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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1358674
異議申立番号 異議2019-700776  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-30 
確定日 2020-01-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第6495360号発明「エラストマーと有機カルボン酸無水物で官能基化された非エラストマー性ポリオレフィンとからなる熱可塑性エラストマー組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6495360号の請求項1?13に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6495360号の請求項1?13に係る特許についての出願は、平成29年3月2日(優先権主張 平成28年3月3日、ドイツ)に出願され、平成31年3月15日にその特許権の設定登録がされ、同年4月3日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和1年9月30日に、本件特許の請求項1?13に係る特許に対して、特許異議申立人である山川隆久(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明
本件特許の請求項1?13に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。

「【請求項1】 エラストマーと熱可塑性物質とを含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、前記熱可塑性物質が、有機カルボン酸無水物で官能基化された非エラストマー性ポリオレフィンであり、前記エラストマーが、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブロモブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エポキシ化天然ゴム、および前記エラストマーの2つ以上の混合物からなるエラストマー群から選択されるエラストマーを含み、前記エラストマーが軟化されて架橋剤と混合され、その後前記熱可塑性物質と混合され、当該熱可塑性物質との混合中または混合後に架橋されて熱可塑性エラストマーが製造される熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】 前記エラストマーが、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ニトリルブタジエンゴム、および前記エラストマーの混合物からなるエラストマー群から選択されるエラストマーを含む請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】 有機カルボン酸が有機ジカルボン酸である、請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】 前記エラストマーの、前記熱可塑性物質に対する重量比が、100:15?100:60の範囲にある、請求項1?3のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】 さらに、ポリオレフィンブロックコポリマーベースの熱可塑性エラストマー(TPO)を有し、そのTPOが有機カルボン酸の無水物で官能基化されていることが可能である、請求項1?4のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】 請求項1?5のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物を製造するための、前記エラストマーとエラストマー用架橋剤とからなる混合物の使用であって、そのエラストマーが、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブロモブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エポキシ化天然ゴム、および前記エラストマーの2つ以上の混合物からなるエラストマー群から選択されるエラストマーを含む使用。
【請求項7】 請求項1?5のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物を製造するための、有機カルボン酸無水物で官能基化された非エラストマー性ポリオレフィンの使用。
【請求項8】 ポリアミドを含む複合材料を製造するための、請求項1?5のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物の使用。
【請求項9】 請求項1?5のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物とポリアミドとを含む製品。
【請求項10】 自動車内部、自動車のボンネットの下(「under the hood」)、車両のエンジン室内の部品または成形体を製造するため、産業機器、産業工具、浴室装備品、家庭用機器、娯楽用電子機器、スポーツ用品、医療用の消耗品又は機器、衛生用品又は化粧品用の容器、又は一般パッキン材料を製造するための、請求項1?5のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物の使用。
【請求項11】 請求項1?5のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、前記エラストマーが軟化されて前記架橋剤と混合され、その後前記熱可塑性物質と混合され、当該熱可塑性物質との混合中または混合後に架橋され、前記熱可塑性物質が、有機カルボン酸無水物で官能基化された非エラストマー性ポリオレフィンであり、前記エラストマーが、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブロモブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エポキシ化天然ゴム、および前記エラストマーの2つ以上の混合物からなるエラストマー群から選択されるエラストマーを含む方法。
【請求項12】 前記エラストマーを熱可塑性物質と共に押出機、密閉式混合機、または混練機中で混合(素練り)する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】 前記エラストマーが前記架橋剤と混合される工程が、50℃?120℃の温度範囲で行われる、請求項11または12に記載の方法。」

第3 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由
本件発明1?13は、下記1?4のとおりの取消理由があるから、本件特許の請求項1?13に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。証拠方法として、下記5の甲第1号証?甲第8号証(以下、「甲1」等という。)を提出する。

1.申立理由1-1(新規性):本件特許の請求項1?4、6、7、10?13に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.申立理由1-2(新規性):本件特許の請求項1?3、7?10に係る発明は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
3.申立理由2-1(進歩性):本件特許の請求項1?13に係る発明は、甲1に記載された発明、並びに甲1、甲3及び甲6に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができない。
4.申立理由2-2(進歩性):本件特許の請求項1?13に係る発明は、甲2に記載された発明、並びに甲2、甲3?5、甲7及び8に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
5.証拠方法
甲1 中国特許公開第101948599号明細書及びその訳文
甲2 特開平10-132154号公報
甲3 特表2007-529616号公報
甲4 特開平11-255965号公報
甲5 特表2002-533510号公報
甲6 特開2000-143896号公報
甲7 特開2000-26720号公報
甲8 飛田雅之、「最近の熱可塑性エラストマー/動的加硫について」、日本ゴム協会誌、第64巻、第6号、1991年、p.346?359

第4 当審の判断
以下に述べるように、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1?13に係る特許を取り消すことはできない。

1 甲1を主引用文献とする申立理由1-1(新規性)及び申立理由2-1(進歩性)について
(1)甲号証に記載された事項
ア 甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
甲1には、次の事項が記載されている(甲1は簡体字で記載されており、これを正確に表記できないので、図表を除き、合議体による和訳で示す。)。
(ア)「1.熱可塑性エラストマーの調製方法であって、いずれも質量部で、50?90部のエチレン酢酸ビニルゴムと、0?30部の不飽和カルボン酸塩と、1?5部の過酸化物とを20?30℃の条件下で、ダブルロールミルにより均一に混合してエチレン酢酸ビニルゴムのマスターバッチを得、10?50部のホモポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレンと、10?50部の無水マレイン酸グラフトポリプロピレンとを混合し、ミキサーに加え、180?200℃、40?60rpmの条件下で1?2分可塑化し、さらに40?80部のエチレン酢酸ビニルゴムのマスターバッチを添加し、180?200℃、40?60rpmの条件下で5?10分間の動的架橋を行い、熱可塑性エラストマーを得ることを特徴とする、熱可塑性エラストマーの調製方法。
・・・
5.請求項1に記載の熱可塑性エラストマーの調製方法であって、用いる無水マレイン酸グラフトポリプロピレンのグラフト率は、1%?5%であることを特徴とする、熱可塑性エラストマーの調製方法。
6.請求項1に記載の熱可塑性エラストマーの調製方法であって、過酸化物は、ジクミルペルオキシドまたは2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキサンであることを特徴とする、熱可塑性エラストマーの調製方法。」(特許請求の範囲の請求項1、5及び6)

