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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05B
管理番号 1359309
審判番号 不服2019-2757  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-28 
確定日 2020-02-18 
事件の表示 特願2014-194064「有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用樹脂組成物、有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用樹脂シート、及び、有機エレクトロルミネッセンス表示素子」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月28日出願公開、特開2016- 66471、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年9月24日の出願であって、その後の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成30年4月6日付け:拒絶理由通知書
平成30年7月30日:意見書、手続補正書の提出
平成30年11月27日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成31年2月28日:審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は、この出願の請求項1?5に係る発明は、本願出願日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

1.国際公開第2011/062167号
2.特表2009-531516号公報
3.特開2008-248055号公報
4.特開2013-227402号公報
5.特開2003-201312号公報

第3 本願発明
本願発明は、平成30年7月30日に提出された手続補正書で補正された、特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりの、以下のものである。

「 【請求項1】
ポリイソブチレン骨格を有する樹脂と、下記式(1)又は下記式(2)で表されるエポキシ化合物と、硬化剤とを含有し、前記ポリイソブチレン骨格を有する樹脂全体の重量平均分子量が5万以上であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用樹脂組成物。
【化1】

式(1)中、R^(1)?R^(18)は、水素原子、ハロゲン原子、又は、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。Xは、結合手、酸素原子、炭素数1?5のアルキレン基、オキシカルボニル基、炭素数2?10のアルキレンオキシカルボニル基、又は、第二級アミノ基である。
【化2】

式(2)中、R^(19)?R^(21)は、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2?10のアルキレン基であり、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。E^(1)?E^(3)は、それぞれ独立してエポキシ基を含む有機基を表す。
【請求項2】
炭素数10以上の脂肪酸で表面処理された層状複水酸化物を含有することを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用樹脂組成物。
【請求項3】
粘着付与樹脂を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用樹脂組成物をシート状に成形してなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用樹脂シート。
【請求項5】
請求項1、2若しくは3記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用樹脂組成物、及び/又は、請求項4記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用樹脂シートを用いて製造されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示素子。」

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願日前の2011年(平成23年)5月26日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されている国際公開第2011/062167号(以下、「引用文献1」という。)には、以下の記載事項がある。なお、下線は合議体が発明の認定等に用いた箇所を付与した。

(1)「技術分野
[0001] 本発明は、有機EL素子の封止等に好適に使用できる、樹脂組成物に関する。
背景技術
[0002] 有機EL(Electroluminescence)素子は発光材料に有機物質を使用した発光素子であり、低電圧で高輝度の発光を得ることができる近年脚光を浴びている素材である。しかしながら、有機EL素子は水分に極めて弱く、有機材料自体が水分によって変質して、輝度が低下したり、発光しなくなったり、電極と有機EL層との界面が水分の影響で剥離したり、金属が酸化して高抵抗化してしまったりする問題があった。
・・・(省略)・・・
発明が解決しようとする課題
[0007] 本発明が解決しようとする課題は、ワニス塗工が可能で、簡便にシート化することができ、封止工程前に予め硬化せしめることにより、封止工程以降では加熱硬化を必要とせず、有機EL素子の熱劣化を大幅に低減でき、良好な耐透湿性、接着強度、取り扱い性を併せ持ったシートを実現し得る樹脂組成物及びそれから得られる樹脂組成物シートを提供することにある。
課題を解決するための手段
[0008] 本発明者は鋭意検討した結果、ポリイソブチレン樹脂、エポキシ基と反応し得る官能基を持つポリイソプレン樹脂及び/又はポリイソブチレン樹脂、粘着付与樹脂、及びエポキシ樹脂を含有する樹脂組成物を用いることで上記課題が解決されることを見出し、本発明に至った。
・・・(省略)・・・
発明の効果
[0010] ポリイソブチレン樹脂、エポキシ基と反応し得る官能基を持つポリイソプレン樹脂及び/又はポリイソブチレン樹脂、粘着付与樹脂、及びエポキシ樹脂を含有する樹脂組成物を用いることで、ワニス塗工が可能で、簡便にシート化することができ、封止工程前に予め硬化せしめることにより、封止工程以降では加熱硬化を必要とせず有機EL素子の熱劣化を大幅に低減でき、良好な耐透湿性、接着強度、取り扱い性を併せ持ったシートを提供できるようになった。」

