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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1358487
審判番号 不服2018-16744  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-14 
確定日 2020-01-09 
事件の表示 特願2015- 13373「制御装置、制御方法、及びコンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月 4日出願公開、特開2016-139915〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年1月27日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 4月26日付け 拒絶理由通知書
平成30年 7月 3日 意見書、手続補正書の提出
平成30年 9月28日付け 拒絶査定
平成30年12月14日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提


第2 平成30年12月14日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年12月14日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の概要
本件補正は、平成30年7月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「 端末との間の無線通信に複数の搬送周波数を使用する無線通信システムの第1の基地局及び第2の基地局を制御対象とする制御情報を出力する制御装置であり、
通信トラヒックの混雑傾向を搬送周波数ごとに認識し、前記第1の基地局の第1の搬送周波数と前記第2の基地局の第2の搬送周波数とのうち、前記第1の基地局の通信容量または前記第2の基地局の通信容量を空けるように、カバレッジを縮小する搬送周波数を選択し、前記第1の基地局の前記第1の搬送周波数を選択した場合に、前記第2の基地局の前記第2の搬送周波数のカバレッジを拡大させることを決定する搬送波制御部と、
前記決定されたカバレッジの変更についての制御情報を前記第1の基地局及び前記第2の基地局に出力する出力部と、
を備える制御装置。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を、
「 端末との間の無線通信に複数の搬送周波数を使用する無線通信システムの第1の基地局及び第2の基地局を制御対象とする制御情報を出力する制御装置であり、
通信トラヒックの混雑傾向を搬送周波数ごとに認識し、前記第1の基地局の第1の搬送周波数と前記第2の基地局の第2の搬送周波数とのうち、前記第1の基地局の通信容量または前記第2の基地局の通信容量を空けるように、カバレッジを縮小する搬送周波数を選択し、前記第1の基地局の前記第1の搬送周波数を選択した場合に、前記第2の基地局の前記第2の搬送周波数のカバレッジを拡大させることを決定する搬送波制御部と、
前記決定されたカバレッジの変更についての制御情報を前記第1の基地局及び前記第2の基地局に出力する出力部と、
を備え、
前記搬送波制御部は、カバレッジ変更後の経過時間を計時し、所定時間の経過後に、前記第1の基地局及び前記第2の基地局と通信し、通信品質が所定値よりも高いことを確認した後に、変更前のカバレッジに戻すことを決定する制御装置。」
という発明とすることを含むものである(下線は新たに追加された補正箇所を示すものとして請求人が付与したものである。)。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、シフト補正の有無、目的要件
請求項1についての上記補正は、本件補正前の「搬送波制御部」について、「カバレッジ変更後の経過時間を計時し、所定時間の経過後に、前記第1の基地局及び前記第2の基地局と通信し、通信品質が所定値よりも高いことを確認した後に、変更前のカバレッジに戻すことを決定する」との限定を付して特許請求の範囲を減縮するものである。

独立請求項である請求項5、6についての補正も、請求項1についての上記補正と同様である。

そして、これらの補正は、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。

(2)独立特許要件
請求項1についての上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて、以下検討する。

