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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1358537
審判番号 不服2018-14150  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-25 
確定日 2020-01-06 
事件の表示 特願2017- 17323「慢性腎臓病における続発性副甲状腺機能亢進症の安全かつ効果的な治療および予防方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月20日出願公開、特開2017- 75183〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年4月25日(パリ条約による優先権主張 2007年4月25日 アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする特願2010-506524号の一部を平成26年2月26日に新たな出願(特願2014-34861号)とし、さらにその一部を平成29年2月2日に新たな出願としたものであり、出願後の主な手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年10月2日 :手続補正書の提出
平成29年10月31日付け:拒絶理由通知書
平成30年6月20日付け :拒絶査定
平成30年10月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年11月5日 :手続補正書(方式)の提出
平成30年12月10日付け:前置報告書

第2 平成30年10月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年10月25日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
25-ヒドロキシビタミンD_(3)および任意選択で25-ヒドロキシビタミンD_(2)を含む医薬組成物であって、25-ヒドロキシビタミンDと1,25-ジヒドロキシビタミンDの両方の血中濃度が高まるまたは維持され、25-ヒドロキシビタミンD_(3)が循環中の支配的なプロホルモンとなることを含む方法により、ステージ3または4の慢性腎臓病を患う患者における続発性副甲状腺機能亢進症を治療および予防するための医薬組成物であって、経口的、静脈内、または経皮的投与製剤として患者に投与され、前記投与が毎日から1週に1回から3回の間欠的投与である、前記医薬組成物。
【請求項2】
25-ヒドロキシビタミンD_(3)、および任意選択で25-ヒドロキシビタミンD_(2)、およびさらに任意選択で必要なら1,25-ジヒドロキシビタミンD_(2)を含む、ステージ3または4の慢性腎臓病における続発性副甲状腺機能亢進症に対する維持/予防療法のための医薬組成物であって、25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度が30ng/mL以上に高まり、維持され、25-ヒドロキシビタミンD_(3)が支配的なプロホルモンであり、1,25-ジヒドロキシビタミンDの血中濃度が1,25-ジヒドロキシビタミンDに関する患者の正常な経歴の生理学的範囲内に高まり、または維持され、高められた血漿中iPTH濃度が、異常に低い骨代謝回転速度を回避しながら低下または調節されるように、経口的、静脈内、または経皮的投与製剤として患者に投与され、前記投与が毎日から週に1回から3回の間欠的投与である、前記医薬組成物。
【請求項3】
25-ヒドロキシビタミンD化合物が、25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度が30ng/mL以上に高まり、かつ、維持されるように投与される、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
25-ヒドロキシビタミンD化合物が、25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度が少なくとも30日間30ng/mL以上に維持されるように投与される、請求項1?3のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項5】
25-ヒドロキシビタミンD化合物が、25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度が少なくとも2ヶ月30ng/mL以上に維持されるように投与される、請求項1?4のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項6】
25-ヒドロキシビタミンD化合物が、患者の血清副甲状腺ホルモン濃度が慢性腎臓病ステージの目標範囲まで低下するように投与される、請求項1?5のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項7】
25-ヒドロキシビタミンD化合物が、患者の血清副甲状腺ホルモン濃度が処置前に比較して少なくとも30%低下するように投与される、請求項1?6のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項8】
さらに、ビタミンホルモン補充療法として1,25-ジヒドロキシビタミンD_(2)が患者に投与される、請求項1?7のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項9】
25-ヒドロキシビタミンD_(3)および任意的に25-ヒドロキシビタミンD_(2)の用量が1週間に0.5μg?400μgの量である、請求項1から8のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項10】
週に1?3回患者に投与される、請求項1?9のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項11】
維持放出組成物製剤である、請求項1?10のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項12】
PTHの過剰抑制が回避されるように25-ヒドロキシビタミンD化合物が投与される、請求項1?11のいずれか1項記載の医薬組成物。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年10月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
25-ヒドロキシビタミンD_(3)および任意選択で25-ヒドロキシビタミンD_(2)を含む医薬組成物であって、25-ヒドロキシビタミンDと1,25-ジヒドロキシビタミンDの両方の血中濃度が高まるまたは維持され、25-ヒドロキシビタミンD_(3)が循環中の支配的なプロホルモンとなることを含む方法により、ステージ3?5の慢性腎臓病を患う患者における続発性副甲状腺機能亢進症を治療および予防するための医薬組成物であって、経口的、静脈内、または経皮的投与製剤として患者に投与され、前記投与が毎日から1週に1回から3回の間欠的投与である、前記医薬組成物。
【請求項2】
25-ヒドロキシビタミンD_(3)、および任意選択で25-ヒドロキシビタミンD_(2)、およびさらに任意選択で必要なら1,25-ジヒドロキシビタミンD_(2)を含む、続発性副甲状腺機能亢進症に対する維持/予防療法のための医薬組成物であって、25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度が30ng/mL以上に高まり、維持され、25-ヒドロキシビタミンD_(3)が支配的なプロホルモンであり、1,25-ジヒドロキシビタミンDの血中濃度が1,25-ジヒドロキシビタミンDに関する患者の正常な経歴の生理学的範囲内に高まり、または維持され、高められた血漿中iPTH濃度が、異常に低い骨代謝回転速度を回避しながら低下または調節されるように、経口的、静脈内、または経皮的投与製剤として患者に投与され、前記投与が毎日から週に1回から3回の間欠的投与である、前記医薬組成物。
【請求項3】
25-ヒドロキシビタミンD化合物が、25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度が30ng/mL以上に高まり、かつ、維持されるように投与される、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
25-ヒドロキシビタミンD化合物が、25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度が少なくとも30日間30ng/mL以上に維持されるように投与される、請求項1?3のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項5】
25-ヒドロキシビタミンD化合物が、25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度が少なくとも2ヶ月30ng/mL以上に維持されるように投与される、請求項1?4のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項6】
25-ヒドロキシビタミンD化合物が、患者の血清副甲状腺ホルモン濃度が慢性腎臓病ステージの目標範囲まで低下するように投与される、請求項1?5のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項7】
25-ヒドロキシビタミンD化合物が、患者の血清副甲状腺ホルモン濃度が処置前に比較して少なくとも30%低下するように投与される、請求項1?6のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項8】
さらに、ビタミンホルモン補充療法として1,25-ジヒドロキシビタミンD_(2)が患者に投与される、請求項1?7のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項9】
患者がステージ3またはステージ4の慢性腎臓病を有する、請求項1?8のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項10】
患者がステージ5の慢性腎臓病を有する、請求項1?9のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項11】
25-ヒドロキシビタミンD_(3)および任意的に25-ヒドロキシビタミンD_(2)の用量が1週間に0.5μg?400μgの量である、請求項1から10のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項12】
週に1?3回患者に投与される、請求項1?11のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項13】
維持放出組成物製剤である、請求項1?12のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項14】
PTHの過剰抑制が回避されるように25-ヒドロキシビタミンD化合物が投与される、請求項1?13のいずれか1項記載の医薬組成物。」