(2)「発明を実施するための形態
[0011] 本発明の樹脂組成物は、(A)ポリイソブチレン樹脂、(B)エポキシ基と反応し得る官能基を持つポリイソプレン樹脂及び/又はポリイソブチレン樹脂、(C)粘着付与樹脂、及び(D)エポキシ樹脂を含有することが主たる特徴である。
[0012] [(A)ポリイソブチレン樹脂]
本発明において使用される(A)ポリイソブチレン樹脂(以下、「(A)成分」とも略称する。)は、樹脂組成物の耐透湿性を向上させながら、他の諸物性を安定的に保つ作用を有する。なお、当該(A)ポリイソブチレン樹脂は、エポキシ基と反応し得る官能基を持たないポリイソブチレン樹脂であり、好ましくは室温(25℃)での状態が固状である。
・・・(省略)・・・
[0014] (A)成分の具体例としては、市販品として、オパノールB12、B15、B50、B80、B100、B120、B150、B220(BASF社製)、JSRブチル065、268、365(JSR社製)、ビスタネックスLM-MS,MH,H、MML-80,100,120,140(エクソン・ケミカル社製)、HYCAR(グッドリッチ社製)、SIBSTAR T102(カネカ社製)などが挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
[0015] (A)成分の平均分子量は特に限定はされないが、良好な塗工性と相溶性をもたらすという観点から、粘度平均分子量が、1,200,000以下が好ましく、1,100,000以下がより好ましく、1,000,000以下が更に好ましい。一方、樹脂組成物の塗工時のハジキを防止し、樹脂組成物シートの耐透湿性を発現させ、機械強度を向上させるという観点から、粘度平均分子量が、100,000以上が好ましく、200,000以上がより好ましく、300,000以上が更に好ましい。
・・・(省略)・・・
[0017] [(B)エポキシ基と反応し得る官能基を持つポリイソプレン樹脂及び/又はポリイソブチレン樹脂]
本発明において使用される、(B)エポキシ基と反応し得る官能基を持つポリイソプレン樹脂及び/又はポリイソブチレン樹脂(以下、「(B)成分」とも略称する)は、得られる樹脂組成物シートのタック性を適度に抑えて、シートの積層工程での取り扱い性を向上させながら、良好な耐透湿性と、基材との接着性等の物性を良好に保つという軟化剤の働きをする。
・・・(省略)・・・
[0019] (B)成分は、(B1)ポリイソプレン骨格を主体とするポリマー(すなわち、イソプレンのホモポリマー(単独重合体)若しくはイソプレンに適宜量のブテン-1、ブテン-2等のオレフィン系化合物を共重合した共重合体(以下、これらを「イソプレン系重合体」と総称する)、又は、ポリイソプレンセグメントとイソプレン以外の単量体成分からなるポリマーセグメントとを有するブロック若しくはグラフト共重合体)の主鎖及び/又は側鎖にエポキシ基と反応し得る官能基が結合した樹脂か、或いは、(B2)ポリイソブチレン骨格を主体とするポリマー(すなわち、イソブチレン系重合体か、又は、ポリイソブチレンセグメントとイソブチレン以外の単量体成分からなるポリマーセグメントとを有するブロック若しくはグラフト共重合体)の主鎖及び/又は側鎖にエポキシ基と反応し得る官能基が結合した樹脂のいずれか一方又は両方によって構成される。
・・・(省略)・・・
[0026] (B)成分の数平均分子量は、樹脂組成物の加工性を向上させるという観点から、100,000以下が好ましく、80,000以下がより好ましく、60,000以下が更に好ましく、50,000以下が更に一層好ましい。また、樹脂組成物の耐透湿性を発現させるという観点から、300以上が好ましく、500以上がより好ましく、700以上が更に好ましい。また、(B)成分は室温(25℃)で液状であるものが好ましい。
・・・(省略)・・・
[0032] [(C)粘着付与樹脂]
本発明において使用される(C)粘着付与樹脂(以下、「(C)成分」とも略称する)は、樹脂組成物の接着性を向上させながら、他の諸物性を安定的に保つことができる。当該(C)成分としては、特に限定されるものではなく、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂(水素添加テルペン樹脂、テルペンフェノール共重合樹脂、芳香族変性テルペン樹脂等)、クマロン樹脂、インデン樹脂、石油樹脂(脂肪族系石油樹脂、水添脂環式石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂およびその水素化物等)が好ましく使用される。なかでも、相溶性、接着性、耐透湿性の点からテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール共重合樹脂、水添脂環式石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂が好ましい。当該(C)成分は1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
・・・(省略)・・・
[0036] [(D)エポキシ樹脂]
本発明において使用される(D)エポキシ樹脂(以下、「(D)成分」とも略称する)は、樹脂組成物のタック性能を向上させながら、他の諸物性を安定的に保つ役割を担う。(D)成分としては、特に限定されるものではなく、平均して1分子当り2個以上のエポキシ基を有するものであればよい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、ジグリシジルトルイジン、ジグリシジルアニリン等)、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、及びアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体、ハロゲン化物及び水素添加物等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
[0037] エポキシ樹脂は、これらの中でも、本発明の樹脂組成物の高い耐熱性及び優れた耐透湿性を保つ等の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン構造を有するエポキシ樹脂等が好ましい。
・・・(省略)・・・
[0039] エポキシ樹脂は市販品を使用することができる。例えば、ジャパンエポキシレジン社製「828EL」(液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、DIC社製「HP4032」、「HP4032D](ナフタレン型2官能エポキシ樹脂)、DIC社製「HP4700」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、DIC社製「HP7200シリーズ」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、東都化成社製「ESN-475V」「ESN-185V」(ナフトール型エポキシ樹脂)、ダイセル化学工業社製「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)、日本化薬社製「NC3000H」、「NC3000L」、「NC3100」、「NC3000」、「NC3000FH-75M」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン社製「YX4000」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン社製「YX8800」(アントラセン骨格含有型エポキシ樹脂)などが挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
・・・(省略)・・・
[0065] [樹脂添加剤]
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない程度に、上述した成分以外の各種樹脂添加剤を任意で含有させても良い。このような樹脂添加剤としては、例えば、ゴム粒子、シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の有機充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、トリアゾール化合物、チアゾール化合物、トリアジン化合物、ポルフィリン化合物等の密着性付与剤等を挙げることができる。
・・・(省略)・・・
[0067] 本発明の樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、半導体、太陽電池、高輝度LED、LCD、有機EL等の各種デバイス用の封止材料に用いることができ、特に有機ELデバイスに好適に使用することができる。
[0068] [樹脂組成物シート]
本発明の樹脂組成物シートは、本発明の樹脂組成物自体をシート化したもの、及び、支持体上に本発明の樹脂組成物の層を形成したものの両方を含む。種々のデバイスへの適用にあっては、支持体上に本発明の樹脂組成物の層を形成した樹脂組成物シートを適用対象物の必要箇所にラミネートしてその樹脂組成物層を適用対象物へ転写するようにしてもよい。
・・・(省略)・・・
[0070] 支持体を有する樹脂組成物シートは、当業者に公知の方法、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解したワニスを調製し、支持体上に、ワニスを塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等によって有機溶剤を乾燥させて製造することができる。
・・・(省略)・・・
[0080] [有機ELデバイス製造方法]
本発明の樹脂組成物シートを用いた有機EL素子の封止工程は、樹脂組成物シートを有機EL素子が形成された基板にラミネートして有機EL素子を樹脂組成物シートで被覆することで行うことができる。」

