• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1358539
審判番号 不服2018-14503  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-01 
確定日 2020-01-06 
事件の表示 特願2013-98341「排気ダクト」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月12日出願公開、特開2013-249831〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)5月8日(パリ条約による優先権主張2012年(平成24年)6月1日(DE)ドイツ連邦共和国)の出願であって、その手続は以下のとおりである。

平成29年3月6日(発送日) :拒絶理由通知書
平成29年9月4日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年10月2日(発送日):拒絶理由通知書(最後)
平成30年4月2日 :意見書の提出
平成30年7月9日(発送日) :拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成30年11月1日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成30年11月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年11月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1についてみると、本件補正により補正される前の(すなわち、平成29年9月4日に提出された手続補正書による)下記(1)の記載を、本件補正により下記(2)の記載に補正するものである(下線は補正箇所を示す。)。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1

「【請求項1】
内側の金属壁(11)および外側の金属壁(12)を備えており、前記内側の金属壁(11)と前記外側の金属壁(12)との間には繊維から成る断熱部(13)が位置決めされている、燃焼機関用の排気ダクト(10)において、前記内側の金属壁(11)および前記外側の金属壁(12)が一体的な鋳造部品(14)によって構成されており、前記断熱部(13)が連続ガラス繊維(15)によって構成されており、
前記連続ガラス繊維(15)が、前記鋳造部品(14)の前記内側の金属壁(11)と前記外側の金属壁(12)との間の少なくとも1つの中空空間に収められ、
前記連続ガラス繊維(15)が、1つまたはそれぞれの前記中空空間に吹き込まれていることを特徴とする排気ダクト。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1

「【請求項1】
内側の金属壁(11)および外側の金属壁(12)を備えており、前記内側の金属壁(11)と前記外側の金属壁(12)との間には繊維から成る断熱部(13)が位置決めされている、船舶のディーゼル燃焼機関用の排気ダクト(10)において、前記内側の金属壁(11)および前記外側の金属壁(12)が一体的な鋳造部品(14)によって構成されており、前記断熱部(13)が連続ガラス繊維(15)によって構成されており、
前記連続ガラス繊維(15)が、前記鋳造部品(14)の前記内側の金属壁(11)と前記外側の金属壁(12)との間の少なくとも1つの中空空間に収められ、
前記連続ガラス繊維(15)が、1つまたはそれぞれの前記中空空間に吹き込まれていることを特徴とする排気ダクト。」

2 本件補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明における「燃焼機関用の排気ダクト」という発明特定事項について、「船舶のディーゼル燃焼機関用の排気ダクト」と限定することにより特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本願補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

3 独立特許要件
(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2007-247644号公報(以下「引用文献1」という。)には、「複数気筒ガソリンおよびディーゼルエンジンのためのエグソーストラインシステム」に関して、図面とともに次の記載がある(なお、下線部は当審が付与したものである。以下同様。)。

(ア)「【0001】
本発明は、請求項1のおいて書きに記載された、ほぼ同じ構造の複数のラインパーツピースから構成された、複数気筒ガソリンおよびディーゼルエンジンのためのエグソーストラインに関するものである。」

(イ)「【0008】
しかしながら断熱に対しては特定の要件が求められる。エグソーストラインシステムにおける外気温は220度を超えてはならない。また、断熱材は、エグソーストラインを介して漏れが発生した場合に、オイルおよび燃料に対して密閉されている必要がある。断熱されていても、エグソーストラインは取り外し可能である必要がある。耐用年数を数年にする努力が行われており、コネクタを含むすべての部品は振動に対する強度を持っている必要がある。また、大型エンジンにおいては、エグソーストラインは踏んでもぐらつかないこと、およびシリンダヘッド取り外しの際にエグソーストラインを固定できることが望ましい。」

(ウ)「【0018】
二重壁のラインパーツピース1,2は一体型の鋳造部品として製造され、本図には示されていないがそれぞれ市販のパイプコネクタにより接続することができる。」

(エ)「【0019】
各ラインパーツピース1,2には中央を通る一つのパイプ部品6が備わっており、このパイプ部品は、外側パイプ部品12によりほぼ同軸に覆われて、縦長室7を形成している。」

