• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A21C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A21C
管理番号 1358310
審判番号 不服2019-419  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-15 
確定日 2019-12-23 
事件の表示 特願2017- 99605「食品重量監視装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月 6日出願公開、特開2018-191605〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年5月19日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年6月14日付け:拒絶理由通知書
平成30年7月6日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年11月27日 :拒絶査定
平成31年1月15日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成31年1月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年1月15日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。
「【請求項1】
食品製造機から高速で順次排出される食品の重量を個別に監視する食品重量監視装置であって、
前記食品製造機から排出された食品を1個ずつ順次搬送して後段装置に送るように前記食品製造機の食品排出速度に同期して速度制御された食品搬送装置と、
前記食品が前記食品搬送装置上に排出されてから計測開始までの計測待機時間を予め設定する計測待機時間設定手段と、
前記計測待機時間の経過後で前記食品が前記食品搬送装置上にある間の時間を重量計測時間として設定する重量計測時間設定手段と、
前記食品搬送装置に配設され、前記重量計測時間の間に前記食品搬送装置上にある食品の重量を複数回計測する重量計測手段と、
前記重量計測手段で計測された複数回の計測値の平均値を計測重量として順次記録する記録手段と、
を具備することを特徴とする食品重量監視装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の平成30年7月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
食品製造機から排出された食品の重量を監視する食品重量監視装置であって、
前記食品製造機から排出された食品を1個ずつ搬送して後段装置に送るように前記食品製造機の食品排出速度に同期して速度制御された食品搬送装置と、
前記食品が前記食品搬送装置上に排出されてからの計測待機時間を設定する計測待機時間設定手段と、
前記計測待機時間設定手段により設定された計測待機時間経過後で前記食品が前記食品搬送装置上にある間の時間を重量計測時間として設定する重量計測時間設定手段と、
前記食品搬送装置に配設され、前記重量計測時間設定手段により設定された前記重量計測時間の間に食品搬送装置で搬送される食品の重量を複数回計測する重量計測手段と、
前記重量計測手段で計測された複数回の計測値の平均値を計測重量として順次記録する記録手段と、
を具備することを特徴とする食品重量監視装置。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の「食品製造機から排出された食品」について、「高速で順次排出される」ことを限定し、以下同様に、「食品の重量を監視する」ことについて、「個別に監視」すること、「食品を1個ずつ搬送する」ことについて、「順次搬送」すること、「計測待機時間を設定する」ことについて、「計測待機時間」が「計測開始までの」ものであるとともに、「予め設定する」ものであることをそれぞれ限定したものであり、
さらに、本件補正前の「食品搬送装置で搬送される食品」の記載を「前記食品搬送装置上にある食品」の記載とすることにより、「食品搬送装置で搬送される食品」が「食品搬送装置上」にあることを限定する補正を含むものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許請求の範囲の請求項1に関する本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

そこで、本件補正によって補正された請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された引用文献である特開2012-125206号公報には、図面とともに以下の記載がある(下線は、理解の一助のために当審が付与した。)。

