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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H02B
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  H02B
審判 一部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  H02B
審判 一部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H02B
管理番号 1358632
異議申立番号 異議2019-700235  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-03-26 
確定日 2019-12-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6406963号発明「太陽光発電システム用の集電ボックス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6406963号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔3及び4〕について訂正することを認める。 特許第6406963号の請求項3及び4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6406963号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成26年10月2日に出願され、平成30年9月28日にその特許権の設定登録がされ、同年10月17日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成31年3月26日 :特許異議申立人佐藤徹(以下、「特許異議申立
人」という。)により、請求項3及び4に係る
特許に対する特許異議の申立て
令和1年6月10日付け:取消理由通知書
同年8月9日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年8月20日付け :訂正請求があった旨の通知書(特許法第120
条の5第5項)
同年9月20日 :特許異議申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和1年8月9日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。また、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所である。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項3に「機器取付板上に、複数の太陽電池モジュールの電路を開閉する複数の分岐開閉器と、分岐開閉器の端子部の配線及び正極バーへの配線が接続される複数の接続端子を有する逆流防止ダイオードモジュールを複数備えた太陽光発電システム用の集電ボックスにおいて、逆流防止ダイオードモジュールが2つの分岐開閉器毎に配置され、各逆流防止ダイオードモジュールの複数の接続端子を筐体の上下方向に配置し、各分岐開閉器からの配線を全て筐体の上下方向とは異なる角度から接続したことを特徴とする太陽光発電システム用の集電ボックス。」とあるのを、「機器取付板上に、複数の太陽電池モジュールの電路を開閉する複数の分岐開閉器と、分岐開閉器の端子部の配線及び正極バーへの配線が接続される複数の接続端子を有する逆流防止ダイオードモジュールを複数備えた太陽光発電システム用の集電ボックスにおいて、逆流防止ダイオードモジュールが2つの分岐開閉器毎に配置され、各逆流防止ダイオードモジュールの複数の接続端子を筐体の上下方向に配置し、各分岐開閉器からの配線を全て筐体の上下方向とは異なる角度から接続するとともに、逆流防止ダイオードモジュールの何れかの接続端子に対して配線が接続される方向が、同じ逆流防止ダイオードモジュールの他の何れかの接続端子に対して配線が接続される方向と、左右が逆になることを特徴とする太陽光発電システム用の集電ボックス。」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)。


(2)訂正事項2
明細書の段落【0009】の「請求項3の発明は、機器取付板上に、複数の太陽電池モジュールの電路を開閉する複数の分岐開閉器と、分岐開閉器の端子部の配線及び正極バーへの配線が接続される複数の接続端子を有する逆流防止ダイオードモジュールを複数備えた太陽光発電システム用の集電ボックスにおいて、逆流防止ダイオードモジュールが2つの分岐開閉器毎に配置され、各逆流防止ダイオードモジュールの複数の接続端子を筐体の上下方向に配置し、各分岐開閉器からの配線を全て筐体の上下方向とは異なる角度から接続したことを特徴とするものである。」という記載を、「請求項3の発明は、機器取付板上に、複数の太陽電池モジュールの電路を開閉する複数の分岐開閉器と、分岐開閉器の端子部の配線及び正極バーへの配線が接続される複数の接続端子を有する逆流防止ダイオードモジュールを複数備えた太陽光発電システム用の集電ボックスにおいて、逆流防止ダイオードモジュールが2つの分岐開閉器毎に配置され、各逆流防止ダイオードモジュールの複数の接続端子を筐体の上下方向に配置し、各分岐開閉器からの配線を全て筐体の上下方向とは異なる角度から接続するとともに、逆流防止ダイオードモジュールの何れかの接続端子に対して配線が接続される方向が、同じ逆流防止ダイオードモジュールの他の何れかの接続端子に対して配線が接続される方向と、左右が逆になることを特徴とするものである。」に訂正する。

(3)一群の請求項について
訂正前の請求項3及び4は、請求項4が請求項3の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
したがって、訂正事項1は、一群の請求項〔3及び4〕に対して請求されたものである。
また、訂正事項2は、一群の請求項〔3及び4〕について請求されたものである。
よって、本件訂正請求は一群の請求項ごとにされたものである。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1は、各分岐開閉器からの各逆流防止ダイオードモジュールの複数の接続端子への配線の接続について、「逆流防止ダイオードモジュールの何れかの接続端子に対して配線が接続される方向が、同じ逆流防止ダイオードモジュールの他の何れかの接続端子に対して配線が接続される方向と、左右が逆になる」という技術的限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、図面の【図10】及び明細書の段落【0024】の「図10に示す他の実施形態では、分岐開閉器3の上側の正極端子13を逆流防止ダイオードモジュール9の中段と下段の接続端子11,12に接続するための正極リードバー23,24の先端が、左右逆方向に屈曲させてある。すなわち、逆流防止ダイオードモジュール9の中段の接続端子11に接続される右側の正極リードバー23は先端が左向きに屈曲され、下段の接続端子12に接続される右側の正極リードバー24は先端が右向きに屈曲されている。このため、各分岐開閉器3からの配線は全て筐体1の上下方向とは異なる角度から接続されることとなる。」(下線は、当審で付した。)という記載に基づいているから、願書に添付した明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、何ら新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。
しかも、訂正事項1によって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正事項1にともなって、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
そして、上記(1)イの説示をも踏まえると、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔3及び4〕についての訂正を認める。

