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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G01N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
管理番号 1357697
異議申立番号 異議2019-700289  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-15 
確定日 2019-12-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第6405339号発明「簡易メンブレンアッセイ法及びキット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6405339号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6405339号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成14年6月27日に出願された特願2002-187781号の一部を平成18年3月31日に新たな特許出願である特願2006-099040号とし、その一部を平成20年8月22日に新たな特許出願とした特願2008-214432号の一部を平成24年9月7日に新たな特許出願である特願2012-196836号とし、その一部を更に平成27年3月3日に新たな特許出願とした特願2015-041608号の一部を平成28年5月30日に新たな特許出願としたものであって、平成30年9月21日にその特許権の設定登録がされ、同年10月17日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

平成31年 4月15日 :特許異議申立人森田弘潤(以下「特許異議申
立人1」という。)による請求項1ないし4
に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 同月17日 :特許異議申立人山内貴博及び中所昌司(以下
「特許異議申立人2」という。)による請求
項1ないし4に係る特許に対する特許異議の
申立て
令和 元年 6月27日付け:取消理由通知
同年 9月 2日 :特許権者による意見書の提出
同年 同月18日付け:特許異議申立人1及び2に対する審尋
同年10月23日 :特許異議申立人1による回答書の提出
同年 同月24日 :特許異議申立人2による回答書の提出


第2 本件発明

本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下それぞれ請求項の番号に対応して「本件発明1」などという。)は、以下のとおりのものである。

(本件発明1)
「【請求項1】
被測定物を捕捉するための捕捉試薬が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置を用いる、検体試料中の被測定物のラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイ法であって、検体試料を濾過フィルターを用いて濾過した後に前記メンブレン上に滴下し、前記検体試料中の被測定物の存在を検出あるいは定量することを含み、前記検体は咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液又は便懸濁液であり、前記メンブレンの孔径または保留粒子径が前記濾過フィルターの孔径または保留粒子径以上であり、前記濾過フィルターは検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐことを特徴とする方法。」

(本件発明2)
「【請求項2】
以下を含む、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液又は便懸濁液である検体試料中の被測定物の存在を検査あるいは定量するためのラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイキット;
(1)濾過フィルター、及び
(2)被測定物を捕捉するための捕捉物質が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置、であって、
前記メンブレンの孔径または保留粒子径が前記濾過フィルターの孔径または保留粒子径以上であり、
前記濾過フィルターが検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐことを特徴とする、上記アッセイキット。」

(本件発明3)
「【請求項3】
前記メンブレンの孔径または保留粒子径が0.5μm以上7μm以下であることを特徴とする、請求項1記載の方法。」

(本件発明4)
「【請求項4】
前記濾過フィルターの孔径または保留粒子径が0.2?2.0μmであることを特徴とする、請求項1記載の方法。」


第3 取消理由の概要

本件の請求項1ないし4に係る特許に対して、当審が令和元年6月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

1 (明確性)請求項1ないし4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(1)請求項1、3及び4について、「前記濾過フィルターは検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐことを特徴とする」という記載により特定される事項が判然としない。

(2)請求項1、3及び4について、「前記濾過フィルターは検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐこと」が、何により達成されるのかが、判然としない。

(3)請求項2について、「前記濾過フィルターが検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐことを特徴とする」という記載により、「濾過フィルター」について、どのような構造又は特性を特定するのかが不明である。

2 (実施可能要件)請求項1ないし4に係る特許は、明細書の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

発明の詳細な説明には、[実施例1]として、インフルエンザウイルスを検出するためのフロースルー式メンブレンアッセイ法において、フィルターを使用した場合、偽陽性の発生を防止することができた旨記載されている。
しかしながら、ラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイ法に関する実施の形態は記載されていない。
そして、フロースルー式メンブレンアッセイ法とラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイ法とでは、メンブレンにおける検体試料の滴下位置と検出位置との関係が異なり、メンブレン中を流れる検体試料の移動方向及び移動距離が異なることから、検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着する位置及び量も、フロースルー式メンブレンアッセイ法とラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイ法とでは異なるものと認められる。
そうすると、フロースルー式メンブレンアッセイ法において偽陽性の発生を防止することができたフィルターが、ラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイ法においても、検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐことができるか否かは不明であるといわざるを得ない。
したがって、発明の詳細な説明の記載からは、ラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイ法において、検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐために、どのような構造の濾過フィルターを用いて検体試料を濾過すればよいのかを把握することはできない。
また、発明の詳細な説明の記載は、ラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイキットの濾過フィルターとして、「検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐことを特徴とする」「濾過フィルター」を作れるように記載したものでない。

3 (サポート要件)請求項1ないし4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

発明の詳細な説明の記載からは、ラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイ法において、検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐために、どのような構造の濾過フィルターを用いて検体試料を濾過すればよいのかを把握することはできない。

4 (進歩性)請求項1ないし4に係る発明は、特許異議申立人2の甲第1号証(国際公開第95/179654号)に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。


第4 甲各号証について

1 特許異議申立人1及び2が提出した甲各号証は、以下のとおりである。

(1)特許異議申立人1が提出した甲各号証

甲第1号証:特表平9-508200号公報
甲第2号証:「検査と技術 増刊号 感染症の検査法」,医学書院,1989年5月15日,Vol.17,No.6,p.608-613
甲第3号証:ThermoFisher SCIENTIFIC社のウェブサイトにおける「Nalgene^(TM) Glass Prefilters」の項,[online],[2019年3月30日検索],インターネット,<URL:https://www.thermofisher.com/order/catalog/product/DS0281-5000>
甲第4号証:「TechNote#25 Immunochromatographic,Lateral Flow or Strip test - Development Ideas」,Bangs Laboratories,Inc.,1998年
甲第5号証:特開2000-88851号公報
甲第6号証:デンカ生研株式会社の「EIA法によるA型又はB型インフルエンザウイルス抗原検出用キット インフルA・B-クイック『生研』」の添付文書,2001年10月

甲第7号証:デンカ生研株式会社の「EIA法によるA型又はB型インフルエンザウイルス抗原検出用キット インフルA・B-クイック『生研』」のカタログ,2001年9月
甲第8号証:特表平9-511058号公報

以下、特許異議申立人1が提出した甲各号証を、甲各号証の番号に対応して「甲1A」などという。

(2)特許異議申立人2が提出した甲各号証

甲第1号証:国際公開第95/179654号
甲第2号証の1:特開平3-176659号公報
甲第2号証の2:米国特許第5075078号明細書
甲第3号証:特表平6-508215号公報
甲第4号証:米国特許第6607922号明細書
甲第5号証:米国特許第6979576号明細書
甲第6号証:特表2002-507725号公報
甲第7号証:芦原義弘,「POCT -簡易デバイスおよびイムノアッセイの現状と将来の測定技術の展望-」,臨床化学,2001年6月,第30巻,第2号,p.68-76
甲第8号証の1:「A群溶血レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)検査マニュアル(劇症型溶血性レンサ球菌感染症起因株を含む)」,国立感染症研究所,平成25年8月
甲第8号証の2:国立感染症研究所のウェブサイトの「病原体検出マニュアル」の項,[online],2019年1月16日更新,[2019年2月27日検索],インターネット,<URL:https://www.niid.go.jp/niid/ja/labo-manual.html>
甲第9号証:「検査と技術 増刊号 感染症の検査法」,医学書院,1989年5月15日,Vol.17,No.6,p.608-613
甲第10号証:川上千春 他,「イムノクロマトグラフィー法によるA,B型インフルエンザウイルス迅速診断キットの検討」,感染症学雑誌,平成13年9月20日,第75巻,第9号,p.792-799
甲第11号証:デンカ生研株式会社の「EIA法によるA型又はB型インフルエンザウイルス抗原検出用キット インフルA・B-クイック『生研』」の添付文書,2001年10月
甲第12号証:デンカ生研株式会社の「EIA法によるA型又はB型インフルエンザウイルス抗原検出用キット インフルA・B-クイック『生研』」のカタログ,2001年9月
甲第13号証:ThermoFisher SCIENTIFIC社のウェブサイトにおける「Nalgene^(TM) Glass Prefilters」の項,[online],[2019年3月14日検索],インターネット,<URL:https://www.thermofisher.com/order/catalog/product/DS0281-9000>

以下、特許異議申立人2が提出した甲各号証を、甲各号証の番号に対応して「甲1B」などという。

2 甲1Bについて

(1)甲1Bには、以下の記載がある(見出しを除く下線は当審で付加した。)。和訳は、基本的に特許異議申立人2の訳文に基づくが、国際特許出願の国際公開である甲1Bに対応する特許出願の公表公報である特表平9-508200号公報(甲1A)を参考に、当審で修正を加えた。

(甲1B-ア)第1頁1?7行
「1 . Field of the Invention
In general, the present invention relates to assay methods and devices for the detection of an analyte in a test sample. In particular, the invention relates to novel test devices designed to provide for the rapid transfer of fluid to a reactive membrane by means of a capillary track. In addition, the invention relates to novel methods for forming a capillary track and novel sample processing devices for use in diagnostic testing.」
(訳:1.発明の分野
本発明は、概して、検体試料中の被測定物(analyte)を検出するためのアッセイ方法及び装置に関する。詳細には、本発明は、流体を毛管トラックにより反応性のメンブレンに迅速に移送するように設計された新規のテスト装置に関する。さらに、本発明は、毛管トラックを形成する新規の方法及び診断テストに使用される新規なサンプル処理装置に関する。)

(甲1B-イ)第2頁7?23行
「 The use of reagent-impregnated teststrips in specific binding assays is also well-known. In such procedures, a test sample is applied to one portion of the teststrip and is allowed to migrate or wick through the strip. Thus, the analyte to be detected or measured passes through or along the strip, possibly with the aid of an eluting solvent which can be the test sample itself or a separately added solution. The analyte migrates into a capture or detection zone on the teststrip, wherein a complementary binding member to the analyte or labeled reagent has been immobilized. The extent to which the analyte becomes bound in the detection zone can be determined with the aid of the labeled reagent which can also be incorporated in the teststrip or which can be applied separately.
An early teststrip device is described by Deutsch et al. in United States Patent No. 4,361 ,537. In general, the device comprises a material capable of transporting a solution by capillary action, i.e., a wicking or chromatographic action. Different areas or zones in the teststrip contain the assay reagents needed to produce a detectable signal as the analyte is transported to or through such zones. The device is suited for both chemical assays and binding assays and uses a developer solution to transport analyte along the strip.
(訳: 特異的結合アッセイで試薬を含浸させたテストストリップを使用することも周知である。この手順では、テストストリップの一部分に検体試料を付与し、ストリップ中を移動又は浸透(wick)させる。したがって、検出又は測定すべき被測定物は、場合によっては溶出溶媒を使って、ストリップ中を通過し又はストリップに沿って移動する。この溶出溶媒は、検体試料自体のことも別に加えた溶液のこともある。被測定物は、被測定物又は標識付き試薬に対する相補的結合メンバが固定されている、テストストリップ上の捕捉ゾーン又は検出ゾーンまで移動する。被測定物が検出ゾーンで固定される程度は、標識付き試薬を用いて決定できる。この標識付き試薬は、やはりテストストリップに含めることもでき、別に付与することもできる。
初期のテストストリップ装置は、Deutsch他の米国特許第4361537号に記載されている。一般に、この装置は、毛管作用によって、すなわちウィッキング(wicking)作用又はクロマトグラフィ作用によって溶液を運ぶことのできる材料を含んでいる。テストストリップ中の異なる区域又はゾーンに、そのゾーンに被測定物が運ばれた又は通過したとき検出可能な信号を発生するのに必要なアッセイ試薬が含まれている。この装置は、化学アッセイにも結合アッセイにも適しており、ストリップ上を被測定物を運ぶのに展開液を使用する。)