2 補正の適否
上記1からみて、本件補正による補正事項は以下の(i)?(iv)である。
(i)補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ステージ3?5」を「ステージ3または4」に補正する。
(ii)補正前の請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項である「ステージ3?5」を「ステージ3または4」に補正する。
(iii)補正前の請求項9及び請求項10を削除する。
(iv)上記(iii)に伴い、補正前の請求項11?14の請求項番号を請求項9?12に繰り上げるとともに、補正後の請求項9?12が引用する請求項を、それぞれ「請求項1から8のいずれか1項」、「請求項1?9のいずれか1項」、「請求項1?10のいずれか1項」及び「請求項1?11のいずれか1項」に補正する。
補正事項(iii)は特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。
補正事項(i)及び(ii)は、慢性腎臓病を患う患者の重症度を「ステージ3?5」から「ステージ3または4」に限定するものであり、補正事項(iv)は当該限定に伴い、請求項番号を繰り上げるとともに引用する請求項の数を減少させるものであり、いずれも特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?12のうち、請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりの、以下のものである。
「【請求項1】
25-ヒドロキシビタミンD_(3)および任意選択で25-ヒドロキシビタミンD_(2)を含む医薬組成物であって、25-ヒドロキシビタミンDと1,25-ジヒドロキシビタミンDの両方の血中濃度が高まるまたは維持され、25-ヒドロキシビタミンD_(3)が循環中の支配的なプロホルモンとなることを含む方法により、ステージ3または4の慢性腎臓病を患う患者における続発性副甲状腺機能亢進症を治療および予防するための医薬組成物であって、経口的、静脈内、または経皮的投与製剤として患者に投与され、前記投与が毎日から1週に1回から3回の間欠的投与である、前記医薬組成物。」

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1である「Ital J Mineral Electrolyte Metab, 1998年9月, 12(3-4), p.73-76」には、以下の事項が記載されている。原文は外国語のため日本語訳で記載する。なお、当審合議体により、必要な箇所に下線及び「当審合議体による注釈」を付した。

(1a)「連続腹膜透析患者における25-ヒドロキシビタミンD_(3)の生化学的およびホルモンへの短期的影響

背景 慢性腎不全(CRF:chronic renal failure)は、カルシトリオールの内因的産生に重度の障害を生じる。しかし、過剰な濃度の前駆体25(OH)D_(3)は、血清カルシトリオールを増加させる可能性がある。連続腹膜透析(CPD:continuous peritoneal dialysis)自体は、透析液による25(OH)D_(3)の損失のために、ビタミンDの状態に関し潜在的に有害である。この短期試験は、25(OH)D_(3)が軽度の続発性副甲状腺機能亢進症(SHP:secondary hyperparathyroidism)の患者のミネラル代謝に影響を及ぼすかどうかを評価するために設計された。

方法 我々は、3.1±3年間に15名の無尿性のCPD患者を登録した。25(OH)D_(3)は、1ヶ月間あらゆるビタミンDの摂取を中止(慣らし期間)した後、1日当たり100μgの標準用量を1ヶ月間投与した。イオン化カルシウム、リン酸、25(OH)D_(3)、1,25(OH)_(2)D_(3)、オステオカルシン、骨アルカリホスファターゼ(B-ALP:bone alkaline phosphatase)、無傷の副甲状腺ホルモン(intact PTH:intact parathormone)を含む適切な血清の化学検査を、治療の15日後および30日後に実施した。ベースライン値は、試験開始前および試験終了から1ヶ月後(回復期間)に取得した。透析スケジュール、タンパク質とカルシウムの摂取量、およびリン吸着薬は、全試験を通して変更しなかった。

結果 結果は、血清25(OH)D_(3)のベースラインが73%の患者において正常範囲を下回り、処置により全てにおいて急激に増加したことを示した。開始時に低下した血清カルシトリオールは、平均で230%増加したが、8/15名の患者では15μg/ ml未満のままであった。急性発症は起こらなかったが、血清カルシウムおよびリン酸はわずかに増加した。無傷のPTH(iPTH:intact PTH)は、1,25(OH)_(2)D_(3)レベルの増加があったすべての患者において有意に減少した。そうではなかった患者の内、4名はiPTHが20%以上減少し、4名はそうではなかった。iPTH変化の差の多くは、25(OH)D_(3)とイオン化カルシウムの両方の優勢的なレベルによるものと考えられ得る。

結論 これらの結果は、25(OH)D_(3)が尿毒症性骨形成異常症の合理的で安全な治療法として提案し得ることを示唆しており、より重症の続発性副甲状腺機能低下症(SHP)患者における長期試験の基礎となる。」(タイトル、及び73頁左欄1行?右欄4行)

(1b)「カルシトリオールまたは1α,25ジヒドロキシビタミンD_(3)(1,25(OH)_(2)D_(3))の血清レベルは、進行性慢性腎不全の実質的にすべての患者において非常に低い^(1-3)。・・・中略・・・
連続腹膜透析(CPD)自体は、腹膜透析液中の結合タンパク質の漏出を通して発生するカルシフェジオールの血清レベルの著しい減少を引き起こし得る。実際に、ほとんどのビタミンD_(3)誘導体に対する結合特性を有する45キロダルトンのα_(2)-糖タンパク質が、腹水中に見出されている^(10-12)。カルシフェジオールとその代謝産物である24,25ジヒドロキシビタミンD_(3)[24,25(OH)_(2)D_(3)]が、いずれもカルシトリオールの血清レベルとは関係なく、尿毒症患者のミネラル代謝障害に肯定的な影響を及ぼし得ることも示唆されている^(13,14)。
前述の根拠は、我々がグループでの経過観察において、CPD患者グループにおけるカルシフェジオールの短期間の影響を評価することを目的としたこの予備的試験を実施することを促すきっかけとなった。この予備的調査は、生化学的特性およびホルモンの特性に対する影響を評価するために設計されたため、我々は、軽度から中等度の続発性副甲状腺機能亢進症のみを有する患者を登録した。」(73頁右欄下から19行?74頁左欄本文15行)

[当審合議体による注釈1]
カルシフェジオール(calcifediol)は25(OH)D_(3)(25-ヒドロキシビタミンD_(3))の別名である(要すれば「ステッドマン医学大辞典 第5版、2002年、株式会社メジカルビュー社発行、第266頁左欄の「calcifediol」及び「calcidiol」の項目、及び第336頁左欄の「cholecalciferol」の項目を参照。)。
[当審合議体による注釈2]
カルシフェジオール(calcifediol)はビタミンD_(3)のより活性型(カルシトリオール)への生物学的変換の第1段階であり、カルシトリオール(calcitriol)はビタミンD_(3)のより活性型への生物学的変換の第2段階である(要すれば「ステッドマン医学大辞典 第5版、2002年、株式会社メジカルビュー社発行、第266頁左欄の「calcifediol」及び「calcidiol」の項目、同頁右欄の「calcitriol」の項目、及び第336頁左欄の「cholecalciferol」の項目を参照。)。

(1c)「患者及び試験プロトコール
3.1±3年間、61±16歳の男性6名および女性9名の15名のCPDを受けている無尿患者を、本試験の対象とした。全員から、我々の施設の倫理委員会によって承認された試験に対するインフォームド・コンセントを得た。試験開始前の1ヶ月間、あらゆる形態のビタミンDを中止した(慣らし期間)。その後、1日当たり100 μgのカルシフェジオールを1ヶ月間、患者に投与し、その間、食事療法およびカルシウム吸着剤を含む他の薬品は変更しなかった。腎症病因は、7名の患者で糸球体腎炎、6名で腎盂腎炎、他の2名で腎血管硬化症および腎髄質嚢胞性疾患であった。患者の一人は、連続周期的腹膜透析(CCPD:continuous cyclic peritoneal dialysis)を受けており、一晩当たり17リットルを交換したが、他の患者は全て、一日当たり4回2リットル(13名の患者)および2.5リットル(1名の患者)を交換する連続携帯型腹膜透析(CAPD:continuous ambulatory peritoneal dialysis)を受けていた。透析液中のカルシウム濃度は、全てにおいて1.75mmol / lであった。
生化学検査およびホルモンは、慣らし期間の終了時、カルシフェジオール療法の15日目と30日目、およびカルシフェジオール投与終了の1ヶ月後(回復期間)に評価を行った。以下のパラメーター:総カルシウムおよびイオン化カルシウム、リン酸、マグネシウム、血清25(OH)D_(3)および1,25(OH)_(2)D_(3)、無傷の副甲状腺ホルモン(iPTH)、骨アルカリホスファターゼ(BAlp)、オステオカルシンを測定した。ベースライン中および1ヶ月間のカルシフェジオール治療後に、腹膜流出液全体について、カルシウム、リン酸およびマグネシウムを分析した。
食事は試験全体を通して変更せず、慎重な食事調査(フード・メーター)によって確認した。」(74頁左欄17行?右欄12行)

