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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61J
審判 全部申し立て 特29条の2  A61J
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61J
管理番号 1357676
異議申立番号 異議2019-700290  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-16 
確定日 2019-11-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6406785号発明「散薬分包機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6406785号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-5]、6について訂正することを認める。 特許第6406785号の請求項1、5、6に係る特許を維持する。 特許第6406785号の請求項2?4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6406785号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成30年7月3日の出願であって、平成30年9月28日にその特許権の設定登録がされ、平成30年10月17日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その請求項1?6に係る特許に対し、平成31年4月16日に特許異議申立人 井上伊幸(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和1年6月12日付けで取消理由が通知され、令和1年8月6日に特許権者である株式会社トーショーより意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」という。)がなされ、本件訂正請求に関して期間を指定し、特許異議申立人に意見を求めたが、特許異議申立人から何らの応答がなかったものである。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に
「散薬容器移送装置とを有することを特徴とする散薬分包機。」
と記載されているのを、
「散薬容器移送装置とを有し、
更に、前記散薬収容容器と前記散薬一時保管容器との、前記散薬容器棚に載置される部分の形状が同一であり、
更に、前記散薬容器棚に前記散薬収容容器及び/または前記散薬一時保管容器が載置された状態が、機械前面に略平面状に配置され、かつ、前記散薬容器棚に載置された前記散薬収容容器及び/または前記散薬一時保管容器のうち、処置を必要とするものを目視及び脱着の可能な場所に配置し、
更に、前記散薬放出部において計量ミスのあることが判明した前記散薬一時保管容器を前記散薬容器移送装置により、前記散薬容器棚に移送することを特徴とする散薬分包機。」
と訂正する。
また、請求項1の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項6に
「散薬容器移送装置とを有することを特徴とする散薬計量放出装置。」
と記載されているのを、
「散薬容器移送装置とを有し、
更に、前記散薬収容容器と前記散薬一時保管容器との、前記散薬容器棚に載置される部分の形状が同一であり、
更に、前記散薬容器棚に前記散薬収容容器及び/または前記散薬一時保管容器が載置された状態が、機械前面に略平面状に配置され、かつ、前記散薬容器棚に載置された前記散薬収容容器及び/または前記散薬一時保管容器のうち、処置を必要とするものを目視及び脱着の可能な場所に配置し、
更に、前記散薬放出部において計量ミスのあることが判明した前記散薬一時保管容器を前記散薬容器移送装置により、前記散薬容器棚に移送することを特徴とする散薬計量放出容器。」
と訂正する。

2 訂正の目的、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1に係る発明の特定事項である、散薬収容容器と散薬一時保管容器との、散薬容器棚に載置される部分の形状に関して、「同一」と限定するものであるとともに、散薬容器棚に散薬収容容器及び/または散薬一時保管容器が載置された状態に関して、「機械前面に略平面状に配置され」るものと限定し、散薬容器棚に散薬収容容器及び/または散薬一時保管容器のうち処置を必要とするものに関し、「目視及び着脱可能な場所に配置」されると限定し、散薬放出部において計量ミスのあることが判明した散薬一時保管容器に関して、「散薬容器移送装置により、散薬容器棚に移送する」と限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項2の「前記散薬収容容器と前記散薬一時保管容器との、前記散薬容器棚に載置される部分の形状が同一である」との記載、願書に添付した特許請求の範囲の請求項3の「前記散薬容器棚に容器が載置された状態が、機械前面に略平面状に配置され、かつ、前記散薬容器棚に載置された前記散薬収容容器及び/または前記散薬一時保管容器のうち、処置を必要とするものを目視及び脱着の可能な場所に配置する」との記載及び願書に添付した特許請求の範囲の請求項4の「前記散薬放出部において計量ミスのあることが判明した前記散薬一時保管容器を前記散薬容器移送装置により、前記散薬容器棚に移送する」との記載に基くものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
請求項1の記載を引用する請求項5についても同様である。
(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る訂正は、請求項2を削除するという訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものであって新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3に係る訂正は、請求項3を削除するという訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものであって新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4に係る訂正は、請求項4を削除するという訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものであって新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項6に係る発明の特定事項である、散薬収容容器と散薬一時保管容器との、散薬容器棚に載置される部分の形状に関して、「同一」と限定するとともに、散薬容器棚に散薬収容容器及び/または散薬一時保管容器が載置された状態に関して、「機械前面に略平面状に配置され」ると限定し、散薬容器棚に載置された散薬収容容器及び/または散薬一時保管容器に関し、処置を必要とするものを「目視及び着脱可能な場所に配置」されると限定し、散薬一時保管容器に関して、散薬放出部において計量ミスのあることが判明した散薬一時保管容器を、「散薬容器移送装置により、散薬容器棚に移送する」と限定するものである。
したがって、訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
また、訂正事項5に係る訂正は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項2の「前記散薬収容容器と前記散薬一時保管容器との、前記散薬容器棚に載置される部分の形状が同一である」との記載、願書に添付した特許請求の範囲の請求項3の「前記散薬容器棚に容器が載置された状態が、機械前面に略平面状に配置され、かつ、前記散薬容器棚に載置された前記散薬収容容器及び/または前記散薬一時保管容器のうち、処置を必要とするものを目視及び脱着の可能な場所に配置する」との記載及び願書に添付した特許請求の範囲の請求項4の「前記散薬放出部において計量ミスのあることが判明した前記散薬一時保管容器を前記散薬容器移送装置により、前記散薬容器棚に移送する」との記載に基くものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6)一群の請求項
訂正前の請求項1?5について、請求項2?5はそれぞれ請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
よって、訂正事項1?4は、一群の請求項1?5について請求されたものである。

3 小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項の規定、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項[1?5]、6について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1、5、6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明5」、「本件発明6」という。これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は、令和1年8月6日提出の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲1、5、6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
-散薬を収容し、それを排出口から放出できる散薬収容容器と、
-前記散薬収容容器を載置し、そこから散薬を放出できる第1の散薬放出部と、
-前記第1の散薬放出部から放出された散薬を一時保管できる散薬一時保管容器と、
-前記散薬一時保管容器を載置し、前記散薬一時保管容器へ放出された散薬の重量を計測できる散薬計量部と、
-計量済みの散薬の入った前記散薬一時保管容器を載置し、その排出口から散薬を放出できる第2の散薬放出部と、
-前記第2の散薬放出部から放出された散薬を包装する散薬包装装置と、
-前記散薬収容容器と前記散薬一時保管容器との両方を載置可能な散薬容器棚と、
-前記散薬容器棚、前記第1の散薬放出部、前記第2の散薬放出部、及び前記散薬計量部の相互間で、前記散薬収容容器または前記散薬一時保管容器を移送可能な散薬容器移送装置とを有し、
更に、前記散薬収容容器と前記散薬一時保管容器との、前記散薬容器棚に載置される部分の形状が同一であり、
更に、前記散薬容器棚に前記散薬収容容器及び/または前記散薬一時保管容器が載置された状態が、機械前面に略平面状に配置され、かつ、前記散薬容器棚に載置された前記散薬収容容器及び/または前記散薬一時保管容器のうち、処置を必要とするものを目視及び脱着の可能な場所に配置し、
更に、前記散薬放出部において計量ミスのあることが判明した前記散薬一時保管容器を前記散薬容器移送装置により、前記散薬容器棚に移送することを特徴とする散薬分包機。
【請求項5】
-前記散薬収容容器に付された収容された散薬に関連付けた自動読取可能な符号と、
-前記散薬一時保管容器に付された保管された散薬に関連付けた自動読取可能な符号と、
-前記散薬容器棚、前記散薬計量部、前記第1の散薬放出部、前記第2の散薬放出部のいずれか一つ以上に設けた前記符号を読み取る符号読取部と
を有し、読み取った符号の内容に対応して、前記散薬収容容器または前記散薬一時保管容器の移送先を定めることを特徴とする請求項1に記載の散薬分包機。
【請求項6】
-収容された散薬を収容し、それを排出口から放出できる散薬収容容器を載置し、そこから散薬を放出できる第1の散薬放出部と、
-前記第1の散薬放出部から放出された散薬を一時保管できる散薬一時保管容器を保持し、前記散薬一時保管容器へ放出された散薬の重量を計測できる散薬計量部と、
-計量済みの散薬の入った前記散薬一時保管容器を載置し、その排出口から散薬を放出できる第2の散薬放出部と、
-前記散薬収容容器と前記散薬一時保管容器との両方を載置可能な散薬容器棚と、
-前記散薬容器棚、前記第1の散薬放出部、前記第2の散薬放出部、及び前記散薬計量部の相互間で、前記散薬収容容器または前記散薬一時保管容器を移送可能な散薬容器移送装置とを有し、
更に、前記散薬収容容器と前記散薬一時保管容器との、前記散薬容器棚に載置される部分の形状が同一であり、
更に、前記散薬容器棚に前記散薬収容容器及び/または前記散薬一時保管容器が載置された状態が、機械前面に略平面状に配置され、かつ、前記散薬容器棚に載置された前記散薬収容容器及び/または前記散薬一時保管容器のうち、処置を必要とするものを目視及び脱着の可能な場所に配置し、
更に、前記散薬放出部において計量ミスのあることが判明した前記散薬一時保管容器を前記散薬容器移送装置により、前記散薬容器棚に移送することを特徴とする散薬計量放出装置。」

2 取消理由通知に記載した取消理由の概要
本件発明に係る特許に対して、上記令和1年6月12日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、取り消すべきものである、というものである。

