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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A47J
管理番号 1359018
審判番号 不服2019-3137  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-06 
確定日 2020-02-10 
事件の表示 特願2017-530162号「食品処理装置用滴下防止アタッチメント」拒絶査定不服審判事件〔2016年 6月30日国際公開、WO2016/102409、平成29年12月14日国内公表、特表2017-536907号、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)12月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年12月24日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その後の手続きは以下のとおりである。
平成29年 6月 6日 :手続補正書の提出
平成29年12月25日付け:拒絶理由通知
平成30年 3月20日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年 6月 8日付け:拒絶理由通知
平成30年 9月 7日 :意見書の提出
平成30年11月21日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
平成31年 3月 6日 :拒絶査定不服審判の請求

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願の請求項1?11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1?3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献一覧>
引用文献1:特表2002-529340号公報
引用文献2:実願昭61-67111号(実開昭62-178930号)の
マイクロフィルム
引用文献3:特公平6-59258号公報

第3 本願発明
本願の請求項1?11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明11」という。)は、平成30年3月20日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
食品処理装置の注出口のためのアタッチメントであって、
液体入口と前面を備えるハウジングであって、該前面は該入口と流体連通する液体出口を備え、該ハウジングは該注出口の少なくとも一部を取り外し可能に受容し、該注出口と流体連通する該液体入口を位置付けるように構成された後方空洞を形成するハウジングと、
該ハウジングの該前面に取り付けられ、該前面を覆うドリップ停止フラップであって、該ドリップ停止フラップはシール部材を備え、該液体出口が該シール部材によって遮断される閉位置と、該液体出口が露出される開位置とに保持されるように構成されたドリップ停止フラップと、を備え、
前記ドリップ停止フラップの異なる部分にユーザが圧力を付与することによって、前記ドリップ停止フラップが前記開位置と前記閉位置との間で水平軸周りに可逆的に回動可能であり、前記開位置で該ドリップ停止フラップが該ハウジング内に配置される、アタッチメント。
【請求項2】
該注出口の適所に該アタッチメントを保持するために、該食品処理装置の対応するタブと結合し、該タブに対して位置付けられる様に構成されたタブをさらに備える、請求項1に記載のアタッチメント。
【請求項3】
該ハウジングは2つのくぼみを形成し、該ドリップ停止フラップは2本のピンを備え、夫々の該ピンは、該ドリップ停止フラップを回動するように該アタッチメントに取り付けるために、前記2つのくぼみのそれぞれ一つに適合するように構成された、請求項1に記載のアタッチメント。
【請求項4】
該シール部材はゴムから成る、請求項1に記載のアタッチメント。
【請求項5】
該前面は三角ラッチ部を備え、さらに該ドリップ停止フラップはフックを備え、該フックは、該ドリップ停止フラップが該開位置にあるときに該三角ラッチ部の裏面に可逆的に係合するように構成され、さらに該ドリップ停止フラップが該閉位置にあるときに該三角ラッチ部の前面に可逆的に係合するように構成された、請求項1に記載のアタッチメント。
【請求項6】
該フックは可撓性である、請求項5に記載のアタッチメント。
【請求項7】
食品処理装置であって、
食品シュートと、食品処理室と、注出口とを含むハウジングを備え、該注出口は、
該食品処理室からの液体を受容するように構成された液体入口と、