(甲1B-ウ)第4頁3?26行
「 The present invention is also directed to a drop-forming means which incorporates one or more assay reagents in a single or multiple-layer chamber to allow for improved sample processing and reagent addition, mixing, and incubation. The drop-forming means may be a component of the assay device or, alternatively, may be a free-standing component which is placed over the inlet of the device of the invention or over the sample application zone of prior art assay devices. A preferred embodiment has the drop-forming means affixed to the inlet of a capillary-track device of the present invention. Application of sample fluid to the drop-former allows mixing and incubation of sample and reagents within the matrix of the drop- former. After passing through the drop-forming means, sample is delivered to the inlet of the capillary track.
The present invention is also directed to constructing a disposable assay device which includes a capillary track. One method for constructing the capillary track involves applying a printable material to a first film layer thereby forming a core layer and three sides of the capillary track, wherein the printable material is deposited as a reverse image of the capillary track on the first film layer. A second film layer is then adhered to the top of the printable material or core layer, thereby forming the fourth side of the capillary track.
An alternative method for constructing the capillary track involves applying a fluid repellent printable substance to a length of porous material thereby impregnating the porous material wherein a non-impregnated region defines two sides of the capillary track. A first and a second film layer are then adhered to the top and bottom of the porous material thereby forming the top and bottom of the capillary track.」
(訳: 本発明はまた、液滴形成手段をも対象とし、それは、サンプルの処理と試薬の添加、混合、インキュベーションの改善を考慮して単層又は多層チャンバ内に一種又は複数のアッセイ試薬を含む。この液滴形成手段は、アッセイ装置の構成要素でもよく、また独立の構成要素とし、それを本発明の装置の入口の上又は従来技術のアッセイ装置のサンプル付与ゾーンの上に置いてもよい。好ましい実施形態は、本発明の毛管トラック装置の入口に付加した液滴形成手段を有するものである。この液滴形成装置にサンプル流体を付与すると、液滴形成装置の基質内でサンプルと試薬の混合及びインキュベーションが可能になる。液滴形成手段を通過後に、毛管トラックの入口にサンプルが供給される。
本発明はまた、毛管トラックを含む使い捨てアッセイ装置を構築することをも対象とする。毛管トラックを構築する方法の一つは、第一のフィルム層に印刷可能材料を塗布してコア層と毛管トラックの三側面を形成することを含む。ここで、印刷可能材料を第一フィルム層上の毛管トラックの逆像として堆積される。次に印刷可能材料又はコア層の上面に第二のフィルム層を接着させ、それによって毛管トラックの第四の側面を形成する。
毛管トラックを構築する別の方法は、ある長さの多孔質材料に流体を弾く印刷可能物質を塗布し、それによって多孔質材料にしみ込ませる。ここで、しみ込んでいない領域が毛管トラックの二つの側面を規定する。次に多孔質材料の上面及び底面に第一及び第二のフィルム層を接着させ、それによって毛管トラックの上面と底面を形成する。)

(甲1B-エ)第5頁29?39行
「 "Test sample" refers to a material suspected of containing the analyte. The test sample can be used directly as obtained from the source or after pretreatment so as to modify its character. The test sample is typically a physiological fluid. The test sample can be pretreated prior to use, such as preparing plasma from blood, diluting viscous fluids, extracting analyte, or the like. Methods of treatment can involve filtration, distillation, concentration, inactivation of interfering components, and the addition of reagents. Besides physiological fluids, other liquid samples can be used such as water, food products and the like for the performance of environmental or food production assays as well as diagnostic assays. In addition, a solid material suspected of containing the analyte can be used as the test sample once it is modified to form a liquid medium or to release the analyte.」
(訳: 「検体試料」とは、被測定物を含有している疑いのある材料をいう。検体試料は供給源から得られたまま直接使用することもでき、また、その性質を修正するために前処理した後に使用することもできる。検体試料は一般に生理的流体である。検体試料は使用前に、血液からの血漿の調製、粘性流体の希釈、被測定物の抽出などの前処理を加えることができる。処理の方法には、濾過、蒸留、濃縮、妨害成分の不活性化、試薬の添加がある。生理的流体の他に、診断アッセイと同様に環境アッセイ又は食物製品アッセイを行うために、水や食物製品などのような他の液体試料が使用できる。さらに、被測定物を含有する疑いのある固形材料も、液体媒体を形成するように又は被測定物を放出するように改変した後で検体試料として使用できる。)

(甲1B-オ)第10頁33行?第13頁23行
「 Figure 3 represents a further embodiment of the present invention. This embodiment has, in adherent relationship, a first or bottom wettable, but liquid- occlusive, layer (23), a second or middle liquid occlusive layer (24) parallel to and overlying the first layer (23), and a third or top liquid-occlusive, preferably non- wettable, layer (26) parallel to and overlying the second layer (24). The third layer (26) may be made from a clear material, such as a clear polycarbonate film, and therefore, the layer may also serve as a window, or viewing area, for observing the capillary track. The second layer (24) is interposed between, and is adhered to, the first layer (23) and third layer (26). For example, the layers are adhered by means of an adhesive on each side of the second layer (24) facing the topside of the first layer (23) and the underside of the third layer (26). Typically, the second layer (24) is die cut or preformed to have a slot positioned through its thickness, thereby defining the walls of the capillary track (18) in conjunction with the first (23) and third (26) layers. Thus, when the first, second and third layers are laminated together, a portion of each of the first and third layers serve as the floor and roof, respectively, of the capillary track with part of the walls of the slot of the second layer (24) defining the walls of the capillary track.
The device illustrated in Figure 3 may also include an optional well-defining means (2) in the third layer (26). The well-defining means is positioned such that the it defines an area for receiving the test sample, and it is in fluid flow communication with the capillary track. The bottom of the well may be formed from a corresponding circular portion of the first layer (23) .
In a preferred embodiment, the devices of the present invention include a test sample application pad in fluid flow contact with the capillary track. The application pad facilitates the application of test sample or reagents to the device and may optionally contain one or more reagents, such as the labeled binding member. The addition of test sample to the application pad serves to elute an assay reagent from the application pad, such that a test sample/reagent mixture emerges from the bottom surface of the application pad. The device may further include a well situated between the application pad and the capillary track inlet such that the test solution exiting the application pad substantially fills the well prior to passing into the capillary track. The application pad may be constructed from a single material or from a plurality of layers. The use of a multi-layered application pad permits the inclusion of multiple assay reagents, even when the reagents are not compatible for extended storage, thereby allowing multiple, separate reagent additions to the test sample.
The application pad material or a layer thereof may also be selected to provide a filtering function. In this case, the filter can function as a sample "prefilter" to remove particulate from the test sample so that particulate does not clog or alter flow in the capillary track or the porous support. For urine test samples the particulate can vary from patient to patient, with the typical range being from the submicron (<1 μ) to about 50μ. The total amount and percentage present within a particular range will also vary from patient to patient. When a prefilter is used in conjunction with the preferred porous support (5μ nitrocellulose) of the present invention it is of course necessary to select a prefilter which functions to remove particulates which are larger than 3 to 5μ to prevent clogging of the nitrocellulose membrane. Furthermore, more than one prefilter may be used to provide additional particulate retention capacity. A number of suitable materials are available commercially and the particulate cutoff can be varied depending on the prefilter used and as may be required for the assay format employed. For example, materials which provide acceptable prefiltering of urine in an assay for human chorionic gonadotropin (hCG), include: Lydall(R) Grade 254 (Lydall, Rochester, NH, USA); Nalgene(R) 281 -9000 (Nalge Inc., Rochester, NY, USA); F300-05 and F366-02 (Whatman, Inc., Maidstone, Kent, Great Britain); DD 2391 and DE 1381 (Hollingsworth & Vose, West Groton, MA, USA); Tetko 3 (Tetko, Elmsford, NY, USA); and Pall Loprodyne 5μ (Pall, East Hills, NY, USA)(当審注:「Lydall(R)」及び「Nalgene(R)」の「(R)」は、原文では、丸囲い付きのRである。以下同様。). The preferred prefilter in this assay format is Lydall(R) Grade 254 in combination with Nalgene(R) 281 -9000.
Figure 3a depicts an alternative embodiment wherein the device (10) includes a drop-forming means (50) which holds an application pad (55) that contains the labeled reagent. By contacting a test sample to the drop-forming means, the labeled reagent is released from the application pad and forms a drop on the bottom surface of the application pad. The drop-forming means is situated over the capillary track such that when the drop is released from the application pad it is delivered to the capillary track. This optional modification provides an added advantage. The addition of fluid or test sample to the reagent-containing application pad serves to deliver a bolus of the eluted reagent to the capillary track. Thus, the first fluid mixture entering the capillary track contains a large portion of the eluted reagent, and subsequent fluid contains less of the reagent. When the reagent is a labeled reagent, this means that the first fluid delivered to the reaction site on the porous support contains the largest portion of the labeled reagent. Subsequent fluid contains a lesser amount of assay reagent and thereby enhances the clearance of unreacted reagents from the reaction site. This clearance or washing aspect of the invention helps to stabilize the signal that is produced in the reaction site and decreases interference from the occurrence of background signal in the area surrounding the reaction site.
In yet a further embodiment of the invention, as depicted in Figure 3b, the device includes a drop-forming means (50) which holds a multi-layered application pad (56a-c). The multi-layered application pad is constructed from a plurality of porous layers to allow the inclusion of multiple assay reagents, to enhance sensitivity, to prevent erroneous signal development (false negatives or false positives), to enhance mixing of test sample and reagents within the drop-former, to allow increasd incubation time to promote reaction efficiency, to increase signal intensity, etc. The drop-former may be affixed adjacent the inlet port or, alternatively, may be configured to be removable which allows the device to be easily and rapidly reconfigured for differing assay requirements. As described above, a prefilter may be employed in the drop-former means to prevent clogging or altered flow in the capillary track or at the porous support or which may interfere with the accuracy of the assay results. As will be apparent to the skilled person, the number of layers and the composition of each layer can be adjusted to suit the differing reagent requirements of the assay to be performed or the condition of the sample to be analyzed. In a preferred arrangement, a labeled reagent may be incorporated into one of the pad materials such that the labeled reagent incubates with the sample prior to the test sample being delivered to the capillary track and thereby allowing for an intensified signal. Additional embodiments can, for example, utilize multiple layers to allow for cell separation from whole blood, to allow the use of serum, urine, or plasma samples, to detect more than one analyte in a test sample, or to allow the use of different labelled reagents for assay control purposes.
As shown in Figure 3b, the multi-layered application pad (56) includes an upper layer (56a), a middle layer (56b) and a bottom layer (56c). In a preferred embodiment, the upper layer is a prefilter constructed of glass fiber, most preferably Nalgene(R) 281 -9000, the middle layer contains the labeled reagent in a glass fiber pad, most preferably Lydall glass fiber, and the bottom layer is preferably composed of absorbent paper (cellulose).
The use of a drop-former as described above but as a separate, or free-standing component is also contemplated as being within the scope of the invention. In this aspect the drop-forming means can be placed adjacent to, for example over or above, the sample application area or zone of a teststrip device and the drop delivered to the strip. In this way the advantages of the drop-forming means, i.e. sample mixing, delivery of a bolus of test sample, signal stabilization, etc. can be utilized with existing solid phase formats, e.g., flow-through pads, dipsticks, teststrips, etc.」
(訳: 第3図は、本発明のさらに別の実施形態を示す。この実施形態は、第一の又は底部の濡れ性であるが液体閉塞性(liquid-occlusive)の層(23)と、第一層(23)と平行でその上にある第二の又は中間の液体閉塞性の層(24)と、第二層(24)と平行でその上にある第三の又は頂部の液体閉塞性の、好ましくは非濡れ性の層(26)とを接着した関係で有する。第三層(26)は透明なポリカーボネートフィルムなどの透明材料製とすることができ、したがってこの層は毛管トラックを観察するための窓又は観察領域として働く。第二層(24)は第一層(23)と第三層(26)の間に挟まれ、第一層及び第三層に付着される。例えば、第二層(24)の第一層(23)の上側に面した側と、第三層(26)の下側に面した側に接着剤を塗布して各層を接着することができる。一般に、第二層(24)は、その厚さを貫通する位置にスロットを有し、それによって第一層(23)及び第三層(26)と共に毛管トラック(18)の壁面を規定するようにダイカット又は予備成形される。したがって、第一層、第二層、第三層を一緒に積層したとき、第一層と第三層の一部分がそれぞれ毛管トラックの床及び屋根の働きをし、第二層(24)のスロットの壁面の一部が毛管トラックの壁面を規定する。
第3図に示した装置はまた、第三層(26)中に任意選択のウェル規定手段(2)を含むことができる。このウェル規定手段は、検体試料を受ける領域を規定し、毛管トラックと流体連絡する位置にある。ウェルの底部は、第一層(23)の対応する円形部分から形成することができる。
好ましい実施例では、本発明の装置は、毛管トラックと流体連絡する検体試料付与パッドを含む。この付与パッドにより、検体試料又は試薬を装置に付与しやすくなり、またこの付与パッドは任意選択で標識付き結合メンバなど一種又は複数の試薬を含むことができる。検体試料を付与パッドに添加すると、付与パッドからアッセイ試薬を溶出させて、付与パッドの底面から検体試料と試薬の混合物が出てくるようにする働きがある。この装置はさらに、付与パッドと毛管トラックの入口の間にあるウェルを含むことができ、したがって付与パッドから出たテスト溶液は毛管トラックに入る前にウェルを充たすようになる。この付与パッドは、単一材料で構成することも、複数の層から構成することもできる。多層付与パッドを使うと、試薬が長期保存に適しないときでも多数のアッセイ試薬を含めることが可能になり、したがって検体試料に多数の別々の試薬を添加することが可能になる。
付与パッド材料又はその層は、濾過機能を提供するものを選択することもできる。この場合、フィルタは、微粒子が毛管トラック又は多孔質支持体を詰まらせたりその中で流れを変えたりしないように、検体試料から微粒子を除去するためのサンプル「前置フィルタ」として機能することができる。尿検体試料の場合、微粒子は患者ごとに異なる可能性があり、典型的な範囲はサブミクロン(1ミクロン未満)から約50ミクロンである。合計量と特定の範囲に含まれるパーセントも患者ごとに異なる。本発明の好ましい多孔質支持体(5ミクロンのニトロセルロース)と共に前置フィルタを使用するときは、ニトロセルロースメンブレンが詰まるのを防ぐために3?5ミクロンよりも大きな粒子を除去する働きをする前置フィルタを選択することがもちろん必要である。さらに、複数の前置フィルタを使用して、追加の微粒子保持能力を提供することもできる。適切な材料がいくつか市販されており、使用する前置フィルタに応じて、また使用するアッセイフォーマットに必要なように、微粒子のカットオフを変えることができる。例えば、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)アッセイにおける尿の許容できる予備濾過をもたらす材料には、Lydall(R) グレード254(米国ニューハンプシャー州ロチェスターのLydall)、Nalgene(R) 281 -9000(米国ニューヨーク州ロチェスターのNalge Inc.)、F300-05及びF366-02(英国ケント州メイドストーンのWhatman, Inc.)、DD 2391及びDE 1381(米国マサチュセッツ州ウェストグロトンのHollingsworth & Vose)、Tetko 3 (米国ニューヨーク州エルムスフォードのTetko)、及びPall Loprodyne 5μ(米国ニューヨーク州イーストヒルズのPall)がある。このアッセイフォーマットの好ましい前置フィルタは、Lydall(R) グレード254とNalgene(R) 281 -9000の組合せである。
第3a図には、装置(10)が標識付き試薬を含有する付与パッド(55)を保持する液滴形成手段(50)を含む別の実施形態を示す。検体試料を液滴形成手段に接触させることにより、標識付き試薬が付与パッドから離れ、付与パッドの底面上に液滴を形成する。液滴形成手段は、毛管トラックの上に位置し、したがって、液滴が付与パッドから解放されると毛管トラックに配給されるようになっている。この任意選択の修正により追加の利点が得られる。試薬を含有する付与パッドに流体又は検体試料を添加すると、溶出した試薬の塊(bolus)を毛管トラックに配給する働きをする。すなわち、毛管トラックに入る最初の流体混合物は溶出した試薬の大きな部分を含み、その後の流体が含有する試薬はそれより少ない。試薬が標識付き試薬のときは、多孔質支持体上の反応部位に配給される最初の流体に標識付き試薬の大部分が含まれることになる。それ以降の流体はより少量のアッセイ試薬しか含まず、したがって反応部位からの未反応試薬の除去が増進される。本発明のこの除去又は洗浄の態様は、反応部位で発生した信号を安定化し、反応部位の周囲の領域での背景信号の発生による妨害を軽減する助けとなる。
第3b図に示す本発明の更に別の実施態様では、装置は、多層付与パッド(56a-c)を保持する液滴形成手段(50)を含む。この多層付与パッドは、複数の多孔層から構築され、多数のアッセイ試薬を包含でき、感度を高め、エラー信号の発生(擬陰性又は擬陽性)を防止し、液滴形成器内の検体試料と試薬の混合を増進し、インキュベーション時間を増して反応効率を高めることができ、信号強度を増大させたりすることができる。液滴形成器は入口ポートに隣接してはり付けてもよく、あるいは異なるアッセイ要件に合わせて装置を容易にかつ迅速に再構成できるように取外し可能な構成としてもよい。前述のように、アッセイ結果の正確さを妨げる可能性のある、毛管トラック内又は多孔質支持体における詰まりや流れの変化を防止するために、液滴形成手段内に前置フィルタを使用することができる。当業者には明らかなように、層の数と各層の組成は、実施するアッセイの異なる試薬要件や分析しようとするサンプルの装置に合わせて調節することができる。好ましい構成では、標識付き試薬を一つのパッド材料中に組み込んで、検体試料を毛管トラックに供給する前に標識付き試薬をサンプルと共にインキュベートし、これによって信号を強化することができる。追加の実施態様は、例えば、多数の層を利用して全血からの細胞分離を可能にし、血清、尿又は血漿サンプルを使用できるようにし、検体試料中の複数の被測定物を検出し、あるいはアッセイ管理の目的で異なる標識付き試薬の使用を可能にすることができる。
第3b図に示すように、多層付与パッド(56)は、上層(56a)、中間層(56b)、底層(56c)を含む。好ましい実施形態では、上層はガラス繊維製の、最も好ましくはNalgene(R) 281- 9000の前置フィルタであり、中間層は標識付き試薬を含むガラス繊維パッド、最も好ましくはLydallガラス繊維であり、底層は好ましくは吸取紙(セルロース)から構成される。
前述のような液滴形成手段を別の又は独立の部品として使用することも、本発明の範囲内に含まれると考えられる。この態様では、液滴形成手段をテストストリップ装置のサンプル付与区域又はゾーンに隣接して、例えばその上を覆って又は上方に置き、液滴をストリップに引き渡すことができる。このようにして、液滴形成手段の利点、すなわちサンプルの混合、検体試料塊(bolus)の引き渡し、信号の安定化などを、既存の固相フォーマット、例えばフロースルーパッド、ディップスティック、テストストリップなどで利用することができる。)

