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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1358263
審判番号 不服2018-12272  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-12 
確定日 2019-12-26 
事件の表示 特願2014-163820「くびれ付きボトル」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月22日出願公開、特開2016- 37322〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、平成26年8月11日の出願であって、平成30年6月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲を対象とする手続補正がなされたものである。
その後、当審において令和1年5月15日付けで拒絶の理由を通知したところ、同年7月19日に意見書及び手続補正書が提出され、明細書及び特許請求の範囲を対象とする手続補正がなされたものである。


第2.本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、令和1年7月19日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

《本願発明》
口部、肩部、胴部及び底部がボトル軸方向に沿ってこの順に連設されるとともに、横断面視円形状に形成され、前記胴部に、ボトル軸方向の両端部からそれぞれ、反対の端部側に向かうに従い漸次、縮径するくびれ部が形成された合成樹脂製のくびれ付きボトルであって、
前記くびれ部のうち、最も径方向の内側に位置する最深部は、前記くびれ部におけるボトル軸方向の中央部から上側に離れて位置し、
前記最深部は、前記くびれ部におけるボトル軸方向の中央部から、前記くびれ部のボトル軸方向の全長の20%以上40%以下離れて位置し、
前記胴部には、前記肩部の下端部から下側に向けて延びる上胴部と、前記底部の上端部から上側に向けて延びる下胴部と、前記上胴部と前記下胴部とを連結する前記くびれ部と、が形成され、
前記くびれ部のボトル軸方向の長さは、前記上胴部および前記下胴部それぞれのボトル軸方向の長さより長く、
前記上胴部のボトル軸方向の長さは、前記下胴部のボトル軸方向の長さより長いことを特徴とするくびれ付きボトル。

第3.上記当審が通知した令和1年5月15日付け拒絶理由のうち、理由2.の概要
《理由2》 本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明及び引用文献1、3、4に例示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


《引用文献一覧》
1.意匠登録第1315220号公報
2.特開2011-255935号公報
3.特表2010-535137号公報
4.特開2007-62800号公報

