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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1358275
審判番号 不服2019-5276  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-22 
確定日 2019-12-26 
事件の表示 特願2018-34002号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年6月7日出願公開、特開2018-86458号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年2月27日の出願であって、同年11月8日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月26日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成31年1月11日付け(拒絶査定の謄本の送達日:同年1月22日)で拒絶査定がなされ、それに対して、同年4月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成31年4月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年4月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「複数種類の表示演出を実行可能な表示手段と特別図柄を変動表示する特別図柄変動表示手段とを備える遊技機であって、
前記特別図柄変動表示手段に表示される前記特別図柄の変動表示を制御する主制御手段と、
前記表示手段に表示される装飾図柄の変動表示を制御する副制御手段と、を備え、
前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第1の表示演出をおこなう場合があり、
前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第2の表示演出をおこなう場合があり、
前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第3の表示演出をおこなう場合があり、
前記第1の表示演出は、前記装飾図柄を変動表示させる演出であり、
前記第2の表示演出は、前記特別図柄の変動中に、当該特別図柄の変動終了時間を表す指標を表示させる演出であり、
前記指標は、カーソル表示を含み、前記カーソル表示が開始位置から終了位置まで移動することによって、前記特別図柄の変動終了時間を表しており、
前記第3の表示演出は、前記指標において前記カーソル表示を終了位置に配置させる演出であり、
前記第1の表示演出と前記第2の表示演出と前記第3の表示演出とを含む組み合わせ演出がおこなわれる場合があり、
前記組み合わせ演出では、前記第1の表示演出がおこなわれているときに、前記第2の表示演出がおこなわれ、その後、前記特別図柄変動表示手段において前記特別図柄が変動状態から停止する場合に、前記第3の表示演出がおこなわれる、
ことを特徴とする遊技機。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年12月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「複数種類の表示演出を実行可能な表示手段と特別図柄を変動表示する特別図柄変動表示手段とを備える遊技機であって、
前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第1の表示演出をおこなう場合があり、
前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第2の表示演出をおこなう場合があり、
前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第3の表示演出をおこなう場合があり、
前記第1の表示演出は、装飾図柄を変動表示させる演出であり、
前記第2の表示演出は、前記特別図柄の変動中に、当該特別図柄の変動終了時間を表す指標を表示させる演出であり、
前記指標は、カーソル表示を含み、前記カーソル表示が開始位置から終了位置まで移動することによって、前記特別図柄の変動終了時間を表しており、
前記第3の表示演出は、前記指標において前記カーソル表示を終了位置に配置させる演出であり、
前記第1の表示演出と前記第2の表示演出と前記第3の表示演出とを含む組み合わせ演出がおこなわれる場合があり、
前記組み合わせ演出では、前記第1の表示演出がおこなわれているときに、前記第2の表示演出がおこなわれ、その後、前記特別図柄変動表示手段において前記特別図柄が変動状態から停止する場合に、前記第3の表示演出がおこなわれる、
ことを特徴とする遊技機。」

2 補正の適否
(1)補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「特別図柄変動表示手段」について、「特別図柄変動表示手段」に表示される「特別図柄」の「変動表示」が「主制御手段」により「制御」されることを特定することにより、補正前の請求項1に記載された「特別図柄変動表示手段」を限定するものである。
(2)補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「表示手段」で「実行可能」な「装飾図柄」の「変動表示」について、「表示手段」に表示される「装飾図柄の変動表示」が「副制御手段」により「制御」されることを特定することにより、補正前の請求項1に記載された「表示手段」を限定するものである。
そして、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の特許請求の範囲に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
そして、本件補正は、【0044】?【0046】、【0049】、【0050】、【0154】、【0155】、図3、図4、図22、図26、図36、図37等の記載に基づいており、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、について以下において検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)において示した次に特定されるとおりのものである(A?Lについては、発明特定事項を分説するため当審で付した。)。

