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審決分類 |
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08F 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 C08F 審判 一部申し立て 2項進歩性 C08F 審判 一部申し立て 発明同一 C08F |
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管理番号 | 1358634 |
異議申立番号 | 異議2019-700112 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-02-12 |
確定日 | 2019-12-05 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6373926号発明「ブロック共重合体及びパターン処理組成物ならびに方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6373926号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6373926号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨・審理範囲 1.本件特許の設定登録までの経緯 本件特許第6373926号に係る出願(特願2016-204739号、以下「本願」ということがある。)は、平成28年10月18日(パリ条約に基づく優先権主張:平成27年10月31日、米国(US))に出願人ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー及びダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの両者(以下「特許権者ら」ということがある。)により共同でされた特許出願であり、平成30年7月27日に特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、平成30年8月15日に特許掲載公報が発行されたものである。 2.本件特許異議の申立ての趣旨 本件特許につき、平成31年2月12日に特許異議申立人上道真理子(以下「申立人」ということがある。)により、「特許第6373926号の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された発明についての特許を取り消すべきである。」という趣旨の本件特許異議の申立てがされた。(以下、当該申立てを「申立て」ということがある。) 3.審理すべき範囲 上記2.の申立ての趣旨からみて、特許第6373926号の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された発明についての特許を審理の対象とすべきものであり、請求項6ないし10に記載された発明についての特許については特許異議の申立てがない請求項であって、本件の審理の対象外である。 4.以降の手続の経緯 以降の手続の経緯は以下のとおりである。 令和 元年 5月13日付け 取消理由通知 令和 元年 8月14日 意見書・訂正請求書 令和 元年 8月27日付け 通知書(申立人あて) 令和 元年 9月27日 意見書(申立人) 第2 取消理由の概要 1.申立人が主張する取消理由の概要 申立人が主張する取消理由はそれぞれ以下のとおりである。 申立人は、同人が提出した本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、下記甲第1号証を提示し、具体的な取消理由として、概略、以下の(1)ないし(3)が存するとしている。 (1)本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、いずれも、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではないから、本件の請求項1ないし5に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由1」という。) (2)本件特許の請求項2及び3に係る発明は、いずれも甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由2」という。) (3)本件特許の請求項1ないし5に関して、同各項の記載が不備であり、請求項1ないし5の各記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないから、請求項1ないし5に係る発明についての特許は、いずれも特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由3」という。) ・申立人提示の甲号証 甲第1号証:Polym.Chem.、2014年、第5巻、第4679?4692頁 (上記「甲第1号証」を、以下、「甲1」と略す。) なお、申立人は、令和元年9月27日付け意見書に添付して、以下の証拠も提示した。 甲第2号証:国際公開第2017/073287号 2.当審が通知した取消理由の概要 当審が通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 ●本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、いずれも、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではないから、本件特許の請求項1ないし5に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(取消理由1) ●本件特許の請求項1ないし5は、同各項に記載した事項で特定される特許を受けようとする発明が、本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明に記載したものではないのであって、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)の規定する要件を満たしていないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。