(3)「実施例
[0085] 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、特に断りがない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味する。
・・・(省略)・・・
[0095] (実施例1)
ポリイソブチレン(Oppanol B100、33%イプゾール150溶液)41部に、水添脂環式石油樹脂(Escorez5340)20部と、液状ポリイソブチレン(Tetrax3T)5部と、無水マレイン酸変性イソブチレン(HV-300M)9部とを、混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して混合溶液を得た。この混合溶液に、エポキシ樹脂(HP7200H、50%イプゾール溶液)5.3部と、アニオン重合型硬化剤(TAP)0.6部とを、混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、ワニスを得た。
得られたワニスをアルキッド系離型剤で処理されたPETフィルム(厚さ38μm)の離型処理面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmになるようダイコーターにて均一に塗布し、80℃で30分間乾燥し、120℃で30分間加熱硬化させることにより、樹脂組成物シートを得た。
[0096] (実施例2)
ポリイソブチレン(Oppanol B100、33%イプゾール150溶液)を50部とし、水添脂環式石油樹脂(Escorez5340)を30部とし、液状ポリイソブチレン(Tetrax3T)を9部としたこと以外は実施例1と同様にして、下記表1の配合表に従い、ワニスを得た。得られたワニスを使用し、実施例1と全く同様にして樹脂組成物シートを得た。
[0097] (実施例3)
水添脂環式石油樹脂(Escorez5340)20部の替わりに、テルペン樹脂(YSレジンPX1150N)20部、テルペンフェノール共重合樹脂(YSポリスターT145、60%イプゾール150溶液)15部、液状ポリイソブチレン(Tetrax3T)9部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、下記表1の配合表に従い、ワニスを得た。得られたワニスを使用し、実施例1と全く同様にして樹脂組成物シートを得た。
[0098] (実施例4)
テルペン樹脂(YSレジンPX1150N)20部の替わりに、変性テルペン樹脂(ClearonP125)20部を用いたこと以外は実施例3と同様にして、下記表1の配合表に従い、ワニスを得た。得られたワニスを使用し、実施例1と全く同様にして樹脂組成物シートを得た。
[0099] (実施例5)
混合溶液に、更に焼成ハイドロタルサイト60部を加え、アジホモミキサーロボミックス型混合攪拌機(プライミクス社製)にて均一に分散混合したこと以外は実施例3と同様にして、下記表1の配合表に従い、ワニスを得た。得られたワニスを使用し、実施例1と全く同様にして樹脂組成物シートを得た。
[0100] (実施例6)
混合溶液に、更にタルク60部を加え、アジホモミキサーロボミックス型混合攪拌機(プライミクス社製)にて均一に分散混合したこと以外は実施例3と同様にして、下記表1の配合表に従い、ワニスを得た。得られたワニスを使用し、実施例1と全く同様にして樹脂組成物シートを得た。
[0101] (実施例7)
スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBSTAR T102、50%イプゾール150溶液)47部に、石油樹脂(QuintoneD100)53部と、石油樹脂(Quintone1345)18部と、液状ポリイソブチレン(Tetrax3T)6部と、無水マレイン酸変性イソブチレン(HV-300M)6部とを、混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して混合溶液を得た。この混合溶液に、エポキシ樹脂(HP7200H、50%イプゾール150溶液)5.3部と、アニオン重合型硬化剤(TAP)0.6部と、タルク60部とを混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、ワニスを得た。得られたワニスを使用し、実施例1と全く同様にして樹脂組成物シートを得た。
[0102] (実施例8)
ポリイソブチレン樹脂(B50SF、25%イプゾール150溶液)24部と、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBSTAR T102、50%イプゾール150溶液)29部に、石油樹脂(QuintoneD100)53部と、脂肪族炭化水素樹脂(ENDEX155)18部と、無水マレイン酸変性イソブチレン(HV-300M)6部とを、混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して混合溶液を得た。この混合溶液に、エポキシ樹脂(HP7200H、50%イプゾール150溶液)5.3部と、アニオン重合型硬化剤(TAP)0.6部と、タルク60部とを混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、ワニスを得た。得られたワニスを使用し、実施例1と全く同様にして樹脂組成物シートを得た。
[0103] (実施例9)
ポリイソブチレン樹脂(B50SF、25%イプゾール150溶液)41部に、石油樹脂(QuintoneD100)53部と、石油樹脂(Quintone1345)18部と、液状ポリイソブチレン(Tetrax3T)9部と、無水マレイン酸変性イソブチレン(HV-300M)9部とを、混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して混合溶液を得た。この混合溶液に、エポキシ樹脂(HP7200H、50%イプゾール150溶液)5.3部と、アニオン重合型硬化剤(TAP)0.6部と、焼成ハイドロタルサイト30部と、タルク30部とを混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、ワニスを得た。得られたワニスを使用し、実施例1と全く同様にして樹脂組成物シートを得た。
[0104] (実施例10)
ポリイソブチレン樹脂(B50SF、25%イプゾール150溶液)50部に、石油樹脂(QuintoneD100)53部と、石油樹脂(Quintone1345)9部と、無水マレイン酸変性イソブチレン(HV-300M)9部とを、混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して混合溶液を得た。この混合溶液に、エポキシ樹脂(HP7200H、50%イプゾール150溶液)5.3部と、アニオン重合型硬化剤(TAP)0.6部と、焼成ハイドロタルサイト30部と、タルク30部とを混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、ワニスを得た。得られたワニスを使用し、実施例1と全く同様にして樹脂組成物シートを得た。
[0105] (実施例11)
スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBSTAR T102、50%イプゾール150溶液)41部に、テルペン樹脂(YSレジンPX1150N)53部と、テルペンフェノール共重合樹脂(YSポリスターT145、60%イプゾール150溶液)18部と、液状ポリイソブチレン(Tetrax3T)9部と、無水マレイン酸変性イソブチレン(HV-300M)9部とを、混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して混合溶液を得た。この混合溶液に、エポキシ樹脂(HP7200H、50%イプゾール150溶液)5.3部と、アニオン重合型硬化剤(TAP)0.6部と、タルク60部とを混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、ワニスを得た。得られたワニスを使用し、実施例1と全く同様にして樹脂組成物シートを得た。
・・・(省略)・・・
[0112] 結果を表1、2に示す。
[0113]
[表1]