該液体入口と流体連通する液体出口を含む前面と、
該注出口の該前面に取り付けられ、該前面を覆うドリップ停止フラップであって、該ドリップ停止フラップはシール部材を備え、該液体出口が該シール部材によって遮断される閉位置と、該液体出口が露出される開位置とに保持されるように構成されたドリップ停止フラップと、を備え、
前記ドリップ停止フラップの異なる部分にユーザが圧力を付与することによって、前記ドリップ停止フラップが前記開位置と前記閉位置との間で水平軸周りに可逆的に回動可能であり、前記開位置で該ドリップ停止フラップが該ハウジング内に配置される、食品処理装置。
【請求項8】
該前面は2つのくぼみを形成し、さらに該ドリップ停止フラップは2本のピンを備え、夫々の該ピンは、該ドリップ停止フラップを回動するように該前面に取り付けるために、前記2つのくぼみのそれぞれ一つに適合するように構成された、請求項7に記載の食品処理装置。
【請求項9】
該シール部材はゴムから成る、請求項7に記載の食品処理装置。
【請求項10】
該前面は三角ラッチ部を備え、さらに該ドリップ停止フラップはフックを備え、該フックは、該ドリップ停止フラップが該開位置にあるときに該三角ラッチ部の裏面に可逆的に係合するように構成され、さらに該ドリップ停止フラップが該閉位置にあるときに該三角ラッチ部の前面に可逆的に係合するように構成された、請求項7に記載の食品処理装置。
【請求項11】
該フックは可撓性である、請求項10に記載の食品処理装置。」

第4 引用文献、引用発明
1 引用文献1について
(1) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、「流体排出案内用タップ、および容器」に関し、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。
「【請求項1】 入口、出口、および前記出口が開口している凸アーチ形台座を有する通路を画成するとともに、前記出口の各側に離間された1対の保持部を備えるタップ本体と、
前記凸アーチ形台座内の前記1対の離間する保持部の間に受支され、それぞれが、前記1対の保持部のそれぞれに嵌入係合する1対の離間する保持部と、前記1対の保持部の中間にあって、第1位置において、前記台座に当接して、解放自在にアーチ形に密に係合するシール部とを含み、かつ降伏自在の形状保持弾性を有し、歪曲して台座と係合し、かつ前記シール部を押して、前記台座に密に当接させる自己偏倚力を有するシール部材と、
前記タップ本体に可動的に取り付けられ、前記シール部材のシール部を、その少なくとも一部を前記出口から離して、前記通路に沿って液体を制御自在に排出案内する第2位置に移動させるアクチュエータを備える液体排出案内用のタップ。」
「【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、液体を含む流体を排出案内させるためのタップ(バルブまたはスピゴットを含む)に関する。特に、本発明は、入れ物または容器からの流体の排出案内に使用されるタップに関する。本発明によるタップは、飲料をパック詰めした箱形の容器から、飲料(たとえばワイン)等の流体を排出案内するのに使用できる。」
「 【0013】
本発明の一様相によると、入れ物から流体を案内するタップは、入口、出口、およびこの出口に形成された凸アーチ形台座を備える通路を画成するとともに、出口の両側に1対の離間肩部を設けたタップ本体、タップ本体に可動的に取り付けられて、作動時に出口から通路に沿って流体を制御自在に排出案内するアクチュエータ、および凸アーチ形台座内の1対の離間肩部の間に受支されたシール部材を含み、前記シール部材は、それぞれが1対の肩部のそれぞれに当接して受支された1対の離間保持部、および前記1対の保持部の中間部にあって、第1位置において台座と解放自在に密に係合するシール部を含んでいる。前記シール部材はまた、降伏自在の形状保持弾性を有し、台座と係合して、前記シール部を弁座に密に圧接させる自己偏倚力を与えるようになっている。
【0014】
本発明の利点の1つは、タップを、実質的に3つの主要素子または部品、すなわち本体、シール部材およびアクチュエータだけで製造できるため、従来のタップを複雑にしていた部品の多くを排除できる点にある。
【0015】
したがって、本発明のタップは、容易かつ安価に製造することができ、かつ生産コストが低いため、タップを経済的に使い捨てすることができる。
【0016】
また本発明のタップは、原料が少なくて済むため、その廃棄によって、環境に与える影響は小さい。この点に関して、飲料を、容器が空になったら、タップと一緒に廃棄される使い切り袋付き箱形容器にパック詰めする多くの消費者または小売り用に経済的に適用しうるものである。
【0017】
