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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1358903 |
審判番号 | 不服2018-9667 |
総通号数 | 243 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-07-13 |
確定日 | 2020-01-17 |
事件の表示 | 特願2015-561316「仮想ボタン及びジェスチャによるカメラ制御のための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年9月12日国際公開、WO2014/137369、平成28年6月30日国内公表、特表2016-519447〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年(平成25年)6月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年3月8日、米国)を国際出願日として出願されたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成28年 6月17日 :手続補正書の提出 平成29年 7月 7日付け:拒絶理由通知書 平成30年 3月 8日付け:拒絶査定 同年 7月13日 :審判請求書、手続補正書の提出 同年 8月17日 :手続補正書(請求の理由)の提出 第2 本願発明 平成30年7月13日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 なお、各ステップの符号(A)?(G)は、説明のために当審で付したものであり、以下、ステップA?ステップGと称する。 〔本願発明〕 (A)キャプチャモードの開始を示す制御信号の先頭を受信するステップと、 (B)キャプチャされたビデオデータを生成するよう、前記制御信号の前記先頭に応答して、キャプチャモードを開始するステップと、 (C)前記制御信号の前記先頭に応答して、タイマを起動するステップと、 (D)前記制御信号の終点を受信するステップと、 (E)経過時間を発生させるよう、前記制御信号の前記終点に応答して、前記タイマを止めるステップと、 (F)前記経過時間を閾時間と比較するステップと、 (G)前記経過時間が前記閾時間よりも短いことに応答して、前記キャプチャされたビデオデータの一部をセーブするステップと を有する方法。 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。 引用文献:特開2002-101331号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献の記載 引用文献には、次の事項が記載されている。 なお、以下の下線は、強調のために当審で付したものである。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、デジタルカメラ等の画像記録装置に関し、より詳しくは撮影モードの制御に関する。」 「【0023】次に、かかるデジタルカメラ1の本発明に係る動作を説明する。図2は、撮影待機状態にあるとき、制御部9のCPUが一定間隔で実行するキー処理を示すフローチャート、図4は、かかる処理に対応するデジタルカメラ1の動作を説明するためのタイミングチャートである。 【0024】以下、図2に従って説明する。CPUはキー処理動作を開始すると、まずキー処理部11から送られるキー入力信号に基づき、シャッタキーが押されているか否かを判別する(ステップSA1)。シャッタキーが押されていないときには、前回ONフラグが立っているか否かを更に判別し(ステップSA8)、かかる判別の結果もNOであったときには、そのまま処理を終了する。一方、撮影者によってシャッタキーが押され、ステップSA1の判別結果がYESであったときには、さらに前回ONフラグが立っているか否か、すなわちシャッタキーが押された直後であるか否かを更に判別する(ステップSA2)。ここで、シャッタキーが押された直後であれば、ステップSA3?ステップSA6の「NEW ON処理」を行う。すなわち、まず前回ONフラグをセットし(ステップSA3)、動画判別用のタイマー値をクリアする(ステップSA4)。次に、タイマ割込処理を許可し(ステップSA5)、最初の1枚分の画像データを静止画用のデータとして使用するサイズで画像メモリ6に取り込む(ステップSA6)。 