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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65H |
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管理番号 | 1358009 |
審判番号 | 不服2018-2426 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-02-21 |
確定日 | 2020-01-07 |
事件の表示 | 特願2013-162578「シート搬送装置及びこれを備えた画像形成システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月16日出願公開、特開2015- 30602、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年8月5日の出願であって、平成28年5月27日に手続補正がされ、平成29年3月31日付けで拒絶の理由が通知され、同年6月9日に意見書が提出され、同年11月17日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年2月21日に拒絶査定不服審判の請求がされ、令和1年7月12日付けで拒絶の理由(以下、「第1回当審拒絶理由」という。)が通知され、同年9月11日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、同年11月1日付けで拒絶の理由(以下、「第2回当審拒絶理由」という。)が通知され、同年11月11日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。 第2 当審拒絶理由の概要 1 第1回当審拒絶理由 第1回当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 本願請求項1、2に係る発明は、以下の引用文献1、2に基づいて、また、本願請求項3?10に係る発明は、以下の引用文献1?3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開平9-301602号公報 2.特開2005-306614号公報 3.特開2002-211819号公報 2 第2回当審拒絶理由 第2回当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 (1)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (2)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (1)について(請求項1?9に対して) 請求項1における「前記第1の積載部は、前記搬送方向に関して前記第2積載手段と重なるように配置され」るとの記載は、第1の積載部と第2積載手段とが搬送方向に関して部分的に重なることも含まれるが、第1の積載部と第2積載手段が部分的に重なることは発明の詳細な説明には記載されていない。 よって、請求項1?9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 (2)について(請求項1?9に対して) ア 請求項1には、「第1の搬送経路が外部に開放される」、「第2積載面が外部に露出する」、「第2積載面を外部に露出させ」、「第1積載面を外部に露出させ」との記載があるが、当該記載の「外部」が、それぞれ、いかなる構成の外部を意味するものであるのかが不明であり、請求項1?9に係る発明が不明確である。 また、請求項1には、「前記搬送方向に関して前記第2の積載部の下流側には、・・・(中略)・・・な積載部は無」いとの記載があるが、前記記載では、第2の積載部の下流側において、いかなる積載部を有することが請求項1?9に係る発明に含まれ、いかなるものが除外されるのかが明確ではなく、請求項1?9に係る発明が不明確となっている。 イ 請求項7には、「第1の搬送経路の搬入口は外部に開放される」との記載があるが、当該記載の「外部」がいかなる構成の外部を意味するものであるのかが不明であり、請求項7?9に係る発明が不明確である。 第3 本願発明 本願請求項1?9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明9」という。)