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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1359250
審判番号 不服2019-900  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-23 
確定日 2020-02-25 
事件の表示 特願2014-235438「接合体の製造方法、ヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法、ヒートシンクの製造方法、及び、接合体、ヒートシンク付パワーモジュール用基板、ヒートシンク」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月30日出願公開、特開2016-100430、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年11月20日の出願であって、平成30年6月26日付けで拒絶理由通知がされ、同年8月21日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、同年10月12日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成31年1月23日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年10月12日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1-9に係る発明は、以下の引用文献1、5、6に記載された発明及び引用文献2-4、7に記載の周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2001-252772号公報
2.特開2005-129599号公報(周知技術を示す文献)
3.国際公開第2009/098865号(周知技術を示す文献)
4.特開2014-210270号公報(周知技術を示す文献)
5.特開昭58-77784号公報
6.特開2014-60215号公報
7.特開2002-294376号公報(周知技術を示す文献)

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、以下の理由で、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

審判請求時の補正によって、請求項1、3、5は、補正前の請求項1、3、5それぞれに記載の「積層方向に加圧した状態で加熱することにより」が、「積層方向に加圧した状態で加熱して保持することにより」とされるとともに、補正前の請求項1、3、5それぞれに、「前記アルミニウム介在層/金属部材固相拡散接合工程においては、加熱温度を400℃以上とする」、「前記アルミニウム介在層/金属層固相拡散接合工程においては、加熱温度を400℃以上とする」、「前記アルミニウム介在層/金属部材層固相拡散接合工程においては、加熱温度を400℃以上とする」という事項が追加された。
また、審判請求時の補正によって、請求項7?9は、補正前の請求項7-9それぞれに、金属間化合物層について、「厚さが1μm以上8μm以下の範囲内とされている」という事項が追加された。
また、審判請求時の補正によって、明細書の段落【0012】、【0015】、【0018】、【0021】、【0023】、【0025】が補正された。

当該審判請求時の補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、「積層方向に加圧した状態で加熱して保持する」、「アルミニウム介在層/金属部材(金属層、金属部材層)固相拡散接合工程においては、加熱温度を400℃以上とする」という事項は、当初明細書の段落【0043】、【0058】、【0059】に記載されており、また、金属間化合物層について、「厚さが1μm以上8μm以下の範囲内とされている」という事項は、当初明細書の段落【0035】、【0054】に記載されており、そしてまた、当該補正後の明細書の段落【0012】、【0015】、【0018】、【0021】、【0023】、【0025】に記載されている事項は、当初明細書の段落【0043】、【0058】、【0059】及び当初明細書の段落【0035】、【0054】に記載されているから、当該補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。

そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-9に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は、平成31年1月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
銅、ニッケル、又は銀からなる金属部材と、固相線温度が前記金属部材を構成する金属元素とアルミニウムとの共晶温度未満とされたアルミニウム合金からなるアルミニウム合金部材と、が接合されてなる接合体の製造方法であって、
前記アルミニウム合金部材と前記金属部材との間には、純度が99質量%以上のアルミニウムからなるアルミニウム介在層が配設されており、
前記アルミニウム合金部材と前記アルミニウム介在層とを固相拡散接合するアルミニウム合金部材/アルミニウム介在層固相拡散接合工程と、
前記アルミニウム介在層と前記金属部材とを積層し、積層方向に加圧した状態で加熱して保持することにより、前記アルミニウム介在層と前記金属部材とを固相拡散接合するアルミニウム介在層/金属部材固相拡散接合工程と、を備えており、
前記アルミニウム介在層/金属部材固相拡散接合工程においては、加熱温度を400℃以上とすることを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項2】
前記アルミニウム合金部材/アルミニウム介在層固相拡散接合工程と、前記アルミニウム介在層/金属部材固相拡散接合工程と、を同時に実施することを特徴とする請求項1に記載の接合体の製造方法。
【請求項3】
絶縁層と、この絶縁層の一方の面に形成された回路層と、前記絶縁層の他方の面に形成された金属層と、この金属層の前記絶縁層とは反対側の面に配置されたヒートシンクと、
を備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法であって、
前記金属層と前記ヒートシンクとの間には、純度が99質量%以上のアルミニウムからなるアルミニウム介在層が配設されており、
前記金属層のうち前記アルミニウム介在層との接合面は、銅、ニッケル、又は銀で構成され、
前記ヒートシンクのうち前記アルミニウム介在層との接合面は、固相線温度が前記金属層の前記接合面を構成する金属元素とアルミニウムとの共晶温度未満とされたアルミニウム合金で構成されており、
前記ヒートシンクと前記アルミニウム介在層とを固相拡散接合するヒートシンク/アルミニウム介在層固相拡散接合工程と、
前記アルミニウム介在層と前記金属層とを積層し、積層方向に加圧した状態で加熱して保持することにより、前記アルミニウム介在層と前記金属層とを固相拡散接合するアルミニウム介在層/金属層固相拡散接合工程と、を備えており、
前記アルミニウム介在層/金属層固相拡散接合工程においては、加熱温度を400℃以上とすることを特徴とするヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項4】
ヒートシンク/アルミニウム介在層固相拡散接合工程と、前記アルミニウム介在層/金属層固相拡散接合工程と、を同時に実施することを特徴とする請求項3に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項5】
ヒートシンク本体と、金属部材層と、を備えたヒートシンクの製造方法であって、
前記ヒートシンク本体と前記金属部材層との間に、純度が99質量%以上のアルミニウムからなるアルミニウム介在層が配設されており、
前記金属部材層は、銅、ニッケル、又は銀からなり、
前記ヒートシンク本体は、固相線温度が前記金属部材層を構成する金属元素とアルミニウムとの共晶温度未満とされたアルミニウム合金で構成されており、
前記ヒートシンク本体と前記アルミニウム介在層とを固相拡散接合するヒートシンク本体/アルミニウム介在層固相拡散接合工程と、
前記アルミニウム介在層と前記金属部材層とを積層し、積層方向に加圧した状態で加熱して保持することにより、前記アルミニウム介在層と前記金属部材層とを固相拡散接合するアルミニウム介在層/金属部材層固相拡散接合工程と、を備えており、
前記アルミニウム介在層/金属部材層固相拡散接合工程においては、加熱温度を400℃以上とすることを特徴とするヒートシンクの製造方法。
【請求項6】
前記ヒートシンク本体/アルミニウム介在層固相拡散接合工程と、前記アルミニウム介在層/金属部材層固相拡散接合工程と、を同時に実施することを特徴とする請求項5に記載のヒートシンクの製造方法。
【請求項7】
銅、ニッケル、又は銀からなる金属部材と、固相線温度が前記金属部材を構成する金属元素とアルミニウムとの共晶温度未満とされたアルミニウム合金からなるアルミニウム合金部材と、が接合されてなる接合体であって、
前記アルミニウム合金部材と前記金属部材との間には、純度が99質量%以上のアルミニウムからなるアルミニウム介在層が配設されており、
前記アルミニウム合金部材と前記アルミニウム介在層とが固相拡散接合され、
前記アルミニウム介在層と前記金属部材とが固相拡散接合され、前記アルミニウム介在層と前記金属部材との接合界面には、金属間化合物層が形成されており、
前記金属間化合物層は、複数の金属間化合物が接合界面に沿って積層した構造とされ、厚さが1μm以上8μm以下の範囲内とされていることを特徴とする接合体。
【請求項8】
絶縁層と、この絶縁層の一方の面に形成された回路層と、前記絶縁層の他方の面に形成
された金属層と、この金属層の前記絶縁層とは反対側の面に配置されたヒートシンクと、
を備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板であって、
前記金属層と前記ヒートシンクとの間には、純度が99質量%以上のアルミニウムからなるアルミニウム介在層が配設されており、
前記金属層のうち前記アルミニウム介在層との接合面は、銅、ニッケル、又は銀で構成され、
前記ヒートシンクのうち前記アルミニウム介在層との接合面は、固相線温度が前記金属層の前記接合面を構成する金属元素とアルミニウムとの共晶温度未満とされたアルミニウム合金で構成されており、
前記ヒートシンクと前記アルミニウム介在層とが固相拡散接合され、
前記アルミニウム介在層と前記金属層とが固相拡散接合され、前記アルミニウム介在層と前記金属層との接合界面には、金属間化合物層が形成されており、
前記金属間化合物層は、複数の金属間化合物が接合界面に沿って積層した構造とされ、厚さが1μm以上8μm以下の範囲内とされていることを特徴とするヒートシンク付パワーモジュール用基板。
【請求項9】
ヒートシンク本体と、金属部材層と、を備えたヒートシンクであって、
前記ヒートシンク本体と前記金属部材層との間に、純度が99質量%以上のアルミニウムからなるアルミニウム介在層が配設されており、
前記金属部材層は、銅、ニッケル、又は銀からなり、
前記ヒートシンク本体は、固相線温度が前記金属部材層を構成する金属元素とアルミニウムとの共晶温度未満とされたアルミニウム合金で構成されており、
前記ヒートシンク本体と前記アルミニウム介在層とが固相拡散接合され、
前記アルミニウム介在層と前記金属部材層とが固相拡散接合され、前記アルミニウム介在層と前記金属部材層との接合界面には、金属間化合物層が形成されており、
前記金属間化合物層は、複数の金属間化合物が接合界面に沿って積層した構造とされ、厚さが1μm以上8μm以下の範囲内とされていることを特徴とするヒートシンク。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、軽量性と伝熱性を兼ね備え、例えば熱交換器、放熱器およびヒートパイプ等の材料として好適に用いられるアルミニウム-銅クラッド材およびその製造方法に関する。」