【0025】前記タイマ割込処理は、図3及び図4に示すように、0.2秒おきにCCD2で撮像した撮影画像の1枚分の画像データを画像メモリ6に取り込む処理(ステップSB1)であって、取り込んだ画像データは、静止画用のデータとして使用するサイズよりも小さな動画用のデータとして、前回の画像を上書きすることなく、画像メモリ6の個別のエリアに格納する。 【0026】この後、シャッタキーが押されていると判別されたとき(ステップSA2でYES)、及びシャッタキーが押されていないと判別されたときであっても、前回ONフラグが立っており(ステップSA8でYES)、かつ前述した動画判別用のタイマーによりカウントされている時間が所定のチャタリング時間を経過していなければ(ステップSA9でNO)、「ON中処理」として動画判別用タイマーの値をインクリメントする処理を行う(ステップSA7)。つまり、シャッタキーが押され続けている間には、かかる「ON中処理」が継続されとともに、その間には、図3に示したタイマ割込処理が0.2秒おきに行われることによって、動画用の撮影画像データが画像メモリ6に順次蓄積される。 【0027】しかる後、撮影者がシャッタキーを押すことをやめると(ステップSA1がNO、ステップSA8,SA9が共にYES)、以下の「NEW OFF処理」を行う。すなわち、前回ONフラグをクリアし(ステップSA10)、図3に示したタイマ割込処理を禁止した後(ステップSA11)、ON中処理でカウントしていたタイマー値が所定の動画判別時間(本実施の形態では、1.1秒)を超えているか否かを判別する(ステップSA12)。ここで、図4(a)に示したように、撮影者がシャッタキーを押していた時間が例えば0.9秒であって、動画判別時間を超えていなければ静止画モード処理に移行し(ステップSA12でNO)、図4(b)に示したように、撮影者がシャッタキーを押していた時間(操作継続時間)が例えば4.7秒であって、動画判別用タイマー値が動画判別時間を超えていれば動画モード処理に移行する(ステップSA12でYES)。 【0028】動画モード処理では、ステップSA6で画像メモリ6に最初に取り込んだ画像データのサイズを静止画サイズから動画サイズに変換し(ステップSA13)、サイズ変換した最初の画像データと、前記タイマ割込処理で初めから動画サイズで格納されている残りの(2枚目以降の)画像データを動画形式で記録媒体10に記録する(ステップSA14)。また、静止画モード処理では、画像メモリ6に最初に取り込んだ静止画サイズの画像データをそのまま静止画形式で記録媒体10に記録し(ステップSA15)、処理を終了する。」 「【図2】 」 「【図3】 」 2 引用発明 引用文献の段落0023には、図2はデジタルカメラの制御部が実行するキー処理を示すフローチャートであることが記載され、同段落0024?0028には、図2に従ってキー処理動作の説明が記載されているから、引用文献には、「デジタルカメラの制御部が実行するキー処理方法」が記載されていると認められる。 そして、上記1の摘記事項から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 〔引用発明〕 デジタルカメラの制御部が実行するキー処理方法であって、 キー入力信号に基づき、シャッタキーが押されているか否かを判別するステップSA1と、 撮影者によってシャッタキーが押され、シャッタキーが押された直後であるか否かを判別するステップSA2と、 シャッタキーが押された直後であれば、動画判別用のタイマー値をクリアするステップSA4と、 タイマ割込処理を許可するステップSA5と、 最初の1枚分の画像データを静止画用のデータとして使用するサイズで画像メモリに取り込むステップSA6と、 前記タイマ割込処理は、0.2秒おきに撮影画像の1枚分の画像データを画像メモリに取り込む処理であって、取り込んだ画像データは、静止画用のデータとして使用するサイズよりも小さな動画用のデータとして、画像メモリに格納するステップSB1と、 前記ステップSA2でシャッタキーが押され続けていると判断されたとき、動画判別用タイマーの値をインクリメントする処理であって、その間には、前記タイマ割込処理が0.2秒おきに行われることによって、動画用の撮影画像データが画像メモリに順次蓄積されるステップSA7と、 撮影者がシャッタキーを押すことをやめると、タイマ割込処理を禁止するステップSA11と、 カウントしていたタイマー値が所定の動画判別時間を超えているか否かを判別し、動画判別時間を超えていなければ静止画モード処理に移行するステップSA12と、 静止画モード処理では、画像メモリに最初に取り込んだ静止画サイズの画像データをそのまま静止画形式で記録媒体に記録するステップSA15と を有する方法。 