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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65G
管理番号 1357576
審判番号 不服2019-3487  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-13 
確定日 2019-12-27 
事件の表示 特願2015-128607「ガラス基板の転向方法、及びガラス基板の転向装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月12日出願公開、特開2017- 7858、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年6月26日の出願であって、平成30年10月23日付けで拒絶理由が通知がされ、同年11月20日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、平成31年1月17日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年3月13日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1?8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1及び2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等
1.実願昭62-171980号(実開平1-76838号)のマイクロフィルム
2.特開2001-135701号公報

第3 本願発明
本願請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明8」という。)は、平成30年11月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりである。
「【請求項1】
送り動作を行うことで矩形状のガラス基板を平置き状態で搬送する搬送手段と、送り動作中の前記搬送手段上から前記ガラス基板を持ち上げると共に、その向きを転向させた後、送り動作中の前記搬送手段上に前記ガラス基板を復帰させる転向手段とを用いて、前記ガラス基板の向きを搬送経路上で転向させるためのガラス基板の転向方法であって、
前記転向手段は、旋回機を有し、
前記旋回機が前記搬送手段上から前記ガラス基板を持ち上げて前記ガラス基板の向きを転向させた後、前記旋回機から前記ガラス基板を落下させることで、前記搬送手段上に前記ガラス基板を復帰させることを特徴とするガラス基板の転向方法。
【請求項2】
前記ガラス基板の下面の外縁に存する相互に平行に延びた一対のエッジ部を前記旋回機によって掬い上げることで、前記搬送手段上から前記ガラス基板を持ち上げると共に、前記一対のエッジ部の掬い上げを維持した状態で前記ガラス基板の向きを転向させることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板の転向方法。
【請求項3】
前記ガラス基板を挟んで相互に逆向きに傾斜した姿勢をとることにより、掬い上げた前記一対のエッジ部をそれぞれ支持する一対の支持部を前記旋回機に設けたことを特徴とする請求項2に記載のガラス基板の転向方法。
【請求項4】
前記一対の支持部のそれぞれを前記一対のエッジ部と平行に延びる軸線の周りで回動させることにより、該一対の支持部を相互に接近及び離反させ、
前記一対の支持部を相互に接近させた状態で、前記一対のエッジ部を支持すると共に、前記一対の支持部を相互に離反させて前記一対のエッジ部の支持を解除することで、前記ガラス基板を落下させることを特徴とする請求項3に記載のガラス基板の転向方法。
【請求項5】
前記搬送手段として、複数の搬送ローラーを備えたローラーコンベアを用いることを特徴とする請求項2?4のいずれかに記載のガラス基板の転向方法。
【請求項6】
前記ガラス基板が落下する距離を100mm以下とすることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載のガラス基板の転向方法。
【請求項7】
前記搬送経路に沿って複数枚の前記ガラス基板を搬送すると共に、これらのガラス基板間の前記搬送経路に沿った相互間の間隔を、向きの転向前よりも転向後に短くすることを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載のガラス基板の転向方法。
【請求項8】
送り動作を行うことで矩形状のガラス基板を平置き状態で搬送する搬送手段と、送り動作中の前記搬送手段上から前記ガラス基板を持ち上げると共に、その向きを転向させた後、送り動作中の前記搬送手段上に前記ガラス基板を復帰させる転向手段とを備え、前記ガラス基板の向きを搬送経路上で転向させるように構成されたガラス基板の転向装置であって、
前記転向手段は、旋回機を有し、
前記旋回機が前記搬送手段上から前記ガラス基板を持ち上げて前記ガラス基板の向きを転向させた後、前記旋回機から前記ガラス基板を落下させることで、前記搬送手段上に前記ガラス基板を復帰させるように構成されていることを特徴とするガラス基板の転向装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「間隙を有するロール等によって板状体を搬送するコンベヤの下側に、該板状体を浮揚させる空気吐出手段を配設し、該空気吐出手段の上部に前記板状体を衝接保持する保持具と、該保持具を水平面内で旋回させる駆動機構とを設けたことを特徴とする板状体の旋回装置。」(明細書1ページ5行?10行)(下線は当審で付与した。以下同様。)

(2)「〔産業上の利用分野〕
本考案は、コンベヤにより搬送される板状体の姿勢を変換する装置に関し、詳細には例えば異形板ガラスの一辺を移送方向に対して直角に旋回させる装置に係るものである。」(明細書1ページ12行?16行)

