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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 F17C 審判 全部申し立て 2項進歩性 F17C |
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管理番号 | 1357631 |
異議申立番号 | 異議2018-700735 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-09-10 |
確定日 | 2019-10-18 |
分離された異議申立 | 有 |
異議申立件数 | 3 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6294243号発明「天然ガス燃料の供給装置および方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6294243号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-9〕、〔10-14〕について訂正することを認める。 特許第6294243号の請求項1ないし5、8ないし14に係る特許を維持する。 特許第6294243号の請求項6及び7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6294243号(以下「本件特許」という。)の請求項1?14に係る特許についての出願(特願2015-2139号)は、平成21年3月10日を国際出願日とする特願2010-550168号の一部を平成27年1月8日(優先権主張外国庁受理2008年3月10日、2008年3月19日 欧州特許庁)に新たな特許出願としたものであって、平成30年2月23日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:平成30年3月14日)がされた。 本件特許異議の申立て以降の経緯は、次のとおりである。 平成30年9月10日 :特許異議申立人東野克彦(以下「申立人A」という。)による請求項1?14に係る特許に対する特許異議の申立て(以下「第1申立て」という。) 平成20年9月13日 :特許異議申立人寺●恵子(●の字は、「崎」の「大」の部分が、「立」の最下部の横線を含まないもの。以下「申立人B」という。)による請求項1?14に係る特許に対する特許異議の申立て(以下「第2申立て」という。) 平成31年1月18日付け :取消理由通知 平成31年4月22日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下当該訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。) 令和元年6月20日 :申立人Aによる意見書提出 令和元年6月24日 :申立人Bによる意見書提出 第2 訂正の適否について 1.訂正の内容 本件訂正請求は、「特許6294243号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?14について訂正する」ことを求めるものであり、その内容は、訂正箇所に下線を伏して示すと、次のとおりである。 (1)訂正事項1 本件訂正前の請求項1に「前記逆止弁(16)の前の全ての圧縮ステージ(9、10)は油不要であり」とあるのを、「前記逆止弁(16)の前の全ての圧縮ステージ(9、10)は潤滑油を使用せず」に訂正する。 (請求項1の記載を直接あるいは間接に引用する請求項2?5、8?9も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 本件訂正前の請求項1に「前記圧縮ステージ(9、10、13、14)のうち少なくとも一つは、前記圧縮ステージの給送量および給送圧力の少なくともいずれか一方を制御する可制御弁(23、24、25)を備えたバイパス(20、21、22)を有する」とあるのを、「前記圧縮ステージ(9、10、13、14)のうち少なくとも一つは、前記圧縮ステージの給送量および給送圧力の少なくともいずれか一方を制御する可制御弁(23、24、25)を備えたバイパス(20、21、22)を有し、前記流入口(3)と前記逆止弁(16)との間に、天然ガスを前記LNG貯蔵タンク(5)に戻すためのリターンパイプ(50)が存在する」に訂正する。 (請求項1の記載を直接あるいは間接に引用する請求項2?5、8?9も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 本件訂正前の請求項5に「前記第二圧縮ステージ(10)は、直列に接続された二つのステージの圧縮ステージからなる」とあるのを、「前記第二圧縮ステージ(10)は、直列に接続された二つのコンプレッサからなる」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (6)訂正事項6 本件訂正前の請求項8に「請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置の使用法。」とあるのを、「請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置の使用法。」に訂正する。 (7)訂正事項7 本件訂正前の請求項10に「前記天然ガスは少なくとも第一および第二ピストンコンプレッサ(11、12)において油無しの状態で圧縮され」とあるのを、「前記天然ガスは、前記逆止弁(16)の前の全ての圧縮ステージ(9、10)において潤滑油のない状態で圧縮され」に訂正する。 (請求項10の記載を、直接あるいは間接に引用する請求項11?14も同様に訂正する。) (8)訂正事項8 本件訂正前の請求項10に「前記ピストンコンプレッサ(11、12、15)のうち少なくとも一つはバイパス(20、21、22)を備え、天然ガスは、前記流出口(7)における前記天然ガスが所望の目標圧力(Psoll)となるように、前記少なくとも一つのバイパス(20、21、22)を介して戻される」とあるのを、「前記ピストンコンプレッサ(11、12、15)のうち少なくとも一つはバイパス(20、21、22)を備え、天然ガスは、前記流出口(7)における前記天然ガスが所望の目標圧力(Psoll)となるように、前記少なくとも一つのバイパス(20、21、22)を介して戻され、前記流入口(3)と前記逆止弁(16)との間のリターンパイプ(50)によって、天然ガスを前記LNG貯蔵タンク(5)に戻すことができる」に訂正する。 (請求項10の記載を、直接あるいは間接に引用する請求項11?14も同様に訂正する。) 2.一群の請求項、訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の「油不要であり」という記載が、「油を要しない」という意味か、「油を使わない」という意味であるのかが明確ではなかったものを、「潤滑油を使用せず」と明確にするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 本件特許明細書の段落【0010】には、「前記第一および第二圧縮ステージは油なしで圧縮を行なうことが望ましい。この構成は、前記第一および第二圧縮ステージにおいて圧縮される天然ガスが汚染されず、必要に応じて、LNG貯蔵タンクに戻されることが可能であるという利点を有する。」という記載があり、本件特許明細書に記載された「第一および第二圧縮ステージ」が、「油」を使用せず圧縮するものであって、かつ、圧縮機において使用される油は潤滑油であることは技術常識であり、さらに本件特許明細書の「クロスヘッドは油潤滑式」(段落【0026】)という記載とも整合するから、訂正事項1は新規事項を追加するものではない。