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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1359138 |
審判番号 | 不服2018-10337 |
総通号数 | 243 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-07-30 |
確定日 | 2020-01-20 |
事件の表示 | 特願2014-175668「金属-セラミックス接合基板」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月11日出願公開、特開2016- 51778〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年8月29日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 1月19日付け:拒絶理由通知書 同 年 3月 7日 :意見書、手続補正書の提出 同 年 5月 9日付け:拒絶査定 同 年 7月30日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 1年 7月25日付け:拒絶理由通知書 同 年 9月13日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし6に係る発明は、 令和1年9月13日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 窒化アルミニウムからなるセラミックス基板の各々の面に金属板として銅板または銅合金板が接合された金属-セラミックス接合基板において、セラミックス基板の3点曲げ強度が500MPa以上であり、セラミックス基板の厚さが0.25?0.45mm、金属板の厚さが0.20?0.28mmであり、金属-セラミックス接合基板の最大たわみ量が450(μm/30mm)以上であることを特徴とする、金属-セラミックス接合基板。」 第3 当審における拒絶の理由 当審が通知した拒絶理由のうちの理由1は、次のとおりのものである。 本件出願の請求項1ないし7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1ないし2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2003-197824号公報 引用文献2:特開2006-62907号公報 第4 引用文献の記載 1.引用文献1について 当審による拒絶理由通知で引用した上記引用文献1には、「セラミックス回路基板」について、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 (1)「【0014】図1は本発明のセラミックス回路基板の一例を示した外観図であり、図2は本発明のセラミックス回路基板の一例を示した断面図である。 【0015】セラミックス回路基板を構成するセラミックス基板1には、少なくとも1つの貫通孔2が形成されている。この貫通孔2は、例えばネジ止め等に利用されるものであり、その端部には補強部材3が設けられている。本発明では貫通孔2の少なくとも1つに補強部材3が設けられていることによって、ネジ止めの際や使用時にかかる負荷により、貫通孔を起点とするクラックの発生等を抑制することができる。 【0016】また、セラミックス基板1の両主面には、貫通孔2が形成された部分を除いて、金属板4が接合されている。この金属板4のうち少なくとも一方は回路板として使用される。回路板として使用する際は、所定の回路形状のものを使用してよいことは言うまでもない。また、回路板として使用しない際の裏金属板は貫通孔を覆うサイズでもよく、また貫通孔を覆わないサイズでもよく、特にサイズは限定されるものではない。」 (2)「【0053】(実施例8?14、比較例3?4)セラミックス基板(縦60mm×横40mm×厚さ0.635mm)として窒化アルミニウム基板(熱伝導率200W/m・K)または窒化けい素基板(熱伝導率80W/m・K)を用い、活性金属接合法またはAlろう材接合によりセラミックス基板と無酸素銅板(板厚0.25mm)あるいはアルミニウム板(板厚0.2mm)とを接合した。なお、活性金属接合法による接合はAg-27wt%Cu-3wt%Tiろう材を用いて、830℃で熱処理を行い、Alろう材による接合は、Al-5wt%Siろう材を用いて、650℃で熱処理を行った。 【0054】さらに、接合された銅板またはAl板部分をエッチングすることにより金属板(回路部分)と補強部材とを同時に形成し、セラミックス回路基板を作製した。補強部材はセラミックス基板の貫通孔の周囲に形成し、外径3mm、内径1mmとした。」 (3)「【0057】 【表2】 【0058】表2に示されるように、活性金属法またはAlろう材接合により補強部材を設けた本発明のセラミックス回路基板についても、不良発生率が大幅に改善されていることが認められた。