(ア)引用文献1の記載
1a)「【図1】



1b)「【0035】
図1に示すように、本実施の形態の米飯分割装置(生地分割装置)M1は、キャスタ1によって移動可能とされた台座2上に搬送コンベア(搬送手段)3、第1の計量コンベア(第1の計量搬送手段)4、第2の計量コンベア(第2の計量搬送手段)5が搬送方向上流側から下流側に沿って配置されている。また、搬送コンベア3の上方後端側には、米飯(生地)をシート状に成形して送り出す送出部(送出手段)6が配置されている。
【0036】
台座2の後側(図1において右側)には、上下方向に延びる一対の縦レール7に沿って米飯容器8を昇降させるリフタ9が設けられている。このリフタ9によって米飯容器8は上部に設置されたホッパ10の位置まで持ち上げられ、リフタ9の上端に設けられた反転部23によってホッパ10に向けて上下反転されることにより、米飯容器8内の米飯がホッパ10に投入される。
【0037】
ホッパ10には、投入された米飯を解すための第1の解しローラ11が設けられており、この第1の解しローラ11の下側には、第1の解しローラ11に解された米飯を搬送するための搬送ローラ12、および搬送ローラ12に搬送された米飯をさらに解すための第2の解しローラ22が設けられている。そして、第2の解しローラ22に解された米飯が、前述した送出部6に投入される。
【0038】
送出部6内には、左右一対で合計2段となった第1のローラ対13が上下方向に配置されている。この第1のローラ対13は、上段に位置する第1のローラ対13aの間隔よりも下段に位置する第1のローラ対13bの間隔の方が狭くなっている。したがって、米飯が第1のローラ対13a,13bにより上方より下方へ送られることによって、シート状に圧縮成形される。
【0039】
下段に位置する第1のローラ対13bの下方には、左右一対となった第2のローラ対14が配置されている。この第2のローラ対14は相互に接近離間可能になっており、第1のローラ対13から送られたシート状の連続した米飯は、第2のローラ対14の間隔に応じて厚みが調整されて下方へと送り出されて搬送コンベア3に載せられる。そして、搬送コンベア3から第1の計量コンベア4へと搬送される。
【0040】
搬送コンベア3と第1の計量コンベア4との間には、このようにして搬送コンベア3から第1の計量コンベア4へと搬送されるシート状の米飯を搬送方向と交差する方向(ここでは、搬送方向とほぼ直交した方向)に分割するためのカッタ(分割手段)15が配置されている。したがって、シート状に連続した米飯は搬送コンベア3から第1の計量コンベア4へと搬送される途中でカッタ15により分割され、第1の計量コンベア4から搬送された分割後の米飯が第2の計量コンベア5へと搬送される。なお、カッタ15による米飯分割のタイミングの詳細については後述する。
【0041】
第1の計量コンベア4には、搬送コンベア3から送られてくる連続したシート状の米飯の重量を経時的に計測するためのロードセル4aが設けられている。また、第2の計量コンベア5には、第1の計量コンベア4から搬送された分割後の米飯の重量を計測するためのロードセル5aが設けられている。したがって、第1の計量コンベア4では、搬送コンベア3から搬送された米飯の重量を経時的に計測しながら搬送し、第2の計量コンベア5では、第1の計量コンベア4から搬送された分割された米飯の重量を計測しながら搬送する。
【0042】
なお、本実施の形態の米飯分割装置(生地分割装置)M1では、分割された米飯の寸法は、長さ110mm、幅65mm、高さ(厚さ)15mmとなっており、1時間に約3000枚製造可能な性能を有している。」

1c)「【0043】
米飯分割装置M1の搬送方向下流側には、分割された米飯を所定の形状に成形(例えば三角形のおにぎり形状に成形)するための成形装置M2が配置されている。そして、第2の計量コンベア5を搬送される分割された米飯は、移載アーム16により米飯分割装置M1からへと移載される。
【0044】
成形装置M2は、移載アーム16により移載された米飯が押し込まれる複数の成形穴(図示せず)が所定の間隔おきに形成されて横方向に間欠的に回転する第1の成形テーブル18と、米飯内に包餡される具材を載置するための具穴を形成するための具穴成形部17と、米飯の具穴に具材を載置する具材載置部(図示せず)とを備えている。
【0045】
さらに成形装置M2は、具材の載置された米飯を所定の形状(例えば、前述したように三角形のおにぎり形状)に成形するための複数の成形穴(図示せず)が所定の間隔おきに形成されて縦方向に間欠的に回転する第2の成形テーブル19と、具材の載置された米飯を折り畳みながら第1の成形テーブル18(の成形穴)から第2の成形テーブル19(の成形穴)へ押し込む押込部20と、第2の成形テーブル19により成形された完成形のおにぎりを機外に排出する排出コンベア21とを備えている。」

