• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A47L
管理番号 1358010
審判番号 不服2019-2055  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-13 
確定日 2020-01-07 
事件の表示 特願2014-266005「清掃用具」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月11日出願公開、特開2016-123566、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 経緯の概略
本願は,平成26年12月26日の出願であって,平成30年4月24日付けで拒絶の理由が通知され,平成30年7月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成30年11月6日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し,平成31年2月13日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され,平成31年3月19日に前置報告がされた。

第2 本願発明
本願の請求項1,2に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」,「本願発明2」という。)は,特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。
【請求項1】
把手を備えるロッドに接続される清掃ヘッドを備える清掃用具において,
前記清掃ヘッドは,前記ロッドに接続される板状の清掃ヘッド本体と,前記清掃ヘッド本体の外周縁部に軸支され,前記清掃ヘッド本体の上面の一部を覆う格納位置から回動可能な回動板とを備え,
前記清掃ヘッド本体の上面には,第1の装着部が設けられ,
前記回動板の前記格納位置での上面には,第2の装着部が設けられ,
前記清掃ヘッド本体の底面に巻付けられた清掃シートの一端部を前記第1の装着部に着脱可能である一方,他端部を前記第2の装着部に着脱可能であり,
前記回動板は,該回動板による清掃のために,前記格納位置から該回動板と前記清掃ヘッド本体のなす角度が90?150°となる最大回転位置まで付勢力によって回動可能であることを特徴とする清掃用具。
【請求項2】
前記回動板と前記清掃ヘッド本体との間には,前記回動板を前記格納位置に保持する保持状態と,前記保持を解除する解除状態とを切替え可能なストッパが設けられている,請求項1に記載の清掃用具。

第3 原査定の概要
原査定(平成30年11月6日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。すなわち,本願発明1,2は,下記引用文献1,2に記載された発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(引用文献)
1 特許5284945号公報
2 米国特許出願公開第2011/0167583号明細書

第4 原査定についての判断
1 引用文献,引用発明等
(1) 引用文献1
ア 引用文献1には,以下の事項が記載されている(下線は,当審にて付与した。以下同様。)。
・「【請求項1】
清掃面及び前記清掃面の反対にある反対側表面を備えた清掃部と,
支持柄(4)と,
前記反対側表面上に前記支持柄(4)を回動可能に支持する回動機構(5)と,を備え,
前記清掃部の前記清掃面が,第1の清掃材料表面(3a)及び第2の清掃材料表面(3b)を含み,前記第1の清掃材料表面(3a)及び前記第2の清掃材料表面(3b)が被清掃面にそれぞれ接触するようになる清掃装置において,
前記清掃部は,支持板(1)と,前記支持板の1つの側部に回動可能に装着された少なくとも1つの側板(2)と,前記支持板に前記側板が当接する締結位置に前記側板があるときに前記側板の可動縁部を前記支持板に選択的に固定する締結手段であって,前記締結位置にある前記側板と前記支持板とに対して前記支持柄が自由に動くことができるように,前記支持柄から離れた位置に設けられる締結手段とを備え,
前記第1の清掃材料表面(3a)が前記支持板の底部表面に配設され,前記第2の清掃材料表面(3b)が前記側板(2)の側部表面に配設され,
前記側板が前記締結位置にある状態で,前記第1の清掃材料表面(3a)及び前記第2の清掃材料表面(3b)のうちのいずれか一方が前記被清掃面に接触するときに,他方の清掃材料表面が前記被清掃面に対して,90度から180度までの角度を有し,
前記第1の清掃材料表面(3a)の表面積は,前記第2の清掃材料表面(3b)の表面積より大きい,ことを特徴とする,清掃装置。
【請求項2】
