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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25B |
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管理番号 | 1358581 |
審判番号 | 不服2018-13402 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-10-05 |
確定日 | 2020-01-08 |
事件の表示 | 特願2016-553835「液体冷却装置におけるR-1233の使用」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月 3日国際公開、WO2015/130589、平成29年 5月25日国内公表、特表2017-512965〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年2月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年2月25日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成30年1月15日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年4月20日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年6月1日付け(発送日:平成30年6月5日)で拒絶査定がなされ、それに対して、平成30年10月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成30年10月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年10月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 (1)本件補正後の特許請求の範囲 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。 「【請求項1】 圧縮機、少なくとも1つの液体冷却器、少なくとも1つの凝縮器、及び冷媒を備え、前記液体冷却器は、一部が大気圧未満の圧力で運転される満液式蒸発器であり、前記圧縮機は、遠心圧縮機であり、前記冷媒は、クロロ-トリフルオロプロペンを含み、前記圧縮機と前記凝縮器との間に配置された熱交換器によって前記冷媒から熱を回収する、熱回収冷却装置システム。」 (下線部は、補正箇所である。) (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、平成30年4月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 圧縮機、少なくとも1つの液体冷却器、少なくとも1つの凝縮器、及び冷媒を備え、前記圧縮機は、遠心圧縮機であり、前記冷媒は、クロロ-トリフルオロプロペンを含み、前記圧縮機と前記凝縮器との間に配置された熱交換器によって前記冷媒から熱を回収する、熱回収冷却装置システム。」 2 補正の適否について 本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「液体冷却器」に関して、「前記液体冷却器は、一部が大気圧未満の圧力で運転される満液式蒸発器であり、」と限定するものであって、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 3 独立特許要件について そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する(「・・・」は記載の省略を意味し、下線は当審にて付した。以下同様。)。 (1)引用例1 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特表2010-531970号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (1-a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 高い地球温暖化係数の冷媒および潤滑剤を含む種類の冷却装置システムに充填する方法であって、前記システム中に前記潤滑剤の実質的な部分を残しながら、前記冷却システム中の前記高い地球温暖化係数の冷媒の全てまたは一部を、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンおよび/または2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含むハロゲン化オレフィン組成物で置き換える工程を含む方法。」 【請求項2】 前記潤滑剤が、鉱油、ポリオールエステル油、ポリアルキレングリコール油、ポリビニルエーテル油、ポリ(アルファオレフィン)油、アルキルベンゼン油およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記冷却装置システムが、遠心圧縮機、スクロール圧縮機、スクリュー圧縮機または往復圧縮機を備える、請求項1に記載の方法。」 (1-b)「【0001】 本発明は、負圧液体冷却装置における冷媒としてのクロロ-トリフルオロプロペンの使用に関する。クロロトリフルオロプロペン、特に1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンは、液体冷却装置用途において高い効率性および予想外に高い能力を有し、R-123およびR-11の代替を含む、このような用途のより環境上持続可能な冷媒として有用である。