3 取消理由についての検討
(1)取消理由の内容
本件発明に係る発明が解決しようとする課題は、段落【0013】の記載から、「機械前面から、処理が必要な散薬収容容器を目視し脱着することができる散薬分包機を提供すること」(以下「課題1」という。)、及び、「計量不良発生時に自動でロスの発生がなく散薬の回収ができる散薬分包機を提供すること」(以下「課題2」という。)であると認められる。
本件特許明細書等には、散薬収容容器と散薬一時保管容器との、散薬容器棚に載置される部分の形状が同一であること(段落【0018】参照。)を前提として、課題1の解決手段として、散薬容器棚に容器が載置された状態が、機械前面に若干の円弧状、多角形状に前に凸あるいは後ろに凸に湾曲した形状を含む略平面状に配置されること(段落【0020】、【0137】参照。)及び散薬容器棚に載置された散薬収容容器、散薬一時保管容器のうち、処置を必要とするものを目視及び脱着の可能な場所に配置すること(段落【0020】、【0021】参照。)が必要であり、課題2の解決手段として、散薬放出部において計量ミスのあることが判明した散薬一時保管容器を散薬容器移送装置により、散薬容器棚に移送すること(段落【0022】、【0023】参照。)が必要であるものの、本件発明には当該課題1及び課題2の解決手段が反映されていないことから、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない、というものである。
(2)判断
本件訂正により、本件発明は上述の課題解決手段である、「散薬収容容器と散薬一時保管容器との、散薬容器棚に載置される部分の形状が同一であり、散薬容器棚に散薬収容容器及び/又は散薬一時保管容器が載置された状態が、機械前面に若干の円弧状、多角形状に前に凸あるいは後ろに凸に湾曲した形状を含む略平面状に配置され、散薬容器棚に載置された散薬収容容器、散薬一時保管容器のうち、処置を必要とするものを目視及び脱着の可能な場所に配置し、散薬放出部において計量ミスのあることが判明した散薬一時保管容器を散薬容器移送装置により、散薬容器棚に移送する」点について特定する訂正がなされ、上記取消理由は解消されたため、本件発明に係る特許請求の範囲の請求項の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていないとはいえない。

4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、次の理由1?4である。

(1)理由1 特許法第29条第1項第3号について(同法第113条第2号)
本件発明1、5、6は、甲第1号証に開示されたものであって、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、本件特許は取り消すべきものである。

(2)理由2 特許法第29条第2項について(同法第113条第2号)
ア 本件発明1、5、6は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。また、本件発明5は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件特許は取り消すべきものである。
イ 本件発明1、6は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証?甲第9号証に記載された周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。また、本件発明5は、甲第2号証及び甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証?甲第9号証に記載された周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件特許は取り消すべきものである。

(3)理由3 特許法第29条の2について(同法第113条第2号)
本件発明1、6は、本件発明に係る特許出願の日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2018-5407号(以下「先願」という。甲第10号証参照。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件発明1、6に係る発明をした者が先願に係る上記の発明をした者と同一でなく、また、本件発明の出願の時において、本件発明の出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、本件特許は取り消すべきものである。

(4)理由4 特許法第36条第6項第2号について(同法第113条第4号)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。

甲第1号証:特開平11-226086号公報
甲第2号証:国際公開第2015/141660号
甲第3号証:特開平5-8842号公報
甲第4号証:特開昭64-59015号公報
甲第5号証:特開平5-285198号公報
甲第6号証:特開平5-285202号公報
甲第7号証:特開平7-80044号公報
甲第8号証:特開平11-114024号公報
甲第9号証:特開平3-177210号公報
甲第10号証:特開2018-114281号公報

5 申立理由についての当審の判断
(1)理由1、2について
ア 甲第1号証及び甲第1号証に記載された発明について
(ア)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証(特開平11-226086号公報)には、図面とともに次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、散薬供給装置に関し、詳しくは、ストックしている多くの散薬から適宜の散薬を散薬分包処理等へ適量供給する散薬供給装置に関する。」
「【0007】この発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、各種の散薬を適量だけ取り出して供給するのを自動で行う散薬供給装置を実現することを目的とする。」
「【0009】本発明の散薬供給装置は(、出願当初の請求項1に記載の如く)、多数の散薬カセットと、これらの散薬カセットを移動させるカセット移動機構と、前記散薬カセットから取り出した散薬を受ける散薬容器を移送する搬送機構とを備えた散薬供給装置であって、前記搬送機構はその搬送経路が一巡するものであることを特徴とする。
【0010】このような構成の散薬供給装置にあっては、各種の散薬は、多数の散薬カセットに分けて収容され、処方情報等に応じて適宜そこから取り出されるため、計量装置や分割装置さらには分包機などの後続装置への散薬供給が自動で行われる。しかも、散薬カセットから散薬容器に対する散薬取り出し位置までは散薬カセットに収容されたままで運ばれるので、この間は未だ閉じ込められている。そして、該当散薬カセットが散薬の取出位置まで移動してから必要な散薬が散薬容器へ取り出され、この散薬容器が移動することで、各種の散薬が集められるとともに後続装置への散薬供給等も行われる。また、散薬を運んだ散薬容器は、搬送機構によって次々に搬送され、後続装置等への散薬供給位置まで移送された後、搬送経路を一巡して戻されることとなる。」
「【0020】この散薬供給装置は、図中、左から右に、カップ供給ユニットA、カセット収納ユニットB(収納庫)、カセット収納ユニットC(収納庫)、カップ昇降ユニットD、そしてカップ還流ユニットEが順に配置連結されたものであり、さらにカップ還流ユニットEの下方には散薬分包ユニットFも配置されている(図2参照)。
【0021】カップ供給ユニットAには、調剤のためにカセット30から取り出した散薬を入れて搬送したり計量したりするためのカップ1(散薬容器)を供給するカップ供給機構14が設けられている(図2参照)。また、その上方には、カップ1を収容する際にその上下を反転させるカップ収納機構114も設けられている。そして、カップ供給機構14とカップ収納機構114との間に、供給を待つ多数のカップ1が逆さに積み重なって保持されるようになっている。
【0022】カセット収納ユニットBには、下方に横たわる搬送機構10(散薬容器供給用搬送装置)と、縦に長いループ状のチェイン等からなるカセット循環機構20(カセット移動機構)と、カセット循環機構20に対しほぼ等間隔で取着された複数個のカセット30(散薬カセット)と、電子秤50(計量装置)とが設けられている。さらに、駆動部40(散薬取り出しの駆動機構)や、リーダライタ52(データアクセス装置)、リーダライタ54(データ読取装置)、リーダ56(データ読取装置)、リーダ58(データ読取装置)なども設けられている(図2参照)。
【0023】カセット収納ユニットCは、カセット収納ユニットBと同じ構造のユニットである。これらは、散薬の種類そして散薬カセットの必要数に対応して、必要なユニット数が左右に連結されるようになっている(図2参照)。これにより、多数の散薬カセット30が複数の収納庫B,Cに分離して収納されるようになっている。また、これらのカセット収納ユニットB及びカセット収納ユニットCには、上方に横たわる搬送機構110(散薬容器還流用搬送装置)も設けられ、これには電子秤150(計量装置)やリーダライタ152(データアクセス装置)なども付設されている(図1,図2参照)。
【0024】カップ昇降ユニットDには、供給されたカップ1を乗せて搬送機構10のところから上側で上下移動するカップ昇降機構15と、還流されるカップ1を乗せて搬送機構110のところから下側で上下移動するカップ昇降機構115と、清掃装置130とが設けられている(図1,図2参照)。カップ還流ユニットEは、その下部すなわち装置全体としては中間の高さに当たるところに、供給されたカップ1が折り返して還流されるように搬送機構10及び搬送機構110が並行に設けられている(図1,図2参照)。なお、カップ還流ユニットE上部の空いているところには、電源部2やコントローラ80が格納されている。
【0025】散薬分包ユニットFには、各カセット30から計量等して取り出された散薬を均等に分割して包装するために、フィーダ60(振動フィーダ)と、散薬分包機70(分割装置)とが、設けられている(図1,図2参照)。散薬分包機70は、その本体部71内に、断面が円弧状に窪んだ環状凹溝72を具えた回転体と、散薬の配分時に回転体を定速回転させるとともに散薬の分割時に分割数に応じた角度ずつ回転体を回動させる図示しない駆動装置とを具えている。また、散薬分包機70は、回転体の内側から環状凹溝上へ突き出して設けられた切出装置73も具えており、この切出装置73は、環状凹溝72の円弧状内側面に接触する円形の仕切板の側面に、所定幅の切出板が形成されたものであり、仕切板が環状凹溝72の円弧状内側面に治って1回転すると、切出板がその幅相当分に集められた散薬を環状凹溝72から切り出して包装装置のホッパ74に導入するようになっている(図2参照)。」
「【0027】カップ1は、散薬の計量や搬送の際に散薬が舞い散らないように深めに形成された容器であり、その底部には、収容した散薬についての薬剤情報や計量値などを記憶させるためのデータキャリア3(データ記憶体)が取り付けられている(図4参照)。データキャリア3は、後述の非接触結合素子53,59,153に近接すると磁気的結合等に基づいてエネルギー供給を伴ったリーダライタ52や,リーダ58,リーダライタ152によるデータアクセスを受ける。このように、カップ1(計量容器を兼ねた散薬容器)は、データ記憶体の付いたものとなっている。」
「【0029】搬送機構110は、搬送機構10と同様のものであるが、カップ1を逆方向へ搬送して戻すために、ベルト111の送り方向がベルト11とは反対になっている。また、ベルト111の長さ等も搬送距離等に適合するよう適宜の長さに設定されている。そして、これらの搬送機構は、以下の昇降機構等が加って、一巡する。具体的には、カップ供給機構14(ユニットA)と、搬送機構10(ユニットB,C)と、カップ昇降機構15(ユニットD)と、搬送機構10(ユニットE)と、搬送機構110(ユニットE)と、カップ昇降機構115(ユニットD)と、搬送機構110(ユニットC,B)と、カップ収納機構114(ユニットA)とにより、カップ1の搬送経路が一巡するようになっている(図1参照)。」
「【0032】カセット30は、散薬を取り出し可能にストックするために、散薬ストック部33と、その下方の排出部とから構成されている(図4参照)。散薬ストック部33は、縦向きの円筒形に構成され、その底部に攪拌羽根32が配置されている。攪拌羽根32は、円錐形部分を中心としてそれから2枚が互いに180゜隔てて半径方向外方へ延び、しかも、外方へ行くにしたがって回転方向に対して後退する方向に湾曲して形成されている。カセット30の排出部には、散薬ストック部33の下方正面においてその半径方向に沿って横向きに小径円筒の排出路35が形成されており、この排出路35と散薬ストック部33とは、散薬ストック部33の底面外周付近に形成された連通路34によって互いに通じている。」
「【0035】さらに、カセット30は、それぞれ、その底部等に、ストックしている散薬についての薬剤情報やストック量などを記憶させるためのデータキャリア36(データ記憶体)が取り付けられている(図4参照)。データキャリア36は、後述の非接触結合素子55,57に近接すると磁気的結合等に基づいてエネルギー供給を伴ったリーダライタ54やリーダ56によるデータアクセスを受ける(図2参照)。このように、カセット30(散薬カセット)は、個々に、データ記憶体の付いたものとなっている。
【0036】カセット循環機構20は、収納庫B,Cのそれぞれに設けられており、いずれにも、複数のカセット30のうち該当収納庫内のものが取着されている(図2参照)。各カセット循環機構20は、該当収納庫内において、上下あるいは左右の駆動輪22及び従動輪23に亘ってチェーン21等の無端条帯が張設されたものであり、電動モータ24によって駆動輪22が回転駆動されると、その回転方向に応じてチェーン21が正逆双方向に循環する(図3参照)。また、チェーン21にはカセット30を着脱可能に支持する支持体が所定のピッチで配置されており、装着されたカセット30もチェーン21の循環に伴って循環させられる。その循環ループの最下方で搬送機構10に最接近するところは、散薬取り出し位置とされる。これにより、カセット循環機構20(カセット移動機構)は、散薬カセットのうち該当収納庫内のものを順に散薬取り出し位置へ移動させるものとなっている。」
「【0038】電子秤50は、散薬取り出し位置に来たカセット30の少し下のところで、搬送機構10の上下のベルト11の間に設置されている(図3参照)。電子秤50には、単独で或いは本体と共に昇降しうる支承片51が設けられていて、上昇したときだけ、ベルト11でカセット30の排出路35の出口直下へ搬送されて来たカップ1を、ベルト11の切れ目から支承して、その重さを秤量する(図4参照)。そして、カセット30からそこのカップ1へ散薬が取り出されると、その散薬の分だけ秤量値も増加する。これにより、電子秤50(計量装置)は、散薬カセット30から取り出した散薬を計量するものとなっている。」
「【0041】さらに、図示しない前扉にはカセット30の出し入れ可能な開口窓が形成されており、空のカセット30をカセット循環機構20から取り外したり、散薬補充後のカセット30をカセット循環機構20へ装着させたりするのは、通常、その開口窓を介して行われる。そして、この開口窓の奥の方には、リーダ56が設置され、その非接触結合素子57が非接触でそこのカセット30のデータキャリア36と交信可能に結合しうるところに設けられる(図2参照)。これにより、リーダ56(データ読取装置)は、カセット移動機構に対して散薬カセットを着脱させるところに配置されたものとなっている。
【0042】フィーダ60は、カセット30からカップ1へ取り出されカップ1と共に搬送機構10等によって搬送されて来た散薬を散薬分包機70(分割装置)へ送り込むため、カップ還流ユニットEにおける搬送機構10の途切れたところであって散薬分包機70の上方に当たるところに設けられる(図2参照)。そして、フィーダ60の近傍には図示しないアーム等も設けられていて、カップ還流ユニットEの搬送機構10がカップ1をフィーダ60のところまで搬送して来たときに、そのアーム等によって、カップ1のデータキャリア3とリーダ58の非接触結合素子59との結合可能なところへカップ1が運ばれ、さらに、カップ1内の散薬がフィーダ60のホッパ61内へ移し替えられるようになっている(図5参照)。
【0043】このフィーダ60は、カップ1から移された散薬を受けるホッパ61と、ホッパ61から散薬を散薬分包機70の環状凹溝72へ送り込むための案内部62と、その送り込みを定量で均一に行わせるため案内部62等へ与える振動を発生する振動体63とからなっており、振動体63は発振回路64から受けた発振信号と同じ周波数で振動する。この発振回路64は、コントローラ80からの制御信号に従って発振周波数を変えるものである。これにより、フィーダ60(振動フィーダ)は、振動周波数の可変なものとなっている。」
「【0056】そうすると、カセット収納ユニットB,Cのリーダライタ54によって第3,第1のカセット30のデータキャリア36から薬剤情報が読み出される。そして、散薬取出ルーチン85によってその薬剤情報と散薬データ91や処方データ92とのつき合わせチェックが行われ、不一致のときにはエラー処理に移行する。こうして、散薬取り出し位置のカセット30が適切なものか否かの確認がなされる。例えば、コントローラ80のダウン中など管理不能な状態でカセット30の不適切な入れ替え等が行われていたような場合、エラーとなる。」
「【0058】このとき同時に、計量ルーチン86の制御に従い、該当する電子秤50によって、第1,第3のカップ1の計量も行われる。そして、散薬の取り出し量が所要量に達すると、計量ルーチン86及び散薬取出ルーチン85の協動によって散薬の取り出しが止められる。さらに、計量ルーチン86の処理によって、その取り出した散薬の量が各カップ1のデータキャリア3に書き込まれる。散薬データ91等に保持されている他の関連情報、例えば、その散薬をフィーダ60で送給するのに適したフィーダ60の振動周波数の範囲などの情報も、併せて書き込まれる。」
「【0061】また、この移し替えに際し、第1,第2のカップ1のそれぞれのデータキャリア3から収容散薬についての薬剤情報がリーダ58によって読み出され、フィーダ制御ルーチン88によって、容器データ93等と一致しているか否か等の確認処理が行われる。そして、不一致のときにはエラー処理に移行する。こうして、散薬を運んできたカップ1が適切なものか否かの確認がなされる。例えば、カップ1の有無を検出するセンサの無いところでカップ1がベルト11から落下して適切なカップ1がフィーダ60に届かなかったような場合、エラーとして検知される。」
「図1