「【0012】
【発明の実施の形態】図1に示すように、この発明のアルミニウム-銅クラッド材(1)は、アルミニウム系部材(11)と銅系部材(13)との間に純アルミニウムまたはJIS1000系アルミニウム合金からなるインサート材(12)が介在している。
【0013】前記アルミニウム系部材(11)の組成は何ら限定されず、高純度アルミニウム、JIS 1000系のAlまたはAl合金、2000系のAl-Cu系合金、3000系のAl-Mn系合金、4000系のAl-Si系合金、5000系のAl-Mg系合金、6000系のAl-Si-Mg系合金、7000系のAl-Zn-Mg-Cu系合金およびAl-Zn-Mg系合金等幅広く使用できる。
【0014】前記銅系部材(13)の組成も限定されないが、酸化物やアルミニウムとの化合物の生成を抑制できる点で、無酸素銅またはリン脱酸銅を推奨できる。
【0015】また、前記インサート材(12)は、冷間でも異種金属である銅系部材(13)になじみやすい純アルミニウムまたは添加元素の少ないJIS1000系アルミニウム合金を使用する必要がある。特に好ましいインサート材として、純度99.90%以上の高純度アルミニウム、JIS1000系アルミニウムの中でも1050合金以上純度を有する合金を推奨できる。これらのインサート材を使用することにより、冷間で接合しても高い接合力が得られる。さらに、アルミニウム系部材(11)-銅系部材(13)間では、熱伝導率の違いから熱抵抗が生じるが、これら(11)(13)の間にアルミニウム系材料のなかでも熱伝導率の高い純アルミニウムまたはJIS1000系アルミニウム合金をインサート材(12)として介在させることによって、熱抵抗が低減される。
【0016】前記アルミニウム-銅クラッド材(1)は、例えばこの発明の方法によって製造される。
【0017】まず、銅系部材(13)にインサート材(12)を冷間圧延して接合する。インサート材(12)は純アルミニウムまたはJIS1000系アルミニウム合金であるから、変形抵抗が小さく、冷間でも銅系部材(13)になじみやすく接合性が良い。また、冷間であるから、銅系部材(13)の酸化が抑制されるとともに、インサート材(12)成分との化合物の生成も抑制されて、接合を阻害するる要因を排除できる。冷間圧延の加工率は、十分な接合力を得るために30%以上が好ましいが、その一方で70%を超えると加工硬化により材料が割れるおそれがある。特に好ましい加工率は40?70%である。
【0018】次に、前記インサート材(12)側にアルミニウム系部材(11)を冷間または熱間で圧延して接合させる。この圧延においては、前記銅系部材(13)の表面は既にインサート材(12)で被覆されて雰囲気から遮断されているため、圧延は熱間、冷間の何れでも良い。加工率は、良好な圧着性を得るために40%以上が好ましく、必要な最終肉厚によって適宜加工率を設定する。また、熱間で圧延する場合、銅系部材(13)とインサート材(12)との界面の化合物相を成長させないように、圧延温度を100?350℃とし、目標温度に達した後は直ちに圧延することが好ましい。この圧延において、インサート材(12)とアルミニウム系部材(11)とは同種のアルミニウム同士であるから互いになじみやすく良好に接合され、アルミニウム系部材(11)と銅系部材(13)とがインサート材(12)を介して接合される。
【0019】さらに、上述の一連の接合工程において、インサート材(12)の圧延後であって前記アルミニウム系部材の圧延前、またはアルミニウム系部材(11)の圧延後に熱処理を行って、異種材料である銅系部材(13)とインサート材(12)との密着性、あるいはさらにアルミニウム系部材(11)、インサート材(12)、銅系部材(13)の三者の密着性を高める。熱処理は、銅系部材(13)とインサート材(12)との界面の化合物相を成長させず、かつ高い接合性を得るために200?400℃が好ましい。熱処理温度の特に好ましい下限値は220℃であり、上限値は300℃である。また、熱処理時間は、化合物相を成長させないように、1時間以下に留めることが好ましい。熱処理条件により化合物相の厚さを10μm以下に制御すれば、良好な接合性を得ることができる。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。