クロロ-トリフルオロプロペンは、新規な冷却装置用途において、または冷媒が既存の冷却装置から除去され、本発明のクロロ-トリフルオロプロペンが加えられる仕上げ(top-off)もしくは追加改修として使用され得る。 ・・・ 【0005】 蒸気-圧縮、液体冷却システムの基本要素には、圧縮機、液体冷却器(蒸発器)、凝縮器、圧縮機駆動部、液体-冷媒膨張またはフロー制御装置、およびコントロールセンターが含まれ;これにはまた、受液器、エコノマイザ、膨張タービン、および/または副冷却器も含まれ得る。さらに、潤滑剤冷却器、潤滑剤分離器、潤滑剤戻し装置、パージユニット、潤滑剤ポンプ、冷媒移動ユニット、冷媒排出口、および/または追加制御弁などの補助要素が使用され得る。」 (1-c)「【発明が解決しようとする課題】 【0019】 その高速度運転のために、遠心圧縮機は基本的に高容量、低圧の機械である。遠心圧縮機は、トリクロロフルオロメタン(CFC-11)などの低圧冷媒とともに最も良好に動作する。冷却器の一部、特に蒸発器が周囲圧力未満の圧力レベルで運転される場合、冷却器は負圧システムと呼ばれる。低圧または負圧システムの利点の1つは低い漏れ率である。冷媒漏れは圧力差によって促進され、したがって、より低い圧力は高圧システムより低い漏れ率をもたらす。また、周囲圧力未満で運転しているシステムの漏れは、漏れ出る冷媒よりもむしろ装置中に吸引される空気を生じる。このような運転は、いずれの空気および水分も除去するためのバージ装置を必要とするが、このパージ運転をモニターすることは漏れの発生に対して警告システムとして働く。 【課題を解決するための手段】 【0020】 本発明において、クロロ-トリフルオロプロペンが、例えば、R-11およびR-123の代替のために、特に負圧冷却装置システムにおいて、液体冷却器システム用の特に有用な冷媒であることが見いだされた。本発明のクロロ-トリフルオロプロペンは、現状の冷却装置冷媒に匹敵する運転状態を与え、かつまた、現状の冷却装置潤滑剤と適合することが見いだされた。本発明のクロロ-トリフルオロプロペンは、好ましくは、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンおよび/または2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、より好ましくはトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンである。 ・・・ 【0022】 本発明のクロロ-トリフルオロプロペン冷媒は、新たな冷却装置システムに加えることができるか、または既存の冷却装置システムを仕上げもしくは改修する方法において用いることができる。本発明のクロロ-トリフルオロプロペン冷媒組成物は、遠心圧縮機および満液式蒸発器を用いる冷却装置、好ましくは負圧で運転されるものにおいて特に有用である。改修方法は、冷却装置システム中の実質的な一部の潤滑剤を場合によって保持しながら、冷却装置システムから既存の冷媒を除去する工程;ならびに、界面活性剤および/または可溶化剤の添加を必要とすることなく、システム中に存在する潤滑剤と混和性である本発明のクロロ-トリフルオロプロペン冷媒を含む組成物をそのシステムに導入する工程を含む。既存の冷却装置システムを仕上げすることにおいて、本発明のクロロ-トリフルオロプロペン冷媒は、冷媒充填量を満タンにするために、または失われた冷媒に置き換わるか、もしくは既存の冷媒の一部を除去した後に本発明のクロロ-トリフルオロプロペン冷媒を加える部分的な置き換えとして加えられる。本発明の好ましいクロロ-トリフルオロプロペン冷媒は、好ましくは1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンおよび/または2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、より好ましくは、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンである。」 (1-d)段落【0020】の「本発明のクロロ-トリフルオロプロペンは、好ましくは、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンおよび/または2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、・・・である。」との記載に留意し、【請求項1】の「冷却装置システム」に着目すれば、当該「冷却装置システム」は、冷媒の全てまたは一部をクロロ-トリフルオロプロペンで置き換えたものといえる。 上記(1-a)?(1-d)の事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。 「冷媒の全てまたは一部を、クロロ-トリフルオロプロペンで置き換えた冷却装置システムであって、 冷却装置システムは、基本要素として、圧縮機、液体冷却器(蒸発器)、凝縮器等を備え、 前記クロロ-トリフルオロプロペンは、液体冷却器の一部、特に蒸発器が周囲圧力未満の圧力レベルで運転される負圧システムのときに特に有用な冷媒であるとともに、遠心圧縮機および満液式蒸発器を用いる冷却装置で運転されるものにおいて特に有用な冷媒である、 冷却装置システム。」 (2)対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「圧縮機、液体冷却器(蒸発器)、凝縮器等を備える」点は、本願補正発明の「圧縮機、少なくとも1つの液体冷却器、少なくとも1つの凝縮器」を備える点に相当する。また、引用発明が「冷媒」を備える点は明らかである。 イ 引用発明の「冷媒の全てまたは一部を、クロロ-トリフルオロプロペンで置き換えた」点は、本願補正発明の「前記冷媒は、クロロ-トリフルオロプロペンを含」む点に相当する。 