前記締結手段は,前記側板(2)の前記可動縁部に設けられる位置決め要素(8)と,前記支持板(1)に設けられ,前記位置決め要素(8)と結合する位置協働手段(8’)とを備え,前記側板(2)及び前記支持板(1)は,前記位置決め要素(8)と前記位置協働手段(8’)とを結合したときに,270度より大きな角度(β)を成し,前記第1の清掃材料表面(3a)が前記支持板(1)の底部表面に配設され,前記第2の清掃材料表面(3b)が前記側板(2)の側部表面に配設される,請求項1に記載の清掃装置。」
・「【0001】
本発明は,清掃装置に監視,より具体的には,複数の清掃面を備えた清掃装置に関する。」
・「【0012】
本発明の目的は,ユーザーが異なる清掃能力を容易に切り替えることができるように簡単な構造及び異なる清掃能力を有する清掃装置を提供することにある。」
・「【0028】
清掃作業が行われる時,第1の清掃材料表面3a及び第2の清掃材料表面3bは,被清掃面とそれぞれ接触するようになる。図2A及び2Bから分かるように,第1の清掃材料表面3a及び第2の清掃材料表面3bは,270度より大きい角度βを成すように設計されている。すなわち,第1の清掃材料表面3aが被清掃面と接触するようになる時,第2の清掃材料表面3bが被清掃面に対して90度より大きく且つ180度未満の角度を有し(図2Aを参照),第2の清掃材料表面3bが被清掃面と接触するようになる時,第1の清掃材料表面3aは被清掃面に対してして90度より大きく180度未満の角度を有する(図2Bを参照)。それ故に,操作者は第1の清掃材料表面3a及び第2の清掃材料表面3bが被清掃面とそれぞれ接触するように清掃作業中に支持柄4を回転させることができる。」
・「【0030】
第2の実施形態の構造は,第1の実施形態の構造と実質的に同一である。それらの区別は,主として第1の実施形態の清掃部が支持板1から構成されているのに対して,第2の実施形態の清掃部が支持板及び支持板1に回動可能に装着された少なくとも1つの側板2から構成されている点にある。
【0031】
図3を参照すると,清掃装置は清掃部と,支持柄4と,回動機構5とを有する。この清掃部は,その底部表面上に清掃面を有する,及びその最上部表面の上に清掃面の反対側にある反対側表面を有する。この支持柄4は,清掃部に対して自由に回転するように反対側表面上に取り付けられた回動機構5により反対側表面上に回動可能に支持される。」
・「【0033】
側板2の表面積は,支持板1の表面積より小さいので,側板2から被清掃面へ加えられる圧力の強さは,支持板1から加えられる圧力の強さよりも大きい。これに加えて,側板2は全体として外側へ僅かに突出する円弧形状を有している。円弧のラジアンは,側板2を被清掃面と正確に接触させるように設計されている。
【0034】
清掃部の清掃面は,第1の清掃材料表面3a及び第2の清掃材料表面3bを含む。本実施形態では,第1の清掃材料表面3a及び第2の清掃材料表面3bは,一体構造体,すなわちモップ布9の上に配設される。モップ布9の一端は,支持板1の上に固定される,及びモップ布9の他端は側板2の上に固定されることによって,支持板1及び側板2がそこに包まれるようになっている。
【0035】
図5を参照すると,モップ布9の平面図である。このモップ布9は,矩形の形状をしている。モップ布9を支持板1及び側板2に簡単に取り付けるために,複数のポケット3aがモップ布9に縫合されてよい。加えて,モップ布9の角部を,支持板1及び側板2の形状に合致するように合わすことによって,モップ布9が支持板1及び側板2にしっかりと固着されるようになる。」
・「【0038】
図3で分かるように,支持板1は側板2に隣接した側部上に傾斜面6を有する。傾斜面6の下部には回動軸が装備されてる,側板2は回動軸を介して傾斜面の下部を中心自由に回転できる。側板2が回転されて傾斜面6と接触するようになると,その遠位側の縁,つまり支持板1に対して自由に回転できる可動縁部が,傾斜面6に当接することによって,側板2及び支持板1が270度より大きい角度βを成すようになる。2つの突出部7は,側板2の遠位側の縁上に一体に形成され,及び複数の位置決め歯群8(それは本実施形態では5つの位置決め歯群を有する)が各突出部7の上に配設される。図3で分かるように,1列の位置協働歯群8’が,支持板1の傾斜面6の最上部に配設される,この位置協働歯群8’はその中心軸に沿って支持板1の両側に配設され,及び4つの歯群が各側に形成されるが,それらの位置は側板2上の位置決め歯群8の列と重なり合う。したがって,側板2の遠位側の縁が傾斜面6の最上部に当接した後に,側板2の位置決め歯群8及び支持板1の位置協働歯群8’は,僅かな力が加えられれば,共にしっかりと固定することができる。勿論,当該技術分野における当業者は,側部表面2及び支持表面1が270度より大きい角度βを成すように,締付環,バックル又はプラグなどのような他の締結手段がまた使用できることを理解しなければならない。前記の締結手段はまた,本発明において保護が求められている範囲に該当するであろう。
【0039】