ア.
カバレッジの変更のときは請求項1の「通信トラヒックの混雑傾向を搬送周波数ごとに認識し、前記第1の基地局の第1の搬送周波数と前記第2の基地局の第2の搬送周波数とのうち、前記第1の基地局の通信容量または前記第2の基地局の通信容量を空けるように、カバレッジを縮小する搬送周波数を選択し、前記第1の基地局の前記第1の搬送周波数を選択した場合に、前記第2の基地局の前記第2の搬送周波数のカバレッジを拡大させることを決定する」とのとおり、混雑傾向を認識し通信容量を空けるようにカバレッジを縮小している。一方、変更前のカバレッジに戻すときは請求項1の「通信品質が所定値よりも高いことを確認した後に、変更前のカバレッジに戻す」とのとおり、通信品質により変更前のカバレッジに戻している。
ここで、「通信品質」は、基地局に対する端末装置の距離や位置、無線回線の状態といった通信無線環境に関係するものであり、通信トラヒックの混雑傾向には直接関係しないものが含まれることは技術常識である。また、発明の詳細な説明の段落24に「カバレッジ品質情報は、基地局装置20Aの各カバレッジの無線通信品質を示す。カバレッジ品質情報として、例えば、共通パイロットチャネル(CPICH:Common Pilot Channel)の受信電力(CPICH RSCP:Received Signal Code Power)、共通パイロットチャネルの受信品質(CPICH Ec/No)、下りリンク(基地局装置20Aから端末装置40へのリンク)リファレンス信号(Downlink Reference Signal)の受信電力(RSRP:Reference Signal Received Power)、下りリンクリファレンス信号の受信品質(RSRQ:Reference Signal Received Quality)、CQI(Channel Quality Indicator)、接続率、呼損率などの情報が挙げられる。これらの情報のうち、いずれか1つをカバレッジ品質情報に使用してもよく、または、いずれか複数をカバレッジ品質情報に使用してもよい。」と記載されており、この記載においても通信品質は通信トラヒックの混雑傾向には直接関係しないものが含まれている。よって、通信品質が良くても通信トラヒックの混雑傾向である場合も混雑傾向でない場合もあるし、通信品質が悪くても通信トラヒックの混雑傾向である場合も混雑傾向でない場合もある。
したがって、通信品質が所定値より高いことを確認してカバレッジを戻すとすぐに通信トラヒックの混雑傾向によりカバレッジを変更しなければいけないケースが発生してしまうこととなるので、通信品質に基づいてカバレッジを戻す技術上の意義が不明である。
よって、発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されていない。

イ.
上記アで述べたように、「通信品質」は、基地局に対する端末装置の距離や位置、無線回線の状態といった通信無線環境に関係するものであり、通信トラヒックの混雑傾向には直接関係しないものが含まれることは技術常識であるから、通信品質で混雑傾向の改善を検出する仕方について、発明の詳細な説明の記載は実施しうる程度に記載されていない。
また、通信品質とは基地局配下の複数の端末装置のそれぞれの通信品質があり、それらの複数の端末装置の通信品質をどのように処理して変更前のカバレッジに戻す条件とするかが発明の詳細な説明に記載されていない。よって、請求項1の「通信品質が所定値よりも高いこと」をどのように算出するのかが発明の詳細な説明には実施しうる程度に記載されていない。
したがって、発明の詳細な説明の記載は請求項1?6に係る発明を実施しうる程度に記載されていない。

ウ.
請求項1の「所定時間」について、発明の詳細な説明の段落52に「(ステップS13)カバレッジ決定部52は、ステップS12において選択された基地局装置20B?1のカバレッジCovB-1_f1の変更を決定する。例えば基地局装置20A-1のトラヒック量が所定量を超えて、基地局装置20A-1のカバレッジCovA-1_f1が縮小された場合、基地局装置20B-1のカバレッジCovB_f1を拡大させる(図7(b))。」と記載されているように、基地局装置20A-1のトラヒック量が所定量を超えたケースにおいて、段落56では「カバレッジ決定部52は、ステップS13において基地局装置20BのカバレッジCovB-1_f1を変更させた後からの経過時間を計時し、経過時間が所定時間に到達するまで待機する。この所定時間は、予め制御装置10に記憶された時間に設定される。例えば、また、所定時間は、カバレッジCovA_f1の変更のため発生する悪影響を低減できる期間である。カバレッジCovA-1_f1が変更されると、カバレッジCovA_f1内において通信の輻輳が生じる可能性があり、搬送周波数f1を利用した通信に悪影響が生ずる可能性があり、所定時間は、当該悪影響が生ずる可能性がある期間を超える期間であればよい。この所定時間は、例えば、基地局装置20AのカバレッジCovA_f1の変更が開始されてから、カバレッジCovA_f1の変更が終了するまでの期間である。」と記載されている。
したがって、基地局装置20A-1のトラヒック量が所定量を超えて、基地局装置20A-1のカバレッジCovA-1_f1が縮小された場合であるから、トラヒック量が減るのに、段落56では「カバレッジCovA-1_f1が変更されると、カバレッジCovA_f1内において通信の輻輳が生じる可能性があり」と記載されており、カバレッジを縮小したカバレッジで縮小直後に通信の輻輳がどうして生じるのか不明であり、この輻輳の影響が生じる可能性がある期間とはどのような期間であり、どのように算出されるのかが発明の詳細な説明に記載されていない。
したがって、請求項1の「所定時間」についてどのように算出される時間であるかが発明の詳細な説明に記載されておらず、発明の詳細な説明の記載は請求項1?6に係る発明を実施しうる程度に記載されていない。

