ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B |
---|---|
管理番号 | 1359382 |
審判番号 | 不服2019-4524 |
総通号数 | 243 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-04-05 |
確定日 | 2020-02-18 |
事件の表示 | 特願2017-505349「親水性光学機能性単層膜およびその積層体」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月15日国際公開、WO2016/143778、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)3月8日(先の出願に基づく優先権主張平成27年3月9日)を国際出願日とする出願であって、平成29年11月20日に手続補正がなされ、平成30年5月21日付けで拒絶理由が通知され、同年7月26日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年12月26日に拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し平成31年4月5日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 2 原査定の概要 原査定の拒絶理由の概要は、本願の請求項1?22に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 なお、主引用発明が記載されているとして引用された引用文献1、副引用文献として用いられた引用文献2、周知技術を示す文献として引用された引用文献3は、以下のとおりである。 引用文献1:国際公開第2007/064003号 引用文献2:特開2014-71326号公報 引用文献3:特開2008-107392号公報 3 本件発明 本願の請求項1?20に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明20」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定される次のとおりの発明である。 「 【請求項1】 表面に複数の凸部および複数の凹部からなる凹凸構造を有する単層膜であり、 上記複数の凸部のうち、互いに隣接する凸部の頂点間の距離が1nm?800nmの範囲であり、 該単層膜が、アニオン性親水基およびカチオン性親水基から選ばれる1つ以上の親水基と、重合性炭素-炭素二重結合を有する1つ以上の官能基とを有する化合物(I)、および重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基を2つ以上有する化合物(II)(ただし、水酸基は有してもよいが、アニオン性親水基、およびカチオン性親水基はいずれも有さない)を含む重合性組成物(A)の架橋樹脂からなり、 該単層膜のアニオン性親水基およびカチオン性親水基から選ばれる1つ以上の親水基の最表面濃度(Sa1)と該単層膜1/2地点における親水基の深部濃度(Da1)との親水基濃度の傾斜度(Sa1/Da1)が1.1以上であり、 未硬化の重合性組成物(A)からなる膜の表面に凹凸構造を付与する際に、該膜の表面が、アニオン性親水基、カチオン性親水基、および水酸基から選ばれる1つ以上の親水基と、重合性炭素-炭素二重結合を有する1つ以上の官能基とを有する化合物(I’)(ただし親水基が水酸基を有する基の場合は、重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基は1つである。)またはアニオン性親水基、カチオン性親水基から選ばれる親水基1つ以上と、アミノ基、メルカプト基、および水酸基から選ばれる基1つ以上とを有する化合物(IV)により処理された後、硬化して得られる単層膜。 【請求項2】 表面に複数の凸部および複数の凹部からなる凹凸構造を有する単層膜であり、 上記複数の凸部のうち、互いに隣接する凸部の頂点間の距離が1nm?800nmの範囲であり、 該単層膜が、アニオン性親水基、カチオン性親水基、および水酸基から選ばれる1つ以上の親水基と、重合性炭素-炭素二重結合を有する1つ以上の官能基とを有する化合物(I')(ただし親水基が水酸基を有する基の場合は、重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基は1つである。)、 重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基を2つ以上有する化合物(II)(ただし、水酸基は有してもよいが、アニオン性親水基、およびカチオン性親水基はいずれも有さない)、および アニオン性親水基、カチオン性親水基、または2つ以上の水酸基を少なくとも有する親水部と有機残基からなる疎水部とを有する界面活性剤(III)(ただし、重合性炭素-炭素二重結合を有さない。)を含む重合性組成物(B)の架橋樹脂からなり、 該単層膜のアニオン性親水基およびカチオン性親水基および水酸基から選ばれる少なくとも一つの親水基の最表面濃度(Sa2)と該単層膜1/2地点における親水基の深部濃度(Da2)との親水基濃度の傾斜度(Sa2/Da2)が1.1以上であり、 未硬化の重合性組成物(B)からなる膜の表面に凹凸構造を付与する際に、該膜の表面が上記化合物(I’)またはアニオン性親水基、カチオン性親水基から選ばれる親水基1つ以上と、アミノ基、メルカプト基、および水酸基から選ばれる基1つ以上とを有する化合物(IV)により処理された後、硬化して得られる単層膜。 【請求項3】 上記複数の凸部のうち、互いに隣接する凸部の頂点間の距離が100nm?600nmの範囲である請求項1または2に記載の単層膜。 【請求項4】 上記複数の凸部のうちの任意の凸部の頂点と該凸部に最も近い他の凸部の頂点との距離をP_(n)、(上記単層膜中の)そのP_(n)の平均値をP_(ave)とし、 凹凸構造の高さ方向の座標軸をh軸とし、凹部の最も低い点の高さをh=0とし、上記任意の凸部の頂点の高さをh=H_(n)、そのH_(n)の平均値をH_(ave)としたとき、 H_(ave)/P_(ave)が0.1?5.0の範囲である請求項1?3のいずれかに記載の単層膜。 【請求項5】 上記複数の凸部が錐体形状である請求項1?4のいずれかに記載の単層膜。 【請求項6】 凹凸構造の高さ方向の座標軸をh軸、h軸に対して垂直な面をxy平面とし、凹部の最も低い底点の高さをh'=0、凸部の最も高い頂点の高さをh'=Hとしたときに、すべての凸部の頂点はh=Hの高さのxy平面とほぼ1点で接し、すべての凹部の底点はh=0の高さのxy平面とほぼ1点で接する請求項1?5のいずれかに記載の単層膜。 【請求項7】 凹凸構造の上記凸部は階段状の側面を有する請求項1?6のいずれかに記載の単層膜。 【請求項8】 上記複数の凸部のうちの任意の凸部の頂点と該凸部に最も近い他の凸部の頂点との距離をP_(n)、(上記単層膜中の)そのP_(n)の平均値をP_(ave)とし、 任意の凸部の頂点から距離P_(ave)の範囲内に、3個?6個の範囲の凹部の底点がある請求項1?7のいずれかに記載の単層膜。 【請求項9】 凹凸構造の高さ方向の座標軸をh軸、h軸に対して垂直な面をxy平面とし、凹部の最も低い底点の高さをh=0、凸部の最も高い頂点の高さをh=Hとしたときに、高さが0を超えH未満の範囲の任意の高さのxy平面において、凸部の断面が円形状である請求項1?8のいずれかに記載の単層膜。 