第3 本件発明
上記第2で説示のとおり、本件訂正請求による本件訂正が認められるので、本件訂正請求により訂正された請求項3及び4に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項3及び4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明3」及び「本件発明4」という。)。

[本件発明3]
「機器取付板上に、複数の太陽電池モジュールの電路を開閉する複数の分岐開閉器と、分岐開閉器の端子部の配線及び正極バーへの配線が接続される複数の接続端子を有する逆流防止ダイオードモジュールを複数備えた太陽光発電システム用の集電ボックスにおいて、逆流防止ダイオードモジュールが2つの分岐開閉器毎に配置され、各逆流防止ダイオードモジュールの複数の接続端子を筐体の上下方向に配置し、各分岐開閉器からの配線を全て筐体の上下方向とは異なる角度から接続するとともに、逆流防止ダイオードモジュールの何れかの接続端子に対して配線が接続される方向が、同じ逆流防止ダイオードモジュールの他の何れかの接続端子に対して配線が接続される方向と、左右が逆になることを特徴とする太陽光発電システム用の集電ボックス。」
[本件発明4]
「正極バーは筐体の上下方向とは異なる方向に延び、複数の逆流防止ダイオードモジュールの接続端子を渡すように接続することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の太陽光発電システム用の集電ボックス。」

第4 取消理由の概要
本件特許の訂正前の請求項3及び4に係る特許に対して、令和1年6月10日付けで特許権者に対して通知した取消理由の概要は次のとおりである。

[取消理由1](新規性)本件特許の請求項3及び4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
[取消理由2](進歩性)本件特許の請求項3及び4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

甲第1号証:DC1000V対応接続箱のカタログ「Junction Box of Next Generation DC1000Vシステムに対応した接続箱」 関西電機工業株式会社 平成26年9月3日
甲第1号証は、特許異議申立人による平成31年3月26日付けの特許異議申立書に添付された甲第1号証である。

第5 当審の判断
1 甲第1号証に記載の事項及び発明
(1)甲第1号証から看取される事項
ア 甲第1号証の第2頁「DC1000V対応接続箱の検証」の欄の●絶縁抵抗試験・耐電圧試験の「JEM1493:太陽光発電システム用接続箱及び集電箱」の記載に基づけば、甲第1号証の第1頁下段の画像には、「太陽光発電システム用接続箱」の内部構造が示されているといえる。
イ 甲第1号証の第2頁「DC1000V対応接続箱の仕様」の欄の●主要規格の表中の「入力回路数」「4?18回路」という記載、並びに、「DC1000V対応接続箱の仕様」の欄の「・出力側はDC1000V用MCCB、または端子台による一括出力を選択可能です。」、「・入力側にはDC1000V対応の直流開閉器を使用。」及び「・逆流防止ダイオードは新型のDC1000V対応品を使用。」との記載、また、太陽光発電システム用接続箱においては、太陽電池セルを直列接続したモジュール群ごとに、直流開閉器、その下流に逆流防止ダイオード及びMCCBなどが機器取付け板の上に備えられていることが当業者における技術常識であることを参酌すれば、甲第1号証から次の事項が看取できる。
(ア)太陽光発電システム用接続箱の内部には、接続箱に収容された機器取付け板の上に、左右方向に沿って14個の、太陽電池モジュールから入力される入力側の電路を開閉する直流開閉器が配置されており、また、当該直流開閉器の上方には、機器取付板の上に、左右方向に沿って逆流防止ダイオードが7個並んで配置されている。
(イ)甲第1号証の逆流防止ダイオードは、上下方向に沿って並ぶように配置された3つの接続端子を有するモジュールとして構成されている。
当該3つの接続端子うち最も上方側に配置された接続端子には、左右方向に沿って伸びるように棒状の金属板が接続されている。また、当該3つの接続端子のうち中段に配置された接続端子には、当該逆流防止ダイオードの右下に配置された直流開閉器から伸びる配線が接続されており、下段に配置された接続端子には、当該逆流防止ダイオードの左下に配置された直流開閉器から伸びる配線が接続されている。
(ウ)逆流防止ダイオードに右下に配置された直流開閉器から伸びる配線は、中段の接続端子に対して左側から接続されている。また、逆流防止ダイオードに左下に配置された直流開閉器から伸びる配線は、下段の接続端子に対して左側から接続されている。