「A 複数種類の表示演出を実行可能な表示手段と特別図柄を変動表示する特別図柄変動表示手段とを備える遊技機であって、
B 前記特別図柄変動表示手段に表示される前記特別図柄の変動表示を制御する主制御手段と、
C 前記表示手段に表示される装飾図柄の変動表示を制御する副制御手段と、を備え、
D 前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第1の表示演出をおこなう場合があり、
E 前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第2の表示演出をおこなう場合があり、
F 前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第3の表示演出をおこなう場合があり、
G 前記第1の表示演出は、前記装飾図柄を変動表示させる演出であり、
H 前記第2の表示演出は、前記特別図柄の変動中に、当該特別図柄の変動終了時間を表す指標を表示させる演出であり、
I 前記指標は、カーソル表示を含み、前記カーソル表示が開始位置から終了位置まで移動することによって、前記特別図柄の変動終了時間を表しており、
J 前記第3の表示演出は、前記指標において前記カーソル表示を終了位置に配置させる演出であり、
K 前記第1の表示演出と前記第2の表示演出と前記第3の表示演出とを含む組み合わせ演出がおこなわれる場合があり、
前記組み合わせ演出では、前記第1の表示演出がおこなわれているときに、前記第2の表示演出がおこなわれ、その後、前記特別図柄変動表示手段において前記特別図柄が変動状態から停止する場合に、前記第3の表示演出がおこなわれる、
L ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2017-64353号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0022】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1から図42を参照し、第1実施形態として、本発明をパチンコ遊技機(以下、単に「パチンコ機」という)1に適用した場合の一実施形態について説明する。図1は、第1実施形態におけるパチンコ機1の正面図であり、図2はパチンコ機1の遊技盤13の正面図であり、図3はパチンコ機1の背面図である。」

「【0045】
遊技領域には、球が入賞することにより5個から15個の球が賞球として払い出される複数の一般入賞口63が配設されている。また、遊技領域の中央部分には、可変表示装置ユニット80が配設されている。可変表示装置ユニット80には、第1入賞口64、第2入賞口140のいずれかの入賞(始動入賞)をトリガとして、第1図柄表示装置37A,37Bにおける変動表示と同期させながら、第3図柄の変動表示を行う液晶ディスプレイ(以下単に「表示装置」と略す)で構成された第3図柄表示装置81と、第1スルーゲート66の球の通過をトリガとして第2図柄を変動表示するLEDで構成される第2図柄表示装置(図示せず)とが設けられている。」

「【0047】
第3図柄表示装置81は9インチサイズの大型の液晶ディスプレイで構成されるものであり、表示制御装置114(図4参照)によって表示内容が制御されることにより、例えば上、中および下の3つの図柄列が表示される。各図柄列は複数の図柄(第3図柄)によって構成され、これらの第3図柄が図柄列毎に横スクロールして第3図柄表示装置81の表示画面上にて第3図柄が可変表示されるようになっている。本実施形態の第3図柄表示装置81は、主制御装置110(図4参照)の制御に伴った遊技状態の表示が第1図柄表示装置37A,37Bで行われるのに対して、その第1図柄表示装置37A,37Bの表示に応じた装飾的な表示を行うものである。なお、表示装置に代えて、例えばリール等を用いて第3図柄表示装置81を構成するようにしても良い。」

「【0833】
ここで、本制御例における確変状態では上述したように特別図柄の抽選の結果が大当たりとなる確率が高くなるとともに、スルーゲート66を通過することにより抽選が実行される普通図柄が当たりとなる抽選確率も高くなるように設定されている。さらに、特別図柄および普通図柄の抽選結果が確定するまでの時間(以下、変動時間と称す。)も通常の遊技状態に比べて短くなるように設定されている。また、本制御例における確変状態は、大当たり遊技終了後、特別図柄の抽選の結果が100回連続で大当たり以外の抽選結果となるまで継続するように設定されており、その特別図柄の抽選が100回連続して大当たり以外となった後には確変状態から通常の遊技状態へと移行するように設定されている。このように遊技者に有利となる確変状態が継続する期間に制限を設けることにより、遊技者に対して大当たりとなるよう意欲的に遊技を行わせることができ、遊技の興趣を向上させることができるという効果がある。なお、確変状態が継続する期間についてはこれ以外の内容に設定してもよく、例えば、次回の大当たりに当選するまで継続させてもよいし、特別図柄の抽選が実行されるタイミングと同じタイミングで確変状態を通常の遊技状態へと移行させる移行抽選を行っても良い。また、確変状態が継続する期間を時間で設定してもよい。」