【請求項10】 凹凸構造の凸部が格子状に配列しており、凹凸構造の周期が200nm以下であり、凸部の周期に占める比率が0.25以上0.76以下であり、凹凸構造の高さ方向の座標軸をh軸、h軸に対して垂直な面をxy平面とし、凹部の低い底点の高さをh=0、凸部の高さをh=Hとしたときに、Hが0.05?0.5μmである請求項1または2に記載の単層膜。 【請求項11】 請求項1に記載の重合性組成物(A)から塗膜を形成する工程、 塗膜から溶剤を除去する工程、 凹凸構造に対応したパターンを有し、かつアニオン性親水基、カチオン性親水基、および水酸基から選ばれる1つ以上の親水基と、重合性炭素-炭素二重結合を有する1つ以上の官能基とを有する化合物(I’)(ただし親水基が水酸基を有する基の場合は、重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基は1つである。)またはアニオン性親水基、カチオン性親水基から選ばれる親水基1つ以上と、アミノ基、メルカプト基、および水酸基から選ばれる基1つ以上とを有する化合物(IV)が凹凸構造に対応したパターンを有する表面に塗布された成形型を塗膜表面に密着させ、凹凸構造を塗膜表面に転写する工程、 凹凸構造が形成された塗膜を硬化する工程、および 硬化して得られた膜より成形型を離型する工程を含む 請求項1に記載の単層膜を製造する方法。 【請求項12】 請求項2に記載の重合性組成物(B)から塗膜を形成する工程、 凹凸構造に対応したパターンを有し、かつ請求項2に記載の化合物(I’)またはアニオン性親水基、カチオン性親水基から選ばれる親水基1つ以上と、アミノ基、メルカプト基、および水酸基から選ばれる基1つ以上とを有する化合物(IV)が凹凸構造に対応したパターンを有する表面に塗布された成形型を塗膜表面に密着させ、凹凸構造を塗膜表面に転写する工程、 凹凸構造が形成された塗膜を硬化する工程、および 硬化して得られた膜より成形型を離型する工程を含む 請求項2に記載の単層膜を製造する方法。 【請求項13】 成形型が紫外線透過性の材料からなるものであり、凹凸構造が形成された塗膜を硬化する工程を、成形型を密着させたまま紫外線で硬化させる請求項11または12に記載の単層膜の製造方法。 【請求項14】 基材上に単層膜を形成する請求項11?13のいずれかに記載の単層膜の製造方法。 【請求項15】 請求項1?10のいずれかに記載の単層膜からなる反射防止膜。 【請求項16】 請求項10に記載の単層膜の凸部または凹部に金属膜を積層した偏光子。 【請求項17】 請求項1?10のいずれかに記載の単層膜、請求項15に記載の反射防止膜および請求項16に記載の偏光子から選ばれる少なくとも1つを備える透明材料。 【請求項18】 請求項1?10のいずれかに記載の単層膜、請求項15に記載の反射防止膜および請求項16に記載の偏光子から選ばれる少なくとも1つを備える光学物品。 【請求項19】 請求項17に記載の透明材料を備える表示装置。 【請求項20】 請求項1?10のいずれかに記載の単層膜と基材から形成される積層体。」 なお、本件発明1及び本件発明2は、本件補正前の請求項1の記載を引用する請求項3及び請求項2の記載を引用する請求項3をそれぞれ独立形式に書き直したものであり、本件発明11及び本件発明12も、本件補正前の請求項12の記載を引用する請求項14及び請求項13の記載を引用する請求項14をそれぞれ独立形式に書き直したものである。また、本件発明3?10、15?20は、本件補正前の請求項3の記載を引用する請求項4?11、17?22に係る発明に該当し、本件発明13及び本件発明14は、本件補正前の請求項14の記載を引用する請求項15及び請求項16に係る発明に該当する。したがって、本件補正は、本件補正前の請求項1、2、12、13を削除するものであるから、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる事項を目的とするものである。 4 引用文献の記載事項及び引用発明 (1)引用文献1の記載事項 原査定の拒絶理由に引用され、先の出願前の2007年(平成19年)6月7日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された引用文献1(国際公開第2007/064003号)には、以下の記載事項がある。なお、合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。以下の引用文献についても同様である。 ア 「技術分野 【0001】 本発明は、防曇性、防汚性および帯電防止性に優れる、アニオン性親水基が特定の濃度比で分布する単層膜に関する。更に詳しくは、特定の化合物と1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを含む組成物を重合して得られる親水性の共重合体からなる単層膜、該単層膜を含んでなる防曇材料、防汚材料および帯電防止材料、防曇被膜、防汚被膜および帯電防止被膜、並びにこれらの単層膜および被膜が基材表面に設けられた積層体およびその製造方法に関する。 背景技術 【0002】 近年、プラスチックの表面及びガラスの表面に発生する曇りに対する改善要求がさらに強まっている。 【0003】 曇りの問題を解決する方法として、アクリル系オリゴマーに反応性界面活性剤を加えて硬化膜の親水性と吸水性を向上させる防曇塗料が提案されている(非特許文献1)。また、表面の親水性を向上させる事によって、外壁等に付着した汚れ(外気疎水性物質等)を降雨及び散水等によって浮き上がらせて効率的に除去するセルフクリーニング性(防汚染性)を有する防汚染材料(非特許文献2、非特許文献3、) が注目されている。 (中略) 発明が解決しようとする課題 【0014】 本発明は、防曇性、防汚性(セルフクリーニング性)および帯電防止性(ほこり付着防止性、さらに耐擦傷性等に優れる、高い親水性と表面硬度を有する単層膜、該単層膜を含んでなる防曇材料、防汚材料および帯電防止材料、さらに基材表面にこの単層膜を設けてなる積層体およびその製造方法を提供することを目的とする。 課題を解決するための手段 【0015】 本発明者らは、上記の課題を解決すべく、さらに検討を重ねた結果、アニオン性親水基が特定の濃度比で分布する単層膜が優れた防曇性、防汚性、帯電防止性および耐擦傷性を発揮することを見出し、本発明に到達した。このような単層膜が、特定の化合物、特にスルホニルアルキル(メタ)アクリレート及びその塩と1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む組成物を重合して得られる共重合体であると、高い親水性と表面硬度を有するので、優れた防曇性、肪汚性、帯電防止性、耐擦傷性を発揮する。 【0016】 即ち、本発明は、 (1)スルホン酸基、カルボキシル基およびリン酸基から選ばれる少なくとも1種のアニオン性親水基を有する単層膜において、表面のアニオン濃度(Sa)と深部におけるアニオン濃度(Da)のアニオン濃度比(Sa/Da)が1.1以上であることを特徴とする単層膜。 (中略) 発明の効果 【0033】 本発明によれば、親水性の単層膜、これらを含む親水性材料、例えば、防曇材料、防汚材料および帯電防止材料、防曇被膜、防汚被膜および帯電防止被膜、並びにこれちを基材に積層してなる積層体を提供することができる。」 イ 「発明を実施するための最良の形態 【0036】 本発明の単層膜は、スルホン酸基(SO_(3)^(-)),カルボキシル基(CO_(2)^(-))またはリン酸基(PO_(4)^(-))から選ばれる少なくとも1種のアニオン性親水基、特に好ましくはスルホン酸基(SO_(3)^(-))を有する親水性の有機単層膜である。このような有機共重合体を含む単層膜の表面におけるアニオン濃度(Sa)と深部におけるアニオン濃度(Da)のアニオン濃度比(Sa/Da)は、1.1以上、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.3以上である。