第4.引用文献の記載事項
1.引用文献2の記載事項及び引用発明2
当審の拒絶の理由に引用した引用文献2、すなわち、特開2011-255935号公報には、「樹脂製ボトル及び飲料入り樹脂製ボトル」の発明に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)【特許請求の範囲】には以下の記載がある。
「【請求項1】
胴部には周方向に連続した横溝を上下に複数形成した上横溝部と、上横溝部の下に形成してあり、鼓状を成すように周面全体が上下方向で円弧状に凹んだ湾曲凹部とを備えることを特徴とする樹脂製ボトル。」
(2)【発明の詳細な説明】には以下の記載がある。
ア.「【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトル等の樹脂製ボトル及び飲料を充填した飲料入り樹脂製ボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の飲料入り樹脂製ボトルは、経時により中味液が外部に透過することによりボトル内部が減圧になり、ボトル胴部が楕円状に変形することがあった。このようなボトルの変形が生じると、自動販売機で販売する場合には、自動販売機内で飲料入りボトルを保持しているストッパーをすり抜けて、一度に複数のボトルが排出する多本出現象が発生するおそれがある。」
イ.「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、減圧吸収パネルを設けた樹脂製ボトルは、樹脂材の使用量が多くなると共に座屈強度が弱い為、立て積み(上下に積み上げる)に弱く、座屈するおそれがあった。
一方、近年、環境負荷低減や樹脂量低減によるコストダウンを目的とし、ボトルの軽量化が盛んに行われている。
ボトルの軽量化を図る為、胴部に周方向の溝を設けたものがあるが、この種のボトルでは、背景技術で記載したように、ボトル内部に減圧が生じるとボトル胴部が楕円変形し易いという不都合がある。
【0005】
そこで、本発明は、樹脂材使用量を少なくして軽量化を図ることができると共に座屈強度が高く且つボトル内部に減圧が生じた場合に胴部の楕円変形を防止できる樹脂製ボトル及び飲料入り樹脂製ボトルの提供を目的とする。」
ウ.「【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、上横溝部と鼓状の湾曲凹部とを備える構成により、容器内部が減圧したときには、湾曲凹部が変形するが、鼓状の円弧面としてあるので面全体が対象形状の均当な変形を行う。
湾曲凹部のみ変形するので、上横溝部の外径(胴部の最大外径)に影響を与えることがなく、自動販売機で販売する場合でも、従来のような胴部全体に楕円状の変形等が生じて胴部の最大外径が変化することがないので、多本出現象を防止できる。
また、従来のような減圧パネルを設けていないので、樹脂材使用量を少なくして軽量化を図ることができると共に座屈強度を高くできる。」
エ.「【発明を実施するための形態】
【0021】
・・・
樹脂製ボトル1は、底部3と、胴部5と、肩部7と、口部9とから構成されている。口部9はネックリング6の上に位置している。尚、符号10はキャップである。
【0022】
胴部5には、上横溝部11と、上横溝部11の下に位置する湾曲凹部13と、湾曲凹部13の下に位置する下横溝部15とが設けてある。
・・・
上横溝部11と湾曲凹部13との間は胴部5の最大外径部20であり、最大外径Gは67.5mmである。
【0023】
湾曲凹部13は鼓状を成しており、周面全体が上下方向でボトルの内方に円弧状に凹んでいる。湾曲凹部13は、胴部全体の底からネックリングまでの高さHに対して20%?40%の領域に形成してあり、本実施の形態では、約30%である。尚、高さHは184.57mmであり、湾曲凹部13の上下方向の寸法Jは、56mmである。
湾曲凹部13は、最大凹み位置17での外径が胴部の最大外径Gに対して70%?90%である。湾曲凹部13の最大凹み位置17での外径Fは53mmである。
【0024】
湾曲凹部13は、上下に連続した2つの円孤部から構成されており・・・ 最大凹み位置17は、上円弧部23と下円弧部25との境目になっている。」
(3)上記(2)エ.に摘記した「上横溝部11と湾曲凹部13との間は胴部5の最大外径部20であり、最大外径Gは67.5mmである。」、「湾曲凹部13は、最大凹み位置17での外径が胴部の最大外径Gに対して70%?90%である。湾曲凹部13の最大凹み位置17での外径Fは53mmである。」なる事項に関し、「外径」なる用語は、通常、断面が円形状のものに対して用いられる用語であることを踏まえると、上記(2)エ.に摘記した事項及び上記(2)ア.に摘記した「そこで、本発明は、樹脂材使用量を少なくして軽量化を図ることができると共に座屈強度が高く且つボトル内部に減圧が生じた場合に胴部の楕円変形を防止できる樹脂製ボトル及び飲料入り樹脂製ボトルの提供を目的とする。」なる事項からみて、樹脂製ボトル1は、横断面視円形状に形成されていると解される。
(4)【図1】から、以下の事項が看取される。
なお、以下に、理解の便のため、【図1】を元に当審で作成した【図1改】を示す。
ア.樹脂製ボトル1では、口部9、肩部7、上横溝部11と、上横溝部11の下に位置する湾曲凹部13と、湾曲凹部13の下に位置する下横溝部15とが設けてある胴部5及び底部3が、ボトルの上下方向、すなわち、ボトル軸方向に沿ってこの順番で連設されていること。
イ.湾曲凹部13のボトル軸方向の寸法J、すなわち、長さは56mmであることを踏まえ、樹脂製ボトルボトル1各部寸法を計測すると、当該湾曲凹部13のボトル軸方向の中央部から最大凹み位置17までのボトル軸方向の長さは14mmであり、上横溝部11のボトル軸方向長さは58mmであり、下横溝部15のボトル軸方向長さは20mmであること。
「【図1改】



