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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1359401
審判番号 不服2018-14955  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-09 
確定日 2020-01-29 
事件の表示 特願2016-139708「4元ディーゼル触媒およびその使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月15日出願公開、特開2016-211582〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)10月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年(平成21年)10月2日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2012-532383号の一部を2016年(平成28年)7月14日に新たな特許出願としたものであって、平成29年6月9日付けで拒絶の理由が通知され(発送日:同年6月13日)、同年11月20日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月1日付けで拒絶の理由(最後)が通知され(発送日:同年12月5日)、平成30年5月23日に意見書及び誤訳訂正書が提出されたが、同年7月2日付けで同年5月23日付け誤訳訂正書でした補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ(発送日:同年7月10日)、これに対し、同年11月9日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に、特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成30年11月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年11月9日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1についてみると、本件補正により補正される前の(すなわち、平成29年11月20日に提出された手続補正書による)下記の(1)の記載を下記の(2)の記載に補正するものである(下線は補正箇所を示す。)。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1

「【請求項1】
通路を境界付けおよび画定する縦方向に延在する孔壁と、吸気端と排気端との間を延在する軸長とにより形成された複数の縦方向に延在する前記通路を有する壁流フィルタを備えている触媒品であって、
前記通路が、
前記吸気端において開かれており、前記排気端において閉じられている吸気通路と、
前記吸気端において閉じられており、前記排気端において開かれている排気通路と、
前記孔壁内に前記壁流フィルタの全軸長にわたり配置され、及び該孔壁に浸透したSCR触媒組成物と、
前記排気端から延在し、前記壁流フィルタの軸長よりも短い長さである前記排気通路の壁に配置された酸化触媒と、を備え、及び
前記酸化触媒は耐火性酸化物担体上に分散した白金族金属成分を含む、
ことを特徴とする触媒品。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1

「【請求項1】
通路を境界付けおよび画定する縦方向に延在する孔壁と、吸気端と排気端との間を延在する軸長とにより形成された複数の縦方向に延在する前記通路を有する壁流フィルタを備えている触媒品であって、
前記通路が、
前記吸気端において開かれており、前記排気端において閉じられている吸気通路と、
前記吸気端において閉じられており、前記排気端において開かれている排気通路と、
前記孔壁内に前記壁流フィルタの全軸長にわたり配置され、及び該孔壁に浸透したSCR触媒組成物と、
前記排気端から延在し、前記壁流フィルタの軸長よりも短い長さである前記排気通路の壁に配置された酸化触媒と、を備え、及び
前記酸化触媒は耐火性酸化物担体上に分散した白金族金属成分を含み、該白金族金属成分はパラジウムを含み、及び
前記排気端から始まり、前記壁流フィルタの軸長に沿って部分的に延在するガス不浸透性領域をさらに備え、該ガス不浸透性領域におけるガス流は、2分の1未満に低下している触媒品。」

2 本件補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明における「白金族金属成分」という発明特定事項について、「該白金族金属成分はパラジウムを含み」と限定するとともに、「前記排気端から始まり、前記壁流フィルタの軸長に沿って部分的に延在するガス不浸透性領域をさらに備え、該ガス不浸透性領域におけるガス流は、2分の1未満に低下している」という事項を追加して限定することにより特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

3 独立特許要件
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開昭63-185425号公報(以下「引用文献1」という。)には、「排ガス浄化用セラミツクハニカムフイルタ」に関して、図面(特に第1図参照。)とともに次の記載がある(なお、下線部は当審が付与したものである。以下同様。)。

(ア)「1. 押出し成形によって得られた多数の貫通孔を有するセラミックハニカム構造体の開孔端部が交互にセラミック材で閉塞され、該貫通孔を形成する隔壁により排ガス中の微粒子が捕獲され排ガス入口側の隔壁面上に微粒子が蓄積される排ガス浄化用セラミックハニカムフィルタにおいて、排ガス出口側端部からフィルタ有効全長の1/10?8/10の長さを有する多孔質セラミック層を隔壁面上に設けることを特徴とする排ガス浄化用セラミックハニカムフィルタ。
2. 前記セラミックハニカム構造体がコージェライトである特許請求の範囲第1項記載のフィルタ。
3. 前記多孔質セラミック層がコージェライトである特許請求の範囲第2項記載のフィルタ。
4. 前記多孔質セラミック層が触媒担持層である特許請求の範囲第2項記載のフィルタ。
5. 前記触媒担持層がγアルミナを主成分とする特許請求の範囲第4項記載のフィルタ。」(第1ページ左欄第5行ないし右欄第4行)