(取消理由3) 第3 令和元年8月14日付け訂正請求について 上記令和元年8月14日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の適否につき検討する。 I.訂正内容 1.訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「水素受容体を含む単位を含む第2のブロックと、を含む、ブロック共重合体」と記載されているのを、「水素受容体を含む単位を含む第2のブロックと、を含み、 前記交互共重合体が、以下の一般式(I)の反復単位を含み、 【化1】 式中、R_(1)が独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、任意で置換されたC1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C1-10カルボキシル、任意で置換されたC6-14アリール、及び任意で置換されたC6-14アリールオキシから選択され、R_(2)が、水素、任意で置換されたC1-10アルキル、及び任意で置換されたC6-14アリールから選択され、Xが酸素または窒素原子であり、xが0?5の整数であり、yが0または1であるが、但し、Xが酸素原子であるとき、yが0であり、Xが窒素原子であるとき、yが1であることを条件とし、 R_(1)の前記置換されたC1-10アルキルの置換基が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、チオール、カルボキシル、カルボキシレート、エステル、アミド、ニトリル、スルフィド、ジスルフィド、ニトロ、C1-18アルキル、C1-18アルケニル、C1-18アルコキシル、C2-18アルケンオキシル、C4-18アリール、C6-18アリールオキシル、C7-18アルキルアリール、及びC7-18アルキルアリールオキシルからなる群から選択されることを条件とする、ブロック共重合体」に訂正する。 2.訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記水素受容体が、アミン、イミン、ジアジン、ジアゾール、及びこれらの組み合わせから選択される基である、ブロック共重合体」と記載されているのを、「前記水素受容体が、アミン、イミン、ジアジン、ジアゾール、及びこれらの組み合わせから選択される基であり、 前記交互共重合体が、以下の一般式(I)の反復単位を含み、 【化2】 式中、R_(1)が独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、任意で置換されたC1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C1-10カルボキシル、任意で置換されたC6-14アリール、及び任意で置換されたC6-14アリールオキシから選択され、R_(2)が、水素、任意で置換されたC1-10アルキル、及び任意で置換されたC6-14アリールから選択され、Xが酸素または窒素原子であり、xが0?5の整数であり、yが0または1であるが、但し、Xが酸素原子であるとき、yが0であり、Xが窒素原子であるとき、yが1であることを条件とし、 R_(1)の前記置換されたC1-10アルキルの置換基が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、チオール、カルボキシル、カルボキシレート、エステル、アミド、ニトリル、スルフィド、ジスルフィド、ニトロ、C1-18アルキル、C1-18アルケニル、C1-18アルコキシル、C2-18アルケンオキシル、C4-18アリール、C6-18アリールオキシル、C7-18アルキルアリール、及びC7-18アルキルアリールオキシルからなる群から選択されることを条件とする、ブロック共重合体」に訂正する。 3.訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「但し、Xが酸素原子であるとき、yが0であり、Xが窒素原子であるとき、yが1であることを条件とする、ブロック共重合体」と記載されているのを、「但し、Xが酸素原子であるとき、yが0であり、Xが窒素原子であるとき、yが1であることを条件とし、 前記第1のブロックが、ポリオキシエチレン基を有するメチル基で置換されたスチレン単位と、ポリカプロラクトン基を有するエチル基で窒素原子が置換されたマレイミド単位との交互共重合体ブロックではないことを条件とする、ブロック共重合体」に訂正する。 II.検討 なお、以下の検討において、本件訂正前の特許請求の範囲における請求項1ないし10を「旧請求項1」ないし「旧請求項10」、本件訂正後の特許請求の範囲における請求項1ないし10を「新請求項1」ないし「新請求項10」という。 1.訂正の目的要件について 上記訂正事項1及び2による各訂正の目的につき検討すると、訂正事項1及び2に係る各訂正では、旧請求項1又は2の「交互共重合体を含む第1のブロック」につき、旧請求項3に記載された事項のうち、置換基の種類につき更に限定された「交互共重合体が、以下の一般式(I)の反復単位を含」むことを加入することにより限定して、旧請求項1又は2に係る各範囲を減縮しているものと認められる。 してみると、旧請求項1又は2から新請求項1又は2にそれぞれ訂正することにより、請求項1又は2の特許請求の範囲が実質的に減縮されていることが明らかであるから、訂正事項1及び2に係る各訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 また、上記訂正事項3による訂正の目的につき検討すると、訂正事項3に係る訂正では、旧請求項3に記載された「交互共重合体」につき、特定の置換基を有するものでないこととする条件を付加し、実質的に特定の一部の態様を除外することにより、旧請求項3に係る範囲を減縮しているものと認められる。 してみると、旧請求項3から新請求項3に訂正することにより、請求項3の特許請求の範囲が実質的に減縮されていることが明らかであるから、訂正事項3に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 なお、旧請求項1ないし3を直接又は間接的に引用して記載されていた旧請求項4及び5についても、同様に各項に係る特許請求の範囲が減縮されて、新請求項1ないし3を直接又は間接的に引用して記載されている新請求項4及び5となっているものとも認められる。 