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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A46B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A46B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A46B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A46B
管理番号 1358546
審判番号 不服2018-15399  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-02 
確定日 2020-01-06 
事件の表示 特願2017-116311「コンコン叩ける歯ブラシ」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月10日出願公開、特開2019- 251〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成29年5月25日の出願であって、平成29年8月28日付で手続補正書が提出され、平成29年8月28日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成29年9月5日)、これに対し、平成29年10月2日付で意見書及び手続補正書が提出され、平成29年11月30日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成29年12月12日)、これに対し、平成30年1月17日付で意見書が提出され、平成30年4月3日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成30年4月24日)、これに対し、平成30年6月12日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年8月3日付で平成30年4月3日付の拒絶の理由によって拒絶査定がなされ(発送日:平成30年8月14日)、これに対し、平成30年11月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。


2.平成30年11月2日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年11月2日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由I]
(1)補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。
「【請求項1】
歯ブラシの柄にブラシ部の水を切るために設けた、物を叩くべき場所のブラシ部直近の柄の叩きやすい位置の目印部材は、叩く音を軽減し柄本体と材質や色で識別できる機能を備えたコンコン叩ける歯ブラシ。」


(2)新規事項
本件補正は本件補正前の請求項1に、「ブラシ部直近の柄の叩きやすい位置」という手段を加入するものであり、「直近」とは「すぐ近く。最も近いこと。」を意味するから、目印部材が設けられる位置は、ブラシ部のすぐ近くの柄の叩きやすい位置となる。

そこで、当該補正が、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
当初明細書等には、
a「本発明の歯ブラシ1は、図1のとおり歯ブラシの柄3が物を叩く衝撃に耐える強度を持ち、その柄に表示する物を叩くべき場所の目印5は叩く音を軽減し柄本体と材質や色でも識別できる形態とした、叩くことに特化した安心してコンコン叩ける歯ブラシである。」(【0022】)と記載され、
b 図1、図2には、ブラシ4からある程度離れ且つ柄全体長のうちブラシ4に近い位置に目印部材が設けられた歯ブラシが示されている。
にすぎず、ブラシ4からある程度離れ且つ柄全体長のうちブラシ4に近い位置に目印部材が設けられた歯ブラシについては記載はあるが、ブラシ部のすぐ近くであって柄の叩きやすい位置に目印部材を設けることは記載も示唆も無い。

したがって、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条の規定により却下されるべきものである。

[理由II]
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるが、仮に本件補正が、特許法第17条の2第3項の規定に違反せず、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の請求項に記載されたものが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記した平成30年11月2日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2016-129657号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
c「【請求項1】
柄付きブラシのブラシ部分と、持ち手部分の間にバランスのとれる支点をもうけ、ブラシの使用後にブラシ自ら支点でバランスをとり、水切り、乾燥することを特徴とする柄付きブラシ構造。
【請求項2】
前記、柄付きブラシの支点は柔軟性のある滑りにくい素材を使用し、支点を台に軽く打ちつけるようにして、水切りすることのできる構造。」
d「この発明は柄付きブラシの構造に関し、使用後に効率良く水切りし乾燥させる構造に関わる。」(【0001】)
e「本発明の柄付きブラシの構造は、柄のブラシ側と持ち手側の間に、バランスのとれる部分をもうける。また、バランスのとれる部分に柔軟性のある滑りにくい素材を使う。」(【0005】)
f「また、バランスのとれる部分を、台に軽く打ちつけるようにして水切りし、より早く乾燥することを可能にした。」(【0007】)
g「【図1】は本発明を実際に使用している図である。1は柄付きブラシ本体。2はバランスのとれる位置にある支点。3はブラシ部分。4は持ち手部分である。」(【0009】)

上記記載及び図面を参照すると、柄付きブラシの柄にブラシ部分の水切りのために設けた、台に軽く打ちつける場所のバランスのとれる位置の支点が示されている。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「柄付きブラシの柄にブラシ部分の水切りのために設けた、台に軽く打ちつける場所のバランスのとれる位置の支点は、柔軟性のある滑りにくい素材を使用した柄付きブラシ。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ブラシ部分」、「水切りのため」、「台に軽く打ちつける場所」は、それぞれ本願補正発明の「ブラシ部」、「水を切るため」、「物を叩くべき場所」に相当する。
引用発明の「支点」は、fよりブラシを台に軽く打ちつける際の目標であるから本願補正発明の「目印部材」に相当する。

引用発明の「柄付きブラシ」と、本願補正発明の「歯ブラシ」は、「ブラシ」の点で一致する。
引用発明の「バランスのとれる位置」と、本願補正発明の「ブラシ部直近の柄の叩きやすい位置」は、「柄の所定の位置」の点で一致する。
引用発明の「柔軟性のある滑りにくい素材を使用した」と、本願補正発明の「叩く音を軽減し柄本体と材質や色で識別できる機能を備えたコンコン叩ける」は、「所定の機能を有する」点で一致する。