また、本発明の単層膜においては、アニオン濃度比の上限は20.0であってもよい。尚、本発明において深部とは、単層膜の膜厚の1/2の地点を言う。 このような本発明の単層膜は、基材の少なくとも片面上に設けられたアニオン性親水基を有する被膜であって、該膜中のアニオンが、基材側の膜深部から表面まで分布し、特に該膜が外気と接する最表面に多く分布するように濃度差(アニオン濃度比(Sa/Da)>1.1)を有している。 これは、後述する本発明で用いられる組成物を熱又は放射線等で共重合した場合に、親水性のアニオンが表面に自己集合して膜を形成するためと考えられる。 このように、本発明の単層膜は、その表面に高親水性基のアニオンが高濃度で存在するので、防曇性、防汚性またはセルフクリーニング性、帯電防止性または埃付着防止性等に優れる。 (中略) 【0040】 本発明の単層膜は、下記一般式(1)で表される化合物(I)と1分子内に2個以上の (メタ)アクリロイル基を有する化合物(II)とをモル比に換算して15:1?1:30の範囲、好ましくは2:1?1:20の範囲、1:1?1:25の範囲または1:1?1:15の範囲、特に好ましくは1:3?1:23の範囲で含む組成物を共重合して得られる。ここで言う単層膜とは、少なくとも化合物(I)と化合物(II)を含む塗膜用組成物を共重合して得られる被膜を言う。 【0041】 [X]s[M1]l[M2]m (1) (中略) 【0054】 本発明の組成物は、上記化合物(I)以外に架橋重合性化合物である1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(II)を含む。 以下、化合物(II)について説明する。 【0055】 1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(II)の重合性官能基である(メタ)アクリロイル基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルチオ基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、これらの基のなかでは(メタ)アクリロイルオキシ基または(メタ)アクリロイルチオ基が好ましい。 【0056】 1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物中で、より好ましい化合物を挙げるならば、例えば、1分子内に1個以上の水酸基と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、1分子内に1個以上のエーテル結合若しくはチオエーテル結合と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、(メタ)アクリレート基以外に1分子内に1個以上のエステル結合と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、1分子内に1個以上の脂肪族または芳香族の環構造と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、1分子内に1個以上のへテロ環構造と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物等が挙げられる。 (中略) 【0153】 さらに、本発明に関わる化合物(I)及び化合物(II)を含む組成物には、これら化合物とは化学構造の異なる重合性化合物(III)をさらに含ませることができる。例えば、一般式(1)、(1-1-1)および(1-1-2)で表される化合物とは化学構造の異なる分子内に重合性不飽和二重結合を1個有する化合物、分子内にイソシアナト基を有する化合物等が挙げられる。 (中略) 【0159】 前記の組成物を重合させるに際しては、必要に応じて、重合開始剤、触媒、重合促進剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、ラジカル補足剤、内部離型剤、酸化防止剤、重合禁止剤、HALS、色素、バインダー、レべリング剤等の各種添加剤を、得られる重合体の防曇性能を損なわない範囲で加えることができる。 (中略) 【0172】 本発明の積層体は、前述の単層膜および後述の基材層からなり、該単層膜が少なくとも基材層の片面に形成されてなる。 本発明の積層体の製造方法は、本発明の単層膜を基材層に配置する方法である。すなわち、基材層の少なくとも片面に、前記一般式(1)、(1-1-1)および(1-1-2)で表される化合物(I)と1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(II)とをモル比に換算して15:1?1:30の範囲で含む組成物からなる塗膜を形成し、次いで該塗膜を共重合させ、得られた共重合体の単層膜中のスルホン酸基、カルボキシル基およびリン酸基から選ばれる少なくとも1種のアニオン性親水基が、該層の表面におけるアニオン濃度(Sa)と基材側の深部におけるアニオン濃度(Da)のアニオン濃度比(Sa/Da)が1.1以上で分布するように製造される。このように製造された積層体における単層膜の水接触角は、30°以下、好ましくは20°以下、より好ましくは10°以下である。 【0173】 また、本発明の防曇被膜、防汚被膜および帯電防止被膜の形成方法に制限はないが、例えば、前記の組成物を基材表面に塗布した後、重合硬化させて基材表面に防曇被膜、防汚被膜および帯電防止膜を形成させる方法が挙げられる。 (中略) 【0178】 また、基材がフィルムの場合には、例えば、本発明の組成物を積層(コーティング)しない面に、後述の粘着層を設けることもできるし、さらに粘着層の表面に剥離フィルムを設けることもできる。基材フィルムの他の片面に粘着層を積層しておくと、積層フィルムを防曇フィルムおよび防汚フィルムとして、ガラス、浴室等の鏡、ディスプレイ、テレビ等の表示材料表面、看板、広告、案内板等の案内板、鉄道、道路等の標識、建物の外壁、窓ガラス等に容易に貼付することができる。 (中略) 【0184】 <乾燥方法> 溶剤を含む組成物を重合して本発明の単層膜を形成させる場合、重合を行う前に、溶剤の乾燥を充分行った方が好ましい。溶剤の乾燥が不十な場合、得られる単層膜の構造が不完全になり、親水性が低下する場合があり好ましくない。また基材との密着性も低下する傾向にある。従って硬化直前の残存溶剤の量としては10%以下が好ましく、5%以下であればより好ましく、1%以下であればさらに好ましい。 (中略) 【0188】 また、前記の組成物を種々の形状の鋳型内で重合させることにより、種々の形状の成形体を得ることもできる。 本発明において、親水性の共重合体からなる単層膜、防曇材料、防汚材料、帯電防止材料および積層体は、例えば、車両及び車両材料、船舶及び船舶材料、航空機及び航空機材料、建築物及び建築材料、車両、船舶、航空機及び建築物等の窓、鏡、外壁、外装、ボディー、ホイール、内壁、内装、床、家具及び家具材料、衣服、布、繊維、風呂場及び台所用材料、換気扇、配管、配線、電化製品及びその材料、ディスプレイ及びその材料、光学フィルム、光ディスク、眼鏡、コンタクトレンズ、ゴーグル等の光学物品、ランプ及びライト等の照明物品及びその材料、熱交換機等の冷却フィン、フォトレジスト及びインクジェット記録版等の記録印刷材料、化粧品容器及びその材料、反射フィルム、反射板等の反射材料、高速道路等に設置される遮音板、ディスプレイ材料、印刷または印字用プライマー、その他プライマー、フラットパネル、タッチパネル、シート、フィルム、テープ、透明樹脂、及びガラス等の透明材料に被覆して、親水性、防曇性、および防汚性を付与することができる。