したがって、上記訂正事項1ないし3に係る各訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的要件に適合するものである。 2.新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更について 上記1.に示したとおり、訂正事項1ないし3に係る各訂正により、新請求項1ないし3及び新請求項1ないし3に記載された事項を直接又は間接的に引用して記載されている新請求項4及び5の特許請求の範囲が、旧請求項1ないし3及び同各項を直接又は間接的に引用する旧請求項4及び5の特許請求の範囲に対して実質的に減縮されていることが明らかであるから、上記訂正事項1ないし3による各訂正は、新たな技術的事項を導入しないものであり、また、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではないことが明らかである。 してみると、上記訂正事項1ないし3による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。 3.独立特許要件について 本件の特許異議の申立ては、旧請求項1ないし5に記載された発明についての特許につき申立てがされており、旧請求項6ないし10に記載された発明についての特許については特許異議の申立てがないものであるところ、旧請求項6ないし10は、いずれも旧請求項1ないし5を引用するものではなく、旧請求項1ないし5が減縮されてもそれに伴い、旧請求項6ないし10が減縮されるものではないものであって、また、旧請求項6ないし10については直接訂正されておらず、新請求項6ないし10となっているから、独立特許要件につき検討すべき請求項は存しない。 III.訂正に係る検討のまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1ないし5について訂正を認める。 第4 訂正後の本件特許に係る請求項に記載された事項 本件訂正後の本件特許に係る請求項1ないし10には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 交互共重合体を含む第1のブロックであって、前記交互共重合体が電子受容体単量体と電子供与単量体との重合によって形成される第1のブロックと、 水素受容体を含む単位を含む第2のブロックと、を含み、 前記交互共重合体が、以下の一般式(I)の反復単位を含み、 【化1】 式中、R_(1)が独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、任意で置換されたC1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C1-10カルボキシル、任意で置換されたC6-14アリール、及び任意で置換されたC6-14アリールオキシから選択され、R_(2)が、水素、任意で置換されたC1-10アルキル、及び任意で置換されたC6-14アリールから選択され、Xが酸素または窒素原子であり、xが0?5の整数であり、yが0または1であるが、但し、Xが酸素原子であるとき、yが0であり、Xが窒素原子であるとき、yが1であることを条件とし、 R_(1)の前記置換されたC1-10アルキルの置換基が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、チオール、カルボキシル、カルボキシレート、エステル、アミド、ニトリル、スルフィド、ジスルフィド、ニトロ、C1-18アルキル、C1-18アルケニル、C1-18アルコキシル、C2-18アルケンオキシル、C4-18アリール、C6-18アリールオキシル、C7-18アルキルアリール、及びC7-18アルキルアリールオキシルからなる群から選択されることを条件とする、ブロック共重合体。 【請求項2】 交互共重合体を含む第1のブロックと、 水素受容体を含む単位を含む第2のブロックと、を含み、 前記水素受容体が、アミン、イミン、ジアジン、ジアゾール、及びこれらの組み合わせから選択される基であり、 前記交互共重合体が、以下の一般式(I)の反復単位を含み、 【化2】 式中、R_(1)が独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、任意で置換されたC1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C1-10カルボキシル、任意で置換されたC6-14アリール、及び任意で置換されたC6-14アリールオキシから選択され、R_(2)が水素、任意で置換されたC1-10アルキル、及び任意で置換されたC6-14アリールから選択され、Xが酸素または窒素原子であり、xが0?5の整数であり、yが0または1であるが、但し、Xが酸素原子であるとき、yが0であり、Xが窒素原子であるとき、yが1であることを条件とし、 R_(1)の前記置換されたC1-10アルキルの置換基が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、チオール、カルボキシル、カルボキシレート、エステル、アミド、ニトリル、スルフィド、ジスルフィド、ニトロ、C1-18アルキル、C1-18アルケニル、C1-18アルコキシル、C2-18アルケンオキシル、C4-18アリール、C6-18アリールオキシル、C7-18アルキルアリール、及びC7-18アルキルアリールオキシルからなる群から選択されることを条件とする、ブロック共重合体。 【請求項3】 交互共重合体を含む第1のブロックと、 水素受容体を含む単位を含む第2のブロックと、を含み、 前記交互共重合体が、以下の一般式(I)の反復単位を含み、 【化3】 式中、R_(1)が独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、任意で置換されたC1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C1-10カルボキシル、任意で置換されたC6-14アリール、及び任意で置換されたC6-14アリールオキシから選択され、R_(2)が水素、任意で置換されたC1-10アルキル、及び任意で置換されたC6-14アリールから選択され、Xが酸素または窒素原子であり、xが0?5の整数であり、yが0または1であるが、但し、Xが酸素原子であるとき、yが0であり、Xが窒素原子であるとき、yが1であることを条件とし、 前記第1のブロックが、ポリオキシエチレン基を有するメチル基で置換されたスチレン単位と、ポリカプロラクトン基を有するエチル基で窒素原子が置換されたマレイミド単位との交互共重合体ブロックではないことを条件とする、ブロック共重合体。 