・・・(省略)・・・
[0115] 実施例1?11から、本発明の樹脂組成物により得られる樹脂組成物シートは、タック力が小さく、樹脂組成物シートを有機EL素子上にラミネートする際に優れた取り扱い性を有するものとなることが分かる。また、ラミネート時に加熱硬化を積極的に行う必要がなく、80℃という低温加熱で十分に高い接着力で接着し得、ラミネート後に高温高湿環境下に置かれた後も高い接着力を維持することができ、しかも、良好な耐透湿性を有する。従って、本発明によれば、水分や熱による劣化を生じやすい有機EL素子に対し、有機EL素子の劣化を生じさせることなく、高信頼性の封止構造を形成できる封止材となる樹脂組成物及び樹脂組成物シートを得ることができ、信頼性の高い有機ELデバイスの提供が可能となる。」

2 引用発明1
前記1の記載事項(2)に基づけば、引用文献1には実施例1として、以下の発明(以下、「引用発明1-1」という。)が記載されていたと認められる。

「 ポリイソブチレンに、水添脂環式石油樹脂と、液状ポリイソブチレンと、無水マレイン酸変性イソブチレンとを、混合し、混合溶液を得、この混合溶液に、エポキシ樹脂(HP7200H、50%イプゾール溶液)と、アニオン重合型硬化剤とを、混合して得られる、ワニス。」

同様に、引用文献1の実施例2?11に記載された「ワニス」を、それぞれ、「引用発明1-2」?「引用発明1-11」という。以下、「引用発明1-1」?「引用発明1-11」を総称して、「引用発明1」という。

3 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願日前の平成21年9月3日に頒布された刊行物である特表2009-531516号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の記載事項がある。

(1)「発明の分野
【0003】
本発明は、放射線-硬化性接着剤/シーラント組成物に関する。好ましい態様では、本発明は、有機発光ダイオードなどの電子及び光電子デバイス用の接着剤及びシーラントに関する。
【0004】
発明の背景
様々な封止電子デバイスは、特定の操作及び保存寿命を獲得するために防湿性(moisture protection)が必要なことは公知である。特に有機発光デバイス(OLED)、ポリマー発光デバイス、電荷結合デバイス(CCD)センサ、マイクロ-エレクトロ-メカニカルセンサ(MEMS)、液晶デバイス(LCD)及び光電子デバイスなどの非常に感湿性の電子/光電子デバイスの封入パッケージ内の相対湿度は、有機発光層、電極や他の感湿性部品を完全に保護するために、特定レベルより下、特に1000ppm未満、場合によっては100ppm未満に制御しなければならない。
【0005】
封入または包装済みデバイスを水から保護するために、従来幾つかのアプローチが使用されている。これらの方法は必ずしも機能するとは限らない:有機シーラントは厳しい透湿性要件を満たさないかもしれない;不透湿性のはんだシーラントは、温度感受性デバイスには高すぎる融点をもつかもしれない;及びデバイスの内壁に付けられた乾燥剤パッケージは、デバイスの発光を邪魔するかもしれず、特に上部が有機発光ダイオードでは問題となるかもしれない。」