は、令和1年11月11日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 シートが搬送される第1の搬送経路と、 シートが搬送される第2の搬送経路と、 第2の搬送経路から搬送されたシートを積載する第1積載手段と、 前記第1の搬送経路の排出口から排出されたシートを積載する第2積載手段と、 前記第2積載手段に積載されたシートを綴じる綴じ手段と、 前記綴じ手段により綴じられたシートを前記第2積載手段から排出する排出手段と、 前記排出手段により前記第2積載手段から排出されたシートを積載する第3積載手段と、を有するシート搬送装置であって、 前記第1積載手段は、第1の積載部と、前記第2の搬送経路に搬送されるシートの搬送方向に交差する軸の周りを前記第1の積載部に対して独立して移動可能に構成される第2の積載部と、を有し、前記第1の積載部が固定されており、 前記第2の積載部は、前記搬送方向に関して前記第1の積載部の上流側に配置され、前記第1の積載部とともに、前記第2の搬送経路から搬送されたシートを積載し、 前記第2の積載部は、前記搬送方向に関して前記軸の上流側に、前記第1の搬送経路にシートが搬送される第1の位置と前記第1の搬送経路が前記シート搬送装置の外部に開放される第2の位置とに移動可能に構成される部位を有し、 前記部位が前記軸の右側に位置するように、且つ前記部位が前記第1の搬送経路の上側に位置するように、前記軸の延びる方向に前記部位を見た場合、前記部位は、前記第1の位置から反時計回りに移動して前記第2の位置に位置し、 前記第3積載手段は、前記搬送方向に関して前記第1の搬送経路及び第2積載手段の下流側に配置され、 前記第2積載手段は、シートを積載するための第1積載面を有し、 前記第1の積載部は、前記搬送方向に関して前記第1積載面の上流端部及び前記搬送方向に関して前記第1積載面の下流端部と、前記搬送方向に関して重なるように配置され、 前記第3積載手段は、シートを積載するための第2積載面を有し、前記搬送方向に関して前記第1の積載部の下流側において前記第2積載面が前記シート搬送装置の外部に常時露出するように構成される、 ことを特徴とするシート搬送装置。 【請求項2】 前記第1の搬送経路は、前記第2の搬送経路の下側に位置することを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。 【請求項3】 前記第2の積載部は、積載されるシートの、前記搬送方向に関して上流端を規制する規制手段を有し、前記規制手段は、前記第2の積載部とともに移動可能に構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のシート搬送装置。 【請求項4】 前記第2の積載部が前記第1の位置に位置している場合、前記軸は、前記搬送方向に関して前記規制手段の下流側に位置することを特徴とする請求項3に記載のシート搬送装置。 【請求項5】 前記軸は、前記第1の搬送経路の下に位置していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のシート搬送装置。 【請求項6】 前記部位が前記第2の位置に位置している場合、前記第2の積載部は、前記第1の積載部と共に前記第1積載手段に積載されているシートを湾曲させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシート搬送装置。 【請求項7】 前記第2の積載部が前記第1の位置に位置している場合、前記第2の積載部は、前記第1の搬送経路に搬送されるシートを案内し、 前記第2の積載部が前記第2の位置に位置している場合、前記第1の搬送経路の搬入口は前記シート搬送装置の外部に開放されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のシート搬送装置。 【請求項8】 前記第2の積載部は、前記第1の搬送経路を形成する案内部を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のシート搬送装置。 【請求項9】 シートに画像を形成する画像形成手段と、 前記画像形成手段が画像を形成したシートを搬送するシート搬送装置と、を有し、 前記シート搬送装置は、請求項1から8のいずれか1項に記載のシート搬送装置であることを特徴とする画像形成システム。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由、及び当審拒絶理由1に引用された引用文献1(特開平9-301602号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。 (1) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、装置から排紙(出力)されるシート材に後処理を行うフィニッシャ、メールボックス、ソーター、ソーターステープラー等の後処理手段を装着可能な画像形成装置に関する。 【0002】 【従来の技術】この種のいわゆるマルチファンクションのデジタル複写機は、これまではあくまでも複写機ベースの造りで、プリンタとして使用する時はページ順に出力するために周辺機等に反転機構を搭載していた。ところが、最近のパーソナルコンピュータの急速な普及によりプリンタベースの造りがメインとなりつつある。これは、略垂直方向搬送パス方式、すなわち、画像形成手段部を中にして下方に給紙部、上方に排紙部を配置し、画像面を下向きにして排紙する方式を採用するもので、従来の複写機に比べて搬送パスが非常に短く、さらに装置側面を開放するだけで搬送パスの大半を開放することができるため、給紙から排紙までの出力時間が短く、シート搬送性並びにジャム除去性が非常に良い。 【0003】しかしながら、フィニッシャやメールボックス等の後処理手段の共存が困難である等の問題を抱えている。すなわち、メールボックス等の後処理系の機器は装置本体の上方に装着するのが一般的であるが、このようにするとフィニッシャ等の他の後処理手段の装着スペースの確保が困難となる。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】そこで考えられるのが、シート搬送パス及びシート搬送機能を有する中継搬送手段を装置上部に設け、例えばメールボックスと干渉しない装置側面にフィニッシャ等の他の後処理手段を装着して該フィニッシャと排紙部とを中継搬送手段で結ぶ方式である。中継搬送手段の分岐・搬送機能によって例えばメールボックスとフィニッシャの共存が可能となるものである。ところが、上述の中継搬送手段もシート搬送パスを有し且つシート搬送機能を有する以上、その内部においてジャムが発生する可能性を否定できない。このため、回動自在な搬送カバーを設けてジャム処理ができるようにしている。また、構成の簡易化を図るために、中継搬送手段の上流側には通常の排紙を行う部分が一体に構成されており、この部分にもジャム処理ができるように排紙カバーが回動自在に設けられている。しかしながら、装置全体の外形の嵩張りを少なくする観点から、中継搬送手段とメールボックスのトレイの接近したレイアウトが避けられず、このため、搬送カバーや排紙カバーを開けてジャム処理を行う場合、メールボックスのトレイの存在でスペースが制限されて処理作業が非常に困難となっていた。また、画像読み取り手段を装置上方に設置する場合においても、画像読み取り手段の操作面をできるだけ高くしないためには中継搬送手段のすぐ上が画像読み取り手段で覆われるようなレイアウトにならざるを得ないため、ジャム処理作業が困難であった。換言すれば、中継搬送手段の存在によってもたらされた複数の後処理手段の共存というメリットが減殺されていた。 【0005】そこで、本発明は、中継搬送手段によるメリットを十分に活かせるとともに中継搬送手段や通常の排紙部分でのジャム処理を容易に行える画像形成装置の提供を、その目的とする。」 (2) 「【0011】また、本発明は、ジャムが発生し易い中継搬送手段と装置本体側との間のシート材の受け渡し部分に十分なジャム処理スペースを確保する、という考えに基づいている。具体的には、請求項9記載の発明では、請求項6記載の構成において、上記中継搬送手段がその上面をスタック面とする通常排紙部を備えているとともに、該通常排紙部には上面側を覆う排紙カバーが備えられ、該排紙カバーは装置本体側とのシート材の受け渡し部と離れた側を軸支されて上下方向に回動自在に設けられている、という構成を採っている。・・・」 (3) 「【0017】定着が完了したシート材20(画像は下面20aに形成されている)は、変向板28等の機能で通常排紙部18へ送られ(パスA)、装置本体4の上面(後述する搬送カバー38上)にスタックされる。あるいはメールボックス12へ送られ(パスB)、あるいは中継搬送手段16へ送られて(パスC)、後処理手段14へ供給される。両面画像を形成する場合には、片面を画像形成されたシート材は通常排紙部18からスイッチバックされ、図示しない両面ユニット内のパスDを通って装置本体4内のシートパス22に表裏を反転されて合流する。」 (4) 「【0027】次に、他の実施例を図12及び図13に基づいて説明する。なお、上記実施例と同一部分は同一符号にて示している。本実施例における画像形成装置205には、装置本体4の上部に中継搬送手段70が備えられており、さらにその上部にはスペーサ72、74を介して画像読み取り手段56が備えられている。中継搬送手段70は通常排紙部76を一体的に備えており、装置本体4の排紙部10から受け渡し部78を介して受け渡されたシート材は、通常排紙部76に備えられた切換手段としての分岐爪77の切り換え作用で、後処理手段14へ搬送され、又は通常排紙部76から排紙される。中継搬送手段70の後処理手段14に対応する部分は、通常排紙部76から排紙されたシート材を積載するトレイとしての搬送カバー82と、分岐爪77からのシート材を下流側へ案内するガイド板86等によって形成された後処理手段14への搬送路80と、搬送ローラ対83、84、85とを備えている。搬送カー82は、搬送方向において2つの搬送カバー片88、90に分割されており、通常排紙部76側の排紙カバー片88は搬送方向後端を軸91で支持されて、また後処理手段14側の排紙カバー90は搬送方向前端を軸92で支持されてそれぞれ上下方向に回動自在に設けられている。搬送カバー82の上面は、通常排紙の場合のシート材のスタック面となっている。 【0028】通常排紙部76は、排紙ローラ対94と、この排紙ローラ対94の上部ローラを一体に有する排紙カバー95と、この排紙カバー95との間に排紙路96を形成するガイド板97と、分岐爪77を駆動する駆動手段としてのソレノイド98等を備えており、排紙カバー95は受け渡し部78と離れた側を軸93で支持されて上下方向に回動自在に設けられている。また、ソレノイド98は排紙カバー95に設けられている。図13に示すように、分岐爪77の回転軸100にはアーム101が一体に形成されており、アーム101の一端101aはソレノイド98のロッド98aに係合されている。また、アーム101の他端101bには、常時分岐爪77が実線で示す後処理手段14への搬送がなされる位置をとるようにバネ102が掛けられている。通常排紙する場合にはソレノイド98がオンされ、分岐爪77は二点鎖線で示す位置となる。 【0029】上記構成の下、搬送路80においてジャムが発生した場合には、図14に示すように、搬送カバー片88、90のいずれか一方、又は両方が上方向に回動されて搬送路80が開放される。搬送カバー82が単体形状の場合には最大θの角度の範囲しか開放できず、ジャム処理スペースとしてはかなり狭く、且つ、左右の開放度が異なったものとなるが、本実施例の場合には、画像読み取り手段56と干渉を来すことなく搬送路80をほぼ完全に開放することができ、ジャム処理を容易に行うことができる。各搬送カバー片88、90の長さは分割によって短くなるので、これによってスペーサ72、74の高さも低くでき、画像読み取り手段56の操作面が高くなることを回避することができる。また、いずれか一方の搬送カバー片を回動することでジャムが発生した部分のみを任意に開放することができ、ジャム処理の対応が容易となる。この場合、開放されない搬送カバー片の上方はジャム処理空間となるので、部分的開放を行っても全面開放と同様のスペースでジャム処理を行うことができる。なお、本実施例においては、各搬送カバー片88、90を個別に開放する構成としたが、いずれか一方の回動操作に他方の回動を連動させる構成としてもよい。連動構成とした場合には、搬送路80を全面開放する場合の操作が容易となる。」 (5) 「【0030】通常排紙部76における排紙カバー95の開閉構造は、ジャムが発生し易いのは受け渡し部78であり、この部分を重点的に開放することによってジャム処理を効果的に行う、という観点に基づいている。通常排紙工程でジャムが発生した場合には、図15に示すように、排紙カバー95が上方向に回動されて排紙路96及び受け渡し部78がほぼ全面的に開放される。受け渡し部78側を支点として回動する開放構成とした場合には、受け渡し部78でジャムが発生した場合の処理が困難となるが、本実施例の場合には、受け渡し部78の上面が完全に開放されるので、ジャム処理も容易となる。」 (6) 「【0032】次に他の実施例を図16及び図17に基づいて説明する。なお、上記実施例と同一部分は同一符号にて示している。本実施例における画像形成装置205には、図16に示すように、装置本体4の上部に中継搬送手段105が備えられており、さらにその上部にはスペーサ72、74(当審注:図16、17の記載及び前後の記載を参酌するに、「106、107」の誤記と認める。以下同様。)を介して画像読み取り手段56が備えられている。中継搬送手段70(当審注:「105」の誤記と認める。)は通常排紙部106(当審注:「通常排紙部108」の誤記と認める。以下同様。)を一体的に備えており、この通常排紙部106には受け渡し部78側を支点に回動する、最初の実施例と同様の排紙カバー107(当審注:「109」の誤記と認める。)が備えられている。中継搬送手段105の搬送カバー110は、搬送方向において3つの搬送カバー片111、112、113に分割されており、通常排紙部106側の排紙カバー片111(当審注:「搬送カバー片111」の誤記と認める。)は搬送方向後端を軸114で支持されて、また後処理手段14側の排紙カバー113(当審注:「搬送カバー片113」の誤記と認める。)は搬送方向前端を軸115で支持されてそれぞれ上下方向に回動自在に設けられている。中央の搬送カバー片112は固定されており、その搬送方向の長さLは、中継搬送手段105内を搬送されるシート材の搬送方向における最小のサイズより短く設定されている。ジャヤム(当審注:「ジャム」の誤記と認める。)が発生した場合には、図17に示すように、搬送カバー片111、113のいずれか一方、又は両方が上方向に回動されて搬送路80が部分的に開放される。この場合、シート材20が、固定された中央の搬送カバー片112の下面で止まっても、サイズの差によって搬送カバー片112の前後いずれかにおいてシート材20の端部がはみ出すことになるで(当審注:「なるので」の誤記と認める。)、容易にシート材Pを抜き取ることができる。また、本実施例の場合には、回動自在な搬送カバー片111、113の長さが2分割の場合に比べてさらに短くなるので、これに対応してスペーサ72、74(当審注:「106、107」の誤記と認める。)の高さをさらに低くでき、画像読み取り手段56の操作面の高位置化防止にさらに寄与することができる。換言すれば、排紙カバー(当審注:「搬送カバー」の誤記と認める。)のコンパクト化によって、装置本体4と画像読み取り手段56との間の間隔が小さい構成においても十分なジャム処理スペースを確保することができる。なお、本実施例においても、分岐爪77及びソレノイド98を一体に有する排紙カバー95を備える構成としてもよい。 【0033】図18は、画像読み取り手段56の代わりに1ビン以上のトレイを有するシート材収納手段としての1ビントレイ116を、後処理手段14の代わりに排紙トレイ117を装備した例であるが、この場合においても、上記実施例と同様のジャム処理容易機能を得ることができる。」 (7) また、他の実施例を示す画像形成装置の要部概要図である図12から、以下の事項(以下、「事項1」という。)が読み取れる。 ・通常排紙部76から排紙されたシート材20は、搬送カバー82の上方を図面内の左方向に搬送された後、搬送カバー82の上面に積載されており、通常排紙部76から搬送カバー82の上面にシート材20が至る経路が存在していること。 (8) 同様に、通常排紙部108から排紙されたシート材20は、搬送カバー110の上に積載されるものであるから、事項1と、搬送カバーを3分割した実施例を示す要部概要図である図16から、以下の事項(以下、「事項2」という。)が読み取れる。 ・通常排紙部108から搬送カバー110の上面にシート材20が至る経路が存在していること。 (9) また、搬送カバーを3分割した実施例を示す要部概要図である図16、図16で示した実施例において搬送カバー片を回動して搬送路を開放した状態の概要図である図17から、以下の事項(以下、「事項3」という。)が読み取れる。 ・搬送カバー片110は搬送路80に接する位置に位置しており、搬送路80には、シート材20が搬送可能であること。 ・ジャムが発生した場合、搬送カバー片110は、搬送路80に接する位置から、上方向に回動されることにより、搬送路80が開放される位置に位置していること。 ・通常排紙部108側を左側に配置し、後処理手段14を右側に配置するように見た場合、搬送カバー片110の回動自在な端部は、軸114の右側に位置し、かつ、搬送路80の上側に位置しており、搬送路80に接する位置から反時計回りに移動して搬送路80を開放する位置へ位置していること。 (10) そして、上記(6)には、「なお、上記実施例と同一部分は同一符号にて示している。」と記載されていることから、上記(6)に記載された他の実施例の「搬送路80」は、上記(4)に記載された他の実施例の「搬送路80」と同様に、「後処理手段14へと供給されるシート材20が搬送される」ものである。また、上記(6)に記載された他の実施例の「搬送カバー110」は、上記(4)に記載された他の実施例の「搬送カバー82」と同様に、「通常排紙部108から排紙されたシート材20が積載される」ものである。 したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「後処理手段14へと供給されるシート材20が搬送される搬送路80と、 通常排紙部108から搬送カバー110の上面にシート材20が至る経路と、 通常排紙部108から排紙されたシート材20が積載される搬送カバー110と、を有する中継搬送手段105であって、 前記搬送カバー110は、搬送方向において、通常排紙部108側から後処理手段14側へと順に、3つの搬送カバー片111、112、113に分割されており、通常排紙部108側の搬送カバー片111は搬送方向後端を軸114で支持され、中央の搬送カバー片112は固定されており、 ジャムが発生していない場合には、搬送カバー片111は搬送路80に接する位置に位置しており、搬送路80には、シート材20が搬送可能であり、ジャムが発生した場合には、搬送カバー片111は、搬送路80に接する位置から上方向に回動され、搬送路80が開放される位置に位置することにより、搬送路80が部分的に開放され、通常排紙部108側が左側に配置され、後処理手段14が右側に配置されるように見た場合、搬送カバー片110の回動自在な端部は、軸114の右側に位置し、かつ、搬送路80の上側に位置しており、搬送路80に接する位置から反時計回りに移動して搬送路80を開放する位置へ位置する、 中継搬送手段105。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由、及び当審拒絶理由1に引用された引用文献2(特開2005-306614号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1) 「【0008】 請求項1の構成によれば、下排紙トレイ上の空間を大きくできるので、その下排紙トレイのシート取り出し性が改善され、さらに下排紙部近辺でのジャム処理においても作業に十分なスペースを確保することができる。」 (2) 「【0015】 この排紙部4には、図1および図2に示すように、装置筐体15上面に形成された下排紙トレイ41と、その上方に設けられた上排紙トレイ42とにおける上下2段の排紙トレイが設けられている。この排紙部4は、必要に応じて、もしくは排紙部4として設定されたスペースの大きさによっては3段以上にすることができる。なお、図2において、符号17は搬送ローラ、18は排紙トレイ41、42を選択的に切り換えるための切り換え爪であり、画像複写されたシートは切り換え爪18が実線の位置のとき、排紙コロ43を介して下排紙トレイ41に排紙され、鎖線の位置に切り換えられると、排紙コロ44を介して上排紙トレイ42に排紙される。このとき、本実施形態では中央基準でシートが排紙トレイ41、42に排紙される。 【0016】 図3は、上排紙トレイ42の平面図であり、符号Aで示す側がシート取り出し側であり、他の3面は装置筐体の壁面(図示せず)によって取り囲まれている。この上排紙トレイ42は、図3および図4に示すように、シート排出方向下流側で回転軸51を介して固定部材50に回動可能に装着されている。固定部材50は、装置筐体の壁面に固定されることにより、上排紙トレイ42はシート排出方向下流側が回動支点となり、シート排出方向上流側が自由端となっている。そして、上排紙トレイ42の自由端は図4に明示するように、装置本体の排紙コロ44の下方に形成された段状の受け部15a上に載置されて支えられている。 【0017】 このように構成された画像形成装置は、上排紙トレイ42の全体が図5に示すように、回転軸51を中心として反時計方向に回動することができる。したがって、下排紙トレイ41に排紙されたシートを取り出すとき、もしくは下排紙部およびその近辺でジャムが発生したとき、上排紙トレイ42を上方へ退避させれば胴内排紙部に大きなスペースを確保できるので、その作業性が向上する。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明1の「シート材20」、「搬送路80」、「経路」、「中継搬送手段105」、「軸114」、「搬送方向」、「通常排紙部108側」は、それぞれ、本願発明1の「シート」、「第1の搬送経路」、「第2の搬送経路」、「シート搬送装置」、「軸」、「搬送方向」、「上流側」に相当する。 イ 引用発明1の「搬送カバー110」は、通常排紙部108から排紙され、経路を経たシート材20が積載されるものであるから、本願発明1の「第2の搬送経路から搬送されたシートを積載する第1積載手段」に相当する。 ウ 引用発明1の「搬送カバー片112」は、搬送カバー片111、113とともに搬送カバー110を構成するものであるから、本願発明1の「第1の積載部」に相当する。 エ 引用発明1の「搬送カバー片111」は、軸114で支持され、搬送カバー片112よりも、搬送方向において、通常排紙部108側に位置し、搬送カバー片112とともに、搬送カバー110を構成するものであるから、引用発明1の「搬送カバー片111」は、本願発明1の「前記第2の搬送経路に搬送されるシートの搬送方向に交差する軸の周りを前記第1の積載部に対して独立して移動可能に構成される」ものであって、「前記搬送方向に関して前記第1の積載部の上流側に配置され、前記第1の積載部とともに、前記第2の搬送経路から搬送されたシートを積載」する「第2の積載部」に相当する。 オ 引用発明1の「搬送カバー片111」は、ジャムが発生していない場合には、「搬送路80に接する位置」に回動されており、搬送路80には、シート材20が搬送可能であるから、引用発明1の「搬送カバー片111」の「搬送路80に接する位置」は、本願発明1の「第2の積層部」の「前記第1の搬送経路にシートが搬送される第1の位置」に相当する。 カ 引用発明1の「搬送カバー片111」における、搬送路80が部分的に開放されている「搬送路80を開放する位置」は、中継搬送手段16の外部からジャム処理を可能とする位置であることから、本願発明1の「第2の積層部」の「前記第1の搬送経路が前記シート搬送装置の外部に開放される第2の位置」に相当する。 キ 引用発明1において、通常排紙部108側が左側に配置され、後処理手段14が右側に配置されるように見た場合、「搬送カバー片110」の「回動自在な端部」は、軸114の右側に位置し、かつ、搬送路80の上側に位置しており、搬送路80に接する位置から反時計回りに移動して搬送路80を開放する位置へ位置している一方、本願発明1の「第2の積載部」が有する「部位」は、前記部位が前記軸の右側に位置するように、かつ、前記部位が前記第1の搬送経路の上側に位置するように、前記軸の延びる方向に前記部位を見た場合、前記部位は、前記第1の位置から反時計回りに移動して前記第2の位置に位置するものである。 したがって、引用発明1の「搬送カバー片110」の「回動自在な端部」は、本願発明1の「第2の積載部」が有する「部位」に相当し、引用発明1の「通常排紙部108側が左側に配置され、後処理手段14が右側に配置されるように見た場合、搬送カバー片110の回動自在な端部は、軸114の右側に位置し、かつ、搬送路80の上側に位置しており、搬送路80に接する位置から反時計回りに移動して搬送路80を開放する位置へ位置する」ことは、本願発明1の「前記部位が前記軸の右側に位置するように、且つ前記部位が前記第1の搬送経路の上側に位置するように、前記軸の延びる方向に前記部位を見た場合、前記部位は、前記第1の位置から反時計回りに移動して前記第2の位置に位置」することに相当する。 ク したがって、本願発明1と引用発明1とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> 「シートが搬送される第1の搬送経路と、 シートが搬送される第2の搬送経路と、 第2の搬送経路から搬送されたシートを積載する第1積載手段と、を有するシート搬送装置であって、 前記第1積載手段は、第1の積載部と、前記第2の搬送経路に搬送されるシートの搬送方向に交差する軸の周りを前記第1の積載部に対して独立して移動可能に構成される第2の積載部と、を有し、前記第1の積載部が固定されており、 前記第2の積載部は、前記搬送方向に関して前記第1の積載部の上流側に配置され、前記第1の積載部とともに、前記第2の搬送経路から搬送されたシートを積載し、 前記第2の積載部は、前記第1の搬送経路にシートが搬送される第1の位置と前記第1の搬送経路が前記シート搬送装置の外部に開放される第2の位置とに移動可能に構成される部位を有し、 前記部位が前記軸の右側に位置するように、且つ前記部位が前記第1の搬送経路の上側に位置するように、前記軸の延びる方向に前記部位を見た場合、前記部位は、前記第1の位置から反時計回りに移動して前記第2の位置に位置する、 ことを特徴とするシート搬送装置。」 <相違点> (相違点1) 本願発明1は、 「前記第1の搬送経路の排出口から排出されたシートを積載する第2積載手段と、 前記第2積載手段に積載されたシートを綴じる綴じ手段と、 前記綴じ手段により綴じられたシートを前記第2積載手段から排出する排出手段と、 前記排出手段により前記第2積載手段から排出されたシートを積載する第3積載手段と、」 を有し、 「前記第3積載手段は、前記搬送方向に関して前記第1の搬送経路及び第2積載手段の下流側に配置され、 前記第2積載手段は、シートを積載するための第1積載面を有し、 前記第1の積載部は、前記搬送方向に関して前記第1積載面の上流端部及び前記搬送方向に関して前記第1積載面の下流端部と、前記搬送方向に関して重なるように配置され、 前記第3積載手段は、シートを積載するための第2積載面を有し、前記搬送方向に関して前記第1の積載部の下流側において前記第2積載面が前記シート搬送装置の外部に常時露出するように構成される」のに対し、 引用発明1のシート搬送装置では、上記第2積載手段、綴じ手段、排出手段、第3積載手段に対応する構成を備えていない点。 (相違点2) 第2の積載部が有する部位に関し、本願発明1では、「前記搬送方向に関して前記軸の上流側」に位置しているのに対し、引用発明1では、「搬送カバー片111は搬送方向後端を軸114で支持され」ており、搬送方向に関して軸114の下流側に位置している点。 (2)相違点についての判断 上記相違点1について検討すると、引用文献1の【0001】?【0005】には、中継搬送手段を装置上部に設け、装置側面にフィニッシャ等の他の後処理手段を装着して該フィニッシャと排紙部とを中継搬送手段で結ぶ方式とすることにより、後処理手段を装着するスペースを確保することが記載されている。すなわち、引用発明1は、綴じ手段等の後処理手段を設ける場合には、当該後処理手段をシート搬送装置側面に別装置として装着することを前提とするものであるから、シート搬送装置内に綴じ手段を設ける構成とする動機付けが存在しない。 また、引用文献1の図18及び【0033】には、後処理手段の代わりに、排紙トレイをシート搬送装置の側面に装備する変形例も記載されているが、この例においても、当該シート搬送装置内に綴じ手段を設けることは記載も示唆もされておらず、シート搬送装置内に綴じ手段を設ける構成とする動機付けが存在しない。 さらに、本願発明1は、シート搬送装置が「綴じ手段」を有するのみならず、「第1の搬送経路の排出口から排出されたシートを積載する第2積載手段」、「綴じ手段により綴じられたシートを前記第2積載手段から排出する排出手段」、「排出手段により前記第2積載手段から排出されたシートを積載する第3積載手段」を有することも発明特定事項としているところ、相違点1に係る上記構成は上記引用文献1、2には記載されておらず、この点が設計的事項であるともいえない。 したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1、及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。また、引用文献3を参酌しても、容易に発明をすることができたとはいえない。 2 本願発明2?9について 本願発明2?9は、本願発明1の発明特定事項にさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、上記1(2)と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第6 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定は、請求項1、2について上記引用文献1、2に基づいて、また、請求項3?10について上記引用文献1?3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。そして、原査定においては、引用文献1の図12、14、及び【0027】?【0029】に示された実施例に基づき引用文献1に記載された発明を認定している。しかしながら、当該実施例においても、上記第5、1(1)にて示した相違点1に係る構成は記載されていないから、上記第5、1(2)における判断と同様、本願発明1?9は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第7 第2回当審拒絶理由について 1 特許法第36条第6項第1号について 令和1年11月11日に提出された手続補正書による補正により、補正後の請求項1について、「前記第1の積載部は、前記搬送方向に関して前記第1積載面の上流端部及び前記搬送方向に関して前記第1積載面の下流端部と、前記搬送方向に関して重なるように配置され、」と補正され、また、「前記搬送方向に関して前記第2の積載部の下流側には、・・・(中略)・・・な積載部は無」いとの記載が削除された結果、この拒絶理由は解消した。 2 特許法第36条第6項第2号について (1)請求項1?9について 令和1年11月11日に提出された手続補正書による補正により、補正後の請求項1について、「第1の搬送経路が前記シート搬送装置の外部に開放される」、「第2積載面が前記シート搬送装置の外部に常時露出する」と補正されるとともに、「第2積載面を外部に露出させ」、「第1積載面を外部に露出させ」との記載が削除された結果、この拒絶理由は解消した。 (2)請求項7?9について 令和1年11月11日に提出された手続補正書による補正により、補正後の請求項7について、「第1の搬送経路の搬入口は前記シート搬送装置の外部に開放される」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明1?9は、当業者が引用発明1及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-12-18 |
出願番号 | 特願2013-162578(P2013-162578) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B65H)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 笹木 俊男 |
特許庁審判長 |
藤本 義仁 |
特許庁審判官 |
小林 謙仁 尾崎 淳史 |
発明の名称 | シート搬送装置及びこれを備えた画像形成システム |
代理人 | 西山 善章 |