さらに実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではないことは明らかである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項1に係る「装置」に、「前記流入口(3)と前記逆止弁(16)との間に、天然ガスを前記LNG貯蔵タンク(5)に戻すためのリターンパイプ(50)が存在する」との構成を付加し、限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 本件訂正前の請求項7には、「前記流入口(3)と前記逆止弁(16)との間に、天然ガスを前記LNG貯蔵タンク(5)に戻すためのリターンパイプ(50)が存在することを特徴とする請求項6に記載の装置。」という記載があるから、訂正事項2は新規事項を追加するものではない。さらに実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではないことは明らかである。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、本件訂正前の請求項5の「前記第二圧縮ステージ(10)」が、「直列に接続された二つのステージの圧縮ステージ」からなるという記載を、「直列に接続された二つ」の具体的な圧縮するため構成として、「コンプレッサ」と限定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 本件特許明細書の段落【0024】には、「コンプレッサ2は、直列に接続された二つのピストンコンプレッサ12からなる第二圧縮ステージ10を備え、」という記載があるから、訂正事項3は新規事項を追加するものではない。さらに実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではないことは明らかである。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、本件訂正前の請求項6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 訂正事項4が、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではないことは明らかである。 (5)訂正事項5について 訂正事項5は、本件訂正前の請求項7を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 訂正事項5が、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではないことは明らかである。 (6)訂正事項6について 訂正事項6は、本件訂正前の請求項8が「請求項1乃至7」を引用するものであったところ、上記訂正事項4及び5により削除された請求項6及び7を引用しないものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 訂正事項6が、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではないことは明らかである。 (7)訂正事項7について 訂正事項7は、本件訂正前の請求項10の記載について、「油無しの状態」で、「前記天然ガス」は「少なくとも第一及び第二ピストンコンプレッサ(11,12)において」「圧縮」とは、どのような技術的事項を特定しようとしているか明確であるとはいえなかったところ、訂正事項7によって、「前記逆止弁(16)」の前の全ての「圧縮ステージ(9,10)」において、「潤滑油のない状態」で「圧縮」されることを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定される明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 本件特許明細書の段落【0010】には、「前記第二および第三圧縮ステージの間に逆止弁が存在し、前記第一および第二圧縮ステージは油なしで圧縮を行なうことが望ましい。この構成は、前記第一および第二圧縮ステージにおいて圧縮される天然ガスが汚染されず、必要に応じて、LNG貯蔵タンクに戻されることが可能であるという利点を有する。」という記載があるから、訂正事項7は、新規事項を追加するものではない。また、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでないことは明らかである。 (8)訂正事項8について 訂正事項8は、本件訂正前の請求項10に係る「天然ガス燃料を燃焼エンジンに供給する方法」について、「前記流入口(3)と前記逆止弁(16)との間のリターンパイプ(50)によって、天然ガスを前記LNG貯蔵タンク(5)に戻すことができる」との構成を付加し限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 本件訂正前の請求項7には、上記(2)に示した記載があるから、訂正事項8は新規事項を追加するものではない。さらに実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではないことは明らかである。 (9)一群の請求項について 訂正前の請求項1?9は、請求項2?9が直接あるいは間接に本件訂正に係る請求項1を引用するものであるから、本件訂正請求のうち本件訂正後の請求項1?9に対して請求する訂正事項1?6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1-9〕に対して請求するものである。 本件訂正前の請求項10?14は、請求項11?14が直接あるいは間接に本件訂正に係る請求項10を引用するものであるから、本件訂正のうち本件訂正後の請求項10?14に対して請求する訂正事項7及び8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項〔10-14〕に対して請求するものである。 3.小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、本件訂正後の請求項〔1-9〕、〔10-14〕についての訂正を認める。 第3 本件発明 以上のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?5、8?14に係る発明(以下「本件発明1」等といい、まとめて、「本件発明」ということがある。)は、本件訂正請求に係る訂正特許請求の範囲の請求項1?5、8?14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 天然ガス燃料を供給する装置(1)であって、該装置(1)はコンプレッサ(2)を備え、該コンプレッサ(2)は、天然ガス(4)の流れの流入口(3)であって、LNG貯蔵タンク(5)に連通して配置され、かつボイルオフガス(6)を前記LNG貯蔵タンク(5)から供給する流入口(3)と、天然ガス供給パイプ(8)に連通して配置される流出口(7)とを備えた装置(1)において、前記コンプレッサ(2)は第一圧縮ステージ(9)および次の第二圧縮ステージ(10)を備え、前記第一および第二圧縮ステージ(9、10)はピストンリングシール式ピストンコンプレッサ(11、12)の形態を有し、前記第一圧縮ステージ(9)は前記第二圧縮ステージ(10)より大きなピストン径を備え、前記コンプレッサ(2)は少なくとも一つの次の第三圧縮ステージ(13、14)を備え、前記第三圧縮ステージ(13、14)はピストンリングシール式ピストンコンプレッサ(15)の形態を有し、 前記第二圧縮ステージ(10)と前記第三圧縮ステージ(13)との間に、逆止弁(16)が存在し、 前記逆止弁(16)の前の全ての圧縮ステージ(9、10)は潤滑油を使用せず、 前記圧縮ステージ(9、10、13、14)のうち少なくとも一つは、前記圧縮ステージの給送量および給送圧力の少なくともいずれか一方を制御する可制御弁(23、24、25)を備えたバイパス(20、21、22)を有し、 前記流入口(3)と前記逆止弁(16)との間に、天然ガスを前記LNG貯蔵タンク(5)に戻すためのリターンパイプ(50)が存在することを特徴とする装置。 