(甲1B-カ)第16頁24行?第18頁3行
「 In yet further embodiments, as depicted in Figures 5 and 5a, the second layer (25b) is made of a porous or liquid absorbent material which is selectively impregnated through its thickness with a substance, such as a water-repellent ink, to form an impregnated region (30) and a non-impregnated region (18). The core layer of porous material (25b) defines the thickness of the gap between the top (26) and bottom (23) laminate layers, and the impregnated region of the porous material defines the side walls of a porous capillary track (18). Thus, the non-impregnated region remains liquid absorbent, and the impregnated region is made liquid- occlusive, such that the non-impregnated region defines a solid (porous) capillary track for the passage of fluid via capillary action. Thus, the non-impregnated region, with inlet and outlet portions, serves as the means for directing the test solution through the device to the overlying porous material.
The porous second or core layer (25b) can be constructed using any suitable porous medium which typically has characteristics similar to the porous support materials. An exemplary porous medium is conventional filter paper (Whatman, UK; or Schleicher & Schuell 410, Keene, NH). The porous medium is generally printed with a pressure sensitive adhesive or ink by means of equipment and printing techniques well-known in the art. The printed pattern defines the capillary track because the pressure sensitive adhesive or ink inhibits fluid-flow through the printed portions of the porous medium. As shown in Figure 5, the use of a printable, liquid-occlusive substance lacking adhesive properties requires the use of layers of a suitable adhesive material (28) on the surfaces between the porous layer (25b) and the base and back laminates (23) and (26), respectively. As shown in Figure 5a, the use of a pressure sensitive adhesive to print the porous medium has the added advantage of providing the adhesiveness for applying the base (23) or back laminate (26) layers directly to the porous material. The conventional method of device assembly involved cutting strips or pieces of the porous media and sandwiching that media between the back and base layers. With the present method, the roll of printed porous material is simply incorporated into the web process, thereby eliminating costly and complicated pick and place operations. Printable inks may be formulated to contain an assay reagent which is released from the printed layer as the test sample passes over the printed material. The filtering capacity of the porous medium in the capillary track may advantageously be used in the assay protocol. Moreover, different portions of the porous medium in the capillary track may be treated to modify the filter or transport characteristics of the medium. In addition, different portions of the porous medium in the capillary track may be treated to contain one or more assay reagent zones from which a reagent is released upon contacting the transported fluid.
The use of a printable medium to define the capillary track also provides for limitless design opportunities in terms of the geometric shape and variable thicknesses of the capillary track which characteristics may be used to control the rate at which the assay is performed. In addition, it simplifies device manufacture by eliminating the need for additional layer materials and material handling, while enhancing batch manufacturing procedures. The application of pressure sensitive adhesives and ink materials can be accomplished with any suitable method, including but not limited to, rotary or flatbed screen printing, flexographic printing, lithographic printing, letterpress printing, rotogravure printing, or ink jet printing. The devices may be printed in either a batch mode (one sheet at a time on either flexible or rigid film material) or in a roll with web processing methods (on primarily flexible film material). The printing processes can be accomplished with standard equipment. Exemplary processes are described in "The Printing Ink Manual" by R.H. Leach; "Handbook of Thick Film Technology" by P.J. Holmes and R. G. Loasby; or "Handbook of Thick Film Microcircuits" by Charles A Harper. Set up of the printer is within standard parameters and processes known in the art, or as described in the relevant instruction manual or in the above-mentioned texts. Typical ink properties are also described, and for purposes of the present invention, the characteristics of suitable inks are similar to the characteristics of the printable pressure sensitive adhesives.」
(訳: 第5図及び第5a図に示すさらに別の実施形態では、第二層(25b)は多孔質材料又は液体吸収性材料からなり、その厚みを通して、撥水性インクなどの特質で選択的に含浸させて、含浸領域(30)と非含浸領域(18)を形成する。多孔質材料(25b)のコア層が、上部ラミネート層(26)と底部ラミネート層(23)の間のギャップの厚さを規定し、多孔質材料の含浸領域が多孔質毛管トラック(18)の側壁を規定する。したがって、非含浸領域は液体吸収性のままであり、含浸領域は液体閉塞性となり、したがって非含浸領域が、毛管作用によって液体が通過するための中実(多孔質)毛管トラックを規定する。したがって、非含浸領域は入口部分及び出口部分と共に、テスト溶液を装置を通って上にある多孔質材料に送り込む手段として働く。
多孔質の第二層又はコア層(25b)は、一般に多孔質支持材料に類似の特徴を有する、任意の適当な多孔質媒体を用いて作成することができる。代表的な多孔質媒体は、通常の濾紙(英国Whatman 又は米国ニューハンプシャー州キーンのSchleicher & Schuell 41 0)である。この多孔質媒体は一般に当技術分野で周知の装置及び印刷技術を用いて感圧性接着剤又はインクで印刷される。感圧性接着剤又はインクは多孔質媒体の印刷済み部分を通る流体の流れを阻止するので、印刷されたパターンが毛管トラックを規定する。図5に示すように、接着特性をもたない印刷可能な液体閉塞性物質を使用すると、多孔層(25b)とベースラミネート層(23)及びバックラミネート層(26)の間の表面上に適当な接着材料の層(28)を使用することが必要になる。第5a図に示すように、感圧性接着剤を用いて多孔質媒体を印刷すると、ベースラミネート層(23)又はバックラミネート層(26)を多孔質材料に直接付加するための接着力が得られるという追加の利点がある。従来の装置組立て方法は、多孔質媒体のストリップ又は部分を切断し、その媒体をバック層とベース層の間に挟むものであった。本発明の方法では、印刷済みの多孔質材料のロールを単にウェブ工程に組み込み、したがってコストがかかり複雑なピック操作と配置操作が不要になる。印刷可能なインクは、検体試料が印刷済み材料上を通過するとき印刷層から放出されるアッセイ試薬を含むように処方される。毛管トラック中の多孔質媒体の濾過能力は検定プロトコルで有利に利用できる。その上、毛管トラック中の多孔質媒体の異なる部分を処理して媒体の濾過特性又は移送特性を改変することができる。さらに、毛管トラック中の多孔質媒体の異なる部分を処理して、一種又は複数の設定試薬ゾーンを含むようにし、移送された液体と接触したとき、そこから試薬が放出されるようにすることもできる。
また印刷可能な媒体を用いて毛管トラックを規定すると、毛管トラックの幾何形状及び可変厚さの点で無制限の設計機会が得られ、これらの特徴を利用してアッセイの実施速度を制御することができる。さらに、これによって、追加の層材料と材料操作が不要になって装置の製造が簡単になり、しかもバッチ製造手段が改善される。感圧性接着剤及びインクの塗布は、回転式スクリーン印刷、フラットベッドスクリーン印刷、フレキソグラフィ印刷、リソグラフィ印刷、活版印刷、輪転グラビア印刷、インクジェット印刷を含み、ただしそれだけには限らず、任意の適当な方法で実施できる。装置にはバッチ方式で(可撓性の又は剛性のフィルム材料上に一時に一枚ずつ)又はロールとしてウェブ加工法で(主として可撓性フィルム材料上に)印刷することができる。印刷工程は標準の装置を用いて実施できる。代表的な工程は、R.H.Leach著「The Printing Ink Manual」、P.J.HolmesとR.G.Loasbyの共著「Handbook of Thick Film Technology」、Charles A.Harper著「Handbook of Thick Film Micr ocircuits」に記載されている。プリンタの設定は当技術分野で周知の標準のパラメータ及びプロセスの範囲内であり、あるいは当該の取扱説明書又は上記テキストに記載されている通りにする。典型的なインクの特性も記述されているが、本発明においては、適当なインクの特徴は印刷可能感圧性接着剤の特徴と同様である。)