(2)甲第1号証に記載された発明
上記(1)より、甲第1号証には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
[引用発明]
「機器取付け板の上に、左右方向に沿って14個の、太陽電池モジュールから入力される入力側の電路を開閉する直流開閉器が配置されており、また、当該直流開閉器の上方には、機器取付板の上に、左右方向に沿って逆流防止ダイオードが7個並んで配置されている太陽光発電システム用接続箱において、
逆流防止ダイオードは、上下方向に沿って並ぶように配置された3つの接続端子を有するモジュールとして構成されており、当該3つの接続端子うち最も上方側に配置された接続端子には、左右方向に沿って伸びるように棒状の金属板が接続されており、また、当該3つ接続端子のうち中段に配置された接続端子には、当該逆流防止ダイオードの右下に配置された直流開閉器から伸びる配線が接続されており、下段に配置された接続端子には、当該逆流防止ダイオードの左下に配置された直流開閉器から伸びる配線が接続されており、
逆流防止ダイオードに右下に配置された直流開閉器から伸びる配線は、中段の接続端子に対して左側から接続されており、逆流防止ダイオードに左下に配置された直流開閉器から伸びる配線は、下段の接続端子に対して左側から接続されている、
太陽光発電システム用接続箱。」

(3)対比・判断
ア 本件発明3について
(ア)対比
本件発明3と引用発明とを対比する。
a 引用発明の「太陽光発電システム用接続箱」は、機能・構造からみて本件発明3の「太陽光発電システム用の集電ボックス」に相当する。
b 引用発明の「機器取付け板」は、本件発明3の「機器取付板」に相当する。また、引用発明の「直流開閉器」は、本件発明3の「分岐開閉器」に相当する。そして、このことを踏まえれば引用発明の「機器取付け板の上に、左右方向に沿って14個の、太陽電池モジュールから入力される入力側の電路を開閉する直流開閉器が配置されて」いることは、本件発明3の「機器取付板上に、複数の太陽光電池モジュールの電路を開閉する複数の分岐開閉器と」「を備えた」ことに相当する。
c 引用発明の「逆流防止ダイオード」は、「上下方向に沿って並ぶように配置された3つの接続端子を有するモジュールとして構成されて」いるから、本件発明3の「逆流防止ダイオードモジュール」に相当する。
また、引用発明の「逆流防止ダイオード」の「3つの接続端子」について、「当該3つの接続端子うち最も上方側に配置された接続端子には、左右方向に沿って伸びるように棒状の金属板が接続されており、また、当該3つ接続端子のうち中段に配置された接続端子には、当該逆流防止ダイオードの右下に配置された直流開閉器から伸びる配線が接続されており、下段に配置された接続端子には、当該逆流防止ダイオードの左下に配置された直流開閉器から伸びる配線が接続されて」いるから、引用発明の「逆流防止ダイオード」は、直流開閉器の端止部の配線及び棒状の金属板(バー)が接続される複数の接続端子を有するものであるといえる。
したがって、引用発明の「逆流防止ダイオードは、上下方向に沿って並ぶように配置された3つの接続端子を有するモジュールとして構成されており、当該3つの接続端子うち最も上方側に配置された接続端子には、左右方向に沿って伸びるように棒状の金属板が接続されており、また、当該3つ接続端子のうち中段に配置された接続端子には、当該逆流防止ダイオードの右下に配置された直流開閉器から伸びる配線が接続されており、下段に配置された接続端子には、当該逆流防止ダイオードの左下に配置された直流開閉器から伸びる配線が接続されて」いることは、本件発明3の「分岐開閉器の端止部の配線及び正極バーへの配線が接続される複数の接続端子を有する逆流防止ダイオードモジュール」との対比において、「分岐開閉器の端止部の配線及び棒状の金属板(バー)への配線が接続される複数の接続端子を有する逆流防止ダイオードモジュール」の限度で共通する。
d 上記cを踏まえると、引用発明の「機器取付け板の上に、左右方向に沿って逆流防止ダイオードが7個並んで配置されている」ことは、本件発明3の「機器取付板上に」、「分岐開閉器の端止部の配線及び正極バーへの配線が接続される複数の接続端子を有する逆流防止ダイオードモジュールを複数備え」ることとの対比において、「機器取付板上に」、「分岐開閉器の端止部の配線及び棒状の金属板(バー)への配線が接続される複数の接続端子を有する逆流防止ダイオードモジュールを複数備え」るとの限度で共通する。e 引用発明の「3つ接続端子のうち中段に配置された接続端子には、当該逆流防止ダイオードの右下に配置された直流開閉器から伸びる配線が接続されており、下段に配置された接続端子には、当該逆流防止ダイオードの左下に配置された直流開閉器から伸びる配線が接続されて」いることは、引用発明の逆流防止ダイオード1つに対して2つの直流開閉器が配置されているといえるから、引用発明は、本件発明3の「逆流防止ダイオードモジュールが2つの分岐開閉器毎に配置され」るという構成を具備しているといえる。
f 引用発明の「逆流防止ダイオードは、上下方向に沿って並ぶように配置された3つの接続端子を有するモジュールとして構成されて」いるものであり、逆流防止ダイオードの3つの接続端子は、上下方向に配置されているといえるから、引用発明の「逆流防止ダイオードは、上下方向に沿って並ぶように配置された3つの接続端子を有するモジュールとして構成されて」いることは、本件発明3の「各逆流防止ダイオードモジュールの複数の接続端子を筐体の上下方向に配置」することにも相当する。
g 引用発明の「逆流防止ダイオードに右下に配置された直流開閉器から伸びる配線は、中段の接続端子に対して左側から接続されており、逆流防止ダイオードに左下に配置された直流開閉器から伸びる配線は、下段の接続端子に対して左側から接続されている」ものであり、各直流開閉器からの配線を上下方向とは異なる角度から逆流防止ダイオードに接続しているものといえるから、引用発明の「逆流防止ダイオードに右下に配置された直流開閉器から伸びる配線は、中段の接続端子に対して左側から接続されており、逆流防止ダイオードに左下に配置された直流開閉器から伸びる配線は、下段の接続端子に対して左側から接続されている」ことは、本件発明3の「各分岐開閉器からの配線を全て筐体の上下方向とは異なる角度から接続する」ことに相当する。
h 以上のとおりであるので、本件発明3と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
[一致点]
「機器取付板上に、複数の太陽電池モジュールの電路を開閉する複数の分岐開閉器と、分岐開閉器の端子部の配線及び棒状の金属板(バー)への配線が接続される複数の接続端子を有する逆流防止ダイオードモジュールを複数備えた太陽光発電システム用の集電ボックスにおいて、
逆流防止ダイオードモジュールが2つの分岐開閉器毎に配置され、各逆流防止ダイオードモジュールの複数の接続端子を筐体の上下方向に配置し、各分岐開閉器からの配線を全て筐体の上下方向とは異なる角度から接続する太陽光発電システム用の集電ボックス。」
[相違点1]
逆流防止ダイオードモジュールへ接続される棒状の金属板(バー)に関し、本件発明3は「正極バー」であるのに対し、引用発明では正極バーであるとは特定されていない点。
[相違点2]
各分岐開閉器から各逆流防止ダイオードモジュールの複数の接続端子への配線に関し、本件発明3は、「逆流防止ダイオードモジュールの何れかの接続端子に対して配線が接続される方向が、同じ逆流防止ダイオードモジュールの他の何れかの接続端子に対して配線が接続される方向と、左右が逆になる」ように接続されているものであるのに対し、引用発明は、「逆流防止ダイオードに右下に配置された直流開閉器から伸びる配線は、中段の接続端子に対して左側から接続されており、逆流防止ダイオードに左下に配置された直流開閉器から伸びる配線は、下段の接続端子に対して左側から接続されている」ものである点。

