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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1357497
審判番号 不服2018-1601  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-05 
確定日 2019-12-05 
事件の表示 特願2017- 26791「ゲームプログラム、ゲーム処理方法および情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月13日出願公開、特開2017-121499〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年5月31日を出願日とする特願2013-116039号(以下「第1原出願」という。)の一部を同年12月26日に新たな特許出願とした特願2013-268385号の一部をさらに平成26年3月5日に新たな特許出願とした特願2014-042491号の一部をさらに平成28年9月28日に新たな特許出願とした特願2016-190205号をさらに平成29年2月16日に新たな特許出願としたものであって、同年3月15日に手続補正書が提出され、同年4月4日付けで拒絶理由が通知され、同年5月12日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月27日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年8月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月13日付けで補正却下(前記平成29年8月28日提出の手続補正を却下)及び拒絶査定(発送日:同年11月7日、以下「原査定」という。)がなされた。
これに対して平成30年2月5日に拒絶査定不服審判の請求がされ、当該請求と同時に手続補正書が提出され、当審において平成31年3月13日付けで拒絶理由が通知され、同年5月10日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし11に係る発明は、令和1年5月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)はつぎのとおりのものである。

「【請求項1】
第1のユーザと第2のユーザとが参戦可能なゲームを制御するサーバ装置であって、
前記第1のユーザが有する複数のパネルからなる第1のパネルデータベース、および、
前記第2のユーザが有する複数のパネルからなる第2のパネルデータベースを記憶するデータ記憶部と、
前記第1のユーザおよび前記第2のユーザによる、前記第1のパネルデータベースおよび前記第2のパネルデータベースのキャラクタを示すパネルを、対象の区画へ配置するための指示を受信する制御部と、
前記キャラクタが戦闘を行うときに、前記キャラクタを動くキャラクタとして表示させる画面表示制御部と、を備えるサーバ装置。」

第3 引用文献

1 特開2003-320163号公報(以下、「引用文献1」という。)

(1)平成31年3月13日付けの当審における拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)において、引用され、第1原出願の出願前に出願公開がされた引用文献1には、つぎの事項が記載されている。

ア.「【0013】【発明の実施の形態】図1は、本実施の形態においてカードゲームのプレイに使用するゲーム装置22と、そのゲーム装置22に接続された周辺機器を表す図である。ゲーム装置22は、ケーブル23により表示出力装置24に接続されている。本実施の形態では、表示出力装置24は、ゲーム画面を表示するための表示画面25と、ゲームの音声を出力するためのスピーカ26とを備えた家庭用テレビである。」(下線は強調のために審判で付した。以下同じ。)

イ.「【0021】ゲーム制御プログラムは、はじめに山札形成画面51を表示する。図4および図5に山札形成画面の一例を示す。図4の画面51aは、カードリスト63を表示して、プレイヤに山札(デッキ64)に加えるカードを選択させる画面である。山札のカードの枚数はゲームルールにより定められており、ゲーム制御プログラムはその枚数にしたがって、プレイヤからの入力を受け付ける。」