(1d)「結果
全ての患者は、試験全体を通して安定した臨床状態を維持し、彼らの食事は、カルシウム、リンおよび総タンパク質に関して差はなかった(表1)。慣らし期間終了時の25(OH)D_(3)のベースライン・レベルは、11名(73%)の患者で基準値範囲を下回り、カルシフェジオールの投与中に漸進的な増加を示した。最初は低下していた1,25(OH)_(2)D_(3)の血清レベルは、ベースライン値と比較して2?3倍増加した。平均して、iPTHは15日間の治療後に低下し始め、1ヶ月でさらに減少し、2名を除く全ての患者でベースラインを下回った。血清カルシウムおよびリン酸にわずかな増加が認められたが、急性の高カルシウム血症または高リン血症の症状の発現はなかった。予想通り、オステオカルシンは、1ヶ月のカルシフェジオール治療単位の後に有意な増加を示した。透析中のカルシウムとリン酸のバランスは、異なる試験期間の間に変化しなかった。
25(OH)D_(3)と1,25(OH)_(2)D_(3)の増加率(ベースライン対1ヶ月治療)の間に有意な関係があった(y=1.54x-3.16;r=0.775、p<0.001)。iPTHの変化は、1,25(OH)D_(3)(y=-0.1x+0.26;r=0.523、p=0.024)およびイオン化カルシウム(y=-2.06 x +0.33;r=0.685、p=0.001)の両方の変化に逆相関した。iPTHの減少率は、25(OH)D_(3)補給により1,25(OH)_(2)D_(3)が15 pg/mlを超えて増加した患者では、有意ではないが急激な減少であった(66±12対33±45%; p = 0.085)。カルシトリオールが15 pg/mlを超えて増加しなかった8名の患者の内、4名ではiPTHが20%以上(71.6±21.0%)減少し、4名では20%未満(5.9±21.0%)の減少であった。前者は、25(OH)D_(3)の治療単位の終了時に25(OH)D_(3)(76.4±8.4対39.6±32.0μg/ml)およびイオン化カルシウム(1.37±0.14対1.23±0.04 mmol/l)の両方が高レベルであった。」(74頁右欄28行?75頁左欄19行)

(1e)「

」(74頁の表1、及び75頁の表2)

(1f)「本研究の結果から、CPD患者では、前駆体と活性代謝物の両方の血清レベルが低いことから、ビタミンDの状態が損なわれていることが確認された。カルシフェジオールを100μg/日で1ヶ月間投与する治療単位で、その血清レベルを正常化することができ、症例の約50%では、1,25(OH)_(2)D_(3)を正常範囲に回復させた。血清イオン化カルシウムも増加し、その結果として、治療を受けた患者全員において、iPTHが有意に減少した。興味深いことに、急性高カルシウム血症の症状の発現は起こらず、リン酸の血漿レベルは、リン酸吸着剤を増加させずに容易に制御することができた。これらの変化は全て、回復期間終了時の薬剤投与の中止と共に消失する傾向にあった。
また、iPTHも、25(OH)D_(3)の増加の後に1,25(OH)_(2)D_(3)、が15 pg / mlを超える数値にまで増加しなかった患者の半数で減少した。この亜群では、1,25(OH)_(2)D_(3)レベルが正常値以下であるにもかかわらず、血清イオン化カルシウムの穏やかな増加があった。1,25(OH)_(2)D_(3)の増加もiPTHの減少もしなかった残りの半数の患者では、25(OH)D_(3)が、それぞれ9.2、26.2、38.9および84μg/ mlであった。すなわち、25(OH)D_(3)の血清レベルが高いにもかかわらず、1名の患者だけはiPTHが減少しなかった。全体として見た場合、上記の結果は、25(OH)D_(3)による治療が、血清1,25(OH)_(2)D_(3)の効果的な増加をもたらすこととは関係なく、続発性副甲状腺機能亢進症を抑制し得ることを示唆する。血清を1,25(OH)_(2)D_(3)に下げた状態で維持した患者で観察されたiPTHの変化が、25(OH)D_(3)自体によるものか、または治療中に見られた高レベルのイオン化カルシウムによって媒介されるものかどうかは、明らかにされていない。
我々の結論は、25(OH)D_(3)の投与がCPD患者の尿毒症性骨形成異常症の治療および予防における合理的で安全な選択肢として提案できるということである。この主張は、いくつかの点に基づいている。第一に、CPD患者は、ビタミンDの状態が悪化し易い。第二に、彼らのほとんどは、25(OH)D_(3)に応答して血清カルシトリオールを増加させるであろう。第三に、iPTHは、1,25(OH)_(2)D_(3)が大幅に増加していなくても減少する可能性がある。最後に、これら全ての効果は、血漿中のカルシウムおよびリン酸の有害な変化なしに達成することが可能である。
これらの好ましい結果が、長期治療において、またより重症な続発性副甲状腺機能亢進症の患者において持続するかどうかを明らかにするためには、さらなる研究が必要である。」(76頁左欄3行?最下行)

(イ)上記(ア)のように、引用文献1には、連続腹膜透析(CPD)を受けている無尿患者にカルシフェジオール(25(OH)D_(3))を投与した臨床試験(摘記(1a)?(1e))から、「無傷のPTH(iPTH:intact PTH)は、1,25(OH)D_(3)レベルの増加があったすべての患者において有意に減少した」(摘記(1a))、「平均して、iPTHは15日間の治療後に低下し始め、1ヶ月でさらに減少し、2名を除く全ての患者でベースラインを下回った」(摘記(1d))、「治療を受けた患者全員において、iPTHが有意に減少した。」(摘記(1f))、及び「これら全ての効果は、血漿中のカルシウムおよびリン酸の有害な変化なしに達成することが可能である」(摘記(1f))という結果が示されたこと、そして、結論として25(OH)D_(3)の投与が連続腹膜透析(CPD)患者の尿毒症性骨形成異常症の治療および予防における合理的で安全な選択肢として提案できること(摘記(1a)及び(1f))が記載されている。そして、上記臨床試験では、カルシフェジオール(25(OH)D_(3))を、カルシフェジオール(25(OH)D_(3))を含む医薬組成物の形態で患者に投与したと解するのが自然である。
そうすると、引用文献1には、「25(OH)D_(3)を含む医薬組成物であって、25(OH)D_(3)を投与する方法により、連続腹膜透析を受けている無尿患者の尿毒症性骨形成異常症の治療および予防における合理的で安全な選択肢として提案できる医薬組成物。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

イ 引用文献4
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4である「Medical Practice, 2006年, Vol.23 No.3, p.498-502」には、以下の事項が記載されている。なお、当審合議体により、必要な箇所に下線及び「当審合議体による注釈」を付した。