(イ)判断
上記相違点について検討する
a 相違点1について
甲第1号証の第1頁下段の画像の「太陽光発電システム用接続箱」の逆流防止ダイオードへは、直流開閉器の赤い端子からの配線が接続されるものであることからすれば、電気回路における技術常識をふまえれば、引用発明の「逆流防止ダイオード」に接続される棒状の金属板は、正極バーであるといえる。
したがって、相違点1は実質的な相違点とはいえない。
仮に、相違点1が実質的な相違点であるとしても、複数の太陽電池からの電力を集める一対(正負)の集電バーにおいて、どちらの集電バーを正極バーとして用いるかは当業者における設計事項に過ぎず、引用発明において、相違点1に係る本件発明3の構成となすことは当業者であれば容易に想到し得たものである。

b 相違点2について
上記(ア)b及びcに説示のとおり、引用発明の「逆流防止ダイオード」及び「直流開閉器」は、本件発明3の「逆流防止ダイオードモジュール」及び「分岐開閉器」に相当する。
したがって、相違点2は、引用発明が、逆流防止ダイオードモジュールの何れかの接続端子に対して配線が接続される方向が、同じ逆流防止ダイオードモジュールの他の何れかの接続端子に対して配線が接続される方向と、同じ方向になるように接続されているものであるのに対し、本件発明3は、左右が逆になるように接続されている点で異なるといえることとなる。
ここで、甲第1号証には、逆流防止ダイオードの中段(あるいは下段)の接続端子に対して配線が接続される方向と、同じ逆流防止ダイオードの下段(あるいは中段)の接続端子に対して配線が接続される方向が、左右が逆になるように接続することについては記載も示唆もされていない。
したがって、引用発明において、逆流防止ダイオードの中段(あるいは下段)の接続端子に対して配線が接続される方向が、同じ逆流防止ダイオードの他の何れかの(すなわち、下段あるいは中段の)接続端子に対して配線が接続される方向と、左右が逆になるように接続されているものとすることは当業者であっても容易になし得ない。