ウ.「【0025】また、特定のカードのみマーク設定できるようにしてもよい。トレーディングカードを用いたカードゲームでは、物語の登場キャラクタをカードの図柄として採用し、物語に沿ったゲームルールを規定することがある。例えば、物語の登場キャラクタの中に、レーダーその他の探知機に一切引っかからない特殊なロボットがいる場合、そのロボットのカードにのみマークを設定できるようにして、「対戦相手に探知できないカード」という位置付けにすれば、物語に合わせることができる。
【0026】1人目のプレイヤが画面51aおよび画面51bにおいて山札を形成し終えると、2人目のプレイヤ用に同じ画面が表示される。全プレイヤ(通常は2人)が山札を形成し終えると、次に、図6に示すような場(場初期設定画面52)が設定される。本実施の形態では、このような場を表示するにあたり、3次元の仮想空間を定義し、その仮想空間内に所定の大きさの仮想テーブル1を配置し、その仮想テーブル1を所定のアングルで見たときのイメージを2次元の画像として画面表示している。詳細には、仮想テーブルは、プリミティブやポリゴンの組み合わせにより構成されたモデルデータとして管理される。
【0027】仮想テーブル1にはプレイヤの操作により仮想カードが配置される。仮想カードもまた、プリミティブやポリゴンの組み合わせにより構成されたモデルデータとして管理される。仮想カードの図柄は、仮想カードのモデルデータにテクスチャとして貼り付けてもよいし、図柄となるキャラクタをカード本体と同様プリミティブやポリゴンの組み合わせで構成し、カード上で立体的に浮き上がって見えるようにしてもよい。
【0028】このように、本実施の形態では、仮想テーブルやカードを3次元モデルとして管理しているため、プレイヤに、実際にテーブルに向かっているような臨場感を味合わせることができる。
【0029】図6の画面において、テーブルの手前側(画面の下半分)には第1のプレイヤの場2aが、またテーブルの奥側(画面の上半分)には第2のプレイヤの場2bが表示されている。各プレイヤの場2a、2bには、手札を置くスペース3、手札の枚数4、裏返して積み重ねられた山札5、山札の枚数6が表示されている。またカードを配置するフィールド7は、ゲームルールに基づいていくつかのエリアに区切られている。
【0030】再び図3に戻って説明する。場が設定されると、次に、山札シャッフル画面53が表示される。紙のカードを用いたカードゲームでは、対戦するプレイヤがお互いの山札をシャッフルしあうのが普通であるが、ビデオゲームの場合には山札5のカードがシャッフルされているイメージが表示される。この際、カードゲーム制御プログラムは、そのイメージを表示する一方で、山札形成画面51で各プレイヤが選択して山札となったカードのデータを並べ替え、後に各プレイヤが山札を引く際に現れるカードの順番を決定する。カードの並べ替えは、ランダム関数を用いて行う。
【0031】山札5のシャッフルが完了すると、次に、画面は手札取得画面54へと移行する。手札取得画面54では、山札5から所定の枚数のカードが引かれて手札となる。ゲーム制御プログラムは、シャッフルして並べ替えた順番にしたがって、山札の1番目から6番目(但し手札の枚数はゲームルールに依存する)までのカードの図柄の画像データを取得し、そのデータを手札を置くスペース3に表示する処理を行う。さらに、画面に表示されている手札の枚数4をその枚数分カウントアップし、山札の枚数6をその枚数分カウントダウンして表示しなおす。
【0032】手札3が決定されると、次に、画面は、先攻後攻決め画面55へと移行する。この画面はゲームをプレイする際の先攻、後攻を決定できれば、どのような画面でもよいが、本実施の形態では、ジャンケンのイメージを表示する。各プレイヤからの入力を受け付けて、画面上でジャンケンを実行させる。なお、プレイヤ同士が直接話して先攻、後攻を決めてもよい。
【0033】先攻、後攻が決定されると、次に先行プレイヤのカードセット画面56が表示される。図7は、カードセット画面56の一例であり、図6の場の各フィールドにカードが配置された状態を示している。カードセット画面56では、表示画面に先攻プレイヤが操作することができるカーソル8が表示される。先攻プレイヤは、コントローラ28を使ってカーソル8を操作し、手札、山札のカードを選択したり、選択したカードを各フィールドに配置(セット)したりすることができる。」

エ.【0039】先攻プレイヤにより戦闘フィールドにカードがセットされると、画面は先攻プレイヤの戦闘画面57へと移行する。戦闘画面57では、カードセット画面56においてプレイヤが行った操作に応じた演出効果が発生する。例えばカードセット画面56においてプレイヤが攻撃内容「射撃」のカードをフィールドに配置した場合には、戦闘画面57において、その配置したカードの前方の対戦相手のカードに対し、砲弾が打ち込まれるイメージが表示される。カードの図柄となっているキャラクタが攻撃を行っているイメージが表示される形態も考えられる。」