「アルミニウム-銅クラッド材(1)の製造方法であって、
前記アルミニウム-銅クラッド材(1)は、アルミニウム系部材(11)と銅系部材(13)との間に純アルミニウムまたはJIS1000系アルミニウム合金からなるインサート材(12)が介在しており、
前記アルミニウム系部材(11)の組成は何ら限定されず、高純度アルミニウム、JIS 1000系のAlまたはAl合金、2000系のAl-Cu系合金等幅広く使用でき、
前記銅系部材(13)の組成は、酸化物やアルミニウムとの化合物の生成を抑制できる点で、無酸素銅またはリン脱酸銅を推奨でき、
インサート材として、純度99.90%以上の高純度アルミニウムを使用し、
前記アルミニウム-銅クラッド材(1)は、以下の方法:
(a)まず、銅系部材(13)にインサート材(12)を冷間圧延して接合し、
また、冷間であるから、インサート材(12)成分との化合物の生成も抑制されるものであり、
(b)次に、前記インサート材(12)側にアルミニウム系部材(11)を冷間または熱間で圧延して接合させ、
この圧延においては、前記銅系部材(13)の表面は既にインサート材(12)で被覆されて雰囲気から遮断されているため、圧延は熱間、冷間の何れでも良く、また、熱間で圧延する場合、銅系部材(13)とインサート材(12)との界面の化合物相を成長させないように、圧延温度を100?350℃とし、目標温度に達した後は直ちに圧延することが好ましく、
(c)さらに、上述の一連の接合工程において、インサート材(12)の圧延後であって前記アルミニウム系部材の圧延前、またはアルミニウム系部材(11)の圧延後に熱処理を行って、異種材料である銅系部材(13)とインサート材(12)との密着性、あるいはさらにアルミニウム系部材(11)、インサート材(12)、銅系部材(13)の三者の密着性を高め、
この熱処理は、銅系部材(13)とインサート材(12)との界面の化合物相を成長させず、かつ高い接合性を得るために200?400℃が好ましい、
方法による、アルミニウム-銅クラッド材(1)の製造方法。」

また、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明B」という。)が記載されていると認められる。

「アルミニウム-銅クラッド材(1)であって、
アルミニウム系部材(11)と銅系部材(13)との間に純アルミニウムまたはJIS1000系アルミニウム合金からなるインサート材(12)が介在しており、
前記アルミニウム系部材(11)の組成は何ら限定されず、高純度アルミニウム、JIS 1000系のAlまたはAl合金、2000系のAl-Cu系合金等幅広く使用でき、
前記銅系部材(13)の組成は、酸化物やアルミニウムとの化合物の生成を抑制できる点で、無酸素銅またはリン脱酸銅を推奨でき、
インサート材として、純度99.90%以上の高純度アルミニウムを使用し 、
以下の方法:
(a)まず、銅系部材(13)にインサート材(12)を冷間圧延して接合し、
また、冷間であるから、インサート材(12)成分との化合物の生成も抑制されるものであり、
(b)次に、前記インサート材(12)側にアルミニウム系部材(11)を冷間または熱間で圧延して接合させ、
この圧延においては、前記銅系部材(13)の表面は既にインサート材(12)で被覆されて雰囲気から遮断されているため、圧延は熱間、冷間の何れでも良く、また、熱間で圧延する場合、銅系部材(13)とインサート材(12)との界面の化合物相を成長させないように、圧延温度を100?350℃とし、目標温度に達した後は直ちに圧延することが好ましく、
(c)さらに、上述の一連の接合工程において、インサート材(12)の圧延後であって前記アルミニウム系部材の圧延前、またはアルミニウム系部材(11)の圧延後に熱処理を行って、異種材料である銅系部材(13)とインサート材(12)との密着性、あるいはさらにアルミニウム系部材(11)、インサート材(12)、銅系部材(13)の三者の密着性を高め、
この熱処理は、銅系部材(13)とインサート材(12)との界面の化合物相を成長させず、かつ高い接合性を得るために200?400℃が好ましい、
方法によって製造される、アルミニウム-銅クラッド材(1)。」

