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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01M 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01M 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01M |
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管理番号 | 1358547 |
審判番号 | 不服2018-15991 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-12-03 |
確定日 | 2020-01-06 |
事件の表示 | 特願2017-109714「吹雪の拡散用部材および吹雪の発生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月 2日出願公開、特開2017-198685〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年11月9日に出願された特願2015-219915号の一部を、平成29年6月2日に新たに出願したものであって、平成30年2月7日付けで拒絶理由が通知され、同年4月2日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月31日付けで拒絶査定されたところ、同年12月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において令和元年8月29日付けで拒絶理由が通知され、同年10月16日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?9に係る発明は、令和元年10月16日付けの手続補正書により補正(以下「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。(下線は、本件補正により補正された箇所を示す。) 「 【請求項1】 気流に乗せられた乾き雪により模擬される吹雪の拡散用部材であって、 乾き雪を気流の進行方向に沿って吹き出す吹き出し口の外において、気流の進行方向前方の所定位置で該吹き出し口に対向する拡散面であって、乾き雪に対して難付着成長性を有するように、頂部が前記吹き出し口に近づく向きに形成され、気流方向に頂部から末広がりの円錐形状である拡散面を設け、前記円錐形状の軸線は、気流の進行方向に沿って配置され、その頂点が前記吹き出し口の中心と重なるように配置され、 前記拡散面は、吹き出される乾き雪の粒度分布において、所定粒径において粒度分布を二分した場合の小さい側の領域の乾き雪が占める質量の、粒度分布全体に亘る乾き雪の全体質量に対する質量割合に応じて、経時的な拡散特性の変動を抑制可能な範囲で、前記拡散面上での乾き雪の付着成長の程度を調整するように選択された前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度を有し、 それにより、前記吹き出し口から吹き出され、気流に乗って気流進行方向に沿って発生する吹雪が、前記拡散面に沿って案内され、経時的な拡散特性の変動を抑制しつつ、前記拡散面の四方外方に向かって拡散する、ことを特徴とする吹雪の拡散用部材。」 第3 拒絶の理由 令和元年8月29日付けで当審が通知した請求項1についての拒絶理由は、次のとおりのものである。 理由1 (明確性)この出願は、特許請求の範囲の請求項1の「吹き出される乾き雪の粒度分布において、所定粒径において粒度分布を二分した場合の小さい側の領域の乾き雪が占める質量の、粒度分布全体に亘る乾き雪の全体質量に対する質量割合に応じて、経時的な拡散特性の変動を抑制可能な範囲で、前記拡散面上での乾き雪の付着成長の程度を調整するように選択された末広がりの拡がりを有」する「拡散面」及び「それにより、前記吹き出し口から吹き出され、気流に乗って気流進行方向に沿って発生する吹雪が、前記拡散面に沿って案内され、経時的な拡散特性の変動を抑制しつつ、前記拡散面の四方外方に向かって拡散する」「拡散面」とは、「拡散面」の何をどのように特定しているのか理解することができないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 理由2 (サポート要件)本願発明の課題は、拡散面を用いて乾き雪を拡散噴雪させる際に、拡散面への吹雪の付着成長を防止することにより、拡散面への付着成長に伴う経時的な拡散特性の変動を抑制することであると認められる。 