第5 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 1 ステップAについて 引用発明のステップSA6の「最初の画像データを画像メモリに取り込む」処理は、キャプチャされた撮影画像データを画像メモリに取り込む処理といえるから、ステップAの「キャプチャモード」の処理に相当する。また、引用発明のステップSA1の「キー入力信号」は、ステップSA2で「シャッタキーが押された直後である」と判別されると、ステップSA6の処理をもたらすから、ステップAの「キャプチャモードの開始を示す制御信号」に相当する。さらに、引用発明のステップSA2で「シャッタキーが押された直後である」と判別することは、ステップAの「キャプチャモードの開始を示す制御信号の先頭を受信する」ことに相当する。 よって、引用発明のステップSA2の「撮影者によってシャッタキーが押され、シャッタキーが押された直後である」と判別することは、本願発明のステップAに相当する。 2 ステップBについて 上記1のとおり、引用発明のステップSA6は、ステップAの「キャプチャモード」の処理に相当し、引用発明のステップSA2で「シャッタキーが押された直後である」と判別することはステップAに相当することから、引用発明のステップSA4の「シャッタキーが押された直後であれば」は、ステップBの「前記制御信号の前記先頭に応答して」に相当する。 また、引用発明の、ステップSA6の「最初の1枚分の画像データ」を「画像メモリに取り込む」処理、及び、ステップSB1の「0.2秒おきに撮影画像の1枚分の画像データを画像メモリに取り込む」処理は、画像メモリに時間的に連続する画像データが取り込まれるものであるから、ステップBの「キャプチャされたビデオデータを生成する」「キャプチャモード」の処理に相当する。 そして、引用発明は、ステップSA2で「シャッタキーが押された直後である」と判別されると、ステップSA6及びステップSB1の一連の処理をもたらすから、ステップBの「キャプチャされたビデオデータを生成するよう、前記制御信号の前記先頭に応答して、キャプチャモードを開始する」ことに相当する。 よって、引用発明のステップSA2、ステップSA5、ステップSA6、ステップSB1の一連の処理は、本願発明のステップBに相当する。 3 ステップCについて 上記2のとおり、引用発明のステップSA4の「シャッタキーが押された直後であれば」は、ステップCの「前記制御信号の前記先頭に応答して」に相当する。 また、引用発明のステップSA4の「動画判別用のタイマー値をクリアする」処理とともにステップSA5の「タイマ割込処理を許可する」処理は、ステップCの「タイマを起動する」ことに相当する。 そして、引用発明は、ステップSA4で「シャッタキーが押された直後である」と判別されると、ステップSA4の「動画判別用のタイマー値をクリアする」処理とともにステップSA5の処理をもたらすから、ステップCの「前記制御信号の前記先頭に応答して、タイマを起動する」ことに相当する。 よって、引用発明のステップSA4、ステップSA5の一連の処理は、本願発明のステップCに相当する。 4 ステップDについて 上記1のとおり、引用発明のステップSA2で「シャッタキーが押された直後である」と判別することは、ステップAの「キャプチャモードの開始を示す制御信号の先頭を受信する」ことに相当するから、引用発明のステップSA11で「シャッタキーを押すことをやめると」と判別することは、本願発明のステップDに相当する。 5 ステップEについて 上記4のとおり、引用発明のステップSA11で「シャッタキーを押すことをやめると」と判別することは、ステップDに相当する。 また、上記3のとおり、引用発明のステップSA5の「タイマ割込処理を許可する」処理は、ステップCの「タイマを起動する」ことに相当するから、引用発明のステップSA11の「タイマ割込処理を禁止する」処理は、ステップEの「前記タイマを止める」ことに相当する。 引用発明のステップSA11の「タイマ割込処理を禁止する」までの間、引用発明のステップSA7で「インクリメント」されていた「動画判別用タイマーの値」は、ステップEの「経過時間」に相当し、引用発明のステップSA11の後のステップSA12において「カウントしていたタイマー値」が用いられているから、ステップSA11の「タイマ割込処理を禁止する」処理は、ステップEの「経過時間を発生させるよう」「前記タイマを止める」ことに相当する。 よって、引用発明のステップSA11は、本願発明のステップEに相当する。 6 ステップFについて 引用発明のステップSA12の「所定の動画判別時間」は、ステップFの「閾時間」に相当する。 よって、引用発明のステップSA12の「カウントしていたタイマー値が所定の動画判別時間を超えているか否かを判別」する処理は、本願発明のステップFに相当する。 