エ.
したがって、発明の詳細な説明の記載は請求項1?6に係る発明を実施しうる程度に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないため、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?6に係る発明は、平成30年7月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明は、上記「第2 平成30年12月14日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の「1.補正の概要」の項目で示した本願発明のとおりのものと認める。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない」、
というものであり、本件補正前の請求項1に対して引用例(特開2006-101442号公報)及び周知事項を示す文献が引用されている。

3.引用発明及び周知事項
(1)引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された特開2006-101442号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0012】
続いて、本発明の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明を適用可能なセルラ方式の移動通信システムの概略図である。図1を参照すると、無線基地局1a、1b・・・1nと、基地局制御装置2と、保守端末3と、セル4a、4b・・・4nとが示されている。
【0013】
無線基地局1a、1b・・・1nは、移動通信システムに配置され、それぞれがカバーするセル4a、4b・・・4nを有し、各セル内に在圏する携帯電話端末等の移動機と無線データの送受信を行う。セル4a、4b・・・4nのサイズは、基地局制御装置2、又は、保守端末3から送信される制御コマンドにより、送信電力や受信タイミングを調整し動的に変更することが可能となっている。
【0014】
基地局制御装置2は、トラヒック量に基づいて自発的に、或いは、保守端末3からの保守コマンドに基づいて、各無線基地局に対してセル4a乃至4nのサイズを制御するセルサイズ変更コマンドを送信する。後に詳述するが、このセルサイズの変更は、不感地帯ができないように、隣接するセルのサイズを考慮して行われる。」

イ.「【0018】
続いて、本実施の形態の動作を説明する。基地局制御装置2は、トラヒック量の計測として、所定の時間間隔毎に各無線基地局の呼制御リソースの使用率の測定を行う。この呼制御リソースの使用率は、基地局制御装置2が行う呼制御リソースの割り当て管理の結果を逐次反映して測定される。
【0019】
基地局制御装置2は、測定されたトラヒック量が、図3に例示したマップの現セルサイズに対応するトラヒック量の区間に属するか否かと、隣接するセルのトラヒック量も考慮して、セルのサイズを決定する。例えば、図2のセル4aにおける呼制御リソース使用率が現セルサイズの(第1)閾値ULnを上回り、隣接セル4b乃至4eのトラヒック量が十分少ない(例えば、各セルの現セルサイズの(第2)閾値LLn未満である)場合に、基地局制御装置2は、セル4aを縮小し、隣接するセル4b、4c、4d、4eを拡大させるように、無線基地局1a乃至1eに対してそれぞれセルサイズ変更コマンドを送信する。これによりセル4aに集中していたトラヒックを隣接セル4bないし4eに分散させることができるため、セル4aをサポートする無線基地局1aにおけるリソース不足の発生を未然に防ぐことができる。そして、セル4aが縮小されると、本来のセル4aのエリアに位置する移動機について、隣接するセル4b、4c、4d、4eへのハンドオーバーが促される。」

ウ.