(甲1B-キ)第22頁8行?第23頁39行
「 EXAMPLE 1
A disposable device, as depicted in Figure 3, was constructed from a wettable base layer (23) (7 mil, hydromer-treated polyester; Film Specialties, Inc., Whitehouse, NJ), a die-cut adhesive core layer (24) (3 mil, double sided adhesive coated polyester film; Adhesives Research, Glen Rock, PA), a laser-machined, non- wettable, adhesive, laminate layer (26) (3 mil, single sided adhesive coated polyester film, Adhesive Research) and a microporous nitrocellulose pad (20) (5 micron pore size; Schleicher & Schuell, Keene, NH). The assembly of the wettable base, die cut core layer and laser-machined laminate form a subsurface capillary track with an inlet (2) at one end and a small outlet (16) at the other. The nitrocellulose membrane is laminated over the outlet to allow sample to dispense from the capillary track (18) into the membrane center thus avoiding linear chromatography from the membrane edge.
EXAMPLE 2
Human Chorionic Gonadotropin (hCG) Assay
A disposable device was constructed substantially in accordance with the description of Example 1. Anti-beta hCG antibody was applied to the center of the nitrocellulose pad in a "+" pattern with the two bars intersecting over the outlet in the laser-machined laminate. One of the bars included hCG to serve as a positive control for hCG-negative samples. Anti-alpha hCG antibody, and protein stabilizers, were absorbed on selenium particles (180 nM) to provide the labeled reagent for this sandwich assay.
Dry selenium conjugate pads were prepared by dipping glass fiber strips (Lydall, Inc., Rochester, NH) into a selenium conjugate solution and then passing the material through a drying tunnel. Circles (approximately 10.6 mm (0.420 inches) in diameter) were punched from the material and held in a molded drop forming means as shown in Figure 3a.
An hCG test sample (250 to 400 microliters) containing buffer or urine was applied to the assembly. A bolus of selenium conjugate was delivered to the track if the drop forming means was held above the track to allow a hanging drop to form. The drop fell onto the capillary inlet, filled the capillary track and was transported to the nitrocellulose pad and through the capillary outlet directly beneath the center of the immobilized reagent "+". As the solution was radially transported in 360 degrees through and from the immobilized reagent site, a visible signal was formed at the reaction site in the form of a "+" if hCG was present in the sample, and in the form of a "-" if no hCG was present.
Strep A Assay
A disposable device was constructed substantially in accordance with the description of Example 1 . Anti-Strep A antibody was applied to the center of the nitrocellulose pad in a "+" pattern with the two bars intersecting over the uptake hole in the laser-machined laminate. One of the bars included a protein containing the immunodeterminate recognized by the anti-Strep A antibody and served as a positive control for Strep A-negative samples. Anti-Strep A polyclonal antibodies, with protein stabilizers, were absorbed on selenium particles (180 nm) which served as the labeled reagent for this sandwich assay.
Dry selenium conjugate pads and drop forming means were constructed as described above. Upon application of the test sample, a signal developed at the reaction site in the form of a "+" if Strep A immunodeterminate was present in the sample, and in the form of a "-" if no Strep A immunodeterminate was present.
Results
Upon applying a test sample to the devices of the present invention, the average time for the sample to contact the nitrocellulose pad was five to ten seconds. Depending on the test sample hCG concentration, signal could be seen as a "+" in 30- 40 seconds (250 mlU/ml) or between one and three minutes for test sample concentrations of 5-25 mlU/ml. Similar results were found for high and low levels of Strep A immunodeterminate in a test sample. It will be appreciated by those skilled-in-the-art that these reaction times may be further modified through reagent optimization. A novel and unexpected aspect of this technology is that the labeled reagent passing from the conjugate pad is concentrated in the first drop dispensed from the drop forming means into the capillary track. Typically, over 50% of the conjugate is concentrated in the first formed drop. Preferably, over 70% of the conjugate is concentrated in the first formed drop. In the most preferred form, over 90% of the conjugate is concentrated in the first formed drop. The immobilized reagent is then subjected to a bolus delivery of labeled reagent with the test sample, and as subsequent test sample passes through the test device unreacted labeled reagent is cleared from the reaction zone. The resulting signal was thus enhanced as the background field of the immobilized reaction site changed from pink to white and the immobilized signal remained red.」
(訳: 実施例1
第3図に示したような、濡れ性ベース層23(7ミル、ハイドロマー処理ポリエステル;ニュージャージー州ホワイトハウスのFilm Specialties,Inc.)、ダイカット接着剤コア層24(3ミル、両面を接着剤でコートしたポリエステルフィルム;ペンシルバニア州グレン・ロックのAdhesives Research)、レーザ切削した非濡れ性接着剤ラミネート層26(3ミル、片面を接着剤でコートしたポリエステルフィルム;Adhesives Research)、及びマイクロポーラスニトロセルロースパッド20(孔径5ミクロン;ニューハンプシャー州キーンのSchleicher & Schuell)から使い捨て装置を作成した。濡れ性ベース、ダイカットコア層及びレーザ切削の積層体アセンブリが、一端に入口2を有し、他端に小さな出口16を有する表面下毛管トラックを形成する。出口を覆ってニトロセルロースフィルムを貼り付けて、サンプルが毛管トラック18からメンブレンの中心に供給されるようにし、それによってメンブレン縁部からの直線形クロマトグラフィが起こらないようにする。
実施例2
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)アッセイ
実施例1の説明にほぼ従って使い捨て装置を作成した。ニトロセルロースパッドの中央に抗ベータhCG抗体を、レーザ切削積層体中の出口の上で二本のバーが交差する「+」パターンで付与した。一本のバーには、hCG陰性サンプル用の陽性対照としてhCGを含めた。抗アルファhCG抗体と蛋白安定化剤をセレン粒子(180nM)上に吸収させて、このサンドイッチアッセイ用の標識付き試薬とした。
ガラス繊維ストリップ(ニューハンプシャー州ロチェスターのLydall,Inc.)をセレン抱合体溶液に浸漬し、次いでこの材料を乾燥トンネル中を通過させて、乾燥セレン抱合体パッドを調製した。材料から円形(直径約10.6mm(0.420インチ))をくり抜き、第3a図に示したようなモールドされた液滴形成手段中にこれを保持した。
バッファ又は尿を含むhCG検体試料(250?400マイクロリットル)をアセンブリに付与した。垂れ下がった液滴が形成できるように液滴形成手段がトラックの上方に保持された場合には、セレン抱合体の塊(bolus)がトラックに供給された。液滴は毛管入口上に落下し、毛管トラックを充填し、ニトロセルロースパッドに運ばれ、さらに毛管出口を通って固定された試薬「+」の中心の真下に直接運ばれた。溶液は固定試薬部位を通ってそこから360度放射状に運ばれたので、サンプル中にhCGが存在する場合には「+」、hCGが存在しない場合には「-」の形の可視信号が反応部位に形成された。
StrepAアッセイ
実施例1の説明にほぼ従って使い捨て装置を作成した。ニトロセルロースパッドの中央に抗StrepA抗体を、レーザ切削積層体の吸収孔の上で二本のバーが交差する「+」パターンで塗布した。一本のバーには、StrepA陰性サンプル用の陽性対照として、抗StrepA抗体によって認識される免疫決定基を含有する蛋白を含めた。抗StrepAポリクロナール抗体を蛋白安定化剤と共にセレン粒子(180nm)上に吸収させ、それをこのサンドイッチアッセイ用の標識付き試薬として使用した。
乾燥セレン抱合体パッドと液滴形成手段を上記のようにして作成した。検体試料を付与すると、StrepA免疫決定基がサンプル中に存在する場合は「+」、StrepA免疫決定基が存在しない場合は「-」の形の信号が反応部位に発生した。
結果
本発明の装置に検体試料を付与したとき、サンプルがニトロセルロースパッドに接触する平均時間は5?10秒であった。検体試料のhCG濃度に応じて、30?40秒以内(250mlU/ml)に、又は検体試料濃度が5?25mlU/mlの場合は1?3分の間に、「+」の信号を見ることができた。検体試料中のStrepA免疫決定基が高レベル及び低レベルの場合にも同様の結果が見られた。これらの反応時間は試薬の最適化によってさらに改変できることが当業者には理解されよう。この技術の思いがけない新規な態様は、抱合体パッドから移った標識付き試薬が、液滴形成手段から毛管トラック中に供給される最初の液滴中で高濃度になることである。典型的な場合、抱合体の50%以上が最初に形成される液滴中に集まる。抱合体の70%以上が最初に形成される液滴中に集まることが好ましい。最も好ましい形では、抱合体の90%以上が最初に形成される液滴中に集まる。次いで固定された試薬は、検体試料と共に塊(bolus)として供給される標識付き試薬にさらされ、以後の検体試料がテスト装置中を通過するとき、未反応の標識付き試薬は反応ゾーンから除去される。したがって、固定された反応部位の背景フィールドがピンクから白に変わり、固定された信号は赤のままとなるので、得られる信号は強化された。)

(甲1B-ク)Figure 3




(甲1B-ケ)Figure 3a




(甲1B-コ)Figure 3b




(甲1B-サ)Figure 5




(甲1B-シ)Figure 5a




(2)甲1Bに記載された発明

ア (甲1B-オ)の「前述のような液滴形成手段を別の又は独立の部品として使用することも、本発明の範囲内に含まれると考えられる。この態様では、液滴形成手段をテストストリップ装置のサンプル付与区域又はゾーンに隣接して、例えばその上を覆って又は上方に置き、液滴をストリップに引き渡すことができる。このようにして、液滴形成手段の利点、すなわちサンプルの混合、検体試料塊(bolus)の引き渡し、信号の安定化などを、既存の固相フォーマット、例えばフロースルーパッド、ディップスティック、テストストリップなどで利用することができる。」との記載から、甲1には、液滴形成手段を既存のテストストリップのサンプル付与ゾーンに隣接してその上方に置き、検体試料を液滴形成手段に接触させ、液滴形成手段から液滴を既存のテストストリップに引き渡すようにして使用するアッセイの態様が記載されていると認められる。

イ そして、既存のテストストリップには、(甲1B-イ)に「特異的結合アッセイで試薬を含浸させたテストストリップを使用することも周知である。この手順では、テストストリップの一部分に検体試料を付与し、ストリップ中を移動又は浸透(wick)させる。したがって、検出又は測定すべき被測定物は、場合によっては溶出溶媒を使って、ストリップ中を通過し又はストリップに沿って移動する。この溶出溶媒は、検体試料自体のことも別に加えた溶液のこともある。被測定物は、被測定物又は標識付き試薬に対する相補的結合メンバが固定されている、テストストリップ上の捕捉ゾーン又は検出ゾーンまで移動する。被測定物が検出ゾーンで固定される程度は、標識付き試薬を用いて決定できる。この標識付き試薬は、やはりテストストリップに含めることもでき、別に付与することもできる。」と記載されている周知のテストストリップが含まれると認められる。

