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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 B25F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B25F
管理番号 1358363
審判番号 不服2019-6333  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-15 
確定日 2020-01-21 
事件の表示 特願2017-530150「少なくとも1つのHMIモジュールを有するシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年6月23日国際公開、WO2016/096301、平成30年2月1日国内公表、特表2018-502727、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)11月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年12月16日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は、以下のとおりである。
平成29年 6月 6日 手続補正書の提出
平成30年 5月24日付け 拒絶理由通知
平成30年11月28日 意見書、手続補正書の提出
平成31年 1月 8日付け 拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和 1年 5月15日 審判請求と同時に手続補正書の提出


第2 原査定の概要
原査定(平成31年1月8日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
平成30年11月28日提出の手続補正書により補正された本願の請求項1に係る発明は、以下の引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
同様に、同請求項2-16に係る発明は、以下の引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、同請求項1-16に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.欧州特許出願公開第2072192号明細書
2.国際公開第2014/008627号
3.米国特許出願公開第2014/0070924号明細書


第3 本願発明
本願請求項1-12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明12」という。)は、本件補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
少なくとも1つのHMIモジュール(12)を少なくとも有するシステム(10)であって、前記HMIモジュール(12)のための少なくとも1つの機械式の第1のインターフェース(18a)を有する少なくとも1つの第1の手動工作機械(14a)と、前記HMIモジュール(12)のための少なくとも1つの機械式の第2のインターフェース(18b)を有する、前記第1の手動工作機械(14a)と異なる種別の少なくとも1つの第2の手動工作機械(14b)と、を有するシステムにおいて、
前記HMIモジュール(12)は、前記第1のインターフェース(18a)とも前記第2のインターフェース(18b)とも取外し可能に結合でき、
前記HMIモジュール(12)は、環境固有の特性量、または、環境固有でかつ前記手動工作機械(14)に関わる特性量を検出する1つまたは複数のセンサを装備している少なくとも1つのセンサユニット(44)を少なくとも有していて、環境に関わるパラメータ、または、環境及び前記手動工作機械(14)に関わるパラメータが提供され、
前記HMIモジュール(12)は、更に少なくとも1つの光学式の表示装置(30)を有していて、前記HMIモジュールが、前記第1のインターフェース(18a)に結合されている場合と、前記第2のインターフェース(18b)に結合されている場合と、で、該光学式の表示装置(30)に表示される前記パラメータが互いに異なる
ことを特徴とするシステム。」

また、本願発明2-12は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、本願発明1を減縮した発明である。


第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、かっこ内に当審における翻訳文を付記する。
ア 「Figure 1A is a block diagram of an interface for connecting a power tool and a computing device in accordance with one embodiment of the present invention;」(第4ページ第24-25行)
(図1Aは本発明の一実施例を示す、電動工具をコンピュータ装置と接続するためのインタフェースのブロック図である。)

イ 「Figures 3A to 3E are front, side, top, rear and perspective views of a lawn mower having the interface of Figures 2A and 2B;」(第4ページ第34-35行)
(図3Aから3Eは、図2Aおよび2Bのインターフェースを有する芝刈り機の正面図、側面図、上面図、背面図及び斜視図である。)

ウ 「Figure 5 is example screenshot of a computer device executing another software application whilst being connected to the interface of Figures 3A to 3E.」(第5ページ第1-2行)
(図5は、図3Aから3Eのインタフェースに接続されながら別のソフトウェア・アプリケーションを実行するコンピュータ装置のスクリーンショットの一例である。)

