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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
審判 全部申し立て 特29条の2  H01M
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
管理番号 1357643
異議申立番号 異議2018-700977  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-03 
確定日 2019-10-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6354869号発明「シート積層装置およびシート積層方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6354869号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?8〕、9、10について訂正することを認める。 特許第6354869号の請求項1?3、5、6、8?10に係る特許を維持する。 特許第6354869号の請求項4、7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6354869号の請求項1?10に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、2013年(平成25年)3月13日(優先権主張2012年(平成24年)3月30日、日本国)を国際出願日とする特願2014-507383号の一部を平成29年1月17日に新たな特許出願としたものであって、平成30年6月22日にその特許権の設定登録がなされ、同年7月11日にその特許掲載公報が発行された。
本件は、その後、その特許について、同年12月3日に特許異議申立人平賀博(以下、「申立人」という。)により請求項1?10に係る特許に対して特許異議の申立てがなされ、平成31年4月24日付けで取消理由が通知され、これに対して、令和1年7月5日付けで特許権者より意見書が提出されるとともに訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされたものである。
なお、申立人に対し、本件訂正請求についての意見を求めたが、申立人から意見書は提出されなかった。

第2 訂正請求について
1 訂正の趣旨、及び、訂正の内容
(1)訂正の趣旨
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許第6354869号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?10について訂正を求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。
なお、当審で訂正箇所に下線を付した。

(2)訂正の内容
ア 訂正事項1
請求項1について、訂正前の
「前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションとの間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有し、
前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラと、前記第1の押圧ポジションに位置する第1のクランプ装置の少なくとも前記シート積層体を押圧する部分とは、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重ならず、」を
「前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションとの間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有し、
前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、
前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わり、
前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラと、前記第1の押圧ポジションに位置する第1のクランプ装置の少なくとも前記シート積層体を押圧する部分とは、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重ならず、」と訂正する。

イ 訂正事項2
請求項2について、訂正前の
「前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションとの間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有し、
前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラと、前記第1の押圧ポジションに位置する第1のクランプ装置の少なくとも前記シート積層体を押圧する部分とは、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重ならず、」を
「前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションとの間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有し、
前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、
前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わり、
前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラと、前記第1の押圧ポジションに位置する第1のクランプ装置の少なくとも前記シート積層体を押圧する部分とは、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重ならず、」と訂正する。

ウ 訂正事項3
請求項3について、訂正前の
「積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、前記シートの周辺の一部を露出した状態で前記シートを保持する第1の搬送ハンドラと、
積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、前記シートの周辺の一部を露出した状態で前記シートを保持する第2の搬送ハンドラと、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第1のクランプ装置であって、前記シート積層体の第1の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラに保持された前記シートの露出面と前記第1の辺の一部を押圧する面とが対向する第1の上方ポジションと、の間を移動可能である第1のクランプ装置と、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記待機ポジションに位置する前記第2の搬送ハンドラに保持された前記シートの前記露出面と前記第2の辺の一部を押圧する面とが対向する第2の上方ポジションと、の間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有し、
前記第1の搬送ハンドラおよび前記第2の搬送ハンドラの少なくとも一方は、周辺部に切り欠き部を有し、前記切り欠き部で前記シートを露出した状態で前記シートを保持し、」を
「積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、前記シートの周辺の上面の一部を露出した状態で前記シートを保持する第1の搬送ハンドラと、
積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、前記シートの周辺の上面の一部を露出した状態で前記シートを保持する第2の搬送ハンドラと、
第1の押圧面を備え、前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第1のクランプ装置であって、前記シート積層体の第1の辺の一部を前記第1の押圧面により前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接し、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラに保持された前記シートの露出面と前記第1の押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジションと、の間を
移動可能である第1のクランプ装置と、
第2の押圧面を備え、前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記第2の押圧面により前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接し、前記待機ポジションに位置する前記第2の搬送ハンドラに保持された前記シートの前記露出面と前記第2の押圧面とが対向する位置関係となる第2の上方ポジションと、の間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有し、
前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、
前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わり、
前記第1の搬送ハンドラおよび前記第2の搬送ハンドラの少なくとも一方は、周辺部に切り欠き部を有し、前記切り欠き部で前記シートを露出した状態で前記シートを保持し、」と訂正する。

エ 訂正事項4
請求項4を削除する。

オ 訂正事項5
請求項5について、訂正前の「請求項1から4のいずれか一項に記載のシート積層装置」を「請求項1?3のいずれか一項に記載のシート積層装置」と訂正する。

カ 訂正事項6
請求項6について、訂正前の「請求項1から5のいずれか一項に記載のシート積層装置」を「請求項1?3、および5のいずれか一項に記載のシート積層装置」と訂正する。

キ 訂正事項7
請求項7を削除する。

ク 訂正事項8
請求項8について、訂正前の「請求項1から7のいずれか一項に記載のシート積層装置」を「請求項1?3、5、および6のいずれか一項に記載のシート積層装置」と訂正する。

ケ 訂正事項9
請求項9について、訂正前の
「前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションと、の間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有するシート積層装置を用いたシート積層体の製造方法であって、
前記第1のクランプ装置の前記第1の辺の一部を押圧する面と、前記第1の搬送ハンドラが保持する前記シートの露出面とが、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに位置するときに対向し、」を
「前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションと、の間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有するシート積層装置を用いたシート積層体の製造方法であって、
前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、
前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わり、
前記第1のクランプ装置の前記第1の辺の一部を押圧する面と、前記第1の搬送ハンドラが保持する前記シートの露出面とが、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに位置するときに対向し、」と訂正する。

コ 訂正事項10
請求項10について、訂正前の
「前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションとの間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有するシート積層装置を用いたシート積層体の製造方法であって、
前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラと、前記第1の押圧ポジションに位置する第1のクランプ装置の少なくとも前記シート積層体を押圧する部分とは、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重ならない」を
「前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションとの間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有するシート積層装置を用いたシート積層体の製造方法であって、
前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、
前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わり、
前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラと、前記第1の押圧ポジションに位置する第1のクランプ装置の少なくとも前記シート積層体を押圧する部分とは、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重ならない」と訂正する。

2 当審の判断
(1)訂正の目的、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び、新規事項追加の有無
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1について、本件の願書に添付された明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0033】、【0042】、図2、5、6を根拠として、「第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され」る事項を付加するとともに、本件明細書【0034】、【0037】、【0043】、【0046】を根拠として、「第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わ」る事項を付加するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「本件明細書等」という。)に記載された範囲内の訂正である。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は、請求項2について、本件明細書の【0033】、【0042】、図2、5、6を根拠として、「第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され」る事項を付加するとともに、本件明細書【0034】、【0037】、【0043】、【0046】を根拠として、「第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わ」る事項を付加するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。

ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、請求項3について、次のA?Eからなるものである。なお、訂正箇所には、下線を付した。
A 訂正前の「シートの周辺の一部を露出した状態で前記シートを保持する第1の搬送ハンドラ」を「シートの周辺の上面の一部を露出した状態で前記シートを保持する第1の搬送ハンドラ」と訂正する訂正事項。
B 訂正前の「シートの周辺の一部を露出した状態で前記シートを保持する第2の搬送ハンドラ」を「シートの周辺の上面の一部を露出した状態で前記シートを保持する第2の搬送ハンドラ」と訂正する訂正事項。
C 訂正前の「前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第1のクランプ装置であって、前記シート積層体の第1の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラに保持された前記シートの露出面と前記第1の辺の一部を押圧する面とが対向する第1の上方ポジションと、の間を移動可能である第1のクランプ装置」を「第1の押圧面を備え、前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第1のクランプ装置であって、前記シート積層体の第1の辺の一部を前記第1の押圧面により前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接し、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラに保持された前記シートの露出面と前記第1の押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジションと、の間を移動可能である第1のクランプ装置」と訂正する訂正事項。
D 訂正前の「前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記待機ポジションに位置する前記第2の搬送ハンドラに保持された前記シートの前記露出面と前記第2の辺の一部を押圧する面とが対向する第2の上方ポジションと、の間を移動可能である第2のクランプ装置」を「第2の押圧面を備え、前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記第2の押圧面により前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接し、前記待機ポジションに位置する前記第2の搬送ハンドラに保持された前記シートの前記露出面と前記第2の押圧面とが対向する位置関係となる第2の上方ポジションと、の間を移動可能である第2のクランプ装置」と訂正する訂正事項。
E 「前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、 前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、 前記第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、 前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、 前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、 前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わ」る事項を付加する訂正事項。

以下、上記A?Eの訂正事項について、訂正の目的、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び、新規事項追加の有無を検討する。
(ア)上記Aの訂正事項は、本件明細書【0022】、図1?3を根拠として、「第1の搬送ハンドラ」が「シートを保持する」際に、「シートの周辺の一部」を「露出」するのが、「シート周辺の上面」であることを特定したものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。
(イ)上記Bの訂正事項は、本件明細書【0022】、図1?3を根拠として、「第2の搬送ハンドラ」が「シートを保持する」際に、「シートの周辺の一部」を「露出」するのが、「シート周辺の上面」であることを特定したものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。
(ウ)上記Cの訂正事項は、(a)図2、3、5を根拠として、「シート積層体を押圧する第1のクランプ装置」が「第1の押圧面を備え」ることを特定するとともに、「シート積層体の第1の辺の一部」を「ステージに向けて押圧する」箇所が、「第1の押圧面」であることを特定し、また、(b)本件明細書【0024】を根拠として、「第1の上方ポジション」が、「第1の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接」する箇所であることを特定し、さらに、(c)本件明細書【0033】、図2、5を根拠として、「第1の上方ポジション」について、訂正前は、「待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラに保持された前記シートの露出面と前記第1の辺の一部を押圧する面とが対向する」箇所としていたものを、「待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラに保持された前記シートの露出面と前記第1の押圧面とが対向する位置関係となる」箇所と訂正するものである。
そうすると、上記(a)及び(b)の訂正事項は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、上記(c)の訂正事項は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、さらに、上記(a)?(c)の訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。
(エ)上記Dの訂正事項は、(a)図2、3、5を根拠として、「シート積層体を押圧する第2のクランプ装置」が「第2の押圧面を備え」ることを特定するとともに、「シート積層体を押圧する第2のクランプ装置」が、「シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部」を「ステージに向けて押圧する」箇所が、「第2の押圧面」であることを特定し、また、(b)本件明細書【0024】を根拠として、「第2の上方ポジション」が、「第2の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接」する箇所であることを特定し、さらに、(c)本件明細書【0042】、図2、6を根拠として、「第2の上方ポジション」について、訂正前は、「待機ポジションに位置する前記第2の搬送ハンドラに保持された前記シートの前記露出面と前記第2の辺の一部を押圧する面とが対向する」箇所としていたものを、「待機ポジションに位置する前記第2の搬送ハンドラに保持された前記シートの前記露出面と前記第2の押圧面とが対向する位置関係となる」箇所と訂正するものである。
そうすると、上記(a)及び(b)の訂正事項は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、上記(c)の訂正事項は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、さらに、上記(a)?(c)の訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。
(オ)上記Eの訂正事項は、本件明細書の【0033】、【0042】、図2、5、6を根拠として、「前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、 前記第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わ」る事項を付加するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。

上記(ア)?(オ)での検討から、訂正事項3は、「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。

エ 訂正事項4について
訂正事項4は、請求項4を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。

オ 訂正事項5について
訂正事項5は、訂正事項4において請求項4を削除することに伴い、本件訂正前の請求項5について、請求項4を引用しないようにするものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。

カ 訂正事項6について
訂正事項6は、訂正事項4において請求項4を削除することに伴い、本件訂正前の請求項6について、請求項4を引用しないようにするものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。

キ 訂正事項7について
訂正事項7は、請求項7を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。

ク 訂正事項8について
訂正事項8は、訂正事項4において請求項4を削除し、訂正事項7において請求項7を削除することに伴い、本件訂正前の請求項8について、請求項4、7を引用しないようにするものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。

ケ 訂正事項9について
訂正事項9は、請求項9について、本件明細書の【0033】、【0042】、図2、5、6を根拠として、「第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され」る事項を付加するとともに、本件明細書【0034】、【0037】、【0043】、【0046】を根拠として、「第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わ」る事項を付加するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。

コ 訂正事項10について
訂正事項10は、請求項10について、本件明細書の【0033】、【0042】、図2、5、6を根拠として、「第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され」る事項を付加するとともに、本件明細書【0034】、【0037】、【0043】、【0046】を根拠として、「第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わ」る事項を付加するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。

以上によれば、訂正事項1?10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する、「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないから、同法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであり、また、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であるから、同法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(2)独立特許要件
本件は、訂正前の全請求項について特許異議申立がなされているので、訂正事項1?10について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項は適用されない。

(3)一群の請求項について
本件訂正前の請求項4?8は請求項1?3を引用するものであり、請求項9、10はいずれも引用関係のない独立請求項であるから、本件訂正前の請求項〔1?8〕、9、10はそれぞれ一群の請求項であるところ、本件訂正請求は、そのような一群の請求項ごとにされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
そして、本件訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものではなく、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1?8〕、9、10を訂正単位とする訂正の請求をするものである。

5 本件訂正請求のむすび
以上のとおり、令和1年7月5日付けで特許権者が行った本件訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号を目的とするものであり、同法第120条の5第4項の規定に適合し、同法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものであるから、特許請求の範囲の請求項〔1?8〕、9、10について、結論のとおり訂正することを認める。

第3 特許異議申立について
1 本件発明
令和1年7月5日付けで特許権者が行った請求項1?10についての訂正は、上記第2で検討したとおり、適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?10(以下、これらを請求項の番号に応じて、それぞれ「本件発明1」?「本件発明10」という。また、これらをまとめて「本件発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?10に記載された次のとおりのものである。
なお、本件訂正により、訂正された箇所には下線を付した。
「【請求項1】
複数のシートが積層されて成るシート積層体を載置するステージと、
積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第1の搬送ハンドラと、
積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第2の搬送ハンドラと、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第1のクランプ装置であって、前記シート積層体の第1の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションより上方の第1の上方ポジションとの間を移動可能である第1のクランプ装置と、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションとの間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有し、
前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、
前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わり、
前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラと、前記第1の押圧ポジションに位置する第1のクランプ装置の少なくとも前記シート積層体を押圧する部分とは、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重ならず、
前記第1の搬送ハンドラに搬送される前記シートの前記切り欠き部で露出した部分と、前記第1のクランプ装置の前記押圧する部分とが前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重なり、
前記第2の搬送ハンドラに搬送される前記シートの前記切り欠き部で露出した部分と、前記第2のクランプ装置の前記押圧する部分とが、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重なる
シート積層装置。

【請求項2】
複数のシートが積層されて成るシート積層体を載置するステージと、
積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第1の搬送ハンドラと、
積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第2の搬送ハンドラと、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第1のクランプ装置であって、前記シート積層体の第1の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションより上方の第1の上方ポジションとの間を移動可能である第1のクランプ装置と、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションとの間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有し、
前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、
前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わり、
前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラと、前記第1の押圧ポジションに位置する第1のクランプ装置の少なくとも前記シート積層体を押圧する部分とは、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重ならず、
前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する方向を移動方向と定義したときに、前記第1の搬送ハンドラの前記移動方向の前方方向に位置する少なくとも一つの角に切り欠き部が設けられている
シート積層装置。