これに対し、本願請求項1に係る発明は、上記理由1で検討したとおり、「拡散面」が、どのような「曲面形状」の「拡散面」であるか特定することができないから、請求項1に係る発明において、どのような「曲面形状」の「拡散面」を有する「拡散用部材」を用いれば、拡散面への吹雪の付着成長を防止することにより、拡散面への付着成長に伴う経時的な拡散特性の変動を抑制することができるのか、理解することができない。 そして、発明の詳細な説明を参酌しても、どのような「曲面形状」の「拡散面」を有する「拡散用部材」を用いれば、拡散面への吹雪の付着成長を防止することにより、拡散面への付着成長に伴う経時的な拡散特性の変動を抑制することができるのか、理解することができないから、請求項1に係る発明は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているものであると認められる。 よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえないから、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 理由3 (実施可能要件)本願請求項1に関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、拡散面への付着成長に伴う経時的な拡散特性の変動を抑制可能とするために、どのような曲面形状の拡散面を有する拡散用部材を用いればよいか記載されているとはいえないから、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 なお、付言として、本願請求項1?13に係る発明は、明確でなく、発明の詳細な説明に記載されたものでもなく、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるともいえないから、原査定の新規性及び進歩性の拒絶理由は保留している旨通知した。 第4 当審の判断 1 明確性に関して 本願発明は、令和元年10月16日付けの手続補正書により、補正前の「拡散面」の「気流方向に頂部から末広がりの曲面形状」を、「気流方向に頂部から末広がりの円錐形状」に、また、補正前の「拡散面」が有する、「吹き出される乾き雪の粒度分布において、所定粒径において粒度分布を二分した場合の小さい側の領域の乾き雪が占める質量の、粒度分布全体に亘る乾き雪の全体質量に対する質量割合に応じて、経時的な拡散特性の変動を抑制可能な範囲で、前記拡散面上での乾き雪の付着成長の程度を調整するように選択され」る「末広がりの拡がり」を、「前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度」に限定しており、該限定により、本願発明の「拡散面」は、「気流方向に頂部から末広がりの円錐形状」であって、本願発明は、「気流方向に頂部から末広がりの円錐形状」である「拡散面」の「前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度」を特定するものであることは明らかになったといえる。しかしながら、「拡散面」の特定は、補正前と同様に「吹き出される乾き雪の粒度分布において、所定粒径において粒度分布を二分した場合の小さい側の領域の乾き雪が占める質量の、粒度分布全体に亘る乾き雪の全体質量に対する質量割合に応じて、経時的な拡散特性の変動を抑制可能な範囲で、前記拡散面上での乾き雪の付着成長の程度を調整するように選択され」ることで特定しているが、該特定は、「経時的な拡散特性の変動を抑制」するという効果によって「前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度」を特定しているものであって、「経時的な拡散特性の変動を抑制」できる「前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度」は、いろいろな条件により特定されるものであるから、「経時的な拡散特性の変動を抑制」するという効果で「前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度」を特定することはできない。