ウ 引用発明の「冷却装置システム」と、本願補正発明の「熱回収冷却装置システム」とは、「冷却システム」である点で共通する。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、 「圧縮機、少なくとも1つの液体冷却器、少なくとも1つの凝縮器、及び冷媒を備え、前記冷媒は、クロロ-トリフルオロプロペンを含む冷却システム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本願補正発明は、「前記液体冷却器は、一部が大気圧未満の圧力で運転される満液式蒸発器であり、前記圧縮機は、遠心圧縮機であ」るのに対し、引用発明は、そのような構成を有するのか不明である点。 [相違点2] 冷却システムに関して、本願補正発明は、「前記圧縮機と前記凝縮器との間に配置された熱交換器によって前記冷媒から熱を回収する、熱回収冷却装置システム」であるのに対し、引用発明は、そのような構成を有していない点。 (3)判断 ア 上記[相違点1]について検討する。 引用発明は、「冷媒の全てまたは一部を、クロロ-トリフルオロプロペンで置き換えた冷却装置システム」であって、「前記クロロ-トリフルオロプロペンは、液体冷却器の一部、特に蒸発器が周囲圧力未満の圧力レベルで運転される負圧システムのときに特に有用な冷媒であるとともに、遠心圧縮機および満液式蒸発器を用いる冷却装置で運転されるものにおいて特に有用な冷媒である」ものである。 そうすると、クロロ-トリフルオロプロペンを有用な冷媒として活用するために、引用発明における「冷却装置システム」の「液体冷却器(蒸発器)」を一部が周囲圧力未満の圧力レベル(大気圧未満の圧力)で運転される満液式蒸発器とし、「圧縮機」を遠心圧縮機とすることは、当業者が適宜なし得たことである。 イ 上記[相違点2]について検討する。 圧縮機と凝縮器との間に配置された熱交換器によって冷媒から熱を回収する冷凍サイクルは、周知の技術である。 (例えば、特開昭60-38569号公報の第1頁右欄第3?6行、図1に記載された圧縮機1と第2凝縮器3との間に配置された第1凝縮器2において温水または温風が取り出され加熱に利用される点、特開2010-243001号公報の段落【0016】?【0018】、図1に記載された圧縮機5と調整用凝縮器9との間に配置された主凝縮器7で加熱された水は加熱対象を加熱する点、特開平6-323643号公報の段落【0002】、図1に記載された圧縮機1と凝縮器3との間に配置された顕熱回収器2から温水20が、暖房に供される点を参照のこと。) そして、引用発明と周知の技術とは、圧縮機、蒸発器、凝縮器等からなる冷凍サイクルを用いる点で共通するものである。 よって、引用発明に周知の技術を適用し、圧縮機と凝縮器との間に熱交換器を配置し、冷媒から熱を回収する、熱回収冷却装置システムとして構成することは、当業者であれば容易になし得たことである。 ウ 本願補正発明が奏する効果について 本願補正発明が奏する効果は、当業者が引用発明及び周知の技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。 (4)まとめ 以上のように、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 むすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?21に係る発明は、平成30年4月20日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?21に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2[理由]1(2)」に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、次のとおりである。 この出願の請求項1?14、20?21に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、この出願の請求項15?19に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された引用文献1、2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特表2010-531970号公報 引用文献2:国際公開第2009/151669号 3 引用例 引用文献1及びその記載事項は、前記「第2[理由]3(1)」に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本願補正発明を特定するために必要な事項である「液体冷却器」に関して、「前記液体冷却器は、一部が大気圧未満の圧力で運転される満液式蒸発器であり、」との限定を削除するものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]3(3)(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-07-30 |
結審通知日 | 2019-08-06 |
審決日 | 2019-08-23 |
出願番号 | 特願2016-553835(P2016-553835) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F25B)
P 1 8・ 575- Z (F25B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石黒 雄一 |
特許庁審判長 |
山崎 勝司 |
特許庁審判官 |
紀本 孝 平城 俊雅 |
発明の名称 | 液体冷却装置におけるR-1233の使用 |
代理人 | アクシス国際特許業務法人 |