【請求項3】
複数のシートが積層されて成るシート積層体を載置するステージと、
積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、前記シートの周辺の上面の一部を露出した状態で前記シートを保持する第1の搬送ハンドラと、
積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、前記シートの周辺の上面の一部を露出した状態で前記シートを保持する第2の搬送ハンドラと、
第1の押圧面を備え、前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第1のクランプ装置であって、前記シート積層体の第1の辺の一部を前記第1の押圧面により前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接し、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラに保持された前記シートの露出面と前記第1の押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジションと、の間を
移動可能である第1のクランプ装置と、
第2の押圧面を備え、前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記第2の押圧面により前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接し、前記待機ポジションに位置する前記第2の搬送ハンドラに保持された前記シートの前記露出面と前記第2の押圧面とが対向する位置関係となる第2の上方ポジションと、の間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有し、
前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、
前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わり、
前記第1の搬送ハンドラおよび前記第2の搬送ハンドラの少なくとも一方は、周辺部に切り欠き部を有し、前記切り欠き部で前記シートを露出した状態で前記シートを保持し、
前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する方向を移動方向と定義したときに、前記第1の搬送ハンドラの前記移動方向の前方方向に位置する少なくとも一つの角に前記切り欠き部が設けられている
シート積層装置。

【請求項4】(削除)

【請求項5】
前記第2のクランプ装置が前記第2の押圧ポジションに位置するときに、前記第1のクランプ装置は、前記第1の押圧ポジションから前記第1の上方ポジションへ移動し、前記第1のクランプ装置が前記第1の押圧ポジションに位置するときに、前記第2のクランプ装置は前記第2の押圧ポジションから前記第2の上方ポジションへ移動する
請求項1?3のいずれか一項に記載のシート積層装置。

【請求項6】
前記第1のクランプ装置および前記第2のクランプ装置を複数有し、前記第1のクランプ装置および前記第2のクランプ装置の各々は、少なくとも1箇所で前記シート積層体を押圧する
請求項1?3、および5のいずれか一項に記載のシート積層装置。

【請求項7】(削除)

【請求項8】
前記第1の搬送ハンドラが下降した後に、前記第1のクランプ装置が下降し、前記第2の搬送ハンドラが下降した後に、前記第2のクランプ装置が下降する
請求項1?3、5、および6のいずれか一項に記載のシート積層装置。

【請求項9】
複数のシートが積層されて成るシート積層体を載置するステージと、
積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、前記シートの周辺の一部を露出した状態で前記シートを保持する第1の搬送ハンドラと、
積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下移動可能であり、前記シートの周辺の一部を露出した状態で前記シートを保持する第2の搬送ハンドラと、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第1のクランプ装置であって、前記シート積層体の第1の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションより上方の第1の上方ポジションと、の間を移動可能である第1のクランプ装置と、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションと、の間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有するシート積層装置を用いたシート積層体の製造方法であって、
前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、
前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わり、
前記第1のクランプ装置の前記第1の辺の一部を押圧する面と、前記第1の搬送ハンドラが保持する前記シートの露出面とが、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに位置するときに対向し、
前記第2のクランプ装置の前記第2の辺の一部を押圧する面と、前記第2の搬送ハンドラが保持する前記シートの露出面とが、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに位置するときに対向する
シート積層体の製造方法。

【請求項10】
複数のシートが積層されて成るシート積層体を載置するステージと、
積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第1の搬送ハンドラと、
積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第2の搬送ハンドラと、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第1のクランプ装置であって、前記シート積層体の第1の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションより上方の第1の上方ポジションとの間を移動可能である第1のクランプ装置と、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションとの間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有するシート積層装置を用いたシート積層体の製造方法であって、
前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、
前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わり、
前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラと、前記第1の押圧ポジションに位置する第1のクランプ装置の少なくとも前記シート積層体を押圧する部分とは、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重ならない
シート積層体の製造方法。」

2 平成31年4月24日付けで通知された取消理由の概要
なお、刊行物等については、下記3の<刊行物等>欄にまとめて記載した。
(1)特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について
ア 本件特許の請求項1?3、5、8?10に係る発明は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された下記Aの刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
なお、申立理由では、請求項1?3、5、8については下記Cの刊行物を、請求項5については下記Dの刊行物を、それぞれ周知技術の根拠としている。

イ 本件特許の請求項1?3、5、8?10に係る発明は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された下記Aの刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
なお、申立理由では、請求項1?3、5、8については下記Cの刊行物を、請求項5については下記Dの刊行物を、それぞれ周知技術の根拠としている。

ウ 本件特許の請求項1?3、8?10に係る発明は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された下記Bの刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
なお、申立理由では、請求項1?3、8について、下記Cの刊行物を周知技術の根拠としている。

エ 本件特許の請求項1?3、6?10に係る発明は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された下記Bの刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
なお、申立理由では、請求項1?3、6?8について、下記Cの刊行物を周知技術の根拠としている。

(2)特許法第29条の2について
本件特許の請求項1?3、6、9、10に係る発明は、本件特許の優先日前の特許出願であって、本件特許の優先日後に特許掲載公報の発行若しくは出願公開がされた下記Eの特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者が本件特許の優先日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもなく、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
なお、申立理由では、請求項1?3、6について、下記Cの刊行物を周知技術の根拠としている。

(3)特許法第36条第6項第1号について
本件特許の請求項1?10に係る発明は、上方ポジションに移動したクランプ装置が、搬送ハンドラの待避ポジションから待機ポジションへの移動の進路上に位置し、かつ、搬送ハンドラが待避ポジションから待機ポジションに到達するまでに、クランプ装置は既に上方ポジションに移動し終えた状態にあることが特定されていないため、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないから、本件特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、取り消されるべきものである。

(4)特許法第36条第6項第2号について
ア 請求項4の「第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1のクランプ装置が前記第1の上方ポジションに移動し終わり、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2のクランプ装置が前記第2の上方ポジションに移動し終わる」との記載は明確でないから、本件特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、取り消されるべきものである。

イ 請求項7の「第1の搬送ハンドラの下降と前記第1のクランプ装置の下降とを同時に行い、前記第2の搬送ハンドラの下降と前記第2のクランプ装置の下降とを同時に行う」との記載は明確でないから、本件特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、取り消されるべきものである。

ウ 請求項7記載の事項と請求項8記載の事項とは、互いに両立し得ない事項であるから、本件特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、取り消されるべきものである。

エ 請求項3の「待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラに保持された前記シートの露出面と前記第1の辺の一部を押圧する面とが対向する第1の上方ポジション」との記載、及び、「待機ポジションに位置する前記第2の搬送ハンドラに保持された前記シートの前記露出面と前記第2の辺の一部を押圧する面とが対向する第2の上方ポジション」との記載は明確でないから、本件特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、取り消されるべきものである。

3 上記2以外の特許異議申立理由
(1)特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について
ア 本件特許の請求項4、6、7に係る発明は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された下記Aの刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
なお、請求項4、6、7について、下記Cの刊行物を周知技術の根拠としている。

イ 本件特許の請求項4、6、7に係る発明は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された下記Aの刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
なお、請求項4、6、7について、下記Cの刊行物を周知技術の根拠としている。

ウ 本件特許の請求項4?7に係る発明は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された下記Bの刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
なお、請求項4?7については下記Cの刊行物を、請求項5については下記Dの刊行物を、それぞれ周知技術の根拠としている。

エ 本件特許の請求項4、5に係る発明は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された下記Bの刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
なお、請求項4、5については下記Cの刊行物を、請求項5については下記Dの刊行物を、それぞれ周知技術の根拠としている。

(2)特許法第29条の2について
ア 本件特許の請求項4、5、7、8に係る発明は、本件特許の優先日前の特許出願であって、本件特許の優先日後に特許掲載公報の発行若しくは出願公開がされた下記Eの特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者が本件特許の優先日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもなく、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
なお、請求項4、7、8については下記Cの刊行物を、請求項5については下記Dの刊行物を、それぞれ周知技術の根拠としている。

イ 本件特許の請求項1?10に係る発明は、本件特許の優先日前の特許出願であって、本件特許の優先日後に特許掲載公報の発行若しくは出願公開がされた下記Fの特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者が本件特許の優先日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもなく、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
なお、請求項1?8については下記Cの刊行物を、請求項5については下記Dの刊行物を、それぞれ周知技術の根拠としている。

(3)特許法第36条第6項第2号について
請求項1?3、9、10に記載された「ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第2の搬送ハンドラ」の「前記待機ポジション」は、何を指しているのか不明であるから、本件特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、取り消されるべきものである。

<刊行物等>
A 特開2009-206046号公報(異議申立人が提出した甲第1号証。以下、「甲1」という。)
B 特開2009-9919号公報(異議申立人が提出した甲第2号証。以下、「甲2」という。)
C 特開2010-1146号公報(異議申立人が提出した甲第3号証。以下、「甲3」という。)
D 特開2009-32544号公報(異議申立人が提出した甲第4号証。以下、「甲4」という。)
E 特願2012-67848号(特開2012-227130号公報(異議申立人が提出した甲第5号証。)参照。以下、当該出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面をまとめて「甲5」という。)
F 特願2011-133124号(特開2013-1489号公報(異議申立人が提出した甲第6号証。)参照。以下、当該出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面をまとめて「甲6」という。)

4 本件明細書の記載
本件明細書には、次の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シート積層体を構成する各々のシートは、シートを保持可能な搬送ハンドラによってステージ上へ搬送される。特許文献1では、シートをステージ上に搬送する搬送ハンドラについては明記されていない。しかしながら、本願発明者は、シート積層体の対角の位置にあるクランプ装置で同時にシート積層体を保持する方法では、以下のような課題が生じ得ることを発見した。以下、その課題について説明する。
【0006】
シート積層体上に第1のシートを積層する際、対角に位置する一対のクランプ装置はシート積層体を保持している。一方で、別の一対のクランプ装置は、シート積層体の上に新たに置かれる別のシートを保持するため、ステージに対して上昇する。ここで、搬送ハンドラが第1のシートをステージの上方へ搬送する前に一対のクランプ装置が上昇すると、搬送ハンドラの移動が妨げられるという問題が生じ得る。そのため、通常、一対のクランプ装置は、搬送ハンドラがステージの上方へシートを搬送し終えた後に上昇すると考えられる。このクランプ装置の上昇後に、搬送ハンドラがステージに向かって下降し、ステージ上のシート積層体の上にシートを積層する。
【0007】
このように、搬送ハンドラがステージの上方に到着してからシートを積層体の上に置くまでの間には、クランプ装置を上昇させる時間に相当する時間的ギャップがある。この時間的ギャップにより、シートを積層するサイクルタイムが増大する。
【0008】
本発明の目的は上記背景技術の課題に鑑み、シートを積層するサイクルタイムを低減できるシート積層装置およびシート積層方法を提供することである。」
「【0037】
次に、図5(E)に示すように、第1の搬送ハンドラ4をステージ10に向けて下降させ、シート積層体12の上に、第1のシート1および層間シート3を積層する。本実施形態の方法では、第1の搬送ハンドラ4が待機ポジションに到達するまでに、第1のクランプ装置8は既に第1の上方ポジションに移動し終えた状態にある。そのため、第1の搬送ハンドラ4は、待機ポジションに到達後速やかに下降動作を開始することができる。これにより、シート積層方法のサイクルタイムを低減することができる。
【0038】
第1の搬送ハンドラ4の下降にともない、第1のクランプ装置8をステージ10に向けて下降させ、第1の搬送ハンドラ4からはみ出している第1のシート1の周辺部をステージ10へ向けて押圧する(図5(F)参照)。これにより、第1のクランプ装置8は、第1のシート1および層間シート3とともにシート積層体12を保持する。なお、第2のクランプ装置9は、シート積層体12と第1のシート1との間に挟まれた状態になる。」
「【0046】
次に、図6(E)に示すように、第2のシート2および層間シート3を保持した第2の搬送ハンドラ11をステージ10に向けて下降させ、シート積層体12の上に第2のシート2および層間シート3を積層する。本実施形態の方法では、第2の搬送ハンドラ11が待機ポジションに到達するまでに、第2のクランプ装置9は既に第2の上方ポジションに移動し終えた状態にある。そのため、第2の搬送ハンドラ11は、待機ポジションに到達後速やかに下降動作を開始することができる。これにより、シート積層方法のサイクルタイムを低減することができる。
【0047】
第2の搬送ハンドラ11の下降にともない、第2のクランプ装置9をステージ10に向けて下降させ、第2の搬送ハンドラ11からはみ出している第2のシート2の周辺部をステージ10へ向けて押圧する(図6(F)参照)。これにより、第2のクランプ装置9は、シート積層体12および第2のシート2を保持する。なお、第1のクランプ装置8は、シート積層体12と第2のシート2との間に挟まれた状態になる。」
「【0053】
次に、対角に位置する2つのクランプ装置を同時に駆動する比較例におけるシート積層方法について説明する。対角に位置する2つのクランプ装置8、9を同時に上昇させると、搬送ハンドラ4、11の待機ポジションを挟んで両側にクランプ装置8、9が位置することになる。したがって、一方のクランプ装置8または9が搬送ハンドラ4、11の進路上に位置するため、搬送ハンドラ4、11の移動を妨げることになる。そのため、図5(D)および図6(D)に示されるような待機ポジションまで搬送ハンドラ4、11を移動させた後に、対角に位置するクランプ装置8、9を上昇させる必要がある。その結果、搬送ハンドラ4、11が待機ポジションに到着した後、クランプ装置8、9の上昇移動が終了するまでの間、搬送ハンドラ4、11は下降動作をすることができない。この時間的ギャップにより、図5および図6に示すシート積層方法よりもサイクルタイムが長くなってしまう。また、シート積層体またはシートの対角にある2つの箇所を同時に押さえるため、シートを回転させる力(モーメント)が発生することがあるという課題もある。」