そして、本願発明は、「吹き出される乾き雪の粒度分布において、所定粒径において粒度分布を二分した場合の小さい側の領域の乾き雪が占める質量の、粒度分布全体に亘る乾き雪の全体質量に対する質量割合に応じ」た、「前記拡散面上での乾き雪の付着成長の程度」により、「経時的な拡散特性の変動を抑制」できる「前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度」を特定しようとしているが、「吹き出される乾き雪の粒度分布において、所定粒径において粒度分布を二分した場合の小さい側の領域の乾き雪が占める質量の、粒度分布全体に亘る乾き雪の全体質量に対する質量割合」と、「前記拡散面上での乾き雪の付着成長の程度を調整するように選択された前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度」とが、どのような関係であるのか理解できないから、「吹き出される乾き雪の粒度分布において、所定粒径において粒度分布を二分した場合の小さい側の領域の乾き雪が占める質量の、粒度分布全体に亘る乾き雪の全体質量に対する質量割合に応じて」、「前記拡散面上での乾き雪の付着成長の程度を調整するように選択された前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度」がどのように特定されるのか、依然として理解することができない。 よって、本願発明は、依然として、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 2 サポート要件及び実施可能要件について 本願発明は、令和元年10月16日付けの手続補正書により、「拡散面」は、「気流方向に頂部から末広がりの円錐形状」であって、本願発明は、「気流方向に頂部から末広がりの円錐形状」である「拡散面」の「前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度」を特定するものであって、「前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度」は、「吹き出される乾き雪の粒度分布において、所定粒径において粒度分布を二分した場合の小さい側の領域の乾き雪が占める質量の、粒度分布全体に亘る乾き雪の全体質量に対する質量割合に応じて、経時的な拡散特性の変動を抑制可能な範囲で、前記拡散面上での乾き雪の付着成長の程度を調整するように選択」することにより、何らかの角度が選択され、この選択された「前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度」を有する「円錐形状」の「拡散用部材」の「拡散面を用いて乾き雪を拡散噴雪させる際に、拡散面への吹雪の付着成長を防止することにより、拡散面への付着成長に伴う経時的な拡散特性の変動を抑制すること」ができることも一応理解できるから、本願発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないとまではいえず、また、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとまではいえないから、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしていないという、令和元年8月29日付けで当審が通知した拒絶理由の理由2及び3は解消したと認められる。 3 新規性について (1)本願発明について 上記1のとおり、本願発明は、「前記拡散面は、吹き出される乾き雪の粒度分布において、所定粒径において粒度分布を二分した場合の小さい側の領域の乾き雪が占める質量の、粒度分布全体に亘る乾き雪の全体質量に対する質量割合に応じて、経時的な拡散特性の変動を抑制可能な範囲で、前記拡散面上での乾き雪の付着成長の程度を調整するように選択された前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度」が、どのように特定されるのか理解できないから、該角度が、「前記拡散面は、粒度分布を有する吹き出される乾き雪の付着成長が経時的な拡散特性の変動に影響しないものである前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度」であるとして、以下検討する。 (2)引用文献の記載及び引用発明 ア 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は、当審にて付した。以下同様。) (引1a)「【発明を実施するための最良の形態】 【0017】 本発明の吹雪の拡散部材により吹雪を模擬して、雪環境試験に利用する場合を例として、本発明の吹雪の拡散部材を以下に詳細に説明する。 まず、雪環境試験システムについて説明すれば、図1に示すように、雪環境試験システム10は、氷粒からなる人工雪を利用し、人工雪をその背後からの気流に乗せて吹雪を模擬して、試験供試体である車両Vに向かって吹き付けるように構成され、そのために、吹雪供給システム12と、気流供給システム14とを有する。 