「図2


「図3



段落【0027】の「カップ1は、散薬の計量や搬送の際に散薬が舞い散らないように深めに形成された容器であり」との記載、段落【0038】の「そして、カセット30からそこのカップ1へ散薬が取り出されると、その散薬の分だけ秤量値も増加する。」との記載及び段落【0042】の「カップ還流ユニットEの搬送機構10がカップ1をフィーダ60のところまで搬送して来たときに、そのアーム等によって、カップ1のデータキャリア3とリーダ58の非接触結合素子59との結合可能なところへカップ1が運ばれ、さらに、カップ1内の散薬がフィーダ60のホッパ61内へ移し替えられるようになっている(図5参照)。」との記載から、カップ1は散薬を一時保管できるもの、といえる。
段落【0041】の「さらに、図示しない前扉にはカセット30の出し入れ可能な開口窓が形成されており、空のカセット30をカセット循環機構20から取り外したり、散薬補充後のカセット30をカセット循環機構20へ装着させたりするのは、通常、その開口窓を介して行われる。」との記載から、カセット30は開口窓により目視可能である、といえる。

(イ)甲第1号証に記載された発明
上記(ア)より、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。」)及び技術(以下「甲1技術」という。)が記載されていると認められる。
【甲1発明】
「散薬を収容し、それを排出部から放出できるカセット30と、
前記カセット30から散薬を放出できる散薬取り出し位置と、
前記散薬取り出し位置から放出された散薬を一時保管できるカップ1と、
前記カップ1を載置し、前記カップ1へ放出された散薬の重さを秤量できる電子秤50と、
散薬の入ったカップ1から散薬を移し替えられ、案内部62から散薬を放出できるフィーダ60と、
フィーダ60から放出された散薬を包装する散薬包装機70と、
カセット30が取着されたカセット循環機構20とカップ1が搬送される搬送機構10を備えたカセット収納ユニットA、B、Cと、
カセット収納ユニットA、B、C、前記散薬取り出し位置、前記フィーダ60、及び前記電子秤50の相互間で、前記カップ1を移送可能な搬送機構10とを有し、
更に、前記カセット収納ユニットA、B、Cに前記カセット30及び/または前記カップ1が収容された状態が、機械前面に略平面状に配置され、かつ、前記カセット収納ユニットA、B、Cに収容された前記カセット30のうち、補充を必要とするものを目視及び取り外したり装着の可能な開口窓を備え、
更に、前記散薬取り出し位置において薬剤情報等に不一致が判明した場合、エラー処理に移行する散薬供給装置。」
【甲1技術】
「散薬を収容し、それを排出部から放出できるカセット30と、前記カセット30から散薬を放出できる散薬取り出し位置とを備え、前記散薬取り出し位置において薬剤情報等に不一致が判明した場合、エラー処理に移行する散薬供給装置」