c 作用効果について
そして、本件発明3は、相違点2に係る本件発明3の構成を具備することによって、「分岐開閉器からの配線を筐体の上下方向とは異なる角度から接続するようにしたので、配線作業が行い易い。」(明細書段落【0010】)、「逆流防止ダイオードモジュール9の左右方向の幅内に正極リードバー23,24を収めることが可能となる。また分岐開閉器3の負極端子16を負極リードバー17に接続する作業も容易となる。」(明細書段落【0024】)という格別の作用効果を奏するものといえる。

d 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和1年9月20日提出の意見書の中で、概略次のように主張する。
明細書段落【0024】に記載の2つの効果(「逆流防止ダイオードモジュール9の左右方向の幅内に正極リードバー23,24を収めることが可能となる。」及び「分岐開閉器3の負極端子16を負極リードバー17に接続する作業も容易となる。」)は、本件発明3の効果として奏されるものではなく、なんらの特有の効果とはいえないから、逆流防止ダイオードモジュールに対し、分岐開閉器から伸びる配線をどの方向から接続するかは、逆流防止ダイオードモジュールと分岐開閉器との位置関係に応じて当業者が適宜決定しうる設計的事項に過ぎない(第4頁第10行?第9頁第5行)。
この点について検討する。
本件発明3に対応する、本件の図面の【図10】に示されたもの(明細書段落【0024】も参照。)は、逆流防止ダイオードモジュールの中段の接続端子に対して配線が接続される方向が、同じ逆流防止ダイオードモジュールの下段の接続端子に対して配線が接続される方向と、左右が逆になるよう構成することによって、逆流防止ダイオードモジュール9の左右方向の幅内に正極リードバー23,24が収まっており、また、負極端子16が正極リードバー23,24間の間隔に配置されているものとなっている。してみると、本件発明3によって、明細書段落【0024】に記載の2つの効果を発揮することが可能であるといえ、当該2つの効果は、必ずしも否定されるものではないといえる。
したがって、本件発明3において、当該2つの効果を発揮させることを目的として、逆流防止ダイオードモジュールの何れかの接続端子に対して配線が接続される方向が、同じ逆流防止ダイオードモジュールの他の何れかの接続端子に対して配線が接続される方向と、左右が逆になるよう構成することが、当業者が適宜決定しうる設計的事項に過ぎないとはいえない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