【請求項2】 前記圧縮ステージ(9、10、13、14)の全ては共通クランク駆動機構(17)によって駆動されることを特徴とする請求項1に記載の装置。 【請求項3】 前記圧縮ステージ(9、10、13、14)の全ては、共通ケーシング(18)に取付けられることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。 【請求項4】 前記第三および第四圧縮ステージ(13、14)は、共通シリンダ(15a)内に位置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。 【請求項5】 前記第二圧縮ステージ(10)は、直列に接続された二つのコンプレッサからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。 【請求項8】 燃焼エンジン(32)に、天然ガスを供給するための請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置の使用法。 【請求項9】 ディーゼル発動機に、天然ガスを供給するための請求項8に記載の装置の使用法。 【請求項10】 天然ガス燃料を燃焼エンジンに供給する方法であって、ボイルオフガス(6)を液化天然ガスを含むLNG貯蔵タンク(5)から得て、そのボイルオフガス(6)をピストンリングシール式ピストンコンプレッサ(11、12)からなる第一および第二圧縮ステージ(9、10)において圧縮し、次に、前記天然ガスをピストンリングシール式ピストンコンプレッサ(15)からなる少なくとも一つの第三圧縮ステージ(13、14)において圧縮し、それによって、前記天然ガスを100バール(10MPa)から500バール(50MPa)の間の圧力まで圧縮し、前記天然ガスを流出口(7)において利用可能とし、 前記第二圧縮ステージ(10)の後、前記天然ガスは逆止弁(16)を介して前記第三圧縮ステージ(13)に供給され、 前記天然ガスは、前記逆止弁(16)の前の全ての圧縮ステージ(9,10)において潤滑油のない状態で圧縮され、 前記ピストンコンプレッサ(11、12、15)のうち少なくとも一つはバイパス(20、21、22)を備え、天然ガスは、前記流出口(7)における前記天然ガスが所望の目標圧力(Psoll)となるように、前記少なくとも一つのバイパス(20、21、22)を介して戻され、 前記流入口(3)と前記逆止弁(16)との間のリターンパイプ(50)によって、天然ガスを前記LNG貯蔵タンク(5)に戻すことができることを特徴とする方法。 【請求項11】 前記ピストンリングシール式ピストンコンプレッサ(11、12)は第一および第二圧縮ステージ(9、10)を備え、前記ピストンリングシール式ピストンコンプレッサ(15)は第三および第四圧縮ステージ(13、14)を備え、前記天然ガスは少なくとも四つの圧縮ステージ(9、10、13、14)によって圧縮されることを特徴とする請求項10に記載の方法。 【請求項12】 前記流出口(7)から流出した後、前記天然ガスは燃焼エンジン(32)に供給され、かつ、前記目標圧力(Psoll)は前記燃焼エンジン(32)が必要とする圧力であることを特徴とする請求項10に記載の方法。 【請求項13】 前記天然ガスは圧縮ステージ(9、10、13、14)の後において冷却されることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一項に記載の方法。 【請求項14】 前記ピストンコンプレッサ(11、12、15)の全ては共通クランクシャフト(17a)によって駆動されることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか一項に記載の方法。」 第4 当審の判断 1.取消理由の概要 本件発明1?5、8?14に対して、当審が平成31年1月18日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。なお、各申立てにおいて申立人が提出した甲第1号証等を、以下「甲1」等という。 「【理由1】(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 【理由2】(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 【理由3】(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 < 引 用 文 献 等 一 覧 > 1.特開2006-177618号公報(第2申立ての甲4) 2.特開平10-227398号公報(第2申立ての甲1) 3.特開2001-82329号公報(第1申立ての甲1) 4.特開2003-286950号公報(第1申立ての甲2) 5.特開平8-270563号公報(第1申立ての甲3) 6.特開平8-270557号公報(第1申立ての甲4)) 7.特開2006-37759号公報(第1申立ての甲7) 8.米国特許第4,756,674号明細書(第1申立ての甲11) 9.特開2006-348752号公報(第1申立ての甲10) 10.特開2002-213366号公報(第1申立ての甲16) ・【理由1】(サポート要件)について 請求項1?5、8?14について 本件特許明細書の記載によれば、本件特許の請求項1及び10に係る発明は、天然ガスのボイルオフガスから抽出された燃料を、燃焼エンジンに好適な燃料とすることを可能にするための装置及び方法であって、逆止弁よりも上流側に設けたリターンパイプによって過剰な天然ガスをLNG貯蔵タンク内へ戻すにあたり、第一圧縮ステージ及び第二圧縮ステージにおいて圧縮される天然ガスが汚染されず、必要に応じてLNGタンクに戻されることを可能とすることを課題とするものである。 そうすると、当該課題を解決するためには、逆止弁(16)よりも上流にある全ての圧縮ステージは潤滑油を用いずに潤滑されるものである一方、逆止弁(16)よりも下流にある全ての圧縮ステージが、潤滑油を用いるものである点、及び、流入口(3)と逆止弁(16)との間に、天然ガスをLNG貯蔵タンク(5)に戻すためのリターンパイプ(50)が存在する点が、本件発明の課題解決に直接寄与する事項であると解される。しかし、本件特許の請求項1及び請求項1を引用する請求項2?5、8、9、並びに、請求項10及び請求項10を引用する請求項11?14は、上記した2つの点を発明特定事項としていない。そうすると、前記課題を解決し得ないものをも含む請求項1?5、8?14に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるといえない。 ・【理由2】(明確性)について (1)請求項1?5、8、9 請求項1には「油不要であり」という記載があり、請求項6には「油不要である」という記載があるが、「油不要」とはどのような技術的事項を特定しようとしているのかが明確ではない。 (2)請求項10?14 請求項10には、「油無しの状態で圧縮され」という記載があるが、どのような技術的事項を特定しようとしているのかが明確ではない。したがって、請求項10と、それらを引用する請求項11?14に係る発明は明確ではない。 ・【理由3】(進歩性) 本件発明1?5、8?14について 本件発明1は、引用文献1に記載された引用発明及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2.