【請求項4】 Xが窒素原子である、請求項3に記載のブロック共重合体。 【請求項5】 前記水素受容体基が、アミン基である、請求項1?4のいずれかに記載のブロック共重合体。 【請求項6】 交互共重合体を含む第1のブロックと、 水素受容体を含む単位を含む第2のブロックとを含むブロック共重合体と、溶剤と、を含む、パターン処理組成物。 【請求項7】 前記溶剤が、有機溶剤である、請求項6に記載のパターン処理組成物。 【請求項8】 (a)基板の表面上にパターニングされた特徴を含む基板を提供することと、 (b)請求項6または7に記載のパターン処理組成物を、前記パターニングされた特徴に適用することと、 (c)前記パターニングされた特徴に結合した前記ブロック共重合体の部分を残して、残留するパターン処理組成物を前記基板から濯ぐことと、を含む、パターン処理方法。 【請求項9】 前記パターニングされた特徴が、フォトレジストパターンである、請求項8に記載のパターン処理方法。 【請求項10】 前記フォトレジストパターンが、ネガティブトーン現像プロセスによって形成される、請求項9に記載のパターン処理方法。」 (以下、訂正後の上記請求項1ないし10に係る各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明10」といい、併せて「本件発明」と総称することがある。) 第5 当審の判断 当審は、上記第2に示した申立人が主張する取消理由及び当審が通知した取消理由につきいずれも理由がないから、本件の請求項1ないし5に係る発明についての特許は、いずれも取り消すことはできないものである、と判断する。以下、検討・詳述する。 I.取消理由3について 事案に鑑み、上記取消理由3につきまず検討する。 1.前提 前提として、申立人が主張する取消理由3につき、申立書及び意見書(申立人)の記載に基づいて整理すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、請求項1ないし5に係る「ブロック共重合体」について、極めて限られたブロック共重合体(及び当該ブロック共重合体を含有するパターン処理組成物)に係る実施例(又は比較例)につき記載されているのみ(すなわち、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド又はN-t-ブチルマレイミドと4-t-ブチルスチレンとの交互共重合体ブロックとポリ(4-ビニルピリジン)ブロックとの3種のブロック共重合体のみ)であり、当該実施例に係る記載及び比較例との対比に基づいて、請求項1ないし5の各項に記載された事項を具備する発明であれば、本件発明に係る所期の解決すべき課題を解決できるであろうと当業者が認識し得るものでないから、請求項1ないし5に係る発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない、というものと認められる。 2.検討 (1)本件発明の解決課題 本件発明の解決しようとする課題は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の「本発明は、一般に電子装置の製造に関する。より具体的には、本発明は、ブロック共重合体と、ブロック共重合体を含有するパターン処理組成物と、該パターン処理組成物を使用するパターン処理方法とに関する。本発明は、微細パターンの形成のための縮小プロセスにおける半導体装置の製造において特定の用途を見出す。」(【0001】)及び「当該技術分野において、当該技術分野の現状に関連する1つ以上の問題に対処し、電子装置製作における微細パターンの形成を可能にする、改善されたパターン処理方法に対する継続する必要性が存在する。」(【0007】)との記載からみて、 「半導体装置などの電子装置の製造技術分野において、縮小プロセスによる微細パターンの形成を可能にする、ブロック共重合体、該ブロック共重合体を含有するパターン処理組成物及び該パターン処理組成物を使用するパターン処理方法」の提供にあるものと認める。 (2)本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載 本件特許明細書の発明の詳細な説明のうち、実施例に係る部分以外の部分(【0001】?【0075】)の記載を検討すると、本件発明(特に本件発明1ないし5)において「水素受容体を含む単位を含む第2のブロック」を有するブロック共重合体とすることに係るパターン処理組成物としての作用機序につき、「ブロック共重合体重合体の第2のブロックは、パターニングされたフォトレジスト特徴の表面との結合(例えば、水素結合またはイオン結合)を形成するための表面結合基としての機能を果たす水素受容体を含む単位を含む。・・水素受容体が結合を形成する、パターニングされた特徴表面上の特定の部位は、典型的にはレジストパターン表面上に存在するカルボン酸基及び/またはアルコール基であり、これらの基は、レジストパターニングプロセス中の脱保護反応の結果として存在し得る。この場合、水素受容体は、典型的には脱保護された酸基及び/またはアルコール基がレジストパターンの露光された表面にある状態で、イオン結合または水素結合を形成する。ブロック共重合体は、水素受容体基を通してパターニングされた特徴の表面に結合(グラフト)されて、パターニングされたレジスト特徴上に層を形成し得る。」(【0032】)と「第2のブロック」に係る作用機序は記載されているものの、「一般式(I)の反復単位を含」む「交互共重合体を含む第1のブロック」を有するブロック共重合体とすることに係るパターン処理組成物としての作用機序を当業者が理解できるような記載が存するものとは認められない。 しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明のうち、実施例(比較例)に係る部分(【0076】?