(4a)「腎機能低下患者の骨代謝異常に対する治療の進めかた
・・・中略・・・
腎機能低下患者は,国際的には慢性腎臓病chronic kidney disease(CKD)と定義され,腎機能に応じて重症度がstage 1からstage 5に分類される・・・骨代謝異常の治療については,米国腎臓財団NKF(National Kidney Foundation;http://www.kidney.org/)が作成したK/DOQI(Kidney Disease Outcomes Quality Initiative)の腎代謝・骨疾患ガイドラインで病期に応じた治療法が推奨されている^(1))。」(タイトル、及び498頁左欄9?17行)

(4b)「骨代謝異常の病態と発症時期●
糸球体濾過量glomerular filtration rate(GFR)が60ml/分/1.73m^(2)以下になると,ほとんどの患者で骨代謝異常が発生する(図1)。GFRが低下すると,体内にリン(P)が蓄積して血清Pが増加する。血中で増加したPはカルシウム(Ca)と結合するため血中のイオン化Caは減少し,また,腎臓でのビタミンDの活性化障害から腸管でのCa吸収が減少するため,血清Caは減少する。血清P増加,Ca減少,活性化ビタミンDの低下が刺激となって副甲状腺ホルモンparathyroid hormone(PTH)の分泌が亢進し,二次性副甲状腺機能亢進症secondary hyperparathyroidism(2°HPT)が生じる。」(498頁左欄25行?右欄4行)

(4c)「二次性副甲状腺機能亢進症の治療●
2°HPTは長期透析症例の重大な合併症で,内科的治療の進歩にもかかわらず,副甲状腺摘除術Parathroidectomy(PTx)が必要となる症例は減少していない。2°HPT発症に関わる有意な危険因子として透析期間の長期化と透析導入時の高いPTH値とが報告されており,保存期からの評価および治療の重要性が示唆される。
腎不全患者ではPTHに対する骨の抵抗性が存在するため,骨回転を正常に保つためには血清intact PTH(iPTH)値を健常者の正常範囲よりは高く維持する必要がある。透析患者では正常の2.5?3倍のiPTHが必要と考えられているが,保存期での至適iPTH値を明らかにした論文は少ない。K/DOQIのガイドラインでは,iPTHの管理目標をGFRに応じて表1のように提唱している。
stage 3までは,血清iPTHは健常者の正常範囲に入っていることが多いが,年1回は測定し,上昇する場合には35?70pg/mlを目標に血清Pの是正,活性型ビタミンD_(3)製剤の投与を行う。
stage 4になると,通常はPTHの上昇がはじまる。3ヵ月ごとに血清iPTHを測定し,70?110pg/mlを目標に治療を行う。血清Ca,P値は,stage 4までは3ヵ月ごと,stage 5では1ヵ月ごとに測定する。」(498頁右欄24行?499頁右欄本文1行)

(4d)「●慢性腎臓病ステージ3以降では,骨代謝障害が必発であり,
特に二次性副甲状腺機能亢進症が重要である。
●その発症には,リンの蓄積と活性型ビタミンD産生低下,
血清Caイオン濃度の低下が関与している。
●透析導入前より,二次性副甲状腺機能亢進症の予防と治療を
積極的に行うべきである。」(499頁上段1?3行)

(4e)「

」(499頁の表1)

[当審合議体による注釈]
引用文献4の「二次性副甲状腺機能亢進症secondary hyperparathyroidism」は「続発性副甲状腺機能亢進症」と同義である(要すれば「ステッドマン医学大辞典 第5版、2002年、株式会社メジカルビュー社発行、第845頁右欄の「hyperparathyroidism」の項目を参照。)。

ウ 引用文献5
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献5である「特表2006-519854号公報」には、以下の事項が記載されている。なお、当審合議体により、必要な箇所に下線及び「当審合議体による注釈」を付した。

(5a)「【請求項1】
慢性腎疾患と関連する上皮小体機能亢進症の治療方法であって、該機能亢進症に罹患した対象に、高い血中副甲状腺ホルモン(PTH)のレベルを下げ、あるいは低い血中副甲状腺ホルモンのレベルを維持するのに十分な量の、ビタミンD化合物を投与する工程を含み、該対象が、段階1-4の慢性腎疾患に罹っていることを特徴とする、上記方法。
・・・中略・・・
【請求項28】
該ビタミンD化合物の上記量を、製薬上許容される担体との組合せで、腸管外又は経口的に投与する、請求項1記載の方法。
【請求項29】
上記量の該ビタミンD化合物を、腸管外投与する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
上記量の該ビタミンD化合物を、静脈内投与する、請求項29記載の方法。
【請求項31】
上記量の該ビタミンD化合物を、経口的に投与する、請求項28記載の方法。
・・・中略・・・
【請求項35】
該ビタミンD化合物を、静脈内注射、鼻咽頭又は粘膜吸収、又は経皮吸収によって投与する、請求項28記載の方法。」(【請求項1】?【請求項35】)

(5b) 「本発明は、効果的な治療プロトコールを利用して、活性なビタミンD化合物を投与することにより、慢性腎疾患と関連する上皮小体機能亢進症を治療しかつ予防する方法に関するものである。」(【0002】)

(5c)「二次的(及び三次的)上皮小体機能亢進症は、慢性腎疾患と関連する重大な臨床上の問題である。・・・中略・・・
慢性腎疾患は、腎臓の損傷又は糸球体濾過量(GFR)が、3ヶ月以上に及び、90mL/min/1.73m2未満である状態として定義される。このGFRのレベルは、健康な腎機能及び疾患状態にある腎機能に関する最良の全体的尺度として、広く受容れられている。慢性腎疾患は、GFRによって測定された、推定腎機能に基いて、今では幾つかの段階に分類されている。段階1は、幾分かの腎臓の損傷を持ち、≧90mL/min/1.73m^(2)なるGFRを持つ、正常な腎機能として定義され;段階2は、幾分かのGFRにおける低下を示す、即ち60-89mL/min/1.73m^(2)なるGFRを持つ、幾分かの腎機能の減少を含む。段階3は、30-59mL/min/1.73m^(2)なるGFRを持つ、中程度に低下した腎機能を持つものとして定義される。段階4は、15-29mL/min/1.73m^(2)なるGFRを持つ、腎機能がかなり低下した状態として定義される。段階5は、<15mL/min/1.73m^(2)なるGFRを持つ、あるいは透析を要する腎不全である。段階5は、また末期段階の腎疾患(ESRD)としても知られている。
【0008】
上記のように、二次的上皮小体機能亢進症は、慢性腎疾患に罹患した患者において共通に見られるものである。」(【0007】?【0008】)

(5d)「エピソードに基く投薬が、慢性腎疾患に関連する上皮小体機能亢進症の治療に関する本発明による化合物又は類似体の投与において意図されている。「エピソードに基く投薬」とは、間欠的な、即ち毎日ではない投薬、例えば1週間に、2週間に、3週間に、1ヶ月に一回、又は1週間に二回、又は1週間に三回の投薬等を意味する。式(I)の化合物、例えば1α-ヒドロキシビタミンD_(2)(同様にドキサーカルシフェロール(doxercalciferol)又は1α-ヒドロキシエルゴカルシフェロールとしても知られている)は、例えば1週間に一回、10-30μgなる用量で、あるいは1週間に三回3μgなる用量で投与することができる。間欠的又はエピソードに基く投薬養生は、1週間に一回?12週間毎に1回なる範囲で、例えば3週毎に1回が適当である。体重の関数として、有効投与量は、1週間に一回を基本に、患者の体重1kg当たり約0.2μg?約3.0μgなる範囲にある。」(【0035】)