本発明の別の様相によると、シール部材を受支する台座は、おおむねアーチ形をしている。したがって、シール部は、可撓性であり、台座と対応するアーチ形となしうるようになっている。このようにアーチ形とすることによって、シール部は、偏倚力を有し、液体を案内するべく、アクチュエータを手で作動させない時に、タップを閉鎖保持する。
【0018】
アーチ形台座内に、シール部材を容易に密に嵌入させるため、台座の保持部は、シール部がアーチ形になっている時、肩部とおおむね共角を成すような形状とされている。
【0019】
本発明の他の様相は、アクチュエータへのシール部材の取り付け、およびタップ本体へのアクチュエータの取り付けが含まれる。シール部材をアクチュエータに取り付けるため、アクチュエータはステムを含み、シール部材は、該ステムに取り付けられた背骨部を含むことができる。背骨部は、好適には、シール部材のシール部上におおむね長手方向に設蹴られている。
【0020】
したがって、アクチュエータが回転すると、ステムは背骨部を引っ張り、背骨部とほぼ平行する撓み線に沿って、台座との密係合状態からシール部を偏位させ、流体がタップから流出できるようにする溝を形成する。
【0021】
アクチュエータを主タップハウジングに枢着させるため、アクチュエ-タには、少なくとも1つの枢軸を、またタップ本体には、該枢軸を枢支する縦長ソケットを設けることがある。また、主タップハウジングには、アクチュエータが開放位置まで回転する時に、ハンドルを受支する凹み、および開放位置において、さらなる回転を阻止するブロックを設けることができる。
【0022】
本発明の別の様相によると、流体を収容し案内排出させる容器は、入れ物とタップとを含む。タップは、タップ本体、アクチュエータおよびシール部材を含む。タップ本体は、入口と出口とを備える通路、および出口に隣接して形成された肩部を備える台座を含む。アクチュエータは、ハンドル(すなわち手動で係合自在の部分)を有し、タップ本体に枢着されて、使用者によるハンドル作動時に入れ物から流体を分配する。
【0023】
シール部材は、台座内に受支され、アクチュエータに取り付けられている。シール部材は、台座の肩部に当接して受支された保持部、および台座と解放自在に係合するシール部を含んでいる。シール部材は弾性を有しており、シール部を台座に押し当てる自己偏倚力を与えている。アクチュエータは、シール部が偏倚して台座に当接する(流体が出口を通過しないようにする)閉鎖位置と、シール部の少なくとも一部が自己偏倚力に抗して台座から引き離される(液体が出口から流出できるようにする)開放位置との間で回転する。」
「【0025】
類例の詳細な説明
本発明の好適実施例
図1は、ワイン等の液体を収容する袋付き箱形容器10、および液体を容器10から制御自在に排出案内するタップ12の例を示す。図2に示すように、容器10は、形状を保持する外側の支持枠体すなわち外箱14と、可撓性の内袋16を有する。外箱14は、たとえば段ボールからなり、内袋16は、プラスチックシート等の液体不透過性の材料からなっている。」
「【0028】
特に図1?図3に示すように、例示したタップ12は、本発明に従って形成されている。本発明の適用範囲を限定するものではないが、説明の便宜上、例示したタップ12は、袋付き箱形容器10から液体を排出案内するためのものとして示されている。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。
【0029】
本発明の特に好適な実施例におけるタップ12は、袋付き箱形容器10の袋20に支持されたカップラ-18と密接するような形状とされている。しかし、本発明におけるタップについては、その他の容器、入れ物、または流体導管と密接するように、別の形状としてもよいことは、当業者には理解されると思う。この実施例の場合、容器10内の流体24は、ワイン等の飲料とされている。袋付き箱形容器10の性質上、液体24の圧力水頭は、液体の十数mmに過ぎない。しかし、本発明によるバルブまたはタップを、高圧で液体の流量を制御するような形状もしくは構成とすることもできる。」
「【0031】
また、ここに提示した本発明の実施例は、タップのアクチュエータ部を、手で操作してタップを開けることにより、液体を排出案内しうるとともに、できるようにすると共に、手動操作を中断すると、タップが自己閉鎖しうるような特徴を有している。しかしこの特徴は、本発明を限定または完全化するものではない。たとえば、本発明におけるタップのアクチュエータには、タップを、手動、機械的または電気的に作動させることによって、タップを通して、液体および流体を制御自在に排出案内できるようなものとすることができる。」
「 【0046】
このシール部材30の形状の説明は、シール部材が、図5に示すようにおおむね平坦(すなわち撓曲していない)である場合に、最も的確に当てはまる。したがって、シール部材30が、およそ180度撓曲して、肩部42の間に、シート40に当接して受支される(すなわち、自己偏倚力を与える)と、保持部46は、シート40の両側で、肩部42とおおむね同一面となる。