さらに結露防止性を付与したり、帯電防止性を付与したりすることもできる。」 ウ 「請求の範囲 1. スルホン酸基、カルボキシル基およびリン酸基から選ばれる少なくとも1種のアニオン性親水基を有する単層膜において、表面のアニオン濃度(Sa)と深部におけるアニオン濃度(Da)のアニオン濃度比(Sa/Da)が1.1以上であることを特徴とする単層膜。 (中略) 4. 前記単層膜が、下記一般式(1)で表される化合物(I)と1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(II)とを、モル比に換算して15:1?1:30の範囲で含む組成物を重合して得られる共重合体である請求項1に記載の単層膜。 【化1】 [X]s[M1]l[M2]m (1) (式中、sは、1または2、lは、1または2、mは、0または1を表す。M1、M2は、同一または異なっていてもよい水素イオン、アンモニウムイオン、アル力リ金属イオンまたはアル力リ土類金属イオンを表す。 Xは、下記一般式(1-1)?(1-4)で示される親水基から選ばれる 1種を表す。 【化2】 【化3】 【化4】 【化5】 (式中、J、J’は、同一または異なっていてもよいHまたはCH_(3)を表し、nは、0または1を示し、R、R’は、同一または異なっていてもよい炭素数1?600の脂肪族炭化水素基であって、芳香環、脂肪族環状基、エーテル基、またはエステル基を含んでいても良い。)) (中略) 12. 請求項1?8のいずれか1項に記載の単層膜および基材層からなり、該単層膜が少なくとも基材層の片面に形成されることを特徴とする積層体。 (中略) 16. 基材層の少なくとも片面に、下記一般式(1)で表される化合物(I)と1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(II)とをモル比に換算して15:1?1:30の範囲で含む組成物からなる塗膜を形成し、 次いで、該塗膜を共重合させてなる積層体の製造方法において、 得られた共重合体の単層膜のスルホン酸基、カルボキシル基およびリン酸基から選ばれる少なくとも1種のアニオン性親水基が、該層の表面におけるアニオン濃度(Sa)と基材側の深部におけるアニオン濃度(Da)のアニオン濃度比(Sa/Da)が1.1以上となるように分布していることを特徴とする積層体の製造方法。 一般式(1) 【化43】 [X]s[M1]l[M2]m (1) (式中、sは、1または2、lは、1または2、mは、0または1を表す。M1、M2は、同一または異なっていてもよい水素イオン、アンモニウムイオン、アル力リ金属イオンまたはアル力リ土類金属イオンを表す。 Xは、下記一般式(1-1)?(1-4)で示される親水基から選ばれる1種を表す。 【化44】 【化45】 【化46】 【化47】 (式中、J、J’は、同一または異なっていてもよいHまたはCH_(3)を表し、nは、0または1を示し、R、R’は、同一または異なっていてもよい炭素数1?600の脂肪族炭化水素基であって、芳香環、脂肪族環状基、エーテル基、またはエステル基を含んでいても良い。))」 (2)引用文献1に記載された発明 ア 引用文献1の記載事項ウに基づけば、引用文献1には、請求項1の記載を引用する請求項4に係る発明として、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「スルホン酸基、カルボキシル基およびリン酸基から選ばれる少なくとも1種のアニオン性親水基を有する単層膜において、表面のアニオン濃度(Sa)と深部におけるアニオン濃度(Da)のアニオン濃度比(Sa/Da)が1.1以上である単層膜であって、 下記一般式(1)で表される化合物(I)と1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(II)とを、モル比に換算して15:1?1:30の範囲で含む組成物を重合して得られる共重合体である単層膜。 【化1】 [X]s[M1]l[M2]m (1) (式中、sは、1または2、lは、1または2、mは、0または1を表す。M1、M2は、同一または異なっていてもよい水素イオン、アンモニウムイオン、アル力リ金属イオンまたはアル力リ土類金属イオンを表す。 Xは、下記一般式(1-1)?(1-4)で示される親水基から選ばれる 1種を表す。 【化2】 【化3】 【化4】 【化5】 (式中、J、J’は、同一または異なっていてもよいHまたはCH_(3)を表し、nは、0または1を示し、R、R’は、同一または異なっていてもよい炭素数1?600の脂肪族炭化水素基であって、芳香環、脂肪族環状基、エーテル基、またはエステル基を含んでいても良い。))」 イ さらに、引用文献1の記載事項ウに基づけば、引用文献1には、請求項16に係る発明として、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「基材層の少なくとも片面に、下記一般式(1)で表される化合物(I)と1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(II)とをモル比に換算して15:1?1:30の範囲で含む組成物からなる塗膜を形成し、 次いで、該塗膜を共重合させてなる積層体の製造方法において、 得られた共重合体の単層膜のスルホン酸基、カルボキシル基およびリン酸基から選ばれる少なくとも1種のアニオン性親水基が、該層の表面におけるアニオン濃度(Sa)と基材側の深部におけるアニオン濃度(Da)のアニオン濃度比(Sa/Da)が1.1以上となるように分布している積層体の製造方法。 一般式(1) 【化43】 [X]s[M1]l[M2]m (1) (式中、sは、1または2、lは、1または2、mは、0または1を表す。M1、M2は、同一または異なっていてもよい水素イオン、アンモニウムイオン、アル力リ金属イオンまたはアル力リ土類金属イオンを表す。 Xは、下記一般式(1-1)?(1-4)で示される親水基から選ばれる 1種を表す。 【化44】 【化45】 【化46】 【化47】 (式中、J、J’は、同一または異なっていてもよいHまたはCH_(3)を表し、nは、0または1を示し、R、R’は、同一または異なっていてもよい炭素数1?600の脂肪族炭化水素基であって、芳香環、脂肪族環状基、エーテル基、またはエステル基を含んでいても良い。))」 (3)引用文献2の記載事項 原査定の拒絶理由に引用され、先の出願前の平成26年4月21日に、日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献2(特開2014-71326号公報)には、以下の記載事項がある。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、1μm未満のピッチで単位要素が配列されたナノ構造体を表面に形成された光学シート、及び、この光学シートを有する表示装置に関する。 【発明の背景】 【0002】 今日、いわゆるモスアイ型の反射防止構造体や回折構造体等のように、ナノオーダーのピッチで単位要素が配列されたナノ構造体が、光学シートの表面に形成されて、種々の分野及び種々の用途で、利用に供されている。このような光学シートは、基材シート上に、電離放射線硬化型樹脂を賦型することによって、作製され得る。 【0003】 しかしながら、電離放射線硬化型樹脂を用いた製造方法は、賦型性の面で優れているが、製造コストの点からは、光学シートの製造方法として普及している他の方法と比較して不利である。また、電離放射線硬化型樹脂を用いて作製された光学シートは、必然的に、電離放射線硬化型樹脂より形成されたナノ構造体を含む層とは別途に、基材を含むことになる。