e 小括
上記a?dのとおりであるから、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明とはいえないし、甲第1号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明3の発明特定事項を全て含み、さらに、「正極バーは筐体の上下方向とは異なる方向に延び、複数の逆流防止ダイオードモジュールの接続端子を渡すように接続すること」という技術的限定を付加する発明である。
本件発明3が上記ア(イ)で説示のとおり、甲第1号証に記載された発明とはいえないし、甲第1号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件発明4も同様の理由により、甲第1号証に記載された発明とはいえないし、甲第1号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるともいえない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項3及び4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項3及び4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
太陽光発電システム用の集電ボックス
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システムに用いられる集電ボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムでは、太陽電池パネルまたはストリングからなる太陽電池設備を、集電ボックスを介してパワーコンディショナに接続している。特許文献1に示されるように、この集電ボックス内には、複数の太陽電池設備の各々に接続される複数の分岐開閉器と、その正極に接続される逆流防止ダイオードモジュールと、逆流防止ダイオードモジュールを介して接続される正極バーと、分岐開閉器の他極が接続される負極バーと、これらの正極バーと負極バーとに接続される集電開閉器が収納されている。
【0003】
従来の集電ボックスの逆流防止ダイオードモジュールは、分岐開閉器の正極端子部に接続される電線を複数接続できる接続端子を筐体内部に左右方向に並べて形成されていた。このように接続端子が横方向であるため、複数の逆流防止ダイオードモジュールを横並びに設置すると、集電ボックスの筐体が左右方向に大きくなってしまうという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、逆流防止ダイオードモジュールを上下方向に配置することも考えられるが、逆流防止ダイオードモジュールから発生した熱は上方に移動するため、真上に他の逆流防止ダイオードモジュールを配置すると伝熱する恐れがある。このため特許文献1においても千鳥配列が採用されているが、この場合には筐体を幅方向のみならず、上下方向にも大きくしなければならなかった。
【0005】
また、逆流防止ダイオードモジュールを千鳥配列すると、分岐開閉器と逆流防止ダイオードモジュールとの距離が異なるためにリードバーではなく電線を利用する構造となり、配線の作業性が低下し、組立工数が増加するという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-149766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、筐体の小型化を可能とし、配線作業も行い易い太陽光発電システム用の集電ボックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、機器取付板上に、複数の太陽電池モジュールの電路を開閉する複数の分岐開閉器と、分岐開閉器の端子部の配線及び正極バーへの配線が接続される複数の接続端子を有する逆流防止ダイオードモジュールを複数備えた太陽光発電システム用の集電ボックスにおいて、逆流防止ダイオードモジュールが2つの分岐開閉器毎に配置され、各逆流防止ダイオードモジュールの複数の接続端子を筐体の上下方向に配置し、一方の分岐開閉器からの配線を筐体の上下方向から接続端子に接続し、他方の分岐開閉器からの配線を筐体の上下方向とは異なる角度から接続したことを特徴とするものである。なお請求項2のように、逆流防止ダイオードモジュールの複数の接続端子の中央線と、一方の分岐開閉器の端子部の中央線とを同一直線上に配置した構造とすることができる。
【0009】
また上記の課題を解決するためになされた請求項3の発明は、機器取付板上に、複数の太陽電池モジュールの電路を開閉する複数の分岐開閉器と、分岐開閉器の端子部の配線及び正極バーへの配線が接続される複数の接続端子を有する逆流防止ダイオードモジュールを複数備えた太陽光発電システム用の集電ボックスにおいて、逆流防止ダイオードモジュールが2つの分岐開閉器毎に配置され、各逆流防止ダイオードモジュールの複数の接続端子を筐体の上下方向に配置し、各分岐開閉器からの配線を全て筐体の上下方向とは異なる角度から接続するとともに、逆流防止ダイオードモジュールの何れかの接続端子に対して配線が接続される方向が、同じ逆流防止ダイオードモジュールの他の何れかの接続端子に対して配線が接続される方向と、左右が逆になることを特徴とするものである。さらに請求項4のように、正極バーは筐体の上下方向とは異なる方向に延び、複数の逆流防止ダイオードモジュールの接続端子を渡すように接続する構造とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の太陽光発電システム用の集電ボックスは、逆流防止ダイオードモジュールの複数の接続端子を筐体の上下方向に配置したので、内部機器を密集させて配置することができ、筐体の小型化を図ることができる。しかもこれらの接続端子に対して、分岐開閉器からの配線を筐体の上下方向とは異なる角度から接続するようにしたので、配線作業が行い易い。
【0011】