特に図6および図7に示すように、液体をタップから排出案内する作業において、指先で力を加えて(図2に矢印44aで示す)、アクチュエータ28のハンドル部44を押し下げて凹み54に入れる。すると、アクチュエータ28は、ソケット52、軸50によって定められた支点を中心として回転することにより、、図6に矢印Bで示すように、主幹58を外方に引き出す。したがって主幹58は、背骨部62およびシール部材30のシール部48を、主幹62に沿って、シート40から引き離す。
【0047】
主幹62が縦長形状であるため、図7に示すように、シール部材の撓曲方向の確定に役立つ。シール部材30は、その固有の自己偏倚力に対抗して撓曲することにより、ほぼ下方に開口する溝路64(図6および7に示す)を画成する。
【0048】
主幹58がシール部材30の下方延長部付近に配設されているため、溝路64は、上向きに小さくなっている。さらに、溝路64の上方延長部は、本体26のウェブ66によってブロックされて、シートの上方延長部でシート40を横断している。こうして、容器10からの液体24は、通路34を貫通して、タップ12から流出できるようになる。
【0049】
図6および図7の付加的に撓曲した位置で示すように、シール部48は、主幹62の縦に対して、ほぼ直角を成す曲率を有するおおむねS字曲線形状に偏倚して、溝路64を画成している。
使用者がハンドル44を解放すると、シール部材(すなわちシール部48)の弾性エネルギによって、シール部材30のシール部48が押されて、バネのような要領で、シート40に向かって後退し、出口38を密封して、容器10からの流体24の流出を止める。」
「【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明による袋付き箱形容器に装着されている流体排出案内タップの例を示す斜視図である。
【図2】
図1の例示的タップを閉じて、流体の排出を阻止した状態を示す断面図である。
【図3】
閉じて流体の排出を阻止した状態のタップを示す、図2の3-3線で見た図である。
【図4】
図1に示す例示的タップの分解斜視図である。
【図5】
非歪曲状態にある本発明による例示的シール部材の斜視図である。
【図6】
開いて流体を排出案内できるようにした状態を示す、図2と類似するタップの断面図である。
【図7】
開いて流体を排出案内できるようにした状態のタップを示す、図6の7-7線における平面図である。」







(2) 上記(1)及び図面の記載から分かること
ア 上記(1)の段落【0001】、【0025】、【0028】、【0029】及びFIG.1、FIG.2の記載によれば、引用文献1には、タップ12が、袋付き箱形容器の袋に支持されたカップラー18と密接するような形状とされており、その接続の形態は、カップラー18とタップ12とは取り外し可能な態様であることが分かる。
イ 上記(1)のFIG.2の記載によれば、タップ12は、カップラー18と入口30を位置付けるように構成された、タップ12の貫通路34における後方に空洞を備えていることが分かる。
ウ 上記(1)のFIG.1?FIG.7の記載によれば、アクチュエータ28がタップ本体の前面に取り付けられていることが分かる。
エ 上記(1)の【0046】及びFIG.1?FIG.6の記載から、アクチュエータ28は、シール部材の開位置と閉位置との間で水平軸周りに可逆的に回動可能であり、FIG.6の断面でみて、開位置でアクチュエータはタップ本体からはみ出していることが分かる。
(3) 引用発明
上記(1)及び(2)を総合すると、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「袋付き箱形容器から飲料などの流体を排出案内するために使用されるタップであって、
タップは、袋付き箱形容器の袋支持されたカップラ-と密接するような形状とされ、
タップは、入口、出口、および前記出口が開口している凸アーチ形台座を有する通路を画成するとともに、前記出口の各側に離間された1対の保持部を備えるタップ本体と、
前記カップラーと前記入口を位置付けるように構成された、後方の空洞と、
前記凸アーチ形台座内の前記1対の離間する保持部の間に受支され、それぞれが、前記1対の保持部のそれぞれに嵌入係合する1対の離間する保持部と、前記1対の保持部の中間にあって、第1位置において、前記台座に当接して、解放自在にアーチ形に密に係合するシール部とを含み、かつ降伏自在の形状保持弾性を有し、歪曲して台座と係合し、かつ前記シール部を押して、前記台座に密に当接させる自己偏倚力を有するシール部材と、
前記タップ本体に可動的に取り付けられ、前記シール部材のシール部を、その少なくとも一部を前記出口から離して、前記通路に沿って液体を制御自在に排出案内する第2位置に移動させるアクチュエータとを備え、