「【0864】
続けて、図112および図113を参照して、本パチンコ機10の第3図柄表示装置81の表示領域にて実行される演出の表示態様について説明する。図112(a)は、第3図柄の変動パターンとして所定の変動パターン(スーパーリーチまたはスペシャルリーチ)が選択された場合に実行されるリーチナビ演出の表示例を示した図であり、図112(a)および図113(a)?(c)は、リーチナビ演出の演出表示態様の一例を示した図である。このリーチナビ演出は、所定の変動パターン(スーパーリーチまたはスペシャルリーチ)によって実行される演出(主演出)の態様の進行状況を、遊技者が視覚的に把握できるようにし、段階的に報知または示唆する演出(副演出)である。このように、第3図柄表示装置81にて実行される主演出の内容(主演出の演出説明や変動時間や大当たりとなる期待度)を、副演出を用いて表示することにより、遊技者に分かりやすい遊技を提供することができる。
【0865】
次に、図112(a)を参照して、リーチナビ演出について具体的に説明をする。図112(a)に示すように、第3図柄表示装置81にて所定の変動パターン(スーパーリーチまたはスペシャルリーチ)が選択されると、第3図柄が主表示領域Dmの右上側に設けられた小領域Dm5に縮小されて変動表示され、変動パターンに基づく主演出が主表示領域Dmにて実行される。そして、主表示領域Dmの左下側に設けられた小領域Dm4に副演出であるリーチナビ演出が実行される。
【0866】
この小領域Dm4には、リーチナビ演出を構成する画像として、主演出が実行される期間を示すタイムゲージDm4aと、主演出の進行度合いを視覚的に示す移動表示部としてキャラクタDm4bと、主演出の演出結果の少なくとも一部を報知する報知部Dm4cと、主演出の演出結果の少なくとも一部を案内する案内表示部Dm4d,Dm4eが表示されている。
【0867】
タイムゲージDm4aは、主演出が実行される期間を示すためのゲージであり、図112の視点で左側から右側に向けて移動表示部であるキャラクタDm4bが進行するように表示される。このタイムゲージDm4aの右端には報知部Dm4cは表示されており、主表示領域Dmにて実行される主演出に対応して移動するキャラクタDm4bが報知部Dm4cに到達すると、報知部Dm4cに報知内容が停止表示される。なお、本制御例では、主演出が実行される期間を示すための期間表示部としてタイムゲージDm4aを用いたが、それ以外の表示を用いても良く、例えば、所定の完成物(例えば、建築物や料理)を作成する過程を表示可能な構成にしてもよい。」

「【0870】
報知部Dm4cは、主演出の演出結果を報知するためのものであり、小領域Dm4上で左右方向に回転する回転表示(図112(b)参照)が行われる。報知部Dm4cはその両面に主演出の演出結果を示す指標が表示可能に構成されており、報知部Dm4cの回転表示が停止した際に小領域Dm4に停止表示される指標により主演出の演出結果が報知される。
【0871】
本パチンコ機10では主演出の演出結果を報知するための指標として、大当たりであることを示す指標である「V」と、外れであったことを示す指標である「×」と、主演出の演出が更に継続して実行されることを示す指標である「発展」と、主演出の演出結果を報知しないことを示す指標である「?」とが設定されており、これら指標のうち2つの指標が選択され報知部Dm4cの一面側に1の指標(例えば「V」)が、多面側に他の指標(例えば「?」)が表示された状態で回転表示される。
【0872】
このように構成することで、例えば、報知部Dm4cの両面に「V」の指標と「×」の指標が表示されている状態で報知部Dm4cが回転表示されている場合は、キャラクタDm4bが報知部Dm4cに到達した時点でそれ以上の発展が無いことを事前に報知することとなる、つまり、今回の主演出の演出時間(主演出に対応する特別図柄の変動時間)を事前に把握することができるため、遊技者が分かりやすい主演出を表示することができる。また、報知部Dm4cの両面に「V」の指標と「発展」の指標が表示されている状態で報知部Dm4cが回転表示されている場合は、キャラクタDm4bが報知部Dm4cに到達した時点で大当たりとなるか、そこから更に主演出が発展するかの何れかであることを事前に報知することとなるため、遊技者が所定のタイミング(キャラクタDm4bが報知部Dm4cに到達するタイミング)に期待しながら安心して主演出を見ることができる。」