取消理由についての判断 (1)理由1(サポート要件)について 上記に示したように、訂正事項1、2、7、8に係る訂正後の、本件発明1?5、8?14は、「逆止弁(16)」よりも上流にある全ての圧縮ステージは潤滑油を用いずに潤滑されるものである点、及び、「流入口(3)」と「逆止弁(16)」との間に、天然ガスをLNG貯蔵タンク(5)に戻すためのリターンパイプ(50)が存在する点を備えたものである。そうすると、当該構成によってリターンパイプ(50)によりLNG貯蔵タンク(5)へ天然ガスが戻されたとしても、「逆止弁(16)」の上流にある全ての圧縮ステージにおいては、潤滑油が用いられないから、当該戻された天然ガスが潤滑油によって汚染されることはない。そして「逆止弁(16)」の下流側に流れた天然ガスは「逆止弁(16)」の作用によってもはや上流側に逆流することはないから、本件訂正後の本件発明1?5、8?14は、上記1.の「【理由1】(サポート要件)について」に示した本件発明の課題を解決するものである。 そうすると、本件発明1?5、8?14は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるといえ、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定された要件を満たすものである。 (2)理由2(明確性)について 上記第2の2.(1)に示したように、訂正事項1により、請求項1における「油不要であり」は、「潤滑油を使用せず」と訂正されたため、明確となった。 そして上記第2の2.(4)に示したように、訂正事項4により、請求項6は削除された。 さらに、上記第2の2(7)に示したように、訂正事項7により、請求項10における「油無しの状態で圧縮され」は「前記逆止弁(16)の前の全ての圧縮ステージ(9、10)において潤滑油のない状態で圧縮され」と訂正されたため、明確となった。 よって、以上のとおりであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は明確ではないとはいえないから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。 (3)理由3(進歩性)について ア.本件発明1について (ア)引用文献 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された刊行物である、上記引用文献1には、次の記載がある。 「【0001】 本発明は、LNGタンクからのボイルオフガスとLNGとを燃料として供給する燃料供給装置およびこれを備えたLNG船に関するものである。 【背景技術】 【0002】 LNG船等では、発生するボイルオフガスを安全かつ効率的に処理する必要があり、ボイラあるいは内燃機関等の燃料として利用されている。ボイルオフガスのみで所要量が不足する場合には、LNGタンクのLNGを蒸気又は温水で強制蒸発させてボイルオフガスと合わせて供給されるのが一般的である。 ボイラの燃料供給装置として、例えば、特許文献1に示されるものが提案されている。 これは、ボイルオフガスとLNGとが緩熱器に、下流側からの天然ガスによって緩熱されて圧縮機に導入され、昇圧され、さらに加熱器によって加熱され、ボイラへ供給されるものである。」 「【0006】 上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。 すなわち、本発明にかかる燃料供給装置は、LNGを貯蔵するLNGタンクで発生するボイルオフガスを圧縮機によって昇圧し、利用部へ供給する燃料供給ラインと、前記LNGタンクのLNGを強制蒸発させ天然ガスとし、前記燃料供給ラインにおける前記圧縮機の上流側に供給する強制蒸発ラインと、該強制蒸発ラインの下流端部分に設けられ、強制蒸発された天然ガスをカーゴタンク圧と同じ圧力まで減圧し前記燃料供給ラインへ供給する開度調整弁と、前記強制蒸発ラインにおける前記開度調整弁の上流側で分岐され、前記燃料供給ラインにおける前記圧縮機の下流側に接続し、圧縮機吐出よりも高い圧力で天然ガスの供給を開始する高圧供給ラインと、を備えていることを特徴とする。 【0007】 本発明によれば、LNGタンクで発生する略大気圧のボイルオフガスは、圧縮機によって昇圧され、利用部へ燃料として供給される。利用部の負荷が上がり、発生するボイルオフガスでは所要量が不足するようになると、強制蒸発ラインを稼動しLNGタンクのLNGを強制蒸発することで天然ガスとし、ボイルオフガスと混気して圧縮機に供給されることとなる。 このとき、天然ガスは開度調整弁及び減圧機構によってカーゴタンクと同じ大気圧付近まで減圧されて圧縮機へ供給される。利用部の負荷がさらに上がりLNGタンクからのLNG供給量を増加させる為、ベーパライザ上流の流量調整弁が開き、LNGが供給される。一方、圧縮機入口側に供給されるガス量は開度調整弁及び減圧機構で流れが制限されているのでLNGの供給量増は開度調整弁の上流側の強制蒸発ラインおよび高圧供給ラインの圧力が増加することになる。そして、強制蒸発ラインおよび高圧供給ラインの圧力が圧縮機出口圧力よりも高くなると、天然ガスは高圧供給ラインから燃料供給ラインにおける圧縮機の下流側に供給されるようになり、燃料供給ラインに供給される天然ガス量の増加は圧縮機を経由せずに直接行うことができる。」 「【0016】 以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。 [第一実施形態] 以下、本発明の第一実施形態にかかる燃料供給装置1について、図1および図2を用いて説明する。本実施形態の燃料供給装置1は、蒸気タービン主機によって駆動されるLNG船に適用され、蒸気を生成するボイラ(利用部)へ天然ガスを燃料として供給するものである。 図1は、燃料供給装置1の全体概略構成を示すブロック図である。 燃料供給装置1には、LNGを貯蔵するLNGタンク3と、LNGタンク3で発生したボイルオフガスを図示しないボイラへ供給する燃料供給ライン5と、LNGタンク3のLNGを強制蒸発して燃料供給ライン5へ供給する強制蒸発ライン7とが備えられている。 【0017】 燃料供給ライン5には、ボイルオフガスの流れ方向に沿って、圧縮機9と、供給ヒータ11と、供給圧力調整弁13と、が設けられている。 圧縮機9は、ボイルオフガスを昇圧加温して下流側に供給するものである。圧縮機9の下流側には、供給されるボイルオフガスが圧縮機に逆流することがないように供給チェック弁15が設けられている。供給チェック弁15と圧縮機9との間と、圧縮機9の上流側と、を連結して戻りライン17が設けられている。戻りライン17には圧力制御弁19が設けられており、圧縮機9の出口圧力が供給チェック弁15の上流圧よりも低い場合に、ボイルオフガスを圧縮機9の上流側に戻して再循環させるように構成されている。 【0018】 供給ヒータ11は、ボイラへ供給されるボイルオフガスの温度を昇温させるものである。供給ヒータ11の上流側と下流側とを連結してヒータバイパスライン21が設けられている。ヒータバイパスライン21には、バイパス流量調整弁23が設けられている。バイパス流量調整弁23は、下流側における燃料供給ライン5のボイルオフガス温度を計測する温度計25の計測値を一定にする為にその開閉および開度が制御されるように構成されている。 供給圧力調整弁13は、ボイラへ供給されるボイルオフガスの流量及び圧力を調整するものである。 【0019】 強制蒸発ライン7には、LNGあるいは天然ガスの流れ方向に沿って、LNGタンク3に貯蔵されたLNGを供給するカーゴポンプ27と、LNGの流量を調節するLNG流量調整弁29と、LNGを蒸発させるベーパライザ31と、緩熱器33と、減圧弁(開度調整弁)35とが備えられている。 ベーパライザ31は、LNGを加熱して蒸発させ、天然ガスとするものであり、蒸気や温水による加熱方式が用いられている。 燃料供給ライン7のベーパライザ31の上流側に、緩熱器33にLNGを供給するLNG分岐管37が設けられている。