清掃装置が前記構造を備えているので,ユーザーは通常のフロアを清掃する際により大きな接触面積及びより少ない清掃圧力を有する支持板1を活用できる。そしてユーザーは,頑固な汚れがある特別なフロアを清掃する際により少ない接触面積及びより大きな清掃圧力を有する側板2を活用できるので,ユーザーによって加えられる力が効果的にフロアへ伝達され,これによって頑固な汚れが除去されるようになっている。加えて,側板2が使用される時に,清掃幅がより小さくなるので,本発明の清掃装置がその清掃作業のために狭い空間に入ることができる。モップ布9が支持板1の縁部を包むので,清掃サイト内の壁角部又は家具の脚部を清掃する際に被清掃物体が清掃装置の衝撃により傷つけられたりひっかかれたりしない。」
・「【0041】
図6及び7に示すように,ユーザーはまずモップ布9を支持板1及び側板2で覆う,そして次いで側板2を反時計方向に回動させる。側板2が,その遠位側の縁が傾斜面6の最上部にちょうど当接する位置まで回転されると,位置決め歯群8が支持板1の協働歯群8’内へスナップ嵌めされるように力が側板2に加えられる。こうして,モップ布9が,歯群8,8’の2つの列の間にしっかりと保持される。清掃装置の使用中に,ユーザーは通常のフロアを清掃する際に支持板1を活用することができる,そして頑固な汚れのあるフロアもしくは狭いフロア空間を清掃しなければならない場合には,ユーザーは支持柄4を回転して,支持板1を上向きに振り回して及び側板2を被清掃面と接触させることができることによって,被清掃面を清掃するために支持板1は側板2と取り替えられるようになっている。」
イ 上記の記載及び図面の記載からすると,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(引用発明)
「支持柄4を回動機構5を介して支持する清掃部を備える清掃装置において,
前記清掃部は,前記支持柄4を回動機構5を介して支持する支持板1と,前記支持板1の片側に回動軸を介して回動可能に装着され,前記支持板1の傾斜面6に当接する位置に締結される側板2とを備え,
第1の清掃材料表面3a及び第2の清掃材料表面3bが配設され,ポケット3aが縫合されているモップ布9の角部を,支持板1及び側板2の形状に合致するように合わすことによって,モップ布9を支持板1及び側板2に固着し,第1の清掃材料表面3aは,支持板1の底部表面を覆い,第2の清掃材料表面3bは,側板2の底部表面を覆うように構成されており,
第1の清掃材料表面3a及び第2の清掃材料表面3bは,前記側板2が締結された状態で,270度より大きい角度βを成すように設計され,前記側板2が前記当接する位置にある状態で,第2の清掃材料表面3bが被清掃面と接触する時,第1の清掃材料表面3aが被清掃面に対してして90度より大きく180度未満の角度を有する,清掃装置。」

(2) 引用文献2
ア 引用文献2には,以下の事項が記載されている(括弧内は当審による訳である。)。
・「[0042] With reference to FIG. 1 , an exemplary cleaning tool 20 is illustrated. In the illustrated exemplary embodiment, cleaning tool 20 is a hand-operable floor cleaning device including an elongated handle 24, a hand grip 28 coupled to a first end of handle 24, and a cleaning head 32 coupled to a second end of handle 24 via a universal joint 36. …A wide variety of cleaning implements 40 (see e.g., FIG. 3 ) may be secured to cleaning head 32 to collect dirt, debris, or other unwanted elements present on a surface to be cleaned. For example, cleaning implements 40 may include a wide variety of cleaning wipes, sheets, or cloths such as, for example, dry disposable sheets, wet and dry microfiber cloths, pre-moistened disposable cleaning sheets, etc. 」(図1を参照すると,例示的な清掃工具20が示されている。図示の例示的な実施形態においては,清掃工具20は,細長いハンドル24,ハンドル24の第1の端部に結合されたハンドグリップ28,ユニバーサルジョイント36を介してハンドル24の第2の端部に連結された清掃ヘッド32を備えた,手動操作式の床清掃装置である。…多種多様な清掃用具40(例えば,図3参照)が,清掃される表面上に存在する汚れ,デブリ,または他の望ましくない要素を収集するために清掃ヘッド32に固定されてもよい。例えば,清掃用具40は,例えば,乾燥使い捨てシート,湿潤及び乾燥マイクロファイバー布,予め湿潤された使い捨て清掃用シート等,多種多様な清掃用拭き材,シート,又は布を含むことができる。)