5 引用する各甲号証の記載
(1)甲1の記載
甲1には、次の記載がある。なお、下線は当審で付した。
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の装置では、正極および負極は、積層テーブルの同一回転位置にて積層されており、正極および負極の供給経路が混在し、電池内への異物混入の可能性が発生する。また、積層テーブルを回転させる駆動源の他に、クランパを駆動するためのアクチュエータが必要である。
【0005】
そこで本発明は、電池内への異物混入の可能性を極力抑制し、かつクランパを駆動するための他の動力源を必要としないシート積層装置およびシート積層方法を提供することを目的とする。」
「【0013】
本実施形態に係るシート積層装置10は、図2に示すように、セパレータ供給部20と、正極供給部30と、負極供給部40と、電極積層部50とを有している。」
「【0017】
電極積層部50は、パレット60を搬送する搬送装置70と、パレット60の搬送方向と交差する方向へパレット60を往復移動させる往復移動装置80と、正極積層ロボット51と、負極積層ロボット52とを有している。正極積層ロボット51および負極積層ロボット52は、搬送装置70を挟んで両側に配置され、それぞれの正極積層ロボット51および負極積層ロボット52の近傍に、正極マガジン34および負極マガジン44が配置される。また、セパレータ供給部20も、正極積層ロボット51および負極積層ロボット52の近傍にそれぞれ配置される。」
「【0020】
正極,負極積層ロボット51,52の各々は、それぞれ2つのワーク(セパレータ2、正極4または負極6)を同時に吸引して保持する吸引ハンド53を備えている。
【0021】
往復移動装置80は、搬送方向に2つ並んで設けられており、それぞれ個別に往復移動可能となっている。往復移動装置80の設置数は、正極,負極積層ロボット51,52の設置数と対応しており、すなわち、それぞれの往復移動装置80上に保持されるパレット60に、それぞれに対応する正極,負極積層ロボット51,52によって並行して電極4,6を積層する。
【0022】
各々のパレット60には、図3,4に示すように、搬送方向に2か所の第1,第2載置領域A1,A2(載置面)が提供され、2つの積層構造体を同時に積層可能となっている。それぞれの第1,第2載置領域A1,A2の周囲には、ワークの縁部を位置決めする位置決めピン61が複数設けられる。
【0023】
パレット60の対角の端部には、搬送装置70に設けられる搬送ピン71が挿通する搬送用位置決め穴部62が2つ形成される。また、パレット60には、往復移動装置80に設けられる往復移動ピン83が挿通する2つの往復移動用位置決め穴部63が形成される。
【0024】
第1,第2載置領域A1,A2の周囲には、載置されるワークを把持するクランパ64が設けられる。クランパ64は、第1載置領域A1のワークの一側辺を把持する第1,第2クランパ64A,64Bと、第1,第2載置領域A1,A2の間に設けられて、第1,第2載置領域A1,A2の両方のワークの一側辺を把持する第3,第4クランパ64C,64Dと、第2載置領域A2のワークの一側辺を把持する第5,第6クランパ64E,64Fとを備える。」
「【0037】
電極4,6を積層するには、まず、図10,11に示すように、搬送装置70によって往復移動装置80の上方にパレット60を搬送する。なお、往復移動装置80は2つ設けられているため、それぞれの往復移動装置80へパレット60が搬送されるが、いずれの往復移動装置80の作用も同様であるため、以降は1つの往復移動装置80についてのみ説明する。
【0038】
往復移動装置80の上方にパレット60を搬送した後、搬送装置70の保持面72を下降させて、パレット60を往復移動装置80のパレット保持部82に移動させる。これにより、パレット60の搬送用位置決め穴部62から保持面72の搬送ピン71が引き抜かれ、往復移動用位置決め穴部63にパレット保持部82の往復移動ピン83が挿通して、パレット60がパレット保持部82に保持される。このとき、第1?第6クランパ64A?64Fの接触部67Xがカム面85に接するが、第1?第6直線カム86A?86Fとは接しておらず、全てのクランパ64が閉状態となっている。ここで閉状態とは、クランパ64が下がって載置領域A1,A2の縁部を把持する状態を意味し(図6(A)参照)、開状態とは、クランパ64が上がりつつ回転して載置領域A1,A2の縁部から離れた状態を意味する(図6(C)参照)。
【0039】
この後、図12,13に示すように、一軸シリンダ84を駆動してパレット保持部82を往復移動させ、一方側(例えば正極側)へ移動させる。これにより、第1,4,5クランパ64A,64D,64Eの接触部67Xが、第1,4,5直線カム86A,86D,86Eと接触し、第1,4,5クランパ64A,64D,64Eが上昇しつつ回転して、開動作(クランプ動作)を行い開状態となる。
【0040】
この後、正極積層ロボット51の吸引ハンド53をセパレータ供給部20に移動させ、吸引ハンド53で2つのセパレータ2を同時に吸引保持し、吸引ハンド53を正極マガジン34に移動させる(図2参照)。セパレータ2は通気性を有するため、セパレータ2を吸引保持した吸引ハンド53により、さらに正極4を重ねて吸引保持できる。
【0041】
この後、図14に示すように、吸引ハンド53をパレット60に移動させ、吸引ハンド53により保持した2組のセパレータ2および正極4を、正極4を下にして第1,第2載置領域A1,A2に載置する。このとき、第2,3,6クランパ64B,64C,64Fは閉状態であるため、第2,3,6クランパ64B,64C,64Fの上に正極4が接するが、第1,4,5クランパ64A,64D,64Eは開状態であることから、第1,4,5クランパ64A,64D,64Eは正極4と接しない。
【0042】
次に、図15,16に示すように、第1,4,5直線カム86A,86D,86Eをアクチュエータ87によって移動させる。これにより、第1,4,5直線カム86A,86D,86Eが第1,4,5クランパ64A,64D,64Eの接触部67Xの下方からずれ、第1,4,5クランパ64A,64D,64Eが下降して、閉動作(アンクランプ動作)を行い閉状態となる。これにより、第1,第2載置領域A1,A2に載置されたセパレータ2および正極4が、対角の縁部で把持される。なお、正極4はセパレータ2の下に位置しているため、把持した際にも第1,4,5クランパ64A,64D,64Eは正極4と接触しない。
【0043】
次に、図17に示すように、セパレータ2および正極4を把持したパレット保持部82を往復移動させて、負極側へ移動させる。このとき、セパレータ2および正極4が第1,4,5クランパ64A,64D,64Eにより対角の縁部で把持されているため、良好に保持される。
【0044】
この後、図18,19に示すように、パレット保持部82が他方側(例えば負極側)へ移動する。これにより、第2,3,6クランパ64B,64C,64Fの接触部67Xが、第2,3,6直線カム86B,86C,86Fと接触し、第2,3,6クランパ64B,64C,64Fが上昇しつつ回転して、開動作(クランプ動作)を行い開状態となる。
【0045】
この後、負極積層ロボット52の吸引ハンド53をセパレータ供給部20に移動させ、吸引ハンド53で2つのセパレータ2を同時に吸引保持し、吸引ハンド53を負極マガジン44に移動させる(図2参照)。セパレータ2は通気性を有するため、セパレータ2を吸引保持した吸引ハンド53により、さらに正極4を重ねて吸引保持できる。
【0046】
この後、図20に示すように、吸引ハンド53をパレット60に移動させ、吸引ハンド53により保持した2組のセパレータ2および負極6を、負極6を下にして第1,第2載置領域A1,A2に載置する。このとき、第1,4,5クランパ64A,64D,64Eは閉状態であるため、第1,4,5クランパ64A,64D,64Eの上に負極6が接するが、第2,3,6クランパ64B,64C,64Fは開状態であることから、第2,3,6クランパ64B,64C,64Fは負極6と接しない。
【0047】
次に、図21,22に示すように、第2,3,6直線カム86B,86C,86Fをアクチュエータ87によって移動させる。これにより、第2,3,6直線カム86B,86C,86Fが第2,3,6クランパ64B,64C,64Fの接触部67Xの下方からずれ、第2,3,6クランパ64B,64C,64Fが下降して、閉動作(アンクランプ動作)を行い閉状態となる。これにより、第1,第2載置領域A1,A2に載置されたセパレータ2および負極6が、対角の縁部で把持される。なお、負極6はセパレータ2の下に位置しているため、把持した際にも第2,3,6クランパ64B,64C,64Fは負極6と接触しない。」
「【図2】


【図3】


【図4】


「【図10】


【図11】


【図12】


【図13】


【図14】


【図15】


【図16】


【図17】


【図18】


【図19】


【図20】


【図21】


【図22】



(2)甲1発明
ア 甲1の「正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53」は、「保持した2組のセパレータ2および正極4を、正極4を下にして第1,第2載置領域A1,A2に載置」(【0041】)し、「保持した2組のセパレータ2および負極6を、負極6を下にして第1,第2載置領域A1,A2に載置する」(【0046】)ものであるところ、「保持した2組のセパレータ2および正極4」や「保持した2組のセパレータ2および負極6」を「第1,第2載置領域A1,A2に載置」する際には、「第1,第2載置領域A1,A2」の上方から載置することは自明であるし、該上方は鉛直上方向であると考えることが最も合理的である。
そうすると、甲1の「正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53」は、「第1,第2載置領域A1,A2」の鉛直上方向に位置する待機ポジションと該待機ポジションから待避した待避ポジションの間を移動可能、かつ、「第1,第2載置領域A1,A2」に対して上下に移動可能であるといえる。
イ 甲1の図2から、「正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53」が「2組のセパレータ2および正極4」または「2組のセパレータ2および負極6」を保持したとき、「正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53」から「2組のセパレータ2および正極4」または「2組のセパレータ2および負極6」が露出する部位が存在することが看取できる。
ウ 甲1の図2から、「正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53」が保持する「2組のセパレータ2および正極4」または「2組のセパレータ2および負極6」は、矩形であり、その全ての角が露出していることが看取できる。
そうすると、「正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53」が、待避ポジションから待機ポジションへとどのように移動したとしても、甲1の「正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53」には、待避ポジションから待機ポジションへと移動する方向の前方方向に位置する角に、「正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53」から「2組のセパレータ2および正極4」または「2組のセパレータ2および負極6」が露出する部位が存在するといえる。
エ 甲1の図3、図4から、「第1クランパ64A」及び「第3クランパ64C」は、第2載置領域A2のそれぞれ互いに対向する別々の辺に設けられていることが看取できる。
オ 甲1の図2から、電極積層部50のパレット60に正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53がある時に、該吸引ハンド53は第1?6クランパ64A?64Fと平面視で重なっていないことが看取できる。
カ 甲1の【0013】、【0017】、【0020】?【0022】、【0024】、【0037】、【0039】、【0041】、【0042】、【0046】、【0047】、及び、上記ア?オからすると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「セパレータ供給部20と、正極供給部30と、負極供給部40と、電極積層部50とを有しているシート積層装置10であって、
電極積層部50は、パレット60を搬送する搬送装置70と、パレット60の搬送方向と交差する方向へパレット60を往復移動させる往復移動装置80と、正極積層ロボット51と、負極積層ロボット52とを有しており、
正極,負極積層ロボット51,52の各々は、それぞれ2つのワーク(セパレータ2、正極4または負極6)を同時に吸引して保持する吸引ハンド53を備えており、
往復移動装置80は、搬送方向に2つ並んで設けられており、それぞれ個別に往復移動可能となっており、それぞれの往復移動装置80上に保持されるパレット60に、それぞれに対応する正極,負極積層ロボット51,52によって並行して電極4,6を積層し、
パレット60の第1,第2載置領域A1,A2の周囲には、載置されるワークを把持するクランパ64が設けられ、クランパ64は、第1載置領域A1のワークの一側辺を把持する第1,第2クランパ64A,64Bと、第1,第2載置領域A1,A2の間に設けられて、第1,第2載置領域A1,A2の両方のワークの一側辺を把持する第3,第4クランパ64C,64Dと、第2載置領域A2のワークの一側辺を把持する第5,第6クランパ64E,64Fとを備え、
電極4,6を積層するには、まず、第1,4,5クランパ64A,64D,64Eが上昇しつつ回転して、開動作(クランプ動作)を行い開状態となり、
吸引ハンド53をパレット60に移動させ、吸引ハンド53により保持した2組のセパレータ2および正極4を、正極4を下にして第1,第2載置領域A1,A2に載置し、このとき、第2,3,6クランパ64B,64C,64Fは閉状態であるため、第2,3,6クランパ64B,64C,64Fの上に正極4が接するが、第1,4,5クランパ64A,64D,64Eは開状態であることから、第1,4,5クランパ64A,64D,64Eは正極4と接せず、
次に、第1,4,5クランパ64A,64D,64Eが下降して、閉動作(アンクランプ動作)を行い閉状態となり、これにより、第1,第2載置領域A1,A2に載置されたセパレータ2および正極4が、対角の縁部で把持され、
この後、第2,3,6クランパ64B,64C,64Fが上昇しつつ回転して、開動作(クランプ動作)を行い開状態となり、
この後、吸引ハンド53をパレット60に移動させ、吸引ハンド53により保持した2組のセパレータ2および負極6を、負極6を下にして第1,第2載置領域A1,A2に載置し、このとき、第1,4,5クランパ64A,64D,64Eは閉状態であるため、第1,4,5クランパ64A,64D,64Eの上に負極6が接するが、第2,3,6クランパ64B,64C,64Fは開状態であることから、第2,3,6クランパ64B,64C,64Fは負極6と接せず、
次に、第2,3,6クランパ64B,64C,64Fが下降して、閉動作(アンクランプ動作)を行い閉状態となり、これにより、第1,第2載置領域A1,A2に載置されたセパレータ2および負極6が、対角の縁部で把持され、
正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53は、第1,第2載置領域A1,A2の鉛直上方向に位置する待機ポジションと該待機ポジションから待避した待避ポジションの間を移動可能、かつ、第1,第2載置領域A1,A2に対して上下に移動可能であり、
正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53が、2組のセパレータ2および正極4、または、2組のセパレータ2および負極6を保持したとき、正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53から、2組のセパレータ2および正極4、または、2組のセパレータ2および負極6が露出する部位が存在し、
正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53が待避ポジションから待機ポジションへと移動する方向の前方方向に位置する角に、正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53から、2組のセパレータ2および正極4、または、2組のセパレータ2および負極6が露出する前記部位が存在し、
第1クランパ64A及び第3クランパ64Cは、第2載置領域A2のそれぞれ互いに対向する別々の辺に設けられており、
電極積層部50のパレット60に正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53があるとき、該吸引ハンド53は第1?6クランパ64A?64Fと平面視で重ならない、
シート積層装置10。」
キ また、同様に、甲1の【0013】、【0017】、【0020】、【0021】、【0024】、【0037】、【0039】、【0041】、【0042】、【0046】、【0047】、及び、上記ア?オからすると、甲1には、次の発明(以下、「甲1方法発明」という。)が記載されていると認められる。
「甲1発明のシート積層装置10を用いたシート積層体の製造方法。」

(3)甲2の記載
甲2には、次の記載がある。なお、下線は当審で付した。
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の装置では、セパレータの引き出された長さ分だけ正極板と負極板が折り重ねられる構成となっている。大容量のリチウム2次電池のように、セパレータに折り重ねられる正極板と負極板の枚数が増えると、このような装置では対応できなくなっている。
【0007】
また、正極板と負極板はセパレータに対して固定されていないので搬送時等に積層した位置からずれてしまう問題もある。電極の位置ズレは、短絡事故により短時間に大電流が電極間に流れ爆発、発火事故などが発生する危険性がある。
【0008】
本発明は、大容量のリチウム2次電池の製造に対応でき、従来の製造装置よりも生産性が向上したリチウム2次電池の製造方法と製造装置を提供することを目的としている。」
「【0021】
<実施の形態1>
次に本発明のリチウム2次電池製造装置(以後、2次電池製造装置と称する)の実施の形態1を図面を参照して説明する。図1は2次電池製造装置の各要部の配置を示す概略斜視図である。まず、図1に基づいて本発明の2次電池製造装置の概略構成を説明する。なお、2次電池製造装置で用いる正極板および負極板の連続セパレータSを図面の説明上、上セパレータ100と下セパレータ101に区別して記載する。また、電極板PNを正極板108と負極板109に区別して記載する。上セパレータ100は、正極板108および負極板109に対して上側に配置される連続セパレータSを示し、下セパレータ101は、下側に配置される連続セパレータSを示す。連続セパレータSの表面には、接着剤が塗布されており、加熱により接着剤が溶融し連続セパレータS同士が接着されるようになっている。
【0022】
2次電池製造装置は、上セパレータ100が送り出される上セパレータ巻出部102と、下セパレータ101が送り出される下セパレータ巻出部103と、送り出された上セパレータ100および下セパレータ101を把持して所定の長さを引き出すニップロール104と、2次電池の積層部105と、ロール状の正極材106および負極材107と、枚葉状の正極板108および負極板109と、正極板108および負極板109を搬送コンベア110上の下セパレータ101に載置する移載ハンド112と、載置された正極板108と負極板109を搬送する搬送コンベア110とを備えている。
【0023】
正極板108と負極板109は、ロール状の正極材106および負極材107から引き出された電極板を、図示していない打ち抜き装置により所定の大きさに切断して形成される。なお、正極板108および負極板109にはタブ111が形成されるように所定の大きさに切断される。切断された正極板108および負極板109は移載ハンド112の近傍に供給される。
【0024】
移載ハンド112はZ軸回りに回転させる支持部113と、この支持部113に支持されたアーム114と、アーム114の先端側に取り付けられた正極板108および負極板109を吸着する吸着部115とを備えている。正極板108用、負極板109用各々専用に設置された移載ハンド112は、吸着部115で正極板108と負極板109を同時に吸着して下セパレータ101に正極板108と負極板109が隣り合うように配置する。配置の際、下セパレータ101の進行方向に対して所定間隔を保つように、かつ下セパレータ101の端部から所定間隔を保つように配置する。さらに、正極板108と負極板109に設けられたタブ111は、下セパレータ101の外側になるように配置する。
【0025】
下セパレータ101は、ロール状の下セパレータ巻出部103より送り出され搬送コンベア110上を通り、ニップロール104を経由してセパレータ同士の貼り合わせが行われた後、積層部105に積層される。搬送コンベア110上において、正極板108および負極板109が所定位置に配置されると、搬送コンベア110の端部に備えられているサポート部材116が待機位置から90度旋回し、正極板108および負極板109を押さえ、搬送中の位置ズレの防止を行うようになっている。なお、サポート部材116の待機位置側は、搬送コンベア110の進行方向と平行で正極板108と負極板109の配置される位置に干渉しない位置とする。また、サポート部材116は、個々の正極板108および負極板109を搬送コンベア110の進行方向に対して左右に少なくとも2カ所で支えることができるように、搬送コンベア110の端部に複数個が備えられている。搬送コンベア110は、正極板108および負極板109の移載時は停止し、サポート部材116が動作するとニップロール104方向に所定の長さ移動し、間欠運転を行うようになっている。」
「【図1】