(イ)「[0002] 熱可塑性エラストマーとは、常温でゴム弾性を示し、高温下で熱可塑性樹脂の繰り返し加工性を有し、一般的な熱可塑性加工設備での加工成形に使用できる材料の一種を指す。熱可塑性エラストマーは、加工が簡単、コストが低く、連続生産が可能であり、端材がリサイクル可能等の特徴があり、自動車、電気、電子、産業用部品、および日用品等の分野で広く使用されている。」

(ウ)「[0019] 以下の実施例で使用される材料は次のとおりである。
[0020] エチレン酢酸ビニルゴム(EVM):ランクセス社Levapren 600HV、酢酸ビニル含有量は60wt%、ムーニー粘度ML(1+4)100℃=27+4。
[0021] ホモポリマーポリプロピレン:Maoming Petrochemical(茂名石化)T30S、メルトフローインデックスは、230℃、2.16kgの条件下で3.00±1.00g/10分。
[0022] 共重合ポリプロピレン:SKグループ R140M、メルトフローインデックスは、230℃、2.16kgの条件下で6.00g/10分であり、共重合された第2のモノマーはエチレンである。
[0023] 無水マレイン酸グラフトポリプロピレン:日之升CMG5001、グラフト率は1%、メルトフローインデックスは230℃および2.16kgで90g/10分以上である。
[0024] 実施例1?5
[0025] エチレン酢酸ビニルゴムと、アクリル酸亜鉛とジクミルペルオキシドとを表の配合に従って、20?30℃の条件下でダブルロールミルにより均一に混合してエチレン酢酸ビニルゴムのマスターバッチを得た。表1の配合に従って、一定量のホモポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレンと、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンとを混合した後、ミキサーに加え、180℃、60rpmの条件下で1?2分可塑化し、さらにエチレン酢酸ビニルゴムのマスターバッチを添加し、180℃、60rpmの条件下で5?10分間の動的架橋を行い、熱可塑性エラストマーを得た。ASTM D412に準拠して材料の力学的性能を測定し、具体的なデータを表2に示す。
[0026]
表1の配合(質量部)
[0027]

[0028] 表2 サンプルの厚さ1.0mm、引張速度100mm/min時の力学的性能の結果
[0029]

[0030] 表2から、エチレン酢酸ビニルゴム/ホモポリプロピレンの比が70/30で、ジクミルペルオキシドの使用量が1.5部の場合、材料の引張強度と破断伸び率はそれぞれ4.6MPaと63%であった。無水マレイン酸グラフトポリプロピレンを添加して相溶化した後、材料の引張強度は4.6MPaから8.4MPaにまで向上し、破断伸び率は5倍に向上した。ホモポリプロピレンに代わり共重合ポリプロピレンを使用した後の材料の性能は、さらに向上した。これは、第2のモノマーを追加したことによりポリプロピレン分子鎖の構造が破壊され、ポリプロピレンの結晶性が低下したことで、エチレン酢酸ビニルゴムとの相溶性が向上し、最終的に材料の力学的性能が向上したためである。実施例2を基に、8部のアクリル酸亜鉛を添加した後、材料の引張強度は13.3MPaにまで向上し、破断伸び率も100%向上した。」

上記(ウ)の実施例2、3及び5に着目すると、甲1には、以下の発明が記載されている。
「ホモポリプロピレン(茂名石化、T30S)15質量部と無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(日之升社、CMG5001)15質量部とを混合してミキサーに加え、180℃、60rpmの条件下で1?2分間可塑化し、これに、エチレン酢酸ビニルゴム(ランクセス社、Levapren 600HV)70質量部とジクミルペルオキシド1.5質量部とを、20?30℃の条件下でダブルロールミルにより均一に混合して得られたエチレン酢酸ビニルゴムのマスターバッチを添加し、180℃、60rpmの条件下で5?10分間の動的架橋を行って得られた熱可塑性エラストマー」(以下、「甲1発明1」という。)

「ホモポリプロピレン(茂名石化、T30S)15質量部と、アクリル酸亜鉛8質量部と、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(日之升社、CMG5001)15質量部とを混合してミキサーに加え、180℃、60rpmの条件下で1?2分間可塑化し、これに、エチレン酢酸ビニルゴム(ランクセス社、Levapren 600HV)70質量部とジクミルペルオキシド1.5質量部とを、20?30℃の条件下でダブルロールミルにより均一に混合して得られたエチレン酢酸ビニルゴムのマスターバッチを添加し、180℃、60rpmの条件下で5?10分間の動的架橋を行って得られた熱可塑性エラストマー」(以下、「甲1発明2」という。)

「共重合ポリプロピレン(SKグループ、R140M)15質量部と無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(日之升社、CMG5001)15質量部とを混合してミキサーに加え、180℃、60rpmの条件下で1?2分間可塑化し、これに、エチレン酢酸ビニルゴム(ランクセス社、Levapren 600HV)70質量部とジクミルペルオキシド1.5質量部とを、20?30℃の条件下でダブルロールミルにより均一に混合して得られたエチレン酢酸ビニルゴムのマスターバッチを添加し、180℃、60rpmの条件下で5?10分間の動的架橋を行って得られた熱可塑性エラストマー」(以下、「甲1発明3」という。)

イ 甲3に記載された事項
(ア)「【0155】 前述したように、マルチブロックコポリマーの官能化誘導体も本発明に含まれる。例としては、金属化ポリマー(この金属は、使用した触媒又は鎖シャトリング剤の残留物である)、ならびにそれらのさらなる誘導体が挙げられ、例えば、金属化ポリマーと酸素源との反応生成物が、次に水と反応してヒドロキシル末端ポリマーが形成される。別の実施形態においては、十分な空気又は他のクエンチ剤を加えることで、シャトリング剤-ポリマー結合の一部又はすべてが開裂し、それによってポリマーの少なくとも一部がヒドロキシル末端ポリマーに転化する。さらなる例としては、結果として得られるポリマー中のβ-ヒドリド脱離及びエチレン系不飽和によって形成されるオレフィン末端ポリマーが挙げられる。
【0156】 本発明の実施形態においては、マルチブロックコポリマーは、マレイン化(無水マレイン酸又はその同等物との反応)、メタレーション(例えば、場合によりルイス塩基、特にアミン、例えばテトラメチルエチレンジアミンの存在下での、アルキルリチウム試薬の使用)によって官能化することができる。ポリマーを官能化する技術はよく知られており、例えば米国特許第5,543,458号明細書などに開示されている。」

