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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G |
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管理番号 | 1359081 |
審判番号 | 不服2019-725 |
総通号数 | 243 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-01-19 |
確定日 | 2020-01-16 |
事件の表示 | 特願2014-195818号「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年4月28日出願公開、特開2016-66016号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年9月25日の出願であって、平成29年9月21日に手続補正書が提出され、平成30年4月13日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年6月14日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年10月18日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成31年1月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成31年1月19日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成31年1月19日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) 本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含むものであり、本件補正前の平成30年6月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。また、A?Iについては発明を分説するため当審で付与した。)。 (本件補正前) 「【請求項1】 A 無端状の中間転写ベルトと、 B 前記中間転写ベルトにトナー像を形成するトナー像形成ユニットと、 C 前記中間転写ベルトの外周面側に配置され、前記中間転写ベルトに形成されたトナー像を記録材へ転写するための転写部を形成する第1のローラと、 D 前記中間転写ベルトを挟んで前記第1のローラに対向する位置で前記中間転写ベルトの内周面側に配置され、前記第1のローラとともに前記転写部を形成する第2のローラと、 E 前記中間転写ベルトを張架するとともに傾動可能に支持されたステアリングローラであって、前記中間転写ベルト上のトナー像を記録材に転写させる転写時において、前記中間転写ベルトの幅方向の位置が所定領域から逸脱しないように傾動するステアリングローラと、 F 前記第2のローラに対して前記中間転写ベルトの移動方向の上流側に隣接して配置され、前記中間転写ベルトの内周面を押圧する押圧部材と、 G を備えた画像形成装置において、 I 前記押圧部材は、前記中間転写ベルトが前記所定領域の一端に位置するときに、前記中間転写ベルトの両端と接触し、前記中間転写ベルトが前記所定領域の他端に位置するときに、前記中間転写ベルトの両端と接触するように前記中間転写ベルトの幅よりも長く構成されている ことを特徴とする画像形成装置。」 (本件補正後) 「【請求項1】 A 無端状の中間転写ベルトと、 B 前記中間転写ベルトにトナー像を形成するトナー像形成ユニットと、 C 前記中間転写ベルトの外周面側に配置され、前記中間転写ベルトに形成されたトナー像を記録材へ転写するための転写部を形成する第1のローラと、 D 前記中間転写ベルトを挟んで前記第1のローラに対向する位置で前記中間転写ベルトの内周面側に配置され、前記第1のローラとともに前記転写部を形成する第2のローラと、 E 前記中間転写ベルトを張架するとともに傾動可能に支持されたステアリングローラであって、前記中間転写ベルト上のトナー像を記録材に転写させる転写時において、前記中間転写ベルトの幅方向の位置が所定領域から逸脱しないように傾動するステアリングローラと、 F 前記第2のローラに対して前記中間転写ベルトの移動方向の上流側に隣接して配置され、前記中間転写ベルトの内周面を押圧する押圧部材と、 G を備えた画像形成装置において、 H 前記中間転写ベルトの移動方向において、前記押圧部材と前記中間転写ベルトとの当接部の最下流の位置と、前記第1ローラの回転中心と前記第2のローラの回転中心を結ぶ線が前記中間転写ベルトと交差する位置と、の間の距離が25mm以下であり、 I 前記押圧部材は、前記中間転写ベルトが前記所定領域の一端に位置するときに、前記中間転写ベルトの両端と接触し、前記中間転写ベルトが前記所定領域の他端に位置するときに、前記中間転写ベルトの両端と接触するように前記中間転写ベルトの幅よりも長く構成されている ことを特徴とする画像形成装置。」 