、上記イも踏まえると、後者の「放熱面2に対応した衛星本体1の側面には太陽電池パドル3が折り畳み展開自在に配設され」ていることは、前者の「前記露出領域を有する側面に結合されたものであり、その自由端が第1の距離にあって前記露出領域に隣接して位置決めされる折り畳み位置と、前記自由端が前記第1の距離より大きい第2の距離にあって前記露出領域から離間している拡張位置との間で移動可能である少なくとも1つの拡張可能部材」に相当するといえる。

エ 後者の「サーマルシールド部材4」は、上記アのとおりパネル状の形状であるから、第1及び第2の側面といえるものを有しているといえる。また、後者の「先端のパネル」は、前者の「上パネル」に相当するといえる。
そうすると、上記ア、ウも踏まえると、後者の「この太陽電池パドル3を展開した際の先端のパネルには熱制御用のサーマルシールド部材4が放熱面2に対応して取付けられ」ることと、前者の「第1及び第2の側面を備えたものであり、前記第1の側面が前記第2の側面の放射率より低い放射率を有しており、前記第1の側面が少なくとも0.50の吸収率及び0.20未満の放射率を有し、前記第2の側面が少なくとも0.80の吸収率及び少なくとも0.80の放射率を有するパネル本体と、前記パネル本体を宇宙機に結合するための前記第2の側面上の結合領域とを具備し、前記拡張可能部材の自由端に結合されている熱制御パネルと、を備え、前記拡張可能部材が拡張可能な可撓性ソーラーアレイを備え、前記可撓性ソーラーアレイが内面及び外面を有する上パネルを備え、前記内面が少なくとも1つの太陽電池を備え、前記熱制御パネルが前記外面に結合されており」ということとは、「第1及び第2の側面を備えたものであり、前記拡張可能部材の自由端に結合されている熱制御パネルと、を備え、前記拡張可能部材が拡張可能なソーラーアレイを備え、前記ソーラーアレイが内面及び外面を有する上パネルを備え、前記熱制御パネルが結合されており」ということの限りで共通するといえる。

オ 後者の「太陽電池パドル3」が展開したときは、「放熱面2が搭載機器の最大運用時に対応して形成された側面」からの熱伝達が、「サーマルシールド部材4」によって実質的に抑制されないことは構成上明らかといえる。
そうすると、後者の「太陽電池パドル3」は、前者の「前記拡張可能部材の拡張位置では、前記露出領域を有する側面からの熱伝達が前記熱制御パネルによって実質的に抑制されずに行われるように構成され」ていることに相当する事項を実質的に有しているといえる。

カ 以上より、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点〕
「宇宙機であって、
宇宙空間との間で熱伝達を可能とすることができる露出領域を有する側面と、
前記露出領域を有する側面に結合されたものであり、その自由端が第1の距離にあって前記露出領域に隣接して位置決めされる折り畳み位置と、前記自由端が前記第1の距離より大きい第2の距離にあって前記露出領域から離間している拡張位置との間で移動可能である少なくとも1つの拡張可能部材と、
第1及び第2の側面を備えたものであり、前記拡張可能部材の自由端に結合されている熱制御パネルと、を備え、
前記拡張可能部材が拡張可能なソーラーアレイを備え、前記ソーラーアレイが内面及び外面を有する上パネルを備え、前記熱制御パネルが結合されており、
前記拡張可能部材の拡張位置では、前記露出領域を有する側面からの熱伝達が前記熱制御パネルによって実質的に抑制されずに行われるように構成された、宇宙機。」

〔相違点1〕
「熱制御パネル」に関し、本願発明が、「前記第1の側面が前記第2の側面の放射率より低い放射率を有しており、前記第1の側面が少なくとも0.50の吸収率及び0.20未満の放射率を有し、前記第2の側面が少なくとも0.80の吸収率及び少なくとも0.80の放射率を有するパネル本体と、前記パネル本体を宇宙機に結合するための前記第2の側面上の結合領域とを具備し」、「前記拡張可能部材の折り畳み位置では、前記熱制御パネルが周囲光を吸収して熱を前記露出領域に向けて放出し、これによって前記露出領域を有する側面からの熱損失を最小限に抑えるように構成され」たという事項を有するのに対し、引用発明は、「サーマルシールド部材4」の吸収率、放射率の特定がなく、当該「サーマルシールド部材4」は、「太陽電池パドル3の折り畳み状態で、放熱面2を遮蔽して放熱を阻止し得る」ものである点。