エ 「As shown in this embodiment, the computing device 102 may include a general computing device such as a computer or electronic device having memory, a processor, a storage device, a bus and an input/output. The computing device 102 any type of processing system, including computers, programmable arrays, terminals, personal computers, servers, mainframes or any other computing device. Preferably, the computing device 102 is a portable computing device such as a smart phone, tablet computer or a portable personal computer which is arranged to process data by the execution of logical instructions implemented in software, hardware or a combination of both. The computing device 102 may also have one or more ports, either in the form of a wireless port or physical wired connection port arranged to facilitate communications between the computing device 102 with one or more external peripheral devices, electronic infrastructure, electronic circuit arranged to communicate with the computing device through its Input/Output port or interface.」(第5ページ第22-33行)
(この実施形態に示すように、コンピューティング装置102は、メモリ、プロセッサ、記憶装置、バスおよび入力/出力を有するコンピュータ又は電子装置のような汎用コンピューティング装置を含んでもよい。コンピューティングデバイス102は、任意のタイプの処理システム、コンピュータ、プログラマブルアレイ、端末、パーソナル・コンピュータ、サーバ、メインフレーム、または任意の他のコンピューティング装置を含む。好ましくはコンピューティング装置102は、ソフトウェア、ハードウェア、または両方の組合せで実装され、論理命令の実行によってデータを処理するように構成されたスマートフォン、タブレット型コンピュータ、携帯型パーソナルコンピュータなどの携帯型コンピュータ装置である。コンピューティング装置102は、1つ以上のポートを有し、1つ又は複数の外部周辺装置、電子装置、その入力/出力ポートを介して、コンピューティング装置と通信するように構成された電子回路又はインタフェースとを備えたコンピューティング装置102との間の通信を容易にするように構成された無線ポートまたは有線ポートのいずれの形態であってもよい。)

オ 「The interface 100 is also arranged to form a second connection 108 with one or more power tools 104. These power tools 104, may include a drill, saw, mower, edger, hedger, jack hammer, lathe, planar, grinder, sander, cutter, crusher, wrench, heat gun, dryer, nail gun, trimmer, shaver or any other tool which is driven by manual power, electricity, compress air or fossil fuels. In the examples shown in Figures 2A to 3E, the interface 100 is arranged to connect with a power tool 104 which is a cordless electric lawn mower 302. However, as the person skilled in the art will appreciate, the interface 100 may also be arranged to connect with any other type of power tool 104.」(第6ページ第11-18行)
(インターフェース100は、1つまたは複数の電動工具104と第2の接続部108を形成するように配置される。これらの電動工具104は、ドリル、鋸、芝刈り機、芝生縁刈り機、ヘッジャー、ジャックハンマー、旋盤、研削機、グラインダー、サンダー、切断機、破砕機、レンチ、ヒートガン、乾燥機、釘打ち機、トリマ装置、シェーバーまたは手動、電気、圧縮空気又は化石燃料で駆動される他の任意の工具を含むことができる。図2Aから図3Eに示す例では、インターフェース100は、電動工具104として、コードレスの電動芝刈り機302に接続するように配置されている。しかしながら、当業者には理解されるように、インターフェース100は、任意の他のタイプの電動工具104と接続するように配置することもできる。)

カ 「With reference to Figures 2A and 2B and 3A to 3E, there is illustrated an embodiment of the interface 100 arranged for use with a cordless electric lawn mower 302. In this example, the mower 302 is an electric lawn mower which includes a power source arranged to provide electrical energy to power the lawn mower. As shown, the interface 100 is disposed adjacent to the supporting struts of the handle bars of the mower such that the interface 100 and a computing device 102 retained thereon is within perceptive view of a user of the lawn mower 302. 」(第8ページ第26-32行)
(図2Aおよび図2Bおよび図3Aから図3Eを参照すると、コードレスの電動芝刈り機302と共に使用するように構成されたインターフェース100の実施形態が示されている。この例では、芝刈り機302は、芝刈り機に動力を供給するために電気エネルギーを提供するように構成された電力源を備えた電動芝刈り機である。図示のように、インターフェース100は、インターフェース100及びコンピューティング装置102が、その芝刈り機302のユーザの知覚視野内に存在するように芝刈り機のハンドルバーの支持支柱に隣接して配置される。)

キ 「In this embodiment, the interface 100 includes a fastening system 202 which is arranged to removably engage the cylindrical struts supporting the handle bar.」(第8ページ第34-35行)
(この実施形態では、インターフェース100は、ハンドルバーを支持する円筒状の支柱と取り外し可能に係合するように構成された締結システム202を含む。)