1d)「【図2】

【図3】





1e)「【0046】
次に、前述した構成を有する米飯分割装置M1の制御系について、図2を用いて説明する。
【0047】
図2において、米飯分割装置M1は、制御部(制御手段)30により動作が制御されている。具体的には、制御部30は、第1の計量コンベア4および第2の計量コンベア5の周回移動の速度を制御するとともに、これらのコンベア4,5で計測される米飯Rの重量に基づいた所定のタイミングによりカッタ駆動部31を介してカッタ15を作動をさせ、連続したシート状の米飯Rを分割する。また、制御部30は、モータである第1のローラ対駆動部(駆動手段)33を介して第1のローラ対13の駆動を制御し、第2のローラ対移動部34を介して第2のローラ対14の間隔を制御する。なお、第1のローラ対13の駆動制御は、当該第1のローラ対13を駆動する第1のローラ対駆動部33の速度またはトルクを制御することにより実行される。さらに、制御部30は、第1の計量コンベア4による米飯Rの搬送速度とカッタ15による分割タイミングとから、分割された米飯Rの長さを計測する測長部(測長手段)としての機能を有している。
【0048】
次に、本実施の形態の米飯分割装置M1における制御部30による米飯Rの分割処理について説明する。
【0049】
米飯Rの分割処理では、図3に示した制御系が用いられる。そこで、図3に示した制御系を参照しつつ、図4のフローチャートを用いて米飯Rの分割動作について具体的に説明する。
【0050】
米飯Rがホッパ10に投入され、第2のローラ対14が所定の間隔にセットされて第1のローラ対13が回転を開始し、搬送コンベア3が周回移動を開始し、さらに、制御部30に制御された第1の計量コンベア4および第2の計量コンベア5が同様に周回移動を開始すると、送出部6からシート状に成型された連続した米飯Rが送り出され、搬送コンベア3に載せられて搬送が開始される。
【0051】
そして、制御部30によって第1の計量コンベア4が第1の速度(たとえば、1,081mm/sec)に制御されることにより、米飯Rが第1の速度で供給を開始される(ステップS1)。
【0052】
このように米飯Rの供給が開始されたならば、第1の計量コンベア4により、搬送コンベア3から送られてくる連続したシート状の米飯Rの経時的な計量を開始する(ステップS2)。ここで、第1の計量コンベア4に載っている部分の米飯Rの重量が計測されるが、第1の速度では米飯Rの搬送速度が速すぎるためにロードセル4aの反応速度が追いつかず、米飯Rの大まかな重量しか計測することができない。なお、本実施の形態では、第1の速度は米飯Rの大まかな重量しか計測できない速度となっているが、正確な重量を計測できるような速度であってもよい。但し、第1の速度はできるだけ高速であることが望ましい。」