特に、氷粒の粒径および水分含有率が主な影響因子である所定の雪質を具備する吹雪を必要量用いて、車両Vに向かって連続的に吹き付ける際、車両Vの高さ全体に拡散し、場合により車両Vの高さ方向に所望の吹雪濃度分布を実現できるようにするために、所定の温度および湿度管理のもとで、人工雪として利用する氷粒群を試験直前に製造して迅速に供給することが要求される。」 (引1b)「【0032】 より具体的には、拡散面104には、フッ素樹脂あるいはシリコンによるコーティング層が設けられ、あるいは吹雪の拡散用部材100は、フッ素樹脂素材あるいはシリコン素材であってもよい。 図2および図3に示すように、拡散面104の形状について、円錐形状の軸線は、気流の進行方向に沿って配置され、その頂点が吹き出し口102の中心Pと重なるように配置される。吹き出しノズル36は、ほぼ水平に延び、吹き出し口102から吹き出される気流の流れはほぼ平行流となることから、拡散面104の底面の外径Dは、吹き出し口102の径より若干大きいのが好ましく、それにより、吹き出し口102から吹き出される吹雪は、拡散面104に当ることが可能である。 円錐形状の頂点まわりの広がり角度αは、吹雪の所望の拡散特性に応じて決定される。気流速度は、吹き出し口102と拡散面104との間の距離および/または広がり角度αに応じて、微調整される。」 (引1c)「【0034】 このような拡散面104の形成方法について、以下に説明する。 まず、雪を気流の進行方向に沿って吹き出す吹き出し口102を設け、吹き出し口102の外であって、気流の進行方向前方の所定位置に吹き出し口102に対向する態様で平面状の対向面(図示せず)を配置する。この場合、対向面は、たとえばプレート状でもよく、平面状の対向面の吹き出し口102に対する位置は、実際に環境試験を行う際の位置にするのが好ましい。 次いで、吹き出し口102から平面状の対向面に向かって雪を吹き付けることにより、平面状の対向面に雪を付着させる。この場合、試験室内の温度湿度、吹き付ける雪の雪質(特に水分含有率)、雪供給管40内において雪を圧送する圧送速度、および背後からの気流速度は、実際に環境試験を行う条件に設定するのが好ましい。 これにより、平面状の対向面には、付着した雪が徐々に、頂部を吹き出し口102に向けた状態で山形状の外形を呈するようになる。 【0035】 次いで、これ以上雪が付着しなくなり、平面状の対向面に形成される雪の山形状が変化しなくなったら、付着した雪により形成される輪郭外形を模擬することにより、平面状の対向面と同じ位置に配置する吹雪の拡散用部材100の拡散面104の表面形状を決定する。 このような拡散面の形成方法によれば、雪の付着を有効に防止可能な拡散面を確実かつ効率的に形成することが可能である。ただし、輪郭外形を模擬するのに用いた雪と同等の雪質の雪用の拡散面としてのみ有効である。 【0036】 以上の構成を有する吹雪の拡散用部材100について、その作用を以下に説明する。 まず、各系統において、製氷機22によって製氷された氷片が砕氷機26によって砕氷され、所定粒径の氷粒となり、雪供給管40により気流により圧送され、分配装置34により、複数の分岐管に分岐され、各分岐管において、湿雪装置32によって所定の水分含有率を有する湿雪とされ、吹き出しノズル36まで達する。 この場合、吹き出しノズル36は、系統ごとに、車両の高さ方向に間隔を隔てて配置され、同じ系統の複数の吹き出しノズル36は、車両Vの幅方向に間隔を隔てて配置されている。 【0037】 図6に示すように、吹き出し口102から吹き出された雪は気流に乗って、気流の進行方向に沿って吹雪として流れ、吹雪は、吹き出し口102の外であって、気流の進行方向前方の所定位置に吹き出し口102に対向するように配置された拡散面104に当るところ、拡散面104は、雪に対して難付着性を有するように、難付着性の材質および頂部が吹き出し口102に近づく向きに形成された円錐形状であることから、吹雪は、拡散面104に付着することなく、拡散面104に沿って案内され、四方外方に向かって拡散するとともに、拡散面104への付着に伴う経時的な拡散特性の変動を抑制可能である。 この場合、上述の拡散面104の形成方法により、事前に準備しておいてもよい。 これにより、吹雪の広がりが狭まるように拡散特性が変動することなく、あるいは吹き出すノズルからの雪の吹き出しに支障を生じたりすることなく、特に湿雪を利用する場合に、吹雪を利用した環境試験を円滑に遂行することが可能である。 なお、変形例として、図7に示すように、吹雪供給システム12を3系統設けずに、図7に示すように、単一系統として、それに応じて、拡散用部材100を1機設けるのでもよい。」 (引1d)「【0039】 また、本実施形態において、拡散用部材の拡散面として、雪に対して難付着性を有するように、難付着性の材質および頂部が吹き出し口に近づく向きに形成される円錐形状とするものとして説明したが、それに限定されることなく、雪の付着特性に応じて、たとえば雪が含水率1%以下の乾雪の場合には、湿雪に比べて付着性が小さいことから、難付着性の材質あるいは拡散面の形状のいずれかによって対処してもよい。 さらに、本実施形態において、拡散プレートの円錐形状の軸線は、気流の進行方向に沿って配置され、その頂点が吹き出しノズルの中心と重なるように配置されるものとして説明したが、それに限定されることなく、たとえば、吹き出しノズルの設置レベルに応じて、拡散範囲を偏らせる必要がある場合には、円錐の頂点を吹き出しノズルの中心からオフセット配置してもよい。 さらにまた、本実施形態において、吹雪の拡散用部材として、板状の拡散プレートとして説明したが、それに限定されることなく、吹き出しノズルに対向する拡散面を具備する限り、板状でなくてもよい。」 イ 引用文献1に記載された発明 (ア)引用文献1に記載された「拡散部材」、「拡散用部材100」及び「拡散用部材」は、いずれも同じものを指していることは明らかである。 (イ)上記(ア)を踏まえると、上記(引1a)?(引1c)より引用文献1には、以下の技術事項が記載されている。 「模擬される吹雪の拡散用部材100において、 拡散面104の形状について、円錐形状の軸線は、気流の進行方向に沿って配置され、その頂点が吹き出し口102の中心Pと重なるように配置され、 円錐形状の頂点まわりの広がり角度αは、吹雪の所望の拡散特性に応じて決定され、 湿雪装置32によって所定の水分含有率を有する湿雪が、吹き出しノズル36まで達し、 吹き出し口102から吹き出された雪は気流に乗って、気流の進行方向に沿って吹雪として流れ、吹雪は、吹き出し口102の外であって、気流の進行方向前方の所定位置に吹き出し口102に対向する拡散面104であって、 雪に対して難付着性を有するように、頂部が吹き出し口102に近づく向きに形成された円錐形状である拡散面104を配置し、 吹雪は、拡散面104に付着することなく、拡散面104に沿って案内され、四方外方に向かって拡散するとともに、拡散面104への付着に伴う経時的な拡散特性の変動を抑制可能である 吹雪の拡散用部材100について、 雪を気流の進行方向に沿って吹き出す吹き出し口102を設け、吹き出し口102の外であって、気流の進行方向前方の所定位置に吹き出し口102に対向する態様で平面状の対向面を配置し、 次いで、吹き出し口102から平面状の対向面に向かって雪を吹き付けることにより、平面状の対向面に雪を付着させ、 この場合、試験室内の温度湿度、吹き付ける雪の雪質(特に水分含有率)、雪供給管40内において雪を圧送する圧送速度、および背後からの気流速度は、実際に環境試験を行う条件に設定し、 平面状の対向面には、付着した雪が徐々に、頂部を吹き出し口102に向けた状態で山形状の外形を呈するようになり、 次いで、これ以上雪が付着しなくなり、平面状の対向面に形成される雪の山形状が変化しなくなったら、付着した雪により形成される輪郭外形を模擬することにより、平面状の対向面と同じ位置に配置する吹雪の拡散用部材100の拡散面104の表面形状を決定する 吹雪の拡散用部材100。」 (ウ)上記(引1d)に「本実施形態において、拡散用部材の拡散面として、雪に対して難付着性を有するように、難付着性の材質および頂部が吹き出し口に近づく向きに形成される円錐形状とするものとして説明したが、それに限定されることなく、雪の付着特性に応じて、たとえば雪が含水率1%以下の乾雪の場合には、湿雪に比べて付着性が小さいことから、難付着性の材質あるいは拡散面の形状のいずれかによって対処してもよい。」と記載されていることから、上記(イ)における技術事項は、雪を「含水率1%以下の乾雪」とした場合においても、「難付着性の」「拡散面の形状」「によって対処」できるから、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「模擬される吹雪の拡散用部材100において、 拡散面104の形状について、円錐形状の軸線は、気流の進行方向に沿って配置され、その頂点が吹き出し口102の中心Pと重なるように配置され、 円錐形状の頂点まわりの広がり角度αは、吹雪の所望の拡散特性に応じて決定され、 吹き出し口102から吹き出された乾雪は気流に乗って、気流の進行方向に沿って吹雪として流れ、吹雪は、吹き出し口102の外であって、気流の進行方向前方の所定位置に吹き出し口102に対向する拡散面104であって、 乾雪に対して難付着性を有するように、頂部が吹き出し口102に近づく向きに形成された円錐形状である拡散面104を配置し、 