「【1167】
次に、図122を参照して、主制御装置110内のMPU201により実行される特別図柄変動処理(S104)について説明する。図122は、この特別図柄変動処理(S104)を示すフローチャートである。この特別図柄変動処理(S104)は、タイマ割込処理(図121参照)の中で実行され、第1図柄表示装置37A,37Bにおいて行う特別図柄(第1図柄)の変動表示や、第3図柄表示装置81において行う第3図柄の変動表示などを制御するための処理である。」

イ 上記アから、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「表示画面上にて複数の図柄(第3図柄)が可変表示され、装飾的な表示を行ったり、表示領域にて演出を実行する第3図柄表示装置81と(【0047】、【0864】)
特別図柄(第1図柄)の変動表示を行う第1図柄表示装置37A,37B(【1167】)とを備えるパチンコ機1(【0022】)であって、
第1図柄表示装置37A,37Bにおいて行う特別図柄(第1図柄)の変動表示を制御する主制御装置110と(【1167】)、
第3図柄表示装置81の表示内容を制御する表示制御装置114と(【0047】)、を備え、
第3図柄表示装置81は、第1図柄表示装置37A,37Bにおける変動表示と同期させながら、第3図柄の変動表示を行い(【0045】)、
第3図柄の変動パターンとして所定の変動パターンが選択されると、第3図柄表示装置81にて、第3図柄が主表示領域Dmの右上側に設けられた小領域Dm5に縮小されて変動表示される(【0864】、【0865】)と共に、主表示領域Dmの左下側に設けられた小領域Dm4に、所定の変動パターンによって実行される主演出の態様の進行状況を、遊技者が視覚的に把握できるようにするリーチナビ演出が実行され(【0864】、【0865】)、
この小領域Dm4には、リーチナビ演出を構成する画像として、主演出が実行される期間を示すタイムゲージDm4aと、主演出の進行度合いを視覚的に示す移動表示部としてキャラクタDm4bと、主演出の演出結果を報知する報知部Dm4cが表示され(【0866】)、
タイムゲージDm4aは、左側から右側に向けて移動表示部であるキャラクタDm4bが進行するように表示され、このタイムゲージDm4aの右端には報知部Dm4cが表示されており、主表示領域Dmにて実行される主演出に対応して移動するキャラクタDm4bが報知部Dm4cに到達すると、報知部Dm4cに報知内容が停止表示され(【0867】)、
報知部Dm4cは、小領域Dm4上で左右方向に回転する回転表示が行われ、報知部Dm4cはその両面に主演出の演出結果を示す指標が表示可能に構成されており、報知部Dm4cの回転表示が停止した際に小領域Dm4に停止表示される指標により主演出の演出結果が報知され(【0870】)、
報知部Dm4cの両面に大当たりであることを示す「V」の指標と外れであったことを示す「×」の指標が表示されている状態で報知部Dm4cが回転表示されている場合は、キャラクタDm4bが報知部Dm4cに到達した時点でそれ以上の発展が無いことを事前に報知することとなる、つまり、遊技者は今回の主演出に対応する特別図柄の変動時間を事前に把握することができ(【0871】、【0872】)、
変動時間は、特別図柄の抽選結果が確定するまでの時間である(【0833】)、
パチンコ機1(【0022】)。」

(3)対比・判断
本件補正発明と引用発明とを対比する。なお、見出しは(A)?(L)とし、本件補正発明の分説に対応させている。

(A)引用発明の「第3図柄表示装置81」は、「表示画面上にて複数の図柄(第3図柄)が可変表示され、装飾的な表示を行ったり、表示領域にて演出を実行する」ことから、本件補正発明の「複数種類の表示演出を実行可能」な「表示手段」に相当する。
また、引用発明の「第1図柄表示装置37A,37B」は、「特別図柄(第1図柄)の変動表示を行う」ことから、本件補正発明の「特別図柄を変動表示する特別図柄変動表示手段」に相当する。
そして、引用発明の「パチンコ機1」は、本件補正発明の「遊技機」に相当する。
よって、引用発明は、本件補正発明の構成Aを備えている。