1f)「【0053】
さて、第1の速度で米飯Rを計量しながら、ロードセル4aでの計測重量値が米飯Rの目標重量値(たとえば100g)のN%(たとえば80%)に到達したかどうかを判断する(ステップS3)。後述するように、第2の速度は第1の速度よりも遅いので、迅速な処理を行うために、第1の速度で搬送される米飯Rの量はできるだけ多い方が望ましい。なお、図3において、符号Wmで示す部分が、米飯RのN%に相当する部分である。
【0054】
なお、目標重量値の100gや、当該目標重量値に対するN%としての80%、あるいは第1の速度や後述する第2の速度の具体的な数値など、以下に説明する場合の数値を含め、実施の形態において例示された数値に本発明が限定されるものではない。
【0055】
さて、米飯Rの重量が目標重量値のN%に到達したならば、第1の計量コンベア4を、前述の第1の速度よりも遅い第2の速度(たとえば、65mm/sec)に減速して米飯Rの供給を継続する(ステップS4)。なお、第2の速度は米飯Rの搬送速度にロードセル4aの反応速度が追随できる程度の速度に設定される。したがって、第2の速度では、米飯Rの正確な重量が計測されることになる。
【0056】
なお、本実施の形態では、ステップS3においてロードセル4aで米飯Rの大まかな重量を計測し、それが目標重量値に対して所定比率(N%)になったならば、ステップS4に移行して第2の速度に減速することとしているが、例えば、制御部30により第1の計量コンベア4における米飯Rの搬送速度と搬送時間とに基づいて当該第1の計量コンベア4に導入された米飯Rの大まかな重量を推定しながら、ステップS3においてその推定重量が予め設定された設定された重量に到達したと判断されたならば、ステップS4に移行するようにしてもよい。つまり、何らかの手法によって第1の計量コンベア4に導入された米飯Rの重量を測定あるいは推測し、ステップS3でその重量が目標重量値に対して所定比率(N%)に到達したと判断されたならば、ステップS4に移行するようにすればよい。
【0057】
ここで、米飯Rの第1の計量コンベア4に載っていない部分の重量、つまり搬送コンベアと計量コンベアとの間の部分(以下、「渡り部」という。)の重量は計測されない。したがって、カッタ15により渡り部で米飯Rを分割すると、分割された米飯Rの重量は、第1の計量コンベア4に計量された重量に、分割時において第1の計量コンベア4で計測されない部分(つまり渡り部の部分:図3において符号Wxで示す部分)の重量が加わった重量になる。
【0058】
そこで、ステップS4における米飯Rの計測重量値(第1の計測重量値)と、前述した渡り部の部分の重量として予め設定された渡り部予測重量値(予測重量値)との和が目標重量値(本実施の形態の場合には、100g)に到達したかどうかを判断する(ステップS5)。なお、図3において、符号Wsで示す部分と符号Wmで示す部分とを合わせた部分が、重量が計測される米飯Rの部分である。
【0059】
そして、米飯Rの計測重量値と渡り部予測重量値との和が目標重量値に到達したならば、カッタ駆動部31を駆動してカッタ15により米飯Rを分割する(ステップS6)。つまり、渡り部予測重量値が例えば10gに設定されていた場合、ステップS5では米飯Rの計測重量値が90gになったときに両者の和が目標重量値である100gに到達したことになるので、ステップS6において当該到達タイミングでカッタ15により米飯Rを分割する。
【0060】
なお、本実施の形態において、ステップS1?ステップS6が第1の制御に相当する。
【0061】
続いて、分割されたシート状の米飯Rの長さが規定の長さになるように、米飯分割長さ制御処理を行う(ステップS7)。但し、当該制御処理は必須のものではなく、よって、ステップS6が終了したならば、直ちに次のステップS8に移行してもよい。なお、ステップS7の詳細については後述する。
【0062】
米飯分割長さ制御処理が終了したならば、第2の計量コンベア5で、分割された米飯Rを計量する(ステップS8)。
【0063】
そして、第2の計量コンベア5による米飯Rの計測重量値(第2の計測重量値)が目標重量値と一致したかどうかを判断し(ステップS9)、一致したならばステップS1に戻り、必要とされるシート状の米飯Rの数量だけ、これら一連の動作を繰り返す。
【0064】
また、ステップS9において第2の計量コンベア5による米飯Rの計測重量値が目標重量値と一致しなかった場合には、両者の値が一致するように渡り部予測重量値を変更し(ステップS10)、その後ステップS1に戻り、必要とされる米飯Rの数量だけ一連の動作を繰り返す。
【0065】
なお、本実施の形態において、ステップS8?ステップS10が第2の制御に相当する。」

(ウ)引用発明
上記(ア)及び図面の記載を総合すると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「米飯をシート状に成形して送り出す送出部6、搬送コンベア3及び第1の計量コンベア4から搬送され、搬送コンベア3から第1の計量コンベア4へと搬送される途中でカッタ15により分割された分割後の米飯Rの重量を計測する第2の計量コンベア5であって、送出部6、搬送コンベア3及び第1の計量コンベア4から搬送された分割後の米飯Rを搬送して成形装置M2に送る第2の計量コンベア5。」

イ 引用文献2
原査定の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された引用文献である特開平9-29693号公報には、図面とともに以下の記載がある。