・「[0044] With continued reference to FIG. 1 and additional reference to FIG. 2 , cleaning head 32 includes a central, main panel 44 and a pair of side panels 48 pivotally coupled to opposing side edges 52 of main panel 44. In the illustrated exemplary embodiment, cleaning head 32 includes two pivotal side panels 48.…In the illustrated exemplary embodiment, side panels 48 are pivotally coupled to main panel 44 via living hinges 56. 」(図1を参照し且つ図2を更に参照すると,清掃ヘッド32は,中央のメインパネル44と,メインパネル44の両側縁52に回動可能に連結された一対のサイドパネル48を含む。…図示の例示的な実施形態では,サイドパネル48は,リビングヒンジ56を介してメインパネル44に回動可能に連結される。)
・「[0046] With particular reference to FIG. 2 , cleaning head 32 includes a plurality of connectors 60 for removably coupling, a cleaning implement 40 to cleaning head 32.」(特に図2を参照すると,清掃ヘッド32は,清掃用具40を清掃ヘッド32に取り外し可能に結合するための,複数のコネクタ60を有する。)
・「[0047] Referring now to FIGS. 1-3 , cleaning head 32 includes a pair of biasing members 72 for biasing side panels 48 downward to their flat positions, as illustrated in FIGS. 1-3 . 」(図1-3を参照すると,清掃ヘッド32は,図1-3に示されているように,サイドパネル48を平坦な位置に下方向に付勢する一対の付勢部材72を含む。)
・「[0048] With continued reference to FIGS. 1-3 , cleaning head 32 includes ramp members 92 that can contact a vertical or non-horizontal surface 96 (see FIG. 6 ) to facilitate upward pivoting of side panels 48 relative to main panel 44.」(図1-3を続けて参照すると,清掃ヘッド32は,垂直又は水平ではない表面96(図6参照)に当接し,メインパネル44に対するサイドパネル48の上方への回動を容易にすることができる,ランプ部材92を備えている。)
・「[0055] As indicated previously, side panels 48 have the capability of pivoting upward upon engagement with a vertical or other non-horizontal surface 96. This feature allows a user to utilize cleaning head 32 in its first configuration to efficiently clean a horizontal floor surface, and also allows cleaning head 32 to clean portions of vertical surface 96 and access difficult to clean areas such as corners between the floor surface and vertical surface 96. 」(先に示したように,サイドパネル48は,垂直又は他の水平ではない表面96と係合する際に上方に回動する能力を有している。この特徴は,ユーザが,水平な床面を効率的に清掃するために,清掃ヘッド32をその第1の構成で利用することを可能にし,また,清掃ヘッド32が,垂直面96の部分を清掃することや,床面と垂直面96の間のコーナーのような清掃しにくい区域にアクセスすることを可能にする。)