(5e)「【0064】
例10:慢性腎疾患に起因する、高い血中PTHを持つ、対象に関するプラシーボ-制御研究
特に、段階1-4の慢性腎疾患に関連する上皮小体機能亢進症の治療としての、1α-ヒドロキシビタミンD_(2)(ドキサーカルシフェロール)の安全性及び効能は、55名の、18-85歳なる範囲の年齢構成を持つ、穏やか乃至中程度の慢性腎疾患に罹っている成人を含む研究において確認した。これらの対象は、85pg/mLを越える血漿iPTHレベルを有し、また8週間のベースライン期間及び24週間のドキサーカルシフェロール又はプラシーボの経口投与による治療を完結した。
【0065】
テスト薬物の最初の投薬量は、毎日2カプセル(ドキサーカルシフェロール治療にランダムに割振られた対象に対して、全体で1.0μg)であり、4週間後に、一日当たり一カプセルづつ、段階的に増やした。最大用量は、一日当たり10カプセル(5.0μg/日なるドキサーカルシフェロール)に制限した。これらの対象を、規則的な間隔で、血漿iPTHレベル、血清カルシウム及びリンレベル、24時間及び絶食時の尿中カルシウムレベル、骨-特異的血清マーカー、血漿中の全1α,25-ジヒドロキシビタミンD、及び日常的な血液の化学的性質及び血液学的性質を追跡した。GFRは、この治療の開始前及びこの研究の終了時点において測定した。治療開始前に、これら2つの群における、物理的又は生化学的な差異は、何等検出されなかった。
ドキサーカルシフェロール治療中、平均の血漿iPTHレベルは、ベースラインレベルから、段階的に減少し、24週間後に最大の抑制率45.6%(p<0.001)に達した。対応する変化は、プラシーボ処置中には、観測されなかった。平均のiPTHレベルは、全治療週において、プラシーボ投与群に対して、ドキサーカルシフェロールを投与した対象において低かった(p<0.001)。平均の血清内カルシウム、血清内リン及び尿中カルシウムにおいて、あるいは高カルシウム血症、高リン酸塩血症及び高カルシウム尿症の割合における、如何なる臨床的に有意な差異も、治療群間に観測されなかった。血清C-及びN-テロペプチド及び骨特異的アルカリホスフェートは、ベースライン及びプラシーボ処置群に対して、ドキサーカルシフェロールを用いた治療に応じて減少した(p<0.01)。腎機能及び悪影響の割合に関しては、治療群間に如何なる差異も観測されなかった。これらのデータは、ドキサーカルシフェロールが、慢性腎疾患に罹っている患者における二次的な上皮小体機能亢進症を抑制するために、安全かつ効果的に使用できることを明らかにしている。」
(【0064】?【0065】)

「当審合議体による注釈」
引用文献5の「上皮小体機能亢進症」は「続発性副甲状腺機能亢進症」の別名である(要すれば「ステッドマン医学大辞典 第5版、2002年、株式会社メジカルビュー社発行、第845頁右欄の「hyperparathyroidism」の項目を参照。)。

(3)本件補正発明と引用発明との対比
ア 本件補正発明は、「25-ヒドロキシビタミンD_(3)および任意選択で25-ヒドロキシビタミンD_(2)を含む医薬組成物であって、25-ヒドロキシビタミンDと1,25-ジヒドロキシビタミンDの両方の血中濃度が高まるまたは維持され、25-ヒドロキシビタミンD_(3)が循環中の支配的なプロホルモンとなることを含む方法により、ステージ3または4の慢性腎臓病を患う患者における続発性副甲状腺機能亢進症を治療および予防するための医薬組成物であって、経口的、静脈内、または経皮的投与製剤として患者に投与され、前記投与が毎日から1週に1回から3回の間欠的投与である、前記医薬組成物。」(上記(1))であり、引用発明は、「25(OH)D_(3)を含む医薬組成物であって、25(OH)D_(3)を投与する方法により、連続腹膜透析を受けている無尿患者の尿毒症性骨形成異常症の治療および予防における合理的で安全な選択肢として提案できる医薬組成物。」である(上記(2)ア)。
そして、引用発明の「25(OH)D_(3)を含む医薬組成物」は本願補正発明の「25-ヒドロキシビタミンD_(3)および任意選択で25-ヒドロキシビタミンD_(2)を含む医薬組成物」に相当し、引用発明の「連続腹膜透析を受けている無尿患者」及び本件補正発明の「ステージ3または4の慢性腎臓病を患う患者」は、いずれも腎機能が低下した患者である点で共通している。

イ ここで、本件補正発明の「25-ヒドロキシビタミンDと1,25-ジヒドロキシビタミンDの両方の血中濃度が高まるまたは維持され、25-ヒドロキシビタミンD_(3)が循環中の支配的なプロホルモンとなることを含む方法により、」という記載における「25-ヒドロキシビタミンD」、「1,25-ジヒドロキシビタミンD」及び「25-ヒドロキシビタミンD_(3)が循環中の支配的なプロホルモンとなること」の意味について、本願明細書には以下の記載がある。なお、当審合議体により、必要な箇所に下線及び「当審合議体による注釈」を付した。

「ビタミンD_(2)およびビタミンD_(3)は、両方とも、肝臓中に存在する1種または複数の酵素によって代謝されてプロホルモンになる。関連する酵素は、CYP27A1、・・・である。これらの酵素は、ビタミンD_(2)を代謝して、25-ヒドロキシビタミンD_(2)および24(S)-ヒドロキシビタミンD_(2)として知られる2種のプロホルモンに変え、ビタミンD_(3)を代謝して25-ヒドロキシビタミンD_(3)として知られるプロホルモンに変える。2種の25-ヒドロキシル化プロホルモンは、血液中でより重要であり、単独にまたは集合的に「25-ヒドロキシビタミンD」と呼ばれる。」(【0005】)

「ビタミンDプロホルモンは、近位尿細管中に存在するCYP27B1(または25-ヒドロキシビタミンD_(3)-1α-ヒドロキシラーゼ)として知られる酵素によって腎臓中でさらに代謝されて強力なホルモンになる。プロホルモン25-ヒドロキシビタミンD_(2)および24(S)-ヒドロキシビタミンD_(2)は、代謝されて1α,25-ジヒドロキシビタミンD_(2)および1α,24(S)-ジヒドロキシビタミンD_(2)として知られるホルモンになる。同様に、25-ヒドロキシビタミンD_(3)は、代謝されて1α,25-ジヒドロキシビタミンD_(3)(カルシトリオール)として知られるホルモンになる。これらのホルモンは、全身送達のために腎臓によって血液中に分泌される。血液中で1α,24(S)-ジヒドロキシビタミンD_(2)に比べてはるかにより重要であるのが通常である2種の25-ヒドロキシル化ホルモンは、単独でまたは集合的に「1,25-ジヒドロキシビタミンD」と呼ばれる。」(【0007】)

「慢性的に低い血中1,25-ジヒドロキシビタミン濃度は、また、ビタミンDプロホルモンの欠乏のため発生する。・・・したがって、血中プロホルモン(血清中総25-ヒドロキシビタミンD)濃度の測定は、ヘルスケアー専門家の間で是認されたビタミンDの状態を監視するための方法になっている。」(【0013】)