2.引用文献5について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5の第1ページ右下欄第15行-第2ページ右上欄第8行、第3ページ右上欄第6行-右下欄第7行、第4ページ左上欄第10行-右下欄第15行及び第1図の記載からみて、当該引用文献5には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「アルミニウム又はアルミニウム合金からなる母材と銅又は銅合金からなる母材との間にアルミニウムと亜鉛とをクラッドしたインサート材を介在させ、該インサート材のアルミニウムを前記アルミニウム又はアルミニウム合金母材側に、インサート材の亜鉛を前記銅又は銅合金母材側に配置して拡散接合を行う、複合材料の製造方法において、
アルミニウム母材Iaとインサート材IIcとを合わせて熱間圧延によりクラッドして複合材を得て、次いで、この複合材のインサート材IIc側の亜鉛表面と、銅母材Ibとを、所定の保護雰囲気と加圧、加熱条件下に拡散接合の処理を行う(実施例1においては、大気中において温度380℃で)ことにより、強固に接合された複合材料IIを得る製造方法と、
他の製造方法として、アルミニウム母材Ia、インサート材IIc、銅母材Ibをそれぞれ別個に用意して三者を重ね、拡散接合を行なう(実施例2においては、温度540℃、真空中で)ようにし、
拡散接合処理によって得られる銅/亜鉛化合物相は、アルミニウムと銅とを直接拡散接合した場合に形成される、硬くて脆く、接合強度を低下させてしまう、金属化合物相CuAl_(2)に比べて、著しく優れた接合強度を示すものである、複合材料の製造方法。」

3.引用文献6について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献6の請求項1、2、6並びに段落【0022】-【0048】、特に段落【0022】-【0031】、【0033】-【0036】及び図1、2、4-6の記載からみて、当該引用文献6には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「ヒートシンク付きパワーモジュール用基板30の製造方法であって、
まず、パワーモジュール用基板10を得て、
次に、真空加熱炉の中で、パワーモジュール用基板10、無酸素銅の圧延板からなる接合材50、ヒートシンク31を積層したものに対して、積層方向に加圧した状態で、加熱温度を400℃以上548℃未満として保持することにより、固相拡散接合を行い、金属層13と接合材50、及びヒートシンク31と接合材50とを接合し、銅層40を形成し、
ヒートシンク付きパワーモジュール用基板30は、
パワーモジュール用基板10と、パワーモジュール用基板10の他方側に配設されたヒートシンク31とを備え、
ヒートシンク31は、Al又はAl合金で構成され、
パワーモジュール用基板10は、セラミックス基板11(絶縁層)と、このセラミックス基板11の一方の面に形成された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面に、Al又はAl合金で形成された金属層13とを備え、
ヒートシンク31と銅層40との接合界面に、第二拡散層42(拡散層)が形成されており、この第二拡散層42は、AlとCuからなる金属間化合物で構成されており、複数の金属間化合物が接合界面に沿って積層した構造とされ、この第二拡散層42の厚さtは、1μm以上80μm以下の範囲内に設定されている、
ヒートシンク付きパワーモジュール用基板30の製造方法。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明Aとの対比
本願発明1と引用発明Aとを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明Aにおける「銅系部材(13)」、「アルミニウム系部材(11)」、「アルミニウム合金からなるインサート材(12)」、「アルミニウム-銅クラッド材(1)」は、それぞれ、本願発明1における「銅からなる金属部材」、「アルミニウム合金部材」、「アルミニウム介在層」、「接合体」に相当する。

イ 引用発明Aは、「(b)次に、前記インサート材(12)側にアルミニウム系部材(11)を冷間または熱間で圧延して接合させ」るものであるから、本願発明1と引用発明Aは、「前記アルミニウム合金部材と前記アルミニウム介在層とを接合するアルミニウム合金部材/アルミニウム介在層接合工程」を備えている点で共通する。

ウ 引用発明Aは、「(a)まず、銅系部材(13)にインサート材(12)を冷間圧延して接合」するものであるから、本願発明1と引用発明Aは、「前記アルミニウム介在層と前記金属部材とを接合するアルミニウム介在層/金属部材接合工程」を備えている点で共通する。

エ したがって、本願発明1と引用発明Aとの間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「銅からなる金属部材と、アルミニウム合金からなるアルミニウム合金部材と、が接合されてなる接合体の製造方法であって、
前記アルミニウム合金部材と前記金属部材との間には、純度が99質量%以上のアルミニウムからなるアルミニウム介在層が配設されており、
前記アルミニウム合金部材と前記アルミニウム介在層とを接合するアルミニウム合金部材/アルミニウム介在層接合工程と、
前記アルミニウム介在層と前記金属部材とを接合するアルミニウム介在層/金属部材接合工程と、を備えている、接合体の製造方法。」