イ 甲第2号証及び甲第2号証に記載された発明について
(ア)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証(国際公開第2015/141660号)には、図面とともに次の記載がある。
「[0001]本発明は、散薬を一服用分づつ払い出す薬剤払出し装置に関するものである。」
「[0017]そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、秤量の際の人的ミスを減少させる機能を備え、さらに投入ホッパとトラフを清掃する必要がない薬剤払出し装置を提供することを目的とするものである。」
「[0029]以下さらに本発明の実施形態の薬剤払出し装置1について説明するが、理解を容易にするため、先に本発明の概要と大まかな動作について説明し、その後に各部材の具体的構成を詳細に説明する。
本実施形態の薬剤払出し装置1は、図1の様に本体装置2と、薬剤秤量装置(薬剤監査システム)3及び手動形薬剤容器5aによって構成されている。
本体装置2は、前記した特許文献1に開示された散薬分包装置200と同様に、散薬分配装置18と、薬剤包装装置6とを有している(図2,13,14参照)。
散薬分配装置18は分配皿7a,7bと、掻出装置8とを備え、供給された散薬を一服用分づつに分割することができる。また薬剤包装装置6によって分割された散薬を一服用分づつ包装することができる。また薬剤包装装置6内には印刷手段13が内蔵されており、包装袋に所定の印刷を行うことができる。」
「[0032]薬剤秤量装置3は、前記した特許文献2に開示されたものと略同様のものであり、図16の様に天秤台(容器載置部)30と、RFIDリーダライター134と、バーコードリーダ32及びタッチパネル133を有している。
バーコードリーダ32は、調剤情報読み込み手段及び収容薬剤確認手段として機能するものであり、本発明の実施形態においても、処方箋に記載された調剤情報が、バーコードリーダ32を使用して薬剤秤量装置3の制御部131に読み込まれる。
そして薬剤師は、天秤台(容器載置部)30に手動形薬剤容器5aを載せ、手動形薬剤容器5aの薬剤投入部21から手動形薬剤容器5a内に直接薬剤を導入して薬剤を秤量する。
その際に、バーコードリーダ32によって薬瓶等(図示せず)に添付されたバーコードから薬瓶内に収容された薬剤の種類を読み取り、処方された薬剤に間違いないことを確認することができる。
処方箋の情報や、薬剤師の氏名、秤量された薬剤の種類や量が、薬剤秤量装置のRFIDリーダライター134によって手動形薬剤容器5aのRFIDタグ22に書き込まれる。即ちRFIDリーダライター134は、情報書き込み手段として機能する。
[0033]そして手動又はロボットを使用して手動形薬剤容器5aを移動し、手動形薬剤容器5aを本体装置2の容器振動台11に載置する。
ここで容器振動台11の近傍には、本体側情報読み取り手段たるRFIDリーダ16が設けられており、当該RFIDリーダ16によって調剤情報が本体装置2に読み込まれる。そして読み込まれた調剤情報が本体装置2に設けられたタッチパネル106に表示される。従って薬剤師は、タッチパネル106に表示された調剤情報を確認することができる。」
「[0035]タッチパネル106に表示するべき注意事項としては、処方箋に記載された薬剤の種類や量と、手動形薬剤容器5aに内蔵された薬剤の種類や量が相違する様な場合がある。例えば複数種類以上の薬剤を同一の包装内に合包させる場合であって、処方箋に記載された薬剤は3種類であるが、手動形薬剤容器5aに内蔵されているのは2種類だけであり、本体装置2における作業として、残る薬剤を分配皿7に投入する必要がある様な場合がある。
また同じく複数種類以上の薬剤を同一の包装内に合包させる場合であって、複数の手動形薬剤容器5aから薬剤を分配皿7に投入する様な場合があり、この様な場合には、それに沿った動作を行うように薬剤師がタッチパネル106を操作して本体装置2を動作させる。
また、本件発明とは直接関係ないが、一緒に配分される収容形薬剤容器4の収容薬剤量が、処方量より少ない場合に、タッチパネル106の画面に薬品充填作業の支援画面を表示させて事前に充填作業を行ってもよい。」
「[0038]そして薬剤師の処方監査や、所定の追加指示が終了し、薬剤師がタッチパネル106を操作して確認の信号を入力すると、以下の分包動作が開始される。なお確認の信号は、タッチパネル106の所定の表示部分をタッチすることとなるが、確認の表示は任意であり、例えば「確認」「作業開始」等の表示が考えられる。要するに、薬剤師が自己の意思で分包を開始するきっかけを作る。
分包動作では、分配皿7を回転し、同時に容器振動台11を振動させる。その結果、容器振動台11上の手動形薬剤容器5aが振動し、内部の散薬がゆっくりと薬剤排出部20側に移動し、遂には薬剤排出部20から分配皿7に落下する。即ち本実施形態では、従来の様なトラフを経ることなく、手動形薬剤容器5aから直接、分配皿7に散薬を落下する。
そして散薬が全て落下し終えると分配皿7の回転を停止する。その後は、RFIDリーダ16によって読み込まれた調剤情報に従って、分配皿7の散薬を所定の個数に分割し、掻出装置8で薬剤を掻き出して薬剤包装装置6に投入し、個別に包装するまた包装袋には所定の文字が印字される。
一連の作業が終了すると、手動形薬剤容器5aを容器振動台11から取り外す。
本実施形態の薬剤払出し装置1は、手動形薬剤容器5aを振動させて手動形薬剤容器5aから直接、散薬を分配皿7に投入するから、従来の様なトラフ210を持たず、トラフ210を清掃する必要がない。」
「[0044]ドラム部材105は、図示しないモータによって回転し、所望の収容形薬剤容器4が、ロボット110に近接され、ロボット110によって着脱される。」
「[0061]次に手動形薬剤容器5aについて説明する。手動形薬剤容器5aは、図4,5,6に示すように薬剤投入部21aを有するタイプの薬剤容器である。
手動形薬剤容器5aは、容器本体25と、固定用鉄板部26と、排出側蓋部材120と、投入側蓋部材121、RFIDタグ(情報記録部材)22及びバーコード24とによって構成されている。
容器本体25は樹脂で作られた縦長の容器であり、長手方向の一端が開口していて薬剤排出部20aを構成している。また容器本体25の側面にも大きな開口があり、当該開口が薬剤投入部21aとして機能する。
容器本体25に設けられた薬剤排出部20aは、容器振動台11に載置された姿勢を基準として、水平方向に開口している。また薬剤投入部21aは、容器振動台11に載置された姿勢を基準として、上方に向かって開口している。薬剤秤量装置3に載置された姿勢を基準としても同様であり、薬剤排出部20aは、水平方向に開口し、薬剤投入部21bは上方に向かって開口している。」
「[0065]次に収容形薬剤容器4について説明する。収容形薬剤容器4は、本発明の付属的部品であり、本発明の作用効果には直接的な影響を与えるものではない。収容形薬剤容器4は、図8に示すように収容形薬剤容器4は、薬剤投入部を持たないタイプの薬剤容器である。収容形薬剤容器4は、容器本体25に運搬用鉄板部157が設けられている。本実施形態では、運搬用鉄板部157は、二つの小運搬用鉄板部157a,157bに分かれている。運搬用鉄板部157は、フェライト等の磁性体成分を含む鋼板で作られている。
収容形薬剤容器4他の構成は、手動形薬剤容器5aと同一であるから説明を省略する。
[0066]本実施形態の本体装置2では、薬剤容器(収容形薬剤容器4又は手動形薬剤容器5a)と、容器振動台11によって一組の薬剤フィーダ10aが構成される。
即ち薬剤容器(収容形薬剤容器4又は手動形薬剤容器5a)と、容器振動台11とは別々のものであり、散薬を分包する際に、両者が結合されて薬剤フィーダ10aを構成する。
本実施形態で採用する本体装置2は、収容形薬剤容器4及び手動形薬剤容器5aを使い分けることができるものである。収容形薬剤容器4には、予め、特定の薬剤が充填され、薬剤棚部領域100の容器保管装置103に収容される。
手動形薬剤容器5aには、特定の患者に対する処方箋に則った薬剤が、薬剤師の手によって一つずつ入れられる。
本発明は、手動形薬剤容器5aを使用する点に特徴がある。手動形薬剤容器5aは、容器保管装置103に収容されることなく、容器振動台11に設置される。
薬剤フィーダ10aは、載置台52に内蔵された電磁石12によって手動形薬剤容器5aを容器振動台11に固定し、手動形薬剤容器a5を振動させて散薬を排出させる機能を持つ。」
「[0113]以上の工程によって、「薬剤秤量作業」は終了する。これに引き続き、「薬剤分包作業」を行うこととなる。
本実施形態では、「薬剤秤量作業」が終了すると、薬剤師の手によって手動形薬剤容器5aの薬剤投入部21aに、投入側蓋部材121が装着される。
そして手動形薬剤容器5aは、薬剤師の手によって本体装置2に移動され、図1に示す薬剤棚部領域100の筐体40に設けられた扉部材111を開いて、薬剤容器仮置部112(図3)に装着される。
後は、本体装置2によって、自動的に分包作業が実施される。即ち扉部材111の内側に設けられたRFIDリーダ等の本体側情報読み取り手段(扉部)113によって、手動形薬剤容器5aのRFIDタグ22に書き込まれた調剤に関する情報が読み込まれる。 そして本体側情報読み取り手段(扉部)113によって、読み込まれた情報によって自動で、手動形薬剤容器5aの装着先が決定される。本実施形態では、二つの分配皿7a,7bを備えているから、いずれの分配皿7a,7bが使用されるかが決定される。また本実施形態では、各分配皿7a,7bの近傍に3台づつ容器振動台11が設けられているから、いずれの容器振動台11に手動形薬剤容器5aを装着するかが決定される。
[0114]そして手動形薬剤容器5aは、ロボット110によって、決定されたいずれかの容器振動台11に載置される。即ち手動形薬剤容器5aを保持したロボット110は、容器保管装置103に向かうことなく、直接、容器振動台11に向かい、手動形薬剤容器5aを容器保管装置103に設置する。
なお薬剤の色等の性状によって使用する分配皿7a,7bが選択される場合もある。 手動形薬剤容器5aが容器振動台11に載置されると、そこでも手動形薬剤容器5aのRFIDタグ22に書き込まれた調剤に関する情報が読み出される。即ち本実施形態では、容器振動台11の近傍にRFIDリーダ16が設けられており、容器振動台11側のRFIDリーダ16によっても調剤に関する情報が読み出される。
そして調剤に関する情報に従って、散薬が分割される。即ち分配皿7a,7bのいずれかが回転し、同時に容器振動台11を振動させる。その結果、容器振動台11上の手動形薬剤容器5aが振動し、内部の散薬がゆっくりと薬剤排出部20a側に移動し、遂には薬剤排出部20aから分配皿7に落下する。即ち本実施形態では、従来の様なトラフを経ることなく、手動形薬剤容器5aから直接、分配皿7に散薬を落下する。
そして散薬が全て落下し終えると分配皿7の回転を停止する。その後は、調剤情報に従って、分配皿7の散薬を所定の個数に分割し、掻出装置8で薬剤を掻き出して薬剤包装装置6に投入し、個別に包装する。また包装袋には所定の文字が印字される。」
「[0124]上記した様に、本実施形態の薬剤払出し装置1は、収容形薬剤容器4を使用して全自動分包を行う機能も備えている。
以下、全自動分包について説明する。
全自動分包は、収容形薬剤容器4を使用して実行される。前記した様に、収容形薬剤容器4には、予め、特定の薬剤が充填され、薬剤棚部領域100の容器保管装置103に収容されている。
本実施形態で採用する容器振動台11は、収容形薬剤容器4の重量を直接的または間接的に測定する重量測定手段56とを有している。また上記した本実施形態で採用する本体装置2は、容器保管装置103を備えている。そのため上記した本体装置2は、処方箋に応じて自動的に薬剤が収容された収容形薬剤容器4を選び出し、さらに薬剤の秤量を自動的に本体装置2内で実施する機能を備えている。
この機能は、収容形薬剤容器4を使用して発揮される。本実施形態の本体装置2では、予め所定の薬剤を収容形薬剤容器4に収容し、薬剤が充填された収容形薬剤容器4を容器保管装置103に収容しておく。
そして容器保管装置103のドラム部材105を回転し、所望の収容形薬剤容器4をロボット110に近づける。そしてロボット110で、収容形薬剤容器4を保持し、アーム等を動作させて当該収容形薬剤容器4を容器振動台11に設置する。
なお複数の薬剤を配合して、一つの包装中に同封する場合には、複数の収容形薬剤容器4が容器振動台11に設置される。
[0125]そして容器振動台11を振動させる。その結果、収容形薬剤容器4の散薬が、ゆっくりと移動し、収容形薬剤容器4から排出されて分配皿7a,7bに落下する。
また振動開始と前後して分配皿7a,7bを回転させる。振動開始と前後して、収容形薬剤容器4の重量が測定される。その間、収容形薬剤容器4の重量が、監視され、散薬の総落下量が所望の重量となったところで、容器振動台11の振動を停止する。
即ち重量測定手段56によって、薬剤を排出する以前の収容形薬剤容器4の重量たる原重量を測定し、収容形薬剤容器4から散薬を少量ずつ排出する際に前記重量測定手段56によって収容形薬剤容器4の重量を監視する。そして収容形薬剤容器4の現在の重量たる現重量が、原重量から目標排出量を引いた値に一致した際あるいは略一致した際に収容形薬剤容器4からの散薬の排出を停止させる。」
「図1