(イ)「本発明は、ディーゼルエンジン等の燃焼機関から排出される排ガス中の炭素を主成分とする微粒子を捕獲し、その微粒子を燃焼させて排ガスを浄化するフィルタに関するものである。」(第1ページ右欄第10行ないし第13行)

(ウ)「上述した構成において、多孔質セラミック層を設けた部分は隔壁が厚くなり隔壁を通過する排ガス流が制限されるため、その部分に堆積する微粒子の量すなわちスート量が減少して堆積スートの再生燃焼時に発生する熱量が減少するため出口側の温度が低くなるとともに、多孔質セラミック層の熱容量によりスートの燃焼熱が吸収されて隔壁の温度がより低くなるため、フィルタの溶融、破損を生ずることがない。」(第2ページ左下欄第10行ないし第18行)

(エ)「第1図は本発明の排ガス浄化用セラミックハニカムフィルタの一実施例を説明するための断面図である。第1図において、1はセラミックハニカム構造体の隔壁、2は貫通孔4の閉塞部、3は多孔質セラミック層、4は隔壁1により画成される貫通孔であり、5及び矢印は排ガスの流れを示す。多孔質セラミック層3がフィルタ有効全長の1/2の排ガス出口側の隔壁面上に設けた場合を示している。なお、本発明で多孔質セラミック層3の有効長さは閉塞部2を除く隔壁1の有効フィルタ長さを意味するものとする。」(第2ページ右下欄第18行ないし第3ページ左上欄第8行)

(オ)「セラミックハニカム構造体としては、均一な形状、気孔径、気孔率、生産性の面から押し出し成形により製造したものが好適に使用でき、その材質は熱衝撃性、気孔率の面からコージェライトを使用すると好適である。また、貫通孔4の形状としては断面が六角形、四角形、丸形等で、その数はセル密度7.7?46.5セル/cm^(2)(50?300CPI^(2))のものが好適である。さらに、隔壁1の厚みは0.25?0.76mm(10?30mil)が好適である。」(第3ページ左上欄第9行ないし第17行)

(カ)「多孔質セラミック層3は排ガス出口側の端部から上述した所定の長さにわたって排ガスの入口側および出口側の隔壁1上の両方あるいはいずれか一方に設けられる。また、多孔質セラミック層3に触媒担持補助材を兼ねさせることも可能で、その場合この触媒担持補助材をγ-アルミナ等で形成して白金等の触媒を担持させて触媒担持層を形成することにより、微粒子を含む排ガスの浄化とともに排ガス中に含まれる一酸化炭素、炭化水素類、窒素酸化物を酸化還元したり、またスートの着火温度を低くして連続的に体積スートを燃焼させることが可能となる。」(第3ページ右上欄第2行ないし第13行)

(キ)「多孔質セラミック層3の厚みは、隔壁1の厚さ、気孔率、多孔質セラミック層3の材質および気孔率によって選択され、排ガス入口側から出口側に均一な厚さ、あるいは徐々に厚くしてもよいが、微粒子の燃焼熱による隔壁の温度上昇を抑制するためには比較的厚く形成してもよい。」(第3ページ右上欄第18行ないし左下欄第10行)

(ク)上記(エ)及び第1図の図示内容からみて、隔壁1は、貫通孔4を境界付けおよび画定する所定方向に延在し、排ガス入口側の端部と排ガス出口側の端部との間を延在する長さとにより形成された複数の所定方向に延在するものであることが分かる。

(ケ)上記(ア)、(エ)及び第1図の図示内容からみて、多孔質セラミック層3は、排ガス出口側の端部からセラミックハニカム構造体の長さに沿って部分的に延在し、セラミックハニカム構造体の長さよりも短い長さであることが分かる。