そして、光学シートの一部をなす基材は、製造条件の面や製造コストの面での制約から、ナノ構造体を含む層との間に好ましくない界面を形成してしまうこともある。結果として、電離放射線硬化型樹脂により形成されたナノ構造体を含む光学シートを、種々の用途に広く適用できないこともある。 (中略) 【0007】 その一方で、本発明者らは、以上のような点を考慮しながら鋭意研究を重ねた結果、ナノ構造体を含む光学シートについて、基材を不要としながら、複屈折率の値および複屈折の面内バラツキを低減することができた。すなわち、本発明は、ナノ構造体を含んだ光学シートの複屈折率の値および複屈折率の面内バラツキを効果的に低減することを目的とする。 (中略) 【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明による光学シートは、 1μm未満のピッチで単位要素が配列されたナノ構造体を、少なくとも一方の面に、備え、 前記ナノ構造体は、熱可塑性樹脂を用いて形成され、 複屈折率の平均値Δn_(ave)および複屈折率の標準偏差σ_(Δn)が、次の条件(a)および(b)を満たす。 Δn_(ave)≦50×10^(-6) ・・・条件(a) (σ_(Δn)/Δn_(ave))≦0.10 ・・・条件(b) 【0010】 本発明による光学シートにおいて、前記熱可塑性樹脂を用いて形成され且つ前記ナノ構造体を含む単層の光学シートであってもよい。 (中略) 【0014】 本発明による光学シートにおいて、前記光学シートは、樹脂で形成された型面を有する型を用いて押し出し成型法により作製された押し出し材であってもよい。 【0015】 本発明による表示装置は、上述した本発明による光学シートのいずれかを含む。 【0016】 本発明による表示装置が、前記光学シートを積層された液晶表示パネルを、さらに備えるようにしてもよい。 【発明の効果】 【0017】 本発明によれば、ナノ構造体を含んだ光学シートの複屈折率の値および複屈折率の面内バラツキを効果的に低減することができる。」 イ 「【0023】 図1?図4に示すように、光学シート10は、少なくとも一方の表面10aにナノ構造体20を有している。ナノ構造体20は、凸部や凹部等の単位要素21が、1μm未満のナノオーダーのピッチで配列されることによって形成された部位である。この光学シート10は、後に詳述するように、溶融押し出し成型法によって熱可塑性樹脂を用いて形成され得る。 (中略) 【0027】 次に、ナノ構造体20,25についてさらに説明する。ナノ構造体20,25は、シート状のシート本体部15上に形成され、シート本体部15とともに光学シート10を構成する。ナノ構造体20,25は、凸部や凹部等の単位要素21が、1μm未満のナノオーダーのピッチで規則的または不規則的に配列されることによって形成された部位である。ナノ構造体20,25は、単位要素21によって、光学的な機能を発揮することができる。とりわけ、単位要素21が、光学作用を及ぼす対象となる光の波長未満のピッチで配置されている場合には、優れた光学機能を発揮することができる。図9?図14に示された写真には、反射防止構造体30として形成されたナノ構造体20が示されている。 (中略) 【0029】 図9?図14に示された光学シート10のナノ構造体20は、反射防止対象となる光の波長未満のピッチで配列された凸部21aまたは凹部21bを有している。光学シート10での反射防止対象となる光を可視光波長域のいずれかの光とするならば、凸部21aまたは凹部21bからなる単位要素21のピッチを、JISZ8120での定義に従って可視光波長域の最長波長である830nm未満に設定することになる。さらに、この光学シート10での反射防止対象となる光を可視光波長域全域の光とするならば、凸部21aまたは凹部21bからなる単位要素21のピッチを、JISZ8120での定義に従って可視光波長域の最短波長である360nm未満に設定すればよい。 (中略) 【0052】 次に、光学シート10の製造方法について説明する。以下の説明において、光学シート10は、押し出し成型装置50を用いた溶融押し出し成型法により、熱可塑性樹脂から形成される。 【0053】 押し出し成型装置50は、熱可塑性樹脂をシート状に押し出す押し出し機55と、押し出し機55からの押し出し材49を、誘導するロール群61,62,63,64,66,67と、押し出し材49を成型する際の型として機能する賦型シート74を供給する賦型シート供給機構70と、を含んでいる。押し出し機55は、原料となるペレット状の熱可塑性樹脂を加熱し、シート状の押し出し材49をダイ56から押し出す。押し出し材49は、第1主ロール61及び第2主ロール62の間に進み、その後、第2主ロール62及び第3主ロール63の間と第3主ロール63及び第4主ロール64の間とを通過するようにして、第2主ロール62、第3主ロール63及び第4主ロール64の外周面に支持されて移動する。その後、押し出し材49は、第1案内ロール66及び第2案内ロール67の間を通過する。 (中略) 【0055】 図7に示すように、押し出し成型装置50から押し出された高温の押し出し材49は、第1主ロール61及び第2主ロール62の間を賦型シート74に接触して通過し、その後、第1案内ロール66及び第2案内ロール67の間を通過するまで賦型シート74と接触した状態で同期して移動する。押し出し材49と賦型シート74とが重ね合わされて移動する間、とりわけ、第2主ロール62、第3主ロール63及び第4主ロール64の外周面に支持されて移動している間、押し出し材49と賦型シート74は互いに向けて押圧された状態となっている。そして、賦型シート74は、押し出し材49に形状を転写するための型として機能し、押し出し材49と対面する側の面に、押し出し材49に転写すべき凹凸に対応した凹凸が形成されている。この結果、ナノ構造体20をなす凹凸パターンが押し出し材49に賦型され、光学シート10が作製される。」 5 対比・判断 (1)本件発明1 ア 対比 本件発明1と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1の「スルホン酸基、カルボキシル基およびリン酸基から選ばれる少なくとも1種のアニオン性親水基を有する単層膜」は、技術的にみて、本件発明1の「単層膜」に相当する。 また、引用発明1の「スルホン酸基、カルボキシル基およびリン酸基から選ばれる少なくとも1種のアニオン性親水基」は、技術的にみて、本件発明1の「アニオン性親水基およびカチオン性親水基から選ばれる1つ以上の親水基」に相当する。そして、引用発明1の「単層膜」は、「表面のアニオン濃度(Sa)と深部におけるアニオン濃度(Da)のアニオン濃度比(Sa/Da)が1.1以上である」とされている。したがって、引用発明1の「単層膜」は、本件発明1の「単層膜のアニオン性親水基およびカチオン性親水基から選ばれる1つ以上の親水基の最表面濃度(Sa1)と該単層膜1/2地点における親水基の深部濃度(Da1)との親水基濃度の傾斜度(Sa1/Da1)が1.1以上」とする要件を満たしている。 (イ)引用発明1の「一般式(1)で表される化合物(I)」は、その化学構造からみて、「アニオン性親水基」である「1つ以上の親水基」と「重合性炭素-炭素二重結合を有する1つ以上の官能基」を有しているといえる。したがって、引用発明1の「一般式(1)で表される化合物(I)」は、本件発明1の「アニオン性親水基およびカチオン性親水基から選ばれる1つ以上の親水基と、重合性炭素-炭素二重結合を有する1つ以上の官能基とを有する化合物(I)」に相当する。 また、引用発明1の「1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(II)」は、「重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基を2つ以上」を有しているといえる。