(3)「〔作用〕
例えばロールコンベヤにより所定の速度で搬送されている板状体の端縁が、空気吐出手段の噴気孔上に到達すると上方に向けて噴気孔より空気が噴出させ、板状体をその噴出する空気圧によって浮揚させると共に、噴出孔の上部に設けた保持具に当接させて浮揚状態で当該板状体を支持させる。ついで、該保持具と連結せしめた旋回駆動機構の作動により、浮揚状態で保持具に接触支持せしめた状態の板状体を該保持具の水平面内での回動に追従せしめ、規定の角度まで旋回させて停止せしめるのに連動させて空気の噴出を停止させることにより、浮揚中の板状体をその自重によって回転中のロールコンベヤ上に落下せしめ、姿勢を変換して搬送させるようにするものである。」(明細書4ページ4行?19行)

(4)「ロール2の回転で→方向に搬送される板ガラス3は、所定の位置に到達すると図示されない光電センサーで位置を確認し、確認した信号によってダクト6に取付ける自動弁8を開とし、コンベヤ1の下に配設するヘッダー5とダクト6を介して連結する図示されない回転中のブロアーより吐出する加圧空気は、ダクト6、ヘッダー5を経由してスリット4より噴出し、ロール2上で移送中の板ガラス3を浮揚させる。浮揚する板ガラス3は、スリット4の上部に設けた旋回駆動機構10に懸吊する保持具13の杆20に衝接し、噴出する空気によって押圧状に支持されるものである。
一方前記ブロアーの起動信号から遅延する別信号が旋回駆動機構10のモーター14を起動させ、減速部15に組み込まれた機構により出力軸である立軸11も回動するが、立軸11と接手12、12’で継ながる保持具13の杆20も一体に回動し、杆20に捲着したクロス22と衝接する板ガラス3は、杆20の回動で発生する抵抗によって杆20に追従して旋回するものである。減速部15の上部に設けた回動片16も、立軸11と同一の軸、すなわち通し軸に固着されているためモーター14の回動に追従し回わるが、リミットスイッチ21の検知装置を作動させて規定する角度に旋回を停止させるもので、該スイッチの配設位置で、施回角度を調節できるものである。施回が終了すると施回停止の信号によってモーター14の停止と連動して前記自動弁8が閉じ、スリット4より噴出する空気の停止によって板ガラス3は、自重により回転中のロール2上に落下し、ロール2の回転でコンベヤ1の末端に配設する図示されない移載機に受け渡されるものである。」(明細書7ページ14行?9ページ6行)

(5)引用文献1の第1?3図を参照すると、板ガラス3は、平置き状態で搬送され、浮揚させた後で、旋回駆動機構10により搬送経路上の水平面内で旋回され、コンベヤ1上に落下させて、コンベヤ1上に復帰させていることが分かる。

(6)引用文献1には、上記事項を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、実施例として次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「ロール2の回転を行うことで異形板ガラス3を平置き状態で搬送するコンベヤ1と、ロール2の回転中の前記コンベヤ1上から前記板ガラス3を加圧空気をスリット4より噴出し浮揚させると共に、水平面内で旋回させた後、ロール2の回転中の前記コンベヤ1上に前記板ガラス3を落下させる、板ガラス3を浮揚させる空気吐出手段及び板ガラス3を衝接保持する保持具13を水平面内で旋回させる駆動機構とを用いて、前記板ガラス3を搬送経路上の水平面内で旋回させるための板ガラス3の旋回方法であって、
前記駆動機構は、旋回駆動機構10を有し、
前記空気吐出手段が加圧空気をスリット4より噴出し前記コンベヤ1上から前記板ガラス3を浮揚させて、モーター14による旋回駆動機構10が前記板ガラス3を水平面内で旋回させた後、前記空気吐出手段の空気の停止により前記旋回駆動機構10から前記板ガラス3を落下させることで、前記コンベヤ1上に前記板ガラス3を復帰させる板ガラス3の旋回方法。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、LCD(液晶ディスプレイ)に用いられるガラス基板などの基板搬送装置および基板搬送方法に関するものである。」