ク 「The interface 100 may also include a docking system 204 arranged to retain a computing device 102 whilst also allowing an electrical conductive port to be plugged into the computing device 102. Preferably, the docking system includes an array of protrusions 205 which can then be inserted into a slot of the computing device and in turn connect to the data bus of the computing device 102. ・・・In examples where the computing device is a tablet computer or tablet styled smart phone (e.g. iphone^(TM), ipod^(TM) or ipad^(TM) made by Apple Computers Inc), the array of protrusions 205 is of a shape which fits these computing devices.」(第9ページ第4-13行)
(インターフェース100は、コンピューティング装置102内に電気的接続でプラグ接続されながら、コンピューティング装置102を保持するように構成されたドッキングシステム204を含むことができる。好ましくは、ドッキングシステムは、コンピューティング装置のスロットに挿入可能な突起205の配列を含み、そしてまた、コンピューティング装置102のデータバスに接続される。・・・コンピューティング装置は、タブレットコンピュータまたはタブレット型スマートフォン(例えばApple Computers Inc製のiphone(商標)、ipod(商標)やipad(商標))であり、突出部205の配列は、これらのコンピューティング装置に適合する形状とされている。)

ケ 「In alternative examples, as illustrated in Figure 5, an app may also be programmed with a database so that statistics relating to the operation of the device can be collected. ・・・In another example, the software app may take advantage of the gyroscope of the tablet computer or the GPS receiver of the tablet computer to map the operation of the power tool relative to a specific location 508 so that this information may be stored for further processing or used to display on a map so that a user can keep track of the usage of the power tool relative to a specific geographic location.」(第11ページ第24-33行)
(別の例では、図5に示すように、アプリケーションはまた、データベースとともにプログラムされてもよく、そのことでデバイスの操作に関する統計値の収集が可能となる。・・・別の例では、ソフトウェアアプリケーションは、タブレットコンピュータのジャイロスコープ又はGPS受信機を利用して、電動工具の操作を特定の位置508に関連付けてマッピングし、この情報がさらなる処理のために格納されるか、またはユーザは、電動工具を使用する際の軌跡を特定の地形上の位置に応じて、維持できる。)

コ 「It will also be appreciated that the methods and systems of the present invention are implemented by computing system or partly implemented by computing systems than any appropriate computing system architecture may be utilised.」(第12ページ第6-8行)
(任意の適切なコンピュータシステムアーキテクチャが利用されてもよいが、本発明の方法及びシステムは、コンピュータ・システムによって実現されるか、または一部が計算システムによって実現されることが理解されよう。)

サ Fig.2A及びFig.3Aには、インターフェース100が、芝刈り機302に対応した締結システム202を有していることが図示されている。また、Fig.1Aには、電動工具104として、芝刈り機、ドリル、鋸等が図示されており、インターフェース100は、芝刈り機、ドリル、鋸等の電動工具104の種類に対応した締結システム等を有するものであること、すなわち、インターフェース100は、電動工具104の種類に応じた異なる締結システム等を有するものであることが理解できる。

[Fig.2A]


[Fig.3A]


[Fig.1A]

[Fig.5]


したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「コンピューティング装置102を有するシステムであって、前記コンピューティング装置102のための芝刈り機302に対応したインターフェース100及びドッキングシステム204を有する芝刈り機302と、前記コンピューティング装置102のためのドリル等の電動工具104に対応したインターフェース100及びドッキングシステム204を有するドリル等の電動工具104と、を有するシステムにおいて、
前記コンピューティング装置102は、前記芝刈り機302に対応したインターフェース100及びドッキングシステム204とも前記ドリル等の電動工具104に対応したインターフェース100及びドッキングシステム204とも取外し可能に結合でき、
前記コンピューティング装置102は、位置を検出するジャイロスコープ、GPS受信機を有していて、特定位置508に関する情報が提供され、
前記コンピューティング装置102は、表示手段を有していて、前記コンピューティング装置102が、前記芝刈り機302に対応したインターフェース100及びドッキングシステム204に結合されている場合に、特定位置508に関連する電動工具の操作をマッピングして表示する、システム。」