上記(1)?(4)の事項をまとめると、引用文献2には、以下の引用発明2が記載されているといえる。
《引用発明2》
口部9、肩部7、胴部5及び底部3が、ボトルの軸方向に沿ってこの順番で連設されており、横断面視円形状に形成され、胴部5には、上横溝部11と、上横溝部11の下に位置し、鼓状を成しており、周面全体が上下方向でボトルの内方に円弧状に凹んでいる湾曲凹部13と、湾曲凹部13の下に位置する下横溝部15とが設けてある、樹脂製ボトル1であって、前記湾曲凹部13のボトル軸方向の長さは56mmであり、前記湾曲凹部13のボトル軸方向の中央部から最大凹み位置17までのボトル軸方向の長さは14mmであり、前記上横溝部11のボトル軸方向長さは58mmであり、前記下横溝部15のボトル軸方向長さは20mmであり、胴部5の最大外径部20での最大外径Gは67.5mmであり、湾曲凹部13の最大凹み位置17での外径Fは53mmである、樹脂製ボトル1。

2.引用文献1の記載事項
当審の拒絶の理由に引用した引用文献1、すなわち、意匠登録第1315220号公報には、以下の事項が記載されている。
(1)[意匠の説明]には「この意匠に係る物品は、例えばポリエチレンテレフタレート等の透明合成樹脂材料によって成形された液体充填用の瓶である。実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界を示す線である。」と記載されている。
(2)[正面図]から、以下の事項が看取される。
なお、以下に、理解の便のため、[正面図]を元に当審で作成した[正面図改]を示す。
a.「透明合成樹脂材料によって成形された液体充填用の瓶」は、C部分、D部分、E部分、F部分、G部分及びH部分が、瓶軸方向に沿ってこの順番で連設されていること。
b.F部分は、瓶軸方向の両端部から、それぞれ反対の端部に向かうに従い漸次、縮径するくびれ形状をしていること。
c.F部分の瓶軸方向の長さは、E部分の瓶軸方向長さ及びG部分の瓶軸方向の長さよりも長いこと。
「[正面図改]



(3)上記(1)及び(2)の事項をまとめると、引用文献1には、以下の事項が記載されている。
《引用文献1記載事項》
C部分、D部分、E部分、F部分、G部分及びH部分が、瓶軸方向に沿ってこの順番で連設されるとともに、前記F部分は、瓶軸方向の両端部から、それぞれ反対の端部に向かうに従い漸次、縮径するくびれ形状をしている、透明合成樹脂材料によって成形された液体充填用の瓶において、前記F部分の瓶軸方向の長さが、前記E部分の瓶軸方向長さ及び前記G部分の瓶軸方向の長さよりも長いもの。

3.引用文献3の記載事項
当審の拒絶の理由に引用した引用文献3、すなわち、特表2010-535137号公報には、以下の事項が記載されている。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性プラスチック材料製のプリフォームからブロー成形または延伸ブロー成形によって得られるボトルまたはジャーなどの容器の製造に関するものである。」
(2)「【図面の簡単な説明】
【0020】
・・・
【図27】図27は、本体がとることのできる形状による、上記の図面に示した底部を備える容器の可能な変更例を示した図である。
・・・」
(3)「【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には、PET(テレフタル酸ポリエチレン)などの熱可塑性プラスチック材料製のプリフォームから延伸ブロー成形によって形成された容器1、この場合には、容量が約0.6lの頚部の広いボトルが図示されている。
【0022】
この容器1は、上端部にねじ切りされた頚部2を備えており、その頚部2には飲み口3が形成されている。容器1は、頚部2の延長部で、その上部に頚部2と反対の方向にラッパ型に広がる肩部4を備えており、この肩部4は、一般的に容器1の主軸Xを中心とする回転円筒形の形状である、側壁すなわち本体5によって延長されている。」
(4)【図27】から、以下の事項が看取される。
なお、以下に、理解の便のため、【図27】を元に当審で作成した【図27改】を示す。
a.「PET(テレフタル酸ポリエチレン)などの熱可塑性プラスチック材料製のプリフォームから延伸ブロー成形によって形成された容器1」は、c部分、d部分、e部分、f部分、g部分及びh部分が、瓶軸方向に沿ってこの順番で連設されていること。
b.f部分は、瓶軸方向の両端部から、それぞれ反対の端部に向かうに従い漸次、縮径するくびれ形状をしていること。
c.f部分の瓶軸方向の長さは、e部分の瓶軸方向長さ及びg部分の瓶軸方向の長さよりも長いこと。
「【図27改】