2 補正の適否 本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「中間転写ベルトの内周面を押圧する押圧部材」と、「転写部を形成する」「第1ローラ」及び「第2ローラ」との位置関係について、「前記中間転写ベルトの移動方向において、前記押圧部材と前記中間転写ベルトとの当接部の最下流の位置と、前記第1ローラの回転中心と前記第2のローラの回転中心を結ぶ線が前記中間転写ベルトと交差する位置と、の間の距離が25mm以下であ」ることを限定する補正を含むものである。 そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0039】及び図4等の記載に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。 そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、前記1(本件補正後)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献に記載された事項 原査定の拒絶の理由で引用され本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開平9-80926号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 「【0028】なお、前記中間転写体2としては複数のロールの掛け渡した無端ベルトを用いる場合は、この無端ベルト(中間転写体ベルト)は駆動ロール、ウォーク補正ロール、テンションロールおよびバックアップロールに掛け渡されて周回搬送され、上記平面性矯正部材7は上記バックアップロール5の上流側、かつ前記中間転写ベルトへの記録媒体11のタッキング位置の上流近傍のトナー担持面の裏側に配置されて、記録媒体が中間転写ベルトにタッキングする位置では当該中間転写ベルトの面が平坦になっているように当該中間転写ベルトに幅方向の均一なテンションを与える。」 「【0030】そして、上記平面性矯正部材として可撓性バッフル板を用いた場合は、当該バッフル板の先端縁が中間転写体ベルトあるいはドラムの幅方向全域にわたって摺接し、摺接部分の下流における上記中間転写ベルトあるいは中間転写ドラムのトナー担持面を均一な平面となるようにする。また、上記平面性矯正部材として可撓性バッフル板に代えて弾性ロールを用いた場合も同様に、当該弾性ロールは中間転写ベルトあるいは中間転写ドラムの幅方向にわたって押圧摺接し、摺接部分の下流における上記中間転写ベルトあるいは中間転写ドラムのトナー担持面を均一な平面となるようにする。」 「【0033】 【実施例】以下、本発明の実施例につき、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明による画像形成装置の1実施例の構成を説明する模式図であって、前記図11と同一符号は同一部分に対応し、7は平面性矯正部材である。同図において、1は潜像担持体としての感光体ドラムであり図中に矢印で示した方向へ回転する。この感光体ドラム1の表面には、帯電器である帯電ロール13、レーザー走査書込み部40、ブラック、イエロー、マゼンタ、サイアンの各色のトナー現像器14a?14dを有するカラー現像装置、帯電ロール3、ドラムクリーナ24、除電ランプ25が取付けられており、周知の電子写真プロセスによって白黒又は多色カラーのトナー像が形成されるようになっている。 【0034】また、中間転写体としての中間転写ベルト2は帯電ロール3が配置された一次転写部位において感光体ドラム1の表面に当接するように配置され、駆動ロール2a、従動ロール2b、テンションロール2c、中間転写ベルト2の走行を安定化するためのウォーク補正ロール2d、およびバックアップロール5の周りに周回架張されて搬送される。 【0035】二次転写部位に設置されたバックアップロール5は、金属性の芯金に厚さ2?5mmのSi(シリコン)、あるいはEPDMなどの絶縁性のゴム層を形成し、このゴム層の上に半導電性のチューブを被覆してなり、半導電性チューブに接するようにコンタクトロール6が配設されている。一次転写ロール3の作用により感光体ドラム1から中間転写ベルト2に転写されたトナー像は、中間転写ベルト2の回転で二次転写部位へ進み、トナーと同極性のバイアスを印加されたコンタクトロール6からバックアップロール6(当審注:「バックアップロール6」は「バックアップロール5」の誤記と認められる。)の半導電性チューブを介して、接地された二次転写ローラ4(当審注:「二次転写ローラ4」は「二次転写ロール4」の誤記と認められる。)に流れる電流で形成される転写電界の作用を受け、ピックアップロール16でトレー15から取り出され、レジロール17により所定のタイミングで二次転写部位に送り出された記録媒体11に転写される。」 「【0038】図2は本実施例に用いる中間転写ベルトの平面性矯正部材である可撓性バッフル板の作用を説明する要部模式図であって、図1と同一符号は同一部分に対応し、7aは可撓性バッフル板、7bは引張バネである。可撓性バッフル板7aは、中間転写ベルト2の幅方向全域にわたって延在する略矩形状の薄板状であり、その長手方向に沿った直線性の良好な一端縁(先端縁)を中間転写体ベルト2に接触させ、支点Vに関して他端縁を引張バネ7bで引張ることにより、上記一端縁を中間転写体ベルト2に押し当て、当該中間転写ベルト2の周回搬送に従って摺接しながらその幅方向にテンションを付勢する。」 「【0040】可撓性バッフル板7aの先端縁は二次転写ロール4とバックアップロール5の対向する二次転写部位(ニップ位置)から中間転写ベルト2に沿ってD1だけ離れたD1=20?80mm、望ましくは40?60mm上流に位置するP1点で中間転写ベルト2に接している。