(ア)引用文献2の記載
2a)「【請求項1】 被計量物が平坦にされるプレスコンベアと、この被計量物が計量コンベア上を搬送されるごとにこのコンベアに取り付けられた重量センサから重量信号が発せられる計重機と、この計重機の後段に設置された切断コンベア上で被計量物の静止画像が撮影されるスリット光源とカメラとからなる体積計測装置と、上記重量信号をディジタル重量データに変換して記憶したり、上記静止画像が画像処理され格納される画像処理装置及び画像メモリから体積が算出され、上記重量データと体積から比重が算出され、これらのデータから被計量物が定重量となるための切断位置等が算出されるCPUと、被計量物の定重量や切断条件等が設定される設定装置や切断制御部や上記CPU等が内蔵された制御装置と、上記算出された切断位置により切断コンベア上で被計量物が切断される切断装置とを備えたことを特徴とする定重量切断装置。」

2b)「


2c)「



2d)「【0011】図3は、この発明を実現する装置のうちプレスコンベア1より後段の装置のブロック図である。この図において、プレスコンベア1によってほぼ平坦にされた食肉等の被計量物31は計量コンベア7に送り込まれるとロードセル9が被計量物の重量を検知し、その重量信号が発信されると増幅器11で増幅され、ローパスフィルタ12により外乱等の不要な信号が除去された後、A/D変換器13でディジタル信号に変換されCPU27に送られる。CPU27では重量波形が安定するまでの一定時間を経た後重量データとして処理されCPU内の記憶装置に記憶される。・・・」

ウ 引用文献3
原査定の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された引用文献である特開昭60-211318号公報には、図面とともに以下の記載がある。

(ア)引用文献3の記載
3a)「1.振動する計量値をサンプリングし、このサンプリング値を平均して重量を算出する電子計量装置において、被計量物の重量とこの重量に対応する固有振動の関係を予め記憶し、この記憶内容と前回のサンプリング値とから今回のサンプリング間隔を設定するサンプリング間隔設定手段を具備することを特徴とする電子計量装置。
2.前記サンプリング間隔設定手段は、重量と固有振動との関係を数式で記憶することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の電子計量装置。
3.前記サンプリング間隔設定手段は、今回サンプリング間隔が固有撮動周期のNb(整数)分の1となるように設定するとともに、サンプリング値のNa(整数)個の平均値を計量値とすることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の電子計量装置。」(第1ページ左欄第5行ないし右欄第1行)

3b)「



3c)「第4図は、コンベア3上に商品が移送された直後のロードセル12の重量信号の変化を示す図である。なお、ロードセル12の重量信号の中にはモータM_(3)、コンベア3、プーリおよびベルト等の重量(以下この重量を初荷重αという)が含まれるが、この図は初荷重αを差し引いた重量信号を示している。また、この実施例では前述のように搬送しながら計量を行うため、実際には搬送系の振動が図に示す波形に重畳されるが、ここでは説明の簡素化のために省略してある。
さて、第4図に示すように、商品がコンベア2からコンベア3に受渡された直後においては、計量値が大きく振動し、その後においては真値W_(0)に向って収れんする減衰振動になる。そして、この振動の周期は、載置直後においては乱れているが、振幅が減衰するに従ってある一定の周期になる。この一定周期は商品の重量によって決まり、一般に次式によって示されることが知られている。

ところで、このように振動する計量値から真の重量を測定するためには、振動が一定周期に入った後に、振動の1周期内で均一間隔で数点サンプリングし、このサンプリング値を平均して求めることが望ましい。そこで、この発明では、前記(1)式やこれに対応する式、表等を予め記憶し、この記憶内容と前回サンプリング値に基づいて、振動周期を求め、次のサンプリング間隔が振動周期の整数分の1になるように設定する。」(第3ページ左上欄第16行ないし左下欄第8行)

