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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 出願日、優先日、請求日 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1359093
審判番号 不服2019-8500  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-26 
確定日 2020-02-04 
事件の表示 特願2017-83598号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年7月20日出願公開、特開2017-124283号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年7月30日に出願した特願2007-197417号(以下、「原出願1」という。)の一部を平成24年12月5日に新たな特許出願(特願2012-266214号。以下、「原出願2」という。)とし、さらにその一部を平成27年8月6日に新たな特許出願(特願2015-156161号。以下、「原出願3」という。)とし、さらにその一部を平成29年4月20日に新たな特許出願(特願2017-83598号)とした特許法第44条第1項の規定に基づく分割出願である。
そして、本願については、平成30年4月17日付けで拒絶の理由が通知され、同年6月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月3日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月8日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月17日付けで最後の拒絶の理由が通知され、平成31年2月25日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年3月25日付け(送達日:同年4月2日)で、同年2月25日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、それに対して、令和1年6月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は、次のとおりである。

●本願の出願日について
原出願3についての原出願1、原出願2の出願日への出願日の遡及は認めることができず、本願の出願日の判断においては、原出願3は現実の出願日に出願したものとして取り扱うこととなる。
そして、今回の平成30年11月8日付け手続補正により、本願の特許請求の範囲の請求項1?2に係る発明は、実質的な意味において、原出願3の当初明細書等に記載された発明と認められるものとなったことから、本願は、原出願1や原出願2への出願日の遡及は認めず、原出願3の現実の出願日(平成27年8月6日)に出願されたものとする。

1.(新規性)本願の請求項1-2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1、2又は3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)本願の請求項1-2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1、2又は3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2009-28417号公報
2.特開2002-35248号公報
3.特開平11-164939号公報

第3 本願発明
本願請求項1及び2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和1年6月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
遊技球を所定個数ずつ送り出す球送り機構と、遊技球を遊技領域に向けて打ち出す遊技球発射装置と、遊技球が前記遊技球発射装置による打球動作を受けるべく待機する発射待機位置から前記遊技球発射装置により遊技球が発射される方向へ上り傾斜する傾斜面を有し前記傾斜面のうち前記発射待機位置よりも上流側で前記球送り機構により供給された遊技球を受ける発射レールと、を備え、前記球送り機構により供給された遊技球が前記傾斜面に沿って前記発射待機位置に移動するとともに、前記発射待機位置において前記遊技球発射装置により打ち出された遊技球が前記傾斜面に沿って移動して前記遊技領域に向かうように構成され、前記傾斜面が、遊技球の下半部を両側からそれぞれ支える2つの面を有し上方に向けて開放された溝状に形成されている遊技機であって、
表面を前記発射レールの側方に沿わせるようにして前記発射レールが取り付けられるベース板を備え、前記発射レールのうち、前記球送り機構により供給された遊技球を受ける位置から前記発射待機位置までの間に沿った前記表面の所定箇所に、遊技球が接触した場合の衝撃を緩和させる第1の衝撃吸収部材を配置し、
前記球送り機構の前記第1の衝撃吸収部材に対向する位置に、第2の衝撃吸収部材が設けられていることを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記遊技機は、パチンコ機であることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。」

第4 分割の適否について
1 特許出願の分割の要件
特許法第44条第1項は、出願人が二以上の発明を包含する特許出願の一部を新たな特許出願とすること(以下、「特許出願の分割」という。)ができる旨を規定しており、特許出願の分割の要件(以下、「分割要件」という。)を満たし、特許出願の分割が適法になされた場合、同条第2項の規定により、新たな特許出願(以下、「分割出願」という。)は、もとの特許出願(以下、「原出願」という。)の時にしたものとみなされる。そして、特許法第44条第1項の規定、及び、分割出願が原出願の時にしたものとみなされるという特許出願の分割の効果を考慮すれば、特許出願の分割が適法であるためには、以下の(1)?(4)の要件を満たす必要がある(東京高裁平成15年(行ケ)第65号判決を参照)。