一方、記録媒体搬送ロール8からの記録媒体11は上記ニップ位置から中間転写ベルト2に沿って上流側にD2だけ離れた約15mm付近P2において中間転写体ベルト2にタッキングするように進入する。」 ・図1から、二次転写ロール4が中間転写ベルト2の外周面側に配置されているのが見て取れる。 ・図1から、バックアップロール5が二次転写ロール4に対向する位置で中間転写ベルト2の内周面側に配置されているのが見て取れる。 ・図2から、可撓性バッフル板7aの先端縁が中間転写ベルト2の内周面に接しているのが見てとれる。 上記記載事項及び認定事項を総合すれば、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる(a?iについては本願補正発明のA?Iに対応させて付与した。)。 「a 無端ベルトを用いた中間転写ベルト2(【0028】、【0034】)と、 b 帯電器である帯電ロール13、レーザー走査書込み部40、ブラック、イエロー、マゼンタ、サイアンの各色のトナー現像器14a?14dを有するカラー現像装置、帯電ロール3、ドラムクリーナ24、除電ランプ25と、それらが表面に取付けられ、周知の電子写真プロセスによって白黒又は多色カラーのトナー像が形成される感光体ドラム1(【0033】)と、感光体ドラム1から中間転写ベルト2にトナー像を転写するように作用する一次転写ロール3(【0035】)と、 c 前記中間転写ベルト2の外周面側に配置され(図1)、前記中間転写ベルト2に転写されたトナー像を記録媒体11に転写する二次転写部位を形成する二次転写ロール4(【0035】)と、 d 前記二次転写ロール4に対向する位置で中間転写ベルト2の内周面側に配置され、前記二次転写ロール4とともに前記二次転写部位を形成するバックアップロール5(【0040】、図1)と、 e 前記中間転写ベルト2を架張するウォーク補正ロール2dであって、中間転写ベルト2の走行を安定化するためのウォーク補正ロール2d(【0034】)と、 f、h 前記二次転写ロール4と前記バックアップロール5の対向する二次転写部位から中間転写ベルト2に沿ってD1=20?80mmだけ離れた上流に位置するP1点で中間転写ベルト2の内周面に先端縁が接し、先端縁を中間転写体ベルト2の内周面に押し当て、当該中間転写ベルト2の周回搬送に従って摺接しながらその幅方向にテンションを付勢する可撓性バッフル板7a(【0038】、【0040】、図2)と、 g を備えた画像形成装置(【0033】)において、 i 前記可撓性バッフル板7aは、前記中間転写ベルト2の幅方向全域にわたって延在する略矩形状の薄板状であり(【0038】)、先端縁が前記中間転写体ベルト2の幅方向全域にわたって摺接し、摺接部分の下流における前記中間転写ベルト2のトナー担持面を均一な平面となるようにする(【0030】) 画像形成装置。」 (3)対比・判断 ア 対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、見出し(a)?(i)は、本願補正発明のA?Iに対応させている。 (a)引用発明の「a 無端ベルトを用いた中間転写ベルト2」は、本願補正発明の「A 無端状の中間転写ベルト」に相当する。 (b)引用発明の「b 帯電器である帯電ロール13、レーザー走査書込み部40、ブラック、イエロー、マゼンタ、サイアンの各色のトナー現像器14a?14dを有するカラー現像装置、ドラムクリーナ24、除電ランプ25と、それらが表面に取付けられ、周知の電子写真プロセスによって白黒又は多色カラーのトナー像が形成される感光体ドラム1と、感光体ドラム1から中間転写ベルト2にトナー像を転写するように作用する一次転写ロール3」からなるものは、本願補正発明の「B 前記中間転写ベルトにトナー像を形成するトナー像形成ユニット」に相当する。 (c)引用発明の「c 前記中間転写ベルト2の外周面側に配置され、前記中間転写ベルト2に転写されたトナー像を記録媒体11に転写する二次転写部位を形成する二次転写ロール4」は、本願補正発明の「C 前記中間転写ベルトの外周面側に配置され、前記中間転写ベルトに形成されたトナー像を記録材へ転写するための転写部を形成する第1のローラ」に相当する。 (d)引用発明の「d 前記二次転写ロール4に対向する位置で中間転写ベルト2の内周面側に配置され、前記二次転写ロール4とともに前記二次転写部位を形成するバックアップロール5」は、本願補正発明の「D 前記中間転写ベルトを挟んで前記第1のローラに対向する位置で前記中間転写ベルトの内周面側に配置され、前記第1のローラとともに前記転写部を形成する第2のローラ」に相当する。 (f)引用発明の「前記二次転写ロール4と前記バックアップロール5の対向する二次転写部位から中間転写ベルト2に沿ってD1=20?80mmだけ離れた上流に位置するP1点で中間転写ベルト2に」「可撓性バッフル板7a」の「先端縁が接」することは、可撓性バッフル板7aがバックアップロール5に対して中間転写ベルトの移動方向の上流側に隣接して配置されることといえる。 また、引用発明の「可撓性バッフル板7a」が「先端縁を中間転写体ベルト2の内周面に押し当て、当該中間転写ベルト2の周回搬送に従って内周面に摺接しながらその幅方向にテンションを付勢する」ことは、可撓性バッフル板7aが中間転写ベルトの内周面を押圧することといえる。 