「【図3】




(4)甲2発明
ア 甲2の「移載ハンド112」は、「吸着部115で正極板108と負極板109を同時に吸着して下セパレータ101に正極板108と負極板109が隣り合うように配置」(【0024】)するものであるところ、「正極板108」や「負極板109」を「搬送コンベア110」に「配置」する際には、搬送コンベア110の上方から載置することは自明であるし、該上方は鉛直上方向であると考えることが最も合理的である。
そうすると、甲2の「移載ハンド112」は、「搬送コンベア110」の鉛直上方向に位置する待機ポジションと該待機ポジションから待避した待避ポジションの間を移動可能、かつ、「搬送コンベア110」に対して上下に移動可能であるといえる。
イ 甲2の図1、3から、「移載ハンド112」の「吸着部115」は「正極板108」や「負極板109」よりも明らかに小さいことが看取できるので、「移載ハンド112」の「吸着部115」が「正極板108」や「負極板109」を保持したとき、「移載ハンド112」の「吸着部115」から「正極板108」や「負極板109」が露出する部位が存在することは自明である。
ウ 甲2の図1から、「移載ハンド112」の「吸着部115」の回転動作を意味する矢印が看取できるから、「移載ハンド112」の「吸着部115」が、「正極板108」や「負極板109」を「搬送コンベア110」に「配置」する際に、「移載ハンド112」の「吸着部115」は、回転しながら待避ポジションから待機ポジションに移動すると考えられる。
また、「移載ハンド112」の「吸着部115」が、「正極板108」や「負極板109」を吸着する際には、「吸着部115」が「正極板108」や「負極板109」の中央部を吸着すると考えるのが最も合理的である。
そうすると、甲2の「移載ハンド112」の「吸着部115」は、待避ポジションから待機ポジションへと移動する方向の前方方向に位置する角に、「移載ハンド112」の「吸着部115」から「正極板108」や「負極板109」が露出する部位が存在するといえる。
エ 甲2の図1から、甲2の「移載ハンド112」は「正極板108」や「負極板109」よりもある程度小さいことが看取できるから、「移載ハンド112」の「吸着部115」が「搬送コンベア110」上にある際には、「移載ハンド112」の「吸着部115」と「サポート部材116」とが平面視で重ならない。
オ 甲2の【0022】、【0024】、【0025】、及び、上記ア?エからすると、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「上セパレータ100が送り出される上セパレータ巻出部102と、下セパレータ101が送り出される下セパレータ巻出部103と、枚葉状の正極板108および負極板109と、正極板108および負極板109を搬送コンベア110上の下セパレータ101に載置する移載ハンド112と、載置された正極板108と負極板109を搬送する搬送コンベア110とを備えている2次電池製造装置であって、
移載ハンド112はZ軸回りに回転させる支持部113と、この支持部113に支持されたアーム114と、アーム114の先端側に取り付けられた正極板108および負極板109を吸着する吸着部115とを備え、
正極板108用、負極板109用各々専用に設置された移載ハンド112は、吸着部115で正極板108と負極板109を同時に吸着して下セパレータ101に正極板108と負極板109が隣り合うように配置し、
搬送コンベア110上において、正極板108および負極板109が所定位置に配置されると、搬送コンベア110の端部に備えられているサポート部材116が待機位置から90度旋回し、正極板108および負極板109を押さえ、搬送中の位置ズレの防止を行い、
サポート部材116の待機位置側は、搬送コンベア110の進行方向と平行で正極板108と負極板109の配置される位置に干渉しない位置であり、サポート部材116は、個々の正極板108および負極板109を搬送コンベア110の進行方向に対して左右に少なくとも2カ所で支えることができるように、搬送コンベア110の端部に複数個が備えられており、
移載ハンド112は、搬送コンベア110の鉛直上方向に位置する待機ポジションと該待機ポジションから待避した待避ポジションの間を移動可能、かつ、搬送コンベア110に対して上下に移動可能であり、
移載ハンド112の吸着部115が正極板108または負極板109を保持したとき、移載ハンド112の吸着部115から正極板108または負極板109が露出する部位が存在し、
移載ハンド112の吸着部115は、待避ポジションから待機ポジションへと移動する方向の前方方向に位置する角に、移載ハンド112の吸着部115から正極板108または負極板109が露出する部位が存在し、
移載ハンド112の吸着部115が搬送コンベア110上にある際には、移載ハンド112の吸着部115とサポート部材116とが平面視で重ならない
2次電池製造装置。」
カ また、同様に、甲2の【0022】、【0024】、【0025】、及び、上記ア?エからすると、甲2には、次の発明(以下、「甲2方法発明」という。)が記載されていると認められる。
「甲2発明の2次電池製造装置を用いた2次電池の製造方法。」

(5)甲5の記載
甲5には、次の記載がある。なお、下線は当審で付した。
「【0022】
図5および図6に示すとおり、シート積層装置100は、積層ロボット110、正極供給部120、負極供給部130、積層部140、および制御部150を有している。正極供給部120および負極供給部130は、積層ロボット110を中心として相互に対向する位置に配置されており、積層部140は、正極供給部120および負極供給部130と90度の角度をなす位置に配置されている。積層ロボット110、正極供給部120、負極供給部130、および積層部140は、制御部150により制御される。
【0023】
積層ロボット110は、袋詰正極20および負極30を交互に積層して発電要素(積層体)15を形成する。積層ロボット110は、第1および第2アーム部111,112からなるL字状アーム113と、第1および第2アーム部111,112の先端部にそれぞれ設けられた第1および第2吸着ハンド114,115とを有する。第1および第2アーム部111,112は、駆動軸116を基準に互いに90度の角度をなす方向に延設されている。L字状アーム113は、アーム駆動部117によって駆動軸116が駆動されることにより、水平方向に90度揺動する。また、L字状アーム113は、駆動軸116が駆動されることにより昇降する。第1吸着ハンド114は、袋詰正極20を吸着保持し、離脱させる。第2吸着ハンド115は、負極30を吸着保持し、離脱させる。
【0024】
L字状アーム113が90度揺動することにより、第1吸着ハンド114は、正極供給部120と積層部140との間を往復移動し、第2吸着ハンド115は、積層部140と負極供給部130との間を往復移動する。言い換えれば、第1吸着ハンド114および第2吸着ハンド115が正極供給部120および積層部140の上方にそれぞれ位置する第1状態と、積層部140および負極供給部130の上方にそれぞれ位置する第2状態とが切り替えられる。また、L字状アーム113が昇降することにより、第1吸着ハンド114は、正極供給部120または積層部140に対して近接離隔し、第2吸着ハンド115は、負極供給部130または積層部140に対して近接離隔する。」
「【0030】
積層部140は、積層ロボット110により搬送される袋詰正極20および負極30を交互に積層する場所であり、袋詰正極20および負極30が所定枚数積層されるまで、袋詰正極20と負極30の積層体を保持する。袋詰正極20および負極30が所定枚数積層されて発電要素15が完成すると、積層部140は、後工程に発電要素15を供給する。
【0031】
図9は、積層部の斜視図である。積層部140は、袋詰正極20および負極30が交互に積層される積層テーブル141と、積層テーブル141を昇降する高さ調整部142と、袋詰正極20と負極30の積層体を押圧するクランパ143と、クランパ143を駆動するクランパ駆動部144とを有する。
【0032】
積層テーブル141上にはパレット(不図示)が載置され、パレット上で袋詰正極20および負極30が交互に積層される。高さ調整部142は、たとえば、ボールネジおよびモータから構成され、袋詰正極20および負極30の積層の進行に応じて、積層テーブル141を下降させる。高さ調整部142は、袋詰正極20と負極30の積層体の最上面の高さが略一定に維持されるように、積層テーブル141を下降させる。
【0033】
クランパ143は、袋詰正極20と負極30の積層体を上部から押圧するクランプヘッド143aと、クランプヘッド143aを支持する支持軸143bとから構成される。クランプヘッド143aの横断面は、台形形状を有する。クランプヘッド143aは、支持軸143bを介して下方に付勢されており、底面により積層体の最上面を押圧する。
【0034】
クランパ駆動部144は、支持軸143bを介して、クランプヘッド143aを回動させつつ一定の高さまで上昇させる。そして、クランパ駆動部144は、180度回動後のクランプヘッド143aを下降させる。クランパ駆動部144は、支持軸143b側面の突出ピン(不図示)と係合してクランプヘッド143aを回動させるとともに一定量上昇させるためのカム溝を備えるカム機構(不図示)と、支持軸143bを昇降するためのアクチュエータ(不図示)とを有する。アクチュエータは、たとえば、エアシリンダである。また、クランパ駆動部144には、クランプヘッド143aを下方に付勢するためのバネ(不図示)が備えられている。」
「【0059】
図18は、袋詰正極が積層される直前の積層テーブルおよびクランパの状態を示す模式図である。積層テーブル141には、パレット190を介して、袋詰正極20および負極30が交互に積層されている。袋詰正極20と負極30の積層体の最上部には、負極30が積層されており、負極30の縁部は、クランプヘッド143aの一端の底面により押圧されている。積層テーブル141の上方には、積層ロボット110の第1吸着ハンド114が位置しており、第1吸着ハンド114は、袋詰正極20を吸着保持している。
【0060】
続いて、第1吸着ハンド114が、積層テーブル141の近傍に下降する(図19参照)。第1吸着ハンド114は、袋詰正極20を吸着保持した状態で、所定の移動量だけ下降する。第1吸着ハンド114が下降することにより、積層体の最上部に袋詰正極20が積層される。このとき、袋詰正極20の縁部により、クランプヘッド143aが覆われる(図19の破線で囲まれた部分を参照)。
【0061】
続いて、クランプヘッド143aが上昇するとともに90度回動する(図20参照)。具体的には、袋詰正極20の縁部により覆われていたクランプヘッド143aが上昇するとともに90度回動する。クランプヘッド143aが上昇するとともに90度回動することにより、クランプヘッド143aは、最上部の袋詰正極20の斜め上方に位置するようになる。ここで、クランプヘッド143aの上昇量ΔXは、1枚の袋詰正極20の厚さよりも大きい略一定の値である。クランプヘッド143aが上昇するとき、クランプヘッド143aによって袋詰正極20の縁部が持ち上げられる。クランプヘッド143aによって持ち上げられることにより、袋詰正極20の縁部は一時的にめくれ、元に戻る。
【0062】
続いて、クランプヘッド143aがさらに90度回動する(図21参照)。具体的には、クランプヘッド143aは、さらに所定量だけ上昇しつつ90度回動する。クランプヘッド143aがさらに90度回動することにより、クランプヘッド143aの反対側の端部が、袋詰正極20の上方に位置するようになる。なお、図20および図21に示される、クランプヘッド143aが90度回動し、さらに90度回動する動作は連続的に行われる。」
「【図5】