(B)上記(A)での検討を踏まえると、引用発明の「第1図柄表示装置37A,37Bにおいて行う特別図柄(第1図柄)の変動表示を制御する」ことは、本件補正発明の「前記特別図柄変動表示手段に表示される前記特別図柄の変動表示を制御する」ことに相当するから、引用発明の「主制御装置110」は、本件補正発明の「主制御手段」に相当する。
よって、引用発明は、本件補正発明の構成Bを備えている。

(C)上記(A)より、引用発明の「第3図柄表示装置81の表示内容」は、「第3図柄表示装置81」の「表示画面上にて複数の図柄(第3図柄)」の「可変表示」や「装飾的な表示」が含まれるから、本件補正発明の「前記表示手段に表示される装飾図柄の変動表示」を含むものである。
そうすると、引用発明の「第3図柄表示装置81の表示内容を制御する表示制御装置114」は、本件補正発明の「前記表示手段に表示される装飾図柄の変動表示を制御する副制御手段」に相当する。
よって、引用発明は、本件補正発明の構成Cを備えている。

(G)引用発明の「第3図柄表示装置81にて、第3図柄が主表示領域Dmの右上側に設けられた小領域Dm5に縮小されて変動表示」することは、「装飾図柄を変動表示させる演出」といえるから、本件補正発明の「第1の表示演出」に相当する。
よって、引用発明は、本件補正発明の構成Gを備えている。

(H、I)引用発明の「リーチナビ演出」は、「第3図柄の変動パターンとして所定の変動パターンが選択されると」実行されるものである。
そして、「第3図柄の変動パターンとして所定の変動パターンが選択されると、第3図柄表示装置81にて、第3図柄が主表示領域Dmの右上側に設けられた小領域Dm5に縮小されて変動表示され」ること、及び、「第3図柄表示装置81は、第1図柄表示装置37A,37Bにおける変動表示と同期させながら、第3図柄の変動表示を行」うこと、また、引用発明の「第1図柄表示装置37A,37B」は、「特別図柄(第1図柄)の変動表示を行う」ものであるから、引用発明の「リーチナビ演出」は、特別図柄の変動中に実行されると認められる。
また、引用発明の「キャラクタDm4b」は、「タイムゲージDm4a」の「左側から右側に向けて」「進行する」ものであるから、本願発明の「開始位置から終了位置まで移動する」「カーソル表示」に相当する。
そして、「タイムゲージDm4aの右端」の「報知部Dm4c」に「キャラクタDm4bが」「到達すると、報知部Dm4cに報知内容が停止表示され」ること、「報知部Dm4cの両面に大当たりであることを示す「V」の指標と外れであったことを示す「×」の指標が表示されている状態で報知部Dm4cが回転表示されている場合は、キャラクタDm4bが報知部Dm4cに到達した時点でそれ以上の発展が無いことを事前に報知することとなる、つまり、遊技者は今回の主演出に対応する特別図柄の変動時間を事前に把握することができ」るものであること、及び、「変動時間は、特別図柄の抽選結果が確定するまでの時間である」ことからみて、「キャラクタDm4bが報知部Dm4cに到達した時点」が、特別図柄の変動終了時間である。
そうすると、引用発明の「タイムゲージDm4a」、「キャラクタDm4b」及び「報知部Dm4c」は、本件補正発明の「指標」に相当し、引用発明の「リーチナビ演出」は、本件補正発明の「第2の表示演出」に相当する。
よって、引用発明は、本件補正発明の構成H、Iを備えている。

(J)引用発明の「報知部Dm4c」は、「タイムゲージDm4aの右端」に「表示」されていることから、本件補正発明の「終了位置」に相当する。
そうすると、引用発明の「キャラクタDm4bが報知部Dm4cに到達する」ことは、本件補正発明の「前記指標において前記カーソル表示を終了位置に配置させる演出」である「第3の表示演出」に相当する。
よって、引用発明は、本件発明の構成Jを備えている。

(D、E、F)上記(G?J)より、本件補正発明の「第1の表示演出」、「第2の表示演出」及び「第3の表示演出」に、それぞれ、相当する引用発明の「第3図柄」の「変動表示」、「リーチナビ演出」及び「キャラクタDm4bが報知部Dm4cに到達する」演出は、いずれも、「第3図柄の変動パターンとして所定の変動パターンが選択されると」実行されるものであるから、引用発明は、本件補正発明の構成D、E、Fの「前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第1の表示演出をおこなう場合があり、前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第2の表示演出をおこなう場合があり、前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第3の表示演出をおこなう場合があ」るという構成を備えているといえる。