<相違点>
<相違点1>
「アルミニウム合金部材」について、本願発明1は、「固相線温度が前記金属部材を構成する金属元素とアルミニウムとの共晶温度未満とされた」ものであるのに対し、引用発明Aでは、「前記アルミニウム系部材(11)の組成」で使用できる「2000系のAl-Cu系合金」等について、固相線温度が銅とアルミニウムのとの共晶温度(548℃)未満とされたアルミニウム合金とは特定されていない点。
<相違点2>
本願発明1は、「前記アルミニウム合金部材と前記アルミニウム介在層とを固相拡散接合するアルミニウム合金部材/アルミニウム介在層固相拡散接合工程」を備えるのに対し、引用発明Aは、「(b)次に、前記インサート材(12)側にアルミニウム系部材(11)を冷間または熱間で圧延して接合させ」る(以下「ステップ(b)」という。)という構成を備えているものの、そのような構成を備えていない点。
<相違点3>
本願発明1は、「前記アルミニウム介在層と前記金属部材とを積層し、積層方向に加圧した状態で加熱して保持することにより、前記アルミニウム介在層と前記金属部材とを固相拡散接合するアルミニウム介在層/金属部材固相拡散接合工程」を備えており、「前記アルミニウム介在層/金属部材固相拡散接合工程においては、加熱温度を400℃以上とする」という事項が特定されているのに対し、引用発明Aは、「(a)まず、銅系部材(13)にインサート材(12)を冷間圧延して接合し」(以下「ステップ(a)」という。)という構成を備えているものの、そのような事項は特定されていない点。

(2)相違点についての判断
ア 事案に鑑み、まず、上記相違点3について検討する。
相違点3に係る本願発明1の「前記アルミニウム介在層と前記金属部材とを固相拡散接合するアルミニウム介在層/金属部材固相拡散接合工程」という構成の「固相拡散接合」とは、固相状態のまま原子の拡散を利用して接合を行う技術の意味であると解される。

イ 引用発明Aの上記ステップ(a)の冷間圧延とは、圧延(スラブを薄く加工する方法、展伸加工)を、通常は室温で、再結晶温度未満で行う技術のことであり、また、ステップ(b)の熱間での圧延とは、圧延を、スラブを加熱して、再結晶温度以上で行う技術であるところ、引用発明Aは、冷間圧延して接合する上記ステップ(a)、及び、冷間または熱間で圧延して接合する上記ステップ(b)、並びに「(c)さらに、上述の一連の接合工程において、インサート材(12)の圧延後であって前記アルミニウム系部材の圧延前、またはアルミニウム系部材(11)の圧延後に熱処理を行って、異種材料である銅系部材(13)とインサート材(12)との密着性、あるいはさらにアルミニウム系部材(11)、インサート材(12)、銅系部材(13)の三者の密着性を高め、この熱処理は、銅系部材(13)とインサート材(12)との界面の化合物相を成長させず、かつ高い接合性を得るために200?400℃が好ましい(以下「ステップ(c)」という。)」方法であるから、ステップ(a)が、原子の拡散を利用する固相拡散接合であるということはできない。

ウ 次に、引用発明Aと引用例5に記載の技術的事項との組合せについて検討する。
引用文献5に記載の技術的事項は、拡散接合を行う、複合材料の製造方法であるものの、ステップ(a)、ステップ(b)に加え、ステップ(c)で、「さらに、上述の一連の接合工程において」、「熱処理を行って、異種材料である銅系部材(13)とインサート材(12)との密着性、あるいはさらにアルミニウム系部材(11)、インサート材(12)、銅系部材(13)の三者の密着性を高め、この熱処理は、銅系部材(13)とインサート材(12)との界面の化合物相を成長させず、かつ高い接合性を得るために200?400℃が好ましい」ものである、引用発明Aにおいて、冷間圧延して接合するステップ(a)を、引用文献5に記載の技術的事項に基づき、400℃以上の加熱温度で固相拡散接合するものに替える動機付けを見出すことはできない。
しかも、引用文献5に記載の技術的事項は、「アルミニウムと亜鉛とをクラッドしたインサート材を介在させ、該インサート材のアルミニウムを前記アルミニウム又はアルミニウム合金母材側に、インサート材の亜鉛を前記銅又は銅合金母材側に配置して拡散接合を行う、複合材料の製造方法」において、「拡散接合処理によって得られる銅/亜鉛化合物相は、アルミニウムと銅とを直接拡散接合した場合に形成される、硬くて脆く、接合強度を低下させてしまう、金属化合物相CuAl_(2)に比べて、著しく優れた接合強度を示すものである」から、アルミニウムと銅とを直接拡散接合した場合の不具合を解決するものであるといえる。
したがって、銅系部材(13)に純アルミニウムまたはJIS1000系アルミニウム合金からなるインサート材(12)を冷間圧延して接合するステップ(a)を有する引用発明Aにおいて、引用文献5に記載の技術的事項に基づき、銅系部材(13)と純アルミニウムまたはJIS1000系アルミニウム合金からなるインサート材(12)とを固相拡散接合するものに替えることは阻害要因があるというべきである。