(オ)「【0020】
すべての縦長室7にはセラミックフォームの断熱材でできた充填材8が詰められている。
【0021】
このセラミックフォームは望ましくは、金属酸化物の混合物、特に酸化アルミニウムおよび/あるいは酸化ケイ素からできた、無機質で発泡性および硬化性のあるフォーム材である。望ましくはこのようなセラミックフォームは、酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素99%と、さまざまな金属酸化物1%とを混合したものである。
【0022】
しかし、さまざまな金属酸化物混合物を粒子状に加工した粒子も考慮される。このような材料はたとえば特許文献3により防火材として知られている。」

(カ)上記(エ)及び図1の図示内容からみて、縦長室7は、パイプ部品6と外側パイプ部品12との間の縦長室7といえる。

上記(ア)ないし(カ)の記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>
「パイプ部品6および外側パイプ部品12を備えており、前記パイプ部品6と前記外側パイプ部品12との間にはセラミックフォームからなる断熱材が詰められているディーゼルエンジンのためのエグソーストラインにおいて、前記パイプ部品6および前記外側パイプ部品12が一体型の鋳造部品として製造されており、前記セラミックフォームからなる断熱材が金属酸化物の混合物からできたフォーム材によって構成されており、
前記金属酸化物の混合物からできたフォーム材が、前記鋳造部品の前記パイプ部品6と前記外側パイプ部品12との間の縦長室7に詰められている、
排気ダクト。」

イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2006-9677号公報(以下「引用文献2」という。)には、「消音器の製造方法」に関して、図面(特に、図1を参照。)とともに次の記載がある。

(ア)「【0022】
図1及び図2は実施例1を示す。
図1(a)は消音器1の製造工程の初期状態を示す軸方向の断面図である。」

(イ)「【0023】
先ず、図1(a)に示すように、一般部と略同心円状に一端2aが縮径された円筒状の外殻形成部材であるハウジング2にガス流路形成部材であるインナパイプ3の一端3aを嵌合し、ハウジング2とインナパイプ3の間に、他端部が開口した間隙部4を形成する。
【0024】
ここで、ハウジング2とインナパイプ3は、図2に示す横断面図のように、略同心円状に配置され、間隙部4におけるハウジング2とインナパイプ3との間の距離が全周にわたって、同一又は略同一寸法になっている。
【0025】
また、インナパイプ3には、間隙部4と連通可能な多数の小孔5が設けられている。
次に、上記のインナパイプ3の内部に、区分手段である仕切体6を摺動可能に挿入する。なお、仕切体6にはロッド7が固着されており、該ロッド7の他端は、インナパイプ3外に突出し、図示しない軸方向移動手段に連結されている。
【0026】
次に、インナパイプの一端3aに、図示しない例えばファンのような吸引手段を接続する。この吸引手段により、仕切体6により区分された、仕切体6と吸引手段との間に存在する小孔5を通じて間隙部4内の空気が一端3aから外部へ吸引される。なお、ハウジング2とインナパイプ3は図示しない固定手段により固定されている。」

(ウ)「【0027】
次に、吹込みノズル8に、図示しない圧縮空気供給手段からの圧縮空気と共にガラスの長繊維をバインダーで集束した吸音材9を供給し、吹込みノズル8から吸音材9を圧縮空気とともに間隙部4内へ供給する。この供給時に圧縮空気により吸音材9は解されて、吹込みノズル8より間隙部4に吹込まれて充填を開始する。
【0028】
なお、吸音材としては、ガラスの長繊維の他にセラミックス、金属、樹脂など任意の材質を採用することができる。また、繊維の長さに関しても任意に設定することができる。

(エ)「【0029】
次に、図示しない軸方向移動手段により仕切体6を、インナパイプ3の内壁面に沿って、図1(a)の下降状態からX方向(軸方向)に向かって徐々に移動させつつ、吹込みノズル8より吸音材9を間隙部4に充填し続ける(図1(b))。
【0030】
間隙部4に所定量の吸音材9を充填後、ハウジング2の他端2bを任意の加工方法によるネッキング工程により縮径して、インナパイプ3の他端3bと嵌合する(図1(c))。」