「図2


「図3


「図7


段落[0032]の「そして薬剤師は、天秤台(容器載置部)30に手動形薬剤容器5aを載せ、手動形薬剤容器5aの薬剤投入部21から手動形薬剤容器5a内に直接薬剤を導入して薬剤を秤量する。」との記載、段落[0033]の「そして手動又はロボットを使用して手動形薬剤容器5aを移動し、手動形薬剤容器5aを本体装置2の容器振動台11に載置する。」との記載及び段落[0038]の「分包動作では、分配皿7を回転し、同時に容器振動台11を振動させる。その結果、容器振動台11上の手動形薬剤容器5aが振動し、内部の散薬がゆっくりと薬剤排出部20側に移動し、遂には薬剤排出部20から分配皿7に落下する。・・・そして散薬が全て落下し終えると分配皿7の回転を停止する。・・・一連の作業が終了すると、手動形薬剤容器5aを容器振動台11から取り外す。」との記載から、手動形薬剤容器5aは薬剤を一時保管できるもの、といえる。

(イ)甲第2号証に記載された発明
上記(ア)より、甲第2号証には次の発明(以下「甲2発明」という。」)が記載されていると認められる。
「薬剤を収容し、それを薬剤排出部20から放出できる収容形薬剤容器4と、
前記収容形薬剤容器4を載置し、そこから薬剤を放出できる容器振動台11と、
薬剤師が薬剤投入部21から導入した薬剤を一時保管できる手動形薬剤容器5aと、
前記手動形薬剤容器5aを載置し、前記手動形薬剤容器5aへ放出された薬剤の重量を計測できる薬剤秤量装置3と、
計量済みの薬剤の入った前記手動形薬剤容器5aを載置し、その薬剤排出部20aから散薬を放出できる容器振動台11と、
前記容器振動台11から放出された薬剤を包装する薬剤包装装置6と、
前記収容形薬剤容器4を載置可能な円筒形状の容器保管装置103と、
薬剤棚部領域100に設けられた薬剤容器仮置部112から前記容器振動台11へ、前記手動形薬剤容器5aを移送可能であるとともに、容器保管装置103の収容形薬剤容器4を容器振動台11へ移送可能なロボット110とを有し、
更に、前記収容形薬剤容器4と前記手動形薬剤容器5aとの薬剤投入部以外の形状が同一である、
薬剤払出し装置。」

ウ 理由1及び理由2 アについて(甲1発明を主引用発明とした場合)
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「排出部」、「カセット30」、「散薬取り出し位置」、「カップ1」、「重さを秤量」、「電子秤50」、「案内部62」、「フィーダ60」、「散薬包装機70」、「カセット収納ユニットA、B、C」、「搬送機構10」、「処置を必要とする」は、それぞれ本件発明1の「散薬収容容器」の「排出口」、「散薬収容容器」、「第1の散薬放出部」、「散薬一時保管容器」、「重量を計測」、「散薬計量部」、「第2の散薬放出部」の「排出口」、「第2の散薬放出部」、「散薬包装装置」、「散薬容器棚」、「散薬容器移送装置」、「補充を必要とする」に相当する。
甲1発明の、「散薬の入った」カップ1は、フィーダ60に散薬を移し替える前の、電子秤50で散薬の重さが秤量されたものであるから、本件発明1の「計量済みの散薬の入った」前記散薬一時保管容器に相当する。
甲1発明の「目視及び取り外したり装着の可能な開口窓」は、本件発明1の「目視及び着脱の可能な場所に配置」する態様に相当する。
以上より、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
「-散薬を収容し、それを排出口から放出できる散薬収容容器と、
-前記散薬収容容器を載置し、そこから散薬を放出できる第1の散薬放出部と、
-前記第1の散薬放出部から放出された散薬を一時保管できる散薬一時保管容器と、
-前記散薬一時保管容器を載置し、前記散薬一時保管容器へ放出された散薬の重量を計測できる散薬計量部と、
-計量済みの散薬の入った前記散薬一時保管容器を載置し、その排出口から散薬を放出できる第2の散薬放出部と、
-前記第2の散薬放出部から放出された散薬を包装する散薬包装装置と、
-前記散薬容器棚、前記第1の散薬放出部、前記第2の散薬放出部、及び前記散薬計量部の相互間で、前記散薬収容容器または前記散薬一時保管容器を移送可能な散薬容器移送装置とを有し、
更に、前記散薬容器棚に前記散薬収容容器及び/または前記散薬一時保管容器が載置された状態が、機械前面に略平面状に配置され、かつ、前記散薬容器棚に載置された前記散薬収容容器及び/または前記散薬一時保管容器のうち、処置を必要とするものを目視及び脱着の可能な場所に配置
する散薬分包機。」
【相違点1】
本件発明1の「第2散薬放出部」は、散薬一時保管容器を載置可能であるのに対し、甲1発明の「フィーダ60」は、カップ1を載置可能としていない点。
【相違点2】
本件発明1の「散薬容器棚」は、「散薬収容容器」と「散薬一時保管容器」との両方を載置可能であるとともに、「散薬収容容器」と「散薬一時保管容器」の「散薬容器棚」に載置される部分の形状が同一であるのに対し、甲1発明の「カセット収納ユニットA、B、C」は棚ではなく、カセット30、カップ1のいずれも載置しておらず、形状も同一であるか明らかでない点。
【相違点3】
本件発明1では、散薬放出部において計量ミスのあることが判明した散薬一時保管容器を散薬容器移送装置により散薬容器棚に移送するのに対して、甲1発明では、薬剤情報等に不一致が判明した場合、エラー処理に移行するものの、エラー処理がいかなるものか明らかでない点。

b 判断
事案に鑑み、まず上記相違点2について検討すると、甲第1号証にはカセット30及びカップ1のいずれもカセット収容ユニットA、B、Cに載置される点及びカセット30及びカップ1の形状に同一部分がある点について、記載も示唆もされていない。また、甲第2号証にも上記相違点2に係る構成は記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1は、「前記散薬収容容器と前記散薬一時保管容器との両方を載置可能な散薬容器棚と、を有し、前記散薬収容容器と前記散薬一時保管容器との、前記散薬容器棚に載置される部分の形状が同一であ」ることにより、「機械前面から、処理が必要な散薬収容容器を目視し脱着することができ、かつ、計量不良発生時に自動でロスの発生がなく散薬の回収ができる」(段落【0029】)との効果を奏するものであるから、単なる設計事項であるともいえない。
また、上記相違点3について検討すると、甲1号証には薬剤情報等に不一致が判明した場合、エラー処理に移行するものの、エラー処理の具体的内容が特定されておらず、本件発明1のような、散薬一時保管容器を散薬容器移送装置により、散薬容器棚に移送する点について、記載も示唆もされていない。また、甲第2号証にも上記相違点3に係る構成は記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1は、「散薬放出部において計量ミスのあることが判明した散薬一時保管容器を散薬容器移送装置により、散薬容器棚に移送する」ことにより、「計量不良発生時に自動でロスの発生がなく散薬の回収ができる」(段落【0013】)との効果を奏するものであるから、単なる設計事項であるともいえない。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)本件発明5について
本件発明5は本件発明1の構成を全て含むものであるところ、本件発明1の「散薬放出部において計量ミスのあることが判明した散薬一時保管容器を散薬容器移送装置により、散薬容器棚に移送する」という発明特定事項を有するから、上記(ア)本件発明1についてと同様の理由により、本件発明5は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(ウ)本件発明6について
本件発明6は「散薬計量放出装置」に係る発明であるところ、本件発明1の構成のうち「前記第2の散薬放出部から放出された散薬を包装する散薬包装装置」という発明特定事項のみを除いたものである。
本件発明6は、本件発明1に係る発明の「散薬放出部において計量ミスのあることが判明した散薬一時保管容器を散薬容器移送装置により、散薬容器棚に移送する」という発明特定事項を同じく有することから、上記(ア)本件発明1についてと同様の理由により、本件発明6は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