前記アクチュエータは、タップ本体の前面に取り付けられ、シール部材の開位置と閉位置との間で水平軸周りに可逆的に回動可能で、開位置でアクチュエータはタップ本体からはみ出しており、
タップのアクチュエータ部を、手で操作してタップを開けることにより、液体を排出案内しうるとともに、手動操作を中断すると、タップが自己閉鎖しうる、
液体排出案内用のタップ。」
2 引用文献2について
(1) 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、「液体容器の注液通路開閉装置」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。
「2.実用新案登録請求の範囲
1.液体容器本体(1)の栓穴(6)に、栓本体(10)内に注液通路(13)と該注液通路(13)を開閉する弁体(14)をそれぞれ設けてなる栓体(2)を設けた液体容器において、前記栓本体(10)の上部には前記弁体(14)を開弁操作する開弁操作部(16,76)と前記弁体(14)を閉弁操作する閉弁操作部(17,77)とを備えた弁体操作部材(15,75)が設けられており、さらに該弁体操作部材(15,75)は、前記弁体(14)が開弁状態にあるときは前記閉弁操作部(17,77)の一部が前記栓本体(10)の上面(10a)より上方に突出し且つ前記弁体(14)が閉弁状態にあるときは前記開弁操作部(16,76)と前記閉弁操作部(17,77)がともに前記栓本体上面(10a)と同一面かそれより低位置となる如く位置設定されていることを特徴とする液体容器の注液通路開閉装置。」(明細書1ページ4行?2ページ1行)
「又、この第2実施例の注液通路開閉装置では、弁体操作部材75は、横向きで1枚ものの板部材80を有しており、該板部材80を栓本体10の上部、即ち、上蓋72に形成した窓穴74内で上下方向にシーソー状に揺動し得るように取付けて構成されている。この弁体操作部材75の板部材80は、栓本体10の上部における外端部付近から該栓本体10の中心(弁体弁棒42の直上方位置)を通ってかなり他方側に延出する範囲の長さを有している。又該板部材80はその外端80aと弁体弁棒42の直上方位置80bとの中間部を栓本体10内に設けたブラケット89に取付けた軸90によって案内されてシーソー運動し得るようにされている。この弁体操作部材75は、板部材80における軸支部(符号90)より内方側(第4図における右側)が開弁操作部76となり、又板部材80の軸支部より外方側(第4図における左側)が閉弁操作部77となるものである。又この弁体操作部材75は、弁体14が閉弁状態(第4図)にある場合は水平姿勢に維持されてしかも栓本体上面10a(上蓋72の上面)と面一状になり、又弁体14が開弁状態(第6図)にあるときには閉弁操作部77が栓本体上面10aより上方に突出するようになっている。即ち、第4図に示す閉弁状態では、開弁操作部76が弁体弁棒42に下方から押圧され且つ閉弁操作部77の下面が上蓋72の段下げ部72aの上面に衝合して弁体操作部材75が水平姿勢に維持されるようになり、又その状態から開弁操作部76を押し下げて第6図に示すように開弁させると弁体操作部材75が傾斜せしめられてその閉弁操作部77が栓本体上面10aより上方に突出するようになる。閉弁操作部77の下面側には開弁操作時において上蓋72の段下げ部72aの端縁72bに衝合するL形の衝合部81が形成されていて、開弁操作時にこの弁体操作部材75が必要以上傾斜しないようにしている。又栓本体10内の上部には、第6図の如く弁体操作部材75が傾斜せしめられた状態において該弁体操作部材75をそのまま傾斜せしめた(開弁状態となっている)状態で保持するための板バネ79が設けられている。即ち、この板バネ79は、弁体操作部材75を開弁方向に操作した際に開弁操作部76側の端部に下向き延出させた垂下片82の下端係合部82aを第6図において右回転方向に付勢する如く接触するようになっており、該板バネ79の付勢力によって弁体操作部材75を傾斜姿勢のままで維持させるようにしている。」(明細書18ページ10行?20ページ17行)



(2) 引用文献2に記載の技術事項
上記(1)によれば、引用文献2には次の技術事項(以下「技術事項2」という。)が記載されている。
「弁体14が開弁状態(第6図)にあるときには閉弁操作部77が栓本体上面10aより上方に突出するようになっていて、板バネ79は、弁体操作部材75を開弁方向に操作した際に開弁操作部76側の端部に下向き延出させた垂下片82の下端係合部82aを第6図において右回転方向に付勢する如く接触するようになっており、該板バネ79の付勢力によって弁体操作部材75を傾斜姿勢のままで維持させるようにしていること。」
3 引用文献3について