【図6】


「【図9】


【図10】


【図11】


【図12】


【図13】


【図14】


【図15】



「【図18】


【図19】


【図20】


【図21】


【図22】


【図23】



(6)甲5発明
ア 甲5の図6、10?15から、積層ロボット110の第1吸着ハンド114が袋詰正極20を吸着保持したとき、または、積層ロボット110の第2吸着ハンド115が負極30を吸着保持したときに、第1吸着ハンド114または第2吸着ハンド115から、袋詰正極20または負極30の露出する部位が存在することが看取できる。
イ 甲5には、「L字状アーム113が90度揺動することにより、第1吸着ハンド114は、正極供給部120と積層部140との間を往復移動し、第2吸着ハンド115は、積層部140と負極供給部130との間を往復移動し、L字状アーム113が昇降することにより、第1吸着ハンド114は、正極供給部120または積層部140に対して近接離隔し、第2吸着ハンド115は、負極供給部130または積層部140に対して近接離隔」(【0024】)することが記載されている。
そして、甲5の図6、10?15から、甲5の第1吸着ハンド114は、正極供給部120から積層部140へと移動する方向の前方方向に位置する角に、第1吸着ハンド114から袋詰正極20の露出する部位が存在することが看取できる。
また、甲5の図6、10?15から、甲5の第2吸着ハンド115は、負極供給部130から積層部140へと移動する方向の前方方向に位置する角に、第2吸着ハンド115から負極30の露出する部位が存在することが看取できる。
ウ 甲5の図6、9?15から、「クランパ143」が、積層部140のそれぞれ互いに対向する別々の辺に2つづつ設けられていることが看取できる。
エ 甲5には、「袋詰正極が積層される直前の積層テーブルおよびクランパの状態」では、「積層テーブル141の上方には、積層ロボット110の第1吸着ハンド114が位置しており、第1吸着ハンド114は、袋詰正極20を吸着保持して」おり、「続いて、」「第1吸着ハンド114が下降することにより、積層体の最上部に袋詰正極20が積層され」、「このとき、袋詰正極20の縁部により、クランプヘッド143aが覆われ」、「続いて、クランプヘッド143aが上昇するとともに90度回動」し、「クランプヘッド143aによって持ち上げられることにより、袋詰正極20の縁部は一時的にめくれ、元に戻」り、「続いて、クランプヘッド143aがさらに90度回動」し、「クランプヘッド143aの反対側の端部が、袋詰正極20の上方に位置するようになる」(【0059】?【0062】)ことが記載されている。
オ 甲5の図5、18?23から、「積層部140」に「第1吸着ハンド114」があるときに、「第1吸着ハンド114」は「クランパ143」と平面視で重なっていないことが看取できる。
また、図6、10?15から、「第1吸着ハンド114」と「第2吸着ハンド115」がほぼ同程度の大きさであることが看取できるから、「第2吸着ハンド115」も「第1吸着ハンド114」と同様に、「積層部140」に「第2吸着ハンド115」があるときに、「第2吸着ハンド115」は「クランパ143」と平面視で重なっていないといえる。
カ 甲5の【0022】?【0024】、【0030】、【0031】、【0033】、【0034】、【0059】?【0062】、及び、上記ア?オからすると、甲5には、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
「積層ロボット110、正極供給部120、負極供給部130、積層部140を有するシート積層装置100であって、
積層ロボット110は、第1および第2アーム部111,112からなるL字状アーム113と、第1および第2アーム部111,112の先端部にそれぞれ設けられた第1および第2吸着ハンド114,115とを有し、
第1および第2アーム部111,112は、駆動軸116を基準に互いに90度の角度をなす方向に延設されており、
L字状アーム113は、アーム駆動部117によって駆動軸116が駆動されることにより、水平方向に90度揺動し、また、動軸116が駆動されることにより昇降し、
第1吸着ハンド114は、袋詰正極20を吸着保持し、離脱させ、第2吸着ハンド115は、負極30を吸着保持し、離脱させ、
L字状アーム113が90度揺動することにより、第1吸着ハンド114は、正極供給部120と積層部140との間を往復移動し、第2吸着ハンド115は、積層部140と負極供給部130との間を往復移動し、L字状アーム113が昇降することにより、第1吸着ハンド114は、正極供給部120または積層部140に対して近接離隔し、第2吸着ハンド115は、負極供給部130または積層部140に対して近接離隔し、
積層部140は、積層ロボット110により搬送される袋詰正極20および負極30を交互に積層する場所であり、
積層部140は、袋詰正極20および負極30が交互に積層される積層テーブル141と、袋詰正極20と負極30の積層体を押圧するクランパ143と、クランパ143を駆動するクランパ駆動部144とを有し、
クランパ143は、袋詰正極20と負極30の積層体を上部から押圧するクランプヘッド143aと、クランプヘッド143aを支持する支持軸143bとから構成され、クランプヘッド143aは、支持軸143bを介して下方に付勢されており、底面により積層体の最上面を押圧し、
クランパ駆動部144は、支持軸143bを介して、クランプヘッド143aを回動させつつ一定の高さまで上昇させ、また、180度回動後のクランプヘッド143aを下降させ、
積層ロボット110の第1吸着ハンド114が袋詰正極20を吸着保持したとき、または、積層ロボット110の第2吸着ハンド115が負極30を吸着保持したときに、第1吸着ハンド114または第2吸着ハンド115から、袋詰正極20または負極30が露出する部位が存在し、
第1吸着ハンド114は、正極供給部120から積層部140へと移動する方向の前方方向に位置する角に、第1吸着ハンド114から袋詰正極20が露出する部位が存在し、
第2吸着ハンド115は、負極供給部130から積層部140へと移動する方向の前方方向に位置する角に、第2吸着ハンド115から負極30が露出する部位が存在し、
クランパ143が、積層部140のそれぞれ互いに対向する別々の辺に2つづつ設けられており、
袋詰正極が積層される直前の積層テーブルおよびクランパの状態では、積層テーブル141の上方には、積層ロボット110の第1吸着ハンド114が位置しており、第1吸着ハンド114は、袋詰正極20を吸着保持しており、続いて、第1吸着ハンド114が下降することにより、積層体の最上部に袋詰正極20が積層され、このとき、袋詰正極20の縁部により、クランプヘッド143aが覆われ、続いて、クランプヘッド143aが上昇するとともに90度回動し、クランプヘッド143aによって持ち上げられることにより、袋詰正極20の縁部は一時的にめくれ、元に戻り、続いて、クランプヘッド143aがさらに90度回動し、クランプヘッド143aの反対側の端部が、袋詰正極20の上方に位置するようになり、
積層部140に第1吸着ハンド114があるときに、第1吸着ハンド114はクランパ143と平面視で重なっておらず、
積層部140に第2吸着ハンド115があるときに、第2吸着ハンド115はクランパ143と平面視で重なっていない
シート積層装置100。」
キ また、同様に、甲5の【0022】?【0024】、【0030】、【0031】、【0033】、【0034】、【0059】?【0062】、及び、上記ア?オからすると、甲5には、次の発明(以下、「甲5方法発明」という。)が記載されていると認められる。
「甲5発明のシート積層装置100を用いたシート積層体の製造方法。」

(7)甲6の記載
甲6には、次の記載がある。なお、下線は当審で付した。
「【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図3に示すように、積層電池を構成する積層体4は、下から順に負極箔1、セパレータ2、及び、正極箔3、セパレータ2がこの順序で繰り返し積み上げられるようにして積層されている(勿論、正極箔3が最下層に位置し、その上にセパレータ2、負極箔1、セパレータ2、正極箔3、・・・の順で積層されていてもよい)。負極箔1及び正極箔3は、金属箔よりなる極箔本体の表裏両面に活物質が塗布形成されることにより構成され、その一側縁部が活物質の塗布されていない未塗工部1A,3Aとなっている。尚、負極箔1の極箔本体は、銅により構成され、正極箔3の極箔本体は、アルミニウムにより構成されている。また、以降において、特に正・負を区別する必要のないときには、負極箔1、正極箔3を総称して「電極箔」と称することもある。
【0025】
セパレータ2は、電気絶縁性のシート状の多孔質樹脂フィルムにより構成されており、前記負極箔1、正極箔3の平面矩形状の部分(塗工部)よりもとほぼ同等又は一回り大きい矩形状をなしている。適正な積層状態においては、正極箔3及び負極箔1の矩形状部分(塗工部)は、前記セパレータ2によって完全に覆われており(はみ出しておらず)、正極箔3及び負極箔1の各突出部、すなわち、未塗工部1A,3Aのみが、それぞれ異なる位置においてセパレータ2からはみ出すようにして突出している。当該各未塗工部1A,3Aは、負極タブ、正極タブに相当するものであり、積層電池の内部で電極端子の負極および正極にそれぞれ電気的に接続される領域である。尚、本実施形態では、負極箔1、正極箔3、セパレータ2が、シート体を構成する。
【0026】
図2は、積層電池の製造装置(積層体4を得るための装置)10の主要部分を示す概略構成図(平面図)である。同図に示すように、製造装置10は、セパレータ供給ステージ11、電極箔供給ステージ12、及び積層ステージ13を備えている。セパレータ供給ステージ11上には、積層の都度、図示しないセパレータ供給手段によって上記セパレータ2が1枚ずつ供給されるようになっている。また、電極箔供給ステージ12上には、積層の都度、図示しない電極箔供給手段によって負極箔1及び正極箔3が、交互に1枚ずつ供給されるようになっている。さらに、積層ステージ13には、所定の積層位置において、押さえ手段としての押さえ爪18が設けられている(図4参照)。当該押さえ爪18は、図示しないアクチュエータにより、自身の先端が積層体を押さえつける押さえ位置と、自身の先端が積層体を押さえつけない開放位置との間で位置切換可能に構成されている。
【0027】
製造装置10はまた、上記各ステージ11?13の中心の上方を通るようにして設けられたガイドレール14を備えている。当該ガイドレール14は、図示しない支柱により支持されている。そして、ガイドレール14には搬送アーム15(図1参照)が垂下状態で支持され、当該搬送アーム15の下端には吸着手段16が設けられている。
【0028】
搬送アーム15は、図示しないモータ等の駆動手段により前記ガイドレール14に沿って移動可能に設けられているとともに、後述するサーボモータ24(図1参照)の作動により、上下方向(図2では紙面奥行方向)に伸縮可能となっている(これについても後述する)。搬送アーム15がガイドレール14に沿って移動することにより、吸着手段16もまた、ガイドレール14に沿って移動する。また、搬送アーム15が伸縮することにより、吸着手段16が上下動するようになっている。
【0029】
上記の製造装置10を用いた積層体4の積層の概略について説明すると、積層に際しては先ず、電極箔供給ステージ12上にある負極箔1が吸着手段16に吸着させられる。そして、吸着手段16により負極箔1が吸着させられた状態で、今度は積層ステージ13上へと案内され、該積層ステージ13上の所定の積層位置へと載置させられる。当該載置に際しては、前記押さえ爪18により、負極箔1が位置ズレを極力起こさないよう、押さえ付けられる。
【0030】
次に、吸着手段16はセパレータ供給ステージ11上に案内され、上記と同様の要領で、セパレータ供給ステージ11上にあるセパレータ2が吸着手段16により吸着させられ、積層ステージ13上へと案内され、該積層ステージ13上の前記積層位置へと載置させられる。次に、再度吸着手段16は、電極箔供給ステージ12上へと移動させられる。この時点において、電極箔供給ステージ12上には正極箔3が供給されており、当該正極箔3が吸着手段16に吸着させられる。また、吸着手段16により正極箔3が吸着させられた状態で、今度は積層ステージ13上へと案内され、該積層ステージ13上の前記積層位置へと載置させられる。次に、再度吸着手段16は、セパレータ供給手段11上に案内され、該セパレータ供給ステージ11上にあるセパレータ2が吸着手段16により吸着させられる。そして、積層ステージ13上へと案内され、該積層ステージ13上の前記積層位置へと載置される。上記動作を所定回数繰り返すことで、下から順に負極箔1、セパレータ2、及び、正極箔3、セパレータ2が繰り返し積み上げられる。これにより、上述した積層体4が得られるのである。尚、本実施形態では、セパレータ供給ステージ11、及び、電極箔供給ステージ12が第1位置に相当し、積層ステージ13上の積層位置が第2位置に相当する。
【0031】
さて、本実施形態においては、吸着手段16等に特徴があるので、次には、当該吸着手段16等の構成について説明する。
【0032】
図1、図5、図7に示すように、吸着手段16は、第1吸着部21と第2吸着部22とを備えている。第1吸着部21は、前記シート体よりも小さい矩形状をなしている。当該第1吸着部21の外周側に位置するようにして平面視ロ字状をなす第2吸着部22が上下方向に相対移動可能に設けられている。吸着手段16が積層ステージ13の上方の所定の積層位置にあるとき、第1吸着部21は押さえ爪18と干渉しないようになっており、第2吸着部22は、押さえ爪18と干渉する(平面視において重なり合う)ように構成されている。
【0033】
第1吸着部21及び第2吸着部22は、いずれも板状のベース部材21A,22Aと、ベース部材21A,22Aの下面に設けられた多孔質吸着パッド21B,22Bとを備えている。両吸着部21,22のベース部材21A,22Aには、図示しない吸引孔が形成されている。第1吸着部21のベース部材21Aの上側に開口する吸引孔には、第1バキュームホース28の一端が接続され、第2吸着部22のベース部材22A上側に開口する吸引孔には、第2バキュームホース29の一端が接続されている。両ベース部材21A,22A下側には、複数本に分岐された吸引孔の他端側が開口状態で臨んでおり、それらが多孔質吸着パッド21B,22Bの複数箇所に連通されている。さらに、第1、第2バキュームホース28,29の他端には、それぞれ図示しないバキュームポンプが接続されている。そして、各バキュームポンプがオン状態とされることで、前記第1、第2バキュームホース28,29及び吸引孔を介して多孔質吸着パッド21B,22Bからの吸引が行われるようになっている。本実施形態では、第2吸着部22の外形が、前記シート体(電極箔6)の外形と同等に設定されており、第1吸着部21と第2吸着部22の多孔質吸着パッド21B,22B同士が面一となることで、前記シート体(電極箔6)の全体がほとんどはみ出すことなく吸引されるようになっている。
【0034】
前記搬送アーム15が垂下状態で支持されている点については上述したが、当該搬送アーム15の下端にはボールねじ23及びサーボモータ24が一体となった駆動手段25を介して前記第1吸着部21(のベース部材)が連結されている。そして、前記サーボモータ24の作動により、吸着手段16(第1吸着部21)等が上下動するようになっている。本実施形態では、前述したモータ等の駆動手段及び当該サーボモータ24等の駆動手段25により吸着手段16が移動させられることとなり、両駆動手段によって移動手段が構成されている。
【0035】
前記第1吸着部21のベース部材21Aには、ブラケット31が立設されており、該ブラケット31を介してシリンダ32が設けられている。シリンダ32の下部には、ロッド33が出没可能に設けられており、該ロッド33の下端には前記第2吸着部22(のベース部材22A)が連結されている。そして、図1に示すようにロッド33が突出状態にある場合には、第1吸着部21と第2吸着部22の多孔質吸着パッド21B,22B同士が面一となり、図7に示すように、ロッド33がシリンダ32内に没入状態にある場合には、第2吸着部22が、第1吸着部21に対し相対的に上動するようになっている。
【0036】
次に、上記の吸着手段16の動作について、上述した積層過程を中心に詳細に図6等を参照しつつ説明する。先ず、搬送アーム15がセパレータ供給ステージ11又は電極箔供給ステージ12の上に案内され、その位置において搬送アーム15が伸張させられ吸着手段16が下動させられる。このとき、セパレータ供給ステージ11又は電極箔供給ステージ12上には、図示しないセパレータ供給手段又は電極箔供給手段によって既にセパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)が所定の位置に所定の角度で供給されている。そして、前記バキュームポンプがオン状態とされることにより、吸着手段16による吸引が開始させられる。このとき、前記ロッド33は突出状態にあり、第1吸着部21及び第2吸着部22の多孔質吸着パッド21B,22B同士は面一となっている。このため、図6(a),(b),(c)に示すように、セパレータ2の全面が吸着手段16で吸着させられる。
【0037】
そして、吸着手段16によりセパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)が吸着させられた状態で、搬送アーム15が再度収縮させられ、吸着手段16が上動させられ、今度は積層ステージ13上へと案内される。
【0038】
吸着手段16が積層ステージ13上へ案内された所定のタイミングにおいて、図7に示すように、ロッド33がシリンダ32内に没入状態とされる。これにより、第2吸着部22が、第1吸着部21に対し相対的に上動する。また、当該ロッド33の没入動作と同期して、第2バキュームホース29側のバキュームポンプがオフとされる。このため、第1吸着部21の吸着面と第2吸着部22の吸着面とがずれるよう、第1吸着部21が第2吸着部22から相対的に離間させられるとともに、当該離間に際し、第2吸着部22による吸着が解除される。そして、セパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)は、第1吸着部21のみによって吸着されることとなる。
【0039】
その後、図8(a)に示すように、搬送アーム15が伸張させられ、吸着手段16が下動させられる。すると、下動した吸着手段16のうち、第1吸着部21のみがセパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)を介して積層ステージ13上(それまで積層されている積層体があればその上)に当接させられる。そして、その状態から第1バキュームホース28側のバキュームポンプがオフとされる。これにより、第1吸着部21による吸着が解除され、セパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)は積層ステージ13上に載置されることとなる。
【0040】
さらに、図8(b)に示すように、押さえ爪18が載置されたセパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)の側縁部を押さえることで、位置ずれのない安定した積層が実行される。」
「【図1】