上記(ア)ないし(エ)の記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

<引用文献2記載事項>
「吸音材9が、ガラスの長繊維によって構成されており、前記ガラスの長繊維が、インナパイプ3とハウジング2との間の間隙部4に充填され、ガラスの長繊維が、間隙部4に吹込まれている消音器1。」

ウ 引用文献3
当審において新たに引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2004-518063号公報(以下「引用文献3」という。)の段落【0025】ないし【0027】並びに図1及び2には、「マフラに繊維材料を充填する方法及び繊維材料充填マフラ」に関して、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0025】
第1のコンパートメント16aに繊維材料24を充填するため、ノズル30は、充填開口部18b内へ挿入されている(図1、図2及び図5参照)。さらに、ホース44により真空源42に結合された真空アダプタ40が、第2の管20の端部20a内に挿入されている。プラグ46が、第3の管22の端部22aに挿入され、空気又はガスが第3の管22を通ってマフラシェル12に入り又はこれから出るのを阻止するようになっている。真空源42を作動させると、部分真空が第2の管20を通って外側シェル12内に生じる。真空源42の作動前又は後において、連続ストランド材料24b及び加圧空気をテキスチャライジング装置32に供給する。加圧空気は、従来型圧縮機48から供給され、この従来型圧縮機は、ホース48aを経て装置32と連絡関係にある。連続ストランド材料24bは、1本以上のストランドから成り、各ストランドはEガラスフィラメント、Sガラスフィラメントから成る群から選択された複数本のガラスフィラメントから成るのがよい。好ましくは、連続ストランド材料は、オーエンス・コーニング社によってADVANTEX(登録商標)又はZENTRON (登録商標)の商標名で市販されているロービングから成る。加圧空気は、ストランド材料24bのフィラメントを分離したり絡み合わせてストランド材料が連続した1本の「毛羽立ち(fluffed-up)」又は繊維材料24としてノズル30から出る。繊維材料24がいったんコンパートメント16aを充填すると、繊維材料は、そのコンパートメント16a内にウールタイプ製品24aとなる。
【0026】
第2のコンパートメント16bに繊維材料24を充填するため、ノズル30が、第2の管20の端部20aに設けられた充填開口部20b内へ挿入されている(図3及び図5参照)。真空アダプタ40は、第1の管の端部18a内に挿入されている。プラグ46は空気又はガスが第3の管22を通ってマフラシェル12に入り又はこれから出るのを阻止するよう第3の管22の端部22a内に設けられたままである。真空源42を作動させ、連続ストランド材料24b及び加圧空気がテキスチャライジング装置32に送られる。ノズル30から出た繊維材料24は、第2のコンパートメント16bを充填する。繊維材料24は、第2のコンパートメント16b内にウールタイプ製品24aを構成する。また、第2のコンパートメント16bを充填するのに、プラグ46を第2の管20の端部20a内に配置して加圧ガス及び繊維材料24を充填開口部22bを通って第3の管22の端部22a内に供給してもよい。」

(イ)「【0027】
マフラ10は、その音響エネルギ減衰機能及び断熱機能を適度に発揮することができるように、十分な量の繊維材料24をコンパートメント16a,16b内に提供する。コンパートメント16a,16bを、密度が約80グラム/リットル?約200グラム/リットル、好ましくは約100グラム/リットルの繊維材料24で充填するのがよい。」

上記(ア)及び(イ)の記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献3には、次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。

「マフラのコンパートメント16a、16bに充填されたガラスフィラメントからなる連続ストランド材料24bが、消音機能及び断熱機能を発揮すること。」(以下「引用文献3記載事項」という。)

エ 引用文献4
当審において新たに引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2004-514635号公報(以下「引用文献4」という。)の段落【0002】には、「高温ガラス繊維」に関して、以下の事項が記載されている。