(2)「【0057】(実施の形態2)以下、本発明の実施の形態2を図10,11を参照して説明する。
・・・(中略)・・・
【0061】また、ステージ取付板30と天板11との間には、ステージ取付板30を180°だけ回転可能にする、すなわちチャック35に保持された基板1の向きを変えるために回動する、回動手段10が介挿されている。この場合には実施の形態1で、保持手段としてのハンド6aおよび多関節アーム6bの向きを変えるための主軸21の回転動作をしなくてもよい。
・・・(中略)・・・
【0063】次に、前記構成からなる基板搬送装置による搬送方法を説明すると、基板1をロボット6で基板入りカセット2から待避ステージ8に受け渡すところまでは、実施の形態1と同一のため、説明を省略する。
【0064】待避ステージ8(受け取り手段)のチャック35に基板1を受け渡したロボット6は、待避ステージ8の回転可能位置まで下降する。次に、基板1をチャック35で保持した待避ステージ8は、回動手段10により180°回転し、基板1の向きを変える。
【0065】待避ステージ8の動作で向きの変わった基板1を搬送するため、ロボット6のハンド6aを待避ステージ8との基板受け渡し位置まで上昇し、すなわち基板1をチャック35に保持させるときの高さよりも、更に高い位置まで保持手段としてのハンド6aを上昇させて基板1をチャック35の屈曲部35aより持ち上げ、その後、ハンド6aにより基板1を吸着し、シリンダ32を回動作させてロッド連結板32cにより直接に待避ステージ8のチャック35を開いてハンド6a上に基板1を受け取る。次いで、ハンド6aに吸着保持された基板1がチャック35の屈曲部35aに当接しない位置までロボット6を下降させた後、実施の形態1と同様に、ロボット6をX方向に移動して空カセット4に対向させ、ハンド6aをY方向に移動することにより空カセット4へ基板1を収納する。
【0066】本発明の実施の形態によれば、待避ステージ8に回動手段10を備えることで、空カセット4への基板1の収納方向を180°転換することができる。そして、ロボット6の上空に待避ステージ8を設置することで、搬送装置全体の設置面積において省スペース化を図ることができる。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「板ガラス3」は、本願発明1の「ガラス基板」に相当する。
以下同様に、「コンベヤ1」は、「搬送手段」に、
コンベヤ1の「ロール2の回転」は、搬送手段の「送り動作」に、
板ガラス3を「加圧空気をスリット4より噴出し浮揚させ」ることは、ガラス基板を「持ち上げ」ることに、
板ガラス3を「水平面内で旋回」させることは、ガラス基板の「向きを」「転向」させることに、
コンベヤ上に板ガラス3を「落下させる」ことは、搬送手段上にガラス基板を「復帰させる」ことに、
「板ガラス3を浮揚させる空気吐出手段及び板ガラス3を衝接保持する保持具13を水平面内で旋回させる駆動機構」は、「転向手段」に、
「旋回駆動機構10」は、「旋回機」に、
「板ガラス3の旋回方法」は、「ガラス基板の転向方法」に、
「駆動機構は、旋回駆動機構10を有し」ていることは、「転向手段は、旋回機を有し」ていることに、それぞれ相当する。

以上のことから、本願発明1と引用発明とは次の点で一致する。
「送り動作を行うことでガラス基板を平置き状態で搬送する搬送手段と、送り動作中の前記搬送手段上から前記ガラス基板を持ち上げると共に、その向きを転向させた後、送り動作中の前記搬送手段上に前記ガラス基板を復帰させる転向手段とを用いて、前記ガラス基板の向きを搬送経路上で転向させるためのガラス基板の転向方法であって、
前記転向手段は、旋回機を有し、
前記搬送手段上から前記ガラス基板を持ち上げて前記ガラス基板の向きを転向させた後、前記ガラス基板を落下させることで、前記搬送手段上に前記ガラス基板を復帰させるガラス基板の転向方法。」

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点1]
ガラス基板の形状に関して、本願発明1においては、ガラス基板は「矩形状のガラス基板」であるのに対して、
引用発明においては、板ガラス3は「異形板ガラス3」である点。

[相違点2]
ガラス基板の持ち上げ、転向及び落下に関して、本願発明1においては、「旋回機が前記搬送手段上から前記ガラス基板を持ち上げて前記ガラス基板の向きを転向させた後、前記旋回機から前記ガラス基板を落下させること」で行われるのに対して、
引用発明においては、「空気吐出手段が加圧空気をスリット4より噴出し前記コンベヤ1上から前記板ガラス3を浮揚させて、モーター14による旋回駆動機構10が前記板ガラス3を水平面内で旋回させた後、前記空気吐出手段の空気の停止により前記旋回駆動機構10から前記板ガラス3を落下させること」で行われる点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点2について先に検討する。
ア 上記相違点2は、ガラス基板の持ち上げ、転向及び落下に関して、本願発明1においては、ガラス基板の持ち上げ、転向及び落下の全てを「旋回機」が行うのに対して、引用発明においては、ガラス基板の転向については「旋回駆動機構10」(本願発明1の「旋回機」に相当。)が行うものの、ガラス基板の持ち上げ及び落下については上記旋回駆動機構10とは異なる機構である「空気吐出手段」が行う点で、両者は実質的に相違している。

イ 引用発明において、ガラス基板の転向を行う「旋回駆動機構10」により、ガラス基板の持ち上げ及び落下も行わせるように変更することについて、引例文献1に記載又は示唆があるものではなく、また、かかる変更が設計的事項であるともいえない。
この後者の点につき、より具体的に述べれば、引用発明において、ガラス基板の転向を行う「旋回駆動機構10」の作動方法はモーター14を用いたものであるのに対して、ガラス基板の持ち上げ及び落下を行う「空気吐出手段」の作動方法は加圧空気を用いたものであって、両作動方法は互いに異なるものであることに照らすと、「旋回駆動機構10」がガラス基板の持ち上げ及び落下を行うようにするような変更は、単なる設計的事項の範囲内の変更ではない。