(K)上記(G?J)より、引用発明は「第3図柄の変動パターンとして所定の変動パターンが選択されると」、「第3図柄」が「変動表示」されているときに、「リーチナビ演出」及び「キャラクタDm4bが報知部Dm4cに到達する」演出を実行するものであることから、本件補正発明の構成Kの「前記第1の表示演出がおこなわれているときに、前記第2の表示演出がおこなわれ」るという構成を備えているといえる。
そして、上記(H、I)より、引用発明は、「リーチナビ演出」において、「キャラクタDm4bが報知部Dm4cに到達」した時点が、特別図柄の変動終了時間を表していることから、本件補正発明の構成Kの「前記第2の表示演出がおこなわれ、その後、前記特別図柄変動表示手段において前記特別図柄が変動状態から停止する場合に、前記第3の表示演出がおこなわれる」という構成を備えているといえる。
よって、引用発明は、本件補正発明の構成Kを備えている。

(L)引用発明の「パチンコ機1」は、本件補正発明の「遊技機」に相当する。
よって、引用発明は、本件補正発明の構成Lを備えている。

上記(A)?(L)の対比により、本件補正発明と引用発明は、全ての点で一致し、相違点はない。
したがって、本件補正発明は引用発明と同一である。

(4)審判請求人の主張について
審判請求書において、請求人は、「引用文献1において、リーチナビ演出は、変動パターンによって実行される主演出の変動終了時間を示唆しておりますが、変動パターンによって実行される主演出を含む全演出の変動終了時間(特別図柄の変動終了時間)を示唆している訳ではありません。すなわち、リーチナビ演出が特別図柄の変動終了時間を表しており、報知部Dm4cの両面に「V」の指標と「X」の指標が表示されている状態で報知部Dm4cが回転表示されている場合は、キャラクタDm4bが報知部Dm4cに到達した時点で特別図柄の変動が停止することについては開示も示唆もされていないと思料致します」と主張している(「5(1)(1-2)」)。
しかしながら、引用発明は、「キャラクタDm4bが報知部Dm4cに到達すると、報知部Dm4cに報知内容が停止表示され」、「報知部Dm4cの両面に大当たりであることを示す「V」の指標と外れであったことを示す「×」の指標が表示されている状態で報知部Dm4cが回転表示されている場合は、キャラクタDm4bが報知部Dm4cに到達した時点でそれ以上の発展が無いことを事前に報知することとなる、つまり、遊技者は今回の主演出に対応する特別図柄の変動時間を事前に把握することができ」るものである。
ここで、「変動時間は、特別図柄の抽選結果が確定するまでの時間である」ことから、「遊技者」が「特別図柄の変動時間を事前に把握することができ」るということは、「特別図柄の抽選結果が確定するまでの時間」、すなわち、特別図柄の変動終了時間を把握することができるということである。
そうすると、「キャラクタDm4bが報知部Dm4cに到達した時点でそれ以上の発展が無いことを事前に報知すること」で、特別図柄の変動終了時間が把握できるのであるから、「キャラクタDm4bが報知部Dm4cに到達した時点」が、特別図柄の変動終了時間であり、特別図柄の変動が停止する時間であるといえる。
よって、この主張は採用できない。

(5)小括
よって、本件補正発明は引用文献に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 本件補正についてのむすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年12月26日にされた手続補正により補正された上記第2の[理由]1(2)で補正前として記載されたとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。
引用文献:特開2017-64353号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項は、前記第2の[理由]3(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の発明特定事項から、上記第2の[理由]2(1)(2)で示した限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を実質的にすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2に記載したとおり、引用発明と同一であるから、本願発明も、同様に、引用発明と同一である。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-10-23 
結審通知日 2019-10-29 
審決日 2019-11-14 
出願番号 特願2018-34002(P2018-34002)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 昌宏  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 田邉 英治
蔵野 いづみ
発明の名称 遊技機  
代理人 田邊 淳也  

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