(2)「【0007】
発明の概要
本発明は、シロキサン官能基を含まない放射線-硬化性バリヤゴムレジン、放射線-硬化性レジン希釈剤、及び一種以上の光開始剤と、場合により一種以上の光増感剤とを含む光開始系を含む、放射線-硬化性組成物に関する。これらの材料は、シーラント及び接着剤の両方の特性を有し(以後、シーラント/接着剤という)、且つ高度に感湿性の電子、光電子デバイスまたは同様のデバイスの封止に適している。本材料は、接着剤を放射線硬化させた後、封止エンクロージャ(sealed enclosure)を形成するために二つの基板を一緒に結合することができる。別の態様では、本発明は、基板上に配置され、且つ蓋で封入された電子または光電子デバイスであって、前記蓋及び基板は、前記基板と蓋の周辺に沿って配置されているか、または前記基板と蓋との間の全域に配置されたシーラント/接着剤と共に接着される。
【0008】
発明の詳細な説明
・・・(省略)・・・
【0009】
好適な樹脂は、放射線硬化性である官能基を含むポリイソブチレンまたはブチルゴム(以後、バリヤゴムレジン、ゴムレジン(rubber resin)、またはシーラント/接着剤という)である。
・・・(省略)・・・
【0011】
放射線-硬化性反応性希釈剤は、UV硬化性材料及び充填ポリマー複合材料の分野の経験者に公知の任意のUV硬化性樹脂であってもよい。
・・・(省略)・・・
硬化メカニズムは、選択した特定の樹脂及び充填系に合わせるために変動し得る(カチオン、ラジカルなど)。
・・・(省略)・・・
【0013】
好適なカチオン性重合可能な放射線硬化性樹脂としては、エポキシ、オキセタン、ビニルエーテル、及びプロペニルエーテルが挙げられる。代表的なエポキシ樹脂としては、当業者に公知の多くの供給業者から市販されているグリシジルエーテル及び脂環式エポキシが挙げられる。
・・・(省略)・・・
【0016】
代表的な脂環式エポキシ樹脂としては、ERL4221及びERL6128(Dow Chemical Co.製)が挙げられる。代表的なオキセタン樹脂は、OXT-121(Toagosei製)である。代表的なビニルエーテル分子としては、シクロヘキサンジメチロールジグリシジルエーテル(Rapicure-CHVE)、トリプロピレングリコールジビニルエーテル(Rapicure-DPE-3)またはドデシルビニルエーテル(Rapicure-DDVE)(全てInternational Specialty Products製)が挙げられる。類似のビニルエーテルもBASFから利用可能である。
【0017】
好適なラジカル重合可能な放射線硬化性樹脂としては、アクリレート、マレイミド、またはチオール-エンベースの樹脂が挙げられる。多くの場合、これらの樹脂の組み合わせを使用して、シーラント/接着剤材料の特性に合わせることができる。
【0018】
代表的なアクリレート樹脂としては、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、シクロヘキサンジメチロールジアクリレート、ジシクロペンタジエンジメチロールジアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ポリ(ブタジエン)ジメタクリレート及びビスフェノールAベースのアクリル化エポキシが挙げられる。そのような樹脂は、Sartomer及びUCB Chemicalsより市販されている。」

(3)「【0033】
実施例:配合物は上記のように製造して、放射線-硬化性ゴムレジンを配合した。表1に示されているように、配合物1(a)は、Kennedyのグループで開発された方法(T.P.Liao及びJ.P.Kennedy,Polymer Bulletin,Vol.6、135-141(1981))により製造したポリイソブチレンジアクリレート樹脂(Mn=5300,70重量部)、ジアクリレート樹脂(Sartomer SR833S,30重量部)及びラジカル光開始剤(Irgacure 651,0.3重量部)を含んでいた。透湿性は、50℃/100%RHでMocon Permeatran 3/33により測定して、4.5g・ミル/100平方インチ・日である。配合物1(b)は、液体ゴムレジン、殆どアクリル側鎖添加をもつスチレン-ブタジエン-スチレンコポリマーを含んでいた。配合物1(b)の透過率は18g・ミル/100平方インチ・日である。表1に示されているように、配合物1(a)は、配合物1(b)よりもCa-ボタン寿命が優れていたが、これはポリイソブチレンジアクリレート樹脂を含む樹脂の優れた樹脂防湿性能によってデバイス寿命が改善されたことを意味している。
【0034】
【表1】



4 引用発明2
前記3の記載事項(3)に基づけば、引用文献2には実施例として、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていたと認められる。