そうすると、引用発明1の「1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(II)」と本件発明1の「重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基を2つ以上有する化合物(II)(ただし、水酸基は有してもよいが、アニオン性親水基、およびカチオン性親水基はいずれも有さない)」とは、「重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基を2つ以上有する化合物(II)」である点で共通する。 そして、引用発明1の「単層膜」は、「化合物(I)」と「化合物(II)」とを含む組成物を重合して得られる「共重合体」である。そうすると、引用発明1の「単層膜」は、本件発明1の「重合性組成物(A)の架橋樹脂」からなるとする要件を満たしている。 (ウ)以上より、本件発明1と引用発明1とは、 「単層膜であり、 該単層膜が、アニオン性親水基およびカチオン性親水基から選ばれる1つ以上の親水基と、重合性炭素-炭素二重結合を有する1つ以上の官能基とを有する化合物(I)、および重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基を2つ以上有する化合物(II)を含む重合性組成物(A)の架橋樹脂からなり、 該単層膜のアニオン性親水基およびカチオン性親水基から選ばれる1つ以上の親水基の最表面濃度(Sa1)と該単層膜1/2地点における親水基の深部濃度(Da1)との親水基濃度の傾斜度(Sa1/Da1)が1.1以上である単層膜。」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1-1]本件発明1は、単層膜が、「表面に複数の凸部および複数の凹部からなる凹凸構造」を有し、「複数の凸部のうち、互いに隣接する凸部の頂点間の距離が1nm?800nmの範囲」であり、「未硬化の重合性組成物(A)からなる膜の表面に凹凸構造を付与する際に、該膜の表面が、アニオン性親水基、カチオン性親水基、および水酸基から選ばれる1つ以上の親水基と、重合性炭素-炭素二重結合を有する1つ以上の官能基とを有する化合物(I’)(ただし親水基が水酸基を有する基の場合は、重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基は1つである。)またはアニオン性親水基、カチオン性親水基から選ばれる親水基1つ以上と、アミノ基、メルカプト基、および水酸基から選ばれる基1つ以上とを有する化合物(IV)により処理された後、硬化して得られる」のに対し、引用発明1は、単層膜が凹凸構造を有さず、互いに隣接する凸部の頂点間の距離を特定せず、凹凸構造を付与する際に、化合物(I’)又は化合物(IV)により処理された後、硬化して得られるものではない点。 [相違点1-2]本件発明1は、化合物(II)が、水酸基は有してもよいが、アニオン性親水基、およびカチオン性親水基はいずれも有さないとされるのに対し、引用発明1は、化合物(II)が、水酸基は有してもよいが、アニオン性親水基、およびカチオン性親水基はいずれも有さないとされない点。 イ 判断 (ア)[相違点1-1]について 引用文献1には、記載事項イに、「前記の組成物を種々の形状の鋳型内で重合させることにより、種々の形状の成形体を得ることもできる。」(段落【0188】)との記載がある。しかし、引用文献1には、「複数の凸部のうち、互いに隣接する凸部の頂点間の距離が1nm?800nmの範囲」とされる凹凸構造を設けることや、「未硬化の重合性組成物(A)からなる膜の表面に凹凸構造を付与する際に、該膜の表面が、アニオン性親水基、カチオン性親水基、および水酸基から選ばれる1つ以上の親水基と、重合性炭素-炭素二重結合を有する1つ以上の官能基とを有する化合物(I’)(ただし親水基が水酸基を有する基の場合は、重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基は1つである。)またはアニオン性親水基、カチオン性親水基から選ばれる親水基1つ以上と、アミノ基、メルカプト基、および水酸基から選ばれる基1つ以上とを有する化合物(IV)により処理された後、硬化して得られる」単層膜については、記載がない。また、引用文献1には、記載事項イに、「ガラス、浴室等の鏡、ディスプレイ、テレビ等の表示材料表面、看板、広告、案内板等の案内板、鉄道、道路等の標識、建物の外壁、窓ガラス等に容易に貼付することができる。」(段落【0178】)、「本発明において、親水性の共重合体からなる単層膜、防曇材料、防汚材料、帯電防止材料および積層体は、例えば、車両及び車両材料、船舶及び船舶材料、航空機及び航空機材料、建築物及び建築材料、車両、船舶、航空機及び建築物等の窓、鏡、外壁、外装、ボディー、ホイール、内壁、内装、床、家具及び家具材料、衣服、布、繊維、風呂場及び台所用材料、換気扇、配管、配線、電化製品及びその材料、ディスプレイ及びその材料、光学フィルム、光ディスク、眼鏡、コンタクトレンズ、ゴーグル等の光学物品、ランプ及びライト等の照明物品及びその材料、熱交換機等の冷却フィン、フォトレジスト及びインクジェット記録版等の記録印刷材料、化粧品容器及びその材料、反射フィルム、反射板等の反射材料、高速道路等に設置される遮音板、ディスプレイ材料、印刷または印字用プライマー、その他プライマー、フラットパネル、タッチパネル、シート、フィルム、テープ、透明樹脂、及びガラス等の透明材料に被覆して、親水性、防曇性、および防汚性を付与することができる。」(段落【0188】)との記載があり、引用発明1の単層膜の用途として様々な用途が挙げられている。しかしながら、列記された用途は、いずれも、「複数の凸部のうち、互いに隣接する凸部の頂点間の距離が1nm?800nmの範囲」とされる凹凸構造を設けることを必要とするものではないから、その用途から上記[相違点1-1]に係る構成とすることが示唆されているということもできない。 さらに、引用文献2には、「光学シート10」を構成する「ナノ構造体20」が「凸部や凹部等の単位要素21が、1μm未満のナノオーダーのピッチで規則的または不規則的に配列されることによって形成された部位である」(段落【0027】)こと、「光学シート10での反射防止対象となる光を可視光波長域のいずれかの光とするならば、凸部21aまたは凹部21bからなる単位要素21のピッチを、JISZ8120での定義に従って可視光波長域の最長波長である830nm未満に設定することになる」(段落【0029】)こと、「この光学シート10は、・・・溶融押し出し成型法によって熱可塑性樹脂を用いて形成され得る」(段落【0023】)ことが記載されている。しかしながら、「未硬化の重合性組成物(A)からなる膜の表面に凹凸構造を付与する際に、該膜の表面が、アニオン性親水基、カチオン性親水基、および水酸基から選ばれる1つ以上の親水基と、重合性炭素-炭素二重結合を有する1つ以上の官能基とを有する化合物(I’)(ただし親水基が水酸基を有する基の場合は、重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基は1つである。)またはアニオン性親水基、カチオン性親水基から選ばれる親水基1つ以上と、アミノ基、メルカプト基、および水酸基から選ばれる基1つ以上とを有する化合物(IV)により処理された後、硬化して得られる」単層膜については、なんら記載がなく、単層膜に上記処理がなされた凹凸構造を付与することが周知技術であったということはできない。 したがって、当業者であっても、引用発明1において、上記[相違点1-1]に係る本件発明1の構成を採用することが容易になし得たということはできない。 (イ)効果について 本願の段落[0036]の記載に基づけば、本件発明1が奏する効果は、「防曇耐久性、防汚耐久性、滑り性」にも優れた単層膜を得ることにあるといえる。そして、本願の段落[0041]には、「さらに、従来の表面が高親水性である樹脂からなる平滑な単層膜は、その表面全体を触れることができ、物体との摩擦や接触により最表面の親水基が欠落し親水性が低下する問題を抱えていたが、表面に凹凸パターンを有る高親水性樹脂からなる単層膜は、表面の凹部の部分が、物体と触れることが困難であるため、親水基が欠落することがほとんどなく高親水性の状態を維持できているものと考えられる。」と記載されている。上記記載に基づけば、本件発明1における防曇耐久性、防汚耐久性の効果は、親水基濃度の傾斜度が1.1以上であることに加えて、表面に凹凸構造を有することの双方を具備することによって奏されることが理解できる。 一方、引用文献1及び引用文献2には、防曇耐久性、防汚耐久性の効果を示すことが記載されておらず、そのような効果を奏することが当業者が予測できたということができない。 ウ むすび 以上のとおりであるから、[相違点1-2]について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2に記載された事項に基づいて容易に発明することができたということができない。 (2)本件発明2 ア 対比 本件発明2と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1の「スルホン酸基、カルボキシル基およびリン酸基から選ばれる少なくとも1種のアニオン性親水基を有する単層膜」は、技術的にみて、本件発明2の「単層膜」に相当する。 また、引用発明1の「スルホン酸基、カルボキシル基およびリン酸基から選ばれる少なくとも1種のアニオン性親水基」は、技術的にみて、本件発明2の「アニオン性親水基およびカチオン性親水基から選ばれる1つ以上の親水基」に相当する。そして、引用発明1の「単層膜」は、「表面のアニオン濃度(Sa)と深部におけるアニオン濃度(Da)のアニオン濃度比(Sa/Da)が1.1以上である」とされている。したがって、引用発明1の「単層膜」は、本件発明2の「単層膜のアニオン性親水基およびカチオン性親水基から選ばれる1つ以上の親水基の最表面濃度(Sa1)と該単層膜1/2地点における親水基の深部濃度(Da1)との親水基濃度の傾斜度(Sa1/Da1)が1.1以上」とする要件を満たしている。 (イ)引用発明1の「一般式(1)で表される化合物(I)」は、その化学構造からみて、「アニオン性親水基」である「1つ以上の親水基」と「重合性炭素-炭素二重結合を有する1つ以上の官能基」を有しており、親水基が水酸基ではない。したがって、引用発明1の「一般式(1)で表される化合物(I)」は、本件発明2の「アニオン性親水基、カチオン性親水基、および水酸基から選ばれる1つ以上の親水基と、重合性炭素-炭素二重結合を有する1つ以上の官能基とを有する化合物(I')(ただし親水基が水酸基を有する基の場合は、重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基は1つである。)」に相当する。 また、引用発明1の「1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(II)」は、「重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基を2つ以上」を有しているといえる。そうすると、引用発明1の「1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(II)」と本件発明2の「重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基を2つ以上有する化合物(II)(ただし、水酸基は有してもよいが、アニオン性親水基、およびカチオン性親水基はいずれも有さない)」とは、「重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基を2つ以上有する化合物(II)」である点で共通する。 そして、引用発明1の「単層膜」は、「化合物(I)」と「化合物(II)」とを含む組成物を重合して得られる「共重合体」である。そうすると、引用発明1の「単層膜」は、本件発明2の「重合性組成物(A)の架橋樹脂」からなるとする要件を満たしている。 (ウ)以上より、本件発明1と引用発明2とは、 「単層膜であり、 該単層膜が、アニオン性親水基、カチオン性親水基、および水酸基から選ばれる1つ以上の親水基と、重合性炭素-炭素二重結合を有する1つ以上の官能基とを有する化合物(I')(ただし親水基が水酸基を有する基の場合は、重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基は1つである。)、および、 重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基を2つ以上有する化合物(II)を含む重合性組成物(B)の架橋樹脂からなり、 該単層膜のアニオン性親水基およびカチオン性親水基および水酸基から選ばれる少なくとも一つの親水基の最表面濃度(Sa2)と該単層膜1/2地点における親水基の深部濃度(Da2)との親水基濃度の傾斜度(Sa2/Da2)が1.1以上である単層膜。」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点2-1]本件発明2は、単層膜が、「表面に複数の凸部および複数の凹部からなる凹凸構造」を有し、「複数の凸部のうち、互いに隣接する凸部の頂点間の距離が1nm?800nmの範囲」であり、「未硬化の重合性組成物(B)からなる膜の表面に凹凸構造を付与する際に、該膜の表面が上記化合物(I’)またはアニオン性親水基、カチオン性親水基から選ばれる親水基1つ以上と、アミノ基、メルカプト基、および水酸基から選ばれる基1つ以上とを有する化合物(IV)により処理された後、硬化して得られる」のに対し、引用発明1は、単層膜が凹凸構造を有さず、互いに隣接する凸部の頂点間の距離を特定せず、凹凸構造を付与する際に、化合物(I’)又は化合物(IV)により処理された後、硬化して得られるものではない点。 [相違点2-2]本件発明2は、重合性組成物に含まれる化合物(II)が、水酸基は有してもよいが、アニオン性親水基、およびカチオン性親水基はいずれも有さないとされ、重合性化合物がさらに界面活性剤(III)を含むのに対し、引用発明1は、重合性組成物に含まれる化合物(II)が、水酸基は有してもよいが、アニオン性親水基、およびカチオン性親水基はいずれも有さないとされておらず、重合性組成物がさらに界面活性剤(III)を含まない点。 イ 判断 上記[相違点2-1]は、[相違点1-1]と実質的に同じ相違点である。そして、前記(1)イ(ア)において検討したとおり、当業者であっても、引用発明1において、相違点に係る構成を採用することが容易になし得たとはいえないものである。さらに、前記(1)イ(イ)において検討したとおり、効果も当業者が予測できたものとはいえない。 ウ むすび 以上のとおりであるから、本件発明2も、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2に記載された事項に基づいて容易に発明することができたということができない。 (3)本件発明11 ア 対比 本件発明11と引用発明2とを対比する。 (ア)引用発明2の「基材層の少なくとも片面に、下記一般式(1)で表される化合物(I)と1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(II)とをモル比に換算して15:1?1:30の範囲で含む組成物からなる塗膜を形成」する工程は、技術的にみて、本件発明11の「塗膜を形成する工程」に相当する。 (イ)引用発明2の「該塗膜を共重合」する工程は、技術的にみて、本件発明11の「塗膜を硬化する工程」に相当する。 (ウ)以上より、本件発明11と引用発明2とは、 「塗膜を形成する工程、および、 塗膜を硬化する工程を含む 単層膜を製造する方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点3-1]塗膜を形成する工程に用いる組成物が、本件発明11では、「請求項1に記載の重合性組成物(A)」、つまり「アニオン性親水基およびカチオン性親水基から選ばれる1つ以上の親水基と、重合性炭素-炭素二重結合を有する1つ以上の官能基とを有する化合物(I)、および重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基を2つ以上有する化合物(II)(ただし、水酸基は有してもよいが、アニオン性親水基、およびカチオン性親水基はいずれも有さない)を含む重合性組成物(A)」から塗膜を形成するものであるのに対し、引用発明2では、組成物が含む化合物(II)が、前記[相違点1-2]において相違する点。 [相違点3-2]本件発明11は、「塗膜から溶剤を除去する工程」を含むのに対し、引用発明2は塗膜から溶剤を除去する工程を含むことを特定していない点。 [相違点3-3]本件発明11は、「凹凸構造に対応したパターンを有し、かつアニオン性親水基、カチオン性親水基、および水酸基から選ばれる1つ以上の親水基と、重合性炭素-炭素二重結合を有する1つ以上の官能基とを有する化合物(I’)(ただし親水基が水酸基を有する基の場合は、重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基は1つである。)またはアニオン性親水基、カチオン性親水基から選ばれる親水基1つ以上と、アミノ基、メルカプト基、および水酸基から選ばれる基1つ以上とを有する化合物(IV)が凹凸構造に対応したパターンを有する表面に塗布された成形型を塗膜表面に密着させ、凹凸構造を塗膜表面に転写する工程」及び「硬化して得られた膜より成形型を離型する工程」を含み、請求項1に記載の単層膜を製造するのに対し、引用発明2はそのような工程を含むことを特定していない点。 イ 判断 事案に鑑みて[相違点3-3]について検討すると、前記(1)イ(ア)において検討したとおり、当業者であっても、請求項1に記載の単層膜を製造することが、容易になし得たといえないものである。 そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明11は、当業者であっても、引用発明2及び引用文献2に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたということができない。 (4)本件発明12 ア 対比 本件発明12と引用発明2とを対比する。 (ア)引用発明2の「基材層の少なくとも片面に、下記一般式(1)で表される化合物(I)と1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(II)とをモル比に換算して15:1?1:30の範囲で含む組成物からなる塗膜を形成」する工程は、技術的にみて、本件発明12の「塗膜を形成する工程」に相当する。 (イ)引用発明2の「該塗膜を共重合」する工程は、技術的にみて、本件発明11の「塗膜を硬化する工程」に相当する。 (ウ)以上より、本件発明12と引用発明2とは、 「塗膜を形成する工程、および、 塗膜を硬化する工程を含む 単層膜を製造する方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点4-1]塗膜を形成する工程に用いる組成物が、本件発明12では、「請求項2に記載の重合性組成物(A)」、つまり「アニオン性親水基、カチオン性親水基、および水酸基から選ばれる1つ以上の親水基と、重合性炭素-炭素二重結合を有する1つ以上の官能基とを有する化合物(I')(ただし親水基が水酸基を有する基の場合は、重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基は1つである。)」、「重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基を2つ以上有する化合物(II)(ただし、水酸基は有してもよいが、アニオン性親水基、およびカチオン性親水基はいずれも有さない)」、および「アニオン性親水基、カチオン性親水基、または2つ以上の水酸基を少なくとも有する親水部と有機残基からなる疎水部とを有する界面活性剤(III)(ただし、重合性炭素-炭素二重結合を有さない。)」を含む「重合性組成物(B)」から塗膜を形成するものであるのに対し、引用発明2では、重合性組成物が、前記[相違点2-2]において相違する点。 [相違点4-2]本件発明12は、「凹凸構造に対応したパターンを有し、かつ請求項2に記載の化合物(I’)またはアニオン性親水基、カチオン性親水基から選ばれる親水基1つ以上と、アミノ基、メルカプト基、および水酸基から選ばれる基1つ以上とを有する化合物(IV)が凹凸構造に対応したパターンを有する表面に塗布された成形型を塗膜表面に密着させ、凹凸構造を塗膜表面に転写する工程」及び「硬化して得られた膜より成形型を離型する工程」を含み、請求項2に記載の単層膜を製造するのに対し、引用発明2はそのような工程を含むことを特定していない点。 イ 判断 事案に鑑みて[相違点4-2]について検討すると、前記(2)イにおいて検討したとおり、当業者であっても、請求項2に記載の単層膜を製造することが、容易になし得たといえないものである。 そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明12は、当業者であっても、引用発明2及び引用文献2に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたということができない。 (5)本件発明3?10及び13?20 本件発明3?10及び本件発明15?20は、本件発明1の前記[相違点1-1]に係る構成、又は、本件発明2の前記[相違点2-1]に係る構成と、同じ構成要件を具備している。また、本件発明13及び本件発明14は、本件発明11の前記[相違点3-3]に係る構成、又は、本件発明12の前記[相違点4-2]に係る構成と、同じ構成要件を具備ししている。 そうすると、本件発明3?10及び13?20も、本件発明1、2、11又は12と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明をすることができたということはできない。 6 むすび 以上のとおり、本件発明1?20は、当業者であっても、引用発明1又は引用発明2及び引用文献2に記載された事項に基づいて容易に発明することができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-02-03 |
出願番号 | 特願2017-505349(P2017-505349) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G02B)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 藤岡 善行 |
特許庁審判長 |
樋口 信宏 |
特許庁審判官 |
高松 大 宮澤 浩 |
発明の名称 | 親水性光学機能性単層膜およびその積層体 |
代理人 | 特許業務法人SSINPAT |