2.引用文献1について
原査定に引用された上記引用文献1には、段落【0023】ないし【0029】及びFig.1等からみて、「制御モジュール10を有するシステムであって、前記制御モジュール10のための凹部36を有する第1の電動工具30と、前記制御モジュール10のための凹部46を有する、前記第1の電動工具と異なる種別の第2の電動工具40と、を有するシステムにおいて、
前記制御モジュール10は、前記凹部36とも前記凹部46とも取外し可能に結合でき、
前記制御モジュール10は、更にディスプレイユニット14を有している、システム。」との技術的事項(以下、「引用文献1の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
原査定に引用された上記引用文献3には、その段落【0020】、【0023】の記載及びFig.1A-Fig.3からみて、「電動工具150及びその他の電動工具150aに取外し可能に結合されるアタッチメント102を有するシステムであって、該アタッチメント102が、電動工具の使用量特性を測定する互いに異なるセンサを有し、該測定された使用量特性に基づいて、電動工具の種類を識別する、システム。」との技術的事項(以下、「引用文献3の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

4.その他の文献について
また、前置報告書において引用された引用文献4(特開平2-15906号公報)の第5ページ左上欄第14行-左下欄第10行、第6ページ右下欄第19行-第7ページ左上欄第2行、第7ページ左下欄第1-4行,第8頁右上欄第2-9行等には、「ドリルが、機能、工作物の材質等を表示する可視表示部7を備え、ユーザがキーを押して、該機能や工作物の材質等を選択する」との技術的事項、及び、「電動工具のタイプが異なれば必要な機能や選択が違ってくる」との技術的事項(合わせて、以下、「引用文献4の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。


第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
引用発明における「コンピューティング装置102」は、本願発明1における「少なくとも1つのHMIモジュール」又は「HMIモジュール」に相当し、以下同様に、「芝刈り機302に対応したインターフェース100及びドッキングシステム204」は「少なくとも1つの機械式の第1のインターフェース」又は「第1のインターフェース」に、「芝刈り機302」は「少なくとも1つの第1の手動工作機械」に、「ドリル等の電動工具104に対応したインターフェース100及びドッキングシステム204」は「少なくとも1つの機械式の第2のインターフェース」及び「第2のインターフェース」に、「ドリル等の電動工具104」は「第1の手動工作機械と異なる種別の少なくとも1つの第2の手動工作機械」に、「位置を検出するジャイロスコープ、GPS受信機」は「環境固有の特性量」「を検出する1つまたは複数のセンサを装備している少なくとも1つのセンサユニット」に、「特定位置508に関する情報が提供され」ることは「環境に関わるパラメータ」「が提供され」ることに、「表示手段」は「少なくとも1つの光学式の表示装置」に、それぞれ相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「少なくとも1つのHMIモジュールを少なくとも有するシステムであって、前記HMIモジュールのための少なくとも1つの機械式の第1のインターフェースを有する少なくとも1つの第1の手動工作機械と、前記HMIモジュールのための少なくとも1つの機械式の第2のインターフェースを有する、前記第1の手動工作機械と異なる種別の少なくとも1つの第2の手動工作機械と、を有するシステムにおいて、
前記HMIモジュールは、前記第1のインターフェースとも前記第2のインターフェースとも取外し可能に結合でき、
前記HMIモジュールは、環境固有の特性量を検出する1つまたは複数のセンサを装備している少なくとも1つのセンサユニットを少なくとも有していて、環境に関わるパラメータが提供され、
前記HMIモジュールは、更に少なくとも1つの光学式の表示装置を有している、システム。」

<相違点>
本願発明1では、HMIモジュールが有するセンサユニットが提供する「パラメータ」に関して、「HMIモジュールが、前記第1のインターフェースに結合されている場合と、前記第2のインターフェースに結合されている場合と、で、該光学式の表示装置に表示される前記パラメータが互いに異なる」のに対して、引用発明では、位置を検出するジャイロスコープ、GPS受信機により特定位置508の情報が提供され、コンピューティング装置102が、芝刈り機302に対応したインターフェース100及びドッキングシステム204に結合されている場合に、該特定位置508に関連する電動工具の操作をマッピングして表示することは記載されているものの、コンピューティング装置102が、ドリル等の電動工具104に対応したインターフェース100及びドッキングシステム204に結合された場合に、どのような表示がなされるのか不明であり、その結果、コンピューティング装置102を、芝刈り機に結合した場合と、ドリル等に結合した場合とで、コンピューティング装置102に表示される「パラメータ」が「互いに異なる」ものであるのか不明な点。