「 ポリイソブチレンジアクリレート樹脂(Mn=5300)、ジアクリレート樹脂及びラジカル光開始剤を含む、配合物。」

5 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願日前の平成20年10月16日に頒布された刊行物である特開2008-248055号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の記載事項がある。

「【背景技術】
【0002】
シール材とは、高い気密性を有する材料であって、例えば、ガラス用シーリング材や、建築用シーリング材、ガスケット、医療用キャップ、食品の包装、自動車内外装、土木・防水シート等、様々な用途に使用されている。このうち、複層ガラス用のシーリング材(シール材)には、高いガスバリア性、機械強度、及び接着性が要求され、これらに関する開発が盛んに行われている。
・・・(省略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現状では、高いガスバリア性と高い接着性を有するホットメルト型のシール材用組成物は知られていない。本発明の目的は、複層ガラスに使用されるホットメルト型シーリング材として、高い機械強度、ガラスとの高い接着性を有し、ガスバリア性に優れる材料を供することにある。
・・・(省略)・・・
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のシール材用組成物は、イソブチレン系重合体(A)、エポキシ基含有化合物(B)、エポキシ樹脂用硬化剤(C)を含有することを特徴とする。
・・・(省略)・・・
【0048】
エポキシ基含有化合物(B)は、分子中にエポキシ基を少なくとも1つ以上含有する化合物であり、分子量等に限定されない。エポキシ基含有化合物(B)としては、例えば、日刊工業新聞社発行のエポキシ樹脂ハンドブックに記載のエポキシ樹脂や、エポキシ基を含有したポリマーが使用できる。
【0049】
エポキシ樹脂としては、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
・・・(省略)・・・
【0053】
脂環式エポキシ樹脂としては、シクロヘキセンオキシド基、トリシクロデセンオキシド基、シクロペンテンオキシド基等を有する化合物が代表的であり、具体的には、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシシクロへキシルメチル-3,4-エポキシシクロへキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロへキシル5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチレン)アジペート等が挙げられる。
・・・(省略)・・・
【0061】
これらのエポキシ基含有化合物(B)の中では、入手性やガラスとの接着性の点から、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、エポキシ化スチレン系ブロック共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート成分を含有する重合体が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせてもよい。
【0062】
エポキシ基含有化合物(B)の添加量としては、(A)成分100重量部に対し、1?100重量部の範囲とすることが好ましい。1重量部より少ないとガラスとの接着性が十分に得られないことがあり、100重量部を超えると組成物のガスバリア性が低下することがある。ガラスとの接着性とガスバリア性の両立という観点から、5?50重量部の範囲とすることがより好ましい。
・・・(省略)・・・
【実施例】
【0105】
以下に、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限を受けるものではない。
・・・(省略)・・・
【0109】
・・・(省略)・・・・
(実施例1?6、及び比較例1?3)
表1に示す割合で予めイソブチレン系重合体(A)、エポキシ基含有化合物(B)、ポキシ樹脂用硬化剤(C)、熱可塑性樹脂(D)、吸湿性化合物(E)、充填材(F)を130℃以下の条件でラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて十分に溶融混練することにより、シール材用組成物を製造した。
・・・(省略)・・・
【0117】
[実施例等記載成分の内容]
PIB:ポリイソブチレン(オパノール(登録商標)B12、BASF社製)
SIBS:スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体(製造例1)
SIB:スチレン-イソブチレン-ジブロック共重合体(製造例2)
エポキシ樹脂:グリシジルエーテル型エポキシ樹脂/ビスフェノールA型(エピコート(商標登録)834、ジャパンエポキシレジン(株)製)
エポキシ基含有ポリマー:グリシジルメタクリレート-エチレン系重合体(ボンドファースト(商標登録)7B、住友化学(株)製)
PE:ポリエチレン(ハイゼックス(登録商標)2200J、三井化学(株)製)
SEPS:スチレン-エチレンプロピレン-スチレントリブロック共重合体(セプトン(登録商標)2007、クラレ(株)製)
DICY:ジシアンジアミド(DICY7、ジャパンエポキシレジン(株)製)
モレキュラーシーブス:(PURMOL 3A、ZEOCHEM製)
CB:カーボンブラック(F200、旭カーボン(株)製)
【0118】
【表1】

・・・(省略)・・・
【0121】
以上のことから、本発明に係る組成物は、良好なガスバリア性を保持したまま、十分に高い機械強度と接着強度を有していることが分かる。また容易に加熱成型できることから、ホットメルト塗布が可能な材料であることが分かる。」

6 引用文献Aの記載事項
本願出願日前の平成24年3月22日に頒布された刊行物である特開2012-56981号公報(以下、「引用文献A」という。)には、以下の記載事項がある。

「【0085】
[A]エポキシ樹脂
・“エピクロン(登録商標)”HP7200H(ディーアイシー(株)製):式3の構造で表されるジシクロペンタジエン骨格を含むエポキシ樹脂。軟化点:83℃
・“エピクロン(登録商標)”HP7200HH(ディーアイシー(株)製):式3の構造で表されるジシクロペンタジエン骨格を含むエポキシ樹脂。軟化点:89℃。
・“エピクロン(登録商標)”HP7200HHH(ディーアイシー(株)製):式3の構造で表されるジシクロペンタジエン骨格を含むエポキシ樹脂。軟化点:102℃。
【0086】
【化3】