エ 理由2 イについて(甲第2号証を主引用発明とした場合)
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「薬剤」、「収容形薬剤容器4」、「導入」、「手動形薬剤容器5a」、「秤量する」、「薬剤秤量装置3」、「薬剤包装装置6」、「容器保管装置103」、「ロボット110」、「薬剤払出し装置」は、それぞれ本件発明1の「散薬」、「散薬収容容器」、「放出」、「散薬一時保管容器」、「重量を計測できる」、「散薬計量部」、「散薬包装装置」、「散薬容器棚」、「散薬容器移送装置」、「散薬分包機」に相当する。
また、甲2発明の「薬剤排出部20」及び「薬剤排出部20a」は、本件発明1の「排出口」に相当し、甲2発明の「容器振動台11」は、薬剤を収容した容器から薬剤を放出できることから、本件発明の「第1の散薬放出部」及び「第2の散薬放出部」に相当する。
以上より、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
-散薬を収容し、それを排出口から放出できる散薬収容容器と、
-前記散薬収容容器を載置し、そこから散薬を放出できる第1の散薬放出部と、
-放出された散薬を一時保管できる散薬一時保管容器と、
-前記散薬一時保管容器を載置し、前記散薬一時保管容器へ放出された散薬の重量を計測できる散薬計量部と、
-計量済みの散薬の入った前記散薬一時保管容器を載置し、その排出口から散薬を放出できる第2の散薬放出部と、
-前記第2の散薬放出部から放出された散薬を包装する散薬包装装置と、
-前記散薬一時保管容器を移送可能な散薬容器移送装置とを有し、
更に、前記散薬収容容器と前記散薬一時保管容器との、前記散薬容器棚に載置される部分の形状が同一である、
散薬分包機。
【相違点4】
本件発明1の「散薬一時保管容器」は、第1の散薬放出部から放出された散薬を保管するのに対して、甲2発明の「手動形薬剤容器5a」は、薬剤師が薬剤を導入する点。
【相違点5】
本件発明1の「散薬容器棚」は、散薬収容容器と散薬一時保管容器との両方を載置可能であるとともに載置される部分の形状が同一であるのに対して、甲2発明の「容器保管装置103」は、収容形薬剤容器4と手動形薬剤容器5aの両方が載置可能か明らかでないものの、薬剤投入部以外の形状が同一である点。
【相違点6】
本件発明1の「散薬容器移送装置」は、第2の散薬放出部及び散薬計量部の相互間で、散薬収容容器または散薬一時保管容器を移送可能であるのに対して、甲2発明では、薬剤容器仮置部112から容器振動台11へ手動形薬剤容器5aが移送可能である点。
【相違点7】
本件発明1の散薬容器棚に散薬収容容器及び/または散薬一時保管容器が載置された状態が、機械前面に略平面状に配置され、かつ、散薬容器棚に載置された散薬収容容器及び/または散薬一時保管容器のうち、処置を必要とするものを目視及び脱着の可能な場所に配置されるのに対して、甲2発明の容器保管装置103は円筒形状であり、収容形薬剤容器4が装置前面に略平面状に配置されるとはいえない点。
【相違点8】
本件発明1における、散薬放出部において計量ミスのあることが判明した散薬一時保管容器を散薬容器移送装置により、散薬容器棚に移送するのに対して、甲2発明ではそのように構成されていない点。

b 判断
事案に鑑み、まず上記相違点5について検討すると、甲第2号証には当該相違点に関する記載はなく、甲1技術においても計量ミスが判明した場合(甲1技術でいう薬剤情報等に不一致が判明した場合)に散薬一時保管容器を散薬容器移送装置により、散薬容器棚に移送する点について、記載も示唆もされていない。また、甲第3号証?甲第9号証にも上記相違点5に係る構成は記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1は、「散薬放出部において計量ミスのあることが判明した散薬一時保管容器を散薬容器移送装置により、散薬容器棚に移送する」ことにより、「計量不良発生時に自動でロスの発生がなく散薬の回収ができる」(段落【0029】)との効果を奏するものであるから、単なる設計事項であるともいえない。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第2号証及び甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証?甲第9号証に記載された周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)本件発明5について
本件発明5は本件発明1の構成を全て含むものであるところ、本件発明1の「散薬放出部において計量ミスのあることが判明した散薬一時保管容器を散薬容器移送装置により、散薬容器棚に移送する」という発明特定事項を有するから、上記(ア)本件発明1についてと同様の理由により、本件発明5は、甲第2号証及び甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証?甲第9号証に記載された周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(ウ)本件発明6について
本件発明6は「散薬計量放出装置」に係る発明であるところ、本件発明1の構成のうち「前記第2の散薬放出部から放出された散薬を包装する散薬包装装置」という発明特定事項のみを除いたものである。
本件発明6は、本件発明1に係る発明の「散薬放出部において計量ミスのあることが判明した散薬一時保管容器を散薬容器移送装置により、散薬容器棚に移送する」という発明特定事項を同じく有することから、上記(ア)本件発明1についてと同様の理由により、本件発明6は、甲第2号証及び甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証?甲第9号証に記載された周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(2)理由3について
ア 先願明細書等(甲第10号証)に記載された発明について
(ア)先願明細書等(甲第10号証)に記載された事項
先願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「先願明細書等」という。甲第10号証参照。)には、図面とともに次の記載がある。
「【請求項6】
薬剤容器に作用して薬剤容器から散薬を排出させる薬剤排出手段と、薬剤容器から排出された散薬を受ける仮容器と、計量手段と、仮容器を搬送する仮容器搬送手段を有し、
仮容器を計量手段に載置し、
薬剤容器から排出された散薬の量を計量手段で監視し、
薬剤排出手段によって所望量の散薬を薬剤容器から排出させて仮容器に散薬を投入し、仮容器搬送手段によって仮容器を移動させることを特徴とする散薬秤量装置。
【請求項7】
薬剤容器は、散薬を貯留する散薬貯留部と、散薬を排出する散薬排出部を有し、
前記薬剤容器内に薬剤排出手段の一部又は全部があり、薬剤容器内で薬剤排出手段を駆動することによって散薬排出部から散薬を取り出すことを特徴とする請求項5又は6に記載の散薬秤量装置。」
「【請求項11】
請求項5乃至10のいずれかに記載の散薬秤量装置と、薬剤を所望の個数に分割して個別に包装する薬剤分包装置とを有し、仮容器内の散薬を手動又は自動的に薬剤分包装置に投入することが可能であることを特徴とする薬剤分包システム。」
「【0029】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の薬剤払出し装置1は、本出願人が過去に特許出願した薬剤払出し装置を基本構成とし、これに各種の改良を加えたものである。
付加した改良点の説明に先立って、薬剤払出し装置1の基本構成について説明する。
本実施形態の薬剤払出し装置1は、図1の様に本体部を構成する筐体10と、操作表示部3を備えている。
薬剤払出し装置1には多数の薬剤容器4が収容されている。各薬剤容器4には散薬が充填されている。薬剤払出し装置1は、操作表示部3を操作することにより、所望の薬剤容器4を選び出し、薬剤容器4に収容された散薬を自動的に取り出して計量し、所定数に分割して分包する装置である。」
「【0047】
本実施形態では、容器載置装置36に薬剤容器4を載置して薬剤容器4を振動させ、薬剤容器4に収容された散薬を分配皿35に排出することが可能である。そしてこの散薬の排出に伴う薬剤容器4の重量変化を重量測定手段52によって検知可能である。本実施形態では、重量測定手段52が排出量検知手段として機能し、薬剤容器4の重量変化によって散薬の排出量が検出される。」
「【0049】
薬剤容器4は、外形が略直方体状の容器であり、内部に散薬を収容することができる。薬剤容器4には、図5、図6の様に容器本体6と蓋190によって構成されている。蓋190は容器本体6とから取り外すことができる。本実施形態では、容器本体6から蓋190を外して容器本体6の一端側を大きく開口させ、散薬を充填する。
また図6(a)の様に蓋190を開いて一部を開口することができる。蓋190を開くことによって形成される開口188から内部の散薬を排出することができる。
また薬剤容器4には、異なる二面にそれぞれ鉄板182,183が取り付けられている。一方の面に設けられた鉄板183は、アーム部30で薬剤容器4を保持する際、アーム部30の磁石に吸着させるための部分である。また、他方の面に設けられた鉄板182は、後述する容器載置装置36に設置するとき、容器載置装置36の電磁石41に吸着させるための部分である。」
「【0121】
本実施形態の薬剤払出し装置100は、分配皿35の近傍に散薬を序々に投下する散薬フィーダ201があり、薬剤容器4に作用して薬剤容器4から薬剤を排出させる薬剤排出装置(容器載置装置36)と、薬剤容器4から排出された薬剤を受ける仮容器107と、仮容器107を散薬フィーダ201に搬送する仮容器搬送手段(ロボット106)を有し、薬剤排出装置によって所望量の散薬を薬剤容器から排出させて仮容器107に散薬を投入し、仮容器搬送手段によって仮容器107を散薬フィーダ201に移動させ、散薬フィーダ201から散薬を分配皿35に投入するものである。」
「【0123】
さらにこれらの変形例に付いて説明する。図19に示す薬剤払出し装置121は、計量器(計量手段)102の近傍に容器載置装置(薬剤排出手段)36を設置したものである。本実施形態で採用する容器載置装置36は、基本的に前記した図5のものと同一であるが、重量測定手段(計量手段)52は、必須ではない。
【0124】
本実施形態では、配列棚101の中に、薬剤容器4が配置されている。また本実施形態では、ロボット106は、薬剤容器4を配列棚101から容器載置装置36に搬送する薬剤容器搬送手段として機能する。
本実施形態では、必要な薬剤容器4がロボット106によって配列棚101から取り出され、容器載置装置(薬剤排出手段)36に設置される。
そして容器載置装置36が起動し、薬剤容器4から薬剤が排出される。排出された薬剤は、直接的に仮容器107に落下する。
薬剤容器4から排出された薬剤の量は、計量器102で監視される。そして所定量の散薬が仮容器107に落下すると、容器載置装置36が停止する。
【0125】
図16に示す薬剤払出し装置100及び図19の示す薬剤払出し装置121は、薬剤を秤量する機能と、薬剤を分割する機能と、薬剤を個別に包装する機能を備えている。
図16に示す薬剤払出し装置100及び図19の示す薬剤払出し装置121の内で、薬剤を秤量する機能の部分だけを単独で製品化することも可能である。
即ち、図16に示す薬剤払出し装置100では、配列棚101と、計量器(計量手段)102と、配列棚101内の散薬排出ユニット105によって散薬秤量装置500が構成されている。
また図19に示す薬剤払出し装置121では、配列棚101と、計量器(計量手段)102と、ロボット(薬剤容器搬送手段)106と、計量器102の近傍に配置された容器載置装置(薬剤排出手段)36によって散薬秤量装置501が構成されている。
【0126】
図20は、散薬秤量装置500、501を使用した薬剤分包システム122の一例を示す概念図である。なお図20では、代表として図16に示す散薬秤量装置500を図示しているが、これに代わって図19に示す散薬秤量装置501を採用してもよい。図21以下の実施形態では、散薬秤量装置500、501のいずれかを例示しているが、いずれを採用するかは任意である。
【0127】
薬剤分包システム122は、散薬秤量装置500と、秤量皿移動コンベヤ(仮容器搬送手段)103と、薬剤分包装置125を有している。薬剤分包装置125は、分配皿方式を採用するものである。
秤量皿移動コンベヤ103は、散薬秤量装置500と薬剤分包装置125の間に設けられた搬送装置であり、薬剤分包装置125の近傍に図示しない秤量皿反転装置が設けられている。
薬剤分包装置125は、散薬分配装置(薬剤分割手段)902と、薬剤包装装置(薬剤分包手段)903を有している。
散薬分配装置902は散薬を投入するホッパー(薬剤投入部)905を有し、ホッパー905に投入された散薬を所定の数に分割するものである。
薬剤包装装置903は、分割された散薬を個別に包装するものである。
散薬秤量装置500は、前記した様に、薬剤排出手段によって薬剤容器4から散薬を取り出して仮容器107に移し、仮容器107に移された散薬の重量を重量測定手段たる計量器102で直接的に監視し、所定量の散薬を仮容器107に移す動作を実行する薬剤排出制御手段を有している。
そして所定量の散薬が移された仮容器107は、秤量皿移動コンベヤ103によって薬剤分包装置125の近傍に搬送され、図示しない秤量皿反転装置によって仮容器107が傾斜姿勢となってホッパー(薬剤投入部)905に散薬が投入される。そして薬剤分包装置125によって薬剤が所定の数に分割され、個別に包装される。」
「【0129】
図22は、散薬秤量装置500又は散薬秤量装置501を使用した他の薬剤分包システム301の一例を示す斜視図である。
本実施形態の薬剤分包システム301は、散薬秤量装置500と、薬剤分包装置305及び秤量皿移動装置(仮容器搬送手段)306によって構成されている。
薬剤分包装置305は、公知の分配皿方式の薬剤分包装置である。
【0130】
秤量皿移動装置306は、公知のロボットである。秤量皿移動装置306は図示しない仮容器収容棚から仮容器107を取り出して計量器102に載置する仮容器移動手段としての機能と、仮容器107を計量器102から薬剤分包装置305に搬送する仮容器搬送手段として機能を有している。
【0131】
以上説明した実施形態では、薬剤分包装置305として分配皿方式の薬剤分包装置を採用したが、薬剤分包装置の形式は任意である。図23は、薬剤分包装置としてV枡方式の薬剤分包装置307を採用した場合の斜視図である。
重量測定手段22から秤量皿移動装置306によって取り出された仮容器107をV枡方式の薬剤分包装置307に移動させ、V枡部308に仮容器107を傾けて散薬を投入することも可能である。その後は手動でV枡内の散薬を均してもよいし、自動で散薬を均す方式を採用してもよい。」
「図19


