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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1359348 |
審判番号 | 不服2018-9287 |
総通号数 | 243 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-07-05 |
確定日 | 2020-01-28 |
事件の表示 | 特願2016-118866「ウエハの永久接合方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月 6日出願公開、特開2016-178340〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年1月25日の特許出願(特願2013-549719号)の一部を平成28年6月15日に特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2016-118866号)としたものであって、平成28年7月4日に手続補正書が提出され、平成29年5月31日付けで拒絶理由が通知され、同年9月5日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年2月28日付けで拒絶査定がなされた。それに対して、同年7月5日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出された。 第2 平成30年7月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年7月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1?15を、補正後の特許請求の範囲の請求項1?15と補正するものであり、そのうちの補正前後の請求項1は、次のとおりである。 (補正前) 「【請求項1】 第1の基板の第1の接触面を、第2の基板の第2の接触面に接合する方法であって、 前記第1の接触面上の表面層中に貯留部を形成するステップと、 前記貯留部に、第1の原料または第1の原料群を少なくとも部分的に充填するステップと、 仮接合連結を形成するために、前記第1の接触面を前記第2の接触面と接触させるステップと、 前記第1の接触面と前記第2の接触面との間の永久接合を形成するステップであって、 前記第1の原料と、前記第2の基板の反応層中に含まれた第2の原料とを反応させることによって少なくとも部分的に強化された永久接合を形成するステップと、 を含む、前記方法。」 (補正後) 「【請求項1】 第1の基板の第1の接触面を、第2の基板の第2の接触面に接合する方法であって、 前記第1の接触面上の表面層中に貯留部を形成するステップと、 前記貯留部に、第1の原料または第1の原料群を少なくとも部分的に充填するステップと、 仮接合連結を形成するために、前記第1の接触面を前記第2の接触面と接触させるステップと、 前記第1の接触面と前記第2の接触面との間の永久接合を形成するステップであって、 前記第1の原料と、前記第2の基板の反応層中に含まれた第2の原料とを反応させることによって少なくとも部分的に強化された永久接合を形成するステップと、 を含み、前記貯留部が、プラズマ活性化によって形成される、前記方法。」 2 本件補正についての検討 (1)本件補正は、請求項1についての補正(以下「補正事項1」という。)を含むものであり、当該補正事項1は、補正前の請求項1について、「貯留部」を限定する補正であって、補正前の発明と補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 したがって、当該補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下において検討する。 (2)独立特許要件について ア 本件補正後の発明 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、上記「1 本件補正の内容」の「(補正後)」に記載したとおりである。 イ 引用例の記載と引用発明 (ア)引用例1 a 引用例1の記載 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の原出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特表2008-535230号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある(下線は、当審による。以下、同じ。)。 (a)「【技術分野】 【0001】 本発明は、半導体材料から選択された材料で作られた2つのウェハを貼り合わせる方法に関し、上記方法では、貼り合わせる2つの層の少なくとも1つの表面のプラズマ活性化を利用する。」 (b)「【0025】 (本発明の内容) 本発明は、半導体材料の2つのウェハの貼り合わせに関する。材料の各々は、Siまたは何らかの他の半導体材料であってもよい。 【0026】 2つのウェハを貼り合わせるための表面はまた、活性化前に酸化されてもよい。より正確には、貼り合わせるための表面の一方または他方が酸化されてもよく、またはそれらの両方が酸化されてもよい。 【0027】 以下に説明するように、貼り合わせるための表面の両方、またはそれらの一方のみに活性化が実行され得る。本発明の1つの利点は、貼り合わせるための2つの表面の一方しか活性しなくても、貼り合わせ後に十分に高い結合エネルギーを得ることができることである。 …(略)… 【0032】 (本発明の主な特性) 本発明は、活性化パラメータが不変であり変動しない単一ステップにおいて活性化が実行される既知の方法とは異なる。 【0033】 本発明において、少なくとも1つのウェハ貼り合わせ表面は、プラズマに含まれる種の運動エネルギーを変更して、表面が活性化されているウェハの表面領域の厚さにおける深さが制御された乱れ領域を作るために、活性化パラメータを制御しながらプラズマ活性化を受ける。 