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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A47C
管理番号 1357994
審判番号 不服2019-4548  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-05 
確定日 2020-01-14 
事件の表示 特願2014-231498号「椅子」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月26日出願公開、特開2016- 93344号、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年11月14日の出願であって、平成30年7月23日付けで拒絶理由が通知され、同年8月21日に意見書及び手続補正書が提出され、平成31年1月24日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年4月5日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成31年1月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1?4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1.実願昭60-159544号(実開昭62-66538号)のマイクロフィルム

第3 本願発明
本願請求項1?4に係る発明は、平成30年8月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるところ、本願請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「背凭れの左右の側枠と、前記左右の側枠に取り付けるランバーサポートを有するものであって、
ランバーサポートは左右方向に延びて着座者の荷重を受けて撓む弾性変形可能な受圧体と、この受圧体の左右側縁に前記受圧体と一体的に形成された高剛性の側縁体からなり、
着座者からの加重時に前記受圧体における少なくとも上側領域と下側領域の撓み度合いを相互に異ならせるための撓み分配機構を前記側縁体と前記側枠とによって構成したものであり、
前記撓み分配機構が、前記左右の側縁体の何れか一方の上下方向中間部を対応する前記側枠に左右方向に回動可能に支持させたものであり、当該何れか一方の側縁体が上下方向に延びる略縦長の菱形状のものであることを特徴とする椅子。」

なお、請求項2?4に係る発明は、本願発明の構成を全て引用する従属請求項に係る発明である。

第4 引用文献の記載事項等
1 記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付加した。以下同様。)。
(1a)「2.実用新案登録請求の範囲
車輛等の座席シートのシートバツク内に帯状のサポート材を上中下3段に並列状態に横架し、かつ各々のサポート材を同時に複段階に張り調整可能な第1の張り調整機構を前記シートバツクの一側部に設けると共に、前記シートバツクの他側部に前記中間サポート材を除く上下各サポート材のみの張り状態を交互に緩急調整可能な第2の張り調整機構を設けたことを特徴とするランバーサポート装置。」(明細書1頁4?13行)

(1b)「近年自動車の座席シートのシートバックには上述のランバーサポート装置が多く採用されて来た。この装置はシートバック内に帯状のサポート材を横設して、そのサポート材の張り状態を着座者のダイヤル操作等で緩急調整できるようになっている。しかしながら従来の装置では、シートバック内の一個所に一本のサポート材を横設しただけであって、着座者の腰椎部附近を前方に押し出す支持力(張り出し度合)は可変調整できるが、その支持位置を上下に変更することができず、このために着座者の腰椎部附近の一定個所のみしか常に支持できず、腰椎部の上方寄りや下方寄りを支持させたい場合は着座者自身が姿勢を変えなければならないと云った問題があり、又体格が大きい人や逆に小さい人には自分に合った高さの支持位置のものが無く不適格な場合が多い問題があった。」(明細書2頁1?17行)

(1c)「第1図はこの考案に係るランバーサポート装置を備えた自動車等の座席シートを示す外観図で、この座席シート1は、クッション体2とシートバック(背凭れ)3とからなり、このシートバック3の腰当て部分に相当する位置の骨枠を構成する左右両側部の内部フレーム4,5間には、第2図及び第3図に示すようなランバーサポート装置6が内装されている。
上記ランバーサポート装置6は、前記シートバック3の内部フレーム4,5間に後述する第1及び第2の張り調整機構を介して3本の帯状のサポート材7,8,9が上中下3段に並列状態に配置して横架されている。
そして、上記第1の張り調整機構10は、第4図及び第5図に示すように、前記シートバック3の一側部側の内部フレーム4に固着されたブラケット11と、このブラケット11に固定軸12を介して水平回動自在に軸支されたリンク13と、このリンク13の一端部に固定した支持ピン14と、前記リンク13の他端部に固定した摺接ピン15と、この摺接ピン15に当接させて前記リンク13を3段階に回動させるカム16と、このカム16を回転させる回転軸17とから構成され、この回転軸17の他端は前記シートバック3の外部に突出させて操作用ダイヤル18によって回転操作可能にしてなるとともに、前記支持ピン14に各々のサポート材7,8,9の一端部7a,8a,9aを取付けてなるものである。
すなわち、上記した第1の張り調整機構10は、操作用ダイヤル18の回転操作により回転軸17を介してカム16を回転させ、第5図に2点破線で示すように、このカム16に摺接する摺接ピン15を押動させて、第4図に2点破線で示すように、固定軸12を中心にリンク13を回動させることにより、支持ピン14に支持された各々のサポート材7,8,9を同時に長手方向に伸縮させて第1の張りを調整可能にしてなるもので、このとき、前記各々のサポート材7,8,9は、後述する他端側の支点の差異又は各サポート材自体の長さの差異により上下両サポート材7,9と中間サポート材8との撓み変形量がもともと異にされていて、第3図に示す如く中間サポート材8の撓み変形量Aを上下両サポート材7,9の撓み変形量Bよりも小さくして、中立状態とし、これによって上下両サポート材7,9が中間サポート材8より後方に位置するような初期状態に設定されている。
一方、上記第2の張り調整機構20は、第6図及び第7図に示すように、前記シートバック3の他側部側の内部フレーム5に固定された横断面コ字型のブラケット21と、このブラケット21に軸22を介して揺動自在に軸支されたリンク23と、このリンク23の下端部に取付けたねじ送り用のナット24と、このナット24に螺合させた螺子杆25と、この螺子杆25の他端部に直結して前記シートバック3の他側部側外部から回動操作する操作用ダイヤル26とから構成され、前記リンク23の上下両端部に上記軸22の中心線からhだけ偏位して設けた連結杆27,28に上下のサポート材7,9の他端部7b,9bを回動自在に取付けるとともに、前記中間サポート材8の他端部8bをリンク23を軸支する軸22に連結杆29を介して回動自在に取り付けてなるものである。
すなわち、上記した第2の張り調整機構20は、操作用ダイヤル26の回転操作により螺子杆25を回転させ、この螺子杆25に螺合するナット24によるねじ送り作用によりリンク23を軸22を中心に揺動させて上側サポート材7と下側サポート材9のみを交互にかつ無段階に張り調整し、これによって、上側サポート部材7または下側サポート部材9を中間サポート材8を基準に前方に張り出したり、後方に引き込ませて着座者の好みに応じて可変調整し得るようになっている。」(明細書4頁7行?8頁3行)

(1d)第2図は次のとおりである。


(1e)第3図は次のとおりである。


(1f)第6図は次のとおりである。


(1g)第7図は次のとおりである。


2 引用発明
上記「1」の各記載事項より、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「シートバック3の腰当て部分に相当する位置の骨枠を構成する左右両側部の内部フレーム4,5間には、ランバーサポート装置6が内装されているものであって、
ランバーサポート装置6は、前記シートバック3の内部フレーム4,5間に第1及び第2の張り調整機構10,20を介して3本の帯状のサポート材7,8,9が上中下3段に並列状態に配置して横架されており、
上記第1の張り調整機構10は、前記シートバック3の一側部側の内部フレーム4に固着されたブラケット11と、このブラケット11に固定軸12を介して水平回動自在に軸支されたリンク13と、このリンク13の一端部に固定した支持ピン14と、前記リンク13の他端部に固定した摺接ピン15と、この摺接ピン15に当接させて前記リンク13を3段階に回動させるカム16と、このカム16を回転させる回転軸17とから構成され、この回転軸17の他端は前記シートバック3の外部に突出させて操作用ダイヤル18によって回転操作可能にしてなるとともに、前記支持ピン14に各々のサポート材7,8,9の一端部7a,8a,9aを取付けてなるものであって、
上記第1の張り調整機構10は、操作用ダイヤル18の回転操作により回転軸17を介してカム16を回転させ、このカム16に摺接する摺接ピン15を押動させて、固定軸12を中心にリンク13を回動させることにより、支持ピン14に支持された各々のサポート材7,8,9を同時に長手方向に伸縮させて張り調整可能にしてなるものであり、
上記第2の張り調整機構20は、前記シートバック3の他側部側の内部フレーム5に固定された横断面コ字型のブラケット21と、このブラケット21に軸22を介して揺動自在に軸支されたリンク23と、このリンク23の下端部に取付けたねじ送り用のナット24と、このナット24に螺合させた螺子杆25と、この螺子杆25の他端部に直結して前記シートバック3の他側部側外部から回動操作する操作用ダイヤル26とから構成され、前記リンク23の上下両端部に上記軸22の中心線からhだけ偏位して設けた連結杆27,28に上下のサポート材7,9の他端部7b,9bを回動自在に取付けるとともに、前記中間サポート材8の他端部8bをリンク23を軸支する軸22に連結杆29を介して回動自在に取り付けてなるものであって、
上記第2の張り調整機構20は、操作用ダイヤル26の回転操作により螺子杆25を回転させ、この螺子杆25に螺合するナット24によるねじ送り作用によりリンク23を軸22を中心に揺動させて上側サポート材7と下側サポート材9のみを交互にかつ無段階に張り調整し、これによって、上側サポート部材7または下側サポート部材9を中間サポート材8を基準に前方に張り出したり、後方に引き込ませて着座者の好みに応じて可変調整し得るようになっている座席シート1。」

第5 対比・判断
1 本願発明について
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 後者の「シートバック3」は前者の「背凭れ」に相当し、以下同様に、「内部フレーム4,5」は「側枠」に、「ランバーサポート装置6」は「ランバーサポート」に、「サポート材7,8,9」は「受圧体」に、「座席シート1」は「椅子」にそれぞれ相当する。

イ 上記アを踏まえると、後者の「シートバック3の腰当て部分に相当する位置の骨枠を構成する左右両側部の内部フレーム4,5間には、ランバーサポート装置6が内装されているものであって」ということは、前者の「背凭れの左右の側枠と、前記左右の側枠に取り付けるランバーサポートを有するものであって」ということに相当するといえる。

ウ 後者の「サポート材7,8,9」は「張り調整」を可能としているものであるから、引用文献1の第3図(上記記載事項(1e))、第6図(上記記載事項(1f))の記載も併せると、弾性変形可能なものであることは技術的に明らかといえる。そして、そのようなものであるなら、着座者の荷重を受けた場合、撓むことも自明といえる。
また、後者の「リンク13」は「支持ピン14にて各々のサポート材7,8,9の一端部7a,8a,9aを取付けてなるもの」であるところ、当該「リンク13」及び「支持ピン14」は、「サポート材7,8,9」に対し側方の縁をなすものともいえるので、前者の「側縁体」に相当するといえ、かつ、それは高剛性のものであることは技術的に明らかである。
同様に、後者の「リンク23」は「連結杆27,28に上下のサポート材7,9の他端部7b,9bを回動自在に取付けるとともに、前記中間サポート材8の他端部8bをリンク23を軸支する軸22に連結杆29を介して回動自在に取り付けてなるもの」であるところ、当該「リンク23」は、「サポート材7,8,9」に対し側方の縁をなすものともいえるので、前者の「側縁体」に相当するといえ、かつ、それは高剛性のものであることは技術的に明らかである。
そうすると、上記アをも踏まえると、後者の
「ランバーサポート装置6は、前記シートバック3の内部フレーム4,5間に第1及び第2の張り調整機構10,20を介して3本の帯状のサポート材7,8,9が上中下3段に並列状態に配置して横架されており、
上記第1の張り調整機構10は、前記シートバック3の一側部側の内部フレーム4に固着されたブラケット11と、このブラケット11に固定軸12を介して水平回動自在に軸支されたリンク13と、このリンク13の一端部に固定した支持ピン14と、前記リンク13の他端部に固定した摺接ピン15と、この摺接ピン15に当接させて前記リンク13を3段階に回動させるカム16と、このカム16を回転させる回転軸17とから構成され、この回転軸17の他端は前記シートバック3の外部に突出させて操作用ダイヤル18によって回転操作可能にしてなるとともに、前記支持ピン14にて各々のサポート材7,8,9の一端部7a,8a,9aを取付けてなるものであって」、
「上記第2の張り調整機構20は、前記シートバック3の他側部側の内部フレーム5に固定された横断面コ字型のブラケット21と、このブラケット21に軸22を介して揺動自在に軸支されたリンク23と、このリンク23の下端部に取付けたねじ送り用のナット24と、このナット24に螺合させた螺子杆25と、この螺子杆25の他端部に直結して前記シートバック3の他側部側外部から回動操作する操作用ダイヤル26とから構成され、前記リンク23の上下両端部に上記軸22の中心線からhだけ偏位して設けた連結杆27,28に上下のサポート材7,9の他端部7b,9bを回動自在に取付けるとともに、前記中間サポート材8の他端部8bをリンク23を軸支する軸22に連結杆29を介して回動自在に取り付けてなるものであ」るということと、前者の
「ランバーサポートは左右方向に延びて着座者の荷重を受けて撓む弾性変形可能な受圧体と、この受圧体の左右側縁に前記受圧体と一体的に形成された高剛性の側縁体からな」るということとは、
「ランバーサポートは左右方向に延びて着座者の荷重を受けて撓む弾性変形可能な受圧体と、この受圧体の左右側縁に設けられた高剛性の側縁体からな」るという限りにおいて共通するといえる。

エ 以上より、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点〕
「背凭れの左右の側枠と、前記左右の側枠に取り付けるランバーサポートを有するものであって、
ランバーサポートは左右方向に延びて着座者の荷重を受けて撓む弾性変形可能な受圧体と、この受圧体の左右側縁に設けられた高剛性の側縁体からなる椅子。」

〔相違点1〕
「ランバーサポート」の構成に関し、本願発明が、
「着座者からの加重時に前記受圧体における少なくとも上側領域と下側領域の撓み度合いを相互に異ならせるための撓み分配機構を前記側縁体と前記側枠とによって構成したものであり、
前記撓み分配機構が、前記左右の側縁体の何れか一方の上下方向中間部を対応する前記側枠に左右方向に回動可能に支持させたものであ」るのに対し、
引用発明では、
「ランバーサポート装置6」は、「第1及び第2の張り調整機構10,20を介して3本の帯状のサポート材7,8,9が上中下3段に並列状態に配置して横架されており、上記第1の張り調整機構10は、操作用ダイヤル18の回転操作により回転軸17を介してカム16を回転させ、このカム16に摺接する摺接ピン15を押動させて、固定軸12を中心にリンク13を回動させることにより、支持ピン14に支持された各々のサポート材7,8,9を同時に長手方向に伸縮させて第1の張りを調整可能にしてなるものであり」、
「上記第2の張り調整機構20は、操作用ダイヤル26の回転操作により螺子杆25を回転させ、この螺子杆25に螺合するナット24によるねじ送り作用によりリンク23を軸22を中心に揺動させて上側サポート材7と下側サポート材9のみを交互にかつ無段階に張り調整し、これによって、上側サポート部材7または下側サポート部材9を中間サポート材8を基準に前方に張り出したり、後方に引き込ませて着座者の好みに応じて可変調整し得るようになっている」
というものであって、
特に「第2の張り調整機構20」は、「サポート材7,8,9」(「受圧体」に相当)を着座者の加重時に「上側サポート部材7または下側サポート部材9を中間サポート材8を基準に前方に張り出したり、後方に引き込ませ」るものではない点。

〔相違点2〕
「側縁体」の構成に関し、本願発明が、「前記受圧体と一体に形成された」もので、「当該何れか一方の側縁体が上下方向に延びる略縦長の菱形状のものである」のに対し、引用発明は、そのような構成を有していない点。

(2)判断
上記相違点1について検討する。
引用発明の「第2の張り調整機構20」における「上側サポート部材7または下側サポート部材9を中間サポート材8を基準に前方に張り出したり、後方に引き込ませ」るということは、本願発明の「受圧体における少なくとも上側領域と下側領域の撓み度合いを相互に異ならせる」ということに相当するといえるが、「操作用ダイヤル26」の回転操作によるものであって、着座者からの加重時に「上側サポート部材7」、「下側サポート部材9」の撓み度合いを異ならせるというものではなく、「着座者からの加重時に前記受圧体における少なくとも上側領域と下側領域の撓み度合いを相互に異ならせるための撓み分配機構」といえるものではない。
ここで、引用発明が解決しようとする課題は、上記記載事項(1b)の「従来の装置では、シートバック内の一個所に一本のサポート材を横設しただけであって、着座者の腰椎部附近を前方に押し出す支持力(張り出し度合)は可変調整できるが、その支持位置を上下に変更することができず、このために着座者の腰椎部附近の一定個所のみしか常に支持できず、腰椎部の上方寄りや下方寄りを支持させたい場合は着座者自身が姿勢を変えなければならないと云った問題があり、又体格が大きい人や逆に小さい人には自分に合った高さの支持位置のものが無く不適格な場合が多い問題があった」というものであり、引用発明は、当該課題を解決するための一構成として「第2の張り調整機構20」により「上側サポート部材7または下側サポート部材9を中間サポート材8を基準に前方に張り出したり、後方に引き込ませて着座者の好みに応じて可変調整し得る」という構成を採用しているものである。
そして、上述した引用発明が解決しようとする課題や引用文献1の全体の記載からみて、引用発明において、着座者からの加重時に「上側サポート部材7」、「下側サポート部材9」の撓み度合いを異ならせるよう変更する動機付けがあるとはいえない。
また、仮にそのように変更するのであれば、「操作用ダイヤル26」、「螺子杆25」、「ナット24」に係る構成を無くす必要があり、その場合、着座者の好みに合わせた変更が不可能となる。したがって、上述した引用発明が解決しようとする課題からみて、そのような変更にはむしろ阻害要因があるといえる。

よって、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たこととはいえない。

以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

2 請求項2?4に係る発明について
請求項2?4に係る発明は、本願発明の発明特定事項を全て含みさらに限定したものであるので、本願発明と同様の理由により、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-12-23 
出願番号 特願2014-231498(P2014-231498)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A47C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井出 和水  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 中川 真一
一ノ瀬 覚
発明の名称 椅子  
代理人 赤澤 一博  

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