「図20


段落【0121】の「・・・薬剤排出装置によって所望量の散薬を薬剤容器から排出させて仮容器107に散薬を投入し、仮容器搬送手段によって仮容器107を散薬フィーダ201に移動させ、散薬フィーダ201から散薬を分配皿35に投入するものである。」との記載から、仮容器107は薬剤を一時保管できるもの、といえる。

(イ)先願明細書等(甲第10号証)に記載された発明
上記(ア)より、先願明細書等(甲第10号証)には次の発明(以下「甲10発明」という。」)が記載されていると認められる。
「薬剤を収容し、それを開口188から放出できる薬剤容器4と、
前記薬剤容器4を載置し、そこから薬剤を排出できる容器載置装置36と、
前記容器載置装置36から排出された薬剤を一時保管できる仮容器107と、
前記仮容器107を載置し、前記仮容器107へ排出された薬剤の量を計量できる計量器102と、
計量済みの薬剤の入った前記仮容器107を載置し、仮容器107から薬剤を放出できる秤量皿反転装置と、
前記秤量皿反転装置から放出された薬剤を包装する薬剤分包装置125と、
前記薬剤容器4を載置可能な配列棚101と、
前記配列棚101、前記容器載置装置36、前記秤量皿反転装置、及び前記計量器102の相互間で、前記薬剤容器4または前記仮容器107を移送可能なロボット106、秤量皿移動コンベア103とを有し、
更に、前記配列棚101に前記薬剤容器4が載置された状態が、配列棚101前面に略平面状に配置される
薬剤払出し装置。」

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲10発明とを対比する。
甲10発明の「薬剤」、「開口188」、「薬剤容器4」、「排出」、「容器載置装置36」、「仮容器107」、「量を計量できる」、「計量器102」、「秤量皿反転装置」、「薬剤分包装置125」、「配列棚101」、「ロボット106」及び「秤量皿移動コンベア103」、「薬剤払出し装置」は、それぞれ本件発明1の「散薬」、「排出口」、「散薬収容容器」、「放出」、「第1の散薬放出部」、「散薬一時保管容器」、「重量を計測できる」、「散薬計量部」、「第2の散薬放出部」、「散薬包装装置」、「散薬容器棚」、「散薬容器移送装置」、「散薬分包機」に相当する。
以上より、本件発明1と甲10発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
-散薬を収容し、それを排出口から放出できる散薬収容容器と、
-前記散薬収容容器を載置し、そこから散薬を放出できる第1の散薬放出部と、
-前記第1の散薬放出部から放出された散薬を一時保管できる散薬一時保管容器と、
-前記散薬一時保管容器を載置し、前記散薬一時保管容器へ放出された散薬の重量を計測できる散薬計量部と、
-計量済みの散薬の入った前記散薬一時保管容器を載置し、その排出口から散薬を放出できる第2の散薬放出部と、
-前記第2の散薬放出部から放出された散薬を包装する散薬包装装置と、
-前記散薬収容容器を載置可能な散薬容器棚と、
-前記散薬容器棚、前記第1の散薬放出部、前記第2の散薬放出部、及び前記散薬計量部の相互間で、前記散薬収容容器または前記散薬一時保管容器を移送可能な散薬容器移送装置とを有する散薬分包機。
【相違点9】
本件発明1における、散薬容器棚に散薬収容容器と前記散薬一時保管容器との両方を載置可能であり、「散薬収容容器と散薬一時保管容器との、前記散薬容器棚に載置される部分の形状が同一であ」るのに対して、甲10発明では、配列棚101に仮容器107が載置可能とはいえず、薬剤容器4と仮容器107の形状が同一か明らかでない点。
【相違点10】
本件発明1における散薬容器棚に散薬収容容器及び/または散薬一時保管容器が載置された状態が、機械前面に略平面状に配置されるのに対して、甲10発明では、配列棚101に薬剤容器4が載置された状態が、配列棚101前面に略平面状に配置される点。
【相違点11】
本件発明1における、散薬容器棚に載置された散薬収容容器及び/または散薬一時保管容器のうち、処置を必要とするものを目視及び脱着の可能な場所に配置したのに対して、甲10発明では処置を必要とする薬剤容器4の取り扱いについて明らかでない点。
【相違点12】
本件発明1において、散薬放出部において計量ミスのあることが判明した散薬一時保管容器を散薬容器移送装置により、散薬容器棚に移送するのに対して、甲10発明では、計量ミスがあった場合の取り扱いについて明らかでない点。