(1) 引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、「ジューサ」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】電動機を内蔵する本体と、前記電動機をON,OFFするスイッチと、前記本体上に載置される容器と、この容器のジュース流出口を開閉する弁と、前記容器上方を覆う蓋とを備え、前記スイッチとジュース流出口を開閉する弁とを連動させ、スイッチオンのとき弁が開となり、スイッチオフのとき弁が閉となるジューサー。」(【特許請求の範囲】)
「発明が解決しようとする問題点
しかし、この様な開閉弁を有する構造のものは、誤って開閉弁を閉じたままジュースを絞ると、遠心分離篭より絞ったジュースが容器内に一杯溜り、容器のジュース流出口以外から洩れ出す問題があった。
問題点を解決するための手段
そこで、上記問題点を解決するために本発明の技術的な手段は、遠心分離篭を回転させるモーターをオン,オフするスイッチと、ジュース流出口を開閉する弁とを連動させ、スイッチがオンすると弁が開き、オフすると弁が閉じる構成である。」(公報1ページ2欄6行?2ページ3欄1行)
「次に電動機1を駆動するスイッチオンボタン16を押すと、電動機1が駆動されるとともに、スイッチオンボタン16に固定された動作板17が動かされ動作板17の端面に設けた傾斜部18で操作棒15を上方へ動かす。すると操作棒15の上面が弁10のアーム14を上方へ押し上げるため、弁10が支点11を中心に回転させられ容器8のジュース流出口9が開く。この状態で材料投入口21より切削材料を投入し、カッター6で切削すると、ジュース分のみ遠心分離篭5より絞られ、ジュースが容器8内に溜り、ジュース流出口9より流出する。次にジュースを絞り終った後、スイッチをオンにすると電動機1の回転が止まるとともにスイッチオンボタンが元の状態に戻るため、操作棒15がバネ19で下方へ押し下げられる。すると弁10のアーム14もバネ13で押し下げられるため弁10が支点11を中心に回転し、容器8のジュース流出口9が弁10により閉ざされ、ジュースの流出がストップする。」(公報2ページ3欄35行?4欄15行)
(2) 引用文献3に記載の技術事項
上記(1)によれば、引用文献3には次の技術事項(以下「技術事項3」という。)が記載されている。
「前記スイッチとジュース流出口を開閉する弁とを連動させ、スイッチオンのとき弁が開となり、スイッチオフのとき弁が閉となるジューサー」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者の「カップラー」は前者の「注出口」に相当し、以下同様に、「入口」は「液体入口」に、「前面」は「前面」に、「タップ本体」は「ハウジング」に、「出口」は「液体出口」に、「後方の空洞」は「後方空洞」に、「シール部」は「シール部材」に、「アクチュエータ」は「ドリップ停止フラップ」に、「開位置」は「開位置」に、「閉位置」は「閉位置」に、それぞれ相当する。
・後者の「袋付き箱形容器」は、「飲料などの流体」を備えるものなので、前者の「食品処理装置」と、「食品用部材」との限りで一致する。
・後者の「袋付き箱形容器から飲料などの流体を排出案内するために使用されるタップ」は、「袋付き箱形容器の袋支持されたカップラ-と密接するような形状とされ」、「タップ本体は、カップラーと入口を位置付けるように構成された」ものであり、「袋付き箱形容器」の付属品とみることができ、アタッチメントといえるので、前者の「注出口のためのアタッチメント」に相当する。
・後者の「タップ本体」の「入口、出口、および前記出口が開口している凸アーチ形台座を有する通路を画成する」ことは、「入口」及び「出口」が流体連通していることは明らかであるから、前者の「該前面は該入口と流体連通する液体出口を備え」た態様に相当する。
・また、後者の「タップ本体」は、「袋付き箱形容器」に「使用される」ことから、使用時には、後者の「タップ本体」は、後者の「カップラー」の少なくとも一部を取り外し可能に受容しており、前者の「該ハウジングは該注出口の少なくとも一部を取り外し可能に受容」するものに相当する。
・後者の「前記カップラーと前記入口を位置付けるように構成された、後方の空洞」を備えた「タップ本体」は、前者の「該注出口と流体連通する該液体入口を位置付けるように構成された後方空洞を形成するハウジング」に相当する。
・後者の「前記アクチュエータはタップ本体の前面に取り付けられ」ていることは、前者の「ドリップ停止フラップ」が「該ハウジングの該前面に取り付けられ、該前面を覆う」ことに相当する。
・後者の「アクチュエータ」が「前記タップ本体に可動的に取り付けられ、前記シール部材のシール部を、その少なくとも一部を前記出口から離して、前記通路に沿って液体を制御自在に排出案内する第2位置に移動させる」ことと、前者の「該ドリップ停止フラップはシール部材を備え、該液体出口が該シール部材によって遮断される閉位置と、該液体出口が露出される開位置とに保持されるように構成された」こととは、「該ドリップ停止フラップはシール部材を備え、該液体出口が該シール部材によって遮断される閉位置と、該液体出口が露出される開位置とにされるように構成された」限りで一致する。