上記(ア)ないし(ケ)の記載事項及び図示内容を総合し、本件補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>
「貫通孔4を境界付けおよび画定する所定方向に延在する隔壁1と、排ガス入口側の端部と排ガス出口側の端部との間を延在する長さとにより形成された複数の所定方向に延在する前記貫通孔4を有するセラミックハニカム構造体を備えている排ガス浄化用セラミックハニカムフィルタであって、
前記貫通孔4が、
前記排ガス入口側の端部において開かれており、前記排ガス出口側の端部において閉塞されている前記貫通孔4と、
前記排ガス入口側の端部において閉塞されており、前記排ガス出口側の端部において開かれている前記貫通孔4と、
前記排ガス出口側の端部から延在し、前記セラミックハニカム構造体の長さよりも短い長さである前記貫通孔4の壁に配置された多孔質セラミック層3と、を備え、
前記多孔質セラミック層3は、γアルミナを主成分とし、白金等の触媒を担持させて触媒担持層を形成し、
前記排ガス出口側の端部から前記セラミックハニカム構造体の長さに沿って部分的に延在する前記多孔質セラミック層3を設けた部分は隔壁1を通過する排ガス流が制限される排ガス浄化用セラミックハニカムフィルタ。」

イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2004-60494号公報(以下「引用文献2」という。)には、「内燃機関の排気浄化装置」に関して、図面(特に、図2及び3を参照。)とともに次の記載がある。

(ア)「【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、フィルタ及びNO_(X)触媒を夫々設ける必要があることから、車両への搭載スペースの確保が困難となり、また、コスト高となってしまう。」

(イ)「【0045】
図2(A)及び(B)に示されるようにフィルタ5は、互いに平行をなして延びる複数個の排気流通路50、51を具備するいわゆるウォールフロー型である。これら排気流通路は下流端が栓52により閉塞された排気流入通路50と、上流端が栓53により閉塞された排気流出通路51とにより構成される。なお、図2(A)においてハッチングを付した部分は栓53を示している。従って、排気流入通路50および排気流出通路51は薄肉の隔壁54を介して交互に配置される。換言すると排気流入通路50および排気流出通路51は各排気流入通路50が4つの排気流出通路51によって包囲され、各排気流出通路51が4つの排気流入通路50によって包囲されるように配置される。
【0046】
フィルタ5は例えばコージェライトのような多孔質材料から形成されており、無数の細孔が形成されている。従って排気流入通路50内に流入した排気は図2(B)において矢印で示されるように周囲の隔壁54内を通って隣接する排気流出通路51内に流出する。」

(ウ)「【0048】
そこで、本実施の形態では、フィルタ5の隔壁54内にアンモニア選択還元触媒を担持させ、更に、排気流入通路50側の隔壁54表面に尿素加水分解触媒を担持させ、排気流出通路51側の隔壁54表面にアンモニア酸化触媒を担持させて、触媒及びフィルタの数の減少を図った。このように、触媒及びフィルタの数を減少することによって、排気温度の低下を抑制することができる。
【0049】
図3は、フィルタの隔壁断面(図2(B)中のX部分)の拡大図である。
【0050】
矢印方向に排気が流れる。排気が流入する側の各排気流入通路50の壁面に尿素加水分解触媒501を担持し、フィルタの隔壁54内部の細孔面上にアンモニア選択還元触媒502を担持し、排気が流出する側の各排気流出通路51の壁面にアンモニア酸化触媒503を担持している。従って、隔壁54を通過する排気は、尿素加水分解触媒501、アンモニア選択還元触媒502、アンモニア酸化触媒503を順に通過することになる。
【0051】
本実施の形態によるフィルタ5は、例えば以下のようにして製造することができる。先ず、アンモニア選択還元触媒を満たした槽にフィルタ5全体を漬けて細孔内にアンモニア選択還元触媒を担持させる。次に、フィルタ5の細孔を充填剤で埋めて気体及び液体が隔壁54を通過できないようにする。このときに用いる充填剤は高温にすると昇華する性質を有するものである。この後に、排気が流入する側の各排気流入通路50の壁面のみを尿素加水分解触媒に漬し、次いで排気が流出する側の各排気流出通路51の壁面のみをアンモニア酸化触媒に漬す。最後に、フィルタ5の温度を上昇させて細孔内の充填剤を昇華させる。
【0052】
このようにして、排気が流入する側の各排気流入通路50の壁面に尿素加水分解触媒501を担持させ、フィルタの隔壁54内部の細孔内壁面上にアンモニア選択還元触媒502を担持させ、排気が流出する側の各排気流出通路51の壁面にアンモニア酸化触媒503を担持させることができる。」