【0096】)の記載を検討すると、限られたものではあるが3種の「一般式(I)の反復単位を含」む「交互共重合体を含む第1のブロック」と「水素受容体を含む単位を含む第2のブロック」を有するブロック共重合体(及び当該ブロック共重合体を含有するパターン処理組成物)に係る実施例につき記載されており(すなわち、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド又はN-t-ブチルマレイミドと4-t-ブチルスチレンとの交互共重合体ブロックとポリ(4-ビニルピリジン)ブロックとの3種のブロック共重合体のみ)、当該実施例に係る記載と「一般式(I)の反復単位を含」む「交互共重合体を」含まない「第1のブロック」を有するブロック共重合体に係る比較例との対比に基づいて、本件請求項1ないし5に係る「一般式(I)の反復単位を含」む「交互共重合体を含む第1のブロック」と「水素受容体を含む単位を含む第2のブロック」を有するブロック共重合体につき、電子装置の製造技術分野においてパターン処理組成物とした場合に、スカミングの発生が防止でき、縮小プロセスによる微細パターンの形成を可能にするという効果を奏することが看取できるものであり、さらに、本件請求項1ないし5に記載された事項を具備する「一般式(I)の反復単位を含」む「交互共重合体を含む第1のブロック」と「水素受容体を含む単位を含む第2のブロック」を有するブロック共重合体において、上記実施例のもの以外では、当該効果を奏さないであろうと当業者が認識できるような阻害要因が存するものとも認められないから、当該実施例(比較例)に係る部分の記載に基づき、本件請求項1ないし5に記載された事項を具備する場合であれば、電子装置の製造技術分野においてパターン処理組成物とした場合に縮小プロセスによる微細パターンの形成を可能にするという効果を奏するであろうと当業者が認識するものと解するのが自然である。 してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を総合すると、本件請求項1ないし5に係る「一般式(I)の反復単位を含」む「交互共重合体を含む第1のブロック」と「水素受容体を含む単位を含む第2のブロック」を有するブロック共重合体が、電子装置の製造技術分野における当該共重合体を含有するパターン処理組成物とした場合に縮小プロセスによる微細パターンの形成を可能にするという効果を奏するであろうと当業者が認識することができるように記載したものであるということができるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許の請求項1ないし5に記載された事項で特定される特許を受けようとする発明が記載されているものということができる。 (3)取消理由3についてのまとめ 以上のとおり、本件特許の請求項1ないし5は、同各項に記載した事項で特定される特許を受けようとする発明が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるから、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、同法同条同項(柱書)の規定する要件を満たしているものであるから、上記取消理由3は理由がない。 II.取消理由1及び2について 上記取消理由1及び2は、いずれも請求項1ないし5に係る発明が、特許法第29条に違反するというものであるから、申立人が提示した甲1に記載された事項を確認し、当該事項に基づき甲1に記載された発明を認定する。 1.甲1に記載された事項及び記載された発明 甲1には、 「 」 が記載され(第4681頁上段「Scheme1」)、「PDMA(PEG-alt-PCL)m」なる、ポリオキシエチレン基を有するメチル基で置換されたスチレン単位とポリカプロラクトン基を有するエチル基で窒素が置換されたマレイミド単位との交互共重合体ブロック及びポリ(2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックを有するブロック共重合体が記載されている。 してみると、上記甲1には、上記記載事項からみて、 「ポリオキシエチレン基を有するメチル基で置換されたスチレン単位とポリカプロラクトン基を有するエチル基で窒素原子が置換されたマレイミド単位との交互共重合体ブロック及びポリ(2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックを有するブロック共重合体。」 に係る発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものといえる。 2.検討 (1)本件発明1について ア.対比 本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「ポリオキシエチレン基を有するメチル基で置換されたスチレン」及び「ポリカプロラクトン基を有するエチル基で窒素が置換されたマレイミド」は、それぞれ、スチレンが電子供与性モノマーであること及びマレイミドがカルボキシ基を二重結合に隣接して有することにより電子受容性モノマーであることが当業者に周知である(必要ならば下記参考文献参照。)から、本件発明1における「電子供与単量体」及び「電子受容体単量体」にそれぞれ相当するとともに、引用発明における「ポリオキシエチレン基を有するメチル基で置換されたスチレン単位とポリカプロラクトン基を有するエチル基で窒素原子が置換されたマレイミド単位との交互共重合体ブロック」は、本件発明1における「交互共重合体を含む第1のブロックであって、前記交互共重合体が電子受容体単量体と電子供与単量体との重合によって形成される第1のブロック」との間で、主鎖骨格がスチレン系単位とマレイミド系単位との交互共重合体である点でのみ「交互共重合体が、以下の一般式(I)の反復単位を含み」に一致するものといえる。 また、引用発明における「ポリ(2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート)ブロック」は、当該「2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート」なる単位が、側鎖末端に「N,N-ジメチルアミノ」基という水素が結合してアンモニウム化(四級化)することにより水素を受容できる官能基を有することが当業者に自明であるから、本件発明1における「水素受容体を含む単位を含む第2のブロック」に相当する。 