【0034】 言い換えれば、活性化パラメータを制御することによって、各活性化表面の厚さにおける乱れ領域を得ることが可能であり、この乱れ領域は、所望の制御された深さまで活性化されたウェハ内に延在する。 【0035】 さらに、活性化パラメータを制御することにより、上記乱れ領域の厚さを制御することも可能である。 【0036】 実際、活性化ウェハの厚さに「埋め込まれた」乱れ領域を構成し、または表面と面一である乱れ領域を構成することが望ましいこともある。 【0037】 いずれの場合において、本発明により、生じた乱れ領域の厚さおよび深さを制御する(すなわち、活性化ウェハの厚さの「最大」深さと「最小」深さを制御する)ことが可能である。 【0038】 この点に関して、プラズマに含まれた種に対して、以下のものを得るような方法で活性化を実行することが好ましいことが明示される。 ・第1の活性化期間中、活性化の最大運動エネルギーレベル ・引き続き、第2の活性化期間中、より低い運動エネルギーレベル これにより、活性化を受けるウェハの厚さ内において、以下のものを発生することが可能になる。 ・第1の活性化期間中、ウェハの深さP1の周りに埋め込まれる大きな乱れ/無秩序(Dと表記) ・第2の活性化期間中、深さP1より浅い深さP2で埋め込まれた、より小さい乱れ/無秩序(dと表記) 【0039】 この活性化制御シーケンスは、乱れ領域の厚さを最大化するとともに、その最大深さを最大化するように働く。 【0040】 この乱れ領域は、貼り合わせる表面上に存在するガスおよび他の元素を受け入れるのに適した「リザーバ」として作用すると思われる。このように、上記ガスおよび他の元素を誘引し捕捉することによって、乱れ領域は、貼り合わせを高めるように思われる。 【0041】 乱れ/無秩序Dは、乱れ/無秩序Dと活性化される表面との間に挟まれた乱れ/無秩序dによって捕捉するためのガスおよび他の元素が「供給」されるのに適していると考えられ、乱れ/無秩序Dおよびdは、ウェハの深さに延在するある種の捕捉格子を形成する(プラズマ活性ウェハの厚さで得られた分布を示す図1を参照されたい)。 【0042】 本明細書において使用する「乱れ領域」という用語は、プラズマに露出されることによって変更される領域を意味し、この変更は、乱れ領域内に、欠陥、乱れ、および原子スケールでの無秩序の導入に相当する(原子結合の弱化、結合角度の変化など)。 【0043】 この変更は、ウェハ間の貼り合わせを高め、特に、結合エネルギーを高めるように働く。」 (c)「【0068】 (出力密度の制御) 上述したように、表面が活性化されるウェハに接続された電極に供給される出力の密度を制御することによって、活性化パラメータを制御することが可能である。 【0069】 本願出願人は、より大きな出力を適用するほど、結果的に得られる乱れ領域の厚さを増す効果があることを発見した。 【0070】 このことは、図2に示されており、同図において、プラズマを活性化するために使用する出力密度は、横座標にW/cm^(2)の単位で描かれており、活性化によって生じた乱れ領域の厚さは、縦座標においてÅの単位で描かれている。 …(略)… 【0074】 出力を制御する場合、出力密度は、最初に高出力を適用し、引き続き、低出力、すなわち、高出力より低いレベルの出力を適用することによって変動される。 【0075】 高出力と低出力との間の変動は、出力ステップにおいて実行され得、このステップの一方の出力は高出力に相当し、別の出力ステップは低出力に相当する。 …(略)… 【0085】 このような状況下において、活性化されるウェハの表面が、直径200mmのディスク形の場合、高出力は、1000Wの値を有し、低出力は、250Wの値を有する。 【0086】 活性化されるウェハの表面が、直径300mmのディスク形の場合、高出力は、2000Wの値を有し、低出力は、500Wの値を有する。」 (d)「【0100】 (結合エネルギーの上昇) すべての状況下において、活性化パラメータは、表面が活性化されたウェハの上記表面領域の厚さにおいて乱れ領域を生じさせるために制御される。 【0101】 この乱れ領域は、ウェハの深さが増した均一かつ連続的な領域であることが好ましい。 【0102】 それにもかかわらず、他の形態において、本発明により、表面が活性化されたウェハの表面領域の厚さに複数の乱れ領域を生じさせることが可能であり、これらの乱れ領域の各々は、上記ウェハの厚さの深さのそれぞれにわたって延在し、それぞれの厚さを有する。 【0103】 本発明により、少なくとも1つの表面が本発明により活性化された表面を貼り合わせた後に得られた結合エネルギーを著しく上昇させることが可能である。 【0104】 この点に関して、図4は、4つの異なる活性化で得られる結合エネルギー(mJ/m^(2))を示し、貼り合わせられる表面の1つのみ、詳しく言えば、表面酸化され、引き続き、Smart Cut(商標)タイプの方法によって薄層を転写するために注入されたSiウェハの表面ですべての活性化が実行された。 …(略)… 【0109】 同図の左側から右側に向かって、図示した4つの活性化は、以下の出力条件セットに相当する。 ・一定の出力値(30s間、250W) ・一定の出力値(30s間、1000W) ・15s間、250Wの後、15s間、1000Wが続く変動出力 ・15s間、1000Wの後、15s間、250Wが続く変動出力 【0110】 4番目の条件セットで、結合エネルギーの著しい上昇が観察される。 【0111】 このように、同図は、出力を制御することで、結合エネルギーが著しく上昇することを示す。 【0112】 また、この上昇は、最初に高出力で実施した後、引き続き低出力で実施することによって得られることを示す。 【0113】 上記領域の浅い部分を準備する前に最も深くに埋め込まれた乱れ領域の部分を準備することが望ましい。」 (e)「【0119】 (実施例) 非制限的な例として、上記に設定した値に加えて、活性化を実施し、以下のシーケンスを実行することによって表面酸化された別のSiウェハとSiウェハを貼り合わせることが可能である。 ・2つの貼り合わせ表面を準備する(RCA(Radio Corporation of America)タイプなどのウェット洗浄、研磨など)。 ・「二重出力」処理によって貼り合わせる表面の一方または両方をプラズマ活性化する。例えば、「Tokyo Electron Limited」(登録商標)プラズママシンは、200mmの直径を有するウェハに対して、O_(2)の大気下で50ミリトールの圧力を用いて、75標準立方センチメートル毎分(sccm)のO_(2)、15s間で1000Wの出力、次の15s間で250Wで使用される。 ・貼り合わせのすぐ前に表面を光学洗浄する(脱イオン水でリンス、RCAタイプまたはNH_(4)OHタイプの洗浄、水でスクラブなど)。 ・貼り合わせる表面を接触状態にし、貼り合わせを開始する。 ・熱処理によって貼り合わせを強化する(低温、例えば、200℃で)。」 (f)「【図面の簡単な説明】 【0121】 …(略)… 【図4】4つの異なる活性化条件に対して、Siウェハと、貼り合わせ前にプラズマ活性化された表面酸化Siウェハとの間で得られる結合エネルギーを示すグラフである。」 b 引用発明 (a)上記a(b)の摘記から、引用例1の、a(e)の実施例における、「プラズマ活性化するステップ」が、「表面が活性化されているウェハの表面領域の厚さにおける深さが制御された乱れ領域を作るためのステップであって、 第1の活性化期間中、ウェハの深さP1の周りに埋め込まれる大きな乱れ/無秩序Dを、引き続く第2の活性化期間中、深さP1より浅い深さP2で埋め込まれた、より小さい乱れ/無秩序dを得るステップであり、 この乱れ領域は、貼り合わせる表面上に存在するガスおよび他の元素を受け入れるのに適した「リザーバ」として作用し、乱れ/無秩序Dは、乱れ/無秩序Dと活性化される表面との間に挟まれた乱れ/無秩序dによって捕捉するためのガスおよび他の元素が「供給」されるのに適していると考えられ、乱れ/無秩序Dおよびdは、ウェハの深さに延在するある種の捕捉格子を形成する」ものであることが開示されているといえる。 (b)上記a(d)の摘記から、引用例1の、a(e)の実施例において、「プラズマ活性化」を「貼り合わせる表面の一方」にする場合に、当該プラズマ活性化を、「表面酸化された別のSiウェハ」にすることが開示されているといえる。 (c)したがって、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「以下のシーケンスを実行することによって、表面酸化された別のSiウェハと、Siウェハを貼り合わせる方法であって、 ・2つの貼り合わせ表面を準備する(RCA(Radio Corporation of America)タイプなどのウェット洗浄、研磨など)ステップと、 ・「二重出力」処理によって、前記表面酸化された別のSiウェハの貼り合わせる表面をプラズマ活性化するステップであって、プラズママシンは、200mmの直径を有するウェハに対して、O_(2)の大気下で50ミリトールの圧力を用いて、75標準立方センチメートル毎分(sccm)のO_(2)、15s間で1000Wの出力、次の15s間で250Wで使用されるステップと、 ・貼り合わせのすぐ前に表面を光学洗浄する(脱イオン水でリンス、RCAタイプまたはNH_(4)OHタイプの洗浄、水でスクラブなど)ステップと、 ・貼り合わせる表面を接触状態にし、貼り合わせを開始するステップと、 ・熱処理によって貼り合わせを強化する(低温、例えば、200℃で)ステップと、 を含み、 前記プラズマ活性化するステップは、表面が活性化されているウェハの表面領域の厚さにおける深さが制御された乱れ領域を作るためのステップであって、 第1の活性化期間中、ウェハの深さP1の周りに埋め込まれる大きな乱れ/無秩序Dを、引き続く第2の活性化期間中、深さP1より浅い深さP2で埋め込まれた、より小さい乱れ/無秩序dを得るステップであり、 この乱れ領域は、貼り合わせる表面上に存在するガスおよび他の元素を受け入れるのに適した「リザーバ」として作用し、乱れ/無秩序Dは、乱れ/無秩序Dと活性化される表面との間に挟まれた乱れ/無秩序dによって捕捉するためのガスおよび他の元素が「供給」されるのに適していると考えられ、乱れ/無秩序Dおよびdは、ウェハの深さに延在するある種の捕捉格子を形成し、 「乱れ領域」は、プラズマに露出されることによって変更する領域を意味し、この変更は、乱れ領域内に、欠陥、乱れ、および原子スケールでの無秩序の導入に相当し、ウェハの貼り合わせを高め、特に、結合エネルギーを高めるように働く、前記方法。」 (イ)周知例1:特表2003-523627号公報 「【0068】 前記シリコン結合は、ベアシリコンウェハ、すなわち天然酸化物を有するまたは前述のようにその面に形成された酸化物層を有するシリコンウェハで処理されてもよい。酸素プラズマ処理の間、ベアシリコンウェハに形成されるかもしれない天然酸化物はスパッタエッチングされ、かつシリコン面に形成された酸化物層エッチングされる。最終の面は、活性された(天然または形成された)酸化物である。脱イオン水でリンスされた場合、活性される酸化物面はSi-OH基で主に停止される。酸素プラズマ中での酸化物成長は一般の天然酸化物層に比べて少ない水を有することがわかっているので、初期結合ブリッジからの水および次の高分子化反応(6)によって発生する水は直ぐにプラズマ酸化物に吸収することができる。 【0069】 Si-OH+Si-OH→Si-O-Si+H_(2)O (6) 図5の(A)?(E)は、2つのシリコンウェハの結合を示す。ウェハ50、52は、それぞれVSEプロセスに委ねられた天然酸化物(図示せず)を持つ面51、53を有する。図5の(C)で示される面53は、所望の化学種54で停止されている。前記2つのウェハは、接合され、結合55が形成し始める(図5の(D))。この結合は伝達し、かつ結合副産物、この場合H_(2)ガス、は除去される。除去された前記副産物は図5の(E)に矢印で示される。 【0070】 酸化物シリコンウェハのプラズマ活性酸化物に溶解することによって結合界面からの水の除去に加えて、前記水は薄い酸化物を通してベアシリコンウェハに拡散でき、シリコンと反応する。