ウ また、(甲1B-オ)に「本発明の好ましい多孔質支持体(5ミクロンのニトロセルロース)と共に前置フィルタを使用するときは、ニトロセルロースメンブレンが詰まるのを防ぐために3?5ミクロンよりも大きな粒子を除去する働きをする前置フィルタを選択することがもちろん必要である。」と記載されているところ、フィルタの孔径又は保留粒子径を除去対象の粒子の粒子径以下に設定することは技術常識であるから、多孔質支持体が詰まるのを防ぐために使用する前置フィルタの孔径又は保留粒子径は、多孔質支持体の孔径以下である必要があるといえる。

エ 上記アないしウを踏まえると、甲1Bには、

「 液滴形成手段をテストストリップのサンプル付与ゾーンに隣接してその上方に置き、検体試料を液滴形成手段に接触させ、液滴形成手段から液滴をテストストリップに引き渡すアッセイ方法であって、
テストストリップは、被測定物に対する相補的結合メンバが固定されている捕捉ゾーン又は検出ゾーンを有し、テストストリップの一部分に付与された検体試料が、ストリップ中を移動又は浸透(wick)してストリップに沿って捕捉ゾーン又は検出ゾーンまで移動するものであり、
液滴形成手段は、上層(56a)、中間層(56b)、底層(56c)を含む多層付与パッド(56a-c)を保持し、上層(56a)はガラス繊維製の前置フィルタであり、中間層(56b)は標識付き試薬を含むガラス繊維パッドであり、底層(56c)は吸取紙(セルロース)から構成され、
上層(56a)のガラス繊維製の前置フィルタの保留粒子径は、大きな粒子を除去する働きをしてテストストリップの材料が詰まるのを防ぐために、当該材料の孔径又は保留粒子径以下であり、
多層付与パッド(56a-c)は、エラー信号の発生(擬陰性又は擬陽性)を防止することができる、
アッセイ方法。」

の発明(以下「甲1B-1発明」という。)、及び、

「 テストストリップに検体試料を接触させて行うアッセイ方法に使用することができる液滴形成手段であって、
液滴形成手段は、上層(56a)、中間層(56b)、底層(56c)を含む多層付与パッド(56a-c)を保持し、上層(56a)はガラス繊維製の前置フィルタであり、中間層(56b)は標識付き試薬を含むガラス繊維パッドであり、底層(56c)は吸取紙(セルロース)から構成され、
テストストリップとして、被測定物に対する相補的結合メンバが固定されている捕捉ゾーン又は検出ゾーンを有し、テストストリップの一部分に付与された検体試料が、ストリップ中を移動又は浸透(wick)してストリップに沿って捕捉ゾーン又は検出ゾーンまで移動するものを使用する場合、テストストリップの材料の孔径又は保留粒子径を、上層(56a)のガラス繊維製の前置フィルタの保留粒子径以上とすることにより、上層(56a)のガラス繊維製の前置フィルタが大きな粒子を除去する働きをしてテストストリップの材料が詰まるのを防ぐことができ、多層付与パッド(56a-c)がエラー信号の発生(擬陰性又は擬陽性)を防止することができる、
液滴形成手段。」

の発明(以下「甲1B-2発明」という。)が記載されているものと認められる。

オ (甲1B-キ)の「StrepAアッセイ」では、「実施例1の説明にほぼ従って使い捨て装置を作成した」と記載されていることから、実施例1と同じ材料を用いて使い捨て装置を作成したものと認められる。ここで、「レーザ切削積層体の吸収孔」は、「積層体アセンブリ」の「出口16」に相当するものと解される。

カ また、「乾燥セレン抱合体パッドと液滴形成手段を上記のようにして作成した」と記載されていることから、抗StrepAポリクロナール抗体を用いて「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)アッセイ」の場合と同様に乾燥セレン抱合体パッドと液滴形成手段を作成したものと認められる。

キ さらに、「検体試料を付与すると、StrepA免疫決定基がサンプル中に存在する場合は「+」、StrepA免疫決定基が存在しない場合は「-」の形の信号が反応部位に発生した」と記載されていることから、ここで使用したのと同じ使い捨て装置を用いて検体試料中にStrepA免疫決定基が存在するか否かを判定するStrepAアッセイを行うことができると解される。

ク 上記オないしキを踏まえると、甲1Bには、

「 使い捨て装置を用いて検体試料中にStrepA免疫決定基が存在するか否かを判定するStrepAアッセイであって、
用いる使い捨て装置は、
濡れ性ベース層23(7ミル、ハイドロマー処理ポリエステル;ニュージャージー州ホワイトハウスのFilm Specialties,Inc.)、ダイカット接着剤コア層24(3ミル、両面を接着剤でコートしたポリエステルフィルム;ペンシルバニア州グレン・ロックのAdhesives Research)、レーザ切削した非濡れ性接着剤ラミネート層26(3ミル、片面を接着剤でコートしたポリエステルフィルム;Adhesives Research)からなる積層体アセンブリであって、ダイカット接着剤コア層24は、その厚さを貫通する位置にスロットを有し、それによって濡れ性ベース層23及び非濡れ性接着剤ラミネート層26と共に毛管トラック(18)の壁面を規定するようにダイカットされており、一端に入口2を有し、他端に小さな出口16を有する表面下毛管トラックを形成する、積層体アセンブリと、
出口16を覆って貼り付けたマイクロポーラスニトロセルロースパッド20(孔径5ミクロン;ニューハンプシャー州キーンのSchleicher & Schuell)であって、中央に抗StrepA抗体を、出口16の上で二本のバーが交差する「+」パターンで塗布してあり、一本のバーには、StrepA陰性サンプル用の陽性対照として、抗StrepA抗体によって認識される免疫決定基を含有する蛋白を含めてある、マイクロポーラスニトロセルロースパッド20と、
乾燥セレン抱合体パッドを保持し、モールドされた液滴形成手段であって、乾燥セレン抱合体パッドは、ガラス繊維ストリップ(ニューハンプシャー州ロチェスターのLydall,Inc.)を抗StrepAポリクロナール抗体を蛋白安定化剤と共にセレン粒子(180nm)上に吸収させたセレン抱合体溶液に浸漬し、次いでこの材料を乾燥トンネル中を通過させて調製した乾燥セレン抱合体パッドから円形(直径約10.6mm(0.420インチ))にくり抜いたものである、液滴形成手段と、
を備えたものであり、
検体試料を液滴形成手段に付与すると、液滴形成手段から液滴を積層体アセンブリの入口2に引き渡す、StrepAアッセイ。」

の発明(以下「甲1B-3発明」という。)、及び、

「 StrepAアッセイに用いる使い捨て装置であって、
濡れ性ベース層23(7ミル、ハイドロマー処理ポリエステル;ニュージャージー州ホワイトハウスのFilm Specialties,Inc.)、ダイカット接着剤コア層24(3ミル、両面を接着剤でコートしたポリエステルフィルム;ペンシルバニア州グレン・ロックのAdhesives Research)、レーザ切削した非濡れ性接着剤ラミネート層26(3ミル、片面を接着剤でコートしたポリエステルフィルム;Adhesives Research)からなる積層体アセンブリであって、ダイカット接着剤コア層24は、その厚さを貫通する位置にスロットを有し、それによって濡れ性ベース層23及び非濡れ性接着剤ラミネート層26と共に毛管トラック(18)の壁面を規定するようにダイカットされており、一端に入口2を有し、他端に小さな出口16を有する表面下毛管トラックを形成する、積層体アセンブリと、
出口16を覆って貼り付けたマイクロポーラスニトロセルロースパッド20(孔径5ミクロン;ニューハンプシャー州キーンのSchleicher & Schuell)であって、中央に抗StrepA抗体を、出口16の上で二本のバーが交差する「+」パターンで塗布してあり、一本のバーには、StrepA陰性サンプル用の陽性対照として、抗StrepA抗体によって認識される免疫決定基を含有する蛋白を含めてある、マイクロポーラスニトロセルロースパッド20と、
乾燥セレン抱合体パッドを保持し、モールドされた液滴形成手段であって、乾燥セレン抱合体パッドは、ガラス繊維ストリップ(ニューハンプシャー州ロチェスターのLydall,Inc.)を抗StrepAポリクロナール抗体を蛋白安定化剤と共にセレン粒子(180nm)上に吸収させたセレン抱合体溶液に浸漬し、次いでこの材料を乾燥トンネル中を通過させて調製した乾燥セレン抱合体パッドから円形(直径約10.6mm(0.420インチ))にくり抜いたものである、液滴形成手段と、
を備え、
検体試料中にStrepA免疫決定基が存在するか否かを判定するStrepAアッセイに用いる使い捨て装置。」

の発明(以下「甲1B-4発明」という。)が記載されているものと認められる。

3 甲1Aについて

甲1Aは、国際特許出願の国際公開である甲1Bに対応する特許出願の公表公報であり、その記載内容は、甲1Bと同様である。

4 甲2A及び甲9Bについて

甲2A及び甲9Bは感染症の検査法に関する同じ文献であり、呼吸器感染症の検体として主に咽頭拭い液などが用いられること、streptococcusが咽頭などに存在することが記載されている。

5 甲3A及び甲13Bについて

甲3A及び甲13Bは、ThermoFisher SCIENTIFIC社のウェブサイトにおける「Nalgene^(TM) Glass Prefilters」の項であり、部品番号(カタログ番号)の欄の1つに「DS0281-9000」との記載があり、FAQの欄にNalgeneグラスファイバープレフィルタの有効径が1.0?1.3μmであることが記載されている。

6 甲4Aについて

甲4Aは、イムノクロマトグラフィーに関する文献であり、典型的なイムノクロマトグラフィーテストストリップとして、ニトロセルロースメンブレンを使用したものが記載され、ニトロセルロースメンブレンを使用した尿中hCG試験において、孔径3?10μmのシートから作成することが記載されている。

7 甲5Aについて

甲5Aは、フロースルータイプの生物学的特異反応測定に関する文献であり、保留粒子径が0.2?0.4μmのデプスフィルターと1μm以上のデプスフィルターを組み合わせた前処理フィルターを用いて被検試料を前処理することが記載されている。

8 甲6A及び甲11Bについて

甲6A及び甲11Bはインフルエンザウイルス抗原検出用キットに関する同じ文献であり、検体として咽頭拭い液、鼻腔拭い液又は鼻腔吸引液を用いること、試料濾過フィルターを使用しない場合は偽陽性の原因となることが記載されている。

9 甲7A及び甲12Bについて

甲6A及び甲11Bはインフルエンザウイルス抗原検出用キットに関する同じ文献であり、検体として咽頭拭い液、鼻腔拭い液又は鼻腔吸引液を用いること、試料濾過フィルターを使用することが記載されている。

10 甲8Aについて

甲8Aは、唾液サンプル中の被検体の検出に関する文献であり、特異的な結合物質を結合した固体支持体について、吸収パッドによって裏打ちされたニトロセルロース膜からなる固体支持体が特に有用であり、ニトロセルロース膜は、約0.5?8μm、好ましくは約1?2μmの孔径を有することが記載されている。

11 甲2Bの1及び甲2Bの2について

甲2Bの1及び甲2Bの2は、クロマトグラフィー検査デバイスに関する文献であり、テストストリップデバイスの左端に付与された液体試料が、クロマトグラフィーストリップ基体中を右端に向かって流れていくことが記載されている。

12 甲3Bについて

甲3Bは、クロマトグラフィー検定装置に関する文献であり、クロマトグラフィーシステムは、溶剤が薄い平らな吸収剤媒体を横断して移動する薄層システムであること、クロマトグラフィー媒体である平坦な長方形のストリップの一端にサンプルが適用され、他端に向かってサンプルが流れることが記載されている。

13 甲4Bについて

甲4Bは、イムノクロマトグラフィーアッセイ装置に関する文献であり、ラテラルフローアッセイと呼ばれるテストストリップを有するクロマトグラフィーアッセイの改良であること、既存のラテラルフロー技術に共通する特徴として、テストストリップ上のラインを光学的に読み取ることが記載されている。