吹雪は、拡散面104に付着することなく、拡散面104に沿って案内され、四方外方に向かって拡散するとともに、拡散面104への付着に伴う経時的な拡散特性の変動を抑制可能である 吹雪の拡散用部材100について、 雪を気流の進行方向に沿って吹き出す吹き出し口102を設け、吹き出し口102の外であって、気流の進行方向前方の所定位置に吹き出し口102に対向する態様で平面状の対向面を配置し、 次いで、吹き出し口102から平面状の対向面に向かって乾雪を吹き付けることにより、平面状の対向面に乾雪を付着させ、 この場合、試験室内の温度湿度、吹き付ける乾雪の雪質(特に水分含有率)、雪供給管40内において乾雪を圧送する圧送速度、および背後からの気流速度は、実際に環境試験を行う条件に設定し、 平面状の対向面には、付着した乾雪が徐々に、頂部を吹き出し口102に向けた状態で山形状の外形を呈するようになり、 次いで、これ以上乾雪が付着しなくなり、平面状の対向面に形成される乾雪の山形状が変化しなくなったら、付着した乾雪により形成される輪郭外形を模擬することにより、平面状の対向面と同じ位置に配置する吹雪の拡散用部材100の拡散面104の表面形状を決定する 吹雪の拡散用部材100。」 (3) 対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「吹雪の拡散用部材100」及び「乾雪」は、それぞれ、本願発明の「吹雪の拡散用部材」及び「乾き雪」に相当する。そして、引用発明の「吹き出し口102から吹き出された乾雪は気流に乗って、気流の進行方向に沿って吹雪として流れ」るものであるから、引用発明の「模擬される吹雪」は、「気流に乗」せられた「乾雪」によるものである。すると、引用発明の「気流に乗」せられた「乾雪」によりの「模擬される吹雪の拡散用部材100」は、本願発明の「気流に乗せられた乾き雪により模擬される吹雪の拡散用部材」に相当する。 イ 引用発明の「拡散面104」及び「吹き出し口102」は、それぞれ、本願発明の「拡散面」及び「吹き出し口」に相当する。そして、引用発明の「吹き出し口102」は、「乾雪」を「気流の進行方向に沿って」「吹き出」すものであるから、引用発明の「乾雪」を「気流の進行方向に沿って」「吹き出」す、「吹き出し口102の外であって、気流の進行方向前方の所定位置に吹き出し口102に対向する拡散面104」は、本願発明の「乾き雪を気流の進行方向に沿って吹き出す吹き出し口の外において、気流の進行方向前方の所定位置で該吹き出し口に対向する拡散面」に相当する。 ウ 引用発明の「頂部が吹き出し口102に近づく向きに形成された円錐形状」は、気流方向に頂部から末広がりの円錐形状であるといえるから、引用発明の「乾雪に対して難付着性を有するように、頂部が吹き出し口102に近づく向きに形成された円錐形状である拡散面104を配置」することは、本願発明の「乾き雪に対して難付着成長性を有するように、頂部が前記吹き出し口に近づく向きに形成され、気流方向に頂部から末広がりの円錐形状である拡散面を設け」ることに相当する。 エ 引用発明の「拡散用部材100」は、「円錐形状の軸線は、気流の進行方向に沿って配置され、その頂点が吹き出し口102の中心Pと重なるように配置され」ているから、引用発明の「拡散用部材100」と本願発明の「拡散用部材」とは、「前記円錐形状の軸線は、気流の進行方向に沿って配置され、その頂点が前記吹き出し口の中心と重なるように配置され」ている点で一致する。 オ 引用発明の「吹き出し口102から吹き出された乾雪」が「気流に乗って、気流の進行方向に沿って」「流れ」る「吹雪」は、本願発明の「前記吹き出し口から吹き出され、気流に乗って気流進行方向に沿って発生する吹雪」に相当する。そして、引用発明の「吹雪は、拡散面104に付着することなく、拡散面104に沿って案内され、四方外方に向かって拡散するとともに、拡散面104への付着に伴う経時的な拡散特性の変動を抑制可能である」ことは、本願発明の「吹雪が、前記拡散面に沿って案内され、経時的な拡散特性の変動を抑制しつつ、前記拡散面の四方外方に向かって拡散する」ことに相当する。 カ 引用発明の「吹雪の拡散用部材100の拡散面104の表面形状」は、「乾雪を気流の進行方向に沿って吹き出す吹き出し口102を設け、吹き出し口102の外であって、気流の進行方向前方の所定位置に吹き出し口102に対向する態様で平面状の対向面を配置し、次いで、吹き出し口102から平面状の対向面に向かって乾雪を吹き付けることにより、平面状の対向面に乾雪を付着させ、この場合、試験室内の温度湿度、吹き付ける乾雪の雪質(特に水分含有率)、雪供給管40内において乾雪を圧送する圧送速度、および背後からの気流速度は、実際に環境試験を行う条件に設定し、平面状の対向面には、付着した乾雪が徐々に、頂部を吹き出し口102に向けた状態で山形状の外形を呈するようになり、次いで、これ以上乾雪が付着しなくなり、平面状の対向面に形成される乾雪の山形状が変化しなくなったら、付着した乾雪により形成される輪郭外形を模擬することにより」決定されるものであり、「付着した乾雪により形成される」「これ以上乾雪が付着しなくなり、平面状の対向面に形成される乾雪の山形状が変化しなく」なる形状である。 