「【図5】


【図6】


【図7】


【図8】




(8)甲6発明
ア 甲6の【0025】?【0027】、【0029】、【0030】、【0032】、【0033】、【0036】?【0040】からすると、甲6には、次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。
「セパレータ供給ステージ11、電極箔供給ステージ12、及び積層ステージ13を備えている積層電池の製造装置10であって、
負極箔1、正極箔3、セパレータ2が、シート体を構成し、
積層ステージ13には、所定の積層位置において、押さえ手段としての押さえ爪18が設けられており、押さえ爪18は、アクチュエータにより、自身の先端が積層体を押さえつける押さえ位置と、自身の先端が積層体を押さえつけない開放位置との間で位置切換可能に構成されており、
ガイドレール14には搬送アーム15が垂下状態で支持され、当該搬送アーム15の下端には吸着手段16が設けられており、
吸着手段16は、第1吸着部21と第2吸着部22とを備えており、第1吸着部21は、シート体よりも小さい矩形状をなしており、当該第1吸着部21の外周側に位置するようにして平面視ロ字状をなす第2吸着部22が上下方向に相対移動可能に設けられており、吸着手段16が積層ステージ13の上方の所定の積層位置にあるとき、第1吸着部21は押さえ爪18と干渉しないようになっており、第2吸着部22は、押さえ爪18と干渉する(平面視において重なり合う)ように構成されており、
第2吸着部22の外形が、シート体(電極箔6)の外形と同等に設定されており、
吸着手段16は、ガイドレール14の搬送アーム15が垂下状態で支持されており、
積層に際しては先ず、電極箔供給ステージ12上にある負極箔1が吸着手段16に吸着させられ、吸着手段16により負極箔1が吸着させられた状態で、今度は積層ステージ13上へと案内され、該積層ステージ13上の所定の積層位置へと載置させられ、当該載置に際しては、前記押さえ爪18により、負極箔1が位置ズレを極力起こさないよう、押さえ付けられ、
次に、吸着手段16はセパレータ供給ステージ11上に案内され、セパレータ供給ステージ11上にあるセパレータ2が吸着手段16により吸着させられ、積層ステージ13上へと案内され、該積層ステージ13上の前記積層位置へと載置させられ、
この積層動作において、先ず、吸着手段16が設けられた搬送アーム15がセパレータ供給ステージ11又は電極箔供給ステージ12の上に案内され、その位置において、吸着手段16が下動させられ、そして、吸着手段16による吸引が開始させられ、吸着手段16によりセパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)が吸着させられた状態で、吸着手段16が上動させられ、今度は積層ステージ13上へと案内され、吸着手段16が積層ステージ13上へ案内された所定のタイミングにおいて、第2吸着部22が、第1吸着部21に対し相対的に上動し、第1吸着部21が第2吸着部22から相対的に離間させられるとともに、当該離間に際し、第2吸着部22による吸着が解除され、そして、セパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)は、第1吸着部21のみによって吸着されることとなり、その後、吸着手段16が下動させられ、下動した吸着手段16のうち、第1吸着部21のみがセパレータ2又は負極箔1を介して積層ステージ13上に当接させられ、そして、その状態から第1吸着部21による吸着が解除され、セパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)は積層ステージ13上に載置され、押さえ爪18が載置されたセパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)の側縁部を押さえることで、位置ずれのない安定した積層が実行される
積層電池の製造装置10。」
イ また、同様に、甲6の【0025】?【0027】、【0029】、【0030】、【0032】、【0033】、【0036】?【0040】からすると、甲6には、次の発明(以下、「甲6方法発明」という。)が記載されていると認められる。
「甲6発明の積層電池の製造装置10を用いた積層電池の製造方法。」

6 当審の判断
(1)本件発明の「切り欠き部」の解釈について
「切欠き(きりかき)」とは、一般的には、「部材接合のため切り取った部分」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)をいうが、本件発明の「切り欠き部」は、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、切り取ったということ自体に技術的な意義が認められず、「切り欠き部」からシートが露出していることに技術的な意義があるから、単に、搬送ハンドラからシートが露出している部分を意味していると認められる。
以下、この解釈を前提に検討する。

(2)甲1を主たる引例とした新規性進歩性について(上記2の(1)のア、イ、上記3の(1)のア、イ)
(2)-1 本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明とを対比する。
イ 甲1発明の「セパレータ2」、「正極4」及び「負極6」はいずれも、本件発明1の「シート」に相当する。
ウ 甲1発明の「第1,第2載置領域A1,A2」は、本件発明1の「ステージ」に相当する。
エ 甲1発明の「正極積層ロボット51」の「吸引ハンド53」は、「保持した2組のセパレータ2および正極4を、正極4を下にして第1,第2載置領域A1,A2に載置」するものであるから、本件発明1の「積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラ」に相当する。
オ 甲1発明の「負極積層ロボット52」の「吸引ハンド53」は、「吸引ハンド53により保持した2組のセパレータ2および負極6を、負極6を下にして第1,第2載置領域A1,A2に載置」するものであるから、本件発明1の「積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラ」に相当する。
カ 甲1発明の「第1クランパ64A」及び「第3クランパ64C」は、本件発明1の「第1のクランプ装置」及び「第2のクランプ装置」にそれぞれ相当する。
キ 甲1発明の「吸引ハンド53により保持した2組のセパレータ2および正極4を、正極4を下にして第1,第2載置領域A1,A2に載置し、」「吸引ハンド53により保持した2組のセパレータ2および負極6を、負極6を下にして第1,第2載置領域A1,A2に載置」する事項は、本件発明1の「複数のシートが積層されて成るシート積層体を載置するステージ」「を有」する事項に相当する。
ク 甲1発明の「正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53は、第1,第2載置領域A1,A2の鉛直上方向に位置する待機ポジションと該待機ポジションから待避した待避ポジションの間を移動可能、かつ、第1,第2載置領域A1,A2に対して上下に移動可能であ」る事項は、本件発明1の「ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第1の搬送ハンドラと、」「前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第2の搬送ハンドラと、」「を有」する事項に相当する。
ケ 甲1発明の「正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53が、2組のセパレータ2および正極4、または、2組のセパレータ2および負極6を保持したとき、吸引ハンド53から、2組のセパレータ2および正極4、または、2組のセパレータ2および負極6が露出する部位が存在する」事項は、上記(1)の「本件発明の「切り欠き部」の解釈について」の検討結果に照らせば、本件発明1の「第1の搬送ハンドラ」が「周辺部に切り欠き部を有」し、「第2の搬送ハンドラ」が「周辺部に切り欠き部を有する」事項に相当する。
コ 甲1発明の「第1,4,5クランパ64A,64D,64Eが上昇しつつ回転して、開動作(クランプ動作)を行い開状態となり、」「第1,4,5クランパ64A,64D,64Eが下降して、閉動作(アンクランプ動作)を行い閉状態となり、これにより、第1,第2載置領域A1,A2に載置されたセパレータ2および正極4が、対角の縁部で把持され」る事項は、本件発明1の「ステージ上の前記シート積層体を押圧する第1のクランプ装置であって、前記シート積層体の第1の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションより上方の第1の上方ポジションとの間を移動可能である第1のクランプ装置」「を有」する事項に相当する。
サ 甲1発明は、「第1クランパ64A及び第3クランパ64Cは、第2載置領域A2のそれぞれ互いに対向する別々の辺に設けられて」いるから、甲1発明の「第2,3,6クランパ64B,64C,64Fが上昇しつつ回転して、開動作(クランプ動作)を行い開状態となり、」「第2,3,6クランパ64B,64C,64Fが下降して、閉動作(アンクランプ動作)を行い閉状態となり、これにより、第1,第2載置領域A1,A2に載置されたセパレータ2および負極6が、対角の縁部で把持され」る事項は、本件発明1の「ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションとの間を移動可能である第2のクランプ装置」「を有」する事項に相当する。
シ 甲1発明の「正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53」の「待機ポジション」は、「第1,第2載置領域A1,A2の鉛直上方向に位置」し、「電極積層部50のパレット60に正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53があるとき、該吸引ハンド53は第1?6クランパ64A?64Fと平面視で重ならない」ものであるから、甲1発明は、本件発明1の「待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラと、前記第1の押圧ポジションに位置する第1のクランプ装置の少なくとも前記シート積層体を押圧する部分とは、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重なら」ない事項を含むものである。
ス 甲1発明の「正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53が、2組のセパレータ2および正極4、または、2組のセパレータ2および負極6を保持したとき、正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53から、2組のセパレータ2および正極4、または、2組のセパレータ2および負極6が露出する部位が存在し、」「電極積層部50のパレット60に正極,負極積層ロボット51,52の吸引ハンド53があるとき、該吸引ハンド53は第1?6クランパ64A?64Fと平面視で重ならない」事項は、本件発明1の「第1の搬送ハンドラに搬送される前記シートの前記切り欠き部で露出した部分と、前記第1のクランプ装置の前記押圧する部分とが前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重なり、前記第2の搬送ハンドラに搬送される前記シートの前記切り欠き部で露出した部分と、前記第2のクランプ装置の前記押圧する部分とが、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重なる」事項に相当する。
セ 上記ア?スより、本件発明1と甲1発明とは、
「複数のシートが積層されて成るシート積層体を載置するステージと、
積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第1の搬送ハンドラと、
積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第2の搬送ハンドラと、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第1のクランプ装置であって、前記シート積層体の第1の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションより上方の第1の上方ポジションとの間を移動可能である第1のクランプ装置と、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションとの間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有し、
前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラと、前記第1の押圧ポジションに位置する第1のクランプ装置の少なくとも前記シート積層体を押圧する部分とは、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重ならず、
前記第1の搬送ハンドラに搬送される前記シートの前記切り欠き部で露出した部分と、前記第1のクランプ装置の前記押圧する部分とが前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重なり、
前記第2の搬送ハンドラに搬送される前記シートの前記切り欠き部で露出した部分と、前記第2のクランプ装置の前記押圧する部分とが、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重なる
シート積層装置。」である点で一致し、下記A及びBの相違点で相違する。

(相違点)
A 本件発明1は、「第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され」るのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
B 本件発明1は、「第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わ」るのに対し、甲1発明は、「第1,4,5クランパ64A,64D,64Eが上昇しつつ回転して、開動作(クランプ動作)を行い開状態となり、吸引ハンド53をパレット60に移動させ、吸引ハンド53により保持した2組のセパレータ2および正極4を、正極4を下にして第1,第2載置領域A1,A2に載置し、」「第2,3,6クランパ64B,64C,64Fが上昇しつつ回転して、開動作(クランプ動作)を行い開状態となり、この後、吸引ハンド53をパレット60に移動させ、吸引ハンド53により保持した2組のセパレータ2および負極6を、負極6を下にして第1,第2載置領域A1,A2に載置」するものであって、クランパが上昇した後に吸引ハンドが移動する点。

ソ まず、事案に鑑み、上記Bの相違点について検討する。
タ 甲1発明は、「第1,4,5クランパ64A,64D,64Eが上昇しつつ回転して、開動作(クランプ動作)を行い開状態となり、吸引ハンド53をパレット60に移動させ、吸引ハンド53により保持した2組のセパレータ2および正極4を、正極4を下にして第1,第2載置領域A1,A2に載置」するものであって、第1,4,5クランパ64A,64D,64Eが上昇した後、吸引ハンド53がパレット60に移動するものである。
チ これに対して、本件発明1は、「第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わ」ることにより、「シートを積層するサイクルタイムを低減」(【0008】)という効果を奏するものである。
ツ したがって、上記Bの相違点は、実質的な相違点であるといえる。
テ そして、甲1発明は、「電池内への異物混入の可能性を極力抑制し、かつクランパを駆動するための他の動力源を必要としないシート積層装置およびシート積層方法を提供する」(甲1の【0005】)ものであって、本件発明1のように「シートを積層するサイクルタイムを低減」(本件明細書の【0008】)するものではないから、甲1発明において、「第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わ」るようにする、動機付けが見当たらない。
ト また、本件発明1は、「第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わ」るようにすることにより、本件発明の「シートを積層するサイクルタイムを低減」(本件明細書の【0008】)するという効果を奏するものである。
ナ そうすると、甲1発明において、上記Bの相違点に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ニ よって、上記Aの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明から、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)-2 本件発明2、3、5、6、8について
ア 本件発明2、3、5、6、8は、「第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わ」る事項を含むものであるから、本件発明2、3、5、6、8と甲1発明とは、少なくとも、上記Bの相違点で相違する。
イ そして、上記Bの相違点については、上記(2)-1で検討した理由と同様の理由により、実質的な相違点であるし、上記Bの相違点に係る本件発明2、3、5、6、8の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ウ よって、本件発明2、3、5、6、8は、甲1発明ではないし、甲1発明から、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)-3 本件発明9、10について
ア 本件発明9、10は、「第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わ」る事項を含むものであるから、本件発明9、10と甲1方法発明とは、少なくとも、上記Bの相違点で相違する。
イ そして、上記Bの相違点については、上記(2)-1で検討した理由と同様の理由により、実質的な相違点であるし、上記Bの相違点に係る本件発明9、10の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ウ よって、本件発明9、10は、甲1方法発明ではないし、甲1方法発明から、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)甲2を主たる引例とした新規性進歩性について(上記2の(1)のウ、エ、上記3の(1)のウ、エ)
(3)-1 本件発明1について
ア 本件発明1と甲2発明とを対比する。
イ 甲2発明の「上セパレータ100」、「下セパレータ101」、「正極板108」、「負極板109」はいずれも、本件発明1の「シート」に相当する。
ウ 甲2発明の「搬送コンベア110」は、本件発明1の「ステージ」に相当する。
エ 甲2発明の「正極板108用」「移載ハンド112」は、「吸着部115で正極板108」を「吸着して下セパレータ101に」「配置」するものであるから、本件発明1の「積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラ」に相当する。
オ 甲2発明の「負極板109用」「移載ハンド112」は、「吸着部115で」「負極板109」を「吸着して下セパレータ101に」「配置」するものであるから、本件発明1の「積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラ」に相当する。
カ 甲2発明の「個々の正極板108および負極板109を搬送コンベア110の進行方向に対して左右に少なくとも2カ所で支えることができるように、搬送コンベア110の端部に複数個が備えられ」た「サポート部材116」は、本件発明1の「第1のクランプ装置」及び「第2のクランプ装置」に相当する。
キ 甲2発明の「枚葉状の正極板108および負極板109と、正極板108および負極板109を搬送コンベア110上の下セパレータ101に載置する」事項は、本件発明1の「複数のシートが積層されて成るシート積層体を載置するステージ」「を有」する事項に相当する。
ク 甲2発明の「正極板108用、負極板109用各々専用に設置された」「移載ハンド112は、搬送コンベア110の鉛直上方向に位置する待機ポジションと該待機ポジションから待避した待避ポジションの間を移動可能、かつ、搬送コンベア110に対して上下に移動可能であ」る事項は、本件発明1の「第1の搬送ハンドラ」が、「ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、」「第2の搬送ハンドラ」が、「ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であ」る事項に相当する。
ケ 甲2発明の「正極板108用、負極板109用各々専用に設置された」「移載ハンド112の吸着部115が正極板108または負極板109を保持したとき、移載ハンド112の吸着部115から正極板108または負極板109が露出する部位が存在」する事項は、上記(1)の「本件発明の「切り欠き部」の解釈について」の検討結果に照らせば、本件発明1の「第1の搬送ハンドラ」が「周辺部に切り欠き部を有」し、「第2の搬送ハンドラ」が「周辺部に切り欠き部を有する」事項に相当する。
コ 甲2発明の「サポート部材116」は、「待機位置から90度旋回し、正極板108および負極板109を押さえ、搬送中の位置ズレの防止を行」うものであるところ、「正極板108および負極板109を押さえ」るために、上下動することは自明であるから、甲2発明の「サポート部材116は、個々の正極板108および負極板109を搬送コンベア110の進行方向に対して左右に少なくとも2カ所で支えることができるように、搬送コンベア110の端部に複数個が備えられており、」「搬送コンベア110上において、正極板108および負極板109が所定位置に配置されると、搬送コンベア110の端部に備えられているサポート部材116が待機位置から90度旋回し、正極板108および負極板109を押さえ、搬送中の位置ズレの防止を行」う事項は、本件発明1の「ステージ上の前記シート積層体を押圧する第1のクランプ装置であって、前記シート積層体の第1の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションより上方の第1の上方ポジションとの間を移動可能である第1のクランプ装置と、前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションとの間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有」する事項に相当する。
サ 甲2発明の「移載ハンド112の吸着部115」の「待機ポジション」は、「搬送コンベア110の鉛直上方向に位置」し、「移載ハンド112の吸着部115が搬送コンベア110上にある際には、移載ハンド112の吸着部115とサポート部材116とが平面視で重ならない」から、甲2発明は、本件発明1の「待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラと、前記第1の押圧ポジションに位置する第1のクランプ装置の少なくとも前記シート積層体を押圧する部分とは、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重なら」ない事項を含むものである。
シ 甲2発明の「移載ハンド112の吸着部115が正極板108または負極板109を保持したとき、移載ハンド112の吸着部115から正極板108または負極板109が露出する部位が存在し、」「移載ハンド112の吸着部115が搬送コンベア110上にある際には、移載ハンド112の吸着部115とサポート部材116とが平面視で重ならない」事項は、本件発明1の「第1の搬送ハンドラに搬送される前記シートの前記切り欠き部で露出した部分と、前記第1のクランプ装置の前記押圧する部分とが前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重なり、前記第2の搬送ハンドラに搬送される前記シートの前記切り欠き部で露出した部分と、前記第2のクランプ装置の前記押圧する部分とが、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重なる」事項に相当する。
ス 甲2発明の「2次電池製造装置」は、「正極板108および負極板109を搬送コンベア110上の下セパレータ101に載置する」ものであるから、本件発明1の「シート積層装置」に相当する。
セ 上記ア?スより、本件発明1と甲2発明とは、
「複数のシートが積層されて成るシート積層体を載置するステージと、
積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第1の搬送ハンドラと、
積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第2の搬送ハンドラと、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第1のクランプ装置であって、前記シート積層体の第1の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションより上方の第1の上方ポジションとの間を移動可能である第1のクランプ装置と、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションとの間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有し、
前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラと、前記第1の押圧ポジションに位置する第1のクランプ装置の少なくとも前記シート積層体を押圧する部分とは、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重ならず、
前記第1の搬送ハンドラに搬送される前記シートの前記切り欠き部で露出した部分と、前記第1のクランプ装置の前記押圧する部分とが前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重なり、
前記第2の搬送ハンドラに搬送される前記シートの前記切り欠き部で露出した部分と、前記第2のクランプ装置の前記押圧する部分とが、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重なる
シート積層装置。」である点で一致し、下記C及びDの相違点で相違する。