したがって、引用発明の「f、h 前記二次転写ロール4と前記バックアップロール5の対向する二次転写部位から中間転写ベルト2に沿ってD1=20?80mmだけ離れた上流に位置するP1点で中間転写ベルト2の内周面に先端縁が接し、先端縁を中間転写体ベルト2の内周面に押し当て、当該中間転写ベルト2の周回搬送に従って摺接しながらその幅方向にテンションを付勢する可撓性バッフル板7a」は、本願補正発明の「F 前記第2のローラに対して前記中間転写ベルトの移動方向の上流側に隣接して配置され、前記中間転写ベルトの内周面を押圧する押圧部材」に相当する。 (g)引用発明のgの「画像形成装置」は、本願補正発明のGの「画像形成装置」に相当する。 (h)引用発明の「f、h 前記二次転写ロール4と前記バックアップロール5の対向する二次転写部位から中間転写ベルト2に沿ってD1=20?80mmだけ離れた上流に位置するP1点で中間転写ベルト2の内周面に」「可撓性バッフル板7a」の「先端縁が接」することは、「前記二次転写ロール4と前記バックアップロール5の対向する二次転写部位から中間転写ベルト2に沿ってD1=20?」25「mmだけ離れた上流に位置するP1点で中間転写ベルト2の内周面に」「可撓性バッフル板7a」の「先端縁が接」することを含むから、その範囲において、本願補正発明の「H 前記中間転写ベルトの移動方向において、前記押圧部材と前記中間転写ベルトとの当接部の最下流の位置と、前記第1ローラの回転中心と前記第2のローラの回転中心を結ぶ線が前記中間転写ベルトと交差する位置と、の間の距離が25mm以下であ」ることに相当する。 (i)引用発明の「i 前記可撓性バッフル板7aは、前記中間転写ベルト2の幅方向全域にわたって延在する略矩形状の薄板状であり、先端縁が前記中間転写体ベルト2の幅方向全域にわたって摺接し、摺接部分の下流における前記中間転写ベルト2のトナー担持面を均一な平面となるようにする」ことと、本願補正発明の「I 前記押圧部材は、前記中間転写ベルトが前記所定領域の一端に位置するときに、前記中間転写ベルトの両端と接触し、前記中間転写ベルトが前記所定領域の他端に位置するときに、前記中間転写ベルトの両端と接触するように前記中間転写ベルトの幅よりも長く構成されている」こととは、「I’前記押圧部材は、前記中間転写ベルトの両端と接触するように前記中間転写ベルトの幅よりも長く構成されている」点で共通する。 してみると、本願補正発明と引用発明とは、 「A 無端状の中間転写ベルトと、 B 前記中間転写ベルトにトナー像を形成するトナー像形成ユニットと、 C 前記中間転写ベルトの外周面側に配置され、前記中間転写ベルトに形成されたトナー像を記録材へ転写するための転写部を形成する第1のローラと、 D 前記中間転写ベルトを挟んで前記第1のローラに対向する位置で前記中間転写ベルトの内周面側に配置され、前記第1のローラとともに前記転写部を形成する第2のローラと、 F 前記第2のローラに対して前記中間転写ベルトの移動方向の上流側に隣接して配置され、前記中間転写ベルトの内周面を押圧する押圧部材と、 G を備えた画像形成装置において、 H 前記中間転写ベルトの移動方向において、前記押圧部材と前記中間転写ベルトとの当接部の最下流の位置と、前記第1ローラの回転中心と前記第2のローラの回転中心を結ぶ線が前記中間転写ベルトと交差する位置と、の間の距離が25mm以下であり、 I’前記押圧部材は、前記中間転写ベルトの両端と接触するように前記中間転写ベルトの幅よりも長く構成されている 画像形成装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 本願補正発明は「E 前記中間転写ベルトを張架するとともに傾動可能に支持されたステアリングローラであって、前記中間転写ベルト上のトナー像を記録材に転写させる転写時において、前記中間転写ベルトの幅方向の位置が所定領域から逸脱しないように傾動するステアリングローラ」を備えるのに対し、引用発明は「e 前記中間転写ベルト2を架張するウォーク補正ローラ2dであって、中間転写ベルト2の走行を安定化するためのウォーク補正ローラ2d」を備えるものの、これが、本願補正発明の上記構成Eに相当するか否か明らかでない点。 (相違点2) 「I’前記押圧部材は、前記中間転写ベルトの両端と接触するように前記中間転写ベルトの幅よりも長く構成されている」ことについて、本願補正発明は「前記中間転写ベルトが前記所定領域の一端に位置するときに、前記中間転写ベルトの両端と接触し、前記中間転写ベルトが前記所定領域の他端に位置するときに、前記中間転写ベルトの両端と接触するように」なされているのに対し、引用発明はそのようなものか否か明らかでない点。 イ 判断 (相違点1について) 引用発明は「e 前記中間転写ベルト2を架張するウォーク補正ロール2dであって、中間転写ベルト2の走行を安定化するためのウォーク補正ローラ2d」は、その「ウォーク補正ロール」という名称から、画像形成装置の技術分野の技術常識に基づけば、循環移動中のベルトが移動方向と直交する幅方向に移動するいわゆる「ベルトウォーク」と呼ばれる現象を補正するローラであると解される(例えば、特開平10-228182号公報の段落【0005】の「ウォーク補正ロール(ベルトBの幅方向の移動すなわちウォークを補正するロール)」との記載を参照)。 また、引用発明において、構成cの「中間転写ベルト2に転写されたトナー像を記録媒体11に転写する」ときにも、ウォーク補正ロール2dによって、中間転写ベルトのベルトウォークが補正されることは自明である。 