(5)上記(1)?(4)の事項をまとめると、引用文献3には、以下の事項が記載されている。
《引用文献3記載事項》
c部分、d部分、e部分、f部分、g部分及びh部分が、容器軸方向に沿ってこの順番で連設されるとともに、前記f部分は、容器軸方向の両端部から、それぞれ反対の端部に向かうに従い漸次、縮径するくびれ形状をしている、PET(テレフタル酸ポリエチレン)などの熱可塑性プラスチック材料製のプリフォームから延伸ブロー成形によって形成された容器1において、前記f部分の容器軸方向の長さが、前記e部分の容器軸方向長さ及び前記g部分の容器軸方向の長さよりも長いもの。

4.引用文献4の記載事項
当審の拒絶の理由に引用した引用文献4、すなわち、特開2007-62800号公報には、以下の事項が記載されている。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は炭酸成分等により内部が加圧状態となる用途に使用される合成樹脂製壜体に関する。」
(2)「【0027】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1?図3は本発明の合成樹脂製壜体の一実施例を示すものである。図1は正面図、図2(a)は図1中のA-AおよびC-C線に沿って示す平断面図であり、図2(b)はB-B線に沿って示す平断面図である。
この壜体1はPET樹脂製の二軸延伸ブロー成形品であり、口筒部2、肩部3、胴部4、底部5から成り、全高さが207mm、通称容量350mlで、胴部4の略中央高さ位置に、くびれ状にウエスト部7wが形成されている。また、口筒部2は熱結晶化処理により白化しており、また底部5はペタロイド状の形状としている。
【0028】
胴部4の上端部と下端部には、平断面形状が円形(図2(a)参照)の短円筒状の上短円筒部8tと下短円筒部8bが配設されている。そして上短円筒部8tと下短円筒部8bの間には、上端および下端から中央高さ位置のウエスト部7wにかけて緩やかに縮径する形状とした縮径部7が形成されている。
図2(b)に示したようにウエスト部7wの平断面形状は円形からわずかに扁平にした楕円状であり、縮径部7では上端および下端からウエスト部7wに至るまで緩やかに縮径すると共に、円形状から楕円形状まで徐々にその平断面形状を変化させるようにしている。
なお、上短円筒部8tと下短円筒部8bの径は62mmであり、ウエスト部7wでは短径Dsが42mm、長径Dlが45mmである。」
(3)「【図1】


(4)【図1】から、以下の事項が看取される。
縮径部7の壜軸方向の長さは、上短円筒部8tの壜軸方向長さ及び下短円筒部の壜軸方向長さよりも長いこと。
(5)上記(1)?(4)の事項をまとめると、引用文献4には、以下の事項が記載されている。
《引用文献4記載事項》
胴部4の上端部と下端部には、平断面形状が円形の短円筒状の上短円筒部8tと下短円筒部8bが配設され、前記上短円筒部8tと下短円筒部8bの間には、上端および下端から中央高さ位置のウエスト部7wにかけて緩やかに縮径する形状とした縮径部7が形成されている、PET樹脂製の二軸延伸ブロー成形品である壜体1において、前記縮径部7の壜軸方向の長さは、前記上短円筒部8tの壜軸方向長さ及び前記下短円筒部8bの壜軸方向長さよりも長いもの。