オ.「【0042】先攻プレイヤのターンが終了すると、次に後攻プレイヤのカードセット画面58(図3)が表れる。後攻プレイヤのカードセット画面58と戦闘画面59では、先攻プレイヤの画面と同様、プレイヤによるカード配置の制御と、攻撃イメージの表示処理が行われる。以降同様にして、先攻プレイヤのターンと後攻プレイヤのターンが交互に繰り返される。」

カ.ここで、前記「ウ.」の「カードを配置するフィールド7」(段落【0028】)、「各フィールドにカードが配置された状態」(段落【0033】)、「各フィールドに配置(セット)したりすることができる」(段落【0033】)と、前記「エ.」の「戦闘フィールドにカードがセット」(段落【0039】)の各記載について検討するために図6、7をみると、第1のプレイヤの場2a、第2のプレイヤの場2bのそれぞれには、「戦闘フィールド」を含む「フィールド7」があり、前記「フィールド7」及び「戦闘フィールド」は、それぞれ複数のマス目に区切られており、該複数のマス目のいずれかにカードが配置されている。
また、上記「各フィールド」とは、「フィールド7」に含まれる戦闘フィールド及び「フィールド7」に含まれる戦闘フィールド以外のフィールドのことであると解される。

【図6】

【図7】

(2)引用文献1に記載された発明

前記(1)の記載を総合すると、引用文献1には、つぎの発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「物語の登場キャラクタをカードの図柄として採用したトレーディングカードを用いたカードゲームにおいて、
はじめに山札形成画面を表示し、1人目のプレイヤが山札を形成し終えると、2人目のプレイヤ用に同じ画面が表示され、
2人のプレイヤが山札を形成し終えると、場が設定され、
このような場を表示するにあたり、仮想テーブル1を配置し、仮想テーブル1にはプレイヤの操作により仮想カードが配置され、仮想カードもまた、プリミティブやポリゴンの組み合わせにより構成されたモデルデータとして管理され、
テーブルの手前側(画面の下半分)には第1のプレイヤの場2aが、またテーブルの奥側(画面の上半分)には第2のプレイヤの場2bが表示され、各プレイヤの場2a、2bには、手札を置くスペース3、手札の枚数4、裏返して積み重ねられた山札5、山札の枚数6が表示され、
場が設定されると、次に、山札シャッフル画面が表示され、各プレイヤが選択して山札となったカードのデータを並べ替え、後に各プレイヤが山札を引く際に現れるカードの順番を決定し、
山札のシャッフルが完了すると、次に、画面は手札取得画面へと移行し、山札から所定の枚数のカードが引かれて手札となり、
手札が決定されると、次に、先攻後攻決め画面へと移行し、
先攻、後攻が決定されると、次に先攻プレイヤのカードセット画面が表示され、先攻プレイヤは、コントローラを使ってカーソルを操作し、手札、山札のカードを選択したり、選択したカードをフィールド7に含まれる戦闘フィールド及びフィールド7に含まれる戦闘フィールド以外のフィールドに配置(セット)したりすることができ、
第1のプレイヤの場2a、第2のプレイヤの場2bのそれぞれには、戦闘フィールドを含むフィールド7があり、前記フィールド7及び戦闘フィールドは、それぞれ複数のマス目に区切られており、該複数のマス目のいずれかにカードが配置され、
先攻プレイヤにより前記戦闘フィールドにカードがセットされると、画面は先攻プレイヤの戦闘画面へと移行し、カードの図柄となっているキャラクタが攻撃を行っているイメージが表示されるというように、カードセット画面においてプレイヤが行った操作に応じた演出効果が発生し、
先攻プレイヤのターンが終了すると、次に後攻プレイヤのカードセット画面が表れ、後攻プレイヤのカードセット画面と戦闘画面では、先攻プレイヤの画面と同様、プレイヤによるカード配置の制御と、攻撃イメージの表示処理が行われ、以降同様にして、先攻プレイヤのターンと後攻プレイヤのターンが交互に繰り返される、カードゲームのプレイに使用するゲーム装置。」