7 引用文献Bの記載事項
本願出願日前の平成22年9月2日に頒布された刊行物である特開2010-192900号公報(以下、「引用文献B」という。)には、以下の記載事項がある。

「【0024】
・・・(省略)・・・
図2は、表2に掲げた接着剤の成分の幾つかの化学構造を示す。明確に述べると、図2は、Octacat、ERL4221、ERL4299、及びCY184を示す。
・・・(省略)・・・
【図2】
・・・(省略)・・・



第5 引用発明1との対比・判断
1 請求項1
(1) 対比
引用発明1の「ワニス」は、「ポリイソブチレン」、「エポキシ樹脂(HP7200H、50%イプゾール溶液)」及び「アニオン重合型硬化剤」を含有する。
引用発明1の「ポリイソブチレン」、「エポキシ樹脂(HP7200H、50%イプゾール溶液)」及び「アニオン重合型硬化剤」は、それぞれ、その名のとおり、「ポリイソブチレン骨格を有する樹脂」、「エポキシ化合物」及び「硬化剤」である。また、引用発明1の「ワニス」は、その材料組成からみて、「樹脂組成物」である。加えて、引用発明1の「ワニス」は、「有機EL」の「封止材料に用いることができ」るものであるから(引用文献1の段落[0067]を参照。)、「有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用」という要件を満たす。
したがって、引用発明1の「ワニス」は、本願請求項1でいう「ポリイソブチレン骨格を有する樹脂」、「エポキシ化合物」及び「硬化剤」を含有する「有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用樹脂組成物」である。

(2) 一致点
以上より、本願請求項1に係る発明と引用発明1は、以下の点で一致する。

「ポリイソブチレン骨格を有する樹脂と、エポキシ化合物と、硬化剤とを含有する、
有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用樹脂組成物。」

(3) 相違点
本願請求項1に係る発明と引用発明1を対比すると、両者は以下の点で相違する。

(相違点1)
エポキシ化合物が、本願請求項1に係る発明は、「式(1)」又は「式(2)」で表されるエポキシ化合物であるのに対し、引用発明1は、そのように特定されていない点。

(相違点2)
ポリイソブチレン骨格を有する樹脂全体の重量平均分子量が、本願請求項1に係る発明は、「5万以上」であるのに対し、引用発明1ではそのように特定されていない点。

(4) 相違点1についての判断
ア 引用発明1の「ワニス」が含有する「エポキシ樹脂(HP7200H、50%イプゾール溶液)」は、前記第4の「6」で示した構造式を有するものであって、その構造式について、前記「式(1)」又は「式(2)」に記載の要件を満たすものではない。
また、引用文献1には、「ワニス」に、前記「第4」の1(2)に記載の「エポキシ樹脂」や「樹脂添加剤」を含有させること(段落[0036]及び段落[0065]を参照。)が記載されている。しかしながら、引用文献1には、前記「式(1)」又は「式(2)」で表されるエポキシ化合物を含有させることについて、記載も示唆もされていない。

イ 引用文献2には、「シロキサン官能基を含まない放射線-硬化性バリヤゴムレジン」及び「放射線-硬化性レジン希釈剤」を含む「放射線-硬化性組成物」が記載され(段落【0007】を参照。)、「放射線-硬化性レジン希釈剤」として、「脂環式エポキシ樹脂」の「ERL4221」が挙げられている(段落【0013】及び段落【0016】を参照。)。引用文献2に記載の「ERL4221」は、前記第4の「7」で示した構造式を有するものであって、その構造式について、前記「式(1)」に記載の要件を満たすといえる。ただし、引用文献2に記載の「放射線-硬化性レジン希釈剤」は、その名のとおり、「放射線-硬化性レジン」を「希釈」するための材料である。
一方、引用文献1には、「ポリイソブチレン」を他の材料で希釈して使用することについて、記載も示唆もない。
そうしてみると、引用発明1の「ワニス」に、引用文献2に記載の「ERL4221」を含有させる動機づけがあるとはいえない。

ウ 引用文献3には、「イソブチレン系重合体(A)、エポキシ基含有化合物(B)、エポキシ樹脂用硬化剤(C)を含有する」「シール材用組成物」が記載され(段落【0025】を参照。)、「エポキシ基含有化合物(B)」として、「脂環式エポキシ樹脂」の「3,4-エポキシシクロへキシルメチル-3,4-エポキシシクロへキサンカルボキシレート」が挙げられている(段落【0049】及び段落【0053】を参照。)。
ここで、引用文献3に記載の「3,4-エポキシシクロへキシルメチル-3,4-エポキシシクロへキサンカルボキシレート」は、その名称が表す化学構造からみて、その構造式について、前記「式(1)」に記載の要件を満たすといえる。ただし、引用文献3に記載の「シール材用組成物」は、「複層ガラスに使用されるホットメルト型シーリング材」として使用するものであり(段落【0009】を参照。)、「エポキシ基含有化合物(B)」は、「ガラスとの接着性」を「十分に得」るために、「シール材用組成物」に含有させるものである(段落【0062】を参照。)。
一方、引用発明1の「ワニス」は、「エポキシ基と反応し得る官能基を持つポリイソプレン樹脂及び/又はポリイソブチレン樹脂」や「粘着付与樹脂」を含有させることにより接着性を向上させており(段落[0017]及び段落)、「3,4-エポキシシクロへキシルメチル-3,4-エポキシシクロへキサンカルボキシレート」等の「脂環式エポキシ樹脂」を含有させて接着性を向上させることについては、記載も示唆もない。
そうしてみると、引用発明1の「ワニス」に、引用文献3に記載の「3,4-エポキシシクロへキシルメチル-3,4-エポキシシクロへキサンカルボキシレート」を含有させる動機づけがあるとはいえない。