・「[0056] With reference to FIG. 6 , cleaning head 32 is illustrated just prior to contact with vertical surface 96. Prior to contact with vertical surface 96, cleaning head 32 is positioned in its first configuration or fully flat position. Referring now to FIG. 7 , cleaning head 32 is pushed into vertical surface 96 such that one of the ramp members 92 contacts vertical surface 96 and rides upward along vertical surface 96. This upward movement along vertical surface 96 causes side panel 48 to pivot upward. During this upward pivoting movement of side panel 48, the associated biasing member 72 is being deflected or compressed to exert a downward force on side panel 48. With reference to FIG. 8 , cleaning head 32 is pushed fully against vertical surface 96 until main panel 44 abuts or nearly abuts vertical surface 96. In this position, ramp surface 100 of ramp member 92 rides further upward along vertical surface 96 until bottom surface 64 of side panel 48 is parallel with vertical surface 96 and side edge 52 of main panel 44 engages or nearly engages vertical surface 96. Also, in this position, biasing member 72 is further deflected or compressed to continue exertion of a downward force on side panel 48. As illustrated in FIG. 8 , the side panel 48 abutting vertical surface 96 is located at a position between its fiat position and its fully upward pivoted position. Since side panel 48 is not secured in its fully upward pivoted position when used in this manner, side panel 48 is capable of being biased downward toward its flat position under the bias of biasing member 72 when cleaning head 32 is moved away from vertical surface 96. 」(図6を参照すると,清掃ヘッド32が垂直面96と接触する直前の様子が示されている。垂直面96と接触させる前に,清掃ヘッド32は,その第1の構成又は完全に平坦な位置に配置されている。ここで図7を参照すると,清掃ヘッド32が垂直面96に押し付けられ,ランプ部材92の一つが垂直面96に接触し,垂直面96に沿って上向きに進む。垂直面96に沿った上方への移動は,サイドパネル48が上方に回動させる。サイドパネル48のこの上方への回動運動の間に,関連付けられた付勢部材72は,サイドパネル48上に下向きの力を加えるように,偏向又は圧縮される。図8を参照すると,清掃ヘッド32は,メインパネル44が垂直面96に当接又はほぼ当接するまで,垂直面96に対して完全に押圧される。この位置では,ランプ部材92のランプ面100は,サイドパネル48の底表面64が垂直面96と平行になりメインパネル44の側縁部52が垂直面96に係合又はほぼ係合するまで,垂直面96に沿ってさらに上方へ動く。また,この位置において,付勢部材72は,サイドパネル48に下向きの力を加え続けるためにさらに偏向又は圧縮される。図8に示すように,垂直面96に当接するサイドパネル48がその平坦な位置と上方に完全に回動した位置との間の位置に配置されている。サイドパネル48は,このように用いられる場合,その上方に完全に回動した位置で固定されていないため,清掃ヘッド32が垂直面96から離れる方向に移動されるときに,サイドパネル48は付勢部材72の付勢下でその平坦な位置に向けて下方に付勢されることができる。)