したがって、両者は、
「ブラシの柄にブラシ部の水を切るために設けた、物を叩くべき場所の柄の所定の位置の目印部材は、所定の機能を有する歯ブラシ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本願補正発明は、歯ブラシであるのに対し、引用発明は、柄付きブラシである点。
〔相違点2〕
柄の所定の位置に関し、本願補正発明は、ブラシ部直近の柄の叩きやすい位置であるのに対し、引用発明は、バランスのとれる位置である点。
〔相違点3〕
所定の機能を有する点に関し、本願補正発明は、叩く音を軽減し柄本体と材質や色で識別できる機能を備えたコンコン叩けるものであるのに対し、引用発明は、柔軟性のある滑りにくい素材を使用したものである点。

(4)判断
相違点1について
引用発明の柄付きブラシは、使用後に水切りするものであり、水切りが必要なブラシとして歯ブラシは一般的なものであるから、引用発明の柄付きブラシを歯ブラシとすることは当業者が適宜選択し得ることと認められる。

相違点2について
引用発明の柄付きブラシは、支点をバランスのとれる位置に設けているが、柄付きブラシを台上においてバランスを取るためには、支点をブラシ部分寄りにしなければブラシ部分の重量によってバランスがとれない。即ち、引用発明において「バランスのとれる位置」は、柄のブラシ部分寄りの位置といえる。一方、本願補正発明が特許法第17条の2第3項の規定に違反しないものであるとすれば、ブラシ部直近とは、本願の図面に目印部材が柄に取り付けられている位置である、柄のブラシ部寄りの位置を意味している。そうすると、引用発明は支点を本願の図面に目印部材が柄に取り付けられている位置に相当する箇所に設けたこととなるから、この点に関し引用発明と本願補正発明に差異は認められず、相違点2は実質的な相違点ではない。
更に、引用発明の柄付きブラシは、支点を台に軽く打ちつけることによって水切りを行うものであり、支点を設ける際に当然に水切りのために使用し易い箇所を選択するから、柄の所定の位置を柄の叩きやすい位置とすることは当業者が適宜なし得ることと認められる。

相違点3について
引用発明の柄付きブラシは支点を台に軽く打ちつけるものであるから、コンコン叩けるものであり、この点において本願補正発明と差異は無い。
また、引用発明は支点として柔軟性のある滑りにくい素材を使用しており、柔軟性のある素材であればクッション性により叩く音を軽減でき、又、水場で使用するブラシは通常プラスチックを用い、プラスチックは柔軟性のある滑りにくい素材ではないから柄本体と材質が異なることとなる。その際、識別性のために柄本体と支点の色を変えることは当業者が容易に考えられるものと認められる。

なお、請求人は、審判請求書において、「最近の歯ブラシは持ち手部に歯ブラシの重心がある歯ブラシ先端のブラシ部が軽い扱いやすく歯が磨きやすい構造の歯磨きファーストの歯ブラシになっている、このことをふまえて本願発明と引用文献1とのとの違いを述べる。」と主張するが、特許請求の範囲には歯ブラシが「持ち手部に歯ブラシの重心がある歯ブラシ先端のブラシ部が軽い扱いやすく歯が磨きやすい構造の歯磨きファーストの歯ブラシ」であるとの特定はなく、しかも明細書及び図面に「歯磨きファーストの歯ブラシ」であることは記載も示唆もないから、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり、請求人の上記主張は採用できない。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成30年6月12日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「歯ブラシの柄にブラシ部の水を切るために設けた物を叩くべき場所の目印部材は、叩く音を軽減し柄本体と材質や色で識別できるという機能を備えたコンコン叩ける歯ブラシ。」

(1)拒絶の理由
平成30年4月3日付の進歩性に関する拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用例1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」

(2)引用例
引用例1の記載事項は、「2.[理由II](2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、「2.[理由II]」で検討した本願補正発明から「目印部材」の限定事項である「ブラシ部直近の柄の叩きやすい位置」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、「2.[理由II](4)」に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-10-10 
結審通知日 2019-10-29 
審決日 2019-11-18 
出願番号 特願2017-116311(P2017-116311)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A46B)
P 1 8・ 121- Z (A46B)
P 1 8・ 575- Z (A46B)
P 1 8・ 561- Z (A46B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横山 幸弘長清 吉範大内 康裕大光 太朗  
特許庁審判長 久保 竜一
特許庁審判官 長馬 望
堀川 一郎
発明の名称 コンコン叩ける歯ブラシ  

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