エ 本願請求項1に係る発明は、「アウトガスの発生を抑制することができ、かつ、透明性及びバリア性に優れる有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用樹脂組成物を提供する」(段落【0007】)ことを発明が解決しようとする課題とし、その解決手段として、「ポリイソブチレン骨格を有する樹脂と、下記式(1)又は下記式(2)で表されるエポキシ化合物と、硬化剤とを含有する」(段落【0008】)という構成を採用したものであり、これにより、「アウトガスの発生を抑制することができ、かつ、透明性及びバリア性に優れる有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用樹脂組成物を提供することができる」という効果が得られるものである(段落【0108】)。そして、上記事項は、段落【0133】【表1】の記載によっても裏付けられている。
一方、引用文献1?3の記載事項からは、エポキシ化合物として、前記「式(1)」又は「式(2)」で表されるエポキシ化合物を使用することにより、「アウトガスの発生を抑制」することについて、当業者であれば容易に予測し得たということはできない。
したがって、本願請求項1に係る発明の効果は、引用文献1?3の記載事項からみて、顕著なものということができる。

オ そうしてみると、相違点2について検討するまでもなく、本願請求項1に係る発明は、当業者が引用発明1及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

2 請求項2?5
本願請求項2?5に係る発明は、「ポリイソブチレン骨格を有する樹脂と、下記式(1)又は下記式(2)で表されるエポキシ化合物と、硬化剤とを含有」する構成と同一の構成を備えるものである。したがって、本願請求項2?5に係る発明も、本願請求項1に係る発明と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

第6 引用発明2との対比・判断
1 請求項1
(1) 対比
引用発明2の「配合物」は、「ポリイソブチレンジアクリレート樹脂」、「ジアクリレート樹脂」及び「ラジカル光開始剤」を含有する。
引用発明2の「ポリイソブチレンジアクリレート樹脂」及び「ラジカル光開始剤」は、技術常識からみて、それぞれ「ポリイソブチレン骨格を有する樹脂」及び「硬化剤」である。また、引用発明2の「配合物」は、その材料組成からみて、「樹脂組成物」である。加えて、引用発明2の「配合物」は、有機発光ダイオードのシーラントとして使用するものであるから、「有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用」という要件を満たす。
したがって、引用発明2の「配合物」は、「ポリイソブチレン骨格を有する樹脂」及び「硬化剤」を含有する「有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用樹脂組成物」である。

(2) 一致点
以上より、本願請求項1に係る発明と引用発明2は、以下の点で一致する。

「ポリイソブチレン骨格を有する樹脂と、硬化剤とを含有する、
有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用樹脂組成物。」

(3) 相違点
本願請求項1に係る発明と引用発明2を対比すると、両者は以下の点で相違する。

(相違点1)
有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用樹脂組成物が、本願請求項1に係る発明は、「式(1)」又は「式(2)」で表されるエポキシ化合物を含むのに対し、引用発明2は、そのように特定されていない点。

(相違点2)
ポリイソブチレン骨格を有する樹脂が、本願請求項1に係る発明は、「全体の重量平均分子量が5万以上」であるのに対し、引用発明2では、「Mn=5300」である点(当合議体注:技術常識からみて、「Mn」は、数平均分子量を表すものと認める。)。

(4) 相違点1についての判断
前記「第5」の1(4)で述べたとおり、引用文献1?3の記載事項からは、エポキシ化合物として、前記「式(1)」又は「式(2)」で表されるエポキシ化合物を使用することにより、「アウトガスの発生を抑制」することについて、当業者であれば容易に予測し得たということはできない。
したがって、本願請求項1に係る発明の効果は、引用文献1?3の記載事項からみて、顕著なものということができる。
そうしてみると、相違点2について検討するまでもなく、本願請求項1に係る発明は、当業者が引用発明2及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

2 請求項2?5
本願請求項2?5に係る発明は、「ポリイソブチレン骨格を有する樹脂と、下記式(1)又は下記式(2)で表されるエポキシ化合物と、硬化剤とを含有」する構成と同一の構成を備えるものである。したがって、本願請求項2?5に係る発明も、本願請求項1に係る発明と同じ理由により、当業者であっても、引用発明2及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願請求項1?5に係る発明は、当業者が引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-02-03 
出願番号 特願2014-194064(P2014-194064)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大竹 秀紀  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 宮澤 浩
高松 大
発明の名称 有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用樹脂組成物、有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用樹脂シート、及び、有機エレクトロルミネッセンス表示素子  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  

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