(相違点)
C 本件発明1は、「第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され」るのに対し、甲2発明は、そのような特定がない点。
D 本件発明1は、「第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わ」るのに対し、甲2発明は、「正極板108用、負極板109用各々専用に設置された移載ハンド112は、吸着部115で正極板108と負極板109を同時に吸着して下セパレータ101に正極板108と負極板109が隣り合うように配置し、搬送コンベア110上において、正極板108および負極板109が所定位置に配置されると、搬送コンベア110の端部に備えられているサポート部材116が待機位置から90度旋回し、正極板108および負極板109を押さえ、搬送中の位置ズレの防止を行」うものであって、サポート部材116が待機位置に旋回するタイミングが不明である点。

ソ まず、事案に鑑み、上記Dの相違点について検討する。
タ 甲2発明は、「正極板108用、負極板109用各々専用に設置された移載ハンド112は、吸着部115で正極板108と負極板109を同時に吸着して下セパレータ101に正極板108と負極板109が隣り合うように配置し、搬送コンベア110上において、正極板108および負極板109が所定位置に配置されると、搬送コンベア110の端部に備えられているサポート部材116が待機位置から90度旋回し、正極板108および負極板109を押さえ、搬送中の位置ズレの防止を行」うものであって、サポート部材116が待機位置に旋回するタイミングが不明である。
チ これに対して、本件発明1は、「第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わ」ることにより、「シートを積層するサイクルタイムを低減」(【0008】)という効果を奏するものである。
ツ したがって、上記Dの相違点は、実質的な相違点であるといえる。
テ そして、甲2発明は、正極板、負極板の枚数が増えても対応でき、電極の位置ずれを防ぐもの(甲2の【0006】?【0008】)であって、本件発明1のように「シートを積層するサイクルタイムを低減」(本件明細書の【0008】)するものではないから、甲2発明において、「第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わ」るようにする、動機付けが見当たらない。
ト また、本件発明1は、「第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わ」るようにすることにより、本件発明の「シートを積層するサイクルタイムを低減」(本件明細書の【0008】)するという効果を奏するものである。
ナ そうすると、甲1発明において、上記Dの相違点に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ニ よって、上記Cの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明ではないし、甲2発明から、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)-2 本件発明2、3、5、6、8について
ア 本件発明2、3、5、6、8は、「第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わ」る事項を含むものであるから、本件発明2、3、5、6、8と甲2発明とは、少なくとも、上記Dの相違点で相違する。
イ そして、上記Dの相違点については、上記(3)-1で検討した理由と同様の理由により、実質的な相違点であるし、上記Dの相違点に係る本件発明2、3、5、6、8の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ウ よって、本件発明2、3、5、6、8は、甲2発明ではないし、甲2発明から、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)-3 本件発明9、10について
ア 本件発明9、10は、「第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わ」る事項を含むものであるから、本件発明9、10と甲2方法発明とは、少なくとも、上記Dの相違点で相違する。
イ そして、上記Dの相違点については、上記(3)-1で検討した理由と同様の理由により、実質的な相違点であるし、上記Dの相違点に係る本件発明9、10の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ウ よって、本件発明9、10は、甲2方法発明ではないし、甲2方法発明から、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)甲5に係る出願に対する拡大先願について(上記2の(2)、上記3の(2)のア)
(4)-1 本件発明1について
ア 本件発明1と甲5発明とを対比する。
イ 甲5発明の「袋詰正極20」及び「負極30」はいずれも、本件発明1の「シート」に相当する。
ウ 甲5発明の「積層部140」は、本件発明1の「ステージ」に相当する。
エ 甲5発明の「第1吸着ハンド114」は、「袋詰正極20を吸着保持し、離脱させ」るものであるから、本件発明1の「積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラ」に相当する。
オ 甲5発明の「第2吸着ハンド115」は、「負極30を吸着保持し、離脱させ」るものであるから、本件発明1の「積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラ」に相当する。
カ 甲5発明は、「クランパ143が、積層部140のそれぞれ互いに対向する別々の辺に2つづつ設けられて」いるから、甲5発明の「積層部140」の一辺に2つ設けられている「クランパ143」は、本件発明1の「第1のクランプ装置」に相当し、甲5発明の「積層部140」の該一辺に対向する他辺に2つ設けられている「クランパ143」は、本件発明1の「第2のクランプ装置」に相当する。
キ 甲5発明の「積層部140は、積層ロボット110により搬送される袋詰正極20および負極30を交互に積層する場所であ」る事項は、本件発明1の「複数のシートが積層されて成るシート積層体を載置するステージ」「を有」する事項に相当する。
ク 甲5発明の「L字状アーム113が90度揺動することにより、第1吸着ハンド114は、正極供給部120と積層部140との間を往復移動し、」「L字状アーム113が昇降することにより、第1吸着ハンド114は、正極供給部120または積層部140に対して近接離隔」する事項は、本件発明1の「第1の搬送ハンドラ」が、「ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であ」る事項に相当する。
ケ 甲5発明の「L字状アーム113が90度揺動することにより、」「第2吸着ハンド115は、積層部140と負極供給部130との間を往復移動し、L字状アーム113が昇降することにより、」「第2吸着ハンド115は、負極供給部130または積層部140に対して近接離隔」する事項は、本件発明1の「第2の搬送ハンドラ」が、「ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であ」る事項に相当する。
コ 甲5発明の「積層ロボット110の第1吸着ハンド114が袋詰正極20を吸着保持したとき、または、積層ロボット110の第2吸着ハンド115が負極30を吸着保持したときに、第1吸着ハンド114または第2吸着ハンド115から、袋詰正極20または負極30が露出する部位が存在」する事項は、上記(1)の「本件発明の「切り欠き部」の解釈について」の検討結果に照らせば、本件発明1の「第1の搬送ハンドラ」が「周辺部に切り欠き部を有」し、「第2の搬送ハンドラ」が「周辺部に切り欠き部を有する」事項に相当する。
サ 甲5発明の「クランパ143は、袋詰正極20と負極30の積層体を上部から押圧するクランプヘッド143aと、クランプヘッド143aを支持する支持軸143bとから構成され、クランプヘッド143aは、支持軸143bを介して下方に付勢されており、底面により積層体の最上面を押圧し、クランパ駆動部144は、支持軸143bを介して、クランプヘッド143aを回動させつつ一定の高さまで90度揺動し、また、動軸116回動後のクランプヘッド143aを下降させ、」「クランパ143が、積層部140のそれぞれ互いに対向する別々の辺に2つづつ設けられて」いる事項は、本件発明1の「ステージ上の前記シート積層体を押圧する第1のクランプ装置であって、前記シート積層体の第1の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションより上方の第1の上方ポジションとの間を移動可能である第1のクランプ装置と、前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションとの間を移動可能である第2のクランプ装置」「を有」する事項に相当する。
シ 甲5発明の「L字状アーム113が昇降することにより、第1吸着ハンド114は、正極供給部120または積層部140に対して近接離隔し、」「積層部140に第1吸着ハンド114があるときに、第1吸着ハンド114はクランパ143と平面視で重な」らないものであるから、甲5発明は、本件発明1の「待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラと、前記第1の押圧ポジションに位置する第1のクランプ装置の少なくとも前記シート積層体を押圧する部分とは、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重なら」ない事項を含むものである。
ス 甲1発明は、「クランパ143」が「袋詰正極20と負極30の積層体を上部から押圧するクランプヘッド143a」を有し、「積層ロボット110の第1吸着ハンド114が袋詰正極20を吸着保持したとき、または、積層ロボット110の第2吸着ハンド115が負極30を吸着保持したときに、第1吸着ハンド114または第2吸着ハンド115から、袋詰正極20または負極30が露出する部位が存在し、」「積層部140に第1吸着ハンド114があるときに、第1吸着ハンド114はクランパ143と平面視で重なっておらず、積層部140に第2吸着ハンド115があるときに、第2吸着ハンド115はクランパ143と平面視で重なっていない」から、甲5発明は、本件発明1の「第1の搬送ハンドラに搬送される前記シートの前記切り欠き部で露出した部分と、前記第1のクランプ装置の前記押圧する部分とが前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重なり、前記第2の搬送ハンドラに搬送される前記シートの前記切り欠き部で露出した部分と、前記第2のクランプ装置の前記押圧する部分とが、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重なる」事項を含むものである。
セ 上記ア?スより、本件発明1と甲5発明とは、
「複数のシートが積層されて成るシート積層体を載置するステージと、
積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第1の搬送ハンドラと、
積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第2の搬送ハンドラと、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第1のクランプ装置であって、前記シート積層体の第1の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションより上方の第1の上方ポジションとの間を移動可能である第1のクランプ装置と、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションとの間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有し、
前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラと、前記第1の押圧ポジションに位置する第1のクランプ装置の少なくとも前記シート積層体を押圧する部分とは、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重ならず、
前記第1の搬送ハンドラに搬送される前記シートの前記切り欠き部で露出した部分と、前記第1のクランプ装置の前記押圧する部分とが前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重なり、
前記第2の搬送ハンドラに搬送される前記シートの前記切り欠き部で露出した部分と、前記第2のクランプ装置の前記押圧する部分とが、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重なる
シート積層装置。」である点で一致し、下記E及びFの相違点で相違する。

(相違点)
E 本件発明1は、「第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され」るのに対し、甲5発明は、そのような特定がない点。
F 本件発明1は、「第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わ」るのに対し、甲5発明は、「第1吸着ハンド114が下降することにより、積層体の最上部に袋詰正極20が積層され、このとき、袋詰正極20の縁部により、クランプヘッド143aが覆われ、続いて、クランプヘッド143aが上昇するとともに90度回動」するものであって、クランプヘッド143aの上昇中に、第1吸着ハンド114が積層体の上部へ移動し始めるものではない点。

ソ まず、事案に鑑み、上記Fの相違点について検討する。
タ 甲5発明は、「第1吸着ハンド114が下降することにより、積層体の最上部に袋詰正極20が積層され、このとき、袋詰正極20の縁部により、クランプヘッド143aが覆われ、続いて、クランプヘッド143aが上昇するとともに90度回動」するものであって、第1吸着ハンド114が積層体の最上部に袋詰正極20が積層した後に、クランプヘッド143aが上昇するものである。
チ これに対して、本件発明1は、「第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わ」ることにより、「シートを積層するサイクルタイムを低減」(【0008】)という効果を奏するものである。
ツ したがって、上記Fの相違点は、実質的な相違点であるといえる。
テ よって、上記Eの相違点について、検討するまでもなく、本件発明1は甲5発明と同一であるとはいえない。

(4)-2 本件発明2、3、5、6、8について
ア 本件発明2、3、5、6、8は、「第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わ」る事項を含むものであるから、本件発明2、3、5、6、8と甲5発明とは、少なくとも、上記Fの相違点で相違する。
イ そして、上記Fの相違点については、上記(4)-1で検討した理由と同様の理由により、実質的な相違点であるから、本件発明2、3、5、6、8は甲5発明と同一であるとはいえない。

(4)-3 本件発明9、10について
ア 本件発明9、10は、「第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わ」る事項を含むものであるから、本件発明9、10と甲5方法発明とは、少なくとも、上記Fの相違点で相違する。
イ そして、上記Fの相違点については、上記(4)-1で検討した理由と同様の理由により、実質的な相違点であるから、本件発明9、10は甲5方法発明と同一であるとはいえない。

(5)甲6に係る出願に対する拡大先願について(上記3の(2)のイ)
(5)-1 本件発明1について
ア 本件発明1と甲6発明とを対比する。
イ 甲6発明は、「吸着手段16は、第1吸着部21と第2吸着部22とを備えており、第1吸着部21は、シート体よりも小さい矩形状をなしており、当該第1吸着部21の外周側に位置するようにして平面視ロ字状をなす第2吸着部22が上下方向に相対移動可能に設けられており、」「第2吸着部22の外形が、シート体(電極箔6)の外形と同等に設定されており、積層に際しては先ず、電極箔供給ステージ12上にある負極箔1が吸着手段16に吸着させられ、吸着手段16により負極箔1が吸着させられた状態で、今度は積層ステージ13上へと案内され、該積層ステージ13上の所定の積層位置へと載置させられ」るものであって、吸着手段16は一つのシート体(電極箔6)を吸着するものである。
ウ そうすると、甲6発明の「第1吸着部21と第2吸着部22とを備え」た「吸着手段16」が、本件発明1の「第1の搬送ハンドラ」または「第2の搬送ハンドラ」に相当する。
エ したがって、本件発明1と甲6発明とは、少なくとも、前者が、「積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第1の搬送ハンドラと、」「積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第2の搬送ハンドラと、」「を有」するのに対し、後者は、「第1吸着部21と第2吸着部22とを備えており、第1吸着部21は、シート体よりも小さい矩形状をなしており、当該第1吸着部21の外周側に位置するようにして平面視ロ字状をなす第2吸着部22が上下方向に相対移動可能に設けられており、吸着手段16が積層ステージ13の上方の所定の積層位置にあるとき、第1吸着部21は押さえ爪18と干渉しないようになっており、第2吸着部22は、押さえ爪18と干渉する(平面視において重なり合う)ように構成されており、第2吸着部22の外形が、シート体(電極箔6)の外形と同等に設定されて」いる「吸着手段16」を有するものであって、吸着手段16が2つない点で相違する。
オ 以下、上記エの相違点について検討するに、本件発明1は、シートを搬送する搬送ハンドラが「第1の搬送ハンドラ」と「第2の搬送ハンドラ」との2つを有するものであって、甲6発明のように、シート体を搬送する手段が「吸着手段16」1つしかないものとは異なるから、上記エの相違点は、実質的な相違点であるといえる。
カ よって、本件発明1は甲6発明と同一であるとはいえない。