第5.対比
引用発明2の「口部9」、「肩部7」、「胴部5」、「底部3」、「上横溝部11」、「湾曲凹部13」、「下横溝部15」、「最大凹み位置17」は、その構成からみて、各々、本願発明の「口部」、「肩部」、「胴部」、「底部」、「上胴部」、「くびれ部」、「下胴部」、「最も径方向の内側に位置する最深部」に相当する。
また、引用発明2において、「最大凹み位置17」は、「湾曲凹部13」のボトル軸方向の中央部から、ボトル軸方向に離れていることが明らかであり、また、「湾曲凹部13のボトル軸方向の中央部から最大凹み位置17までのボトル軸方向の長さは14mmであ」ることは、前記「最大凹み位置17」が、前記「湾曲凹部13」のボトル軸方向の中央部から、ボトル軸方向長さの25(=14/56×100)%離れて位置することを意味するから、本願発明における「前記くびれ部のうち、最も径方向の内側に位置する最深部は、前記くびれ部におけるボトル軸方向の中央部からボトル軸方向に離れて位置し、前記最深部は、前記くびれ部におけるボトル軸方向の中央部から、前記くびれ部のボトル軸方向の全長の20%以上40%以下離れて位置し、」に相当する。
さらに、引用発明2において、「前記湾曲凹部13のボトル軸方向の長さは56mmであり」、「前記上横溝部11のボトル軸方向長さは58mmであり、前記下横溝部15のボトル軸方向長さは20mmであ」ることは、「前記上横溝部11のボトル軸方向長さ」が、「前記下横溝部15のボトル軸方向長さ」よりも長いことを意味し、「前記湾曲凹部13のボトル軸方向の長さ」が、「前記下横溝部15のボトル軸方向長さ」より、長いことを意味することが明らかである。
したがって、本願発明と引用発明2との一致点、相違点は、以下の通りである。
《一致点》
口部、肩部、胴部及び底部がボトル軸方向に沿ってこの順に連設されるとともに、横断面視円形状に形成され、前記胴部に、ボトル軸方向の両端部からそれぞれ、反対の端部側に向かうに従い漸次、縮径するくびれ部が形成された合成樹脂製のくびれ付きボトルであって、
前記くびれ部のうち、最も径方向の内側に位置する最深部は、前記くびれ部におけるボトル軸方向の中央部から上側に離れて位置し、
前記最深部は、前記くびれ部におけるボトル軸方向の中央部から、前記くびれ部のボトル軸方向の全長の20%以上40%以下離れて位置し、
前記胴部には、前記肩部の下端部から下側に向けて延びる上胴部と、前記底部の上端部から上側に向けて延びる下胴部と、前記上胴部と前記下胴部とを連結する前記くびれ部と、が形成され、
前記上胴部のボトル軸方向の長さは、前記下胴部のボトル軸方向の長さより長い、くびれ付きボトル。

《相違点》
本願発明では、「くびれ部のボトル軸方向の長さ」が、「前記上胴部および前記下胴部それぞれのボトル軸方向の長さより長」いのに対し、引用発明2では、上記「くびれ部のボトル軸方向の長さ」に相当する「湾曲凹部13のボトル軸方向の長さ」が、「前記下横溝部15のボトル軸方向長さ」よりも長いが、「前記上横溝部11のボトル軸方向長さ」よりも短い点。