(エ)「【0067】
ところで、フィルタ5に捕集されたPMが該フィルタ5に堆積するとフィルタ5の目詰まりを発生させることがある。この目詰まりが発生すると、フィルタ5上流の排気の圧力が上昇しエンジン1の出力低下やフィルタ5の毀損を誘発する虞がある。このようなときには、フィルタ5上に堆積したPMを除去するフィルタ5の再生を行う必要がある。このようなフィルタの再生を行うためには、フィルタ5の温度を上昇させる必要がある。」

上記(ア)ないし(エ)の記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

<引用文献2記載事項>
「アンモニア選択還元触媒を満たした槽にフィルタ5全体を漬けて、フィルタ5の隔壁54内部の細孔内にアンモニア選択還元触媒を担持させたこと。」

ウ 引用文献3
当審において新たに引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2009-203799号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0004】
そして、排気ガス中のパティキュレートは、前記多孔質薄壁の内側表面に捕集されて堆積するので、目詰まりにより排気抵抗が増加しないうちにパティキュレートを適宜に燃焼除去してパティキュレートフィルタの再生を図る必要があるが、通常のディーゼルエンジンの運転状態においては、パティキュレートが自己燃焼するほどの高い排気温度が得られる機会が少ない為、PtやPd等を活性種とする酸化触媒をパティキュレートフィルタに一体的に担持させるようにしている。」

上記の記載事項から、引用文献3には、次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。

「Pd等を活性種とする酸化触媒をパティキュレートフィルタに一体的に担持させるようにしていること。」

エ 引用文献4
当審において新たに引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2009-180202号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0011】
排気管14の後端には排気マフラー15が接続され、この排気マフラー15は、排気管14を通った高温・高圧の排気ガスを消音して外部に排出するサイレンサとして機能する。図1には、この排気マフラー15が、複数の隔壁15A、15Bによって複数の室に仕切られて各室を連通管15C、15D、15Eで連通した多段膨張型に構成されており、最も上流側に位置する前室に排気ガス浄化用触媒30が配置されている。
排気ガス浄化用触媒30は、パラジウム(Pd)を主たる触媒成分とした酸化触媒であり、これにロジウム(Rh)を10?20%(重量%)で加えている。すなわち、比較的高価な貴金属であるプラチナ(Pt)を主成分としない触媒を用いている。そして、多孔質のハニカム構造体に、前記触媒成分をコーティングして構成されたハニカム触媒構造、或いは、パンチングパイプに触媒成分を担持させたヒートチューブ等の触媒構造が適用される。」

上記記載事項から、引用文献4には、次の事項(以下「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。

「排気ガス浄化用触媒30は、パラジウム(Pd)を主たる触媒成分とした酸化触媒であること。」

(3)対比・判断

本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「貫通孔4」は前者の「通路」に相当し、以下同様に、「隔壁1」は「孔壁」に、「排ガス入口側の端部」は「吸気端」に、「排ガス出口側の端部」は「排気端」に、「長さ」は「軸長」に、「セラミックハニカム構造体」は「壁流フィルタ」に、「排ガス流」は「ガス流」に、それぞれ相当する。

後者の「排ガス浄化用セラミックハニカムフィルタ」は、触媒を担持させた触媒担持層を有しているから、前者の「触媒品」に相当する。

後者の「閉塞」は前者の「閉じられている」に相当するから、後者の「前記排ガス入口側の端部において開かれており、前記排ガス出口側の端部において閉塞されている前記貫通路4」は前者の「前記吸気端において開かれており、前記排気端において閉じられている吸気通路」に相当し、同様に、「前記排ガス入口側の端部において閉塞されており、前記排ガス出口側の端部において開かれている前記貫通孔4」は「前記吸気端において閉じられており、前記排気端において開かれている排気通路」に相当する。

後者の「所定方向」と前者の「縦方向」とは、「所定方向」という限りで一致する。

後者の「多孔質セラミック層3は、γアルミナを主成分とし」について、γアルミナが、耐火性を有するということは技術常識である。また、後者の「白金等」は前者の「白金族金属成分」に相当するといえる。してみると、後者の「前記排ガス出口側の端部から延在し、前記セラミックハニカム構造体の長さよりも短い長さである前記貫通孔4の壁に配置された多孔質セラミック層3と、を備え、前記多孔質セラミック層3は、γアルミナを主成分とし、白金等の触媒を担持させて触媒担持層を形成し」たことと、前者の「前記排気端から延在し、前記壁流フィルタの軸長よりも短い長さである前記排気通路の壁に配置された酸化触媒と、を備え、及び前記酸化触媒は耐火性酸化物担体上に分散した白金族金属成分を含み、該白金族金属成分はパラジウムを含」むこととは、「排気端から延在し、壁流フィルタの軸長よりも短い長さである排気通路の壁に配置された触媒と、を備え、及び前記触媒は耐火性担体上に白金族金属成分を含み」という限りで一致する。