そして、この「吹雪の拡散用部材100の拡散面104の表面形状」は、「乾雪」が付着しない形状であることは明らかであって、このことにより、「吹雪の拡散用部材100」は、「吹雪は、拡散面104に付着することなく、拡散面104に沿って案内され、四方外方に向かって拡散するとともに、拡散面104への付着に伴う経時的な拡散特性の変動を抑制可能であ」って、「吹き出し口102」から「吹き出」される「乾雪」が、粒度分布を有していることも明らかである。 すると、引用発明の「拡散面104」と、本願発明の「拡散面」とは、「粒度分布を有する吹き出される乾き雪の付着成長が経時的な拡散特性の変動に影響しないものである前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度を有し」ている点で一致する。 キ 以上のことから、引用発明は本願発明の全ての発明特定事項を有するものであって、本願発明は、引用発明であるといえるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 第5 請求人の主張について 1 特許法第36条関係の理由について 請求人は、令和元年10月16日付け意見書において、 「この点、今回の適法な補正手続きにおいて、「拡散面」の「曲面形状」について、具体的に、円錐形状であり、吹き出し口との配置関係(旧請求項6の発明特定事項)まで限定しており、請求項1に係る本願発明の吹雪の拡散用部材は、乾き雪であっても、その粒度分布次第で、拡散面に付着成長することにより拡散特性への経時的な変動を生じるという新規な課題に着目し、拡散特性の経時的な変動を抑制するのに、乾き雪の特定の粒度分布という新規なパラメータに着目し、それに応じて、拡散面上での乾き雪の付着成長の程度を調整するように拡散面の曲面形状(末広がりの拡がりとして具体的な円錐形状の頂点まわりの広がり角度)を選択するという技術的思想を特徴とする。」 旨主張しているが、この主張のうち、「拡散特性の経時的な変動を抑制するのに、乾き雪の特定の粒度分布という新規なパラメータに着目し、それに応じて、拡散面上での乾き雪の付着成長の程度を調整するように拡散面の曲面形状(末広がりの拡がりとして具体的な円錐形状の頂点まわりの広がり角度)を選択するという技術的思想を特徴とする」との主張に関し、上記第4の1で指摘したとおり、「吹き出される乾き雪の粒度分布において、所定粒径において粒度分布を二分した場合の小さい側の領域の乾き雪が占める質量の、粒度分布全体に亘る乾き雪の全体質量に対する質量割合」と、「前記拡散面上での乾き雪の付着成長の程度を調整するように選択された前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度」とが、どのような関係であるのか理解できないから、「乾き雪の特定の粒度分布という新規なパラメータ」から、「それに応じ」た、「拡散面上での乾き雪の付着成長の程度を調整するよう」な「拡散面の曲面形状(末広がりの拡がりとして具体的な円錐形状の頂点まわりの広がり角度)」がどのように選択されるのか、依然として理解することができない。 よって、請求人の主張は採用されない。 2 新規性について 請求人は、令和元年10月16日付け意見書において、 「引用文献1においては、湿り雪ゆえに、吹雪の拡散用部材の拡散面への雪の付着を問題とし、付着による拡散特性の影響を防止するのに、拡散面の材質、および拡散面の形状を工夫しており、それにより、結果的に、経時的な拡散特性の変動が防止されているに過ぎない。 それに対して、本願発明において、乾き雪ゆえに、吹雪の拡散用部材の拡散面への雪の付着というより、拡散面への雪の付着成長を問題とし、付着成長による経時的な拡散特性の変動防止を直接の課題としている。 よって、引用文献1における、吹雪の拡散用部材の拡散面への雪の付着について、湿り雪ならまだしも、乾き雪なら問題なしという当業者の認識を、本願発明において覆すとともに、その課題解決に、単に粒度分布でなく、所定粒径において粒度分布を二分した場合の小さい側の領域の乾き雪が占める質量の、粒度分布全体に亘る乾き雪の全体質量に対する質量割合という新たなパラメータに着目しているのである。 