そして、画像形成装置の技術分野において、中間転写ベルトの幅方向の移動を補正するローラとして、傾動するステアリングローラを用いることは、例えば、以下の文献に記載されているように周知技術である。 (ア)原査定時に周知技術として引用され本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2011-8023号公報(以下「引用文献2」という。下線は当審で付した。以下同様。) 「【0019】 図1は、本発明の画像形成装置の一実施形態である、フルカラー印刷が可能なプリンタの概略構成図である。」 「【0021】 また、このプリンタ1には、詳細は後述するが、中間転写ベルト20と、駆動ロール21と、ステアリングロール22と、アイドラロール23とを有するベルト駆動装置2が備えられている。中間転写ベルト20は、駆動ロール21と、ステアリングロール22と、アイドラロール23とに張り架けられている。ここで、駆動ロール21と、ステアリングロール22と、アイドラロール23とが、本発明にいう複数の張架ロールの一例に相当する。」 「【0027】 続いて、シアン用およびブラック用の画像形成部10C、10Kそれぞれによる、シアンおよびブラックのトナー像の形成が上述したのと同様のタイミングで行なわれ、形成されたシアンおよびブラックのトナー像は、一次転写ロール15C、15Kそれぞれによって中間転写ベルト20のイエローおよびマゼンタのトナー像の上に順次重ねて転写される。このようにして、中間転写ベルト20上に転写された4色のトナー像は、二次転写ロール16により用紙P上に二次転写され、用紙Pとともに矢印C方向に搬送され、定着装置17により用紙P上に加熱および加圧されることで定着される。」 「【0034】 ここで、中間転写ベルト20が矢印B方向に循環移動すると、駆動ロール21,ステアリングロール22,アイドラロール23同士の平衡度の差等に起因して、循環移動中の中間転写ベルト20が移動方向Bと直交する幅方向に移動する所謂ベルトウォークと呼ばれる現象が生じる。例えば、図3(a)に示すように、中間転写ベルト20を、ステアリングロール22の軸方向に動かそうとする矢印Y1で示す力が発生し、中間転写ベルト20が矢印Y1の方向へ徐々に移動していき、やがて図3(b)に示すように、中間転写ベルト20の縁が傘状部材24の円筒部241に接触する。 【0035】 その後もベルトウォークは進み、中間転写ベルト20の縁が円筒部241に接触した状態で矢印Y1の方向へとさらに移動する。ここで、ステアリングロール22は、バネ部材31,32によって吊り上げられており、また傘状部材24,25の円錐部242,252には、位置が固定された固定部材26,27が当たっているため、中間転写ベルト20の、図の矢印Y1方向への更なる移動により、ステアリングロール22が図の右方向に押し込まれていくと、図3(c)に示すように、図の右側の円錐部242の、固定部材26に当たっている位置が斜め上方に移動するとともに、図の左側の円錐部252の、固定部材27に当たっている位置は斜め下方に移動していき、ステアリングロール22が図の右に傾いていく。 【0036】 このようにステアリングロール22が図の右側に傾くと、ベルトウォークに、矢印Y1で示す力とは反対方向の矢印Y2で示す力が生じてベルトウォークが弱まる。 【0037】 中間転写ベルト20が図の矢印Y1の方向へさらに移動していくと、図3(d)に示すように、円錐部242,252と、固定部材26,27とが当たる位置がさらに移動するため、ステアリングロール22が図の右にさらに傾く。その結果、ベルトウォークに、矢印Y1で示す力とは反対方向の矢印Y2で示す力がさらに加わってベルトウォークが止まる。 【0038】 このように、中間転写ベルト20を幅方向に動かそうとする矢印Y1で示す力は、ステアリングロール22の移動と傾きによって打ち消され、最終的に中間転写ベルト20の走行位置は安定する。尚、図3では最初に図の右方向へのベルトウォークが生じる例で説明したが、これとは逆に、最初のベルトウォークが図の左方向であった場合のも、中間転写ベルト20の左側への移動に伴い、ステアリングロール22が図の左に傾くことで、中間転写ベルト20の走行位置が安定する。」 (イ)平成30年4月13日付けの拒絶の理由の通知で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2012-53149号公報(以下「引用文献3」という。) 「【0003】 一般に、無端ベルトを所定数のローラで支持し、いずれかのローラを駆動ローラとして無端ベルトを走行させるベルト駆動装置では、走行中の無端ベルトが幅方向(ベルト走行方向と直交する方向)に移動する、いわゆるベルトの蛇行(ベルトウォーク)が発生する。このベルトの蛇行現象は、上記タンデム型のカラー画像形成装置において、例えば無端状の中間転写ベルト上に各色の画像を重ね転写する際に、各色の画像の相対的な位置ずれ、ひいては色ずれや色むら等の原因となる。そのため、高品位な出力画像(カラー画像)を得るには、ベルトの蛇行を適切に修正する必要がある。」 「【0028】 各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの上方には、感光体ドラム2の表面を露光する露光手段としての露光装置7が配設されている。また、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの下方には、中間転写ユニット8が配設されている。