前記酸化物下の前記シリコン面はわずかの単一層に広がる損傷または欠陥の領域を有し、前記酸化物層を通して拡散し、かつ前記損傷または欠陥の領域に達する水分子は室温で水素に転換でき、直ぐに除去することができる;Si+2H_(2)O→SiO_(2)+2H_(2) (7)。 【0071】 (6)の可逆的反応は、したがって回避され、かつ室温結合エネルギーは共有Si-O-Si結合の形態により非常に増加する。 【0072】 比較的厚い(?5nm)酸化物層が形成されると、前記水分子がこの厚い層を通して拡散すために長い時間を取る。一方、プラズマ処理後に薄い層が置かれるか、または過度に近くに欠陥領域が形成されると、シリコンウェハに達する水はシリコンと十分に反応せず、水素に転換されないかもしれない。両方の場合において、結合エネルギー増加は限界がある。好ましい酸素プラズマ処理はしたがって最小のプラズマ酸化物厚さ(例えば約0.1?1.0nm)およびシリコン面上に妥当な厚さの欠陥領域(例えば約0.1?0.3nm)に置く。」 「【0079】 低温または室温で増加された結合エネルギーを左右する機構はいずれも似ている。プラズマによる結合ウェハの非常に僅かなエッチング(VSE)は前記面を洗浄し、活性し、かつ望ましくない可逆反応を防ぐために高分子化界面の副産物の除去を改善し、室温で共有結合を促進する所望の化学種で面を停止するために適切な液でリンスする。前記酸化物被覆ウェハである場合、異なる面停止を除いて同様に好ましい。ベアウェハ結合において、水吸収をなし、かつ水素に転換するために酸化物の非常に高い反応面およびシリコンは、形成されるべきである。非常に高い反応層は、プラズマ薄膜酸化物層および損傷シリコン面層でできる。前記シリコンウェハ上の前記酸化物はある損傷を有してもよい。O_(2)プラズマのみならず他のガスプラズマ(Ar、CF_(4)のような)は適切である。VSE中および後にシリコンウェハは湿気と直ぐに反応し、酸化物層を形成するので、下方の損傷シリコン層がVSEによって創られる。前記VSEおよび副産物除去方法は、事実上、むしろ一般であるので、このアプローチは多くの手段および多くの材料の適用によって履行できる。」 (ウ)周知例2:特開2008-166586号公報 「【0027】 接合装置では、第1の板状部材としてSi、SiO_(2)、またはSiNにより形成されたシリコンウェーハ10と第2の板状部材としてガラスにより形成されたガラスウェーハ11とを、まずチャンバー減圧下に置き、酸素プラズマ処理を実施した後、窒素プラズマ処理を行う。 【0028】 酸素プラズマ処理、窒素プラズマ処理では、図2に示すように、チャンバー30内に設けられた中心部に向かって凸形状となったテーブル20A、20B上にシリコンウェーハ10とガラスウェーハ11を固定し、プラズマ発生源22A、22Bよりシリコンウェーハ10とガラスウェーハ11表面に酸素プラズマ、窒素プラズマを照射する。 【0029】 これにより、シリコンウェーハ10とガラスウェーハ11との表面が活性化されるとともに、親水化される。 【0030】 続いて、チャンバー30内を大気状態に戻し、シリンダー21A、21Bを移動させてシリコンウェーハ10とガラスウェーハ11との接合面全面を密着させ、仮接合を行う。仮接合後、シリコンウェーハ10とガラスウェーハ11とは、加圧されるとともに、不図示の加熱装置により加熱され、接合温度(例えば400℃から500℃)まで温度上昇される。この状態で、高圧電源13によりガラスウェーハ11側をカソードとして直流高電圧(例えば500Vから1000V)を印加する。 【0031】 これにより、シリコンウェーハ10とガラスウェーハ11との間に大きな静電引力が発生し、界面部で化学結合することによって、シリコンウェーハ10とガラスウェーハ11とが強固に結合される。」 (エ)周知例3:特開2000-306993号公報 「【0009】次に、図5(C)に示すように、段差を平坦化したシリコン基板101とベース基板104とをはり合わせる。あらかじめ、表面に付着したパーティクル等を水酸化アンモニウム/水/過酸化水素の混合液を80℃に加熱して洗浄する方法(RCA洗浄あるいはSC-1洗浄、以下、RCA洗浄とする。)により除去する。これにより、接合面における気泡の発生が防止される。 【0010】基板をはり合わせるには、はり合わせる面を洗浄によりいずれも親水性とし、水素結合により接着させる。あるいは、はり合わせる面の一方を酸化してからファンデルワールス力により接合させる。基板を重ね合わせた後、さらに酸素または窒素雰囲気中で例えば1100℃、30?120分の熱処理を行い、強固な接合状態とする。この熱処理により、脱水縮合反応が進行し、共有結合が形成される。」 ウ 引用発明との対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明は、「以下のシーケンスを実行することによって、表面酸化された別のSiウェハと、Siウェハを貼り合わせる方法」であるところ、半導体技術の分野において、Siウェハは基板の一種であるから、引用発明の「表面酸化された別のSiウェハ」、「Siウェハ」は、それぞれ本願補正発明の「第1の基板」、「第2の基板」に相当する。 (イ)また、引用発明は、「表面酸化された別のSiウェハと、Siウェハを貼り合わせる方法」であるところ、引用発明において、「前記表面酸化された別のSiウェハの貼り合わせる表面」と「『Siウェハ』の『貼り合わせる』表面」は、それぞれ本願補正発明の「第1の基板の第1の接触面」と「第2の基板の接触面」に相当するから、本願補正発明と引用発明とは、「第1の基板の第1の接触面を、第2の基板の第2の接触面に接合する方法」である点で一致する。 (ウ)次に、本願補正発明の「前記第1の接触面上の表面層中に貯留部を形成するステップ」、及び、「前記貯留部が、プラズマ活性化によって形成される」と、引用発明の「「二重出力」処理によって、前記表面酸化された別のSiウェハの貼り合わせる表面をプラズマ活性化するステップであって、プラズママシンは、200mmの直径を有するウェハに対して、O_(2)の大気下で50ミリトールの圧力を用いて、75標準立方センチメートル毎分(sccm)のO_(2)、15s間で1000Wの出力、次の15s間で250Wで使用されるステップ」、及び、「前記プラズマ活性化するステップは、表面が活性化されているウェハの表面領域の厚さにおける深さが制御された乱れ領域を作るためのステップであって、第1の活性化期間中、ウェハの深さP1の周りに埋め込まれる大きな乱れ/無秩序Dを、引き続く第2の活性化期間中、深さP1より浅い深さP2で埋め込まれた、より小さい乱れ/無秩序dを得るステップであり、この乱れ領域は、貼り合わせる表面上に存在するガスおよび他の元素を受け入れるのに適した「リザーバ」として作用し、乱れ/無秩序Dは、乱れ/無秩序Dと活性化される表面との間に挟まれた乱れ/無秩序dによって捕捉するためのガスおよび他の元素が「供給」されるのに適していると考えられ、乱れ/無秩序Dおよびdは、ウェハの深さに延在するある種の捕捉格子を形成し」とを対比する。 a 引用発明の「別のSiウェハ」は「表面酸化された」ものであるから、当該「表面酸化された」部分は、本願補正発明の(第1の基板の)「前記第1の接触面上の表面層」に相当する。 b 引用発明では、別のSiウェハをプラズマ活性化するステップは、プラズママシンが、「75標準立方センチメートル毎分(sccm)のO_(2)」、「15s間で1000Wの出力」で、ウェハの深さP1の周りに埋め込まれる乱れ/無秩序Dを得て、「次の15s間で250W」で、深さP1より浅い深さP2で埋め込まれた、乱れ/無秩序dを得るのに使用されるステップであるといえる。 そして、引用発明では、「この乱れ領域は、貼り合わせる表面上に存在するガスおよび他の元素を受け入れるのに適した「リザーバ」として作用し、乱れ/無秩序Dは、乱れ/無秩序dによって捕捉するためのガスおよび他の元素が「供給」されるのに適していると考えられ」るものである。 そうすると、引用発明の「リザーバ」として作用する「乱れ領域」は、本願補正発明の「貯留部」に相当するといえる。 また、引用発明において、「乱れ領域」は、「プラズマ活性化するステップ」で得られるといえる。 c したがって、本願補正発明と引用発明は、「前記第1の接触面上の表面層中に貯留部を形成するステップ」を含む点、及び「前記貯留部が、プラズマ活性化によって形成される」点で一致する。 (エ)本願補正発明の「仮接合連結を形成するために、前記第1の接触面を前記第2の接触面と接触させるステップ」と、引用発明の「貼り合わせる表面を接触状態にし、貼り合わせを開始するステップ」とを対比する。 上記(イ)における検討と同様に、引用発明において、当該「貼り合わせる表面」は、「前記表面酸化された別のSiウェハの貼り合わせる表面」と「『Siウェハ』の貼り合わせる表面」とであるといえるから、本願補正発明と引用発明は、「前記第1の接触面を前記第2の接触面と接触させるステップ」を含む点で共通する。 (オ)本願補正発明の「前記貯留部に、第1の原料または第1の原料群を少なくとも部分的に充填するステップ」、及び、「前記第1の接触面と前記第2の接触面との間の永久接合を形成するステップであって、前記第1の原料と、前記第2の基板の反応層中に含まれた第2の原料とを反応させることによって少なくとも部分的に強化された永久接合を形成するステップ」と、引用発明の「熱処理によって貼り合わせを強化する(低温、例えば、200℃で)ステップ」とを対比する。 a 引用発明の「貼り合わせのすぐ前に表面を光学洗浄する(脱イオン水でリンス、RCAタイプまたはNH_(4)OHタイプの洗浄、水でスクラブなど)ステップ」は、貼り合わせる表面を、水、すなわち「H_(2)O」を含む液体等に曝すことであり、しかも、当該ステップに先立って、前記貼り合わせる表面には、欠陥、乱れ、および原子スケールでの無秩序の導入に相当する変更がなされた領域(上記イ(ア)(b)の段落【0042】)である、「乱れ領域」が作られており、上記(ウ)bで検討したように、この「乱れ領域」は、貼り合わせる表面上に存在するガスおよび他の元素を受け入れるのに適した「リザーバ」として作用するのであるから、当該「乱れ領域」の前記欠陥等の少なくとも一部には、前記貼り合わせ表面に存在する、「水」、すなわち「H_(2)O」が充填されるものと認められる。 そして、当該「水」、すなわち「H_(2)O」は、本願補正発明の「第1の原料または第1の原料群」に該当するといえるから、本願補正発明と引用発明は、「前記貯留部に、第1の原料または第1の原料群を少なくとも部分的に充填するステップ」を含む点で一致する。 b 引用発明において、「熱処理によって貼り合わせを強化する(低温、例えば、200℃で)」ステップの際に、「第1の原料」である「水」、すなわち「H_(2)O」が、Siと結合して酸化物となることは、上記イ(イ)に摘記のとおり、周知例1の段落【0070】に、「酸化物シリコンウェハのプラズマ活性酸化物に溶解することによって結合界面からの水の除去に加えて、前記水は薄い酸化物を通してベアシリコンウェハに拡散でき、シリコンと反応する。前記酸化物下の前記シリコン面はわずかの単一層に広がる損傷または欠陥の領域を有し、前記酸化物層を通して拡散し、かつ前記損傷または欠陥の領域に達する水分子は室温で水素に転換でき、直ぐに除去することができる;Si+2H_(2)O→SiO_(2)+2H_(2) (7)。」と記載されているように周知の事項である。 そうすると、引用発明において、「・貼り合わせのすぐ前に表面を光学洗浄する(脱イオン水でリンス、RCAタイプまたはNH_(4)OHタイプの洗浄、水でスクラブなど)ステップ」と、「・貼り合わせる表面を接触状態にし、貼り合わせを開始するステップ」と、「・熱処理によって貼り合わせを強化する(低温、例えば、200℃で)ステップ」のシーケンスを経ることによって、「H_(2)O」と、「Siウェハ」に含まれた「Si」との反応によって、貼り合わせが強化されるものと理解される。 一方、引用発明の「Siウェハ」はSiからなるから、当該「Siウェハ」における、上記「H_(2)O」と反応する「Si」からなる「層」、及び「Si」は、それぞれ本願補正発明の「第2の基板の反応層」及び「第2の原料」に相当する。 