第6.判断
上記《相違点》について検討する。
上記第4.の2.?4.で示したように引用文献1、3、4には、各々、引用文献1記載事項、引用文献3記載事項、引用文献4記載事項が記載されている。
そして、引用文献1記載事項の「透明合成樹脂材料によって成形された液体充填用の瓶」、「F部分の瓶軸方向の長さ」、「E部分の瓶軸方向長さ」、「G部分の瓶軸方向の長さ」、引用文献3記載事項の「PET(テレフタル酸ポリエチレン)などの熱可塑性プラスチック材料製のプリフォームから延伸ブロー成形によって形成された容器1」、「f部分の容器軸方向の長さ」、「e部分の容器軸方向長さ」、「g部分の容器軸方向の長さ」、引用文献4記載事項の「PET樹脂製の二軸延伸ブロー成形品である壜体1」、「縮径部7の壜軸方向の長さ」、「上短円筒部8tの壜軸方向長さ」、「下短円筒部8bの壜軸方向長さ」は、本願発明の「合成樹脂製のくびれ付きボトル」、「くびれ部のボトル軸方向の長さ」、「上胴部」の「ボトル軸方向長さ」、「下胴部」の「ボトル軸方向長さ」に、各々、対応するものである。
してみると、合成樹脂製のくびれ付きボトルにおいて、くびれ部のボトル軸方向の長さが、上胴部および下胴部それぞれのボトル軸方向の長さより長い形態のものは、上記引用文献1記載事項、引用文献3記載事項、引用文献4記載事項に例示されるように、本願出願前に周知の事項であったというべきであり、その形態の採否は、当業者が適宜決定し得た程度のことであったといえる。
そして、引用文献2には「前記上横溝部11のボトル軸方向長さ」に関し特段の言及がないことを踏まえると、引用発明2において、上記周知技術を採用し、「前記湾曲凹部13のボトル軸方向の長さ」を、「前記下横溝部15のボトル軸方向長さ」よりも長いものである「前記上横溝部11のボトル軸方向長さ」よりも長くするようにその構成を変更することは、当業者が適宜なし得たことというべきである。
したがって、本願発明は、引用発明2及び引用文献1、3、4の記載に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明2及び引用文献1、3、4の記載に例示される上記周知技術が奏する作用効果から当業者が予測し得たものにすぎない。

なお、請求人は、令和1年7月19日付け意見書の2.(2)において、引用文献3に記載の技術では、くびれ部の最深部が、くびれ部におけるボトル軸方向の中央部から下側に離れて位置しており、この技術を引用文献2に記載の発明に適用しても、本願発明のような、「前記くびれ部のうち、最も径方向の内側に位置する最深部は、前記くびれ部におけるボトル軸方向の中央部から上側に離れて位置し、」といった構成が得られることはなく、また、引用文献2の段落【0030】には、「湾曲凹部13において、上円弧部23を下円弧部25よりも小さくしているので、樹脂製ボトル1を持つときに、指を上円弧部23に配置して上横溝部11の下端部(最大外径部20)に指をかけ易く、樹脂製ボトルを持ちやすい。」と記載されており、引用文献2に記載の発明に、引用文献3に記載の技術を適用する動機付けを見出すことはできないとの旨を主張し、同2.(3)において、引用文献4に記載の発明は、炭酸飲料が充填される陽圧用のボトルに関するものであり、このような発明を、引用文献2に記載されているような、「ボトル内部に減圧が生じた場合に胴部の楕円変形を防止できる樹脂製ボトル及び飲料入り樹脂製ボトルの提供を目的とする。」(段落【0005】)発明に適用する動機付けは、特に当業者においてあり得ないと思料の旨を主張している。
しかしながら、引用文献2及び3の各々には、上記主張に係る事項とは別に、上記引用文献3記載事項及び引用文献4記載事項が記載されているところ、これらの記載事項や引用文献1記載事項からみて、合成樹脂製のくびれ付きボトルにおいて、くびれ部のボトル軸方向の長さが、上胴部および下胴部それぞれのボトル軸方向の長さより長い形態のものは、本願出願前に周知の事項であったというべきであることは、既に示したとおりであるから、請求人の上記主張は、上記判断を覆す根拠にはならない。

第7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明2及び引用文献1、3、4の記載に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-10-15 
結審通知日 2019-10-23 
審決日 2019-11-08 
出願番号 特願2014-163820(P2014-163820)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
P 1 8・ 113- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西堀 宏之西山 智宏  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 渡邊 豊英
白川 敬寛
発明の名称 くびれ付きボトル  
代理人 仁内 宏紀  
代理人 鈴木 三義  
代理人 棚井 澄雄  

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