2.特開2005-292886号公報(以下、「引用文献2」という。)

当審拒絶理由通知において、引用され、第1原出願の出願前に出願公開がされた引用文献2には、つぎの事項が記載されている。

(1)「【0005】上述した課題を解決するために、本発明の画像表示装置は、ページを構成する複数のコマのそれぞれに含まれる画像の表示に必要なコマ画像データを格納する画像格納手段と、
ページに含まれる複数のコマの中で新たな表示の対象となるコマを指定するとともに、この指定されるコマを所定のタイミングで更新するコマ指定手段と、画像格納手段に格納されたコマ画像データに基づいて、コマ指定手段によって新たに指定されたコマと既に指定済みのコマのそれぞれに対応する画像を描画する画像描画手段と、画像描画手段によって描画された画像を表示する表示処理手段とを備えている。」

(2)「【0023】また、上述した画像描画手段は、ゲーム画像を描画することが望ましい。表示されるコマを順番に進めることができるためゲーム画面に応用することが可能になり、しかも、いままでにない表示手法を採用した斬新な新しいゲームを提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】以下、本発明を適用した一実施形態のコミック処理装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。」

(3)「【0054】また、上述した実施形態では、コマ割りされた各コマに対応させて静止画を表示することを想定したが、少なくとも一部のコマについては、動画像を表示するようにしてもよい。各コマ毎に登場キャラクタの動きを動画像で再現することにより、コミック画像を見る楽しみと、映画等の映像を見る楽しみとを両方味わうことができ、新鮮味が格段に増すことになる。」

3.特開2006-223904号公報(以下、「引用文献3」という。)

当審拒絶理由通知において、引用され、第1原出願の出願前に出願公開がされた引用文献3には、つぎの事項が記載されている。

「【0007】この構造は、漫画本のページをレイアウトする際、精巧に定義された独特のパネルを使ってアレンジされたもので、それらのパネルは物語を挿話的に述べる上で空間及び時間の両方で区切られている。すなわち、プレーヤにより制御されるキャラクタ(player-controlled character:以下、「プレーヤ制御キャラクタ」と称する)を動かし、また対話できるのは1回に付き、アクティブな1枚のパネルに限られる。そしてこのプレーヤ制御キャラクタを次のパネルに移動させる前にそのアクティブパネル内で所定のタスクを終えなければならない。各パネルはレイアウトページ(page layout)に説明されている物語中の一つのシーンに該当する。プレーヤ制御キャラクタがレイアウトページ上の複数のパネルを通過するルート次第で物語の筋が決定される。プレーヤにはページ上を通過するための選択して進むルートを与えることができる。レイアウトページの大きさの比を矩形にしてあるので、また漫画本の見栄えも高まる。本発明のビデオゲーム装置は、濃い色、平面的な影付け領域、及び誇張したアニメーションを採用するという芸術的スタイルも特徴の一つである。本発明の装置はまた対話システムを利用しており、このシステムが漫画本媒体で一般に使用している話しの吹き出しをシミュレートしている。これにより、感情、物語情報、パンチを打った後の”Ka-Pow”といったテキスト効果を伝えることができる。ほかのグラフィカル効果としては例えば、パネルにキャラクタを描いている漫画家の手の表示があり、これがページの外の「実世界」に対してページ内の「漫画本の世界」を強調するのに効果がある。」

4.引用文献2及び引用文献3に記載された前記事項からみて、ゲームにおいてキャラクタを動くキャラクタとして表示させることは周知技術である(以下、「周知技術3」という。)。

第4 当審の判断

1.本願発明1と引用発明1との対比

(1)引用発明1の「1人目のプレイヤ」は、本願発明1の「第1のユーザ」に相当し、以下同様に「2人目のプレイヤ」は「第2のユーザ」に、「カード」は「パネル」に、「マス目」は「区画」に、それぞれ相当する。