また、逆流防止ダイオードモジュールを2つの分岐開閉器毎に配置するようにしたので、等間隔に配置することとなり、リードバーを利用する場合にもその種類を2種類とすることができる。さらに請求項4の構成を採用すれば、正極バーが複数の逆流防止ダイオードモジュールの接続端子を渡すように接続することができるので、配線数の削減を図ることができるとともに、筐体も小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】集電ボックスの外観斜視図である。
【図2】カバーを取り外して示す内部機器の正面図である。
【図3】要部の拡大正面図である。
【図4】逆流防止ダイオードモジュールの斜視図である。
【図5】内部構造の拡大斜視図である。
【図6】内部構造の側面図である。
【図7】正極リードバーの斜視図である。
【図8】他の実施形態を示す斜視図である。
【図9】他の実施形態を示す斜視図である。
【図10】更に他の実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は太陽光発電システム用の集電ボックスの外観斜視図であり、1は集電ボックスの筐体、2は扉、3は多数の分岐開閉器である。図1では筐体の内部機器はカバー4に覆われているため、分岐開閉器3のハンドル部分のみがカバー4の窓孔から露出している。
【0014】
図2はカバー4を取り外し、筐体1から内部機器を取り外した状態を示した正面図である。5は筐体1の内部に垂直配置される鉄ベースの機器取付板であり、図示のように多数の分岐開閉器3が機器取付板5上に横方向に密着配置されている。これらの分岐開閉器3は、図示しない太陽電池モジュール毎に形成されている。太陽電池モジュールは太陽電池のストリング(太陽電池セルを直列接続したもの)や、太陽電池パネルの単体である。分岐開閉器3の下側の端子に各太陽電池モジュールの配線が接続される。これらの分岐開閉器3は複数の太陽電池モジュールの電路を開閉する役割を持つ。
【0015】
分岐開閉器3の上方位置には、横方向(左右方向)に正極バー6と負極バー7とが設けられている。これらはバーホルダ8等によって絶縁距離を持たせて、機器取付板5上に固定されている。太陽電池モジュールが発生した電流は最終的にこれらの正極バー6と負極バー7に集められ、図2の右端に示される集電ケーブル25を通じて図示しない集電開閉器に供給される。本実施形態においては、集電開閉器は筐体1外に形成するものであるが、集電ケーブル25の代わりに集電開閉器を筐体内に形成するものであっても良い。しかし太陽電池モジュールの起電力は日照状態に応じて大幅に変動するため、起電力が低下したときに系統からの逆潮流が発生するおそれがある。そこで分岐開閉器3と正極バー6との間には、逆流防止ダイオードモジュール9が配置されている。
【0016】
図4に示すように、逆流防止ダイオードモジュール9は端子台のような構造を有し、その内部に逆流防止用のダイオードを収納したものである。逆流防止ダイオードモジュール9は2つの分岐開閉器3毎に1個が配置され、同一高さ位置に等間隔に配置されている。このため隣接する逆流防止ダイオードモジュール9、9間には空隙部19が形成されている。逆流防止ダイオードモジュール9は発熱量が大きいので、この空隙部19により隣接する逆流防止ダイオードモジュール9の空間を介しての伝熱を防止可能としている。なお特許文献1のような千鳥配列を採用していないため、分岐開閉器3と逆流防止ダイオードモジュール9が全て同じ所定間隔で形成しているため、後述するリードバーの種類を減少させることができる。
【0017】
この実施形態では、各逆流防止ダイオードモジュール9の上面に3つの接続端子10,11,12が設けられており、これらの接続端子10,11,12は筐体の上下方向に配置されている。上段の接続端子10は正極バー6用の接続端子であり、配線として正極バー6が直接接続される。接続端子10は後述する接続端子11、12の出力端子となる。なお、配線として電線を接続端子10に接続することも可能であるが、正極バー6を直接配線として接続することにより、電線を省略して配線作業の効率化が可能となる。また配線スペースが不要であるため、筐体の上下方向のサイズを小型化することができる。図2に示すように、正極バー6は複数の逆流防止ダイオードモジュール間を渡り接続している。
【0018】
各逆流防止ダイオードモジュール9の中段と下段の接続端子11,12は、分岐開閉器3の上側の端子のうち、正極端子13が、正極リードバー14,15が接続される入力端子であり、内部に前述の逆流防止ダイオードが接続している。図3に示すように、片側(左側)の分岐開閉器3の正極端子13は正極リードバー14によって下段の接続端子12に接続されているが、反対側(右側)の分岐開閉器3の正極端子13は、形状の異なる正極リードバー15によって、筐体1の上下方向とは異なる角度から中段の接続端子11に接続されている。
【0019】
これらの正極リードバー14,15の形状は図5?図7に示される通りであり、ともに機器取付板5に向かう方向に途中部分が屈曲しているが、正極リードバー14は左右方向には屈曲していない。すなわち、正極リードバー14によって接続される下段の接続端子12の中央線と、片側(左側)の分岐開閉器3の正極端子13の中央線とはほぼ同一である。これに対して正極リードバー15は先端が左右方向に屈曲させてあり、左右方向から中段の接続端子11に接続される。この構造によって、図5に示すように密着配置された各分岐開閉器3の正極端子13を、各逆流防止ダイオードモジュール9の中段と下段の接続端子11,12に、正極リードバー14、15間に絶縁を確保できる空隙を持たせて接続することができる。
【0020】
一方、分岐開閉器3の上側の端子のうち負極端子16は逆流防止ダイオードモジュール9を経由せず、図5、図6に示される負極リードバー17によって前述の負極バー7に直接接続されている。負極リードバー17の接続端子18は正極リードバー14、15間に位置するようにし、容易にねじ止めができるようになっている。また図6に示すように機器取付板5からの高さを変え、正極リードバー14、15との間の絶縁距離を確保している。なお、分岐開閉器3は取付具18によって機器取付板5からの高さを確保している。
【0021】
前記したように、逆流防止ダイオードモジュール9は発熱量が大きいので、相互間に空隙部19を形成して配置されているが、図4に示すように空隙部19の機器取付板5にスリット20を形成しておくことが好ましい。逆流防止ダイオードモジュール9、9相互間の機器取付板5を通じての伝熱を防止するために、このスリット20は逆流防止ダイオードモジュール9の上下方向長さと同等あるいはそれ以上としておくことが好ましい。