中間転写ユニット8は、トナー画像を担持する中間転写体としての無端状の中間転写ベルト12を有する。中間転写ベルト12は、駆動ローラ9及び複数のローラ20,21、22に張架され、図の矢印の方向に周回走行可能に構成されている。ローラ22は後述するようにステアリングローラとなる。」 「【0040】 また、二次転写ローラ14にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加して二次転写ニップに転写電界を形成する。あるいは、二次転写ローラ14に対向するローラ10にトナーの帯電極性と同極性の電圧を印加して、同様の転写電界を形成してもよい。その後、レジストローラ16a,16bの駆動を再開し、中間転写ベルト12上のトナー画像とタイミング(同期)をとって記録媒体Pを二次転写ニップへ送る。そして、二次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト12上のトナー画像を記録媒体P上に一括して二次転写する。」 「【0042】 ところで、この画像形成装置は、中間転写ベルト12を有するベルト搬送装置を備える。そして、このベルト搬送装置は、ステアリングローラ22を傾けることでベルト12の蛇行を制御するものである。 【0043】 この場合、ステアリングローラ22は無端ベルト12の折り返し位置(駆動ローラ9と相反する位置)に配置され、ステアリングローラ22の上流側近傍の上位に第1従動ローラ20が配置され、ステアリングローラ22の下流側近傍の下位に第2従動ローラ21が配置されている。 【0044】 ステアリングローラ22は、図3(a)に示すように、その軸方向長さW1が、ベルト12の幅寸法Wよりも短く設定している。このため、ステアリングローラ22の軸方向端部22aは、ベルト12の側縁12aよりも内側に位置する。また、第1従動ローラ20と第2従動ローラ21とは、その軸方向長さW2がベルト12の幅寸法Wよりも長く設定している。このため、第1従動ローラ20の軸方向端部20aと第2従動ローラ21の軸方向端部21aとは、ベルト12の側縁12aよりも外側に位置する。 【0045】 また、このベルト搬送装置は、ステアリングローラ22にて折り返されている部位においてベルト12の一方の側縁12aに接触して、その側縁12aの位置を検出する検出手段30を備えている。検出手段30は、図2に示すように、支軸31を中心に揺動する揺動体32と、この揺動体32の変位量を検出するセンサ33とを備える。 【0046】 揺動体32は、ベルト12の側縁12aに接触可能な第1片32aと、支軸31を介して第1片32aに連設される第2片32bとを有する。この場合、例えば、第1片32aと第2片32bとが略直角をなすアングル材形状である。そして、第2片32bがベルト12から離れる方向にコイルスプリング等から弾性部材34にて引張られている。このため、第1片32aがベルト12の側縁12aに接触することになる。すなわち、ベルト12が図2に示す矢印A、Bのようにベルト幅方向に移動(変位)した場合に、この変位に追従して、第1片32aが矢印C1、C2のように揺動してベルト12の側縁12aに常に接触する。 【0047】 センサ(測距センサ)33は、例えば、発光素子(赤外発光ダイオード)と位置検出素子(PSD)とで構成されている。発光素子から射出された赤外光は、第2片32bの表面にて反射して、反射光となって位置検出素子に入射する。このとき、測距センサ33と第2片32bの表面との距離によって、位置検出素子に入射する反射光の入射位置が変化して、それに比例して受光素子(測距センサ32)の出力値が変化する。これにより、第2片32bの揺動量を検出することができ、この第2片32bの揺動量の検出によって、第1片32aの揺動量、つまり、中間転写ベルト12の幅方向の変位量を検知することができる。 【0048】 ところで、第1片32aのベルト12の側縁12aへの接触部位は、図3(b)に示すように、ステアリングローラ22にて折り返されている部位であって、中心角θ1が60°以上(この実施例では120°程度)の円弧形状部35である。 【0049】 また、ステアリングローラ22には、図4に示すように、ステアリングローラの軸方向一端部を中心に揺動させて傾斜させる揺動機構40が付設されている。揺動機構40は、その先端部がステアリングローラ22の軸方向一端部に枢結され、基端部側のカム機構42等によって、基端部が上下動するアーム41を備える。すなわち、アーム41は、カム機構42の駆動によって、その揺動中心軸43を中心に、その先端部が矢印D1、D2方向に揺動する。また、ステアリングローラ22は、固定部に枢結さている。このため、アーム41先端部が矢印D1、D2方向に揺動することによって、ステアリングローラ22は、その軸方向他端部を中心に、その軸方向一端部側が上下動する。 【0050】 カム機構42の駆動は、図4に示すように、モータ等の駆動手段45にて行われる。また、この駆動手段45の制御は、マイクロコンピュータ等にて構成される制御手段46にて行われる。すなわち、制御手段46から駆動手段45へ指令信号が出力され、この指令信号によって、駆動手段45が駆動して、その指令信号の指示量だけカム機構42のカムを回動させる。これによって、その指示量に応じて揺動機構40のアーム41が、その軸方向他端部を中心にその軸方向先端部が矢印D1、D2方向に揺動することになる。なお、駆動手段45のモータとしては、ステッピングモータ等を用いることができる。