(イ)「【0167】 本発明のポリマー又はそれを含む配合物を使用して、分散体(水性及び非水性の両方)を形成することもできる。2004年8月25日に出願されたPCT出願第2004/027593号に開示されるように、本発明のポリマーを含む発泡フォームを形成することもできる。本発明のポリマーは、あらゆる公知の手段、例えば過酸化物、電子ビーム、シラン、アジド、又はその他の架橋技術を使用することによって架橋させることもできる。本発明のポリマーは、化学的に改質することもでき、例えば、グラフト化(例えば、無水マレイン酸(MAH)、シラン、又は他のグラフト化剤の使用)、ハロゲン化、アミノ化、スルホン化、又は他の化学的改質によって改質することができる。」

(ウ)「【0171】 本発明の非常に望ましい実施形態においては、熱可塑性マトリックスポリマー、特にアイソタクチックポリプロピレンと、本発明によるエチレン及び共重合性コモノマーのエラストマー性マルチブロックコポリマーとを含む熱可塑性組成物は独特に、コアの形態の硬質結晶質又は半結晶ブロックを、硬質ポリマーの閉鎖領域の周囲に「シェル」を形成する軟質又はエラストマー性ブロックで囲んでいるコア-シェル型粒子を形成することができる。これらの粒子は、溶融配合又はブレンド中に受ける力によってマトリックスポリマー内に形成され分散される。この非常に望ましい形態は、相溶性ポリマー領域、例えばマトリックスと、マルチブロックコポリマーのより高いコモノマー含有率のエラストマー性領域が、熱力学的な力によって溶融状態で自己組織化することができる、マルチブロックコポリマーの独特の物理的性質によるものと考えられる。配合中の剪断力により、エラストマーで囲まれたマトリックスポリマーの分離した領域が形成されると考えられる。固化すると、これらの領域はポリマーマトリックス中に包まれて閉鎖したエラストマー粒子となる。
【0172】 特に望ましいブレンドは、熱可塑性ポリオレフィンブレンド(TPO)、熱可塑性エラストマーブレンド(TPE)、熱可塑性バルカニサイト(vulcanisites)(TPV)、及びスチレン系ポリマーブレンドである。TPEブレンド及びTPVブレンドは、本発明のマルチブロックポリマー、例えばその官能化誘導体又は不飽和誘導体を、場合によりゴム、例えば、従来のブロックコポリマー、特にSBSブロックコポリマー、ならびに場合により架橋剤又は加硫剤と混合することによって調製することができる。TPOブレンドは、一般に、本発明のマルチブロックコポリマーを、ポリオレフィン、及び場合により架橋剤又は加硫剤とブレンドすることによって調製される。上記ブレンドは、成形品の形成に使用することができ、結果として得られる成形物品を場合により架橋させることができる。異なる成分を使用した類似の手順が、米国特許第6,797,779号明細書において既に開示されている。」

ウ 甲6に記載された事項
(ア)「【請求項1】官能化させた(B)熱可塑性樹脂に、(A)架橋性エラストマーを添加し、部分的または完全に動的架橋することを特徴とする官能化されたエラストマー組成物の製造方法。
【請求項2】(A)架橋性エラストマーと(B)熱可塑性樹脂を部分的にまたは完全に動的架橋させた後、さらにあらかじめ官能化させた(B)熱可塑性樹脂を配合することを特徴とする官能化されたエラストマー組成物の製造方法。
【請求項3】(A)架橋性エラストマーがエチレンと炭素数3?12のα-オレフィン、必要に応じて非共役ジエンからなるメタロセン系触媒を用いて製造されたエチレン・αーオレフィン共重合体ゴムであり、(B)がオレフィン系樹脂である請求項1、2記載の官能化されたエラストマー組成物の製造方法。
【請求項4】官能化が酸無水物基、グリシジル基又は、カルボン酸基を含有する化合物またはその誘導体によりなされている請求項1?3記載の官能化されたエラストマー組成物の製造方法。
【請求項5】官能化がエチレン性不飽和基及び酸無水物基、カルボン酸基、グリシジル基の内少なくとも1つとを含有する化合物またはその誘導体によりなされている請求項1?3記載の官能化されたエラストマー組成物の製造方法。
【請求項6】請求項1?5記載の官能化されたエラストマー組成物の製造方法により得られてなる官能化エラストマー組成物。」

(イ)「【0009】以下、本発明に関して詳しく述べる。本発明において、(A)架橋性エラストマーは、例えば、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、1,2-ポリブタジエン系、ポリ塩化ビニル系等であり、特にポリオレフィン系熱可塑性エラストマ-が好ましい。」

(ウ)「【0015】・・・本発明において(B)熱可塑性樹脂は、(A)と相溶もしくは均一分散し得るものであればとくに制限はない。たとえば、ポリスチレン系、ポリフェニレンエーテル系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリカーボネート系、ポリメタクリレート系等の単独もしくは二種以上を混合したものを使用することができる。特に熱可塑性樹脂としてプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂が好ましい。
【0016】本発明で最も好適に使用されるプロピレン系樹脂を具体的に示すと、ホモのアイソタクチックポリプロピレン、プロピレンとエチレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1等の他のα-オレフィンとのアイソタクチック共重合樹脂(ブロック、ランダムを含む)等が挙げられる。・・・
【0018】本発明において官能化とは反応性のある基を持つ化合物と(A)成分または(B)成分とを結合させる事である。官能化により好ましい化合物は、エチレン性不飽和基を有しかつ反応性のある基を併せ持つ化合物である。例を挙げれば、酸無水物基、グリシジル基、カルボン酸基、ニトリル基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基、エステル基等を反応性のある基として有する化合物であり、この中でも酸無水物基、グリシジル基、カルボン酸基がより好ましい。好ましくはエチレン性不飽和基を有する物である。
【0019】マレイン酸、ハロゲン化マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、エンド-シス-ビシクロ(2,2,1)-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸等やこれらジカルボン酸の無水物・・・等が挙げられる。・・・
【0020】これらの中で無水マレイン酸、マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、無水シトラコン酸、グリシジルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましく用いられる。更に好ましくは、無水マレイン酸、マレイン酸、グリシジルメタクリレートである。これらの化合物は、単独で使用することもできるし、更に2種以上を組み合わせて使用することもできる。」