「本発明は、安全かつ有効な量のビタミンD充足療法を、必要なら1,25-ジヒドロキシビタミンD_(2)を伴って適用することによって、続発性副甲状腺機能亢進症およびその基礎をなす慢性的に低い血中1,25-ジヒドロキシビタミンD濃度を治療および予防することに関する。CKDで起こる続発性副甲状腺機能亢進症は、ビタミンD充足療法が、血清中総25-ヒドロキシビタミンDを少なくとも30ng/mLの濃度まで特定的に上昇させ、支配的な循環プロホルモンが25-ヒドロキシビタミンD_(3)であることを確実にする方式でこのような濃度を一貫して維持しなければ、このような療法に応答しないことがしばしばであることが判っている。」(【0023】)
(当審合議体による注釈:上記「CKD」という記載は「慢性腎臓病」の略語である。)

「さらに別の態様において、本発明は、ビタミンD不足またはビタミンD欠乏症による続発性副甲状腺機能亢進症を発症する可能性を有する早期CKD患者に、25-ヒドロキシビタミンD_(3)を、より少量の25-ヒドロキシビタミンD_(2)を伴ってまたは伴わないで、および/またはビタミンD_(3)を、より少量のビタミンD_(2)を伴ってまたは伴わないで前以て投与する方法を提供し、結果として、血中25-ヒドロキシビタミンD濃度(25-ヒドロキシビタミンD_(3)が支配的な循環ホルモンである)は、一貫して30ng/mL以上に維持され、血中1,25-ジヒドロキシビタミンD濃度は、患者の正常な経歴の生理学的範囲内に一貫して維持され、血漿中PTHは、低下したまたは正常な濃度に維持される。」(段落【0026】)

上記のように、本願明細書には、「25-ヒドロキシビタミンD_(2)」及び「25-ヒドロキシビタミンD_(3)」という2種の25-ヒドロキシル化プロホルモンについて単独にまたは集合的に「25-ヒドロキシビタミンD」と称すること(段落【0005】)、「1α,25-ジヒドロキシビタミンD_(2)」及び「1α,25-ジヒドロキシビタミンD_(3)(カルシトリオール)」という2種の25-ヒドロキシル化プロホルモンについて単独にまたは集合的に「1,25-ジヒドロキシビタミンD」と称すること(段落【0007】)が記載されている。
そして、本願明細書には、本件補正発明の「25-ヒドロキシビタミンD_(3)が循環中の支配的なプロホルモンとなること」の意味を直接定義する記載はないが、「血中プロホルモン(血清中総25-ヒドロキシビタミンD)濃度」(【0013】)、「血清中総25-ヒドロキシビタミンDを少なくとも30ng/mLの濃度まで特定的に上昇させ、支配的な循環プロホルモンが25-ヒドロキシビタミンD_(3)である」(【0023】)、及び「血中25-ヒドロキシビタミンD濃度(25-ヒドロキシビタミンD_(3)が支配的な循環ホルモンである)」(【0026】)という記載を参酌すると、本願補正発明の「25-ヒドロキシビタミンD_(3)が循環中の支配的なプロホルモンとなること」は、「血清中総25-ヒドロキシビタミンD」の中では「25-ヒドロキシビタミンD_(3)」が主要なプロホルモンであることを意味する記載であるといえる。

ウ 一方、引用文献1には、連続腹膜透析を受けている無尿患者にカルシフェジオール(25(OH)D_(3))を投与した臨床試験結果の具体的な数値を示す表2(摘記(1e))が記載されており、当該表2によると、慣らし期間の患者の25(OH)D_(3)血清レベル及び1,25(OH)_(2)D_(3)血清レベルがそれぞれ7±4(μg/ml)及び9±8(pg/ml)であるのに対し、15日間のカルシフェジオール投与後の患者ではそれぞれ47±22(μg/ml)及び32±31(pg/ml)、1ヶ月間のカルシフェジオール投与後の患者ではそれぞれ71±33(μg/ml)及び24±19(pg/ml)であるから、15日間のカルシフェジオール投与後の患者及び1ヶ月間のカルシフェジオール投与後の患者は、いずれも、本願補正発明の「25-ヒドロキシビタミンDと1,25-ジヒドロキシビタミンDの両方の血中濃度が高まるまたは維持され」た状態であるといえる。
そして、引用文献1の臨床試験では、試験開始前の1ヶ月間あらゆる形態のビタミンDを中止した(慣らし期間)後に25(OH)D_(3)を投与しており、25(OH)D_(3)以外のビタミンD製剤を投与していないのであるから(摘記(1c))、15日間のカルシフェジオール投与後の患者及び1ヶ月間のカルシフェジオール投与後の患者は、いずれも、本件補正発明の「25-ヒドロキシビタミンD_(3)が循環中の支配的なプロホルモンとなる」状態であるといえる。

エ 上記イ及びウからみて、引用発明の「25(OH)D_(3)を投与する方法」は、本件補正発明の「25-ヒドロキシビタミンDと1,25-ジヒドロキシビタミンDの両方の血中濃度が高まるまたは維持され、25-ヒドロキシビタミンD_(3)が循環中の支配的なプロホルモンとなることを含む方法」に相当するといえる。

オ 上記ア?エからみて、本件補正発明と引用発明とは「25-ヒドロキシビタミンD_(3)および任意選択で25-ヒドロキシビタミンD_(2)を含む医薬組成物であって、25-ヒドロキシビタミンDと1,25-ジヒドロキシビタミンDの両方の血中濃度が高まるまたは維持され、25-ヒドロキシビタミンD_(3)が循環中の支配的なプロホルモンとなることを含む方法により、腎機能が低下した患者を治療するための、前記医薬組成物。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)本件補正発明では、医薬組成物が「ステージ3または4の慢性腎臓病を患う患者における続発性副甲状腺機能亢進症を治療および予防するための医薬組成物」であり、当該医薬組成物の投与形態及び投与方法が「経口的、静脈内、または経皮的投与製剤として患者に投与され、前記投与が毎日から1週に1回から3回の間欠的投与である」ことが特定されているのに対し、引用発明では、医薬組成物が「連続腹膜透析を受けている無尿患者の尿毒症性骨形成異常症の治療および予防における合理的で安全な選択肢として提案できる医薬組成物」であり、当該医薬組成物の投与形態及び投与方法について上記のような特定はされていない点。