後者の「前記排ガス出口側の端部から前記セラミックハニカム構造体の長さに沿って部分的に延在する前記多孔質セラミック層3を設けた部分は隔壁1を通過する排ガス流が制限される」ことと、前者の「前記排気端から始まり、前記壁流フィルタの軸長に沿って部分的に延在するガス不浸透性領域をさらに備え、該ガス不浸透性領域におけるガス流は、2分の1未満に低下している」こととは、「排気端から始まり、壁流フィルタの軸長に沿って部分的に延在する領域をさらに備え、該領域におけるガス流は、低下している」という限りで一致する。

そうすると、本件補正発明と引用発明とは、次の一致点、相違点がある。

[一致点]
「通路を境界付けおよび画定する所定方向に延在する孔壁と、吸気端と排気端との間を延在する軸長とにより形成された複数の所定方向に延在する前記通路を有する壁流フィルタを備えている触媒品であって、
前記通路が、
前記吸気端において開かれており、前記排気端において閉じられている吸気通路と、
前記吸気端において閉じられており、前記排気端において開かれている排気通路と、
前記排気端から延在し、前記壁流フィルタの軸長よりも短い長さである前記排気通路の壁に配置された触媒と、を備え、及び
前記触媒は耐火性担体上に白金族金属成分を含み、及び
前記排気端から始まり、前記壁流フィルタの軸長に沿って部分的に延在する領域をさらに備え、該領域におけるガス流は、低下している触媒品。」

[相違点1]
所定方向について、本件補正発明は、「縦方向」であるのに対して、引用発明は、縦方向であるか不明である点。

[相違点2]
本件補正発明は、孔壁内に壁流フィルタの全軸長にわたり配置され、及び該孔壁に浸透したSCR触媒組成物を備えるのに対して、引用発明は、そのようなSCR触媒組成物を備えない点。

[相違点3]
触媒について、本件補正発明は、排気端から延在し、壁流フィルタの軸長よりも短い長さである排気通路の壁に配置された「酸化触媒」と、を備え、及び「前記酸化触媒」は耐火性「酸化物」担体上に「分散した」白金族金属成分を含み、該白金族金属成分は「パラジウムを含む」のに対して、引用発明は、排ガス出口側の端部から延在し、セラミックハニカム構造体の長さよりも短い長さである貫通孔4の壁に配置された多孔質セラミック層3と、を備え、多孔質セラミック層3は、γアルミナを主成分とし、白金等の触媒を担持させて触媒担持層を形成している点。

[相違点4]
排気端から始まり、壁流フィルタの軸長に沿って部分的に延在する領域にについて、本件補正発明においては、「ガス不浸透性」領域であり、該「ガス不浸透性」領域のガス流は「2分の1未満」に低下しているのに対して、引用発明においては、該領域におけるガス流は、低下している点。

上記相違点1について検討する。
本件補正発明の「縦方向」に関して、本願の明細書には「図3は本発明の例示の実施形態の拡大断面図を示す。示す触媒品は、通路24および26を境界付けおよび画定し、かつ吸気端14と排気端16との間を軸長「L」を有して縦方向に延在する孔壁13により形成された複数の縦方向に延在する通路を有する壁流フィルタを備えている。」(段落【0033】)との記載がある。
他方、引用発明の隔壁1は、「貫通孔4を境界付けおよび画定し、かつ排ガス入口側の端部と排ガス出口側の端部との間を軸長を有して延在する」(上記「(2)ア(ク)」)ものである。
そうすると、引用発明における「所定方向」は、「縦方向」といえる。
したがって、上記相違点1は実質的な相違点ではない。