(イ)判断
上記相違点9について検討すると、先願明細書等(甲第10号証)には仮容器107が配列棚101に載置可能である点及び薬剤容器4と仮容器107の配列棚101に載置する部分の形状が同一である点について、記載も示唆もされておらず、これらの点が技術常識であるということもできない。
よって、上記相違点9は、実質的な相違点である、というべきである。
さらに、上記相違点10では、配列棚101に薬剤容器4が載置された状態が、薬剤払い出し装置における機械前面に配置される点、上記相違点11では、処置を必要とする薬剤容器4を目視及び脱着の可能な場所に配置する点、上記相違点12では、計量ミスのあることが判明した仮容器107を散薬容器移送装置により、散薬容器棚に移送する点について、記載も示唆もされておらず、これらの点が技術常識であるということもできない。
よって、上記相違点10?12についても実質的な相違点である、というべきである。
また本件発明1は、「散薬放出部において計量ミスのあることが判明した散薬一時保管容器を散薬容器移送装置により、散薬容器棚に移送する」ことにより、「計量不良発生時に自動でロスの発生がなく散薬の回収ができる」(段落【0029】)との効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明1は、先願明細書等(甲第10号証)に記載された発明と同一とはいえない。

ウ 本件発明6について
本件発明6は「散薬計量放出装置」に係る発明であるところ、本件発明1の構成のうち「前記第2の散薬放出部から放出された散薬を包装する散薬包装装置」という発明特定事項のみを除いたものである。
そうすると、本件発明6と甲10発明とは上記イ(ア)で示した相違点9?12で相違し、上記イ(イ)で示したとおり実質的な相違点といえるものであるから、本件発明6は、先願明細書等(甲第10号証)に記載された発明と同一とはいえない。

(3)理由4について
ア 申立人の主張
理由4について、申立人が主張する内容は以下のとおりである(異議申立書第10ページ?第17ページ)。
【理由4-1】
本件発明1?6の「前記散薬容器棚、前記第1の散薬放出部、前記第2の散薬放出部、及び前記散薬計量部の相互間で、前記散薬収容容器または前記散薬一時保管容器を移送可能な散薬容器移送装置とを有し」について、発明の詳細な説明に記載された主たる実施形態に係る発明をそのまま表したのではなく、そのため主たる実施形態に係る発明と整合しておらず、技術的意義が理解できないものであり、発明が不明確である。
【理由4-2】
本件発明5の「読み取った符号の内容に対応して、前記散薬収容容器または前記散薬一時保管容器の移送先を定める」について、散薬収容容器または散薬一時保管容器の移送先は、散薬に関連付けられた符号の内容いかんにかかわらず定まっており、移送先を定めるプロセスは存在しないことから、不明確である。

イ 当審の判断
(ア) 明確性要件の判断手法
請求項に係る発明が明確性要件に適合するか否かは、当該請求項の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、当該請求項の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断すべきところ、以下、上記観点に立って検討する。
(イ)理由4-1について
本件発明1、5、6には「前記散薬容器棚、前記第1の散薬放出部、前記第2の散薬放出部、及び前記散薬計量部の相互間で、前記散薬収容容器または前記散薬一時保管容器を移送可能な散薬容器移送装置とを有し」と記載されているところ、散薬収容容器が散薬容器移送装置により散薬容器棚から第1の散薬放出部へ移送される点が段落【0101】?【0111】に、散薬一時保管容器が散薬容器移送装置により散薬容器棚から散薬計量部へ移送される点が段落【0112】?【0113】に、散薬一時保管容器が散薬容器移送装置により第2散薬放出部へ移送される点が段落【0122】に具体的に記載されており、本件発明1、5、6において特定される「散薬収容容器」、「散薬一時保管容器」は、「散薬容器移送装置」によって、「散薬容器棚」、「第1の散薬放出部」、「第2の散薬放出部」、及び「散薬計量部」間を移送される点が特定されている。
したがって、当該明細書の記載を踏まえれば、本件発明1、5、6において特定される各構成要素の役割や機能は明確であり、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとまではいえない。
よって、本件発明1、5、6は、いずれも明確性要件に適合する。
(ウ)理由4-2について
本件発明5には「読み取った符号の内容に対応して、前記散薬収容容器または前記散薬一時保管容器の移送先を定める」と記載されている。
この点に関し、段落【0086】の「なお、各々の容器載置台705の上面(容器を載置する面)には、散薬収容容器100または散薬一時保管容器300を載置固定するための電磁石(図示せず)及びそれらの容器に設けられたRFIDタグ107(307)との間で情報を読み取ったり、書き込んだりするためのRFIDリーダ・ライタ(図示せず)が設けられている。」との記載、段落【0087】の「また、このRFIDタグ107(307)には・・・処方の都度入力される「載置台番号」「処方番号」「払出し量」「現在予想残量」などと関連つける符号が入力される。」との記載、段落【0119】の「また、それら装着された容器に関する情報は、事前に別の装置で書き込まれているものとし、これを図示しないRFIDリーダ・ライタで読み取って、容器載置台705の位置と、そこに載置されている容器の散薬情報を紐付けて、これを記憶テーブルに保存しておく。」との記載、段落【0104】の「散薬Aが収容されている容器の位置を記憶テーブルから検索して、この位置の散薬収容容器100を散薬容器移送装置800によって、第1の散薬放出部200に載置する。」との記載を踏まえると、容器に設けられたRFIDタグの載置台番号情報から、特定の散薬が収容された容器を第1散薬放出部へ移送する点が記載されているといえる。
よって、本件発明5に記載される上記事項は明細書の記載を踏まえれば、その具体的な態様を特定することは可能であり、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとまではいえない。
よって、本件発明5は明確性要件に適合する。

6 小括
したがって、本件発明1、5、6に係る特許は、特許法第29条第1項第3号、同法第29条第2項、同法第29条の2、同法第36条第6項第1号及び第2号の規定に違反してされたものでなく、同法第113条第2号及び第4号に該当しないので、取り消すべきものとすることはできない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1、5、6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、5、6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
特許異議申立人がした本件発明2?4に係る特許についての特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったことから、不適法であって、その補正をすることができないものであり、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-散薬を収容し、それを排出口から放出できる散薬収容容器と、
-前記散薬収容容器を載置し、そこから散薬を放出できる第1の散薬放出部と、
-前記第1の散薬放出部から放出された散薬を一時保管できる散薬一時保管容器と、
-前記散薬一時保管容器を載置し、前記散薬一時保管容器へ放出された散薬の重量を計測できる散薬計量部と、
-計量済みの散薬の入った前記散薬一時保管容器を載置し、その排出口から散薬を放出できる第2の散薬放出部と、
-前記第2の散薬放出部から放出された散薬を包装する散薬包装装置と、
-前記散薬収容容器と前記散薬一時保管容器との両方を載置可能な散薬容器棚と、
-前記散薬容器棚、前記第1の散薬放出部、前記第2の散薬放出部、及び前記散薬計量部の相互間で、前記散薬収容容器または前記散薬一時保管容器を移送可能な散薬容器移送装置とを有し、
更に、前記散薬収容容器と前記散薬一時保管容器との、前記散薬容器棚に載置される部分の形状が同一であり、
更に、前記散薬容器棚に前記散薬収容容器及び/または前記散薬一時保管容器が載置された状態が、機械前面に略平面状に配置され、かつ、前記散薬容器棚に載置された前記散薬収容容器及び/または前記散薬一時保管容器のうち、処置を必要とするものを目視及び脱着の可能な場所に配置し、
更に、前記散薬放出部において計量ミスのあることが判明した前記散薬一時保管容器を前記散薬容器移送装置により、前記散薬容器棚に移送することを特徴とする散薬分包機。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
-前記散薬収容容器に付された収容された散薬に関連付けた自動読取可能な符号と、
-前記散薬一時保管容器に付された保管された散薬に関連付けた自動読取可能な符号と、
-前記散薬容器棚、前記散薬計量部、前記第1の散薬放出部、前記第2の散薬放出部のいずれか一つ以上に設けた前記符号を読み取る符号読取部と
を有し、読み取った符号の内容に対応して、前記散薬収容容器または前記散薬一時保管容器の移送先を定めることを特徴とする請求項1に記載の散薬分包機。
【請求項6】
-収容された散薬を収容し、それを排出口から放出できる散薬収容容器を載置し、そこから散薬を放出できる第1の散薬放出部と、
-前記第1の散薬放出部から放出された散薬を一時保管できる散薬一時保管容器を保持し、前記散薬一時保管容器へ放出された散薬の重量を計測できる散薬計量部と、
-計量済みの散薬の入った前記散薬一時保管容器を載置し、その排出口から散薬を放出できる第2の散薬放出部と、
-前記散薬収容容器と前記散薬一時保管容器との両方を載置可能な散薬容器棚と、
-前記散薬容器棚、前記第1の散薬放出部、前記第2の散薬放出部、及び前記散薬計量部の相互間で、前記散薬収容容器または前記散薬一時保管容器を移送可能な散薬容器移送装置とを有し、
更に、前記散薬収容容器と前記散薬一時保管容器との、前記散薬容器棚に載置される部分の形状が同一であり、
更に、前記散薬容器棚に前記散薬収容容器及び/または前記散薬一時保管容器が載置された状態が、機械前面に略平面状に配置され、かつ、前記散薬容器棚に載置された前記散薬収容容器及び/または前記散薬一時保管容器のうち、処置を必要とするものを目視及び脱着の可能な場所に配置し、
更に、前記散薬放出部において計量ミスのあることが判明した前記散薬一時保管容器を前記散薬容器移送装置により、前記散薬容器棚に移送することを特徴とする散薬計量放出装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-11-05 
出願番号 特願2018-126849(P2018-126849)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A61J)
P 1 651・ 113- YAA (A61J)
P 1 651・ 16- YAA (A61J)
P 1 651・ 537- YAA (A61J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 立花 啓  
特許庁審判長 内藤 真徳
特許庁審判官 莊司 英史
沖田 孝裕
登録日 2018-09-28 
登録番号 特許第6406785号(P6406785)
権利者 株式会社トーショー
発明の名称 散薬分包機  
代理人 堀井 哲夫  
代理人 堀井 哲夫  

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