また、前述の直接接合法および接着剤を用いた接合法と比較して、活性金属接合法およびAlろう材接合法は接合強度が高いので補強部材とセラミックス基板の接合強度が向上したためネジ止め時の不良率が相対的に改善されたものと思われる。 【0059】(実施例15?20、比較例5?6)次に、セラミックス基板のサイズを変えた以外は実施例9と同じ窒化アルミニウム基板を用いたセラミックス回路基板を実施例15?17、基板サイズを変えた以外は実施例12と同じ窒化けい素基板を用いたセラミックス回路基板を実施例18?20として用意し、同様にネジ止め時の不良発生率(%)を測定した。また、比較のために本発明の好ましい範囲外である基板厚さを具備するものを比較例5、6として用意し同様の測定を行った。結果を表3に示す。 【0060】 【表3】 」 ・上記(1)及び図1、2によれば、引用文献1には、セラミックス基板1の両主面に金属板4が接合されたセラミックス回路基板が記載されている。 ・上記(2)及び表2によれば、引用文献1には、実施例9として、セラミックス基板に窒化アルミニウム基板を用い、金属板4に無酸素銅板(板厚0.25mm)を用いることが記載されている。また、上記(3)の段落【0059】及び表3によれば、引用文献1には、実施例17として、基板の厚さが0.3mmであり、セラミックス基板のサイズを変えた以外は実施例9と同じ窒化アルミニウム基板を用いたセラミックス回路基板が記載されている。 したがって、引用文献1には、実施例17として、セラミックス基板に窒化アルミニウム基板を用い、金属板に無酸素銅板を用い、セラミックス基板の厚さを0.3mm、金属板の厚さを0.25mmとすることが記載されている。 特に実施例17に係るものに着目し、上記摘示事項および図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「窒化アルミニウムからなるセラミックス基板1の両主面に金属板4として無酸素銅板が接合されたセラミックス回路基板において、セラミックス基板1の厚さが0.3mm、金属板4の厚さが0.25mmであるセラミックス回路基板。」 2.引用文献2について 当審による拒絶理由通知で引用した上記引用文献2には以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 「【0030】 [実施例1] 図1に示すように、黒鉛鋳型10の上部の凹部12内に、ケイ素1重量%とホウ素0.04重量%と残部のアルミニウムとからなるアルミニウム合金原料14を入れて黒鉛ピストン16を設置するとともに、鋳型10の下部の空洞18内に、高強度窒化アルミニウム(AlN)からなる48mm×38mm×0.635mmの大きさのセラミックス基板20(3点曲げの抗折強度500MPa)を設置し、鋳型10を800℃に加熱した炉の中に入れた。アルミニウム合金原料14が溶けてピストン16の重量で空洞18内に入り込んだ後に、鋳型10を炉から取り出し、室温まで冷却し、セラミックス基板20の両面にそれぞれ厚さ0.5mmのアルミニウム合金層が接合したアルミニウム-セラミックス接合基板を作製した。このようにして作製したアルミニウム-セラミックス接合基板を機械研磨および電解研磨した。なお、黒鉛鋳型10の酸化を防ぐために、加熱および冷却は窒素雰囲気中で行った。」 したがって、引用文献2には、「セラミックス基板として、3点曲げの抗屈強度が500MPaの高強度窒化アルミニウムを用いる」技術事項が記載されている。 第5 対比 本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「窒化アルミニウムからなるセラミックス基板1の両主面に金属板4として無酸素銅板が接合されたセラミックス回路基板」は、本願発明の「窒化アルミニウムからなるセラミックス基板の各々の面に金属板として銅板または銅合金板が接合された金属-セラミックス接合基板」に含まれる。 (2)引用発明の「セラミックス基板1の厚さが0.3mm」である点は、本願発明の「セラミックス基板の厚さが0.25?0.45mm」である点に含まれる。 (3)引用発明の「金属板4の厚さが0.25mm」である点は、本願発明の「金属板の厚さが0.20?0.28mm」である点に含まれる。 そうすると、本願発明と引用発明とは、 「窒化アルミニウムからなるセラミックス基板の各々の面に金属板として銅板または銅合金板が接合された金属-セラミックス接合基板において、セラミックス基板の厚さが0.25?0.45mm、金属板の厚さが0.20?0.28mmである、金属-セラミックス接合基板。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] セラミックス基板の3点曲げ強度について、本願発明では500MPa以上である旨特定されているのに対して、引用発明ではその旨特定されていない点。 [相違点2] 金属-セラミックス接合基板の最大たわみ量について、本願発明では450(μm/30mm)以上である旨特定されているのに対し、引用発明ではその旨特定されていない点。 