イ 上記の記載及び図面の記載からすると,引用文献2には,次の事項が記載されているといえる。
「ハンドグリップ28を備えるハンドル24に接続される清掃ヘッド32を備える清掃工具20において,
前記清掃ヘッド32は,前記ハンドル24に接続されるメインパネル44と,前記メインパネル44にリビングヒンジ56を介して連結され,上方に完全に回動した位置から回動可能なサイドパネル48とを備え,
前記清掃ヘッド32の下面には,コネクタ60が設けられ,
前記清掃ヘッド32の下面に清掃用具40が取り外し可能に結合可能であり,
前記サイドパネル48は,該サイドパネル48による清掃のために,前記上方に完全に回動した位置から完全に平坦な位置まで付勢部材72によって回動可能である,清掃工具20。」

(3) 引用文献3
前置報告にて示された引用文献3には,以下の事項が記載されている。
・「【0021】
図2は,実施例2に係るダスターモップヘッドを示す側面図である。図2において,本実施例のダスターモップヘッド12は,略長方形の平面形状を有する2つのヘッド部12a,12bを,その短辺方向に間隔を開けて併置して構成している。2つのヘッド部12a,12bは連結部16により連結され,その連結部16に掃除用モップの把手3を取り付けている。また,前側のヘッド部12aの上面の先端には略長方形板状の遮蔽板14が,ダスターモップヘッド12の下面との成す角度が90?150度の範囲のいずれかの角度となるように取り付けられている。
【0022】
本実施例においては,吸着シート11は,2つのヘッド部12a,12bの下面と遮蔽板14の前側の面を同時に覆うように装着される。これにより,吸着シート11の交換により,遮蔽板14に付着した塵埃も同時に除去できる。」
・「【0023】
図3は,実施例3に係るダスターモップヘッドを示す側面図である。図3において,本実施例のダスターモップヘッド22は,実施例1と同様な略長方形の平面形状を有しているが,下面は平坦である。また,ダスターモップヘッド22の上方を通過する塵埃を減少させるため実施例1と同様な形状の遮蔽板24を設けている。遮蔽板24は,ダスターモップヘッド22の上面に,遮蔽板24の一方の長辺24b付近を軸として,ダスターモップヘッド22の下面との成す角度が45?90度程度の範囲で回転可能に取り付けられている。
【0024】
本実施例においては,通常は遮蔽板24の角度は遮蔽板24に働く重力またはバネなどにより最小の角度で保持され,清掃中に遮蔽板24の先端の長辺24aが壁や家具などの障害物に突き当たったときに,遮蔽板24が回転し,その先端24aが後側に移動することで床の壁際や家具の近辺まで掃除することが可能となる。」
・「【0025】
図4は,実施例4に係るダスターモップヘッドを示す側面図である。図4において,本実施例のダスターモップヘッド32は,実施例1と同様な略長方形の平面形状を有しているが,下面は平坦である。また,ダスターモップヘッド32の上方を通過する塵埃を減少させるため実施例1と同様な形状の遮蔽板34を設けている。遮蔽板34は,ダスターモップヘッド32の上面に,遮蔽板34の一方の長辺34bが固定され,ダスターモップヘッド32の下面との成す角度が30?60度程度となるように取り付けられている。
【0026】
本実施例においては,遮蔽板34は変形可能な材料で構成されている。例えば,スポンジ板やゴム板などである。清掃中に遮蔽板34の先端の長辺34aが壁や家具などの障害物に突き当たったときに,遮蔽板34が変形し,その当接部分が後側に移動することで床の壁際や家具の近辺まで掃除することが可能となる。」

2 本願発明1について
(1) 対比
ア 本願発明1と引用発明とを,その有する機能に照らして対比してみるに,引用発明の「支持柄4」が把手を備えることは明らかであるから,本願発明1の「ロッド」に相当し,引用発明の「清掃部」が「支持柄4を回動機構5を介して支持する」態様は「支持柄4」と「清掃部」とを接続すると態様といえるから,引用発明の「清掃部」,「清掃装置」は,それぞれ,本願発明1の「清掃ヘッド」,「清掃用具」に相当する。
イ 引用発明の「清掃部」は「支持板1」と「側板2」を備えるところ,「支持板1」が「前記支持柄4を回動機構5を介して支持する」態様は「支持柄4」と「支持板1」とを接続すると態様といえるから,引用発明の「支持板1」は,本願発明1の「板状の清掃ヘッド本体」に相当する。
また,「側板2」は,「前記支持板1の片側に回動軸を介して回動可能に装着され,前記支持板1の傾斜面6に当接する位置に締結される」ものであるから,本願発明1の「回動板」と同様に,清掃ヘッド本体の外周縁部に軸支されるものである。