・後者の「タップのアクチュエータ部を、手で操作してタップを開けること」と、前者の「前記ドリップ停止フラップの異なる部分にユーザが圧力を付与すること」とは、「前記ドリップ停止フラップの部分にユーザが圧力を付与すること」の限りで一致する。
・後者の「アクチュエータ」が「シール部材の開位置と閉位置との間で水平軸周りに可逆的に回動可能であ」ることは、前者の「前記ドリップ停止フラップが前記開位置と前記閉位置との間で水平軸周りに可逆的に回動可能であ」ることに相当する。
・後者の「開位置でアクチュエータはタップ本体からはみ出して」いることと、前者の「前記開位置で該ドリップ停止フラップが該ハウジング内に配置される」こととは、「前記開位置で該ドリップ停止フラップが該ハウジングに配置される」限りで一致する。

したがって、両者は、
「食品用部材の注出口のためのアタッチメントであって、
液体入口と前面を備えるハウジングであって、該前面は該入口と流体連通する液体出口を備え、該ハウジングは該注出口の少なくとも一部を取り外し可能に受容し、該注出口と流体連通する該液体入口を位置付けるように構成された後方空洞を形成するハウジングと、
該ハウジングの該前面に取り付けられ、該前面を覆うドリップ停止フラップであって、
該ドリップ停止フラップはシール部材を備え、該液体出口が該シール部材によって遮断される閉位置と、該液体出口が露出される開位置とにされるように構成されたドリップ停止フラップと、を備え、
前記ドリップ停止フラップの部分にユーザが圧力を付与することによって、前記ドリップ停止フラップが前記開位置と前記閉位置との間で水平軸周りに可逆的に回動可能であり、前記開位置で該ドリップ停止フラップが該ハウジングに配置される、アタッチメント。」の点で一致し、次の点で相違している。

[相違点1]
食品用部材について、本願発明1では、「食品処理装置」であるのに対して、引用発明では、「袋付き箱形容器」である点。

[相違点2]
ドリップ停止フラップについて、本願発明1では、「該液体出口が該シール部材によって遮断される閉位置と、該液体出口が露出される開位置とに保持されるように構成されたドリップ」であるのに対して、引用発明では、「タップのアクチュエータ部」が「台座に密に当接させる自己偏倚力を有するシール部材」を備え、「手動操作を中断すると、タップが自己閉鎖しうる」点。

[相違点3]
ドリップ停止フラップの部分にユーザが圧力を付与することによって、前記ドリップ停止フラップが開位置と閉位置との間で水平軸周りに可逆的に回動可能であることについて、本願発明1では、「前記ドリップ停止フラップの異なる部分にユーザが圧力を付与することによって、前記ドリップ停止フラップが前記開位置と前記閉位置との間で水平軸周りに可逆的に回動可能であ」るのに対して、引用発明では、「タップのアクチュエータ部を、手で操作してタップを開けることにより、液体を排出案内しうるとともに、手動操作を中断すると、タップが自己閉鎖しうる」ものであるものの、手で操作する部分についてまで特定していない点。

[相違点4]
開位置でドリップ停止フラップがハウジングに配置されることについて、本願発明1では、「前記開位置で該ドリップ停止フラップが該ハウジング内に配置される」のに対して、引用発明では、「開位置でアクチュエータはタップ本体からはみ出して」いる点。

(2) 相違点についての判断
事案に鑑み、先ず相違点2及び3について検討する。また、相違点2及び3は、いずれもドリップ停止フラップに関するものであるので、まとめて検討する。
引用発明は、タップが「台座に当接して、解放自在にアーチ形に密に係合するシール部とを含み、かつ降伏自在の形状保持弾性を有し、歪曲して台座と係合し、かつ前記シール部を押して、前記台座に密に当接させる自己偏倚力を有するシール部材」を備え、「タップのアクチュエータ部を、手で操作してタップを開けることにより、液体を排出案内しうるとともに、手動操作を中断すると、タップが自己閉鎖しうる」ように構成するものである。
そうすると、引用発明は、シール部材が閉位置にあるときは、閉位置に保持されるが、シール部材が開位置にあるときは、手動操作を中断すると、タップが自己閉鎖して、シール部材が閉位置に戻るように構成されるものであるから、シール部材を開位置に保持されるように構成する動機付けが、引用発明において、認めることはできず、そのような構成を採用することには、むしろ阻害要因があるといえる。
また、「タップのアクチュエータ部を、手で操作してタップを開けることにより、液体を排出案内しうるとともに、手動操作を中断すると、タップが自己閉鎖しうる」ものであることをふまえると、タップのアクチュエータを手で操作するに際して、タップのシール部材を開ける操作と閉める操作において、あえて操作するアクチュエータの異なる部分にユーザが圧力を付与するようにすることは、通常想定されることではない。