ステッピングモータは、回転角度や回転速度を高精度に制御可能であるので、このモータ(ステアリング)に最適となる。 【0051】 次に前記のように構成されたベルト搬送装置の動作を説明する。まず、ベルト12の走行中に、検出手段30の揺動体32の第1片32aを、図3に示すように、ベルト12の側縁12aに接触させた状態とする。そして、ベルト12が幅方向にずれていない状態(蛇行していない状態)では、この状態のままベルト12が走行する。 【0052】 しかしながら、ベルト12が幅方向のいずれかにずれれば、例えば、図3(a)に示す状態から矢印A方向にずれれば、そのずれに対応して、揺動体32の第1片32aが矢印C1方向に揺動する。このため、第2片32bがセンサ33側に接近することになる。 【0053】 このような状態では、その揺動体32の揺動量がセンサ33にて検出され、その検出値が制御手段46に入力される。制御手段46では、この揺動量に応じて、駆動手段45に駆動信号を出力し、ステアリングローラ22を傾動させる。この場合、反検出手段側を上昇させることになる。この傾動によって、ベルト12は、検出手段側に寄っていくことになる。さらに、ベルト12を駆動させることによって、ベルト全体に影響が波及して蛇行を修正できる。 【0054】 逆に、図3(a)に示す状態から矢印B方向にずれれば、そのずれに対応して、揺動体32の第1片32aが矢印C2方向に揺動する。このため、第2片32bがセンサ33側から遠ざかることになる。 【0055】 このような状態では、その揺動体32の揺動量がセンサ33にて検出され、その検出値が制御手段46に入力される。制御手段46では、この揺動量に応じて、駆動手段45に駆動信号を出力し、ステアリングローラ22を傾動させる。この場合、検出手段側を上昇させることになる。この傾動によって、ベルト12は、反検出手段側に寄っていくことになる。さらに、ベルト12を駆動させることによって、ベルト全体に影響が波及して蛇行を修正できる。」 そうすると、引用発明の「e 前記中間転写ベルト2を架張するウォーク補正ローラ2dであって、中間転写ベルト2の走行を安定化するためのウォーク補正ローラ2d」の具体化手段として、上記周知技術を適用して、傾動するステアリングローラによって中間転写ベルト2の幅方向の移動が抑制されるものとすることに格別の困難性はない。 また、引用発明は「ウォーク補正ロール2d」で「ウォーク」たる中間転写ベルト2の幅方向の移動を「補正」するものであるから、ある程度の移動は生じ得るであろうが、所定の領域から逸脱しないようになることは自明である。 したがって、引用発明に上記周知技術を適用して相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。 (相違点2について) 引用発明は「ウォーク補正ロール2d」で「ウォーク」たる中間転写ベルト2の幅方向の移動を「補正」するものであって、構成iの「可撓性バッフル板7a」が「中間転写ベルト2の幅方向全域にわたって延在」し「先端縁が前記中間転写体ベルト2の幅方向全域にわたって摺接し、摺接部分の下流における前記中間転写ベルト2のトナー担持面を均一な平面となるようにする」ものであるから、ある程度のウォークが生じても、摺接部分の下流における前記中間転写ベルト2のトナー担持面を均一な平面となる」ように、中間転写ベルト2の各端部が可撓性バッフル板7aの各端部より幅方向外側に位置するまで大きく移動することがないことは自明であるから、相違点2には実質的な相違点ではない。 また、仮に、引用発明が、ある程度のウォークが生じても、摺接部分の下流における前記中間転写ベルト2のトナー担持面を均一な平面となる」ように、中間転写ベルト2の各端部が可撓性バッフル板7aの各端部より幅方向外側に位置するまで大きく移動することがないことは自明といえない場合でも、ある程度のウォークが生じても、摺接部分の下流における前記中間転写ベルト2のトナー担持面を均一な平面となる」ことを維持しようとすることは当業者が容易に想起できるから、そのために、中間転写ベルト2の各端部が可撓性バッフル板7aの各端部より幅方向外側に位置するまで大きく移動することがないものとして相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。 そして、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)審判請求書における請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、引用文献1には、可塑性バッフル7aは、中間転写ベルト2の全幅に相当する長さで配置される記載はあるが、本願補正発明の特徴部分である、「中間転写ベルト2が寄り制御範囲で移動した際における、中間転写ベルトの両端と、可塑性バッフル板の両端と、の位置関係」について記載も示唆もなく、従って、引用発明は、本願補正発明の「前記押圧部材は、前記中間転写ベルトが前記所定領域の一端に位置するときに、前記中間転写ベルトの両端と接触し、前記中間転写ベルトが前記所定領域の他端に位置するときに、前記中間転写ベルトの両端と接触するように前記中間転写ベルトの幅よりも長く構成されている」との構成を有しておらず、「ベルトが寄り制御範囲で移動しても、押圧部材の端部がベルトと摺擦することがなくなり、このため、ベルトが寄り制御範囲で移動しても押圧部材の端部でベルトが応力集中する不具合を抑制できる」という本願補正発明の効果を得ることができず、また、引用文献1には、可塑性バッフル7aは、中間転写ベルト2の全幅に相当する長さで配置される記載はあるが、その目的について一切開示はなく、そのため、押圧部材の端部でベルトに応力集中してしまう課題に関する記載がなく、ましてや、本願補正発明の課題である「中間転写ベルトがベルト寄り制御範囲内で移動したときに、押圧部材の端部が中間転写ベルトの端部よりも内側に位置してしまい、削れ粉が生じ得る」といった課題について記載も示唆もないから、従って、引用文献1から本願補正発明を導くことは、例え当業者と言えども成し得ない旨主張する。 