そして、引用発明における「交互共重合体ブロック及びポリ(2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックを有するブロック共重合体」が、本件発明1における「交互共重合体を含む・・第1のブロックと、・・第2のブロックと、を含む、ブロック共重合体」に相当することも明らかである。 してみると、本件発明1と引用発明とは、 「交互共重合体を含む第1のブロックであって、前記交互共重合体がマレイミド系の電子受容体単量体とスチレン系の電子供与単量体との交互共重合によって形成される第1のブロックと、 水素受容体を含む単位を含む第2のブロックと、を含む、ブロック共重合体。」 で一致し、以下の点で相違する。 相違点:本件発明1では、 「前記交互共重合体が、以下の一般式(I)の反復単位を含み、 【化1】(式自体は省略) 式中、R_(1)が独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、任意で置換されたC1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C1-10カルボキシル、任意で置換されたC6-14アリール、及び任意で置換されたC6-14アリールオキシから選択され、R_(2)が、水素、任意で置換されたC1-10アルキル、及び任意で置換されたC6-14アリールから選択され、Xが酸素または窒素原子であり、xが0?5の整数であり、yが0または1であるが、但し、Xが酸素原子であるとき、yが0であり、Xが窒素原子であるとき、yが1であることを条件とし、 R_(1)の前記置換されたC1-10アルキルの置換基が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、チオール、カルボキシル、カルボキシレート、エステル、アミド、ニトリル、スルフィド、ジスルフィド、ニトロ、C1-18アルキル、C1-18アルケニル、C1-18アルコキシル、C2-18アルケンオキシル、C4-18アリール、C6-18アリールオキシル、C7-18アルキルアリール、及びC7-18アルキルアリールオキシルからなる群から選択されることを条件とする」のに対して、引用発明では、ポリオキシエチレン基を有するメチル基で置換されたスチレン単位及びポリカプロラクトン基を有するエチル基で窒素が置換されたマレイミド単位である点 参考資料:高分子学会高分子辞典編集委員会編「新版高分子辞典」、1995年9月20日(第4刷)、株式会社朝倉書店発行、第140頁(「交互共重合」の欄) イ.検討 上記相違点につき検討すると、引用発明は、甲1の表題(第4679頁)に見られるとおり、「交互のPEG及びPCLグラフトを・・持つヘテログラフト化歯ブラシ様共重合体」に係るものであり、「PEG」、すなわちポリエチレングリコールグラフトと「PCL」、すなわちポリカプロラクトングラフトという2種のグラフトポリマー鎖を側鎖に有するものを指向するのに対して、本件発明1のブロック共重合体において、側鎖部にポリマー鎖をR_(1)又はR_(2)として有するものを指向するものでないことが明らかであって、側鎖部といえども、その化学構造の点で明らかに相違するものといえる。 してみると、上記相違点は、実質的な相違点である。 また、甲1の記載を検討しても、引用発明のブロック共重合体につきPEG及びPCLグラフトを有さないものとすべき動機となる事項が存するものでもなく、上記のとおり、引用発明は、PEG及びPCLグラフトを側鎖に有するものを指向するのであるから、当該側鎖部を、本件発明1のR_(1)又はR_(2)とされている置換基に変更することは、阻害要因が存するものとさえ認められる。 してみると、上記相違点は、引用発明に基づいて、当業者が適宜なし得ることということもできない。 ウ.小括 したがって、本件発明1は、引用発明、すなわち甲1に記載された発明であるということはできず、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 (2)本件発明2ないし5について 本件発明2ないし5について検討すると、本件発明2は、上記(1)ア.で示した相違点に係る事項を発明特定事項とすることが明らかであり、本件発明3は、「第1のブロックが、ポリオキシエチレン基を有するメチル基で置換されたスチレン単位と、ポリカプロラクトン基を有するエチル基で窒素原子が置換されたマレイミド単位との交互共重合体ブロックではないことを条件とする」ものであり、本件発明4及び5は、少なくとも本件発明3を引用しているものであるから、本件発明2ないし5は、いずれも上記(1)で説示した理由と同一の理由により、甲1に記載された発明であるということはできず、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 (3)取消理由1及び2に係るまとめ 以上のとおりであるから、本件発明1ないし5につき、取消理由1及び2は、いずれも理由がない。 III.他の取消理由について なお、申立人は、令和元年9月27日付け意見書において、「(2)意見2」、「(3)意見3」及び「(4)意見4」として、「明確性要件」違反、「サポート要件」違反及び「拡大先願」違反の各取消理由につき新たに主張しているので、念のため一応検討する。 1.「(3)意見3」について 事案に鑑み、まず、上記「(3)意見3」の「サポート要件」違反につき検討すると、申立人が主張する「サポート要件」違反の理由は、意見書の記載に基づき要約すると、本件発明の解決課題に則した効果を得る点につき、本件特許明細書の発明の詳細な説明(【0035】)において、重合体主鎖の結合回転に係る低い自由度により(重合体分子の)硬性が比較的高いことにより、パターン処理における重合体の除去性が大きくなることが説明されていることに対して、本件の請求項1ないし5では、重合体主鎖の結合回転の自由度を低下させる交互共重合体ブロックに係る置換基及び水素受容体を含む単位につき規定されていないから、本件の請求項1ないし5に記載された事項で特定される発明が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない、というものと認められる。 