〔相違点2〕
「ソーラーアレイ」に関し、本願発明が「可撓性」であるのに対し、引用発明の「太陽電池パドル3」は、可撓性の特定がない点。

〔相違点3〕
「上パネル」に関し、本願発明が、「前記内面が少なくとも1つの太陽電池を備え、前記熱制御パネルが前記外面に結合されており」という事項を有するのに対し、引用発明は、当該事項の特定がない点。

(2)判断
上記相違点1について検討する。
引用発明の「放熱面2」については「放熱面の面積は人工衛星の最大の運用状態となる静止軌道上の条件を満足するように設定されるものであり、地上より静止軌道上に到達するまでの間、放熱面からの放熱による搭載機器の温度低下を防止する加熱ヒータが備えられる」(記載事項(1a))ものであるところ、引用発明の「サーマルシールド部材4」は「加熱ヒータの消費電力を最小限に抑えるために、通常、放熱面を静止軌道上に到達するまでの間、太陽電池パドル及び熱制御用のサーマルシールド部材を用いて遮蔽することにより、放熱を最小限に保つ」(記載事項(1a))ために設けられるものであって、「サーマルシールド部材4」が周囲光を吸収して熱を「側面」に向けて放出して、「側面」からの熱損失を最小限に抑えることを意図したものではない。

ここで、引用文献2技術は、「熱交換パドル23の表面とベースプレート24の表面には、放熱素材35が取り付けられ、熱交換パドル23の裏面には吸熱素材36が取り付けられ、宇宙機内部の発熱部22の温度が高い場合には、展開・収納機構25が熱交換パドル23を展開するよう作動して熱交換パドル23を開き、熱交換パドル23の表面及び裏面と、ベースプレート24から放熱を行い、宇宙機内部の発熱部22が所定の温度より低い場合は、展開・収納機構25が熱交換パドル23を収納するよう作動して熱交換パドル23を閉じ、ベースプレート24は熱交換パドル23の表面によって完全に覆い隠され、熱交換パドル23の裏面のみが宇宙空間に曝される状態となって、放熱が最小限に抑えられ、太陽光が当たり、熱交換パドル23の裏面が内部の温度よりも高くなる場合は、流体ループ26により、内部の発熱部22まで太陽の熱エネルギーを輸送して、発熱部22の温度を上昇させる」ものであるが、「宇宙機内部の発熱部22」の温度のコントロールを目的とするものであって、太陽電池パドル(ソーラーアレイ)の展開状況とは無関係の技術である。
したがって、引用発明に引用文献2技術を適用するのなら、引用発明の「衛星本体1」に、上記「熱交換パドル23」に係る事項を設けるものとなり、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を有するものには至らない。
また、上述したとおり、引用文献2技術は、「熱交換パドル23」の設置箇所も太陽電池パドル(ソーラーアレイ)ではない上、太陽電池パドル(ソーラーアレイ)の展開状況とは無関係の技術であるので、引用発明の「太陽電池パドル3を展開した際の先端のパネル」に取り付けた「サーマルシールド部材4」に適用する動機付けがあるとはいえない。
仮に適用を想定したとしても、宇宙機内部の発熱部の温度に応じて、引用文献2技術の構成を備えた「サーマルシールド部材4」が開閉及び「衛星本体1」の内部の発熱機器と熱交換するものとなり、また、本願発明1の「第2の側面上の結合領域」に相当する事項もなく、さらに、引用文献2技術は「放熱素材35」、「吸熱素材36」の吸収率、放射率の特定もないので、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を有するものには至らない。

なお、引用文献3は、本願発明1の「可撓性ソーラーアレイ」に対し、周知技術の例示文献として示された文献であり、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を容易想到とする技術の開示はない。

したがって、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たこととはいえない。

以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明、引用文献2技術及び引用文献3に示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2?6について
本願発明2?6は、本願発明1の発明特定事項を全て含みさらに限定したものであるので、本願発明1と同様の理由により、当業者が引用発明、引用文献2技術及び引用文献3に示される周知技術に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本願発明7について
本願発明7は、宇宙機に用いられる「熱制御パネル」に係る発明であって、「宇宙機」の発明である本願発明1とは、実質的に同様内容のものであるので、本願発明1と同様の理由により、当業者が引用発明、引用文献2技術及び引用文献3に示される周知技術に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-12-03 
出願番号 特願2016-507603(P2016-507603)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B64G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 諸星 圭祐  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 氏原 康宏
一ノ瀬 覚
発明の名称 宇宙機並びに熱制御システム及び熱制御パネル  
代理人 関谷 充司  
代理人 中村 綾子  
代理人 松島 鉄男  
代理人 奥山 尚一  
代理人 小川 護晃  
代理人 有原 幸一  
代理人 森本 聡二  
代理人 西山 春之  
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