3 対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「米飯をシート状に成形して送り出す送出部6、搬送コンベア3及び第1の計量コンベア4」は本願補正発明における「食品製造機」に相当し、以下同様に、「分割後の米飯R」は「食品」に、「第2の計量コンベア5」は「食品搬送装置」あるいは「食品搬送装置を具備する」、「食品重量監視装置」に、「成形装置M2」は「後段装置」に、それぞれ相当する。
さらに、引用発明における「米飯をシート状に成形して送り出す送出部6、搬送コンベア3及び第1の計量コンベア4から搬送され」た「分割後の米飯R」は、本願補正発明における「食品製造機から」、「順次排出される食品」に相当する。
そして、引用発明において、「米飯R」は、「搬送コンベア3から第1の計量コンベア4へと搬送される途中でカッタ15により分割された」ものであり、引用文献1の図4、及び上記1f)段落【0062】及び【0063】の記載から、第2の計量コンベア5は、分割後の米飯Rの重量を個々に計測するものといえるから、引用発明における「分割後の米飯Rの重量を計測する第2の計量コンベア5」は本願補正発明における「食品の重量を個別に監視する食品重量監視装置」に相当する。
また、引用文献1の上記1b)段落【0041】の記載から、第2の計量コンベア5は、分割後の米飯Rを1個ずつ順番に搬送するものといえるから、引用発明における「送出部6、搬送コンベア3及び第1の計量コンベア4から搬送された分割後の米飯Rを搬送して成形装置M2に送る第2の計量コンベア5」は本願補正発明における「食品製造機から排出された食品を1個ずつ順次搬送して後段装置に送る」、「食品搬送装置」に相当する。

したがって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「食品製造機から順次排出される食品の重量を個別に監視する食品重量監視装置であって、前記食品製造機から排出された食品を1個ずつ順次搬送して後段装置に送る、食品搬送装置を具備する食品重量監視装置。」

[相違点1]
本願補正発明においては、「食品」が「食品製造機から高速で順次排出」されるのに対して、
引用発明においては、「分割後の米飯R」が「米飯をシート状に成形して送り出す送出部6、搬送コンベア3及び第1の計量コンベア4」から、どの程度の速度で搬送されるか明らかでない点。

[相違点2]
本願補正発明においては、「食品搬送装置」が「食品製造機の食品排出速度に同期して速度制御され」るのに対して、
引用発明においては、「第2の計量コンベア5」が「米飯をシート状に成形して送り出す送出部6、搬送コンベア3及び第1の計量コンベア4」から「搬送」される「分割後の米飯R」の搬送される速度と同期して速度制御されるか明らかでない点。

[相違点3]
本願補正発明においては、「食品重量監視装置」が「食品が食品搬送装置上に排出されてから計測開始までの計測待機時間を予め設定する計測待機時間設定手段」を備えるのに対して、
引用発明においては、「第2の計量コンベア5」が、そのような「計測待機時間設定手段」を備えるか明らかでない点。

[相違点4]
本願補正発明においては、「食品重量監視装置」が「計測待機時間の経過後で食品が食品搬送装置上にある間の時間を重量計測時間として設定する重量計測時間設定手段」を備えるのに対して、
引用発明においては、「第2の計量コンベア5」が、そのような「重量計測時間設定手段」を備えるか明らかでない点。

[相違点5]
本願補正発明においては、「食品重量監視装置」が「食品搬送装置に配設され、重量計測時間の間に食品搬送装置で搬送される食品の重量を複数回計測する重量計測手段」を備えるのに対して、
引用発明においては、「第2の計量コンベア5」が、そのような「重量計測手段」を備えるか明らかでない点。

[相違点6]
本願補正発明においては、「食品重量監視装置」が「重量計測手段で計測された複数回の計測値の平均値を計測重量として順次記録する記録手段」を備えるのに対して、
引用発明においては、「第2の計量コンベア5」がそのような「記録手段」を備えるか明らかでない点。

以下、相違点について検討する。

[相違点1について]
上記引用文献1の記載、上記2(2)ア(ア)1b)段落【0042】によると、分割された米飯Rは、「1時間に約3000枚製造可能な性能を有している」、「米飯分割装置(生地分割装置)M1」により1時間あたり多数個製造されるものである。
そうすると、引用発明において、「分割後の米飯R」を1時間あたり多数個製造するために、「米飯をシート状に成形して送り出す送出部6、搬送コンベア3及び第1の計量コンベア4」の速度を「分割後の米飯R」が「高速」で順次排出されるものとすることにより、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