(1)原出願の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)に二以上の発明が包含されていたこと。
(2)分割出願に係る発明が、原出願の明細書等に記載された発明の一部であること。
(3)分割出願に係る発明が、分割直前の原出願の明細書等に記載されていること。
(4)分割出願に係る発明が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること。

また、第1の原出願(以下、「親出願」という。)から第1の分割出願(以下、「子出願」という。)をし、さらに子出願を第2の原出願として第2の分割出願(以下、「孫出願」という。)をした場合に、孫出願が親出願の時にしたものとみなされるためには、子出願が親出願に対し分割要件を満たし、孫出願が子出願に対し分割要件を満たし、かつ、孫出願に係る発明が親出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であることを要する(上記東京高裁判決を参照)。

これを本件に当てはめると、本願が原出願1の時にしたものとみなされるためには、以下の(a)?(d)の要件を満たす必要がある。

(a)原出願2が、原出願1に対し分割要件を満たすこと。
(b)原出願3が、原出願2に対し分割要件を満たすこと。
(c)本願が、原出願3に対し分割要件を満たすこと。
(d)本願発明が、原出願1の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること。

2 原出願1から原出願2への分割の適否及び原出願2から原出願3への分割の適否(上記(a)、(b)について)
原出願2は、原出願1の一部を平成24年12月5日に新たな特許出願としたものであり、平成27年7月8日付け(送達日:同年7月15日)で特許査定がなされたものであり、原出願3は、原出願2の一部を平成27年8月6日に新たな特許出願としたものであり、平成29年3月30日付け(送達日:同年4月4日)で特許査定がなされたものである。そして、いずれの特許査定においても、特許法第44条第2項の規定に基づく出願日の遡及を認めたうえで、審査官によって特許をすべき旨の査定がなされ、その後、原出願2及び原出願3について、審決等により、出願日の遡及を認めない旨の判断は示されていない。
上記の経緯から、原出願1から原出願2への分割及び原出願2から原出願3への分割はいずれも、特許法第44条第1項に規定する分割要件を満たすものであると認められる。

3 原出願3から本願への分割の適否(上記(c)について)
本願発明は、分割直前の原出願3の明細書の【0097】?【0115】及び図13?22等に記載されたものであり、かつ、原出願3の出願当初の明細書の【0096】?【0114】及び図13?22等に記載された事項の範囲内のものである。
また、原出願3の明細書等に二以上の発明が包含されており、本願発明が、原出願3の明細書等に記載された発明の全部ではなく一部であることは明らかである。
よって、原出願3から本願への分割は、適法なものである。

4 本願発明が、原出願1の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であるか否かについて(上記(d)について)
本願発明は、原出願1の出願当初の明細書の【0096】?【0114】及び図13?22等の記載からみて、原出願1の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内のものであるといえる。

5 分割の適否についてのまとめ
上記2?4にて説示したとおり、上記1にて説示した(a)?(d)の要件は全て満たされているから、本願は、原出願1が出願された平成19年7月30日に出願したものとみなされる。

第5 原査定についての判断
原査定において引用された引用文献1(特開2009-28417号公報)は、本願が出願したとみなされる平成19年7月30日よりも後の平成21年2月12日に公開されたものであるから、引用文献1に記載された発明は、特許法第29条第1項第3号でいう「特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明」にはあたらず、同条第2項でいう「前項各号に掲げる発明」にもあたらない。
また、本願発明は、「前記球送り機構の前記第1の衝撃吸収部材に対向する位置に、第2の衝撃吸収部材が設けられている」点で、原査定において引用された引用文献2又は引用文献3に記載された発明ではなく、引用文献2又は引用文献3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
したがって、原査定の理由1及び2を維持することはできない。

第6 まとめ
以上のとおり、本願については、原査定の拒絶理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-01-21 
出願番号 特願2017-83598(P2017-83598)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63F)
P 1 8・ 03- WY (A63F)
P 1 8・ 113- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 尾崎 俊彦  
特許庁審判長 ▲吉▼川 康史
特許庁審判官 蔵野 いづみ
木村 隆一
発明の名称 遊技機  
代理人 川口 光男  

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