14 甲5Bについて

甲5Bは、イムノクロマトグラフィー装置に関する文献であり、生体試料中の被測定物を検出する方法として、ラテラルフロー式とフロースルー式があること、テストストリップ上の個別のサイトなどのラテラルフロー多孔質材料の個別の区域に指示薬を有するワンステップのイムノクロマトグラフィー装置が記載されている。

15 甲6Bについて

甲6Bは、イムノアッセイデバイス及び方法に関する文献であり、イムノアッセイには、ラテラルフロー式とフロースルー式があることが記載されている。

16 甲7Bについて

甲7Bは、ポイントオブケアに用いる簡易デバイスに関する文献であり、測定デバイスの分類としてフロースルー型と水平展開型デバイスが記載されている。

17 甲8Bの1及び甲8Bの2について

甲8Bの1は、国立感染症研究所のウェブサイトで公開されているA群溶血レンサ球菌検査マニュアルであり、検体として最も多いのは咽頭拭い液であることが記載されている。
甲8Bの2は、国立感染症研究所のウェブサイトの病原体検出マニュアルに関するページであり、5類感染症の項に「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎2013年8月版」との記載がある。

18 甲10Bについて

甲10Bは、イムノクロマトグラフィー方法によるA,B型インフルエンザウイルス迅速診断キットに関する文献であり、「Quick Vue Influenza test」では検体として鼻腔拭い液、鼻腔洗浄液及び鼻腔吸引液が指定されているが、咽頭拭い液でも十分な感度・特異性を示したことが記載されている。


第5 当審の判断

1 取消理由通知に記載した取消理由について

(1)特許法第36条第6項第2号について

ア 当審では、請求項1の「前記濾過フィルターは検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐことを特徴とする」という記載が、以下の(ア)ないし(ウ)のいずれの事項又はその他の事項を特定するのかが判然としない旨の取消理由を通知した。
(ア)「検体試料を濾過フィルターを用いて濾過した後に前記メンブレン上に滴下」する際に用いる「濾過フィルター」が、「検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐこと」ができる性能を有するものであること。
(イ)「検体試料を濾過フィルターを用いて濾過した後に前記メンブレン上に滴下」することにより、「濾過フィルターを用いて濾過し」ない場合に発生する「検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐこと」。
(ウ)「検体試料を」「前記メンブレン上に滴下」する際に「濾過フィルターを用いて濾過した後に」行うことの目的が、「濾過フィルターを用いて濾過し」ない場合に発生する「検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐこと」。

これに対し、特許権者は、令和元年9月2日提出の意見書(第4頁9行?第5頁8行)において、咽頭拭い液等の特定の検体試料を、メンブレンの孔径または保留粒子径と一定の関係にある孔径または保留粒子径の濾過フィルターを用いて濾過した後に前記メンブレン上に滴下することにより、「前記濾過フィルターは検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐ」ものであることは明らかであり、上記(ア)ないし(ウ)の事項のいずれも意味していることが請求項1の記載から明らかである旨主張する。

上記(ア)ないし(ウ)の事項は、請求項1の記載から把握できる事項であり、上記特許権者の主張を踏まえれば、「前記濾過フィルターは検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐことを特徴とする」という記載が、その他の事項を特定するものではない。
よって、請求項1の上記記載により、本件発明1が明確でないということはできない。

イ 当審では、請求項1に「前記メンブレンの孔径または保留粒子径が前記濾過フィルターの孔径または保留粒子径以上であり、前記濾過フィルターは検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐことを特徴とする」とあるが、「前記濾過フィルターは検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐこと」が、「前記メンブレンの孔径または保留粒子径が前記濾過フィルターの孔径または保留粒子径以上であ」ることにより達成されるのか、「孔径または保留粒子径」とは別の要件により達成されるのか、「孔径または保留粒子径」と別の要件との両者により達成されるのかが判然とせず、また、「前記メンブレンの孔径または保留粒子径が前記濾過フィルターの孔径または保留粒子径以上であ」ることにより達成されるのではない場合、どのようにすれば「前記濾過フィルターは検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐ」ことができるのかが不明である旨の取消理由を通知した。

これに対し、特許権者は、令和元年9月2日提出の意見書(第5頁下から3行?第6頁17行)において、「偽陽性を防ぐことは、請求項1の構成を満たす濾過フィルターにより達成されるものであるから、孔径または保留粒子径の定義を満たすこと(のみ)により達成されるものとはいえず、また、孔径または保留粒子径とは関係のない他の要件(のみ)により達成されるものともいえない。」「請求項1の記載を満たすことにより偽陽性を防ぐと理解できるのであるから、孔径または保留粒子径の定義を満たすことにより達成されるのか、他の要件により達成されるのかを明確にしなければ本件発明1が不明瞭になるとはいえない。」と主張する。

しかしながら、請求項1の記載において、濾過フィルターの構成に係る具体的な記載は、「前記メンブレンの孔径または保留粒子径が前記濾過フィルターの孔径または保留粒子径以上であり」との記載しかなく、特許権者もそれ以外の濾過フィルターの構成については説明していない。
そこで、発明の詳細な説明の記載を見ると、濾過フィルターの構成に関連する記載として以下の記載がある(下線は当審で付加した。)。

「【背景技術】
【0002】
・・・現在、簡易検査方法として、メンブレンアッセイ法、特にニトロセルロース等の膜やフィルター等のメンブレンを用いたアッセイ方法が一般に知られており、フロースルー式とラテラルフロー式メンブレンアッセイ法に大別される。前者は被測定物を含む溶液を被測定物に対する検出用物質が塗布された膜を垂直方向に通過させるものであり、後者は水平方向に展開させるものである。いずれの場合も被測定物に特異的に結合する膜固相物質、被測定物、被測定物に特異的に結合する標識物質の複合体を膜上に形成させて、標識を検出あるいは定量することで、被測定物の検出あるいは定量を行うという点で共通している。
しかし、このような膜やフィルターを用いるメンブレンアッセイ法による簡易検査方法では、患者から実際に採取された検体の分析において、被測定物が検体中に存在しないにも係わらず陽性と判定してしまう、いわゆる偽陽性が生じることがある。病原体の感染を測定する際に偽陽性反応が発生すると、疾患に関して誤った情報を与えるため、原因特定を遅らせるばかりでなく、不適切な措置を講じることになり病状がより重篤になる等の重大な結果をもたらすこともあり得る。したがって偽陽性を抑えることは簡易検査方法の主要な使用目的から見て、極めて重要な課題である。従来、この問題を解決するため、検体を浮遊あるいは希釈させる緩衝液として界面活性剤を含有する緩衝液を用いたり、試料を添加する際に濾過フィルターを通すなどの工夫がなされてきたが、必ずしも満足のゆくものではなかった。」
「【0005】
本発明の他の実施態様は、濾過フィルターの材質が、不織布、紙、ガラス繊維、シリカ繊維、ニトロセルロース、セルロースエステル、ニトロセルロースとセルロースエステルの混合物、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、四フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ナイロン6,6、ポリエステル、コットン、ステンレススチール繊維及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれることを特徴とする、上記方法またはキットに関する。
本発明の好ましい実施態様は、上記濾過フィルターの孔径または保留粒子径が0.2?2.0μm、特に0.2?0.6μmである、上記方法またはキットである。
また、本発明の他の好ましい実施態様は、上記濾過フィルターが、ガラス繊維フィルター、ニトロセルロースフィルター、またはガラス繊維フィルターとニトロセルロースフィルターの組み合わせである、上記方法またはキットである。
さらに、本発明の他の好ましい実施態様は、上記メンブレンの材質が不織布、紙、ニトロセルロース、ガラス繊維、シリカ繊維、セルロースエステル、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、四フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ナイロン6,6及びセルロースエステルとニトロセルロースの混合物からなる群より選ばれること、及び前記メンブレンの孔径または保留粒子径が該濾過フィルターの孔径または保留粒子径以上でありかつ0.3?10μmである、上記方法またはキットである。
本発明のさらに好ましい実施態様は、上記メンブレンの材質がニトロセルロースであり、かつその孔径が0.5?7μmである、上記方法またはキットである。
また、本発明の他の好ましい実施態様は、検体試料中の被測定物がインフルエンザウイルスである、上記方法またはキットである。
また、本発明の特に好ましい実施態様は、フロースルー式またはラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイ法に関する上記方法及びキットである。」
「【発明の効果】
【0006】
・・・このような混入物にはプロテオグルカン、糖脂質等の粘性物質をはじめ、様々な生体成分が含まれているため、前記試料をそのまま膜等のメンブレン上に添加すると、上記成分の一部がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着すると考えられる。特にメンブレンとして孔径または保留粒子径が0.1?10μmのものが使用されることが多いが、この孔径または保留粒子径に匹敵する大きさの成分が添加されると、メンブレン中の細孔を塞ぎ溶液中の成分の移動を阻害することが考えられる。このような現象により非特異的な反応が起こり、被測定物が検体中に存在しないにも係わらず陽性と判定してしまう、いわゆる偽陽性が起こると考えられる。本発明の方法によりこのような偽陽性を効率よく抑制することができ、信頼性の高い簡易検査方法を確立することができた。」
「【0011】
(濾過フィルター)
本発明の方法において、患者から採取した検体試料は検体浮遊液に浮遊させた後、濾過フィルターを用いて濾過される。濾過フィルターの孔径(直径)または保留粒子径は0.2?2.0μm、好ましくは0.2?0.6μmである。濾過フィルターの孔径あるいは保留粒子径は、本発明の効果において重要である。孔径あるいは保留粒子径が大きすぎると、メンブレン上で非特異的結合が起こって偽陽性を示す場合がある。逆に小さすぎると試料中に存在する粘性物や凝集物のためにフィルター自身が詰まってしまい濾過が不可能であるか、あるいはフィルター面積をかなり広くしなければならず、簡易検査方法に用いるという目的から見て不適切である。従って、本発明の濾過フィルターの孔径あるいは保留粒子径の範囲は0.2?2.0μmであり、0.2?0.6μmの範囲のものがより好ましい。
濾過フィルターは1種類だけではなく、材質の異なるもの、孔径あるいは保留粒子径の異なるものをいくつか組み合わせても良い。その場合、フィルターを構成するもののうち、最も小さな孔径あるいは保留粒子径のものが、そのフィルターの孔径あるいは保留粒子径となる。したがって組み合わせのうち、一つでも孔径あるいは保留粒子径が0.2?2.0μmの範囲にあれば、他のものがその範囲を越えていたとしても問題はない。
また、同じフィルターを2枚以上組み合わせることにより孔径または保留粒子径にばらつきのあるフィルターを使用しても一定の効果を得ることができるという利点が得られる。さらに強度的に不十分なフィルターを用いる場合に、2枚以上重ねてフィルターの強度を上げることも出来る。しかし、フィルターの種類によっては複数枚重ねることによりフィルターが詰まりやすくなり、濾過するための圧力が大きくなり、簡便性が損なわれるという欠点も有する。
【0012】
濾過フィルターの材質は、不織布、紙、ガラス繊維、シリカ繊維、ニトロセルロース、セルロースエステル、ニトロセルロースとセルロースエステルの混合物、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、四フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ナイロン6,6、ポリエステル、コットン、ステンレススチール繊維等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくはガラス繊維とニトロセルロースである。
一般に濾過フィルターは、捕集機構上、デプスフィルターとスクリーンフィルターに分かれる。デプスフィルターはフィルター内部で固形物を捕集するものであり、スクリーンフィルターはフィルター表面で固形物を捕集するものであるが、どちらの機構のものでも好適に用いることができる。」
「【0031】
4.インフルエンザウイルスの検出
(1)メンブレンアッセイ法による検出
臨床的にインフルエンザウイルス感染が疑われる患者115人の鼻腔より滅菌綿棒を用いて拭い液を採取し、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)、1.5M塩化ナトリウム、1(W/V)%TritonX-100、0.5(W/V)%ウシ血清アルブミンの組成を有する溶液1.5mL中に浮遊し、試験用試料を作製した。試験用試料をよく懸濁させた後、3つの検体試料用濾過チューブに400μLずつ三等分し、それぞれのチューブの先端に下記の3種類のノズルを装着した。ノズル(I)には2枚の孔径(保留粒子径)0.67μmのガラス繊維の間に孔径0.45μmのニトロセルロースメンブレンを挟んだフィルターを装填し、ノズル(II)には孔径(保留粒子径)0.67μmのガラス繊維を3枚重ねにしたフィルターを装填し、ノズル(III)にはフィルターを装填しなかった。」
「【0037】
ノズル(I)を用いた場合にはRT-PCR法による判定と完全に一致し、偽陽性は見られなかった。ノズル(II)を用いた場合は偽陽性発生率が7%(115検体中8検体(表2中、□で囲まれた偽陽性検体の合計))であり、それ以外はRT-PCR法による判定と一致した。一方、ノズル(III)を用いた場合には偽陽性発生率は83%(115検体中96検体(表3中、□で囲まれた偽陽性検体の合計))であった。
本発明の方法及びキットにより、偽陽性の発生を防止することができ、信頼性の高い簡易メンブレンアッセイ法を確立することができた。」