[相違点2について]
本願明細書の段落【0042】における「この実施例のコンベア装置80の搬送ベルト82は、団子製造機100から排出された串刺し団子が1本ずつ搬送ベルト82上に載置されて後段装置に排出されるように団子製造機100の串刺し団子の排出速度に同期して速度制御されている。」の記載によると、「搬送ベルト82」が「同期して速度制御される」とは、団子製造機100の串刺し団子の排出速度に応じたものであって、「コンベア装置80の搬送ベルト82」が「団子製造機100から排出された串刺し団子が1本ずつ搬送ベルト82上に載置されて後段装置に排出される」速度に制御されるという意味であると解することができる。
そうすると、上記本願補正発明と引用発明との対比において判断したとおり、引用発明における第2の計量コンベア5は、分割後の米飯Rの重量を個々に計測するものであって、その際に、「米飯をシート状に成形して送り出す送出部6、搬送コンベア3及び第1の計量コンベア4」から搬送される分割後の米飯Rの速度に応じた、第2の計量コンベア5上に分割後の米飯Rが1個づつ搬送されることにより重量を個々に計測できる速度を有するものとなることは明らかであるから、第2の計量コンベア5の速度を、「米飯をシート状に成形して送り出す送出部6、搬送コンベア3及び第1の計量コンベア4」から搬送される分割後の米飯Rの速度に応じた、分割後の米飯Rを1個づつ搬送して、その重量を個々に計測できるような速度に制御することにより上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

[相違点3及び4について]
上記引用文献2、上記2(2)イ(ア)2d)段落【0011】には、計量コンベア7のロードセル9が被計量物の重量を検知するにあたって、その重量信号は重量波形が安定するまでの一定時間を経た後重量データとして処理されることが記載されている(以下、「引用文献2記載事項」という。)。
そして、コンベア上において物品の重量を計測するものにおいて、物品がコンベア上に載置されてから一定時間経てから計測を開始することは、上記引用文献2記載事項のほか、特開2002-340658号公報(段落【0007】、図3の記載等参照。)及び特開平7-285096号公報(段落【0053】、図1、図7の記載等参照。)にも記載されており、周知の技術(以下、「周知技術1」という。)である。
さらに、物品がコンベア上に載置されてから計測開始までの一定時間を予め設定されたものとすることに困難性は認められない。
また、一定時間の経過後、物品がコンベア上にある時間内に物品の重量計測を行わなければならないことは明らかであって、そのための重量計測時間を設定することにも困難性は認められない。そして、この重量計測時間を設定することについては、上記特開2002-340658号公報の段落【0007】及び図7に「サンプリング時間FST」として記載されている。
したがって、引用発明に、コンベア上において物品の重量を計測する技術であることにおいて共通する上記周知技術1を適用することにより、上記相違点3及び4に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。

[相違点5について]
上記引用文献3、上記2(2)ウ(ア)3c)には、コンベア3上に商品が移送され、ロードセル12により重量信号を得ることにより重量を測定するものにおいて、計量値における振動が一定周期に入った後に、振動の1周期内で均一間隔で数点サンプリングし、このサンプリング値を平均して求めることが記載されている(以下、「引用文献3記載事項」という。)。
そして、コンベア上において物品の重量を計測するにあたって、複数回、物品の重量をサンプリングし、それらの平均を求めて物品の重量値とすることは、上記引用文献3記載事項のほか、特開平7-174608号公報(段落【0017】の記載等参照)、特開2002-323368号公報(段落【0024】ないし【0026】の記載等参照。)、特開2002-340658号公報(段落【0007】、図3の記載等参照。)及び特開平7-285096号公報(段落【0053】、図1、図7の記載等参照。)にも記載されており、周知の技術(以下、「周知技術2」という。)である。
したがって、引用発明に、コンベア上において物品の重量を計測する技術であることにおいて共通する上記周知技術2を適用することにより、上記相違点5に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。