そして,「第1の清掃材料表面3a及び第2の清掃材料表面3bは,前記側板2が締結された状態で,270度より大きい角度βを成す」から,「側板2」は「支持板1」の上面の一部を覆うといえ,「側板2」は,本願発明1の「回動板」と,「前記清掃ヘッド本体の上面の一部を覆う」位置から「回動可能な回動板」である点で共通する。
ウ 引用発明の「モップ布9」は,本願発明1の「清掃シート」に相当する。
また,引用発明は「ポケット3aが縫合されているモップ布9の角部を,支持板1及び側板2の形状に合致するように合わすことによって,モップ布9を支持板1及び側板2に固着」するものであるから,「支持板1」及び「側板2」における「モップ布9の角部」に対応する部位は,それぞれ,本願発明1の「第1の装着部」,「第2の装着部」に相当する。
そして,引用発明の「モップ布9」は「第1の清掃材料表面3a及び第2の清掃材料表面3bが配設され」,「第1の清掃材料表面3aは,支持板1の底部表面を覆い,第2の清掃材料表面3bは,側板2の底部表面を覆うように構成されて(いる)」こと,「モップ布9」が着脱可能であることは構造上明らかであることからすると,引用発明は,本願発明1と同様に,「前記清掃ヘッド本体の底面に巻付けられた清掃シートの一端部を前記第1の装着部に着脱可能である一方,他端部を前記第2の装着部に着脱可能であ(る)」といえる。
エ そうすると,本願発明1と引用発明とは,次の点で一致し,相違する。
(一致点)
「把手を備えるロッドに接続される清掃ヘッドを備える清掃用具において,
前記清掃ヘッドは,前記ロッドに接続される板状の清掃ヘッド本体と,前記清掃ヘッド本体の外周縁部に軸支され,前記清掃ヘッド本体の上面の一部を覆う位置から回動可能な回動板とを備え,
前記清掃ヘッド本体の上面には,第1の装着部が設けられ,
前記回動板の前記格納位置での上面には,第2の装着部が設けられ,
前記清掃ヘッド本体の底面に巻付けられた清掃シートの一端部を前記第1の装着部に着脱可能である一方,他端部を前記第2の装着部に着脱可能である,清掃用具。」
(相違点)
本願発明1は,「前記清掃ヘッド本体の上面の一部を覆う格納位置から回動可能な」「回動板」が,「該回動板による清掃のために,前記格納位置から該回動板と前記清掃ヘッド本体のなす角度が90?150°となる最大回転位置まで付勢力によって回動可能である」のに対し,引用発明は,「前記支持板1の傾斜面6に当接する位置に締結される」「側板2」が,「第1の清掃材料表面3a及び第2の清掃材料表面3bは,270度より大きい角度βを成すように設計され,前記側板2が前記当接する位置にある状態で,第2の清掃材料表面3bが被清掃面と接触する時,第1の清掃材料表面3aが被清掃面に対してして90度より大きく180度未満の角度を有する」ものである点。

(2) 判断
ア 引用文献1によれば,引用発明は,「ユーザーが異なる清掃能力を容易に切り替えることができるように簡単な構造及び異なる清掃能力を有する清掃装置を提供すること」を目的とし(【0012】),「第1の清掃材料表面3a及び第2の清掃材料表面3bは,270度より大きい角度βを成すように設計され,前記側板2が前記当接する位置にある状態で,第2の清掃材料表面3bが被清掃面と接触する時,第1の清掃材料表面3aが被清掃面に対してして90度より大きく180度未満の角度を有する」ことにより,「操作者は第1の清掃材料表面3a及び第2の清掃材料表面3bが被清掃面とそれぞれ接触するように清掃作業中に支持柄4を回転させることができる。」(【0028】)もので,「清掃装置が前記構造を備えているので,ユーザーは通常のフロアを清掃する際により大きな接触面積及びより少ない清掃圧力を有する支持板1を活用できる。そしてユーザーは,頑固な汚れがある特別なフロアを清掃する際により少ない接触面積及びより大きな清掃圧力を有する側板2を活用できるので,ユーザーによって加えられる力が効果的にフロアへ伝達され,これによって頑固な汚れが除去されるようになっている。」(【0039】)
そして,「ユーザーはまずモップ布9を支持板1及び側板2で覆う,そして次いで側板2を反時計方向に回動させる。側板2が,その遠位側の縁が傾斜面6の最上部にちょうど当接する位置まで回転されると,位置決め歯群8が支持板1の協働歯群8’内へスナップ嵌めされるように力が側板2に加えられる。こうして,モップ布9が,歯群8,8’の2つの列の間にしっかりと保持される。清掃装置の使用中に,ユーザーは通常のフロアを清掃する際に支持板1を活用することができる,そして頑固な汚れのあるフロアもしくは狭いフロア空間を清掃しなければならない場合には,ユーザーは支持柄4を回転して,支持板1を上向きに振り回して及び側板2を被清掃面と接触させることができることによって,被清掃面を清掃するために支持板1は側板2と取り替えられるようになっている。」(【0041】)といった,使用形態が想定されている。