しかるに、本件の請求項1ないし5に記載された発明に係るブロック共重合体は、スチレン系単位とマレイン酸無水物又はマレイミドの単位とが交互共重合しているブロックを有するものであり、スチレン系単位の嵩高いフェニル基が結合する炭素とマレイン酸無水物又はマレイミドの単位という比較的嵩高い部分とが隣接して結合している主鎖構造を有するものであるから、立体障害的にスチレン系単位とマレイン酸無水物又はマレイミドの単位との結合部につき回転の自由度が低下しているものと当業者は理解することができるものであって、当該交互共重合体ブロックが存在することにより、ブロック共重合体の分子としても、重合体主鎖の結合回転の自由度が少なくとも低下しているものと理解することができる。 そして、本発明のパターン処理組成物における好ましい組成物は、実質的または完全にスカムを含まないパターンを提供し得るものであるとする(本件特許明細書【0040】)ところ、本件発明に係る一般式(I)で表される交互共重合体ブロックを有するブロック共重合体を含有する組成物についての実施例7ないし9では、その効果(スカムの有無)につき具体的な結果が提示されているものといえる(【表3】)。 してみると、訂正後の本件の請求項1ないし5につき、一般式(I)で表される交互共重合体ブロックを有するブロック共重合体であれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載に照らして、本件発明の解決課題に則した効果を得ることができるであろうと認識することができるものと認められるから、申立人が主張する上記「(3)意見3」の「サポート要件」違反に係る理由については、採用することができない。 2.「(2)意見2」について 上記「(2)意見2」の「明確性要件」違反につき検討すると、申立人が主張する「明確性要件」違反の理由は、要約すると、「x=0」、すなわち「R_(1)」基がない態様が含まれるから、本件の請求項1ないし3の記載では発明が明確でない、というものと解されるが、「x=0」、すなわち「R_(1)」基がないということは、一般式(I)におけるスチレン系単位に、無置換のスチレン単位が包含されることを意味することが明らかであり、当該態様が含まれることにより、各請求項に係る発明が不明確になるということはない。 してみると、申立人が主張する上記「(2)意見2」の「明確性要件」違反に係る理由については、採用することができない。 3.「(4)意見4」について 上記「(4)意見4」の「拡大先願」違反につき検討する。 申立人が提示した甲第2号証(国際公開第2017/073287号)に係る国際出願(PCT/JP2016/079852)の優先権主張の基礎となる特願2015-210708号(本願の優先権主張の基礎となる出願の日前の2015年10月27日を出願日とする。)の出願の願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲(以下「先願明細書」という。)には、概して、 「スチレン類及びマレイミド化合物に由来する構造単位を含む重合体ブロック(A)、並びに、アミン基を有してもよいアクリル系重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体であって、前記重合体ブロック(A)は、該重合体ブロック(A)の全構造単位に対してマレイミド化合物に由来する構造単位を30質量%以上99質量%以下有し、且つ、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上の重合体であり、前記アクリル系重合体ブロック(B)は、溶解パラメータ(SP値)が9.9以上、且つ、Tgが20℃以下の重合体である、ブロック共重合体。」(以下「先願発明」という。) が記載されているところ、本件発明1と先願発明とは、少なくとも以下の点で相違するものと認められる。 ●相違点:本件発明1では、「交互共重合体を含む第1のブロックであって」、「前記交互共重合体が、以下の一般式(I)の反復単位を含」むのに対して、先願発明では「スチレン類及びマレイミド化合物に由来する構造単位を含む重合体ブロック(A)」が、「一般式(I)の反復単位を含」む「交互共重合体を含む」ことにつき特定されていない点 しかるに、先願明細書の記載を検討しても、上記「重合体ブロック(A)」が交互共重合体となっているであろうと当業者が認識できるような具体的記載はなく、実施例に係る記載を特に検討しても、スチレン類とマレイミド化合物とを略等モルで重合する場合などの当業者に交互共重合体となることを想起させる実施例もない。(それに対して、本件発明に係る実施例における「プレ重合体」の製造においては、全て略等モル量で重合を行って、「スチレン-alt-マレイミド」重合体を製造している。) してみると、上記相違点は実質的な相違点であり、本件発明1に係るブロック共重合体と先願発明に係るブロック共重合体とが同一であるということはできない。 したがって、申立人が主張する上記「(4)意見4」の「拡大先願」違反に係る理由については、採用することができない。 4.小括 以上のとおり、申立人が令和元年9月27日付け意見書において、新たに主張している各取消理由については、いずれも採用することができない。 IV.当審の判断のまとめ 以上のとおりであるから、申立人が主張する取消理由及び当審が通知した取消理由は、いずれも理由がない。 そして、そのほかに、本件の請求項1ないし5に係る発明についての特許を、取り消すべき理由も発見しない。 第6 むすび 以上のとおり、本件特許に対する令和元年8月14日付け訂正請求に係る訂正は、適法であるからこれを認めるとともに、訂正後の請求項1ないし5に係る発明についての特許は、いずれも取り消すべき理由がなく、維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 交互共重合体を含む第1のブロックであって、前記交互共重合体が電子受容体単量体と電子供与単量体との重合によって形成される第1のブロックと、 水素受容体を含む単位を含む第2のブロックと、を含み、 前記交互共重合体が、以下の一般式(I)の反復単位を含み、 【化1】 