(4)相違点についての判断
ア 引用文献1には、カルシフェジオール(25(OH)D_(3))を連続腹膜透析を受けている無尿患者に投与した臨床試験において、「無傷のPTH(iPTH:intact PTH)は、1,25(OH)D_(3)レベルの増加があったすべての患者において有意に減少した」(摘記(1a))、「平均して、iPTHは15日間の治療後に低下し始め、1ヶ月でさらに減少し、2名を除く全ての患者でベースラインを下回った」(摘記(1d))、「治療を受けた患者全員において、iPTHが有意に減少した。」(摘記(1f))、及び「これら全ての効果は、血漿中のカルシウムおよびリン酸の有害な変化なしに達成することが可能である」(摘記(1f))という結果が得られたことが記載されており、これらの結果は、上記臨床試験結果の具体的な数値を示す表2(摘記(1e))の記載により裏付けられた結果である。
そして、引用文献1の臨床試験は「25(OH)D_(3)が軽度の続発性副甲状腺機能亢進症(SHP:secondary hyperparathyroidism)の患者のミネラル代謝に影響を及ぼすかどうかを評価するために設計」された試験であり(摘記(1a))、上記臨床試験では「軽度から中等度の続発性副甲状腺機能亢進症のみを有する患者」が登録された(摘記(1b))のであるから、上記臨床試験の患者は、軽度から中等度の続発性副甲状腺機能亢進症を有する、連続腹膜透析を受けている無尿患者であるので、引用文献1の臨床試験結果を参酌した当業者は、引用発明の「25(OH)D_(3)を投与する方法」により、連続腹膜透析を受けている無尿患者における、軽度から中程度の続発性副甲状腺機能亢進症が有効に治療されたことを理解できるといえる。
また、「腎機能低下患者の骨代謝異常に対する治療の進めかた」について記載された総説論文である引用文献4には、腎機能低下患者は国際的には慢性腎臓病chronic kidney disease(CKD)と定義され、腎機能に応じて重症度がステージ1(stage 1)からステージ5(stage 5)に分類されること(摘記(4a))、糸球体濾過量glomerular filtration rate(GFR)が低下すると、体内にリン(P)が蓄積して血清Pが増加し、血中で増加したPはカルシウム(Ca)と結合するため血中のイオン化Caが減少し、また、腎臓でのビタミンDの活性化障害から腸管でのCa吸収が減少するため、血清Caが減少し、血清P増加、Ca減少、活性化ビタミンDの低下が刺激となって副甲状腺ホルモンparathyroid hormone(PTH)の分泌が亢進し、二次性副甲状腺機能亢進症secondary hyperparathyroidismが生じること(摘記(4b))、2°HPT(二次性副甲状腺機能亢進症)発症に関わる有意な危険因子として透析期間の長期化と透析導入時の高いPTH値とが報告されており、保存期からの評価および治療の重要性が示唆されること(摘記(4c))、慢性腎臓病ステージ3以降では骨代謝障害が必発であり特に二次性副甲状腺機能亢進症が重要であり、透析導入前より二次性副甲状腺機能亢進症の予防と治療を積極的に行うべきであること(摘記(4d))、ステージ3、ステージ4及びステージ5の慢性腎臓病(CKD)重症度に応じた血清iPTH濃度の具体的な目標値(摘記(4e))、腎不全患者、透析患者、ステージ3までの患者、ステージ4の患者、ステージ5の患者それぞれにおける二次性副甲状腺機能亢進症の具体的な治療方針(摘記(4c))が記載されている。
さらに、引用文献5には、二次的上皮小体機能亢進症(続発性副甲状腺機能亢進症)は、慢性腎疾患に罹患した患者において共通に見られるものであること(摘記(5c))、「段階1-4の慢性腎疾患に関連する上皮小体機能亢進症」すなわちステージ1?4の慢性腎疾患に関連する副甲状腺機能亢進症を治療かつ予防するために、活性なビタミンD化合物を、経口的に投与、静脈内投与、経皮吸収によって投与すること、毎日、あるいは1週間当たり1?3回投与すること(摘記(5a)、(5b)及び(5d))、及び、穏やか乃至中程度の慢性腎疾患に罹っている、85pg/mLを越える血漿iPTHレベルを有する対象者に、ビタミンD化合物であるドキサーカルシフェノールを毎日投与した臨床試験及びその結果について具体的に記載されている(摘記(5e))。

イ 上記引用文献4(摘記(4a)?(4e))及び引用文献5(摘記(5c))の記載からみて、腎不全患者、透析患者及びステージ5の慢性腎臓病患者における続発性副甲状腺機能亢進症に対してだけでなく、ステージ3またはステージ4の慢性腎臓病患者における続発性副甲状腺機能亢進症に対しても治療及び予防を積極的に行うべきことは、本願優先日当時の周知技術(以下「周知技術」という。)であるといえるとともに、特に引用文献5には、ステージ3またはステージ4の慢性腎臓病患者における続発性副甲状腺機能亢進症を治療及び予防する方法における活性なビタミンD化合物の投与形態及び投与方法が具体的に記載されているのであるから(摘記(5a)、(5b)、(5d)及び(5e))、引用文献1の臨床試験結果及び上記周知技術から、引用発明の医薬組成物を、引用文献1の「連続腹膜透析を受けている無尿患者」における続発性副甲状腺機能亢進症だけでなく、「ステージ3またはステージ4の慢性腎臓病を患う患者」における続発性副甲状腺機能亢進症を治療および予防するためにも用いるとともに、その際に、引用文献5に記載の投与形態及び投与方法を参酌して、引用発明の医薬組成物の投与形態及び投与方法を「経口的、静脈内、または経皮的投与製剤として患者に投与され、前記投与が毎日から1週に1回から3回の間欠的投与である」ように決定することは、当業者が容易に想到しえた事項であるといえる。

ウ 以上のとおりであるから、引用発明の医薬組成物を「ステージ3または4の慢性腎臓病を患う患者における続発性副甲状腺機能亢進症を治療および予防するための医薬組成物」とし、その投与形態及び投与方法を「経口的、静脈内、または経皮的投与製剤として患者に投与され、前記投与が毎日から1週に1回から3回の間欠的投与である」ようにして本件補正発明の構成を得ることは、引用発明、並びに引用文献1、4及び5に記載された事項から、当業者が容易に想到しえたといえる。

エ 本件補正発明による効果について検討する。
本願明細書には、実施例1(【0043】)において、ステージ4のCKD(慢性腎臓病)およびビタミンDの不足に付随する続発性副甲状腺機能亢進症を有する患者に25-ヒドロキシビタミンD_(3)を含む軟質ゼラチンカプセルを投与したプロトコールが記載されており、当該臨床試験で測定された血清中総25-ヒドロキシビタミンD濃度や血清中iPTH濃度を調整することについての記載、及び「1年後、対象の実施中の血清中総25-ヒドロキシビタミンD濃度は50?90ng/mLで安定なままであることが見出され、血清中総1,25-ジヒドロキシビタミンD濃度は、進行性CKDの開始に先立つ対象の正常な経歴の範囲内で安定なままであることが見出され、血清中iPTHはK/DOQIのガイドライン中に公表されている目標と一致したままであることが見出される。高カルシウム血症、高カルシウム尿症および高リン血症の発症は、いったん安定した投与が達成されると稀である。」という記載がある。
しかし、本願明細書には、実施例1のプロトコールが、本件補正発明の「25-ヒドロキシビタミンDと1,25-ジヒドロキシビタミンDの両方の血中濃度が高まるまたは維持され、25-ヒドロキシビタミンD_(3)が循環中の支配的なプロホルモンとなることを含む方法」に相当することを当業者が客観的に確認できる具体的な数値は記載されておらず、また、実施例1において25-ヒドロキシビタミンD_(3)を投与する前の患者における血清iPTH濃度の具体的な数値も記載されていないのであるから、実施例1のプロトコールにより「ステージ3または4の慢性腎臓病を患う患者における続発性副甲状腺機能亢進症を治療および予防」する効果が具体的にどの程度優れた効果であるのかについて、当業者が客観的に判断できるような臨床試験結果が記載されているとはいえない。
そして、上記(4)アで説示したように、引用文献1には、カルシフェジオール(25(OH)D_(3))25(OH)D_(3)を連続腹膜透析を受けている無尿患者に投与した臨床試験において、「無傷のPTH(iPTH:intact PTH)は、1,25(OH)D_(3)レベルの増加があったすべての患者において有意に減少した」(摘記(1a))、「平均して、iPTHは15日間の治療後に低下し始め、1ヶ月でさらに減少し、2名を除く全ての患者でベースラインを下回った」(摘記(1d))、「治療を受けた患者全員において、iPTHが有意に減少した。」(摘記(1f))、及び「これら全ての効果は、血漿中のカルシウムおよびリン酸の有害な変化なしに達成することが可能である」(摘記(1f))という結果が得られたことが記載されており、これらの結果は、上記臨床試験結果の具体的な数値を示す表2(摘記(1e))の記載により裏付けられた結果であることを考慮すると、本願明細書の実施例1の記載を参酌しても、本件補正発明による効果が、引用発明、並びに引用文献1、4及び55に記載された事項から、当業者が予測できない程に格別顕著な効果であるとはいえない。