上記相違点2について検討する。
引用文献2記載事項は、「アンモニア選択還元触媒を満たした槽にフィルタ5全体を漬けて、フィルタの隔壁54内部の細孔内及び細孔面上にアンモニア選択還元触媒を担持させたこと。」である。
本件補正発明と引用文献2記載事項とを対比すると、後者の「アンモニア選択還元触媒」は前者の「SCR触媒」に、以下同様に「フィルタ5」は「壁流フィルタ」又は「触媒品」に、「隔壁54」は「孔壁」に相当する。
また、後者においては、選択還元触媒を満たした槽にフィルタ5全体を漬けて、フィルタの隔壁54内部の細孔内及び細孔面上にアンモニア選択還元触媒を担持させているから、アンモニア選択還元触媒は、隔壁54に浸透したものといえる。
したがって、引用文献2記載事項を、本件補正発明の用語を用いて整理すると、「孔壁内に壁流フィルタの全軸長にわたり配置され、及び該孔壁に浸透したSCR触媒組成物を備える触媒品。」といえる。

そして、引用発明と引用文献2記載事項とは、触媒品に関する技術である点で共通し、引用発明における隔壁1と引用文献2記載事項における隔壁54とは、排ガス中の微粒子を捕集する壁という機能作用が共通する構成である。
また、引用文献2の段落【0008】には、「フィルタ及びNOx触媒を夫々設ける必要があることから、車両への搭載スペースの確保が困難となり、また、コスト高となってしまう」と記載されており、車両に搭載される排ガス浄化用フィルタにおいて、スペース性の向上やコストの低下を図るという課題も示されている。
そうすると、引用発明において、上記引用文献2記載事項を適用することにより、上記相違点2に係る本件補正発明の特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

上記相違点3について検討する。
引用文献1には、多孔質セラミック層3に白金等の触媒を担持させて触媒担持層を形成することにより、微粒子を含む排ガスの浄化とともに排ガス中に含まれる一酸化炭素、炭化水素類、窒素酸化物を酸化還元させることが可能であることが記載されている(上記(2)ア(カ)を参照。)。
そうすると、引用発明における多孔質セラミック層3に白金族金属成分を含む触媒を分散した状態で担持させて酸化触媒とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ここで、引用文献3記載事項は「Pd等を活性種とする酸化触媒をパティキュレートフィルタに一体的に担持させるようにしていること。」であり、引用文献4記載事項は「排気ガス浄化用触媒30は、パラジウム(Pd)を主たる触媒成分とした酸化触媒であること。」である。
また、パラジウムが白金族金属であることは技術常識であり、酸化触媒で用いる白金族金属として、パラジウムを含むことは、周知の事項であるといえる。

そして、引用発明において、上記周知の事項を考慮することにより、相違点3に係る本件補正発明の特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

上記相違点4について検討する。
本件補正発明の「不浸透性領域」とは、本願明細書の段落【0036】を参照すると、ガス流が衝突する抵抗がより高い領域であって、低い条件でガスが流れるフィルタ壁における範囲を意味する。
したがって、引用発明の多孔質セラミック層3を設けた部分は、ガス不浸透性領域である。
そして、引用文献1には、多孔質セラミック層3の厚みや材質、気孔率は種々選択可能であることが記載されている(上記(2)ア(キ)を参照。)ことに鑑みると、引用発明において、多孔質セラミック層3を設けた部分のガス流を、どの程度にするかは、当業者が適宜決定し得たことといえる。
また、本願の明細書及び図面の記載からは、ガス不浸透性領域のガス流を2分の1未満に低下したことによって顕著な効果を奏するとは認められない。
そうすると、引用発明において、多孔質セラミック層3を設けた部分のガス流を2分の1未満に低下するようにして、相違点4に係る本件補正発明の特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4) 効果について
本件補正発明は、全体としてみても、引用発明、引用文献2記載事項及び周知の事項から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。

(5) まとめ
上記(1)ないし(4)により、本件補正発明は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正発明は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年11月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年11月20日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1及び2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開昭63-185425号公報
引用文献2:特開2004-60494号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された、引用文献1及び引用文献2並びにその記載事項は、前記第2の[理由]3(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本件補正発明は、前記第2の[理由]2で検討したとおり、本願発明に発明特定事項を付加して限定したものであるから、本願発明は、本件補正発明の発明特定事項の一部を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]3に記載したとおり、引用発明、引用文献2記載事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、実質的に同様の理由により、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-08-26 
結審通知日 2019-08-27 
審決日 2019-09-17 
出願番号 特願2016-139708(P2016-139708)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F01N)
P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二之湯 正俊  
特許庁審判長 水野 治彦
特許庁審判官 齊藤 公志郎
鈴木 充
発明の名称 4元ディーゼル触媒およびその使用方法  
代理人 江藤 聡明  
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