LNG分岐管37には、緩熱器33に入る前の位置に、流量調節弁39が設けられている。 【0020】 緩熱器33は、略円筒形状縦型の圧力容器又は垂直配管の一部であり、側面中央よりも下部側面よりにベーパライザ31からの強制蒸発ライン7が接続されている。緩熱器33の側面上方位置に、LNG分岐管37に接続されているLNG導入管41が挿入されている。LNG導入管41の下部には複数の散布孔が設けられており、導入されたLNGが散布される。 ベーパライザ31からの接続部とLNG導入管41との間の空間には、気液接触用障害物が配置されており、散布されたLNGと導入された天然ガスとが接触してLNGが気化されるとともに天然ガスの温度が低下させられる。 緩熱器33の上端部には、燃料供給ライン5へ天然ガスを供給する強制蒸発ライン7が接続されている。 【0021】 減圧弁35は、導入される天然ガスの圧力が高い場合でも、カーゴタンクと同じ圧力、例えば、大気圧(第一の所定圧力)で下流側へ供給するように構成されている。 強制蒸発ライン7は燃料供給ライン5における圧縮機9の上流側に天然ガスを供給するように接続されている。強制蒸発ライン7の燃料供給ライン5への供給部分には、減圧機構兼エダクタとしてのエダクタ43が設けられている。 エダクタ43には、図2に示されるように、強制蒸発ライン7に接続された流路が先絞りとされた加速部45が備えられている。 強制蒸発ライン7から供給される天然ガスは、加速部45によって加速されて燃料供給 ライン5へ導入される。加速部45の側部から送られるボイルオフガスは、加速された天然ガスによって吸引されて加速される。これにより、合流部での圧力上昇は流速に変化されるので、圧力上昇を避けることができる。 【0022】 緩熱器33と減圧弁35との間の分岐点Aと、燃料供給ライン5における供給チェック弁15(圧縮機9)の下流側に位置する合流点Bとを接続する高圧供給ライン47が設けられている。 高圧供給ライン47の合流点B側には、エダクタ48およびチェック弁49が設けられている。チェック弁49は、上流側の高圧供給ライン47の圧力が圧縮機の吐出圧力、例えば、200kPaAを超えると、高圧供給ライン47から燃料供給ライン5へ天然ガスを供給するように構成されている。 エダクタ48は、エダクタ43と同じ構造をしており、加速部45には高圧供給ライン47が接続されている。 高圧供給ライン47から供給される天然ガスは、加速部45によって加速されて燃料供給ライン5へ導入される。加速部45の側部から送られるボイルオフガスは、加速された天然ガスによって吸引されて加速される。これにより、合流部での圧力上昇は流速に変換されるので、圧力上昇を避けることができる。 【0023】 緩熱器33の下部ドレン溜めの下端部には、ガス供給ライン51が接続されている。ガス供給ライン51の緩熱器33側には、ガス供給ライン51を加熱するヒータコイル(加熱手段)53が備えられている。ガス供給ライン51の他端は、燃料供給ライン5における合流点B(圧縮機9)の下流側に位置する合流点Cに接続されている。 ガス供給ライン51の合流点C側には、ガス供給チェック弁55が設けられている。ガス供給チェック弁55は、上流側のガス供給ライン51の圧力が一定の圧力、例えば、200kPaAを超えると、ガス供給ライン51から燃料供給ライン5へドレンの蒸発気体を供給するように構成されている。 また、ガス供給ライン51は、途中で分岐されカーゴタンク3のベントライン59に接続されており、ドレン溜の液面上昇が一定のラインを超える場合にはカーゴタンク3へガスとして戻すことができるように構成されている。 【0024】 以上、説明した本実施形態にかかるボイラの燃料供給装置1の動作について説明する。 起動時等におけるボイラ負荷の低い時には、ボイルオフガスのみで十分な燃料となる。 この場合、LNGタンク3で発生した大気圧下のボイルオフガスは、-140?-160℃位の状態で、燃料供給ライン5で圧縮機9へ送られる。この時、配管途中での周囲環境からの入熱によって圧縮機9の入口では、略-100?-70℃位まで昇温される。 圧縮機9では、このボイルオフガスを圧縮して、加圧する。この加圧されたボイルオフガスの圧力が、供給チェック弁15上流のガス圧力、例えば略200kPaAよりも高い場合には、戻りライン17で再循環させることなくボイルオフガスは、供給チェック弁15から下流に送られる。 【0025】 このボイルオフガスは、供給ヒータ11でさらに昇温され、ボイラへは、例えば、略40℃で送られる。この時、供給ヒータでは、ボイルオフガスを40℃よりも高温になるように加熱し、ヒータバイパスライン21を通る供給ヒータ11で加熱する前のボイルオフガスと混合して冷却して略40℃になるようにしている。これは、ボイルオフガスの温度を計測する温度計25の計測値によってバイパス流量調整弁23の開度あるいは開閉を調節し、ヒータバイパスライン21を通る冷却用のボイルオフガス量を調整することで行われる。 温度が調整されたボイルオフガスは、供給量調整弁13によって所定の圧力に調整されボイラに燃料として供給される。 【0026】 ボイラの負荷が上がり、ボイルオフガスのみでは燃料として量が不足するようになると、強制蒸発ライン5が稼動される。 カーゴポンプ27が作動し、LNGタンク3内のLNGを汲み上げベーパライザ31へ供給する。この時、LNGの供給量は、ボイラ負荷に応じてLNG流量調整弁29によって調整されている。 ベーパライザ31に導入されたLNGは、蒸気又は温水によって加熱される。加熱されたLNGは蒸発し天然ガスとされ、緩熱器33の下部に供給される。 【0027】 導入された天然ガスは、LNG分岐管37を通って導入され、LNG導入管41の下部から噴霧されたLNGと接触する。この接触により、LNGは気化し、ボイルオフガスは冷やされる。両者が混合して温度制御された天然ガスとした状態で、緩熱器33から搬出される。この出口温度は、流量調整弁39によってLNGの供給量を調節することにより適宜な温度に設定できる。 本実施形態では、この温度は略-120℃になるように調整されている。 この天然ガスは、減圧弁35から大気圧状態でエダクタ43の加速部45に供給され、ボイルオフガスと混合されて圧縮機9へ導入される。この時、圧縮機9に導入される天然ガスとボイルオフガスの混合気の温度は、略-100℃となっている。 この温度は、天然ガスの温度の設定値によって、適宜な値に設定できる。 【0028】 このように、減圧弁35からボイルオフガスに温度の低い天然ガスを供給して圧縮機9へ導入される天然ガスの温度を低下させることができるので、圧縮機9の圧縮率および圧縮効率を向上させることができる。 このように圧縮率が向上すると、圧縮機9の駆動動力を低減させることができ、安定した運転を行うことができる。また、圧縮機容量が低減できるので、製造コストを安価にでき、運転コストも低減できる。 さらに、導入される天然ガス等の温度が低減すると圧縮機9の重量流量が増加されるので、より多くの天然ガス等を圧縮して下流へ排出できる。このため、ボイラ負荷の増加に対して効率的に燃料の増加を行うことができる。」 「【0030】 このようにして、その後のLNG増量分は、圧縮機9の下流側に位置する燃料供給ライン7に供給され、圧縮機9からのものと混合されてボイラへ供給される。 一方、ボイラの負荷が低下してLNGの所要量が減少すると、LNGタンク3からのLNG供給量が減少させられ、結果的に、減圧弁35の上流側の強制蒸発ライン7および高圧供給ライン47の圧力が減少する。この圧力が圧縮機の吐出圧、例えば略-200kPaAよりも低下すると、チェック弁49が閉じ高圧供給ライン47から燃料供給ライン5への天然ガスの供給が遮断され、燃料供給ラインに供給される天然ガスは圧縮機の入口側へのみとなる。更にLNG供給量が下がればその量も減少し、ベーパラ-ザの停止により燃料供給ラインに供給される天然ガスはボイルオフガスのみとなる。