上記した発明の詳細な説明の記載には、段落【0005】及び【0012】に濾過フィルターの材質が例示されており、「ガラス繊維フィルター、ニトロセルロースフィルター、またはガラス繊維フィルターとニトロセルロースフィルターの組み合わせ」が好ましい旨記載され、段落【0011】に異種又は同種のフィルターを組み合わせる旨の記載があり、段落【0031】には「2枚の孔径(保留粒子径)0.67μmのガラス繊維の間に孔径0.45μmのニトロセルロースメンブレンを挟んだフィルター」及び「孔径(保留粒子径)0.67μmのガラス繊維を3枚重ねにしたフィルター」の具体例が記載されているが、濾過フィルターの材質及び異種又は同種のフィルターの組合せと偽陽性との関連性に言及する記載は見当たらない。
一方、段落【0011】には、「孔径あるいは保留粒子径が大きすぎると、メンブレン上で非特異的結合が起こって偽陽性を示す場合がある」と、濾過フィルターの孔径あるいは保留粒子径が偽陽性の発生に影響する旨の記載がある。
してみると、「前記濾過フィルターは検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐこと」は、「濾過フィルターの孔径または保留粒子径」に係る要件により達成されるものと解するのが相当である。
上記の解釈に基づけば、請求項1の上記記載により、本件発明1が明確でないということはできない。

ウ 当審では、請求項2の「前記濾過フィルターが検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐことを特徴とする」という記載により、「濾過フィルター」について、どのような構造又は特性を特定するのかが不明である旨の取消理由を通知した。

これに対し、特許権者は、令和元年9月2日提出の意見書(第7頁1?4行)において、請求項2の上記記載は上記アに記載した請求項1に対して指摘した(ア)ないし(ウ)の事項をいずれも意味しており、その意味するところは明瞭である旨主張する。

上記特許権者の主張は、濾過フィルターの具体的構造又は特性を説明するものではないが、上記イで説示した請求項1の記載の解釈に倣えば、請求項2の上記記載は、濾過フィルターの孔径または保留粒子径が、検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐことができる大きさであることを意味すると解するのが相当である。
上記の解釈に基づけば、請求項2の上記記載により、本件発明2が明確でないということはできない。

エ 小括

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由1によっては、本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。

(2)特許法第36条第4項第1号について

特許権者は、令和元年9月2日提出の意見書(第9頁17行?第12頁11行)において、発明の詳細な説明の段落【0002】、【0005】、【0006】、【0008】、【0009】及び【0014】には、フロースルーアッセイ法とラテラルフローアッセイ法の両方を含む上位概念の「メンブレンアッセイ法」について十分記載されており、また、ラテラルフローアッセイ法への適用についても記載されていることから、ラテラルフローアッセイ法の具体的な実施例が記載されていなくとも、本件明細書の記載に基づき、ラテラルフローアッセイ法についても具体的に明細書に記載されているフロースルーアッセイ法と同様に実施し得ることを当業者が理解できることは明らかである旨主張する。
また、特許権者は、本件明細書の段落【0006】には「試料中に被測定物の他、検体採取部位から剥落した細胞や分泌物、排泄物の成分等が混入することがある。このような混入物にはプロテオグルカン、糖脂質等の粘性物質をはじめ、様々な生体成分が含まれているため、前記試料をそのまま膜等のメンブレン上に添加すると、上記成分の一部がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着すると考えられる。・・・孔径または保留粒子径に匹敵する大きさの成分が添加されると、メンブレン中の細孔を塞ぎ溶液中の成分の移動を阻害することが考えられる。このような現象により非特異的な反応が起こり、被測定物が検体中に存在しないにも係わらず陽性と判定してしまう、いわゆる偽陽性が起こる・・・」と記載されており、本件発明は、メンブレンを用いたアッセイ法で特定の検体を測定しようとするメンブレン上あるいはメンブレン中に生体成分の一部が付着して偽陽性が起こるという問題を解決した発明であり、偽陽性は生体成分がメンブレンの検出位置にて標識抗体を付着することで現れ、フロースルーアッセイ法でもラテラルフローアッセイ法でも、かかる検出原理を用いていれば同じように偽陽性が現れることは、当業者が理解しうることである旨主張する(同意見書第12頁下から7行?第13頁13行)。
さらに、特許権者は、乙第1号証を提出し、ラテラルフローアッセイ法でもフロースルーアッセイ法と同様に偽陽性が発生し、本件発明1ないし4を実施することができることを確認している旨主張する(同意見書第12頁12?18行、第13頁14?27行)。

発明の詳細な説明の段落【0006】には、「メンブレン・・・の孔径または保留粒子径に匹敵する大きさの成分が添加されると、メンブレン中の細孔を塞ぎ溶液中の成分の移動を阻害することが考えられる。」と、検体試料中の成分がメンブレン中の細孔を塞ぐことにより偽陽性が生じるとも解釈し得る記載があるが、同段落中の「非特異的な反応が起こり、被測定物が検体中に存在しないにも係わらず陽性と判定してしまう、いわゆる偽陽性」という記載、段落【0011】の「メンブレン上で非特異的結合が起こって偽陽性を示す場合がある」という記載、特許権者の上記「偽陽性は生体成分がメンブレンの検出位置にて標識抗体を付着することで現れ」との説明、及び、偽陽性は検出位置での観察(測定)結果に基づくという技術常識を考慮すると、本件発明1ないし4は、メンブレンの検出位置に付着した生体成分が非特異的反応により標識と結合することにより生じる偽陽性を、係る非特異的反応を生じる生体成分を濾過フィルターにより除去することで防止することを課題とし、濾過フィルターの孔径または保留粒子径を、メンブレンの孔径または保留粒子径以下で係る生体成分を除去することができる径とすることで、当該課題を解決しようとするものと認められる。

そこで検討するに、ラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイ法とフロースルー式簡易メンブレンアッセイ法とで、非特異的反応を生じる生体成分が異なるとは認められないことから、ラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイ法の実施例が記載されていないことをもって、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明1ないし4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとはいえない。
また、非特異的反応を生じる生体成分を除去することができる濾過フィルターの孔径または保留粒子径は、複数の異なる孔径または保留粒子径の濾過フィルターを用いて実験することにより定めることができるものであり、当該実験が当業者に期待し得る程度を超える過度の試行錯誤を要するものとは認められない。

したがって、取消理由通知に記載した取消理由2によっては、本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。

(3)特許法第36条第6項第1号について

上記(1)及び(2)の検討を踏まえれば、発明の詳細な説明の記載から、非特異的反応を生じる生体成分を除去することができる孔径または保留粒子径の濾過フィルターを用いればよいことが理解できるから、本件発明1ないし4が発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。
したがって、取消理由通知に記載した取消理由2によっては、本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。

(4)特許法第29条第2項について

(4-1)本件発明1について

ア 本件発明1と甲1B-1発明とを対比する。ここで、本件発明1に「前記検体」とあるが、これ以前に「検体」の記載はないことから、「前記検体」における「検体」は、「検体試料」を意味するものと認める。

(ア)甲1B-1発明の「被測定物に対する相補的結合メンバ」及び「テストストリップ」は、それぞれ本件発明1の「被測定物を捕捉するための捕捉試薬」及び「メンブレン」に相当する。

(イ)甲1B-1発明の「テストストリップ」及び「液滴形成手段」は、本件発明1の「アッセイ装置」に相当する。

(ウ)甲1B-1発明は、「テストストリップの一部分に付与された検体試料が、ストリップ中を移動又は浸透(wick)してストリップに沿って捕捉ゾーン又は検出ゾーンまで移動するものであ」るから、ラテラルフロー式のアッセイ方法であると認められる。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)を踏まえると、甲1B-1発明の「テストストリップは、被測定物に対する相補的結合メンバが固定されている捕捉ゾーン又は検出ゾーンを有し、テストストリップの一部分に付与された検体試料が、ストリップ中を移動又は浸透(wick)してストリップに沿って捕捉ゾーン又は検出ゾーンまで移動するものであり、」「液滴形成手段をテストストリップのサンプル付与ゾーンに隣接してその上方に置き、検体試料を液滴形成手段に接触させ、液滴形成手段から液滴をテストストリップに引き渡すアッセイ方法」は、本件発明1の「被測定物を捕捉するための捕捉試薬が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置を用いる、検体試料中の被測定物のラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイ法」に相当する。

(オ)甲1B-1発明の「上層(56a)はガラス繊維製の前置フィルタであ」るから、甲1B-1発明の「上層(56a)」「を含む多層付与パッド(56a-c)を保持」する「液滴形成手段」と、本件発明1の「濾過フィルター」とは、「濾過フィルターを含む検体試料付与手段」で共通する。

(カ)上記(オ)を踏まえると、甲1B-1発明の「上層(56a)、中間層(56b)、底層(56c)を含む多層付与パッド(56a-c)を保持し、上層(56a)はガラス繊維製の前置フィルタであ」る「液滴形成手段をテストストリップのサンプル付与ゾーンに隣接してその上方に置き、検体試料を液滴形成手段に接触させ、液滴形成手段から液滴をテストストリップに引き渡す」ことと、本件発明1の「検体試料を濾過フィルターを用いて濾過した後に前記メンブレン上に滴下」することとは、「検体試料を濾過フィルターを含む検体試料付与手段を用いて濾過した後に前記メンブレン上に滴下」することで共通する。

(キ)甲1B-1発明の「テストストリップは、被測定物に対する相補的結合メンバが固定されている捕捉ゾーン又は検出ゾーンを有」しているものであるから、甲1B-1発明が、本件発明1の「前記検体試料中の被測定物の存在を検出あるいは定量すること」に相当する工程を含んでいることは明らかである。

(ク)甲1B-1発明の「上層(56a)のガラス繊維製の前置フィルタの保留粒子径は、大きな粒子を除去する働きをしてテストストリップの材料が詰まるのを防ぐために、当該材料の孔径又は保留粒子径以下であ」ることは、本件発明1の「前記メンブレンの孔径または保留粒子径が前記濾過フィルターの孔径または保留粒子径以上であ」ることに相当する。

(ケ)甲1B-1発明の「多層付与パッド(56a-c)は、エラー信号の発生(擬陰性又は擬陽性)を防止することができる」ものであるところ、擬陽性は検体試料中の成分がテストストリップの検出位置で非特異的反応を起こすことによって生じるものであるから、当該検体試料中の成分と本件発明1の「検体試料中の生体成分」とは、「検体試料中の妨害成分」で共通する。

(コ)上記(オ)及び(ケ)を踏まえると、甲1B-1発明の「液滴形成手段」の「ガラス繊維製の前置フィルタ」である「上層(56a)」「を含む多層付与パッド(56a-c)」「は、エラー信号の発生(擬陰性又は擬陽性)を防止することができる」ことと、本件発明1の「前記濾過フィルターは検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐことを特徴とする」こととは、「前記濾過フィルターを含む検体試料付与手段は検体試料中の妨害成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐことを特徴とする」ことで共通する。

(シ)そうすると、本件発明1と甲1B-1発明とは、

「 被測定物を捕捉するための捕捉試薬が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置を用いる、検体試料中の被測定物のラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイ法であって、検体試料を濾過フィルターを含む検体試料付与手段を用いて濾過した後に前記メンブレン上に滴下し、前記検体試料中の被測定物の存在を検出あるいは定量することを含み、前記メンブレンの孔径または保留粒子径が前記濾過フィルターの孔径または保留粒子径以上であり、前記濾過フィルターを含む検体試料付与手段は検体試料中の妨害成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐことを特徴とする方法。」