(エ)「【0032】本発明によるエラストマー組成物は、以下のような成形時、加工時に特に有効である。
(a)ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂等との複層成形;複層射出成形(2色成形、インサート成形等)、多層押出成形、多層ブロー成形、等」

(オ)「【0033】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例、比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、これら実施例および比較例において、各種物性の評価に用いた試験法は以下の通りである。
・・・
[6]ポリアミド(PA)密着性
圧縮成型によりポリマーの平板を成形し、これに別途圧縮成型により成形した本発明のエラストマー組成物の平板を重ね一緒に圧縮成型する。その際の引き剥がし強度を、◎;一体化して剥がれない、○剥がすのに力がいる、△;少し接着している、×;容易に剥がれる、の段階で評価する。
・・・
【0034】実施例、比較例の各成分は以下のものを用いた。
<1>エチレン・α-オレフィン共重合体
1○エチレンとオクテン-1との共重合体(EORと称する)
メタロセン系触媒を用いた方法により製造した。共重合体のエチレン/オクテン-1の組成比;75/25(重量比)、密度;0.87g/cm^(3)、MFR;0.5(190℃×2.16kg)、Mw/Mn=2.3、長鎖分岐を有し、DSC融点ピークを有する。
・・・
<2>プロピレン系樹脂(PPと称する)
ホモのアイソタクチックポリプロピレン、MFR15(230℃×2.16kg)
MPP1;三井化学株式会社製アドマーQF305を用いる。これは、ホモのポリプロピレンを無水マレイン酸で官能化した物で官能化率0.2重量%の物を用いる。
【0036】MPP2;二軸押出機で無水マレイン酸、ラジカル開始剤、ホモのポリプロピレンを入れ無水マレイン酸化PPを作製する。官能化率は0.17重量%である。
<3>軟化剤
パラフィン系オイル(MOと称する)
ダイアナプロセスオイル PW-90(出光興産(株)製)
<4>エチレン性不飽和基含有カルボン酸誘導体
無水マレイン酸(MAと称する)
<5>ラジカル発生剤(POXと称する)
2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3
<6>架橋助剤ジビニルベンゼン(DVBと称する)
【0037】
【実施例1?6、比較例1?3】押出機として、バレル中央部に注入口を有した2軸押出機(40mmφ、L/D=47)を用いた。スクリューとしては注入口の前後に混練部を有した2条スクリューを用いた。EOR100部、PP33部、POX0.5部、DVB1.3部の組成比でMO以外を混合したのち2軸押出機(シリンダー温度220℃)に導入し、引き続き、押出機の中央部にある注入口より60部に相当する量のMOをポンプにより注入し、溶融押出、ペレタイズを行った。
【0038】このペレット(TPVと称す)とMPP(比較例はPP)をそれぞれ表中に示す割合でペレットブレンドした後、30mmの二軸押出機で押出ペレタイズした。これらのペレットをロールで練り、平板状にし、圧縮成型で平板を作製し、各種物性の試験片に供した。その結果を表1に示す。
・・・
【0040】
【表1】(合議体注:表は省略)

【0041】【発明の効果】本発明により得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物からなる成形品は、柔軟でゴム状、皮革状の外観を有するとともに、各種素材との接着性、塗装性、耐候性、機械的物性等に優れている。本発明は、インスツルメントパネル、ランプエンドラバー、コンソールボックス、シフトノブグリップ等の自動車内外装部品、家電、弱電製品ハウジング、各種グリップ、各種スイッチ、各種キートップ、緩衝材、足ゴム、ホース、チューブ等の用途に幅広く使用可能である。」

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明1?3を対比する。
甲1発明1?3の「エチレン酢酸ビニルゴム」であるランクセス社製の「Levapren 600HV」は、本件明細書に記載の「Lanxess Deutschland GmbHの商品名Levapren(登録商標)」(段落【0037】)の製品であるから、本件発明1の「エチレン酢酸ビニルコポリマー」に相当する。
甲1発明1?3の「無水マレイン酸グラフトポリプロピレン」は、ポリプロピレンに無水マレイン酸がグラフト化したものであることは明らかであり、上記「無水マレイン酸」及び「ポリプロピレン」は、本件発明1の「有機カルボン酸無水物」及び「非エラストマーポリオレフィン」にそれぞれ相当するから、甲1発明1?3の「無水マレイン酸グラフトポリプロピレン」は、本件発明1の「熱可塑性物質」である「有機カルボン酸無水物で官能基化された非エラストマー性ポリオレフィン」に相当する。
また、甲1発明1?3の「ジクミルペルオキシド」は、本件明細書に記載の「ジクミル-ペルオキシド」(段落【0076】)であり、本件発明1の「架橋剤」に相当する。
更に、甲1発明1?3の「エチレン酢酸ビニルゴム(ランクセス社、Levapren 600HV)70質量部とジクミルペルオキシド1.5質量部とを、20?30℃の条件下でダブルロールミルにより均一に混合して」は、エチレン酢酸ビニルゴムがジクミルペルオキシドと混合されている点で、本件発明1の「前記エラストマーが」「架橋剤と混合され」と共通する。
甲1発明1?3の「無水マレイン酸グラフトポリプロピレン」に「エチレン酢酸ビニルゴムのマスターバッチ」を添加して「180℃、60rpmの条件下で5?10分間の動的架橋を行」う工程は、エチレン酢酸ビニルゴムがジクミルペルオキシドと混合され、その後、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンと混合されて動的架橋を行うことであるから、本件発明1の「前記エラストマーが」「架橋剤と混合され」、「その後前記熱可塑性物質と混合され、当該熱可塑性物質との混合中または混合後に架橋されて」に相当する。
また、甲1発明1?3は「熱可塑性エラストマー」であるが、その製造過程で添加された種々の物質も含有するから、本件発明1の「熱可塑性エラストマー組成物」であるともいえるものである。
そして、本件発明1の「熱可塑性エラスマトマー」が、「前記エラストマーが軟化されて架橋剤と混合され、その後前記熱可塑性物質と混合され、当該熱可塑性物質との混合中または混合後に架橋されて熱可塑性エラストマーが製造され」との記載は、製造方法によって得られた生産物を意味しているものと解釈する。