エ 次に、引用発明Aと引用文献6に記載の技術的事項との組合せについて検討する。
引用文献6に記載の技術的事項は、「パワーモジュール用基板10、無酸素銅の圧延板からなる接合材50、ヒートシンク31を積層したものに対して、積層方向に加圧した状態で、加熱温度を400℃以上548℃未満として保持することにより、固相拡散接合を行い、金属層13と接合材50、及びヒートシンク31と接合材50とを接合し、銅層40を形成」するヒートシンク付パワーモジュール用基板30の製造方法であるものの、ステップ(a)、ステップ(b)に加え、ステップ(c)で、「さらに、上述の一連の接合工程において」、「熱処理を行って、異種材料である銅系部材(13)とインサート材(12)との密着性、あるいはさらにアルミニウム系部材(11)、インサート材(12)、銅系部材(13)の三者の密着性を高め、この熱処理は、銅系部材(13)とインサート材(12)との界面の化合物相を成長させず、かつ高い接合性を得るために200?400℃が好ましい」ものである、引用発明Aにおいて、冷間圧延して接合するステップ(a)を、引用文献6に記載の技術的事項に基づき、400℃以上の加熱温度で固相拡散接合を行うものに替える動機付けを見出すことはできない。

オ したがって、当業者といえども、引用発明A及び引用文献5、6に記載された技術的事項から、相違点3に係る本願発明1の「前記アルミニウム介在層と前記金属部材とを固相拡散接合するアルミニウム介在層/金属部材固相拡散接合工程」という構成を容易に想到できたとすることはできない。

カ したがって、上記相違点1、2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明A並びに引用文献5、6に記載された技術的事項及び引用文献2-4に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2も、本願発明1の「前記アルミニウム介在層と前記金属部材とを固相拡散接合するアルミニウム介在層/金属部材固相拡散接合工程」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明A並びに引用文献5、6に記載された技術的事項及び引用文献2-4に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本願発明3-6について
本願発明3、4は、「前記アルミニウム介在層と前記金属層とを固相拡散接合するアルミニウム介在層/金属層固相拡散接合工程」を備えるものであり、本願発明5、6は、「前記アルミニウム介在層と前記金属部材層とを固相拡散接合するアルミニウム介在層/金属部材層固相拡散接合工程」を備えるものであり、これらの固相拡散接合工程も、本願発明1の「前記アルミニウム介在層と前記金属部材とを固相拡散接合するアルミニウム介在層/金属部材固相拡散接合工程」と同一の構成であるから、本願発明3-6も、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明A並びに引用文献5、6に記載された技術的事項及び引用文献2-4に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

4.本願発明7について
(1)本願発明7と引用発明Bとの対比
ア 本願発明7は、本願発明1に対応する物の発明であり、「前記アルミニウム介在層と前記金属部材とが固相拡散接合され、前記アルミニウム介在層と前記金属部材との接合界面には、金属間化合物層が形成されており、前記金属間化合物層は、複数の金属間化合物が接合界面に沿って積層した構造とされ、厚さが1μm以上8μm以下の範囲内とされている」という構成を備えるものである。
ここで、「前記アルミニウム介在層と前記金属部材とが固相拡散接合され」という構成は、用語の意義や技術常識にかんがみ、本願発明1の「前記アルミニウム介在層と前記金属部材とを固相拡散接合するアルミニウム介在層/金属部材固相拡散接合工程」に対応する構成であるといえるから、「単に状態を示すことにより構造又は特性を特定しているにすぎない場合」に該当し、プロダクト・バイ・プロセス・クレームに該当しないものと認められる。

イ したがって、本願発明7と引用発明Bとの間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「銅からなる金属部材と、アルミニウム合金からなるアルミニウム合金部材と、が接合されてなる接合体であって、
前記アルミニウム合金部材と前記金属部材との間には、純度が99質量%以上のアルミニウムからなるアルミニウム介在層が配設されており、
前記アルミニウム合金部材と前記アルミニウム介在層とが接合され、
前記アルミニウム介在層と前記金属部材とが接合されている、接合体。」

<相違点>
<相違点ア>
「アルミニウム合金部材」について、本願発明7は、「固相線温度が前記金属部材を構成する金属元素とアルミニウムとの共晶温度未満とされた」ものであるのに対し、引用発明Bでは、「前記アルミニウム系部材(11)の組成」で使用できる「2000系のAl-Cu系合金」等について、固相線温度が銅とアルミニウムのとの共晶温度(548℃)未満とされたアルミニウム合金とは特定されていない点。
<相違点イ>
本願発明7は、「前記アルミニウム合金部材と前記アルミニウム介在層とが固相拡散接合され」るのに対し、引用発明Bは、「(b)次に、前記インサート材(12)側にアルミニウム系部材(11)を冷間または熱間で圧延して接合させ」る(以下「ステップ(b)という。」という構成を備えているものの、そのような構成を備えていない点。
<相違点ウ>
本願発明7は、「前記アルミニウム介在層と前記金属部材とを固相拡散接合され、前記アルミニウム介在層と前記金属部材との接合界面には、金属間化合物層が形成されており」、「前記金属間化合物層は、複数の金属間化合物が接合界面に沿って積層した構造とされ、厚さが1μm以上8μm以下の範囲内とされている」という事項が特定されているのに対し、引用発明Bは、「(a)まず、銅系部材(13)にインサート材(12)を冷間圧延して接合し」(以下「ステップ(a)」という。)という構成を備えているものの、そのような事項は特定されていない点。