ウ 次に、引用文献2に関して検討すると、当該引用文献2には、ロボット6のハンド6aが、ガラス基板1を吸着した状態で上昇して、ガラス基板1を待避ステージ8に受け渡し、ハンド6aが下降し、待避ステージ8の回動手段10がガラス基板1の向きを変え、ハンド6aが上昇してガラス基板1を吸着して受け取り、ハンド6aが下降した後、空カセット4へガラス基板1を収納することが記載されている(「第4 2」を参照。)
ここで、引用文献2に記載された事項における「ガラス基板1」は、本願発明1における「ガラス基板」に対応し、また、「ガラス基板1の向きを変える」ことは、ガラス基板の「転向」に、それぞれ対応する。
そうすると、引用文献2に記載された事項は、ガラス基板の「上昇」及び「下降」についてはロボット6のハンド6aが行い、ガラス基板の「転向」については待避ステージ8の回動手段10が行うことを開示するといえる。
しかし、引用文献2に記載された事項は、ガラス基板の転向を行う回動手段10により、ガラス基板の上昇及び下降も行わせることを示唆するものではなく、また、ガラス基板の上昇及び下降を行うロボット6のハンド6aにより、ガラス基板の転向も行わせることを示唆するものでもない。
また、引用文献2に記載された事項において、ガラス基板の上昇、転向及び下降の全てを、回動手段10またはロボット6のハンド6aのいずれか一方だけにより行わせることが、設計的事項であるともいえない。
そうすると、たとえ引用発明に引用文献2に記載された事項を適用したとしても、相違点2に係る本願発明1の構成に至るものではない。

エ 加えるに、本願発明1は、相違点2に係る本願発明1の構成により、次の記載に示される作用効果を奏しうる。すなわち、「また、ガラス基板2の向きを転向させる間に、ローラーコンベア3と旋回機4との間だけでガラス基板2が受け渡される上、転向後のガラス基板2をローラーコンベア3上に復帰させるにあたっては、旋回機4からガラス基板2を落下させている。そのため、ガラス基板2の向きの転向に要するタクトタイムを短縮することができ、転向のための作業を効率よく実行することが可能である。」(本願明細書の段落【0050】)、及び「本願発明1では、搬送手段上からガラス基板を持ち上げる動作と、持ち上げたガラス基板の向きを転向させる動作との、両動作を旋回機が担う。従って、持ち上げのための機構と、転向のための機構とを別々に設けた場合とは異なり、搬送手段上からガラス基板を持ち上げた後、転向が完了するまでの間に、旋回機から旋回機以外の機構にガラス基板を受け渡す必要がなくなる。この受け渡しが不要となる分だけタクトタイムを短縮することができ、作業効率を高めることが可能となる。さらには、上記の両動作を旋回機が担うことで、正確に所望の向きにガラス基板を転向させることも可能となる。また、上記の特有の構成により、本願発明1では、搬送手段による送り動作を停止させることなく、旋回機が搬送手段上からガラス基板を持ち上げることができると共に、搬送手段上にガラス基板を復帰させることができる。さらに、搬送手段上からガラス基板が持ち上げられた後、転向後のガラス基板が再び搬送手段上に復帰してくるまでの間についても、搬送手段による送り動作を停止させる必要がない。つまり、本願発明1では、常に搬送手段に送り動作を行わせることができる。このため、旋回機によるガラス基板の向きの転向を行いつつ、これと同時に搬送手段上にある他のガラス基板(旋回機による転向前のガラス基板や転向後のガラス基板)を搬送することができる。すなわち、転向前のガラス基板を搬送経路上の旋回機による持ち上げを行う位置に向けて搬送できると共に、転向後のガラス基板を搬送経路の下流側に向けて搬送できる。その結果、繰り返し複数のガラス基板の向きを転向させる上で、そのために要する時間を大幅に短縮でき、更に作業効率を高めることが可能となる。」(平成31年3月13日付け審判請求書の「3.(1)」を参照。)

オ 以上のことから、引用発明において、相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2?7について
本願発明2?7は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明8について
本願発明8は、本願発明1に対応する物の発明であり、本願発明1の「旋回機が前記搬送手段上から前記ガラス基板を持ち上げて前記ガラス基板の向きを転向させた後、前記旋回機から前記ガラス基板を落下させること」と同じ構成を備えるものであるから、上記「1(2)」に示した理由と同様の理由により、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?8は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-12-17 
出願番号 特願2015-128607(P2015-128607)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井上 信  
特許庁審判長 大町 真義
特許庁審判官 尾崎 和寛
小関 峰夫
発明の名称 ガラス基板の転向方法、及びガラス基板の転向装置  
代理人 城村 邦彦  
代理人 熊野 剛  

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