そうすると、本件発明1と甲1発明1?3とは、「エラストマーと熱可塑性物質とを含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、前記熱可塑性物質が、有機カルボン酸無水物で官能基化された非エラストマー性ポリオレフィンであり、前記エラストマーが、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブロモブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エポキシ化天然ゴム、および前記エラストマーの2つ以上の混合物からなるエラストマー群から選択されるエラストマーを含み、前記エラストマーが架橋剤と混合され、その後前記熱可塑性物質と混合され、当該熱可塑性物質との混合中または混合後に架橋されて熱可塑性エラストマーが製造される熱可塑性エラストマー組成物。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:本件発明1は、「前記エラストマーが軟化されて架橋剤と混合され」る製造方法によって得られたものであるのに対して、甲1発明1?3は、エチレン酢酸ビニルゴムとジクミルペルオキシドとを「20?30℃の条件下でダブルロールミルにより均一に混合」する製造方法によって得られたものである点。

イ 相違点の検討
相違点1について検討する。
(ア)まず、甲1発明1?3が、本件発明1の「前記エラストマーが軟化されて架橋剤と混合され」る方法によって製造されたものであるかを検討すると、甲1発明1?3は、「エチレン酢酸ビニルゴム(ランクセス社、Levapren 600HV)」とジクミルペルオキシドを20?30℃でダブルロールミルにより均一に混合するものであり、甲1には、「エチレン酢酸ビニルゴム(ランクセス社、Levapren 600HV)」が上記温度で軟化されることは記載されていない。
また、本件明細書には、「「前処理」とは・・・エラストマーを、好ましくは50℃?120℃の範囲、さらに好ましくは80℃?110℃の範囲の温度で軟化させることと理解される。・・・その際・・・エラストマーに加えて、架橋剤が使用されるため、軟化したエラストマーが架橋剤と共に(完全)混和される。」(段落【0109】)と記載され、本件発明1の「エチレン酢酸ビニルコポリマー」を含むエラストマー群から選択されるエラストマーは、50?120℃の温度であれば軟化されると解され、本件発明1の「エチレン酢酸ビニルコポリマー」(実施例では、「Lanxess EVM 600」を使用)に相当する甲1発明1?3の「エチレン酢酸ビニルゴム(ランクセス社、Levapren 600HV)」は、上記温度を下回る20?30℃の温度では、本件発明1のように「軟化されて架橋剤を混合され」るものではないと解される。
そして、甲1発明1?3の「エチレン酢酸ビニルゴム(ランクセス社、Levapren 600HV)」が20?30℃で軟化されることが、本件優先日時点の技術常識であることを示す証拠も見当たらない。
これらのことから、甲1発明1?3の「エチレン酢酸ビニルゴム(ランクセス社、Levapren 600HV)」が20?30℃で軟化されると解することはできず、本件発明1と甲1発明1?3とはその製造方法が同じであるとはいえない。
また、甲1発明1?3の「20?30℃の条件下でダブルロールミルにより均一に混合」する製造方法によって得られた生産物が、本件発明1の「前記エラストマーが軟化されて架橋剤と混合され」た製造方法によって得られた生産物と結果的に同じ構造又は組織を有するものになることは、本件明細書を参酌しても、甲1に記載された事項から客観的に確認することはできない。
そうすると、相違点1は実質的な相違点であり、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

(イ)また、甲1、甲3及び甲6を見ても、甲1発明1?3において、本件発明1と同じく「前記エラストマーが軟化されて架橋剤と混合され」る製造方法を採用したり、上記製造方法によって得られる構造又は組織としたりすることが動機付けられる記載はない。
そうすると、本件発明1は、甲1に記載された発明、並びに甲1、甲3及び甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

(ウ)そして、本件発明1は、「幅広い硬さ範囲において、バランスのとれた特性、特に非常に優れた耐温性および耐化学性と同時に非常に優れた弾性特性(圧縮永久ひずみ率、破断伸び、および引張強度)を有する熱可塑性エラストマーの供給に抜群に適している。その上、本発明による組成物は、ポリアミドに対する抜群の付着性を有する。」(段落【0112】)という格別顕著な効果を奏するものであり、このような効果は、本件明細書の実施例(段落【0168】?段落【0184】)から具体的に確認することができる。

(エ)したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明、並びに甲1、甲3及び甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件発明2?13について
本件発明2?13は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、上記(2)で本件発明1について述べたのと同じ理由により、本件発明2?4、6、7、10?13は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、本件発明2?13は、甲1に記載された発明、並びに甲1、甲3及び甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)小括
以上のことから、本件発明1?4、6、7、10?13は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、本件発明1?13は、甲1に記載された発明、並びに甲1、甲3及び甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。


2 甲2を主引用文献とする申立理由1-2(新規性)及び申立理由2-2(進歩性)について
(1)甲号証に記載された事項
ア 甲2に記載された事項及び甲2に記載された発明
甲2には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0005】【発明が解決しようとする課題】然しながら、常温硬化型接着剤を使用したホースでは、この接着剤は反応型であるため、使用中に熱硬化が進んで接着層が硬くなり、ホースが屈曲や圧力変化を繰り返し受けると、接着層の硬化が原因で補強層の繊維が破断し、ホースの耐久性が低下する問題があった。
【0006】また溶融型の接着樹脂を用いた場合は、各層を形成する順序の制約によって、通常の製造方法では、接着層とその上の層との間の接着が得られないため、接着層を加熱し、その上の層と接着させる必要があるが、外管を形成後ホースの外側から接着樹脂が溶融するまで加熱するので、過大な熱をホースに与えることになり、それによりホースの寸法変化や補強層の繊維の張力の不均一等がおこり、ホースの均質性が損なわれ、十分な耐久性が得られない問題が生じた。
【0007】更に近年、ホース装着性の点からホースの柔軟化の要求が強いが、内管に低剛性(柔軟)の熱可塑性材料を使用し、層間を接着しないホースにおいては耐久性に問題があり、使用上に大きな問題があった。また、常温硬化型接着剤の場合は、有機溶剤を使用するので環境問題があり、溶融型接着剤の場合は、外管形成後の加熱処理工程のために生産性に問題があった。
【0008】この発明は従来ホースのこれらの問題点を解決するためになされたもので、耐久性に優れるとともに、柔軟であり、生産コストが低く、環境問題のないホースの製造方法を提供することを目的とするものである。」