上記の摘記した引用例の記載からみて、

a 上記ウの図1及び上記アの段落13に「無線基地局1a、1b・・・1nは、移動通信システムに配置され、それぞれがカバーするセル4a、4b・・・4nを有し、各セル内に在圏する携帯電話端末等の移動機と無線データの送受信を行う。」と記載されており、更に上記アの段落14に「基地局制御装置2は、トラヒック量に基づいて自発的に、・・・各無線基地局に対してセル4a乃至4nのサイズを制御するセルサイズ変更コマンドを送信する。」ことが記載されていることから、引用例には、「移動通信システムの基地局制御装置であって、移動機と無線データの送受信を行うセル4aを有する無線基地局1a及びセル4bを有する無線基地局1bにセルサイズ変更コマンドを送信する基地局制御装置」が記載されている。

b 上記イの段落18に「基地局制御装置2は、トラヒック量の計測として、所定の時間間隔毎に各無線基地局の呼制御リソースの使用率の測定を行う。」と記載されていることから、基地局制御装置は、「各無線基地局のトラヒック量として呼制御リソースの使用率を測定」しているといえる。また上記イの段落19に「図2のセル4aにおける呼制御リソース使用率が現セルサイズの(第1)閾値ULnを上回り、隣接セル4b乃至4eのトラヒック量が十分少ない(例えば、各セルの現セルサイズの(第2)閾値LLn未満である)場合に、基地局制御装置2は、セル4aを縮小し、隣接するセル4b、4c、4d、4eを拡大させるように、無線基地局1a乃至1eに対してそれぞれセルサイズ変更コマンドを送信する。」と記載されていることから、基地局制御装置は「各無線基地局のトラヒック量として呼制御リソースの使用率を測定し、セル4aにおける呼制御リソース使用率が現セルサイズの閾値ULnを上回り、隣接セル4bのトラヒック量が十分少ない場合に、セル4aを縮小し、隣接するセル4bを拡大させるように、無線基地局1a及び1bに対してそれぞれセルサイズ変更コマンドを送信する」ことが記載されている。

したがって、上記の摘記した引用例の記載からみて、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
「 移動通信システムの基地局制御装置であって、移動機と無線データの送受信を行うセル4aを有する無線基地局1a及びセル4bを有する無線基地局1bにセルサイズ変更コマンドを送信する基地局制御装置であり、
各無線基地局のトラヒック量として呼制御リソースの使用率を測定し、セル4aにおける呼制御リソース使用率が現セルサイズの閾値ULnを上回り、隣接セル4bのトラヒック量が十分少ない場合に、セル4aを縮小し、隣接するセル4bを拡大させるように、無線基地局1a及び1bに対してそれぞれセルサイズ変更コマンドを送信する基地局制御装置。」

(2)周知事項
ア.原査定の拒絶の理由で周知事項を示す文献として引用された特開2008-219338号公報には(以下、「周知例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「【0038】
また、図5に示すように、外円側のセクタ111では隣接するセル間で異なる周波数を割り当てて、セル間干渉を防止することができる。なお、外円側のセクタ111においては、隣接するセル間でのハンドオフが発生するが、異なる周波数間のハンドオフであるので、ハンドオフ成功率を高めることができ、通信品質を良好に保つことができる。」

イ.特開平11-285063号公報には(以下、「周知例2」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(ア)「【0005】セルシステム10は、全方向性基地局アンテナおよび3の周波数再利用ファクタを使用する。3の周波数再利用ファクタは、セルシステム10がF1,F2,F3で示される3つの異なるセットの通信周波数をサポートする。たとえば、セル12-1,12-2,12-3は、それぞれチャネルF1,F2,F3を使用する。これらのチャネルは、同一チャネル妨害の可能性を低減させるために設計されたパターンに従って、セルに割り当てられる。しかし、妨害制限のために、セルシステム10に示されたような全方向性セルパターンは、典型的に、指向性ユーザ端末と通信するために使用されるとき、小さい容量を提供し、全方向性ユーザ端末と通信するために使用されるときに、さらに小さい容量を提供する。」

(イ)