第6 当審の判断 1.相違点1について 上記「第4 2.」のとおり、引用文献2には、セラミックス基板として、3点曲げの抗屈強度が500MPaの高強度窒化アルミニウムを用いる技術事項が記載されている。また、審判請求書にあるように、3点曲げ強度が500MPa以上の窒化アルミニウムからなるセラミックス基板は、2001年3月頃に販売され始めたとの事情を考慮すれば、本願出願時の2014年8月29日において、当業者にとって周知であったと認められる。 そして、引用文献1の段落【0008】には、「近年、セラミックス回路基板の薄型化が進んでおり、これに使用されるセラミックス基板についても薄型化が求められている」ため、「セラミックス基板の強度は必然的に低下」していると記載されているから、引用発明においてセラミックス基板として強度の高いものを用いることは、当業者が容易に着想できたことである。 また、セラミックス基板の3点曲げ強度を高めれば、熱変形に対して耐性が高くなるのだから耐ヒートサイクル特性が一般的に高まるのは当業者であれば予測できることである。 そして、本願明細書の表1?3を参酌しても、3点曲げ強度を500MPa以上とすることによる格別な効果は認められない。 よって、引用発明において、引用文献2に記載された周知のセラミックス基板を採用し、上記相違点1に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。 なお、請求人は、令和1年9月13日提出の意見書で「引用文献1に引用文献2を適用することの動機づけとなりうるものはなく、本願発明が引用文献1と引用文献2との組み合わせから容易になされたものとはいえません。」と主張しているが、上述のとおり、引用文献1に記載された引用発明において、引用文献2に記載された周知の技術事項を採用することの動機はあるといえ、請求人の主張は採用できない。 2.相違点2について 本願明細書の表1ないし3を検討すると、セラミックス基板の厚さが0.25?0.45mmで、3点曲げ強度が500MPa以上であって、金属板の厚さが0.20?0.28mmであるすべての実施例(実施例1ないし5)において、金属-セラミックス接合基板の最大たわみ量は450(μm/30mm)以上となっている。 また、令和1年9月13日提出の意見書において、 「本願請求項1に記載の発明のように、3点曲げ強度が500MPa以上で厚さが0.25?0.45mmの窒化アルミニウムからなるセラミックス基板に厚さが0.20?0.28mmの銅板または銅合金板を接合することにより、金属-セラミックス接合基板の最大たわみ量を450(μm/30mm)以上にすれば、・・・」、引用文献1や引用文献2は、「本願発明のように、3点曲げ強度が(一般的な300?400MPaより高い)500MPa以上で厚さが0.25?0.45mm(好ましくは0.37?0.45mm)の窒化アルミニウムからなるセラミックス基板に厚さが0.20?0.28mmの銅板または銅合金板を接合することにより、金属-セラミックス接合基板の最大たわみ量を450(μm/30mm)以上にすることについて何ら開示ないし示唆しておりません。」と述べており、3点曲げ強度が500MPa以上で厚さが0.25?0.45mmの窒化アルミニウムからなるセラミックス基板に厚さが0.20?0.28mmの銅板または銅合金板を接合することによって、金属-セラミックス接合基板の最大たわみ量が450(μm/30mm)以上になる趣旨の説明が繰り返し行われている。 したがって、金属-セラミックス接合基板の最大たわみ量を除いて本願発明の構成要件をすべて満たすとき、金属-セラミックス接合基板の最大たわみ量についても構成要件を満たす、すなわち、セラミックス基板の厚さが0.25?0.45mm、3点曲げ強度が500MPa以上で、金属板の厚さが0.20?0.28mmのとき、金属-セラミックス接合基板の最大たわみ量は450(μm/30mm)以上になると認められる。 そうすると、上記相違点2に係る構成は、相違点2以外の構成要件を満たすことに伴って、必然的に満たされる構成要件であると認められるから、上述のとおり、相違点1に係る構成が当業者にとって容易に想到できたものである以上、相違点2に係る構成も当業者が容易に想到できたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-11-21 |
結審通知日 | 2019-11-26 |
審決日 | 2019-12-09 |
出願番号 | 特願2014-175668(P2014-175668) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(H01L)
P 1 8・ 121- WZ (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 綿引 隆 |
特許庁審判長 |
井上 信一 |
特許庁審判官 |
石坂 博明 須原 宏光 |
発明の名称 | 金属-セラミックス接合基板 |
代理人 | 大川 浩一 |