(イ)「【0038】【実施例】この発明のホース(実施例1?実施例30)、および、従来のホース(比較例1?比較例17)を製作し、耐久試験をおこなった。製作したホースの構成、各部位の材質、接着方法、及び耐久試験評価結果を、下記の表1?表7に示す。
【0039】表1及び表2に示す実施例1?12と比較例1?2のホースは、補強層が1層であり、内管と補強層の接着を評価したものである。また、表3?表7に示す実施例13?30と比較例3?17のホースは、補強層が2層であり、補強層間の接着を評価したものである。」

(ウ)「【0043】・・・NBR/PP(1)およびNBR/PP(2)は、内管材料に用いたポリプロピレン系熱可塑性樹脂にアクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)組成物の加硫ゴム組成物を微細分散させた熱可塑性エラストマー組成物である。NBR/PP(1)は、エーイーエス・ジャパン(株)製のGEOLAST 703-40を使用した。NBR/PP(2)は、NBR/PP(1)に三井石油化学(株)製のアドマーQB-540を20重量%ブレンドしたものを使用した。」

(エ)「【0045】変性オレフィンは、接着層に用いた変性されたポリオレフィン樹脂であり、三井石油化学(株)製のアドマーQB-540を使用した。」

(オ)「【0050】
【表2】」(合議体注:表は省略)

(カ)「【0057】・・・実施例5?8は、補強層を編組する直前に内管を直接溶融温度以上に加熱し、編組される繊維と接触する表面が溶融状態であるときに、補強層を編組したものである。実施例9?12は、内管上に熱可塑性材料から成る内管と補強層との間の接着層を、溶融押出し、編組される繊維と接触する表面が溶融状態であるときに、補強層を編組したものである。これら実施例のホースは、そのホース構成(内管、外管材料および補強繊維材料)に関わらず、内管と補強層の強固な接着が得られ、接着層の熱硬化がなく、また補強層に過大な熱量が加わっていないため、耐久性に優れるものである。」

上記(ウ)及び(エ)並びに(オ)の実施例8に着目すると、甲2には、「ポリプロピレン系熱可塑性樹脂にアクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)組成物の加硫ゴム組成物を微細分散させた熱可塑性エラストマー組成物」であるNBR/PP(2)が記載されており、これは、NBR/PP(1)である「GEOLAST 703-40」(エーイーエス・ジャパン(株))に、変性されたポリオレフィンである「アドマーQB-540」(三井石油化学(株))を20重量%ブレンドしたものである。

そうすると、甲2には、以下の発明が記載されている。
「「GEOLAST 703-40」(エーイーエス・ジャパン(株))に、変性されたポリオレフィンである「アドマーQB-540」(三井石油化学(株))を20重量%ブレンドしたものであって、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂にアクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)組成物の加硫ゴム組成物を微細分散させた熱可塑性エラストマー組成物」(以下、「甲2発明1」という。)

イ 甲4に記載された事項
甲4には、次の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ゴム組成物と樹脂を混練し、かつ動的にゴム組成物を加硫してなる熱可塑性エラストマー組成物の製造において、少なくとも樹脂に対して主鎖切断または架橋を与える架橋剤をゴム組成物中に予め練り込んでおき、その後に混練、製造する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項2】 ゴム組成物と樹脂を混練し、かつ動的にゴム組成物を加硫してなる熱可塑性エラストマー組成物の製造において、ゴム組成物の架橋剤をすべて、予めゴム組成物中に練り込んでおく熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。」

(イ)「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、ゴム組成物と樹脂を混練し、かつ動的にゴム組成物を加硫してなる熱可塑性エラストマー組成物の製造において、少なくとも樹脂に対して主鎖切断または架橋を与える架橋剤をゴム組成物中に予め練り込んでおき、その後に混練、製造する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法が提供される。
【0005】また、本発明によれば、ゴム組成物と樹脂を混練し、かつ動的にゴム組成物を加硫してなる熱可塑性エラストマー組成物の製造において、ゴム組成物の架橋剤をすべて、予めゴム組成物中に練り込んでおく熱可塑性エラストマー組成物の製造方法が提供される。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明では、動的加硫熱可塑性エラストマー組成物の製造に当り、ゴム組成物の混練操作中に少なくとも樹脂に劣化、硬化等の影響を与える架橋剤をゴム組成物中に120°以下の低温で予め練り込んでおき、次いで架橋剤を含むゴム組成物と樹脂を混練、熱可塑性エラストマー組成物化することで、その作業性を改善すると共に、最終的に得られる熱可塑性エラストマー組成物の各種物性を向上することができる。」

(ウ)「【0012】本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、以下の手順で行なう。まず、ゴム成分と所定の架橋剤を予め一般のニーダー、バンバリミキサー等を用いて均一混合状態が得られるまで混練してゴム組成物を作製する。この際ゴム組成物には、カーボン、オイル、その他炭酸カルシウム等の充填剤を適当量添加することも可能である。また、この混練の時、材料温度が高くなりすぎると混練機中でゴム組成物が架橋反応を起こしてしまうため、温度は120℃以下の低温に抑えて混練することが必要である。このようにして作製したゴム組成物と熱可塑性樹脂を2軸混練機等に投入し、溶融混練を行ないながらゴム組成物を動的架橋させて、連続相(マトリックス)を形成する熱可塑性樹脂中にゴム組成物を分散相(ドメイン)として分散させる。また、熱可塑性樹脂またはゴム組成物への各種配合剤(加硫剤は除く)は、上記混練中に添加してもよいが、混練の前に予め混合しておくことが好ましい。熱可塑性樹脂とゴム組成物の混練に使用する混練機としては特に限定はなく、スクリュー押出機、ニーダ、バンバリミキサー、2軸混練押出機等が使用できる。なかでも、熱可塑性樹脂とゴム組成物の混練およびゴム組成物の動的架橋には、2軸混練押出機を使用するのが好ましい。更に、2種類以上の混練機を使用し、順次混練してもよい。溶融混練の条件として、温度は熱可塑性樹脂が溶融する温度以上であればよい。また、混練時の剪断速度は500?7500 sec^(-1)であるのが好ましい。混練全体の時間は30秒から10分が好ましい。」