したがって、引用発明は、「H_(2)O」と、「Siウェハ」のSiからなる層に含まれた「Si」とを反応させることによって、表面酸化された別のSiウェハと、Siウェハとの貼り合わせが強化されるステップを含むものといえる。 よって、本願補正発明と引用発明とは、「前記第1の原料と、前記第2の基板の反応層中に含まれた第2の原料とを反応させることによって前記第1の接触面と前記第2の接触面との間の接合を形成するステップであって、少なくとも部分的に強化された接合を形成するステップ」を含む点で共通する。 c 次に、本願補正発明の「永久接合を形成するステップ」は、「少なくとも部分的に強化された永久接合を形成するステップ」であり、当該ステップで、「仮接合連結」は強化されると理解できるから、少なくとも部分的に強化された接合を形成するステップであるといえる。 また、当該技術の分野において、接合と貼り合わせは、いずれもボンディングの意味で、同義であるから、引用発明の「貼り合わせを強化する」は、「接合を強化する」と言い換えできる。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記第1の接触面と前記第2の接触面との間の接合を形成するステップであって、少なくとも部分的に強化された接合を形成するステップ」を含む点で共通する。 d したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記第1の原料と、前記第2の基板の反応層中に含まれた第2の原料とを反応させることによって前記第1の接触面と前記第2の接触面との間の接合を形成するステップであって、少なくとも部分的に強化された接合を形成するステップ」を含む点で共通する。 (カ)以上のことから、本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「第1の基板の第1の接触面を、第2の基板の第2の接触面に接合する方法であって、 前記第1の接触面上の表面層中に貯留部を形成するステップと、 前記貯留部に、第1の原料を少なくとも部分的に充填するステップと、 前記第1の接触面を前記第2の接触面と接触させるステップと、 前記第1の接触面と前記第2の接触面との間の接合を形成するステップであって、 前記第1の原料と、前記第2の基板の反応層中に含まれた第2の原料とを反応させることによって少なくとも部分的に強化された接合を形成するステップと、 を含み、前記貯留部が、プラズマ活性化によって形成される、前記方法。」 <相違点> <相違点1> 接触させるステップについて、本願補正発明は、「仮接合連結を形成するため」に、接触させるのに対し、引用発明では、「貼り合わせる表面を接触状態にし、貼り合わせを開始するステップ」である点。 <相違点2> 接合を形成するステップについて、本願補正発明では、「永久接合」を形成するステップであって、「少なくとも部分的に強化された永久接合」を形成するステップであるのに対し、引用発明では、「熱処理によって貼り合わせを強化する」ステップである点。 エ 判断 以下、相違点について検討する。 (ア)相違点1について a 本願の明細書の発明の詳細な説明には、仮接合について、以下のように記載されている。 「【課題を解決するための手段】 …(略)… 【0011】 基板間で仮接合または可逆接合を形成するための仮接合ステップとして、基板の接触面間で弱い相互作用を生じる目的で、様々な可能性がある。仮接合の強度は、永久接合の強度よりも低く、…(略)…分子濡れ(molecule-wetted)基板間の、主に永久双極子モーメントが異なる分子間でのファンデルワールス相互作用による仮接合が、ウエハ間の仮接合を可能とするのに適している。以下の化学化合物を相互連結剤として例によって挙げるが、それだけに限られるものではない。」 「【図面の簡単な説明】 【0048】 【図1】第1の基板を第2の基板と接触させた直後の、本発明で特許請求する方法の第1のステップを示す図である。 【図2a】より高い接合強度を形成するための、本発明で特許請求する方法の他のステップを示す図である。 【図2b】より高い接合強度を形成するための、本発明で特許請求する方法の他のステップを示す図である。 【図3】図1、図2aおよび図2bに記載のステップに続く、基板接触面が接触している、本発明で特許請求する方法の別のステップを示す図である。 【図4】基板間で不可逆的な接合/永久接合を形成するための、本発明で特許請求するステップを示す図である。」 「【発明を実施するための形態】 …(略)… 【0050】 図1に示す状況では、仮接合ステップ中、またはその直後に、第1の基板1の第1の接触面3と、第2の基板2の第2の接触面4との間で進行する化学反応の一部のみを示す。…(略)… 【0054】 図1に示す、仮接合と呼ばれる工程は、好ましくは周囲温度で、または最大50℃で進行させることができる。図2aおよび図2bは、親水性結合を示し、ここでは-OH終端表面によって水が分裂した結果、Si-O-Si架橋が生じている。図2aおよび図2bの工程は、室温で約300時間持続する。50℃では約60時間持続する。図2bの状態は、指示された温度では、貯留部なしで生じる。 …(略)… 【0059】 ステップ3までは、特に貯留部5が形成されているため、温度を過度に増大させる必要はなく、むしろ室温で進行させることが可能である。このようにすると、図1から図3に記載の工程ステップを特に慎重に進行させることが可能である。 【0060】 図4に示す方法ステップでは、第1の接触面と第2の接触面との間で不可逆的な接合または永久接合を形成するために、好ましくは最大500℃、より好ましくは最大300℃、さらに好ましくは最大200℃、最も好ましくは最大100℃、全ての中で最も好ましくは室温を超えない温度まで温度を上昇させる。…(略)…」 b そうすると、発明の詳細な説明に記載された事項等である、上記の段落【0011】、【0048】、【0054】、【0059】の記載から、本願補正発明の「仮接合連結を形成するために、前記第1の接触面を前記第2の接触面と接触させるステップ」は、図1に示される、「仮接合と呼ばれる工程」であって、第1の基板を第2の基板と接触させる第1のステップが対応することと理解できる。 