このように,引用発明は,「側板2」が「支持板1の傾斜面6に当接する位置に締結される」状態で清掃することを前提としているものであって,「ユーザーは,頑固な汚れがある特別なフロアを清掃する際により少ない接触面積及びより大きな清掃圧力を有する側板2を活用できるので,ユーザーによって加えられる力が効果的にフロアへ伝達され,これによって頑固な汚れが除去されるようになっている。」(【0039】)ことに照らせば,引用発明において,「前記支持板1の傾斜面6に当接する位置に締結される」「側板2」を,側板2による清掃のために,当接する位置から該側板2と前記支持板1のなす角度が90?150°となる最大回転位置まで付勢力によって回動可能とすべき理由は特段認められない(付勢力によって回動可能とする構成は,かえって,上記作用の発揮を妨げるともいえる。)。
そして,引用文献2には,ハンドグリップ28を備えるハンドル24に接続される清掃ヘッド32を備えるクリーニング工具20において,サイドパネル48(本願発明1の「回動板」に相当。)を,該サイドパネル48による清掃のために,上方に完全に回動した位置から完全に平坦な位置まで付勢部材72によって回動可能とする点が記載されている(前記1(2)イ)。このような構造によって,本願発明1のように床面に近い壁面等の清掃も可能となっているが(引用文献2[0055],[0056]),サイドパネル48とメインパネル44のなす角度が90?150°となる最大回転位置まで付勢力によって回動可能としたものではない。
また,引用文献3をみても,ダスターモップヘッド22の上面に,ダスターモップヘッド22の上方を通過する塵埃を減少させるための遮蔽板24を,ダスターモップヘッド22の下面との成す角度が45?90度程度の範囲で回転可能に取り付けること,遮蔽板24の角度は遮蔽板24に働く重力またはバネなどにより最小の角度で保持され,清掃中に遮蔽板24の先端の長辺24aが壁や家具などの障害物に突き当たったときに,遮蔽板24が回転し,その先端24aが後側に移動することで床の壁際や家具の近辺まで掃除することが可能となることは記載されているものの(前記1(3)),この「遮蔽板24」は,本願発明1の「回動板」のように床面に近い壁面等の清掃を企図したものではない上,引用文献3には,「遮蔽板24」に関し,遮蔽板24による清掃のために,格納位置から該遮蔽板24とダスターモップヘッド22のなす角度が90?150°となる最大回転位置まで付勢力によって回動可能とする点は記載されていない。
そうすると,引用発明において,「側板2」を,側板2による清掃のために,当接する位置から該側板2と前記支持板1のなす角度が90?150°となる最大回転位置まで付勢力によって回動可能とする動機付けは認められない
イ そして,本願発明1は,前記相違点に係る構成を備えることにより,「回動板を格納位置に回動させた状態では,清掃ヘッド本体の底面によって清掃シートを床面に押しつけつつ滑らせて床面を清掃することができる。また,この状態から回動板を回動させれば,清掃ヘッド本体の底面によって清掃シートを床面に押しつけつつ滑らせて床面を清掃できるだけでなく,回動板によって清掃シートを前記壁面等に押しつけつつ滑らせて前記壁面等を清掃することもできる。」(【0011】),「ここに,回動板4は,回動板4と清掃ヘッド本体3のなす角度が好ましくは90?150°,より好ましくは90?120°となる位置まで回動可能に構成することができ,このような角度まで回動可能に構成することで,回動板4を垂直な壁面に押し当てたときに回動板4をスムーズに立ち上がらせることができる。」(【0027】)といった顕著な効果を奏するものである。
よって,引用発明及び引用例2,3に記載された事項により,前記相違点に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものとは認められない。
ウ 以上のとおりであるから,本願発明1は,引用発明及び引用文献2,3に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

3 本願発明2について
本願発明1を特定するための事項をすべて含む本願発明2は,その余の事項を検討するまでもなく,本願発明1と同様の理由により,引用発明及び引用文献2,3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

4 以上のとおりであるから,原査定を維持することはできない。

第6 むすび
以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-12-16 
出願番号 特願2014-266005(P2014-266005)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A47L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長清 吉範  
特許庁審判長 久保 竜一
特許庁審判官 窪田 治彦
佐々木 芳枝
発明の名称 清掃用具  
代理人 杉村 憲司  
代理人 杉村 光嗣  
代理人 片岡 憲一郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