これ以下の流量では圧縮機の流量調整手段、例えば圧縮機回転スピード、ガイドベーンおよび再循環弁により調整される。 【0031】 このように、本実施形態によれば、減圧弁35によって供給量を制限した強制蒸発ライン7と併せて、圧縮機9と並列に設けた高圧供給ライン47によって天然ガスの供給量を調整するようにしたので、ボイラの負荷変動に応じて天然ガスの供給量を滑らかに増減させることができる。 また、圧縮機9を通る天然ガスとボイルオフガスとの混合気は、一定の量以上にはならず、しかも流量の変動が少なくなる。このため、圧縮機を小型化および省動力化することができる。」 「【図1】 【図3】 」 ここで、圧縮機9は流入した天然ガスを圧縮して吐出するものであるから、圧縮機9が、天然ガス燃料の流入口と流出口を備えたものであることは明らかである。 そうすると、引用文献1には以下の「燃料供給装置」に関する発明である引用発明Aが記載されている。 「天然ガス燃料を供給する燃料供給装置1であって、該燃料供給装置1は圧縮機9を備え、該圧縮機9は、天然ガスの流れの流入口であって、LNGタンク3に連通して配置され、かつボイルオフガスを前記LNGタンク3から供給する流入口と、天然ガスの供給パイプに連通して配置される流出口とを備えた燃料供給装置1において、 圧縮機9の下流側に供給チェック弁15が存在し、 圧縮機9の給送圧力を制御する圧力制御弁19を有する燃料供給装置」 また、引用文献1には、以下の「天然ガス燃料を燃焼エンジンに供給する方法」に関する発明である引用発明Bが記載されている。 「天然ガス燃料を燃焼エンジンに供給する方法であって、ボイルオフガスを液化天然ガスを含むLNGタンク3から得て、そのボイルオフガスを圧縮機9において圧縮し、それによって、前記天然ガスを200kPaAの圧力まで圧縮し、前記天然ガスを流出口において利用可能とし、 前記天然ガスは供給チェック弁15を介して供給され、 前記圧縮機9は戻りライン17を備え、天然ガスは、前記流出口における前記天然ガスが所望の目標圧力となるように、前記戻りライン17を介して戻される方法。」 (イ)対比 本件発明1と引用発明Aとを対比すると、両者は次の点で相違する。 <相違点1-1> 本件発明1は、「コンプレッサ(2)は第一圧縮ステージ(9)および次の第二圧縮ステージ(10)を備え、前記第一および第二圧縮ステージ(9、10)はピストンリングシール式ピストンコンプレッサ(11、12)の形態を有し、前記第一圧縮ステージ(9)は前記第二圧縮ステージ(10)より大きなピストン径を備え、前記コンプレッサ(2)は少なくとも一つの次の第三圧縮ステージ(13、14)を備え、前記第三圧縮ステージ(13、14)はピストンリングシール式ピストンコンプレッサ(15)の形態」を有するものであるのに対し、引用発明Aの「圧縮機9」がそのようなものであるか不明である点。 <相違点1-2> 本件発明1は、「逆止弁(16)」が、「前記第二圧縮ステージ(10)と前記第三圧縮ステージ(13)との間に」存在するものであるのに対し、引用発明Aはそのようなものではない点。 <相違点1-3> 本件発明1は、「逆止弁(16)の前の全ての圧縮ステージ(9、10)は潤滑油を使用せず」とするものであるのに対し、引用発明Aがそのようなものであるか不明である点。 <相違点1-4> 本件発明1は、「前期流入口(3)と前期逆止弁(16)との間に、天然ガスを前記LNG貯槽タンク(15)に戻すためのリターンパイプ(50)が存在する」のに対し、引用発明Aが「流入口」と「供給チェック弁15」との間に、天然ガスを「LNGタンク3」に戻すためのパイプを備えたものであるか、不明である点。 (ウ)相違点についての検討 まず、相違点<1-3>及び<1-4>について検討する。 引用文献1の、「・・・本発明にかかる燃料供給装置は、LNGを貯蔵するLNGタンクで発生するボイルオフガスを圧縮機によって昇圧し、利用部へ供給する燃料供給ラインと、前記LNGタンクのLNGを強制蒸発させ天然ガスとし、前記燃料供給ラインにおける前記圧縮機の上流側に供給する強制蒸発ラインと、該強制蒸発ラインの下流端部分に設けられ、強制蒸発された天然ガスをカーゴタンク圧と同じ圧力まで減圧し前記燃料供給ラインへ供給する開度調整弁と、前記強制蒸発ラインにおける前記開度調整弁の上流側で分岐され、前記燃料供給ラインにおける前記圧縮機の下流側に接続し、圧縮機吐出よりも高い圧力で天然ガスの供給を開始する高圧供給ラインと、を備えていることを特徴とする。 本発明によれば、LNGタンクで発生する略大気圧のボイルオフガスは、圧縮機によって昇圧され、利用部へ燃料として供給される。利用部の負荷が上がり、発生するボイルオフガスでは所要量が不足するようになると、強制蒸発ラインを稼動しLNGタンクのLNGを強制蒸発することで天然ガスとし、ボイルオフガスと混気して圧縮機に供給されることとなる。・・・」(段落【0006】、【0007】)という記載から、引用発明Aは、LNGタンク3で発生するボイルオフガスを全量圧縮機によって昇圧し、燃料供給ラインへ供給するものであって、利用部の負荷が上がり、発生するボイルオフガスでは所要量が不足するようになると、強制蒸発ラインを稼働しLNGタンクのLNGを強制蒸発することで天然ガスとし、ボイルオフガスと混気して圧縮機に供給されることとなるようにすることで、「圧縮機9を通る天然ガスとボイルオフガスとの混合気は、一定の量以上にはならず、しかも流量の変動が少なくなる。このため、圧縮機を小型化および省動力化することができる。」(段落【0031】)との作用効果を奏するものである。 そうすると、LNGタンク3で発生するボイルオフガスは、全量が圧縮機9を経由して、燃料供給ラインへ送られて利用に供されるから、LNGタンク3へ返送される天然ガスは存在しないので、引用発明Aに上記<相違点1-4>に係る本件発明1の構成を備えることの動機付けは存在しない。また、引用発明Aにそのような構成を備えることは、引用発明Aの「圧縮機9」において、利用に供されないLNGタンク3へ返送するボイルオフガスを見込んで「圧縮機9」の能力を決定しなければならず、そのことは、引用発明Aが達成しようとする「圧縮機を小型化および省力化」を妨げることとなるから、引用発明Aを上記<相違点1-4>に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、阻害事由が存在するといえる。 本件発明1は、上記相違点<1-3>に加えて上記相違点<1-4>を備えたものとすることで、過剰な天然ガスが生じたとしても、LNG貯蔵タンク5内へ戻すことができ、そうした際であっても、本件発明1の「前記逆止弁(16)の前の全ての圧縮ステージ(9、10)は潤滑油を使用」しないものであるから、LNG貯蔵タンク5内へ戻される天然ガスが、潤滑油に汚染されたものとなることはない(本件特許明細書段落【0010】、【0017】)との格別な作用効果を奏する。 よって、引用発明Aを上記<相違点1-3>及び<相違点1-4>に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。 (エ)小括 以上のとおりであるから、上記<相違点1-1>及び<相違点1-2>について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 イ.本件発明2?5、8、9について 本件発明2?5、8、9は、直接あるいは間接に本件発明1を引用するものである。よって、上記ア.(ウ)に示したように、本件発明1は、引用発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の特定事項の全てを包含し、さらに限定した本件発明2?5、8、9も、引用発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 ウ.本件発明10について (ア)引用文献 上記ア.