オ 審判請求人は、審判請求の理由(平成30年11月5日提出の手続補正書(方式)を参照。)において、引用文献1及び5について以下の(i)及び(ii)の主張をしている。

(i)引用文献1においては連続腹膜透析自体がカルシフェジオールの血中濃度を顕著に低下させることが認識されており、引用文献1記載のステージ5のCKD患者はカルシフェジオール(25-ヒドロキシビタミンD_(3))血中レベルが連続腹膜透析により顕著に低下しているので、引用文献1に記載された治療法、特に投与量はステージ3および4の患者(連続腹膜透析を受けない患者)の治療と何らかの関連があるとは考えられない。
(ii)引用文献5はビタミンD_(3)とは異なるビタミンD化合物群に関するものであり、引用文献5の式Iは25-ヒドロキシビタミンD_(3)を包含しておらず、引用文献5の[0004]、[0005]、[0009]、[0012]、[0015]、[0024]等では、ビタミンD_(3)化合物は毒性が強いが、ビタミンD_(2)はビタミンD_(3)化合物よりも毒性が低いと記載されているので、(25-ヒドロキシビタミンD_(3)を排除している)引用文献5の開示を(25-ヒドロキシビタミンD_(3)に関する)引用文献1の開示と組み合わせようとは当業者は考えない。

そこで、上記(i)及び(ii)の主張について検討する。
[上記(i)の主張について]
引用文献1には「連続腹膜透析(CPD)自体は、腹膜透析液中の結合タンパク質の漏出を通して発生するカルシフェジオールの血清レベルの著しい減少を引き起こし得る」(摘記(1b))という記載があるが、「カルシトリオールまたは1α,25ジヒドロキシビタミンD_(3)(1,25(OH)_(2)D_(3))の血清レベルは、進行性慢性腎不全の実質的にすべての患者において非常に低い^(1-3)。」(摘記(1b))という記載からみて、引用文献1は、連続腹膜透析を受けている患者だけでなく、進行性慢性腎不全の実質的にすべての患者において活性型ビタミンDの低下が生じていることを前提として記載されているといえるし、上記(4)ア及びイで説示したように、腎不全患者、透析患者及びステージ5の慢性腎臓病患者における続発性副甲状腺機能亢進症に対してだけでなく、ステージ3またはステージ4の慢性腎臓病患者における続発性副甲状腺機能亢進症に対しても治療及び予防を積極的に行うべきことは周知技術であるから、引用文献1に記載された治療法が、ステージ3および4の患者(連続腹膜透析を受けない患者)の治療と関連がないとはいえない。

[上記(ii)の主張について]
引用文献5(【0004】、【0005】、【0008】、【0009】、【0012】、【0015】、【0024】等)には、ビタミンD_(3)化合物のうち、1,25-ジヒドロキシビタミンD_(3)及び1α-ヒドロキシビタミンD_(3)(α-カルシジオール)の毒性について言及されているが、全てのビタミンD_(3)化合物について毒性が強いという明示的な記載はなく、カルシフェジオール(calcifediol、25(OH)D_(3))の毒性についての記載はないのであるから、引用文献5に、引用発明のカルシフェジオール(calcifediol、25(OH)D_(3))を排除する記載があるとはいえない。
そして、引用文献5に「これらの臨床的研究は、・・・高カルシウム血症及び高カルシウム尿症として現れる毒性が、主な問題となることを示している」(【0004】)、「1,25-ジヒドロキシビタミンD_(3)は、強い高カルシウム血症作用を持ち、このことは特に高い用量での使用を制限する狭い治療窓(therapeutic window)を与える」(【0008】)、「1,25-ジヒドロキシビタミンD_(3)は、しばしば0.5μgを越える用量において、・・・有害な副作用(高カルシウム血症及び高リン酸塩血症)が起こり」(【0009】)という記載があるように、引用文献5では「毒性」として特に高カルシウム血症及び高リン酸塩血症に注目しているといえるところ、上記(4)アで説示したように、引用文献1の臨床試験において、「これら全ての効果は、血漿中のカルシウムおよびリン酸の有害な変化なしに達成することが可能である」(摘記(1f))という結果が得られたことが記載されているのであるから、引用発明の「25(OH)D_(3)を投与する方法」は高カルシウム血症及び高リン酸塩血症を回避できる方法であるといえる。
そうすると、引用発明の医薬組成物を「ステージ3またはステージ4の慢性腎臓病を患う患者」における続発性副甲状腺機能亢進症を治療および予防するために用いる際に、その投与形態及び投与方法を、引用文献1及び引用文献5に記載の投与形態及び投与方法を参酌して決定することに特段の支障があるとはいえない。

以上のとおりであるから、審判請求人による上記(i)及び(ii)の主張は、いずれも認められない。

カ 以上ア?オのとおりであるから、本件補正発明は、引用発明、並びに引用文献1、4及び5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるから、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年10月25日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲に係る発明は、平成29年10月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
25-ヒドロキシビタミンD_(3)および任意選択で25-ヒドロキシビタミンD_(2)を含む医薬組成物であって、25-ヒドロキシビタミンDと1,25-ジヒドロキシビタミンDの両方の血中濃度が高まるまたは維持され、25-ヒドロキシビタミンD_(3)が循環中の支配的なプロホルモンとなることを含む方法により、ステージ3?5の慢性腎臓病を患う患者における続発性副甲状腺機能亢進症を治療および予防するための医薬組成物であって、経口的、静脈内、または経皮的投与製剤として患者に投与され、前記投与が毎日から1週に1回から3回の間欠的投与である、前記医薬組成物。」

2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由の概要は、平成29年10月31日付け拒絶理由通知書に記載のように、本願発明は下記の引用文献1に記載された発明である(新規性)という理由1、及び本願発明は下記の引用文献1、3?5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(進歩性)という理由2である。

引用文献1.C.Bagnis et al,Ital J Mineral Electrolyte Metab,1998年9月,12(3-4),p.73-76
引用文献2.国際公開第2006/044657号(周知技術を示す文献)
引用文献3.米国特許出願公開第2002/183288号明細書
引用文献4.Medical Practice,2006年,Vol.23, No.3,p.498-502(周知技術を示す文献)
引用文献5.特表2006-519854号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、4及び5、並びにそれぞれに記載された事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明の「ステージ3?5の慢性腎臓病を患う患者」は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明の「ステージ3または4の慢性腎臓病を患う患者」を包含するので、本願発明は、本件補正発明の発明特定事項を全て含む発明である。
また、上記第2の[理由]2(4)ア及びイで説示したように、ステージ5の慢性腎臓病患者における続発性副甲状腺機能亢進症に対して治療及び予防を積極的に行うべきことは周知技術である。
そうすると、上記第2の[理由]2(3)及び(4)で説示したとおり、本願発明は、引用発明、並びに引用文献1、4及び5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-07-30 
結審通知日 2019-08-05 
審決日 2019-08-19 
出願番号 特願2017-17323(P2017-17323)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原口 美和  
特許庁審判長 藤原 浩子
特許庁審判官 小川 知宏
前田 佳与子
発明の名称 慢性腎臓病における続発性副甲状腺機能亢進症の安全かつ効果的な治療および予防方法  
代理人 滝澤 敏雄  
代理人 浅井 賢治  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 服部 博信  
代理人 箱田 篤  
代理人 山崎 一夫  
代理人 弟子丸 健  
代理人 市川 さつき  
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