(エ)「【0015】以下の表IおよびIIに記載の各配合成分には、次の市販品を用いた。
EPDM:三井EPT4021(三井石油化学製)NBR:Perbunan NT2865(Bayer製)
Br-IIR:エクソンブロモブチル2244(エクソンケミカル製)
PP:RV421(トクヤマ製)ナイロン6:アミランCM1001(東レ製)
カーボン:FEFカーボンブラック・HTC100(中部カーボン製)
パラフィンオイル:マシン油22(昭和シェル石油製)
DOA:ジアサイザーDOA(三菱化成ビニル製)
有機過酸化物(40%希釈品):パーカドックス14/40(火薬アクゾ製)
臭素化フェノール:タッキロール250-I(田岡化学工業製)
イオウ:粉末イオウ(軽井沢精錬所製)
ステアリン酸:ビーズステアリン酸(日本油脂製)
亜鉛華:亜鉛華3号(正同化学製)
TOTN:ノクセラーTOT-N(大内新興化学製)
【0016】ゴム配合組成物の作製
以下の表Iで示すゴムポリマーおよび充填剤をバンバリーミキサーに投入し、約3分間混練し、材料温度が150℃に達した際に放出した。次に、ゴム配合1,3,5,7(実施例用)については、再度充填剤入りのゴム組成物と架橋剤および架橋助剤とをバンバリー混練し、約1分後材料温度が120℃に達したところで放出し、ゴム配合組成物を作製した。
【0017】
【表1】(合議体注:表は省略)
【0018】熱可塑性エラストマー組成物の作製
前記ゴム配合組成物と熱可塑性樹脂を以下の表IIに示す量比でドライブレンドし、2軸混練機に投入した。この際の2軸混練条件は、実施例1、比較例1の時、温度200℃、剪断速度1000S^(-1)に、実施例2?4、比較例2,3の時、温度230℃、剪断速度1000S^(-1)に設定した。ゴム配合組成物と熱可塑性樹脂が十分に溶融混練された後、比較例1?3および実施例4には架橋剤を加えた。2軸混練によって作製された熱可塑性エラストマー組成物は、水冷、ペレット化して、その後単軸押出機で溶融し、T型ダイスで1.5mm厚のシートに加工した。
【0019】熱可塑性エラストマー組成物の引張強度および伸び
JIS K6251「加硫ゴム引張試験方法」に準じた。
試験片:前記押出成形により作成した1.5mmシートを、押出時の流れ方向に平行にJIS3号ダンベルで打ち抜いて各例の試験片を作製した。得られた応力-歪曲線より引張強度、伸びを求めた。
【0020】実施例1?4および比較例1?3
前記試験片を用いて、前記試験法により引張強度および伸びを求めた。その結果を表IIに示す。
【0021】
【表2】(合議体注:表は省略)
【0022】上記表IIの結果によると、本発明に従うゴム組成物の架橋剤を予めゴム組成物中に練り込んでおいた熱可塑性エラストマー組成物においては、いずれもその引張強度および伸びの特性において極めて優れたものが得られることがわかる。このことから、樹脂に影響を及ぼす架橋剤を予めゴム組成物中に練り込んでおくことによって、熱可塑性エラストマー組成物への影響を極力抑えることができ、結果的に熱可塑性エラストマー組成物の物性を向上できるようになると言える。」

ウ 甲5に記載された事項
甲5には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0017】 官能化されたポリマーは、ポリマー中の全繰り返し単位に基づいて、望ましくは約0.5乃至約3.5モル%の官能基を有し、より望ましくは約1又は1.5から約2.0又は2.5モル%の官能基を有する。官能基は、オレフィンモノマーと共重合されたモノマーからのものでよく、又は1及び2欄においてカルボン酸グラフト化を記載しているBP Chemical Limitedの米国特許第5,637,410号によって実証されているポリオレフィン上への不飽和モノマーのグラフト化によるような後重合官能化によって添加することができる。望ましくは、このポリオレフィンに対する繰り返し単位の少なくとも70、80、又は90重量%が、2乃至8個の炭素原子、及びより好ましくは2又は3個の炭素原子のオレフィンモノマーである。本願の目的に対して、官能基は、炭素及び水素以外のヘテロ原子を有する基として定義される。官能基の例は、カルボン酸基、ジカルボン酸又はポリカルボン酸からの無水物、例えば、ポリオレフィン主鎖に対する無水マレイン酸のグラフト化から誘導される基、を含む。好ましい基は、カルボン酸基又は2つ以上のカルボン酸の無水物である。従って、官能化されたポリオレフィンは、アクリル酸とエチレン又はプロピレンのコポリマー;エチレン、酢酸ビニル、及びアクリル酸のターポリマー;又はエチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸のターポリマー;その他でよい。」

(イ)「【0021】 本願の目的に対して、半結晶性ポリオレフィンは、少なくとも26.5重量%の結晶度を有するポリオレフィンを含む。官能化されたポリオレフィン及びその他の半結晶性ポリオレフィンは、それらが少なくとも26.5重量%の結晶度を有する場合は、全半結晶性ポリオレフィンについての計算に含まれる。EPDMゴムのようなゴムは含まれず、EPDMゴムはポリオレフィンであるが、一般的に非晶質又は本質的に非結晶性であると定義されるものである。」

(ウ)「【0040】 極性ポリマーは、ポリオレフィンより極性の大きい任意のポリマーでよい。極性ポリマーは、その上に熱可塑性のコーティングが塗布される成形又は形成品でよく、あるいはシート又は繊維の形態でよい。望ましくは、極性ポリマー及び繊維又はシート強化材は、望ましくは繊維又はシートに成形することができる高引張弾性率材料(例えば、130,000psi(896.35MPa)以上、より望ましくは180,000psi(1241.11MPa)以上)がよい。例は、ポリエステル、ポリアミド、ガラス繊維、セルロースのような天然繊維、その他を含む。繊維は、織物、束、糸、不織物、その他でよい。さらに、ポリオレフィンポリマーを繊維を製造するために使用することができ、又はポリオレフィンと極性ポリマーのブレンドを繊維を形成するために使用することができ、又はポリオレフィン繊維と極性繊維のブレンドを使用することができる。」