式中、R_(1)が独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、任意で置換されたC1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C1-10カルボキシル、任意で置換されたC6-14アリール、及び任意で置換されたC6-14アリールオキシから選択され、R_(2)が、水素、任意で置換されたC1-10アルキル、及び任意で置換されたC6-14アリールから選択され、Xが酸素または窒素原子であり、xが0?5の整数であり、yが0または1であるが、但し、Xが酸素原子であるとき、yが0であり、Xが窒素原子であるとき、yが1であることを条件とし、 R_(1)の前記置換されたC1-10アルキルの置換基が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、チオール、カルボキシル、カルボキシレート、エステル、アミド、ニトリル、スルフィド、ジスルフィド、ニトロ、C1-18アルキル、C1-18アルケニル、C1-18アルコキシル、C2-18アルケンオキシル、C4-18アリール、C6-18アリールオキシル、C7-18アルキルアリール、及びC7-18アルキルアリールオキシルからなる群から選択されることを条件とする、ブロック共重合体。 【請求項2】 交互共重合体を含む第1のブロックと、 水素受容体を含む単位を含む第2のブロックと、を含み、 前記水素受容体が、アミン、イミン、ジアジン、ジアゾール、及びこれらの組み合わせから選択される基であり、 前記交互共重合体が、以下の一般式(I)の反復単位を含み、 【化2】 式中、R_(1)が独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、任意で置換されたC1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C1-10カルボキシル、任意で置換されたC6-14アリール、及び任意で置換されたC6-14アリールオキシから選択され、R_(2)が、水素、任意で置換されたC1-10アルキル、及び任意で置換されたC6-14アリールから選択され、Xが酸素または窒素原子であり、xが0?5の整数であり、yが0または1であるが、但し、Xが酸素原子であるとき、yが0であり、Xが窒素原子であるとき、yが1であることを条件とし、 R_(1)の前記置換されたC1-10アルキルの置換基が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、チオール、カルボキシル、カルボキシレート、エステル、アミド、ニトリル、スルフィド、ジスルフィド、ニトロ、C1-18アルキル、C1-18アルケニル、C1-18アルコキシル、C2-18アルケンオキシル、C4-18アリール、C6-18アリールオキシル、C7-18アルキルアリール、及びC7-18アルキルアリールオキシルからなる群から選択されることを条件とする、ブロック共重合体。 【請求項3】 交互共重合体を含む第1のブロックと、 水素受容体を含む単位を含む第2のブロックと、を含み、 前記交互共重合体が、以下の一般式(I)の反復単位を含み、 【化3】 式中、R_(1)が独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、任意で置換されたC1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C1-10カルボキシル、任意で置換されたC6-14アリール、及び任意で置換されたC6-14アリールオキシから選択され、R_(2)が、水素、任意で置換されたC1-10アルキル、及び任意で置換されたC6-14アリールから選択され、Xが酸素または窒素原子であり、xが0?5の整数であり、yが0または1であるが、但し、Xが酸素原子であるとき、yが0であり、Xが窒素原子であるとき、yが1であることを条件とし、 前記第1のブロックが、ポリオキシエチレン基を有するメチル基で置換されたスチレン単位と、ポリカプロラクトン基を有するエチル基で窒素原子が置換されたマレイミド単位との交互共重合体ブロックではないことを条件とする、ブロック共重合体。 【請求項4】 Xが窒素原子である、請求項3に記載のブロック共重合体。 【請求項5】 前記水素受容体基が、アミン基である、請求項1?4のいずれかに記載のブロック共重合体。 【請求項6】 交互共重合体を含む第1のブロックと、 水素受容体を含む単位を含む第2のブロックとを含むブロック共重合体と、溶剤と、を含む、パターン処理組成物。 【請求項7】 前記溶剤が、有機溶剤である、請求項6に記載のパターン処理組成物。 【請求項8】 (a)基板の表面上にパターニングされた特徴を含む基板を提供することと、 (b)請求項6または7に記載のパターン処理組成物を、前記パターニングされた特徴に適用することと、 (c)前記パターニングされた特徴に結合した前記ブロック共重合体の部分を残して、残留するパターン処理組成物を前記基板から濯ぐことと、を含む、パターン処理方法。 【請求項9】 前記パターニングされた特徴が、フォトレジストパターンである、請求項8に記載のパターン処理方法。 【請求項10】 前記フォトレジストパターンが、ネガティブトーン現像プロセスによって形成される、請求項9に記載のパターン処理方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-11-26 |
出願番号 | 特願2016-204739(P2016-204739) |
審決分類 |
P
1
652・
121-
YAA
(C08F)
P 1 652・ 161- YAA (C08F) P 1 652・ 537- YAA (C08F) P 1 652・ 113- YAA (C08F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 大久保 智之 |
特許庁審判長 |
大熊 幸治 |
特許庁審判官 |
橋本 栄和 佐藤 健史 |
登録日 | 2018-07-27 |
登録番号 | 特許第6373926号(P6373926) |
権利者 | ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー |
発明の名称 | ブロック共重合体及びパターン処理組成物ならびに方法 |
代理人 | 特許業務法人センダ国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人センダ国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人センダ国際特許事務所 |