(5)-2 本件発明2、3、5、6、8について
ア 本件発明2、3、5、6、8は、「積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第1の搬送ハンドラと、」「積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第2の搬送ハンドラと、」「を有」する事項を含むものであるから、本件発明2、3、5、6、8と甲6発明とは、少なくとも、上記(5)-1のエの相違点で相違する。
イ そして、上記(5)-1のエの相違点については、上記(5)-1で検討した理由と同様の理由により、実質的な相違点であるから、本件発明2、3、5、6、8は甲6発明と同一であるとはいえない。

(5)-3 本件発明9、10について
ア 本件発明9、10は、「積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第1の搬送ハンドラと、」「積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第2の搬送ハンドラと、」「を有」する事項を含むものであるから、本件発明9、10と甲6方法発明とは、少なくとも、上記(5)-1のエの相違点で相違する。
イ そして、上記(5)-1のエの相違点については、上記(5)-1で検討した理由と同様の理由により、実質的な相違点であるから、本件発明9、10は甲6方法発明と同一であるとはいえない。

(6)サポート要件違反について(上記2の(3))
ア 本件明細書の記載によれば、本件発明の解決しようとする課題は、「シート積層体上に第1のシートを積層する際、」「一対のクランプ装置は、シート積層体の上に新たに置かれる」「シートを保持するため、ステージに対して上昇する」が、「搬送ハンドラが第1のシートをステージの上方へ搬送する前に一対のクランプ装置が上昇すると、搬送ハンドラの移動が妨げられるという問題が生じ得る」ので、「通常、一対のクランプ装置は、搬送ハンドラがステージの上方へシートを搬送し終えた後に上昇すると考えられ」(【0006】)、そのために、「シートを積層するサイクルタイムが増大する」(【0007】)ところ、「シートを積層するサイクルタイムを低減できるシート積層装置およびシート積層方法を提供すること」(【0008】)であると認められる。
イ 一方、上記アの課題を解決する手段について、本件明細書には、「第1の搬送ハンドラ4が待機ポジションに到達するまでに、第1のクランプ装置8は既に第1の上方ポジションに移動し終えた状態にある。そのため、第1の搬送ハンドラ4は、待機ポジションに到達後速やかに下降動作を開始することができる。これにより、シート積層方法のサイクルタイムを低減することができる」(【0037】)、「第2の搬送ハンドラ11が待機ポジションに到達するまでに、第2のクランプ装置9は既に第2の上方ポジションに移動し終えた状態にある。そのため、第2の搬送ハンドラ11は、待機ポジションに到達後速やかに下降動作を開始することができる。これにより、シート積層方法のサイクルタイムを低減することができる」(【0046】)、「対角に位置する2つのクランプ装置を同時に駆動する比較例におけるシート積層方法について説明する。対角に位置する2つのクランプ装置8、9を同時に上昇させると、搬送ハンドラ4、11の待機ポジションを挟んで両側にクランプ装置8、9が位置することになる。したがって、一方のクランプ装置8または9が搬送ハンドラ4、11の進路上に位置するため、搬送ハンドラ4、11の移動を妨げることになる。そのため、図5(D)および図6(D)に示されるような待機ポジションまで搬送ハンドラ4、11を移動させた後に、対角に位置するクランプ装置8、9を上昇させる必要がある。その結果、搬送ハンドラ4、11が待機ポジションに到着した後、クランプ装置8、9の上昇移動が終了するまでの間、搬送ハンドラ4、11は下降動作をすることができない。この時間的ギャップにより、図5および図6に示すシート積層方法よりもサイクルタイムが長くなってしまう。・・・(略)・・・これに対し、本発明の本実施形態によれば、第1のクランプ装置8は第1の搬送ハンドラ4の移動を妨げず、第2のクランプ装置9は第2の搬送ハンドラ11の移動を妨げない。搬送ハンドラ4、11を待機ポジションへ移動させた後に、対角に位置するクランプ装置8、9を上昇させる、というような動作上の制約も受けない。これにより、シートを積層するサイクルタイムを低減するシート積層装置およびシート積層方法を提供できる」(【0053】)と記載されている。
ウ ここで、上記イの記載によれば、「クランプ装置8または9が搬送ハンドラ4、11の進路上に位置するため、搬送ハンドラ4、11の移動を妨げることになる」ことにより、上記アの課題が生じることとなるから、本件発明において、上方ポジションに移動したクランプ装置が、搬送ハンドラの待避ポジションから待機ポジションへの移動の進路上に位置しなければ、上記アの課題が生じることはなく、上記アの課題を解決し得るとはいえない。
エ また、上記アの課題を解決し得るためには、上記イの記載によれば、搬送ハンドラが待避ポジションから待機ポジションに到達するまでに、クランプ装置は既に上方ポジションに移動し終えた状態にあることが必要である。
オ そして、本件訂正により、本件発明1?3、5、6、8?10には、「第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、前記第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わ」るとの発明特定事項が特定されたから、本件発明1?3、5、6、8?10は、上記アの課題を解決し得るものとなった。
カ したがって、本件発明1?3、5、6、8?10は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

(7)明確性違反について(上記2の(4)のア?エ、上記3の(4))
ア 上記2の(4)のア?ウについて
本件訂正により、本件訂正前の請求項4、7は削除されたから、上記2のア?ウについての取消理由は解消された。

イ 上記2の(4)のエについて
本件訂正により、訂正前の「待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラに保持された前記シートの露出面と前記第1の辺の一部を押圧する面とが対向する第1の上方ポジション」が、「待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラに保持された前記シートの露出面と前記第1の押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジション」に、また、訂正前の「待機ポジションに位置する前記第2の搬送ハンドラに保持された前記シートの前記露出面と前記第2の辺の一部を押圧する面とが対向する第2の上方ポジション」が、「待機ポジションに位置する前記第2の搬送ハンドラに保持された前記シートの前記露出面と前記第2の押圧面とが対向する位置関係となる第2の上方ポジション」に、それぞれ訂正された。
そして、訂正後の「第1の上方ポジション」は、「待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラに保持された前記シートの露出面と前記第1の押圧面とが対向する位置関係となる」ものであることが明確となり、訂正後の「第2の上方ポジション」は、「待機ポジションに位置する前記第2の搬送ハンドラに保持された前記シートの前記露出面と前記第2の押圧面とが対向する位置関係となる」ものであることが明確となった。
よって、本件発明3及びそれを引用する本件発明5、6、8は、明確である。

ウ 上記3の(4)について
本件発明1、2、9、10は、「積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第1の搬送ハンドラと、積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第2の搬送ハンドラと、」「を有」するとの発明特定事項を含むものである。
また、本件発明3は、「積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、前記シートの周辺の上面の一部を露出した状態で前記シートを保持する第1の搬送ハンドラと、積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、前記シートの周辺の上面の一部を露出した状態で前記シートを保持する第2の搬送ハンドラと、」「を有」するとの発明特定事項を含むものである。
そして、本件発明1?3、9、10の「積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能」との発明特定事項において、「前記待機ポジション」とは、その直前に記載された「待機ポジション」を意味することは明らかである。
また、本件発明1?3、9、10の「積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能」との発明特定事項において、「前記待機ポジション」とは、その直前に記載された「待機ポジション」を意味することは明らかである。
したがって、本件発明1?3、9、10及びそれらを引用する本件発明5、6、8は明確である。

7 むすび
以上のとおり、本件の請求項1?3、5、6、8?10に係る特許は、平成31年4月24日付けの取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。また、他に本件の請求項1?3、5、6、8?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件の請求項4、7に係る特許は、本件訂正により削除されたから、本件特許の請求項4、7に係る特許に対して、申立人がした特許異議申立については、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシートが積層されて成るシート積層体を載置するステージと、
積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第1の搬送ハンドラと、
積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第2の搬送ハンドラと、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第1のクランプ装置であって、前記シート積層体の第1の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションより上方の第1の上方ポジションとの間を移動可能である第1のクランプ装置と、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションとの間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有し、
前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、
前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わり、
前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラと、前記第1の押圧ポジションに位置する第1のクランプ装置の少なくとも前記シート積層体を押圧する部分とは、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重ならず、
前記第1の搬送ハンドラに搬送される前記シートの前記切り欠き部で露出した部分と、前記第1のクランプ装置の前記押圧する部分とが前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重なり、
前記第2の搬送ハンドラに搬送される前記シートの前記切り欠き部で露出した部分と、前記第2のクランプ装置の前記押圧する部分とが、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重なる
シート積層装置。
【請求項2】
複数のシートが積層されて成るシート積層体を載置するステージと、
積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第1の搬送ハンドラと、
積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第2の搬送ハンドラと、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第1のクランプ装置であって、前記シート積層体の第1の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションより上方の第1の上方ポジションとの間を移動可能である第1のクランプ装置と、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションとの間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有し、
前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、
前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わり、
前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラと、前記第1の押圧ポジションに位置する第1のクランプ装置の少なくとも前記シート積層体を押圧する部分とは、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重ならず、
前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する方向を移動方向と定義したときに、前記第1の搬送ハンドラの前記移動方向の前方方向に位置する少なくとも一つの角に切り欠き部が設けられている
シート積層装置。
【請求項3】
複数のシートが積層されて成るシート積層体を載置するステージと、
積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、前記シートの周辺の上面の一部を露出した状態で前記シートを保持する第1の搬送ハンドラと、
積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、前記シートの周辺の上面の一部を露出した状態で前記シートを保持する第2の搬送ハンドラと、
第1の押圧面を備え、前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第1のクランプ装置であって、前記シート積層体の第1の辺の一部を前記第1の押圧面により前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接し、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラに保持された前記シートの露出面と前記第1の押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジションと、の間を移動可能である第1のクランプ装置と、
第2の押圧面を備え、前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記第2の押圧面により前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接し、前記待機ポジションに位置する前記第2の搬送ハンドラに保持された前記シートの前記露出面と前記第2の押圧面とが対向する位置関係となる第2の上方ポジションと、の間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有し、
前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、
前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わり、
前記第1の搬送ハンドラおよび前記第2の搬送ハンドラの少なくとも一方は、周辺部に切り欠き部を有し、前記切り欠き部で前記シートを露出した状態で前記シートを保持し、
前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する方向を移動方向と定義したときに、前記第1の搬送ハンドラの前記移動方向の前方方向に位置する少なくとも一つの角に前記切り欠き部が設けられている
シート積層装置。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記第2のクランプ装置が前記第2の押圧ポジションに位置するときに、前記第1のクランプ装置は、前記第1の押圧ポジションから前記第1の上方ポジションへ移動し、前記第1のクランプ装置が前記第1の押圧ポジションに位置するときに、前記第2のクランプ装置は前記第2の押圧ポジションから前記第2の上方ポジションへ移動する
請求項1?3のいずれか一項に記載のシート積層装置。
【請求項6】
前記第1のクランプ装置および前記第2のクランプ装置を複数有し、前記第1のクランプ装置および前記第2のクランプ装置の各々は、少なくとも1箇所で前記シート積層体を押圧する
請求項1?3、および5のいずれか一項に記載のシート積層装置。
【請求項7】(削除)
【請求項8】
前記第1の搬送ハンドラが下降した後に、前記第1のクランプ装置が下降し、前記第2の搬送ハンドラが下降した後に、前記第2のクランプ装置が下降する
請求項1?3、5、および6のいずれか一項に記載のシート積層装置。
【請求項9】
複数のシートが積層されて成るシート積層体を載置するステージと、
積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、前記シートの周辺の一部を露出した状態で前記シートを保持する第1の搬送ハンドラと、
積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下移動可能であり、前記シートの周辺の一部を露出した状態で前記シートを保持する第2の搬送ハンドラと、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第1のクランプ装置であって、前記シート積層体の第1の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションより上方の第1の上方ポジションと、の間を移動可能である第1のクランプ装置と、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションと、の間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有するシート積層装置を用いたシート積層体の製造方法であって、
前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、
前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わり、
前記第1のクランプ装置の前記第1の辺の一部を押圧する面と、前記第1の搬送ハンドラが保持する前記シートの露出面とが、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに位置するときに対向し、
前記第2のクランプ装置の前記第2の辺の一部を押圧する面と、前記第2の搬送ハンドラが保持する前記シートの露出面とが、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに位置するときに対向する
シート積層体の製造方法。
【請求項10】
複数のシートが積層されて成るシート積層体を載置するステージと、
積層されるシートを搬送する第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下に移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第1の搬送ハンドラと、
積層されるシートを搬送する第2の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能、かつ、前記ステージに対して上下移動可能であり、周辺部に切り欠き部を有する第2の搬送ハンドラと、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第1のクランプ装置であって、前記シート積層体の第1の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションより上方の第1の上方ポジションとの間を移動可能である第1のクランプ装置と、
前記ステージ上の前記シート積層体を押圧する第2のクランプ装置であって、前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションより上方の第2の上方ポジションとの間を移動可能である第2のクランプ装置と、を有するシート積層装置を用いたシート積層体の製造方法であって、
前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第2の上方ポジションに位置する前記第2のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する進路上に配置され、
前記第1の搬送ハンドラは、前記第1のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第1のクランプ装置は、前記第1の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第1の上方ポジションに移動し終わり、
前記第2の搬送ハンドラは、前記第2のクランプ装置の上昇中に、前記退避ポジションから前記待機ポジションに向けて移動し始め、
前記第2のクランプ装置は、前記第2の搬送ハンドラが前記待機ポジションに移動し終わる前に、前記第2の上方ポジションに移動し終わり、
前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラと、前記第1の押圧ポジションに位置する第1のクランプ装置の少なくとも前記シート積層体を押圧する部分とは、前記ステージの前記シート積層体が積載される面に対する平面視で重ならない
シート積層体の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-10-18 
出願番号 特願2017-6042(P2017-6042)
審決分類 P 1 651・ 16- YAA (H01M)
P 1 651・ 537- YAA (H01M)
P 1 651・ 113- YAA (H01M)
P 1 651・ 121- YAA (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 冨士 美香  
特許庁審判長 中澤 登
特許庁審判官 長谷山 健
土屋 知久
登録日 2018-06-22 
登録番号 特許第6354869号(P6354869)
権利者 日本電気株式会社
発明の名称 シート積層装置およびシート積層方法  
代理人 下坂 直樹  
代理人 机 昌彦  
代理人 机 昌彦  
代理人 下坂 直樹  

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