ウ.特開平10-13926号公報には(以下、「周知例3」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(ア)「【0011】
【発明の実施の形態】ワイアレスセルラ通信システムの従来の規則性のある六角形セルのレイアウトを図1に示す。六角形の格子でもってサービス領域を記載することにより、周波数はパターン化された配置でもって割り当てられ、これにより周波数の再利用が、制御しながら繰り返し使用する通常の割当モデルでもって可能となる。このセル領域は、それらに割り当てられた特定のチャネルセットを有する。各チャネルセットは、そのセル領域内で使用するために複数の個々の送受信無線チャネルを有する。図1に示したモデルにおいては、セル「A」は共通ユーザセルで、これら全ては同一チャネルセットを使用する。これは共通ユーザセル「B],「C]等についても当てはまり、それぞれ独自に割り当てられたチャネルセットを有する。」

(イ)


上記のア、イ(ア)(イ)、ウ(ア)(イ)の記載によれば、「同一周波数による妨害を防ぐために、隣接するセル間では異なる周波数を使用する。」ことは周知事項であると認められる。

4.対比・判断
本願発明と引用発明を対比すると、

(1)引用発明の「移動機」、「移動通信システム」は、それぞれ本願発明の「端末」、「無線通信システム」に相当する。
また、引用発明の「無線基地局1a」、「無線基地局1b」を、それぞれ「第1の基地局」、「第2の基地局」と称することは任意である。
そして、引用発明の「基地局制御装置」は本願発明と同様に「制御装置」といえる。

(2)引用発明の無線基地局1a及びセル4bを有する無線基地局1bに送信される「セルサイズ変更コマンド」は、本願発明と同様に第1の基地局及び第2の基地局を制御対象とする制御情報といえるから、引用発明の「移動通信システムの基地局制御装置であって、移動機と無線データの送受信を行うセル4aを有する無線基地局1a及びセル4bを有する無線基地局1bにセルサイズ変更コマンドを送信する基地局制御装置」と、本願発明とは「端末との間の無線通信を行う無線通信システムの第1の基地局及び第2の基地局を制御対象とする制御情報を出力する制御装置」の点で共通する。

(3)本願発明の「前記第1の基地局の第1の搬送周波数と前記第2の基地局の第2の搬送周波数」との事項から、第1の基地局が第1の搬送周波数のみを使用し、第2の基地局が第2の搬送周波数のみを使用するケースが含まれている。このケースでは搬送周波数と基地局が1対1に対応するから、本願発明の「通信トラヒックの混雑傾向を搬送周波数ごとに認識し、前記第1の基地局の第1の搬送周波数と前記第2の基地局の第2の搬送周波数とのうち、前記第1の基地局の通信容量または前記第2の基地局の通信容量を空けるように、カバレッジを縮小する搬送周波数を選択し、前記第1の基地局の前記第1の搬送周波数を選択した場合に、前記第2の基地局の前記第2の搬送周波数のカバレッジを拡大させることを決定する」ことは、「通信トラヒックの混雑傾向を基地局ごとに認識し、第1の基地局と第2の基地局とのうち、前記第1の基地局の通信容量または前記第2の基地局の通信容量を空けるように、カバレッジを縮小する基地局を選択し、前記第1の基地局を選択した場合に、前記第2の基地局のカバレッジを拡大させることを決定する」ことといえる。
一方、引用発明は「各無線基地局のトラヒック量として呼制御リソースの使用率を測定」することで、「通信トラヒックの混雑傾向を基地局ごとに認識」しているといえる。また、引用発明が「セル4aにおける呼制御リソース使用率が現セルサイズの閾値ULnを上回」る場合に「セル4aを縮小」することは、セル4aを有する無線基地局1aとセル4bを有する無線基地局1bとのうち、セル4aを有する無線基地局1aの通信容量を空けるように、カバレッジを縮小する無線基地局として無線基地局1aを選択しているといえる。そして、引用発明が「セル4aを縮小し、隣接するセル4bを拡大させる」ことはセル4bを有する無線基地局1bのカバレッジを拡大させることを決定しているといえる。よって、引用発明の「各無線基地局のトラヒック量として呼制御リソースの使用率を測定し、セル4aにおける呼制御リソース使用率が現セルサイズの閾値ULnを上回り、隣接セル4bのトラヒック量が十分少ない場合に、セル4aを縮小し、隣接するセル4bを拡大させるように、無線基地局1a及び1bに対してそれぞれセルサイズ変更コマンドを送信する」ことは、「通信トラヒックの混雑傾向を基地局ごとに認識し、第1の基地局と第2の基地局とのうち、前記第1の基地局の通信容量または前記第2の基地局の通信容量を空けるように、カバレッジを縮小する基地局を選択し、前記第1の基地局を選択した場合に、前記第2の基地局のカバレッジを拡大させることを決定する」ことといえる。
そして引用発明の基地局制御装置が上述の決定をする制御手段を備えていることは明らかである。