この点、いわゆる課題解決発明のように、課題さえ与えられれば、その解決手段が自明な場合でも、その斬新な課題ゆえに課題解決発明の進歩性が認められることがあり、関連して、特許庁発行審査基準(第III部 第2章 第2節 進歩性)には、以下のように記載されている。 『また、請求項に係る発明の解決すべき課題が新規であり、当業者が通常は着想しないようなものである場合は、請求項に係る発明と主引用発明とは、解決すべき課題が大きく異なることが通常である。したがって、請求項に係る発明の課題が新規であり、当業者が通常は着想しないようなものであることは、進歩性が肯定される方向に働く一事情になり得る。』 本願発明においては、上述のように、課題が斬新であるとともに、その解決手段についても、乾き雪の吹雪の拡散用部材の拡散面への付着成長という特性を評価するのに新たなパラメータに着目しているのであり、解決手段自体も斬新であり、課題および解決手段からなる技術的思想としての本願発明は、引例文献1には開示はおろか示唆すらなされていない。 以上より、引例文献1には、請求項1の発明特定事項『前記拡散面は、吹き出される乾き雪の粒度分布において、所定粒径において粒度分布を二分した場合の小さい側の領域の乾き雪が占める質量の、粒度分布全体に亘る乾き雪の全体質量に対する質量割合に応じて、経時的な拡散特性の変動を抑制可能な範囲で、前記拡散面上での乾き雪の付着成長の程度を調整するように選択された前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度を有』する点について、『吹き出される乾き雪の粒度分布において、所定粒径において粒度分布を二分した場合の小さい側の領域の乾き雪が占める質量の、粒度分布全体に亘る乾き雪の全体質量に対する質量割合』という新たなパラメータの開示もなく、このような新たなパラメータにより、拡散面上での乾き雪の付着成長の程度を調整する点の開示もなく、乾き雪の付着成長の程度を拡散面の円錐形状の頂点まわりの広がり角度の選択により調整する点の開示もないことから、上述のように、本願発明の技術的思想は、引例文献1には開示はおろか示唆すらなされていない。」 旨、主張しているが、上記第4の1で検討したとおり、「経時的な拡散特性の変動を抑制」するという効果によって「前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度」を特定することはできないし、「吹き出される乾き雪の粒度分布において、所定粒径において粒度分布を二分した場合の小さい側の領域の乾き雪が占める質量の、粒度分布全体に亘る乾き雪の全体質量に対する質量割合」と、「前記拡散面上での乾き雪の付着成長の程度を調整するように選択された前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度」とが、どのような関係であるのか理解できないから、「吹き出される乾き雪の粒度分布において、所定粒径において粒度分布を二分した場合の小さい側の領域の乾き雪が占める質量の、粒度分布全体に亘る乾き雪の全体質量に対する質量割合に応じて」、「前記拡散面上での乾き雪の付着成長の程度を調整するように選択された前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度」がどのように特定されるのか、理解することができない。 そうすると、本願発明の「前記円錐形状の頂点まわりの広がり角度」は、単に、「乾き雪」が「付着成長」しない「程度」の「拡散面の円錐形状の頂点まわりの広がり角度」であるとしか認められず、該角度を有する「拡散用部材」は、上記第4の3で検討したとおり、引用発明に記載されているといえるから、上記請求人の主張は採用されない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明であるといえるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-11-01 |
結審通知日 | 2019-11-05 |
審決日 | 2019-11-19 |
出願番号 | 特願2017-109714(P2017-109714) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZ
(G01M)
P 1 8・ 113- WZ (G01M) P 1 8・ 537- WZ (G01M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福田 裕司 |
特許庁審判長 |
森 竜介 |
特許庁審判官 |
福島 浩司 ▲高▼見 重雄 |
発明の名称 | 吹雪の拡散用部材および吹雪の発生装置 |
代理人 | 岡 潔 |