(2)相違点についての判断
ア まず、相違点における「表示装置に表示される前記パラメータ」を検討すると、本願発明1では、「HMIモジュール(12)は、環境固有の特性量、または、環境固有でかつ前記手動工作機械(14)に関わる特性量を検出する1つまたは複数のセンサを装備している少なくとも1つのセンサユニット(44)を少なくとも有していて、環境に関わるパラメータ、または、環境及び前記手動工作機械(14)に関わるパラメータが提供され」と特定されているから、該「表示装置に表示される前記パラメータ」は、HMIモジュールが有するセンサユニットが検出して提供するパラメータであると解釈され、相違点における「表示装置に表示される前記パラメータが互いに異なる」とは、HMIモジュールが異なる複数のセンサユニットを有し、該HMIモジュールの異なるセンサユニットにより互いに異なるパラメータが検出され表示されることを意味すると解される。

イ 上記アで示した、相違点における「表示装置に表示される前記パラメータが互いに異なる」についての解釈を踏まえて引用発明について検討すると、引用発明には、コンピューティング装置102が、位置を検出するジャイロスコープ、GPS受信機以外のセンサユニットを有することは記載されていないから、コンピューティング装置102をドリル等に結合する際に、ジャイロスコープ、GPS受信機以外のセンサユニットが検出するパラメータを表示するとはいえない。また、引用発明のコンピューティング装置102が、上記第5の1.クの記載事項に示された「iphone(商標)、ipod(商標)やipad(商標)」等の装置であり、それらの装置が、加速度センサや光センサ等のセンサユニットを備えることが自明であるとしても、当業者が、引用発明のコンピューティング装置102を、ドリル等に結合する際に、加速度センサや光センサ等のセンサユニットが検出して提供するパラメータを表示するように構成する動機があるとはいえない。

ウ また、上記第4の2.?4.で示した引用文献1の技術的事項、引用文献3の技術的事項、及び、引用文献4の技術的事項にも、HMIモジュールが複数の異なるセンサユニットを有し、特定の電動工具に結合されている場合と、その他の電動工具に結合されている場合とで、HMIモジュールに表示されるパラメータを互いに異なるものとすることは記載されていない。また、技術常識であるともいえない。

エ よって、当業者といえども、引用発明及び引用文献1、3-4の技術的事項から、上記相違点に係る本願発明1を容易に想到することはできない。

(3)本願発明1についてのむすび
上記(2)に示したとおり、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献1、3-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。よって、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。

2.本願発明2-12について
本願発明2-12は、本願発明1の発明特定事項の全てを含むものであり、本願発明1の相違点と同じ相違点を備えるものであるから、本願発明1について示したのと同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献1、3-4の技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。よって、本願発明2-12は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。

第6 原査定について
令和1年5月15日に、審判請求と同時に提出された手続補正書による補正により、本願発明1-12は、「HMIモジュール(12)は、更に少なくとも1つの光学式の表示装置(30)を有していて、前記HMIモジュールが、前記第1のインターフェース(18a)に結合されている場合と、前記第2のインターフェース(18b)に結合されている場合と、で、該光学式の表示装置(30)に表示される前記パラメータが互いに異なる」との構成を有するものとなった。そして、当該構成を有する本願発明1-12は、原査定における引用発明(引用文献2に記載された発明)と上記第5の1.(1)に示した相違点を有するから、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
また、上記構成は、上記第5の1.(2)で示したとおり、原査定における引用発明(引用文献2に記載された発明)及び原査定における引用文献1,3の技術的事項には記載されておらず、技術常識でもないので、上記構成を有する本願発明1-12は、当業者であっても、原査定における引用文献1-3に基づいて容易に発明できたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-12は、引用発明(引用文献2に記載された発明)ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえない。
また、本願発明1-12は、当業者が引用発明及び引用文献1、3-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-01-07 
出願番号 特願2017-530150(P2017-530150)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (B25F)
P 1 8・ 121- WY (B25F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上田 真誠山村 和人  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 中川 隆司
大山 健
発明の名称 少なくとも1つのHMIモジュールを有するシステム  
代理人 高橋 始  
代理人 八島 剛  
代理人 大場 玲児  

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