そして、技術事項2が、「弁体14が開弁状態(第6図)にあるときには閉弁操作部77が栓本体上面10aより上方に突出するようになっていて」、「板バネ79の付勢力によって弁体操作部材75を傾斜姿勢のままで維持させるようにしている」こと示唆し、技術事項3が「前記スイッチとジュース流出口を開閉する弁とを連動させ、スイッチオンのとき弁が開となり、スイッチオフのとき弁が閉となる」ことを示唆するとしても、引用発明と引用文献2及び3に記載のものとは、シール部材の作動構造において大きく異なるものであり、また、引用発明のタップが自己閉鎖しうるものであることを前提とすると、それぞれ適用することが困難なことであることは、上述のとおりである。
そうすると、引用発明において、技術事項2及び3を考慮したとしても、少なくとも上記相違点2及び3に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たということはできない。
(3) まとめ
そして、本願発明1は、本願明細書の段落【0005】に記載された、「使用されていない際の食品処理装置の注出口から液体が液垂れすることを防ぐための簡単で清潔な手法をユーザに提供する」という所期の課題を解決したものである。
したがって、本願発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された技術事項2及び3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 本願発明2?6について
本願の特許請求の範囲における請求項2?6は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく、直接又は間接的に引用して記載したものであるから、本願発明2?6は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2?6は、本願発明1と同様の理由で、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された技術事項2及び3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 本願発明7について
(1) 対比
本願発明7と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮し、「1 本願発明1について」において、検討したことをふまえて対比すると、両者は、上記相違点1?4に加え、以下の相違点で相違する。

[相違点5]
本願発明7では、「食品シュートと、食品処理室と、注出口とを含むハウジングを備え、該注出口は、該食品処理室からの液体を受容するように構成された液体入口と、該液体入口と流体連通する液体出口を含む前面と」を備えているのに対して、引用発明では、そのような構成を有していない点。

(2) 相違点についての判断
相違点2及び3についての判断は、上記「1 本願発明1について (2) 相違点についての判断」と同様である。
そうすると、本願発明7は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された技術事項2及び3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 本願発明8?11について
本願の特許請求の範囲における請求項8?11は、請求項7の記載を他の記載に置き換えることなく、直接又は間接的に引用して記載したものであるから、本願発明8?11は、本願発明7の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明8?11は、本願発明7と同様の理由で、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された技術事項2及び3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-01-29 
出願番号 特願2017-530162(P2017-530162)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A47J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 豊島 ひろみ  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 塚本 英隆
山崎 勝司
発明の名称 食品処理装置用滴下防止アタッチメント  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 五十嵐 貴裕  

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