(ア)に示したように、引用文献1には、上記引用発明Bが記載されている。 (イ)対比 本件発明10と引用発明Bとを対比すると、次の点で相違する。 <相違点2-1> ボイルオフガスの圧縮に関し、本件発明10は、「ピストンリングシール式ピストンコンプレッサ(11、12)からなる第一および第二圧縮ステージ(9、10)において圧縮し、次に、前記天然ガスをピストンリングシール式ピストンコンプレッサ(15)からなる少なくとも一つの第三圧縮ステージ(13、14)において圧縮し、それによって、前記天然ガスを100バール(10MPa)から500バール(50MPa)の間の圧力まで圧縮」するものであるのに対し、引用発明Bの「圧縮機9」がそのような圧縮をなすかが不明である点。 <相違点2-2> 本件発明10は、「前記第二圧縮ステージ(10)」の後、「天然ガス」が、「逆止弁(16)を介して前記第三圧縮ステージ」に供給されるものであるのに対し、引用発明Bがそのようなものであるか不明である点。 <相違点2-3> 本件発明10は、「前記天然ガスは少なくとも第一および第二ピストンコンプレッサ(11、12)において油無しの状態で圧縮され」るものであるのに対し、引用発明Bがそのようなものであるか不明である点。 <相違点2-3> 本件発明10は、「前記天然ガスは、前記逆止弁(16)の前の全ての圧縮ステージ(9,10)において潤滑油のない状態で圧縮され」るものであるのに対し、引用発明Bがそのようなものであるか不明である点。 <相違点2-4> 本件発明10は、「前期流入口(3)と前期逆止弁(16)との間のリターンパイプ(50)によって、天然ガスを前記LNG貯蔵タンク(5)に戻すことができる」のに対し、引用発明Bが、そもそも、「流入口」と「供給チェック弁15」との間に、天然ガスを「LNGタンク3」に戻すためのパイプを備えたものであるか、不明である点。 (ウ)相違点についての検討 まず、相違点<2-3>及び<相違点2-4>について検討する。 相違点<1-3>及び<2-3>、並びに、相違点<1-4>及び<2-4>は、カテゴリーの相違に基づく相違であって、実質的には同じ相違点である。 そして、上記ア.(ウ)で示したことと同様の理由により、引用発明Bを上記<相違点2-3>及び<相違点2-4>に係る本件発明10の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。 (エ)小括 以上のとおりであるから、本件発明10は、引用発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 イ.本件発明11?14について 本件発明11?14は、直接あるいは間接に本件発明10を引用するものである。よって、上記ウ.(ウ)に示したように、本件発明10は、引用発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明10の特定事項の全てを包含し、さらに限定した本件発明11?14は、引用発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない 3.採用しなかった特許異議申立理由 (1)申立人Aの申立理由について ア.申立理由 申立人Aは、第1申立てにおいて、甲1?17を提出し、大要、次の理由A-1及びA-2の申立理由を主張している。 (ア)理由A-1(進歩性) 本件発明1?14は、甲1に記載された発明、及び従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、それらの特許は特許法第113条第2号の規定に該当するから、取り消されるべきものである。 (イ)理由A-2(明確性) 本件特許の請求項5では、「前記第二圧縮ステージ(10)」を「直列に接続された二つのステージを圧縮ステージからなる」としているが、「直列に接続された二つのステージの圧縮ステージ」の形態と第二圧縮ステージと第三圧縮ステージとが直列に配列されている形態とでは、どのように相違するのか請求項の記載からも明細書中の記載からも明らかではない。 イ.当審の判断 (ア)理由A-1(進歩性について) 申立人Aが提出した甲1?17のいずれにも、天然ガス燃料として供給する装置において、上記第4の2.(3)ア.(イ)に示した<相違点1-3>及び<相違点1-4>に係る本件発明1の構成を備えたものは記載されていないし、このものを示唆する記載もない。そして、本件発明1は、当該構成備えることで、上記第4の2.(3)ア.(ウ)に示した格別な作用効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、甲1及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 したがって、申立人Aの理由A-1の主張は失当である。 (イ)理由A-2(明確性について) 請求項5は、本件訂正の訂正事項3により、「前記第二圧縮ステージ(10)は、直列に接続された二つのコンプレッサからなる」と訂正されたから、上記ア.(イ)に示した申立人Aの理由A-2の主張は、その根拠を欠くものとなった。 (2)申立人Bの申立理由について ア.申立理由 申立人Bは、第2申立てにおいて、甲1?11を提出し、大要、次の理由B-1及びB-2を主張している。 (ア)理由B-1(進歩性について) 本件発明1?14は、甲1?11に記載された発明あるいは事項、及び、従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、それらの特許は特許法第113条第2号の規定に該当するから、取り消されるべきものである。 (イ)理由B-2(明確性について) 「圧縮ステージ」という用語は、「コンプレッサ(ピストンコンプレッサ)」及び「ステージ」との関係が不明であるので、「コンプレッサ(ピストンコンプレッサ)に複数が含まれ得る」のか、「複数のコンプレッサ(ピストンコンプレッサを含み得る」のか、「ステージに複数が含まれ得るの」のか、あるいは、「複数のステージを含み得る」のかということを確定することができない。したがって、「圧縮ステージ」という用語は、明細書の記載を参酌しても、具体的に同様な構成を含み得るのかが不明であるため、この用語を用いている又は引用している請求項1以下の本件特許の全ての請求項の記載は明確ではなく、全ての請求項に係る発明は、明確でない。 イ.当審の判断 (ア)理由B-1(進歩性について) 申立人Bが提出した甲1?11のいずれにも、天然ガス燃料として供給する装置において、上記第4の2.(3)ア.(イ)に示した<相違点1-3>及び<相違点1-4>に係る本件発明1の構成を備えたものは記載されていないし、このものを示唆する記載もない。そして、本件発明1は、当該構成備えることで、上記第4の2.(3)ア.(ウ)に示した格別な作用効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、申立人Bが提出した甲1?11に記載された発明あるいは事項、及び、従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 したがって、申立人Bの理由B-1の主張は失当である。 (イ)理由B-2(明確性について) 上記(1)イ.(イ)に示したように、ステージとは「段階」(広辞苑第六版)という意味であるから、本件特許発明の「圧縮ステージ」とは、「ボイルオフガス」を圧縮させる「段階」であるといえる。そして、本件特許発明においてはLNGが蒸発した「ボイルオフガス」は、「装置(1)」の「流入口」から「逆止弁16」に向けて「装置(1)」を流れるものであり、その際に、「ボイルオフガス」が「圧縮」される「段階」があると理解できる。そして、「ボイルオフガス」を「圧縮」するためには、「圧縮」するための具体的な機器が必要であるところ、本件発明おいては、それが「コンプレッサ(2)」であると理解できる。 