よって、本願発明の「通信トラヒックの混雑傾向を搬送周波数ごとに認識し、前記第1の基地局の第1の搬送周波数と前記第2の基地局の第2の搬送周波数とのうち、前記第1の基地局の通信容量または前記第2の基地局の通信容量を空けるように、カバレッジを縮小する搬送周波数を選択し、前記第1の基地局の前記第1の搬送周波数を選択した場合に、前記第2の基地局の前記第2の搬送周波数のカバレッジを拡大させることを決定する搬送波制御部」と、引用発明の「各無線基地局のトラヒック量として呼制御リソースの使用率を測定し、セル4aにおける呼制御リソース使用率が現セルサイズの閾値ULnを上回り、隣接セル4bのトラヒック量が十分少ない場合に、セル4aを縮小し、隣接するセル4bを拡大させるように、無線基地局1a及び1bに対してそれぞれセルサイズ変更コマンドを送信する」とは、「通信トラヒックの混雑傾向を基地局ごとに認識し、第1の基地局と第2の基地局とのうち、前記第1の基地局の通信容量または前記第2の基地局の通信容量を空けるように、カバレッジを縮小する基地局を選択し、前記第1の基地局を選択した場合に、前記第2の基地局のカバレッジを拡大させることを決定する制御手段」を有する点で共通する。

(4)引用発明の基地局制御装置が「無線基地局1a及び1bに対してそれぞれセルサイズ変更コマンドを送信する」ための出力部を有することは明らかであるから、引用発明と本願発明とは「決定されたカバレッジの変更についての制御情報を第1の基地局及び第2の基地局に出力する出力部」を有する点で一致する。

(一致点)
「 端末との間の無線通信を行う無線通信システムの第1の基地局及び第2の基地局を制御対象とする制御情報を出力する制御装置であり、
通信トラヒックの混雑傾向を基地局ごとに認識し、前記第1の基地局と前記第2の基地局とのうち、前記第1の基地局の通信容量または前記第2の基地局の通信容量を空けるように、カバレッジを縮小する基地局を選択し、前記第1の基地局を選択した場合に、前記第2の基地局のカバレッジを拡大させることを決定する制御部と、
前記決定されたカバレッジの変更についての制御情報を前記第1の基地局及び前記第2の基地局に出力する出力部と、
を備える制御装置。」

(相違点)
本願発明では「無線通信システム」が「複数の搬送周波数を使用」し、「第1の基地局」が「第1の搬送周波数」を使用し、「第2の基地局」が「第2の搬送周波数」を使用しているのに対し、引用発明では当該構成が特定されていない点。

以下、相違点について検討する。
(相違点について)
上記「3.引用発明及び周知事項」の「(2)周知事項」で述べたとおり、「同一周波数による妨害を防ぐために、隣接するセル間では異なる周波数を使用する。」ことは周知事項である。そして、引用発明においても隣接するセル間で同一周波数による妨害が起こり得るから、引用発明に周知事項を採用することで、第1の基地局が第1の搬送周波数を使用し、第2の基地局が第2の搬送周波数を使用し、無線通信システム全体として複数の搬送周波数を使用することは当業者が当業者が容易に想到し得る。


そうすると、本願発明は引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-11-08 
結審通知日 2019-11-12 
審決日 2019-11-25 
出願番号 特願2015-13373(P2015-13373)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 光平  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 井上 弘亘
中木 努
発明の名称 制御装置、制御方法、及びコンピュータプログラム  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 小林 淳一  
代理人 松本 裕幸  

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