エ 甲7に記載された事項
甲7には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0055】ホースの作製
(実施例6)内管用材料として実施例3で得られた熱可塑性エラストマー組成物をマンドレル上に押し出し、次にブラスメッキワイヤー(直径0.25mm)をブレード状に編組して補強層を形成した。その後、その上にEPDM/PP系熱可塑性エラストマー組成物(サントプレーン101-73、AES社製)からなる外管用材料を押出成形してホースを作製した。なお、内管と補強層との層間および補強層と外管との層間の接着剤として、マレイン酸変性ポリプロピレン(アドマーQB540、三井石油化学社製)を用いた。」

オ 甲8に記載された事項
甲8には、次の事項が記載されている。
(ア)「1985年にMonsanto社がNBR代替用途を狙って開発上市した“Geolast”は,耐油性に優れるNBR/PP系動的加硫型熱可塑性エラストマーである.」(第349頁右欄下4?1行)

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明1を対比する。
甲2発明1の「変性されたポリオレフィンである「アドマーQB-540」(三井石油化学(株))」は、甲7によると、マレイン酸変性ポリプロピレンであり、これがマレイン酸無水物変性ポリプロピレンであることは明らかであるから、本件発明1の「有機カルボン酸無水物で官能基化された非エラストマー性ポリオレフィン」である「熱可塑性物質」に相当する。
また、甲2発明1の「アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)組成物の加硫ゴム組成物」は、本件発明1の「ニトリルブタジエンゴム」及び「エラストマー」に相当する。
そして、甲2発明1は、「アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)組成物の加硫ゴム組成物」を含む熱可塑性エラストマーに、「変性されたポリオレフィンである「アドマーQB-540」」をブレンドしたものであるから、本件発明1の「エラストマー」が「熱可塑性物質と混合され」たものであるといえる。
また、甲8によると、「Geolast」はNBR/PP系動的加硫型熱可塑性エラストマーであることがわかるから、甲2発明1の「GEOLAST 703-40」は、上記「Geolast」シリーズの商品であって、これと同じNBR/PP系動的加硫型熱可塑性エラストマーであると解される。

そうすると、本件発明1と甲2発明1とは、「エラストマーと熱可塑性物質とを含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、前記熱可塑性物質が、有機カルボン酸無水物で官能基化された非エラストマー性ポリオレフィンであり、前記エラストマーが、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブロモブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エポキシ化天然ゴム、および前記エラストマーの2つ以上の混合物からなるエラストマー群から選択されるエラストマーを含み、前記エラストマーが、前記熱可塑性物質と混合され、熱可塑性エラストマーが製造される熱可塑性エラストマー組成物。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点2:本件発明1は、「前記エラストマーが軟化されて架橋剤と混合され、その後前記熱可塑性物質と混合され、当該熱可塑性物質との混合中または混合後に架橋されて熱可塑性エラストマーが製造される」のに対して、甲2発明1は、「NBR/PP系動的加硫型熱可塑性エラストマーである「GEOLAST 703-40」に、変性されたポリオレフィンである「アドマーQB-540」を20重量%ブレンドし」て製造される点。

イ 相違点の検討
相違点2について検討する。
(ア)まず、甲2発明1が、本件発明1の「前記エラストマーが軟化されて架橋剤と混合され」る方法によって製造されたものであるかを検討すると、甲2発明1は、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂にアクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)組成物の加硫ゴム組成物を微細分散させたものであって、加硫ゴム組成物を生成するのに必要な架橋剤を含むものであると解されるが、その製造に際して、上記架橋剤がいつの時点でどのように混合されたかは明らかにされていないから、甲2発明1は、本件発明1のように「前記エラストマーが軟化されて架橋剤と混合され」る製造方法によって得られたものであるとはいえない。
また、甲2発明1は、上記アで述べたように、NBR/PP系動的加硫型熱可塑性エラストマーである「GEOLAST 703-40」を含有するものではあるが、その製造方法は、NBR/PP系動的加硫型熱可塑性エラストマーに、マレイン酸無水物変性ポリプロピレンである「アドマーQB-540」をブレンドするものであり、本件発明1の「当該熱可塑性物質との混合中または混合後に架橋されて熱可塑性エラストマーが製造される」ように、上記NBRと上記マレイン酸無水物変性ポリプロピレンである「アドマーQB-540」との混合中または混合後に架橋されて熱可塑性エラストマーが製造されたものではない。
これらのことから、本件発明1と甲2発明1とは、同じ製造方法によって得られた生産物であるとはいえない。
更に、甲2発明1の製造方法によって得られた生産物が、本件発明1の「前記エラストマーが軟化されて架橋剤と混合され」た製造方法によって得られた生産物と結果的に同じ構造又は組織を有するものになることは、本件明細書を参酌しても、甲2に記載された事項から客観的に確認することはできない。
そうすると、相違点2は実質的な相違点であり、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえない。

(イ)また、甲2?5、甲7及び甲8を見ても、甲2発明1において、本件発明1と同じく「前記エラストマーが軟化されて架橋剤と混合され、その後前記熱可塑性物質と混合され」る製造方法を採用したり、上記製造方法により得られる構造又は組織としたりすることが動機付けられる記載はない。
そうすると、本件発明1は、甲2に記載された発明、並びに甲2?甲5、甲7及び甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

(ウ)そして、本件発明1は、上記1(2)イ(ウ)で述べたように、格別顕著な効果を奏するものであり、この効果は、本件明細書の実施例から具体的に理解できる。

(エ)したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明、並びに甲2?甲5、甲7及び甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件発明2?13について
本件発明2?13は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、上記(2)で本件発明1について述べたのと同じ理由により、本件発明2?3、7?10は、甲2に記載された発明であるとはいえないし、本件発明2?13は、甲2に記載された発明、並びに甲2?甲5、甲7及び甲8の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)小括
以上のことから、本件発明1?3、7?10は、甲2に記載された発明であるとはいえないし、本件発明1?13は、甲2に記載された発明、並びに甲2?甲5、甲7及び甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

第5 むすび
以上のとおり、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1?13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1?13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-01-07 
出願番号 特願2017-39559(P2017-39559)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C08L)
P 1 651・ 113- Y (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大木 みのり今井 督  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 近野 光知
大▲わき▼ 弘子
登録日 2019-03-15 
登録番号 特許第6495360号(P6495360)
権利者 クライブルグ ティーピーイー ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー
発明の名称 エラストマーと有機カルボン酸無水物で官能基化された非エラストマー性ポリオレフィンとからなる熱可塑性エラストマー組成物  
代理人 田中 秀佳  
代理人 城村 邦彦  
代理人 熊野 剛  

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