一方、引用発明は、「・貼り合わせのすぐ前に表面を光学洗浄する(脱イオン水でリンス、RCAタイプまたはNH_(4)OHタイプの洗浄、水でスクラブなど)ステップ」と、「・貼り合わせる表面を接触状態にし、貼り合わせを開始するステップ」と、を含み、これらのステップは、接触状態にし、ボンディングを開始するステップであると理解できるから、本願補正発明の当該第1のステップに相当するといえる。 したがって、相違点1は実質的なものではない。 c なお、上記の段落【0054】の「仮接合と呼ばれる工程は、好ましくは周囲温度で、最大50℃で進行させることができる。…図2aおよび図2bの工程は、室温で約300時間持続する。50℃では約60時間持続する。」との記載に基づいて、本願補正発明の「仮接合連結を形成する」が、第1の基板と第2の基板を接触させることにとどまらず、相違点1が実質的なものであった場合について、念のため以下において検討する。 一般に、第1の基板と第2の基板を接合する方法において、貼り合わせる面をプラズマ照射や洗浄により活性化ないし親水化した後に、または貼り合わせる面の一方を酸化した後に、接合面全面を密着させ、水素結合による接着やファンデルワールス力の接合などによる仮接合を行い、仮接合後、加熱/加圧などをして強固な結合とすることは、例えば、上記イ(ウ)、(エ)に摘記の周知例2、3に記載されているように、周知技術である。 引用発明は、「・貼り合わせる表面を接触状態にし、貼り合わせを開始するステップ」と、「・熱処理によって貼り合わせを強化する(低温、例えば、200℃で)ステップ」と、を含むものであり、しかも、貼り合わせを開始するステップの前に、「前記表面酸化された別のSiウェハの貼り合わせる表面をプラズマ活性化するステップ」と、「・任意で、貼り合わせのすぐ前に表面を洗浄する(脱イオン水でリンス、RCAタイプまたはNH_(4)OHタイプの洗浄、水でスクラブなど)ステップ」を含むものであるから、周知例2、3に接した当業者であれば、引用発明において、接触状態にし、貼り合わせ(ボンディング)を開始させ、仮接合に進行させた後に、貼り合わせを強化するステップを行うものとすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。 したがって、仮に、相違点1が実質的なものであったとしても、引用発明において、周知技術に基づき、相違点1に係る本願補正発明の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。 d よって、相違点1は実質的なものではない。 また、仮に、相違点1が実質的なものであったとしても、引用発明において、周知技術に基づき、相違点1に係る本願補正発明の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。 (イ)相違点2について a 本願の明細書の発明の詳細な説明には、永久接合または不可逆的な接合について、以下のように記載されている。 「【背景技術】 【0002】 基板の永久、または不可逆的な接合における目的は、基板の2つの接触面間のできる限り強固で、かつ特に不可逆的な相互連結、したがって高い接合力を生じさせることである。従来技術において、こうした接合のための様々な手法および製造方法がある。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 したがって、本発明の目的は、できる限り高い接合力を有する永久接合を慎重に提供する方法を考え出すことである。」 「【0010】 本発明の基礎となる着想は、少なくとも基板の一方の上に、第1の原料を保持するための貯留部を考え出すことであり、その第1の原料を、他方の基板中に存在する第2の原料を有する基板間で接触させた後に、または仮接合させた後に反応させ、それによって基板間で不可逆的な接合、または永久接合を形成することである。第1の接触面上の一表面層中に貯留部を形成する前、または後に、概して基板の洗浄が、特にフラッシングステップによって行われる。この洗浄は、概して、表面上に粒子が確実に存在しないようにするものでなければならず、こうした粒子が存在すると、接合されない箇所が生じることになる。貯留部、および貯留部内に含まれる原料によって、仮接合または可逆接合を形成した後に、永久接合を接触面上で直接強化し、かつ接合速度を制御した形で増大させる反応が、特に接触面の少なくとも一方、好ましくは貯留部に対向した接触面を変形させることによって誘発されるという技術的可能性が得られる。」 「【0033】 本発明の有利な一実施形態によれば、成長層の形成、および不可逆的な接合の強化は、第1の原料が反応層に拡散することによって行われる。 …(略)… 【0035】 本明細書では、不可逆的な接合が1.5J/m^(2)超、特に2J/m^(2)超、好ましくは2.5J/m^(2)超の接合強度を有すると特に有利である。」 「【0057】 図2bに示すステップでは、下記の化学式(2)に示す反応に従ったH_(2)O分子の分離によって、接触面3と4との間でシラノール基の形の共有結合が形成され、それによってはるかに強固な接合力が生じ、かつ必要となる空間がより少なくなり、したがって接触面3と4との間の距離がさらに低減し、最終的には図3に示す、接触面3と4とが互いに接する最小距離にまで達する。 【0058】 【化2】 Si-OH+HO-Si ←→ Si-O-Si+H_(2)O ・・・ (2) …(略)… 【0060】 図4に示す方法ステップでは、第1の接触面と第2の接触面との間で不可逆的な接合または永久接合を形成するために、好ましくは最大500℃、より好ましくは最大300℃、さらに好ましくは最大200℃、最も好ましくは最大100℃、全ての中で最も好ましくは室温を超えない温度まで温度を上昇させる。これらの温度は、従来技術とは異なり比較的低く、貯留部5が、図5および図6に示す、下記の化学式(3)に示す反応のための第1の原料を収容している場合のみ可能である。 【0061】 【化3】 Si+2H_(2)O → SiO_(2)+2H_(2) ・・・ (3) 【0062】 上述の僅かな温度上昇によって、H_(2)O分子が、第1の原料として貯留部5から反応層7へと拡散する。