(2)引用発明1における、「1人目のプレイヤ」と「2人目のプレイヤ」は、「先攻、後攻が決定されると」、「先攻プレイヤにより前記戦闘フィールドにカードがセットされると、画面は先攻プレイヤの戦闘画面へと移行し、カードの図柄となっているキャラクタが攻撃を行っているイメージが表示され」、「先攻プレイヤのターンが終了すると、次に後攻プレイヤのカードセット画面が表れ、後攻プレイヤのカードセット画面と戦闘画面では、先攻プレイヤの画面と同様、プレイヤによるカード配置の制御と、攻撃イメージの表示処理が行われ、以降同様にして、先攻プレイヤのターンと後攻プレイヤのターンが交互に繰り返される、カードゲーム」は、「1人目のプレイヤ」と「2人目のプレイヤ」が参戦可能であることは明らかであるから、本願発明1の「ゲーム」と引用発明1のカードゲームは、「第1のユーザ」(1人目のプレイヤ」と「第2のユーザ」(2人目のプレイヤ)」が参戦可能な点で共通する。

(3)引用発明1において、「各プレイヤが選択して山札となったカードのデータを並べ替え、後に各プレイヤが山札を引く際に現れるカードの順番を決定」するから、「各プレイヤ」がそれぞれ複数の「カード」を有していることは明らかであり、本願発明1の「第1のユーザ」及び「第2のユーザ」と、引用発明1の「1人目のプレイヤ」及び「2人目のプレイヤ」は、それぞれ複数の「パネル」(カード)を有する点で共通する。

(4)引用発明1において、「仮想カードもまた、プリミティブやポリゴンの組み合わせにより構成されたモデルデータとして管理され」ているから、「ゲーム装置」は、前記「仮想カード」を記憶するデータ記憶部を有することは明らかであり、本願発明1の「サーバ装置」と引用発明1の「ゲーム装置」は、パネル(カード)を記憶するデータ記憶部を有することで共通している。

(5)引用発明1において、「キャラクタ」は「カードの図柄となっている」から、カードがキャラクタを示すものであることは明らかであり、本願発明1の「パネル」と引用発明1の「カード」は、「キャラクタを示す」ものである点で共通する。

(6)引用発明1において、「先攻、後攻が決定されると、次に先攻プレイヤのカードセット画面が表示され、先攻プレイヤは、コントローラを使ってカーソルを操作し、手札、山札のカードを選択したり、選択したカードを各フィールドに配置(セット)したりする」、「後攻プレイヤのカードセット画面と戦闘画面では、先攻プレイヤの画面と同様、プレイヤによるカード配置の制御」をすることのいずれかであるから、引用発明1において「先攻プレイヤ」(1人目のプレイヤと2人目のプレイヤの一方)及び「後攻プレイヤ」(1人目のプレイヤと2人目のプレイヤの他方)は、カードを示すパネルを、マス目(対象の区画)へ配置するための指示することは明らかであるから、ゲーム装置が、該指示を受信する制御部を有するといえる。
してみると、本願発明1の「サーバ装置」と引用発明1の「ゲーム装置」は、パネル(カード)を、対象の区画へ配置するための指示を受信する制御部を有することで共通している。

(7)引用発明1において、「先攻プレイヤにより前記戦闘フィールドにカードがセットされると、画面は先攻プレイヤの戦闘画面へと移行し、カードの図柄となっているキャラクタが攻撃を行っているイメージが表示される」から、「ゲーム装置」が「キャラクタ」が戦闘を行うときに、表示させる画面表示制御部を有することは明らかであり、本願発明1の「サーバ装置」と引用発明1の「ゲーム装置」は、「戦闘を行うときに、キャラクタを表示させる画面表示制御部」を有する点で共通する。

2.一致点・相違点
前記「1.」の検討をふまえれば、本願発明1と引用発明1とは、つぎの一致点で一致し、各相違点で相違するものである。

<一致点>
「第1のユーザと第2のユーザとが参戦可能なゲームを制御する装置であって、
前記第1のユーザが有する複数のパネル、および、前記第2のユーザが有する複数のパネルを記憶するデータ記憶部と、
前記第1のユーザおよび前記第2のユーザによる、キャラクタを示すパネルを、対象の区画へ配置するための指示を受信する制御部と
前記キャラクタが戦闘を行うときに、前記キャラクタを表示させる画面表示制御部と、を備える装置。」
<相違点1>
「ゲームを制御する装置」が、本願発明1では「サーバ装置」であるのに対して、引用発明1では「ゲーム装置」である点。

<相違点2>
本願発明1では「前記第1のユーザが有する複数のパネル」が「第1のパネルデータベース」として記憶され、「前記第2のユーザが有する複数のパネル」が「第2のパネルデータベース」として記憶されるのに対して、引用発明1ではどのような形で記憶されるのかが明示されていない点。

<相違点3>
本願発明1では「キャラクタが戦闘を行うときに、前記キャラクタを動くキャラクタとして表示させる」のに対して、引用発明1では「戦闘画面」において「カードの図柄となっているキャラクタが攻撃を行っているイメージが表示されるというように、カードセット画面においてプレイヤが行った操作に応じた演出効果が発生」するが、キャラクタを動くキャラクタとして表示させるのか否か明示されていない点。

3.各相違点についての当審の判断

(1)相違点1について
ゲームの技術分野において、ゲームの制御をサーバ装置で行うことは、例示するまでもなく周知技術である(以下、「周知技術4」という。)ところ、ゲームの制御をサーバ装置で行うかゲーム装置で行うかは当業者が適宜選択し得る設計的事項であるから、引用発明1において、周知技術4を採用して、前記相違点1に係る本願発明の構成となすことは当業者が適宜なし得たことである。

(2)相違点2について
ゲームの技術分野において、データベース形式によりデータを記憶することは、例示するまでもなく周知技術である(以下、「周知技術5」という。)ところ、引用発明1において、周知技術5を適用して、前記相違点2に係る本願発明の構成となすことは当業者が適宜なし得たことである。

(3)相違点3について
前記「第3 4.」で検討したように、ゲームにおいてキャラクタを動くキャラクタとして表示させることは周知技術(周知技術3)であるから、引用発明1において、「カードの図柄となっているキャラクタが攻撃を行っているイメージが表示されるというよう」な「演出効果」として、周知技術3を採用して、前記相違点3に係る本願発明の構成となすことは当業者であれば適宜なし得たことである。

(4)平成31年9月5月10日提出の意見書(以下、「意見書」という。)における請求人の主張について

ア.審判請求人は、意見書において、「そして、拒絶理由通知では、引用文献2,3を根拠として「ゲームにおいて動画を用いてキャラクタが自動で動くような演出を行うこと」なる周知技術3を認定し、「カードの図柄となっているキャラクタが攻撃を行っているイメージが表示されるというような演出効果」として周知技術3を採用して、相違点4に係る本願発明の構成となることは当業者であれば適宜なし得たこと判断されました。・・・仮にそのような周知技術3があるとしても、これを引用発明1に適用する動機づけがありません。引用発明1はカードを用いた戦闘ゲームであるのに対し、引用文献2,3に記載されるのは漫画(コミック)を主とする戦闘を全く考慮しないゲームであり、そもそもカードゲームでもありませんので、技術分野が異なります。その他、周知技術3を引用発明1に適用する動機づけは見当たらず、「周知技術3を採用」するのはまさに後知恵というべきものです。
本願発明では、戦闘を行うときに、キャラクタを動くキャラクタとして表示させるようにしたことに技術的意義があるのであり、この点は引用文献1?3のいずれにも開示されていません。」(2頁9ないし23行)と主張する。

しかしながら、前記周知技術3は、キャラクタを動くキャラクタとして表示させるというゲームにおける演出効果として一般的ともいえる技術であって、「キャラクタが攻撃を行っているイメージが表示される」引用発明1においてゲームの演出の一態様として前記周知技術3を採用することは当業者にとって適宜なし得たことにすぎない。
よって、請求人の前記主張は採用できない。

イ.審判請求人は、意見書において、「引用発明1における「演出効果」を動画とすることには、以下のような阻害要因があります。前提として、相違点2として認められているように、引用発明1は、サーバでなく、スタンドアローンのゲーム装置です。したがって、引用発明1のゲーム装置はサーバのような処理性能を有していませんし、サーバのように十分な記憶容量があるわけではありません。限られた処理性能および記憶容量でゲームを行うのが引用発明1です。
まず、動画を表示させるためには高い処理能力を要しますが、上述したように引用発明1は高い処理性能を持たないゲーム装置です。だからこそ、引用文献1では仮想カードの図柄として静止画のみを想定しており(引用文献1の[0027],[0039])、動画を表示することを明確に排除しています。
加えて、動画を表示させるためには大きな記憶容量を要しますが、上述したように引用発明1は十分な記憶容量を持たないゲーム装置です。しかも、引用発明1によって行われるゲームは通常のゲームより大きな記憶容量を必要とします。なぜなら、引用文献1は、「複数のプレイヤが同じ画面を共有してカードゲームをプレイする場合でも、お互いの手の内を知られることなくゲームを楽しめるようにすることを目的」としており(同[0007])、そのために、特定のカードに識別マークを対応付け、当該特定のカードに代えて識別マークを表示させるようにしたものであり、どのカードにどの識別マークを割り当てるかをプレイヤが設定できます([請求項1]、[0022]?[0025],[0034]?[0036])。そのためには、当然、カードと識別マークとの対応関係を記憶する必要があります。そのようにゲーム用に大きな記憶容量を必要とする引用文献1において、さらに、静止画に代えて動画を表示させるためのデータを記憶する余裕などありません。だからこそ、やはり、仮想カードの図柄として静止画のみを想定しており(引用文献1の[0027],[0039])、動画を表示することを明確に排除しています。」(2頁24行ないし3頁1行)と主張する。

しかしながら、本願の第1原出願の出願日である平成25年5月31日におけるスタンドアローンのゲーム装置の技術水準は、動画を表示するのに十分な処理能力及び記憶容量を備えたものであることは明らかであり(例えば平成18年発売のゲーム機「PlayStation3」は、CPU、GPU、メモリとして256MBのXDR Main RAMと256MBのGDDR VRAMを備えており(下記【ウェブページに掲載された情報1】参照。)、平成17年発売のゲーム機「Xbox 360」はCPU、GPU、システムメモリとして512MBのGDDR3 RAMを備えており(下記【ウェブページに掲載された情報2】参照。)、「PlayStation3」と「Xbox 360」の両ゲーム機に対応したゲームである「真.北斗無双」は、キャラクタが戦闘を行うときに、前記キャラクタを動くキャラクタとして表示させるものである(下記【ウェブページに掲載された情報3】参照。)。)、該技術水準に鑑みれば引用発明1のゲーム機が、高い処理性能や十分な記憶容量を持たないものであり、動画を表示することを明確に排除しているとはいえない。
また、前記「3.(1)」で検討したように、ゲームの技術分野において、ゲームの制御をサーバ装置で行うことは、例示するまでもなく周知技術である(以下、「周知技術4」という。)ところ、ゲームの制御をサーバ装置で行うかゲーム装置で行うかは当業者が適宜選択し得る設計的事項であるから、引用発明1において、周知技術4を採用して、前記相違点1に係る本願発明の構成となすことは当業者が適宜なし得たことである。
仮にスタンドアローンのゲーム装置の処理性能や記憶容量が動画を表示することができないようなものであったとしても、サーバ装置でゲームの制御をおこなえば、審判請求人の主張する処理性能や記憶容量の問題は生じない。
よって、引用発明1における「演出効果」を動画とすることには、阻害要因があるとの、請求人の前記主張は採用できない。