【0022】
以上に説明した実施形態では、1枚の機器取付板5の上に分岐開閉器3や逆流防止ダイオードモジュール9を多数配置した。しかし図8、図9に示すように、ユニット化された機器取付板21を用い、取付レール22上に配置することもできる。この実施形態ではユニット化された機器取付板21の上に4つの分岐開閉器3と2つの逆流防止ダイオードモジュール9が搭載されている。隣接する機器取付板21、21間に空隙部19が形成されているが、同一の機器取付板21上に搭載された2つの逆流防止ダイオードモジュール9、9間には、スリット20は形成されていない。
【0023】
図8、図9の構造においては、同様の複数のユニットを筐体1左右方向に配置した際に、隣接するユニット間に空間部30が形成される幅で構成するものとしている。このような構成によって、所定の取付位置にユニットを設置することのみで、逆流防止ダイオードモジュール9間の伝熱を抑制するための空間部30を設けることが可能となる。なお、このようなユニットを取り付けた後に上記に示した直線状の正極リードバー14、先端が屈折させた正極リードバー15、負極リードバー17を取り付けるとともに、その他正極バー6、負極バー7を、複数のユニットを渡すように取り付けるものである。
【0024】
図10に示す他の実施形態では、分岐開閉器3の上側の正極端子13を逆流防止ダイオードモジュール9の中段と下段の接続端子11,12に接続するための正極リードバー23,24の先端が、左右逆方向に屈曲させてある。すなわち、逆流防止ダイオードモジュール9の中段の接続端子11に接続される右側の正極リードバー23は先端が左向きに屈曲され、下段の接続端子12に接続される右側の正極リードバー24は先端が右向きに屈曲されている。このため、各分岐開閉器3からの配線は全て筐体1の上下方向とは異なる角度から接続されることとなる。このような構造とすれば、逆流防止ダイオードモジュール9の左右方向の幅内に正極リードバー23,24を収めることが可能となる。また分岐開閉器3の負極端子16を負極リードバー17に接続する作業も容易となる。
【0025】
以上に説明したように、本発明の太陽光発電システム用の集電ボックスは、内部機器を密集させて配置することができ、筐体の小型化を図ることができるとともに、配線作業性に優れる利点がある。
【符号の説明】
【0026】
1 筐体
2 扉
3 分岐開閉器
4 カバー
5 機器取付板
6 正極バー
7 負極バー
8 バーホルダ
9 逆流防止ダイオードモジュール
10 上段の接続端子
11 中段の接続端子
12 下段の接続端子
13 正極端子
14 正極リードバー
15 正極リードバー
16 負極端子
17 負極リードバー
18 接続端子
19 空隙部
20 スリット
21 ユニット化された機器取付板
22 取付レール
23 正極リードバー
24 正極リードバー
25 集電ケーブル
30 空間部
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器取付板上に、複数の太陽電池モジュールの電路を開閉する複数の分岐開閉器と、分岐開閉器の端子部の配線及び正極バーへの配線が接続される複数の接続端子を有する逆流防止ダイオードモジュールを複数備えた太陽光発電システム用の集電ボックスにおいて、
逆流防止ダイオードモジュールが2つの分岐開閉器毎に配置され、各逆流防止ダイオードモジュールの複数の接続端子を筐体の上下方向に配置し、一方の分岐開閉器からの配線を筐体の上下方向から接続端子に接続し、他方の分岐開閉器からの配線を筐体の上下方向とは異なる角度から接続したことを特徴とする太陽光発電システム用の集電ボックス。
【請求項2】
逆流防止ダイオードモジュールの複数の接続端子の中央線と、一方の分岐開閉器の端子部の中央線とを同一直線上に配置したことを特徴とする請求項1記載の太陽光発電システム用の集電ボックス。
【請求項3】
機器取付板上に、複数の太陽電池モジュールの電路を開閉する複数の分岐開閉器と、分岐開閉器の端子部の配線及び正極バーへの配線が接続される複数の接続端子を有する逆流防止ダイオードモジュールを複数備えた太陽光発電システム用の集電ボックスにおいて、
逆流防止ダイオードモジュールが2つの分岐開閉器毎に配置され、各逆流防止ダイオードモジュールの複数の接続端子を筐体の上下方向に配置し、各分岐開閉器からの配線を全て筐体の上下方向とは異なる角度から接続するとともに、逆流防止ダイオードモジュールの何れかの接続端子に対して配線が接続される方向が、同じ逆流防止ダイオードモジュールの他の何れかの接続端子に対して配線が接続される方向と、左右が逆になることを特徴とする太陽光発電システム用の集電ボックス。
【請求項4】
正極バーは筐体の上下方向とは異なる方向に延び、複数の逆流防止ダイオードモジュールの接続端子を渡すように接続することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の太陽光発電システム用の集電ボックス。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-11-26 
出願番号 特願2014-203726(P2014-203726)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (H02B)
P 1 652・ 853- YAA (H02B)
P 1 652・ 113- YAA (H02B)
P 1 652・ 851- YAA (H02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 関 信之  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 尾崎 和寛
内田 博之
登録日 2018-09-28 
登録番号 特許第6406963号(P6406963)
権利者 日東工業株式会社
発明の名称 太陽光発電システム用の集電ボックス  
代理人 特許業務法人なじま特許事務所  
代理人 特許業務法人なじま特許事務所  

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