そのように理解すると、1つの「圧縮ステージ」、すなわち「圧縮」する「段階」を、複数の「コンプレッサ」を接続して実現できることや、1つの「コンプレッサ」により、複数の「圧縮ステージ」、すなわち「圧縮」する「段階」を実現することができることは、当業者にとって自明であるから、本件特許の請求項1?5、8、9の記載は、第三者の利益が不当に害されるほど不明確であるとはいえない。 したがって、申立人Bの理由B-2の主張は採用できない。 第5 まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1?5、8?14に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明1?5、8?14に係る特許を取り消すことはできない。 本件特許の請求項6、7は、本件訂正により削除されたため、本件特許の請求項6、7に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。よって、本件特許の請求項6、7に係る特許異議の申立ては不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 天然ガス燃料を供給する装置(1)であって、該装置(1)はコンプレッサ(2)を備え、該コンプレッサ(2)は、天然ガス(4)の流れの流入口(3)であって、LNG貯蔵タンク(5)に連通して配置され、かつボイルオフガス(6)を前記LNG貯蔵タンク(5)から供給する流入口(3)と、天然ガス供給パイプ(8)に連通して配置される流出口(7)とを備えた装置(1)において、前記コンプレッサ(2)は第一圧縮ステージ(9)および次の第二圧縮ステージ(10)を備え、前記第一および第二圧縮ステージ(9、10)はピストンリングシール式ピストンコンプレッサ(11、12)の形態を有し、前記第一圧縮ステージ(9)は前記第二圧縮ステージ(10)より大きなピストン径を備え、前記コンプレッサ(2)は少なくとも一つの次の第三圧縮ステージ(13、14)を備え、前記第三圧縮ステージ(13、14)はピストンリングシール式ピストンコンプレッサ(15)の形態を有し、 前記第二圧縮ステージ(10)と前記第三圧縮ステージ(13)との間に、逆止弁(16)が存在し、 前記逆止弁(16)の前の全ての圧縮ステージ(9、10)は潤滑油を使用せず、 前記圧縮ステージ(9、10、13、14)のうち少なくとも一つは、前記圧縮ステージの給送量および給送圧力の少なくともいずれか一方を制御する可制御弁(23、24、25)を備えたバイパス(20、21、22)を有し、 前記流入口(3)と前記逆止弁(16)との間に、天然ガスを前記LNG貯蔵タンク(5)に戻すためのリターンパイプ(50)が存在することを特徴とする装置。 【請求項2】 前記圧縮ステージ(9、10、13、14)の全ては共通クランク駆動機構(17)によって駆動されることを特徴とする請求項1に記載の装置。 【請求項3】 前記圧縮ステージ(9、10、13、14)の全ては、共通ケーシング(18)に取付けられることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。 【請求項4】 前記第三および第四圧縮ステージ(13、14)は、共通シリンダ(15a)内に位置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。 【請求項5】 前記第二圧縮ステージ(10)は、直列に接続された二つのコンプレッサからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 燃焼エンジン(32)に、天然ガスを供給するための請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置の使用法。 【請求項9】 ディーゼル発動機に、天然ガスを供給するための請求項8に記載の装置の使用法。 【請求項10】 天然ガス燃料を燃焼エンジンに供給する方法であって、ボイルオフガス(6)を液化天然ガスを含むLNG貯蔵タンク(5)から得て、そのボイルオフガス(6)をピストンリングシール式ピストンコンプレッサ(11、12)からなる第一および第二圧縮ステージ(9、10)において圧縮し、次に、前記天然ガスをピストンリングシール式ピストンコンプレッサ(15)からなる少なくとも一つの第三圧縮ステージ(13、14)において圧縮し、それによって、前記天然ガスを100バール(10MPa)から500バール(50MPa)の間の圧力まで圧縮し、前記天然ガスを流出口(7)において利用可能とし、 前記第二圧縮ステージ(10)の後、前記天然ガスは逆止弁(16)を介して前記第三圧縮ステージ(13)に供給され、 前記天然ガスは、前記逆止弁(16)の前の全ての圧縮ステージ(9,10)において潤滑油のない状態で圧縮され、 前記ピストンコンプレッサ(11、12、15)のうち少なくとも一つはバイパス(20、21、22)を備え、天然ガスは、前記流出口(7)における前記天然ガスが所望の目標圧力(Psoll)となるように、前記少なくとも一つのバイパス(20、21、22)を介して戻され、 前記流入口(3)と前記逆止弁(16)との間のリターンパイプ(50)によって、天然ガスを前記LNG貯蔵タンク(5)に戻すことができることを特徴とする方法。 【請求項11】 前記ピストンリングシール式ピストンコンプレッサ(11、12)は第一および第二圧縮ステージ(9、10)を備え、前記ピストンリングシール式ピストンコンプレッサ(15)は第三および第四圧縮ステージ(13、14)を備え、前記天然ガスは少なくとも四つの圧縮ステージ(9、10、13、14)によって圧縮されることを特徴とする請求項10に記載の方法。 【請求項12】 前記流出口(7)から流出した後、前記天然ガスは燃焼エンジン(32)に供給され、かつ、前記目標圧力(Psoll)は前記燃焼エンジン(32)が必要とする圧力であることを特徴とする請求項10に記載の方法。 【請求項13】 前記天然ガスは圧縮ステージ(9、10、13、14)の後において冷却されることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一項に記載の方法。 【請求項14】 前記ピストンコンプレッサ(11、12、15)の全ては共通クランクシャフト(17a)によって駆動されることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか一項に記載の方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-10-07 |
出願番号 | 特願2015-2139(P2015-2139) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(F17C)
P 1 651・ 121- YAA (F17C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 谿花 正由輝、宮崎 基樹、浅野 弘一郎 |
特許庁審判長 |
高山 芳之 |
特許庁審判官 |
渡邊 豊英 久保 克彦 |
登録日 | 2018-02-23 |
登録番号 | 特許第6294243号(P6294243) |
権利者 | ブルクハルト コンプレッション アーゲー |
発明の名称 | 天然ガス燃料の供給装置および方法 |
代理人 | 本田 淳 |
代理人 | 永島 秀郎 |
代理人 | 永島 秀郎 |
代理人 | 立山 千晶 |
代理人 | 本田 淳 |
代理人 | 恩田 誠 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 恩田 誠 |
代理人 | 立山 千晶 |
代理人 | 恩田 博宣 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 恩田 博宣 |