の発明である点において一致し、次の相違点1及び2において相違する。

(相違点1)
検体試料が、本件発明1においては、「咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液又は便懸濁液であり」、検体試料中の妨害成分が「生体成分」であるのに対し、甲1B-1発明においては、そのような特定がされていない点。

(相違点2)
本件発明1においては、「濾過フィルターを含む検体試料付与手段」が「濾過フィルター」であり、「検体試料中の妨害成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐこと」が「濾過フィルター」によってなされるのに対し、甲1B-1発明においては、「濾過フィルターを含む検体試料付与手段」が「ガラス繊維製の前置フィルタであ」る「上層(56a)」「を含む多層付与パッド(56a-c)を保持」する「液滴形成手段」であり、「検体試料中の妨害成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐこと」が「多層付与パッド(56a-c)」によってなされる点。

イ 事案に鑑み、最初に上記相違点2について検討する。

上記(1)イで検討したとおり、本件発明1における「検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性をふせぐこと」は、「濾過フィルターの孔径または保留粒子径」に係る要件により達成されるものである。

(甲1B-オ)には、「付与パッド材料又はその層は、濾過機能を提供するものを選択することもできる。この場合、フィルタは、微粒子が毛管トラック又は多孔質支持体を詰まらせたりその中で流れを変えたりしないように、検体試料から微粒子を除去するためのサンプル「前置フィルタ」として機能することができる。」と、前置フィルタにより微粒子を除去することにより、メンブレンの詰まりやメンブレン中の流れの変化を防止する旨の記載はあるが、甲1B全体の記載を見ても、前置フィルタと擬陽性との関係に言及する記載は見当たらない。
また、(甲1B-オ)には、「多層付与パッドは、複数の多孔層から構築され、多数のアッセイ試薬を包含でき、感度を高め、エラー信号の発生(擬陰性又は擬陽性)を防止し、液滴形成器内の検体試料と試薬の混合を増進し、インキュベーション時間を増して反応効率を高めることができ、信号強度を増大させたりすることができる。」と、多層付与パッドが擬陽性を防止することができる旨の記載はあるが、甲1B全体の記載を見ても、(甲1B-エ)に「検体試料は使用前に、血液からの血漿の調製、粘性流体の希釈、被測定物の抽出などの前処理を加えることができる。処理の方法には、濾過、蒸留、濃縮、妨害成分の不活性化、試薬の添加がある。」との記載はあるものの、多層付与パッドが擬陽性を防止する作用機序に言及する記載は見当たらない。
そうすると、甲1B全体の記載からは、前置フィルタの孔径または保留粒子径により擬陽性の発生を防止するという知見を得ることはできない。

そして、甲1Aないし甲8B及び甲2Bの1ないし甲13Bにも、前置フィルタの孔径または保留粒子径により擬陽性の発生を防止するという知見を開示又は示唆する記載はない。

してみると、甲1Aないし甲8B及び甲1Bないし甲13Bに接した当業者といえども、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を容易に想起し得たとはいえない。

ウ したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1B-1発明並びに甲1Aないし甲8B及び甲2Bの1ないし甲13Bの記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 次ぎに、甲1B-3発明を主引用発明とした場合について検討するに、上記イで説示したように、甲1Aないし甲8B及び甲1Bないし甲13Bに接した当業者といえども、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を容易に想起し得たとはいえないことから、本件発明1は、甲1B-3発明並びに甲1Aないし甲8B及び甲2Bの1ないし甲13Bの記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4-2)本件発明2について

ア 本件発明2と甲1B-2発明とを対比する。

(ア)甲1B-2発明の「上層(56a)はガラス繊維製の前置フィルタであ」るから、甲1B-2発明の「上層(56a)」「を含む多層付与パッド(56a-c)を保持」する「液滴形成手段」と、本件発明2の「濾過フィルター」とは、「濾過フィルターを含む検体試料付与手段」で共通する。

(イ)甲1B-2発明の「被測定物に対する相補的結合メンバ」及び「テストストリップ」は、それぞれ本件発明2の「被測定物を捕捉するための捕捉試薬」及び「メンブレン」に相当する。

(ウ)上記(イ)を踏まえると、甲1B-2発明の「被測定物に対する相補的結合メンバが固定されている捕捉ゾーン又は検出ゾーンを有し」ている「テストストリップ」は、本件発明2の「被測定物を捕捉するための捕捉物質が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置」に相当する。

(エ)甲1B-2発明の「テストストリップの材料の孔径又は保留粒子径を、上層(56a)のガラス繊維製の前置フィルタの保留粒子径以上とすること」は、本件発明2の「前記メンブレンの孔径または保留粒子径が前記濾過フィルターの孔径または保留粒子径以上であ」ることに相当する。

(オ)甲1B-2発明の「多層付与パッド(56a-c)は、エラー信号の発生(擬陰性又は擬陽性)を防止することができる」ものであるところ、擬陽性は検体試料中の成分がテストストリップの検出位置で非特異的反応を起こすことによって生じるものであるから、当該検体試料中の成分と本件発明2の「検体試料中の生体成分」とは、「検体試料中の妨害成分」で共通する。

(カ)上記(ア)及び(オ)を踏まえると、甲1B-2発明の「液滴形成手段」の「ガラス繊維製の前置フィルタ」である「上層(56a)」「を含む多層付与パッド(56a-c)」「がエラー信号の発生(擬陰性又は擬陽性)を防止することができる」ことと、本件発明2の「前記濾過フィルターが検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐことを特徴とする」こととは、「前記濾過フィルターを含む検体試料付与手段が検体試料中の妨害成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐことを特徴とする」ことで共通する。

(キ)甲1B-2発明の「テストストリップの一部分に付与された検体試料が、ストリップ中を移動又は浸透(wick)してストリップに沿って捕捉ゾーン又は検出ゾーンまで移動する」「テストストリップ」は、ラテラルフロー式のテストストリップであると認められる。

(ク)甲1B-2発明は、「テストストリップとして、被測定物に対する相補的結合メンバが固定されている捕捉ゾーン又は検出ゾーンを有し」しているものを使用する場合があることから、甲1B-2発明が、本件発明2の「検体試料中の被測定物の存在を検査あるいは定量するための」に相当する構成を含んでいることは明らかである。

(ケ)上記(ウ)、(キ)及び(ク)を踏まえると、甲1B-2発明の「テストストリップに検体試料を接触させて行うアッセイ方法に使用することができる液滴形成手段」と、本件発明2の「咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液又は便懸濁液である検体試料中の被測定物の存在を検査あるいは定量するためのラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイキット」とは、「検体試料中の被測定物の存在を検査あるいは定量するためのラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイに使用する装置」で共通する。

(コ)そうすると、本件発明2と甲1B-2発明とは、

「 以下を含む、検体試料中の被測定物の存在を検査あるいは定量するためのラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイに使用する装置;
(1)濾過フィルターを含む検体試料付与手段、
前記濾過フィルターを含む検体試料付与手段が検体試料中の妨害成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐことを特徴とする、上記アッセイに使用する装置。」

の発明である点において一致し、次の相違点3ないし5において相違する。

(相違点3)
検体試料が、本件発明2においては、「咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液又は便懸濁液であり」、検体試料中の妨害成分が「生体成分」であるのに対し、甲1B-2発明においては、そのような特定がされていない点。

(相違点4)
ラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイに使用する装置が、本件発明2においては、「アッセイキット」であり、「被測定物を捕捉するための捕捉物質が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置」を含み、「前記メンブレンの孔径または保留粒子径が前記濾過フィルターの孔径または保留粒子径以上であ」るのに対し、甲1B-2発明においては、「テストストリップとして、被測定物に対する相補的結合メンバが固定されている捕捉ゾーン又は検出ゾーンを有し」、「テストストリップの材料の孔径又は保留粒子径を、上層(56a)のガラス繊維製の前置フィルタの保留粒子径以上と」したものとともに使用する場合があるものの、テストストリップを含まない液滴形成手段である点。

(相違点5)
本件発明2においては、「濾過フィルターを含む検体試料付与手段」が「濾過フィルター」であり、「検体試料中の妨害成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐこと」ができる「濾過フィルター」であるのに対し、甲1B-2発明においては、「濾過フィルターを含む検体試料付与手段」が「ガラス繊維製の前置フィルタであ」る「上層(56a)」「を含む多層付与パッド(56a-c)を保持」する「液滴形成手段」であり、「多層付与パッド(56a-c)」が「検体試料中の妨害成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐ」ものである点。

イ 事案に鑑み、最初に上記相違点5について検討する。

相違点5は、実質的に上記(4-1)で検討した本件発明1に係る相違点2に相当するものである。
そうすると、上記(4-1)イで説示したのと同様の理由により、甲1Aないし甲8B及び甲1Bないし甲13Bに接した当業者といえども、上記相違点5に係る本件発明2の発明特定事項を容易に想起し得たとはいえない。

ウ したがって、上記相違点3及び4について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1B-2発明並びに甲1Aないし甲8B及び甲2Bの1ないし甲13Bの記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 次ぎに、甲1B-4発明を主引用発明とした場合について検討するに、上記イで説示したように、甲1Aないし甲8B及び甲1Bないし甲13Bに接した当業者といえども、上記相違点5に係る本件発明2の発明特定事項を容易に想起し得たとはいえないことから、本件発明2は、甲1B-4発明並びに甲1Aないし甲8B及び甲2Bの1ないし甲13Bの記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4-3)本件発明3及び4について

本件発明3及び4は、本件発明1に対して更にメンブレンあるいは濾過フィルターの孔径または保留粒子径の範囲を限定したものである。
そうすると、上記(4-1)で検討したのと同じ理由により、本件発明3及び4は、甲1B-1発明又は甲1B-3発明並びに甲1Aないし甲8B及び甲2Bの1ないし甲13Bの記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4-4)小括

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由4によっては、本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

(1)特許異議申立人1の特許異議申立理由について

ア 特許法第29条第2項について

特許異議申立人1は、特許異議申立書において、本件発明1ないし4は、甲1Aに記載された発明、又は、甲6A及び甲7Aに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。
しかしながら、本件発明1ないし4に係る「濾過フィルターの孔径または保留粒子径」は、上記1(1)イで説示したとおり、「検体試料中の妨害成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐこと」ができるものであると認められるところ、当該構成を、甲1Aないし甲8B及び甲1Bないし甲13Bに接した当業者といえども容易に想起し得たとはいえないことは、上記1(4)(4-1)イで検討したとおりである。
よって、特許異議申立人1の当該特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。

イ 特許法第36条第6項第2号及び同条第4項第1項について

特許異議申立人1は、特許異議申立書において、「検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐ」ために、本件発明1ないし4の「濾過フィルター」を具体的にどのように構成すればよいのか、本件明細書の記載を参酌しても理解することができない旨主張している。
しかしながら、上記1(1)イで説示したとおり、本件発明1ないし4の「濾過フィルター」は、その「孔径または保留粒子径」が、「検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐこと」ができる大きさであるものと理解することができる。
よって、特許異議申立人1の当該特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。

(2)特許異議申立人2の特許異議申立理由について

特許異議申立人2は、特許異議申立書において、特許法第29条第2項について、本件発明1ないし4は、甲1Bに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。
しかしながら、本件発明1ないし4に係る「濾過フィルターの孔径または保留粒子径」は、上記1(1)イで説示したとおり、「検体試料中の妨害成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐこと」ができるものであると認められるところ、当該構成を、甲1Aないし甲8B及び甲1Bないし甲13Bに接した当業者といえども容易に想起し得たとはいえないことは、上記1(4)(4-1)イで検討したとおりである。
よって、特許異議申立人2の当該特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。


第6 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人1及び2の特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-12-05 
出願番号 特願2016-107732(P2016-107732)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (G01N)
P 1 651・ 536- Y (G01N)
P 1 651・ 121- Y (G01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 草川 貴史  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 渡戸 正義
森 竜介
登録日 2018-09-21 
登録番号 特許第6405339号(P6405339)
権利者 デンカ生研株式会社
発明の名称 簡易メンブレンアッセイ法及びキット  
代理人 ▲吉▼田 和彦  
代理人 箱田 篤  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 市川 さつき  
代理人 山崎 一夫  
代理人 弟子丸 健  
代理人 浅井 賢治  
代理人 服部 博信  
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