しかし、上記(3)の (相違点2について)で検討したように、引用発明は「ウォーク補正ロール2d」で「ウォーク」たる中間転写ベルト2の幅方向の移動を「補正」するものであって、構成iの「可撓性バッフル板7a」が「中間転写ベルト2の幅方向全域にわたって延在」し「先端縁が前記中間転写体ベルト2の幅方向全域にわたって摺接し、摺接部分の下流における前記中間転写ベルト2のトナー担持面を均一な平面となるようにする」ものであるから、ある程度のウォークが生じても、摺接部分の下流における前記中間転写ベルト2のトナー担持面を均一な平面となる」ように、中間転写ベルト2の各端部が可撓性バッフル板7aの各端部より幅方向外側に位置するまで大きく移動することがないことは自明であるから、相違点2には実質的な相違点ではない。 また、仮に、引用発明が、ある程度のウォークが生じても、摺接部分の下流における前記中間転写ベルト2のトナー担持面を均一な平面となる」ように、中間転写ベルト2の各端部が可撓性バッフル板7aの各端部より幅方向外側に位置するまで大きく移動することがないことは自明といえない場合でも、ある程度のウォークが生じても、摺接部分の下流における前記中間転写ベルト2のトナー担持面を均一な平面となる」ことを維持しようとすることは当業者が容易に想起できるから、そのために、中間転写ベルト2の各端部が可撓性バッフル板7aの各端部より幅方向外側に位置するまで大きく移動することがないものとして相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。 そして、「ベルトが寄り制御範囲で移動しても、押圧部材の端部がベルトと摺擦することがなくなり、このため、ベルトが寄り制御範囲で移動しても押圧部材の端部でベルトが応力集中する不具合を抑制できる」という本願補正発明の効果は、引用発明の「e 前記中間転写ベルト2を架張するウォーク補正ローラ2dであって、中間転写ベルト2の走行を安定化するためのウォーク補正ローラ2d」を備えること、及び「i 前記可撓性バッフル板7aは、前記中間転写ベルト2の幅方向全域にわたって延在する略矩形状の薄板状であり、先端縁が前記中間転写体ベルト2の幅方向全域にわたって摺接し、摺接部分の下流における前記中間転写ベルト2のトナー担持面を均一な平面となるようにする」ことから予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 (5)本件補正についてのむすび 以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?7に係る発明は、平成30年6月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1の(本件補正前)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶理由 原査定の拒絶の理由は、 (進歩性)この出願の請求項1?3、5?7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、 ・特開平9-80926号公報(引用文献1) ・特開2011-8023号公報(引用文献2、周知技術を示す文献) ・特開2012-53149号公報 ・特開2002-148968号公報(引用文献3) というものである。 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本願補正発明から、「中間転写ベルトの内周面を押圧する押圧部材」と、「転写部を形成する」「第1ローラ」及び「第2ローラ」との位置関係についての限定、すなわち「前記中間転写ベルトの移動方向において、前記押圧部材と前記中間転写ベルトとの当接部の最下流の位置と、前記第1ローラの回転中心と前記第2のローラの回転中心を結ぶ線が前記中間転写ベルトと交差する位置と、の間の距離が25mm以下であ」るとの限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2(3)イに記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-11-15 |
結審通知日 | 2019-11-19 |
審決日 | 2019-12-04 |
出願番号 | 特願2014-195818(P2014-195818) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G03G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松山 紗希 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
藤田 年彦 清水 康司 |
発明の名称 | 画像形成装置 |
代理人 | 黒岩 創吾 |
代理人 | 阿部 琢磨 |