7 ステップGについて 上記2のとおり、引用発明の、ステップSA6の「最初の1枚分の画像データ」を「画像メモリに取り込む」処理、及び、ステップSB1の「0.2秒おきに撮影画像の1枚分の画像データを画像メモリに取り込む」処理は、ステップBの「キャプチャされたビデオデータを生成する」の処理に相当する。 そして、引用発明のステップSA15は、前記ステップSA6及びステップSB1により画像メモリに取り込まれた画像データのうち、「画像メモリに最初に取り込んだ」画像データを「記録媒体に記録する」処理であるから、ステップGの「前記キャプチャされたビデオデータの一部をセーブする」ことに相当する。 また、引用発明のステップSA12の「カウントしていたタイマー値が」「動画判別時間を超えていなければ」と判断することは、ステップGの「前記経過時間が前記閾時間よりも短いことに応答して」に相当する。 そして、引用発明は、ステップSA12の「カウントしていたタイマー値が」「動画判別時間を超えていなければ」の条件を満たす場合に、静止画モードとして、ステップSA15の「画像メモリに最初に取り込んだ」画像データを「記録媒体に記録する」処理を行うものであるから、当該一連の処理は、ステップGの「前記経過時間が前記閾時間よりも短いことに応答して、前記キャプチャされたビデオデータの一部をセーブする」ことに相当する。 よって、引用発明のステップSA12及びステップSA15は、本願発明のステップGに相当する。 8 審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書において、以下の主張を行っている。 「本願発明では、制御信号の先頭に応答して開始されたキャプチャモードによりビデオデータが生成され、その後に、制御信号の先頭から終点までの経過時間が閾時間よりも短い場合に、ビデオデータの一部がセーブされます。 一方、引用文献1に記載される発明(以降、「引用発明」と称する。)では、シャッターキーが押され続けているON中処理でカウントしていたタイマー値が所定の動画判別時間を超えていなければ静止画モード処理に移行し(段落0026?0027)、静止画モード処理では、画像メモリ6に最初に取り込んだ静止画サイズの画像データをそのまま静止画形式で記録媒体10に記録します(段落0028)(下線は当方による付与)。引用発明では、本願発明とは異なり、もっぱら静止画モード処理のために取り込まれた静止画データが記録されます。そのため、画像メモリにおいてそのための空間を用意しておく必要があるとともに、タイマー値が所定の動画判別時間を超えている場合に移行される動画モード処理において、静止画データのサイズを動画サイズに変換する必要性が生じます(段落0028)。対して、本願の請求項1に記載される方法のステップにおいては、静止画データのための専用のメモリ空間の用意及び静止画サイズから動画サイズへの画像データの変換は不要です。 以上より、本願発明は、引用発明とは相違しており、同じ発明とは認められません。よって、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載される発明ではなく、引用文献1に記載される発明に対して新規性を具備していると思料いたします。」 しかしながら、本願発明のステップB及びステップGは、上記2及び7のとおり引用発明も有しているものであるから、審判請求人が「制御信号の先頭に応答して開始されたキャプチャモードによりビデオデータが生成され、その後に、制御信号の先頭から終点までの経過時間が閾時間よりも短い場合に、ビデオデータの一部がセーブされます」と、引用発明との差異を主張する本願発明の構成を、引用発明は備えている。 よって、審判請求人の主張は採用することができない。 9 まとめ 以上の相当関係から、本願発明と引用発明とは、ステップA?ステップGの全てのステップにおいて一致し、相違点はない。 よって、本願発明は、引用文献に記載された発明である。 第6 むすび 以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-08-23 |
結審通知日 | 2019-08-26 |
審決日 | 2019-09-06 |
出願番号 | 特願2015-561316(P2015-561316) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤原 敬利 |
特許庁審判長 |
千葉 輝久 |
特許庁審判官 |
樫本 剛 鳥居 稔 |
発明の名称 | 仮想ボタン及びジェスチャによるカメラ制御のための方法及び装置 |
代理人 | 内藤 和彦 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 阿部 豊隆 |
代理人 | 江口 昭彦 |