「【0002】
発明の背景
防音や断熱用の高温環境における連続ガラス繊維の使用は、巻き取りストランド、充填繊維、又は製織ストランドの形であり得る。製織は、ストランドを圧縮空気と共にノズルを通してキャビティへ射出成形することにより達成される。この方法はストランドを毛羽立て、密度の非常に低い繊維パックを生成する。しかしながら、850℃(1562oF)より高い温度での絶縁特性を必要とする用途は、高温環境に耐え得るガラス組成物によって制限される。製織連続ガラス繊維製品の例は、マフラーのためのEガラスやADVANTEX(登録商標)(オウェンスコーニングから入手できる)の使用である。製織により断熱と防音双方が良好な毛羽立った繊維パックが生成する。
マフラーを1種以上の長さのガラス繊維ウールで充填することは、Ingemanssonの米国特許第4,569,471号に開示されている。ガラス繊維ウールは、マルチフィラメントのガラス繊維の糸をノズルの一端に供給し、ノズルに吹き込まれる圧縮空気によってその糸をノズルに進めてその糸の繊維を分離させるとともにからみ合わせ、その糸が連続した長さのガラス繊維ウールとしてもう一端のノズルから出て、空気が空間から排気されると同時に開口を通って容器の空間に圧縮空気の作用によって吹き込まれることにより、容器内の空間に挿入される。」

上記記載事項から、引用文献4には、次の事項(以下「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。

「防音や断熱用の高温環境に使用される連続ガラス繊維がマフラに充填されること。」

オ 引用文献5
当審において新たに引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「自動車用語辞典 改訂版」(以下「引用文献5」という。)1988年12月27日 トヨタ自動車株式会社 トヨタ技術会 発行 第337頁右欄の「だんねつざい(断熱材)〔Heat Insulation Material〕」の項には、以下の事項が記載されている。

(ア)「代表的な材料としては,グラスウール,ロックウール,アスベスト,発泡プラスチック等がある。」

(イ)「自動車への適用例は多数あるが,ほとんど吸音,遮音と断熱を兼ねているものが多い。」

上記(ア)及び(イ)の記載事項から、引用文献5には、次の事項(以下「引用文献5記載事項」という。)が記載されている。

「グラスウールが、吸音、遮音と断熱を兼ねており、自動車への適用例が多数あること。」(以下「引用文献5記載事項」という。)

(3)対比

本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「パイプ部品6」は前者の「内側の金属壁」に相当し、以下同様に、「外側パイプ部品12」は「外側の金属壁」に、「詰められている」ことは「位置決めされている」こと及び「収められ」ていることに、「一体型の鋳造部品」は「一体的な鋳造部品」に、「製造されており」は「構成されており」に、「縦長室7」は「中空空間」に、それぞれ相当する。
後者の「セラミックフォームからなる断熱材」と、前者の「繊維から成る断熱部」とは、「断熱部」という限りで一致する。
後者の「ディーゼルエンジンのためのエグソーストライン」と、前者の「船舶のディーゼル燃焼機関用の排気ダクト」とは、「ディーゼル燃焼機関用の排気ダクト」という限りで一致する。
後者の「金属酸化物の混合物からできたフォーム材」と、前者の「連続ガラス繊維」とは、「断熱部構成材料」という限りで一致する。

そうすると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点、相違点がある。

[一致点]
「内側の金属壁および外側の金属壁を備えており、前記内側の金属壁と前記外側の金属壁との間には断熱部が位置決めされている、ディーゼル燃焼機関用の排気ダクトにおいて、前記内側の金属壁および前記外側の金属壁が一体的な鋳造部品によって構成されており、前記断熱部が断熱部構成材料によって構成されており、
断熱部構成材料が、前記鋳造部品の前記内側の金属壁と前記外側の金属壁との間の少なくとも1つの中空空間に収められている、
排気ダクト。」

[相違点1]
ディーゼル燃焼機関用の排気ダクトについて、本願発明1は、「船舶の」ディーゼル燃焼機関用の排気ダクトであるのに対して、引用発明は、船舶のものであるか不明である点。