【ウェブページに掲載された情報1】 PLAYSTATION3 2006年11月11日 日本国内発売、3頁、online、掲載年月日(2006年5月9日)、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント、検索日(2019年9月25日)、https://www.jp.playstation.com/info/release/nr_20060509_ps3.html

【ウェブページに掲載された情報2】 超速報!Xbox360ついに正式発表!!、3ないし4頁、online、掲載年月日(2005年5月12日)、ファミ通.com、検索日(2019年9月25日)、https://web.archive.org/web/20050515080009/https://www.famitsu.com/game/news/2005/05/12/

【ウェブページに掲載された情報3】 『真・北斗無双』 プレイ動画 ユダ、ゲームのキャラクタが動いて戦闘する動画の表示と「PS3/Xbox360」の表記がある。online、掲載年月日(2012年11月15日)、コーエーテクモChannel、検索日(2019年9月25日)、https://www.youtube.com/watch?v=k4sXpTho3rc

ウ.審判請求人は、意見書において、「なお、相違点2(審判註:相違点1の誤記と解される。)に関し、「ゲームの制御をサーバ装置で行うかゲーム装置で行うかは当業者が適宜選択し得る設計的事項である」と認定されています。しかし、仮に引用発明1における「ゲーム装置」を「サーバ装置」に置き換えること(相違点1)が当業者にとって容易であり、静止画(イメージ)に代えて動画を表示させること(相違点3)が当業者にとって容易であるとしても、「ゲーム装置」を「サーバ装置」に置き換えることによって、静止画に代えて動画を表示させること(あるいは、静止画に代えて動画を表示させるために、「ゲーム装置」を「サーバ装置」に置き換えること)までもが当業者にとって容易であるとは言えません。」(3頁5ないし12行)と主張する。

しかしながら、前記「3.(1)」で検討したようにゲームの技術分野において、ゲームの制御をサーバ装置で行うことは、例示するまでもなく周知技術である(以下、「周知技術4」という。)ところ、ゲームの制御をサーバ装置で行うかゲーム装置で行うかは当業者が適宜選択し得る設計的事項であるから、引用発明1において、周知技術4を採用して、前記相違点1に係る本願発明の構成となすことは当業者が適宜なし得たことであり、前記「3.(3)」で検討したように、ゲームにおいてキャラクタを動くキャラクタとして表示させることは周知技術(周知技術3)であるから、引用発明1において、「カードの図柄となっているキャラクタが攻撃を行っているイメージが表示されるというよう」な「演出効果」として、周知技術3を採用して、前記相違点3に係る本願発明の構成となすことは当業者であれば適宜なし得たことであって、相違点1と相違点3は互いに関連性のない独立したものであるので、別々に判断することが不適切とはいえない。
よって、「ゲーム装置」を「サーバ装置」に置き換えることによって、静止画に代えて動画を表示させること(あるいは、静止画に代えて動画を表示させるために、「ゲーム装置」を「サーバ装置」に置き換えること)までもが当業者にとって容易であるとはいえないとの請求人の主張は採用できない。

(5)本願発明1の効果について
本願発明1の効果についてみても、引用発明1及び技術常識に基づいて当業者が予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

4.小括
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明1、周知技術2ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第5 むすび
前記のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、前記の結論のとおり審決する。 よって、前記の結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-10-04 
結審通知日 2019-10-08 
審決日 2019-10-21 
出願番号 特願2017-26791(P2017-26791)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 彦田 克文  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 清水 康司
畑井 順一
発明の名称 ゲームプログラム、ゲーム処理方法および情報処理装置  
代理人 大野 聖二  
代理人 大野 浩之  
代理人 小林 英了  
代理人 松野 知紘  

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