(2)相違点についての判断
ア まず、相違点ウについて検討する。
相違点ウに係る本願発明7の「前記アルミニウム介在層と前記金属部材とを固相拡散接合され」という構成は、相違点3に係る本願発明1の「前記アルミニウム介在層と前記金属部材とを固相拡散接合するアルミニウム介在層/金属部材固相拡散接合工程」に対応する構成であるから、上記1(2)で検討したのと同じ理由で、引用発明Bのステップ(a)が、原子の拡散を利用する固相拡散接合であるということはできない。また、当業者といえども、引用発明B及び引用文献5、6に記載された技術的事項から、相違点ウに係る本願発明7の「前記アルミニウム介在層と前記金属部材とを固相拡散接合するアルミニウム介在層/金属部材固相拡散接合工程」という構成を容易に想到できたとすることはできない。

イ したがって、本願発明7は、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明B及び引用文献5、6に記載された技術的事項並びに引用文献2-4に記載された周知技術、引用文献7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

5.本願発明8について
本願発明8は、本願発明2に対応する物の発明であり、「前記アルミニウム介在層と前記金属層とが固相拡散接合され、前記アルミニウム介在層と前記金属層との接合界面には、金属間化合物層が形成されており、前記金属間化合物層は、複数の金属間化合物が接合界面に沿って積層した構造とされ、厚さが1μm以上8μm以下の範囲内とされている」という構成を備えるものである。
ここで、「前記アルミニウム介在層と前記金属層とが固相拡散接合され」という構成は、用語の意義や技術常識にかんがみ、本願発明2の「前記アルミニウム介在層と前記金属層とを固相拡散接合するアルミニウム介在層/金属層固相拡散接合工程」に対応する構成である、「前記アルミニウム介在層と前記金属層とが固相拡散接合され」という構成を備えるものであるといえるから、「単に状態を示すことにより構造又は特性を特定しているにすぎない場合」に該当し、プロダクト・バイ・プロセス・クレームに該当しないものと認められる。
したがって、本願発明8は、本願発明2と同様の理由により、当業者であっても、引用発明B及び引用文献5、6に記載された技術的事項並びに引用文献2-4に記載された周知技術、引用文献7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

6.本願発明9について
本願発明9は、本願発明3に対応する物の発明であり、「前記アルミニウム介在層と前記金属部材層とが固相拡散接合され、前記アルミニウム介在層と前記金属部材層との接合界面には、金属間化合物層が形成されており、前記金属間化合物層は、複数の金属間化合物が接合界面に沿って積層した構造とされ、厚さが1μm以上8μm以下の範囲内とされている」という構成を備えるものである。
ここで、「前記アルミニウム介在層と前記金属部材層とが固相拡散接合され」という構成は、用語の意義や技術常識にかんがみ、本願発明3の「前記アルミニウム介在層と前記金属部材層とを固相拡散接合するアルミニウム介在層/金属部材層固相拡散接合工程」に対応する構成である、「前記アルミニウム介在層と前記金属部材層とが固相拡散接合され」という構成を備えるものであるといえるから、「単に状態を示すことにより構造又は特性を特定しているにすぎない場合」に該当し、プロダクト・バイ・プロセス・クレームに該当しないものと認められる。
したがって、本願発明9は、本願発明3と同様の理由により、当業者であっても、引用発明B及び引用文献5、6に記載された技術的事項並びに引用文献2-4に記載された周知技術、引用文献7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定について
1.理由(特許法第29条第2項)について
上記第6の1(2)カのとおりであるから、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-7に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-02-10 
出願番号 特願2014-235438(P2014-235438)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 黒田 久美子  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 西出 隆二
恩田 春香
発明の名称 接合体の製造方法、ヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法、ヒートシンクの製造方法、及び、接合体、ヒートシンク付パワーモジュール用基板、ヒートシンク  
代理人 松沼 泰史  
代理人 寺本 光生  
代理人 大浪 一徳  
代理人 細川 文広  

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