[相違点2]
断熱部及び断熱部構成材料について、本願発明1は、「繊維から成」り、「連続ガラス繊維によって構成されて」いるとともに「連続ガラス繊維が、1つまたはそれぞれの前記中空空間に吹き込まれている」のに対して、引用発明は、セラミックフォームからなる断熱材が金属酸化物の混合物からできたフォーム材によって構成されており、縦長室7に詰められている点。

上記相違点1について検討する。
引用発明は、ディーゼル燃焼機関用の排気ダクトに関するものであり(上記(2)ア(ア))、大型エンジンに適用されることが示唆されている(上記(2)ア(イ))。
また、船舶の内燃機関として、ディーゼル燃焼機関を用いることは、例示するまでもない技術常識である。
そうすると、引用発明において、上記技術常識を踏まえて、その用途を「船舶の」ディーゼル燃焼機関用の排気ダクトとすることは、当業者の通常の創作能力の範囲内でなし得る事項である。

上記相違点2について検討する。
引用文献2記載事項は、「吸音材9が、ガラスの長繊維によって構成されており、前記ガラスの長繊維が、インナパイプ3とハウジング2との間の間隙部4に充填され、ガラスの長繊維が、間隙部4に吹込まれている消音器1。」である。

本願発明1と引用文献2記載事項とを対比すると、後者の「ガラスの長繊維」は前者の「連続ガラス繊維」に、以下同様に「インナパイプ3」は「内側の金属壁」に、「ハウジング2」は「外側の金属壁」に、「間隙部4」は「中空空間」に、「吹込まれている」は「吹き込まれている」に、それぞれ相当する。
また、前者の「消音器」は後者の「排気ダクト」に含まれるものである。
さらに、後者の「吸音材」と前者の「断熱部」とは、「充填部」という限りで一致する。

したがって、引用文献2記載事項を、本願発明1の用語を用いて整理すると、「繊維から成る充填部が連続ガラス繊維によって構成されており、連続ガラス繊維が、内側の金属壁と外側の金属壁との間の少なくとも1つの中空空間に収められ、前記連続ガラス繊維が、1つまたはそれぞれの前記中空空間に吹き込まれている排気ダクト。」といえる。

ここで、引用文献3記載事項ないし引用文献5記載事項からみて、機関部品において、ガラス繊維からなる充填材が、吸音、防音、遮音及び断熱の機能作用を奏することは、周知の事項(以下「周知事項」という。)である。

そうすると、上記引用文献2記載事項の「繊維から成る充填部が連続ガラス繊維によって構成され」たものが、断熱という機能作用を備えていることは、上記周知事項を知り得た当業者であれば理解し得たことである。

そして、引用発明と引用文献2記載事項とは、排気ダクトに関する技術である点で共通し、引用発明におけるセラミックフォームからなる断熱材と引用文献2記載事項における繊維から成る充填部とは、断熱という機能作用が共通する構成である。
したがって、引用発明において、上記周知事項を参酌して、引用文献2記載事項を適用することにより、相違点2に係る本願発明1の特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4) 効果について
本願補正発明は、全体としてみても、引用発明、引用文献2記載事項及び周知事項から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。

(5) まとめ
上記(1)ないし(4)により、本願補正発明は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本願補正発明は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年11月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年9月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1及び2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2007-247644号公報
引用文献2:特開2006-9677号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された、引用文献1及び引用文献2並びにその記載事項は、上記第2の[理由]3(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願補正発明は、上記第2の[理由]2で検討したとおり、本願発明に発明特定事項を付加して限定したものであるから、本願発明は、本願補正発明の発明特定事項の一部を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2の[理由]3(3)ないし(5)に記載したとおり、引用発明、引用文献2記載事項及び周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明、引用文献2記載事項及び周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-07-25 
結審通知日 2019-07-29 
審決日 2019-08-19 
出願番号 特願2013-98341(P2013-98341)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F01N)
P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二之湯 正俊  
特許庁審判長 水野 治彦
特許庁審判官 齊藤 公志郎
金澤 俊郎
発明の名称 排気ダクト  
代理人 村山 靖彦  
代理人 阿部 達彦  
代理人 実広 信哉  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