[相違点6について]
上記周知技術2は、コンベア上において物品の重量を計測するにあたって、複数回、物品の重量をサンプリングし、それらの平均を求めて物品の重量値とすることである。また、複数回サンプリングした物品の重量データを利用するために記録することも、例えば、引用文献2、上記2(2)イ(ア)2d)段落【0011】の記載「CPU27では重量波形が安定するまでの一定時間を経た後重量データとして処理されCPU内の記憶装置に記憶される」、及び特開2002-323368号公報、段落【0024】「複数ポイント(例えば5ポイント)の計測重量値(計測重量情報)を平均し、その平均値を、ネギAが載置された載置台8全体の計測重量情報としてRAM24に記憶する」の記載から周知技術(以下、「周知技術3」という。)である。
そうすると、引用発明に、コンベアで物品の重量を計測する技術であることにおいて共通する上記周知技術2及び周知技術3を適用することにより、分割後の米飯Rの重量を計測する第2の計量コンベア5において、複数回計測した分割後の米飯Rの重量値の平均値を記録することにより、上記相違点6に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願補正発明の奏する効果は、全体としてみても、引用発明、及び周知技術1ないし3から予測される範囲内であって、格別顕著なものではない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、及び周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年7月6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書並びに出願時に願書に添付された図面の記載からみて、上記第2 1(2)に記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし10に係る発明は、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用文献1ないし5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

・請求項 1-5,8-10 に対し、引用文献 1-3
・請求項 6 に対し、引用文献 1-4
・請求項 7 に対し、引用文献 1-3,5

<引用文献等一覧>
1.特開2012-125206号公報
2.特開平9-29693号公報(周知技術を示す文献)
3.特開昭60-211318号公報(周知技術を示す文献)
4.特開平5-184278号公報
5.特開2007-316029号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし3及びその記載事項は、前記第2 2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2 2で検討した本願補正発明から、「食品製造機から排出された食品」についての「高速で順次排出される」ことの限定、「食品の重量を監視する」ことについての「個別に監視する」ことの限定、「食品を1個ずつ搬送する」ことについて、「順次搬送」することの限定、「計測待機時間を設定する」ことについての「計測待機時間」が「計測開始までの」ものであるとともに、「予め設定する」ものであることの限定、さらに、「食品搬送装置で搬送される食品」が「食品搬送装置上」にあることの限定を省いたものに実質相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2 3に記載したとおり、引用発明、及び周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、及び周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は、平成31年1月15日提出の審判請求書(第13ページ下から第5行ないし第14ページ第5行)において、「本願発明は、上述したように、食品のバウンドによる影響がなくなるまでの時間より短い『計測待機時間』を予め設定し、この『計測待機時間』を待ってから食品の重量の計測を開始するとともに、この食品の重量の計測に際しては食品の重量の計測を複数回行ってその平均値を食品の計測重量として記憶するという2つの構成を採用することにより、寸法が制限され、かつ食品製造機からの食品の排出時にバウンドによる影響ある環境下において、食品製造機から高速で順次排出される食品の個別の重量を正確に監視することを可能にしたものであり、引用文献1及び2に加えて、複数回の計測結果の平均値を用いることのみが示唆された上記引用文献3を更に勘案したところで本願発明には至らないのも明らかである。」と主張する。
しかし、例として上記周知技術1と周知技術2とに共通して挙げられた、上記特開2002-340658号公報(段落【0007】、図3の記載等参照。)及び特開平7-285096号公報(段落【0053】、図1、図7の記載等参照。)は、コンベア上において物品の重量を計測するものにおいて、物品がコンベア上に載置されてから一定時間経てから計測を開始し、計測の際、複数回、物品の重量をサンプリングして、それらの平均を求めて物品の重量値とすることを開示しており、「計測待機時間」及び「食品の重量の計測を複数回行ってその平均値を求める」という2つの構成を兼ね備えることも周知技術であって格別なことではない。
さらに、「計測待機時間」が食品のバウンドによる影響がなくなるまでの時間より短いことについては、本願の特許請求の範囲や明細書に記載されていることに基づく主張ではない。
したがって、請求人の審判請求書における上記の主張は採用できない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-10-24 
結審通知日 2019-10-28 
審決日 2019-11-08 
出願番号 特願2017-99605(P2017-99605)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A21C)
P 1 8・ 121- Z (A21C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西尾 元宏  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 槙原 進
松下 聡
発明の名称 食品重量監視装置  
代理人 和田 成則  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