この拡散は、酸化物層として形成された表面層6と成長層との直接接触によって、または間隙9を介して、または酸化物層間に存在する間隙から行うことができる。したがって、シリコン二酸化物、すなわち純粋なシリコンよりも大きいモル体積を有する化学化合物が、反応層7から、上述の反応による反応生成物10として形成される。この二酸化シリコンは、反応層7と成長層8との境界面で成長し、したがって自然酸化物として形成された成長層8の層を、間隙9の方向に変形させる。ここでもやはり、貯留部からのH_(2)O分子が必要となる。 【0063】 ナノメートル範囲の間隙が存在するため、自然酸化物層8が膨らむ可能性があり、その結果、接触面3、4に対する応力を低減させることができる。このようにすると、接触面3と4との間の距離が低減し、その結果有効な接触面、したがって接合強度がさらに増大する。このようにして行われる溶接連結では、部分的に溶接されない従来技術の製品とは異なり、全ての孔が閉じ、ウエハ全体にわたって溶接連結が形成され、したがって基本的に接合力の増大に寄与する。互いに溶接される2つのアモルファスシリコン酸化物表面間の接合のタイプは、共有結合とイオン部分との混合形式である。」 b そうすると、本願の明細書の上記記載から、本願補正発明において、「少なくとも部分的に強化された永久接合を形成する」とは、例えば、第1の基板の貯留部に収容された第1の原料であるH_(2)O分子と、第2の基板に含まれたSiとを、上記化学式(3)の反応をさせることにより、段落【0035】に記載のように、好ましい程度に強化された接合強度の接合を形成するものを含むものと理解できる。 c 一方、上記ウ(オ)bで検討したように、引用発明は、「・任意で、貼り合わせのすぐ前に表面を洗浄する(脱イオン水でリンス、RCAタイプまたはNH_(4)OHタイプの洗浄、水でスクラブなど)ステップ」と、「・貼り合わせる表面を接触状態にし、貼り合わせを開始するステップ」と、「・熱処理によって貼り合わせを強化する(低温、例えば、200℃で)ステップ」のシーケンスを経ることによって、「H_(2)O」と、「Siウェハ」に含まれた「Si]との反応によって、貼り合わせが強化されるもの、すなわち、上記化学式(3)の反応により、貼り合わせが強化されるものと理解される。 したがって、引用発明において、「・熱処理によって貼り合わせを強化する(低温、例えば、200℃で)ステップ」は、本願補正発明における「永久接合を形成する」ステップに相当するものということができ、相違点2は実質的なものではない。 (ウ)判断についてのまとめ 以上検討したとおりであるから、本願補正発明は、引用例1に記載された発明といえる。また、そうでないとしても、引用発明において、周知技術に基づいて、相違点1に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであり、上記相違点1を勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、仮にそうでないとしても、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 オ 独立特許要件についてのまとめ よって、本件補正は、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しない。 3 補正の却下の決定についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?15に係る発明は、平成29年9月5日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、上記「第2 1 本件補正の内容」の「(補正前)」に記載したとおりである。 2 引用例の記載と引用発明 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の原出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2008-535230号公報(引用例1、再掲)には、上記「第2 2(2)イ(ア)引用例1」に記載した事項が記載されており、引用例1には上記「第2 2(2)イ(イ)引用発明」に記載したとおりの引用発明が記載されている。 3 対比・判断 本願発明は、上記「第2 2 本件補正についての検討」で検討した本願補正発明において、「貯留部」についての限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の特定事項を実質的に全て含み、更に他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 2 本件補正についての検討」において検討したとおり、引用例1に記載された発明であり、または、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用例1に記載された発明であり、または、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、仮にそうでないとしても、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審理終結日 | 2019-08-28 |
結審通知日 | 2019-09-02 |
審決日 | 2019-09-13 |
出願番号 | 特願2016-118866(P2016-118866) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 113- Z (H01L) P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 工藤 一光 |
特許庁審判長 |
加藤 浩一 |
特許庁審判官 |
恩田 春香 鈴木 和樹 |
発明の名称 | ウエハの永久接合方法 |
代理人 | 二宮 浩康 |
代理人 | 上島 類 |
代理人 | 前川 純一 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |