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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1359404
審判番号 不服2019-1312  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-31 
確定日 2020-01-29 
事件の表示 特願2017-530011号「パターニングデバイス環境を有するリソグラフィ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月 7日国際公開、WO2016/107718号、平成30年 1月11日国内公表、特表2018-500596〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年12月7日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2014年12月31日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年7月3日に国際出願翻訳文(特許請求の範囲及び明細書)が提出され、平成30年6月13日付け(発送日 同年同月19日)で拒絶理由が通知され、同年9月18日付けで意見書が提出されたが、同年9月27日付け(送達日 同年10月1日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成31年1月31日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである

第2 平成31年1月31日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、補正前(平成29年7月3日に提出の国際出願翻訳文によるもの)の特許請求の範囲の請求項1につき、
「【請求項1】
反射型パターニングデバイスを支持するように構築及び配置されたサポート構造であって、前記反射型パターニングデバイスが、照明ビームにパターンを付与してパターン付与された放射ビームを形成するように構成される、サポート構造と、
前記反射型パターニングデバイスによって反射された前記パターン付与された放射ビームを受けるように構築及び配置され、かつ、前記パターン付与された放射ビームを基板上に投影するように構成された投影システムと、
フレームであって、前記サポート構造が前記フレームに対して移動可能である、フレームと、
前記フレームに結合されたガス供給ノズルであって、前記ガス供給ノズルからガスを供給するように構築及び配置され、前記反射型パターニングデバイスのパターニング領域の側部からガスを供給するように配置されたガス供給ノズルと、を備えるリソグラフィ装置。」
とあったものを、
「【請求項1】
反射型パターニングデバイスを支持するように構築及び配置されたサポート構造であって、前記反射型パターニングデバイスが、照明システムからの照明ビームにパターンを付与してパターン付与された放射ビームを形成するように構成される、サポート構造と、
前記反射型パターニングデバイスによって反射された前記パターン付与された放射ビームを受けるように構築及び配置され、かつ、前記パターン付与された放射ビームを基板上に投影するように構成された投影システムと、
フレームであって、前記サポート構造が前記フレームに対して移動可能である、フレームと、
前記フレームに結合されたガス供給ノズルであって、前記ガス供給ノズルからガスを供給するように構築及び配置され、前記反射型パターニングデバイスのパターニング領域の側部からガスを供給するように配置され、前記投影システムと前記サポート構造との間の空隙へと、および/または、前記照明システムと前記サポート構造との間の空隙へと突出しているガス供給ノズルと、を備え、
前記ガス供給ノズルは、前記投影システムおよび/または前記照明システムに対して移動するように構成されるリソグラフィ装置。」(以下「本件補正発明」という。)
に補正する内容を含むものである(下線は請求人が付したものに基づいて当審が付したものであって、補正箇所を示すものである。)。

2 新規事項について
(1)上記「1 補正の内容」によれば、本件補正は、本願補正発明において「前記ガス供給ノズルは、前記投影システムおよび/または前記照明システムに対して移動するように構成される」との構成(以下「構成C」という。)を付加する補正事項を含むものである。
上記構成Cは「ガス供給ノズル」について、「投影システム」および/または「照明システム」対して「移動するように構成される」と特定する。
本件補正発明は、上記構成Cとともに、「フレームであって、前記サポート構造が前記フレームに対して移動可能である、フレーム」であること(以下「構成A」という。)、及び、「前記フレームに結合されたガス供給ノズル」であること(以下「構成B」という。)も発明特定事項とする。
そうすると、本件補正発明は、「ガス供給ノズル」と「フレーム」に関して下記のとおりの事項を発明特定事項とする。
(ア)上記構成Aから、「サポート構造」が「フレーム」に対して移動可能である。
(イ)上記構成Bから、「ガス供給ノズル」は「フレーム」に結合されている。
(ウ)上記構成Cから、「ガス供給ノズル」は「投影システム」および/または「照明システム」に対して移動するように構成される。

(2)請求人の主張する補正の根拠
本件補正について、審判請求人は、平成31年1月31日の拒絶査定不服審判請求に係る「審判請求書」の【請求の理由】「3.本願発明が特許されるべき理由」「3-2.補正の根拠の明示」において、
「請求項1における補正事項『照明システムからの』は、請求項13に基づいており、誤記の訂正であります。
請求項1における補正事項『前記投影システムと前記サポート構造との間の空隙へと、および/または、前記照明システムと前記サポート構造との間の空隙へと突出しているガス供給ノズルと、を備え、
前記ガス供給ノズルは、前記投影システムおよび/または前記照明システムに対して移動するように構成される』は、明細書段落0035、0043、0044、0051-0079、図1等に基づいております。
いずれも新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第5項各号に規定された要件も充足します。」、及び、 平成30年9月18日付けの請求人提出の意見書「【意見の内容】」「(2)理由1、2」の欄の21?27行において、
「なお、本発明の『フレーム』とは、明細書段落0052を参照しますと、『ベースフレームBF』または『メトロロジーフレームRS-MF』のことであります。本発明の上記下線部の構成により、本願では、明細書段落0052に記載のように、ベースフレームBFまたはパターニングデバイスステージメトロロジフレームRS-MFのようなフレームにノズルを結合させることで、ノズルの振動が投影システムやセンサを保持する別のフレームに伝わるのを防止することができる、という有利な効果を有しております。」
と主張している。

(3)当初明細書等に記載された事項
本件の出願当初の明細書、図面及び特許請求の範囲(以下「当初明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同じ。)。
(ア)「【0020】
[0034] サポート構造MTは、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計、及び、パターニングデバイスが真空環境内で保持されているか否かなどの他の条件に応じた態様で、パターニングデバイスMAを受け、かつ保持するための部分を備える。サポート構造は、機械式、真空式、静電式又はその他のクランプ技術を使って、パターニングデバイスを保持することができる。サポート構造は、例えば、必要に応じて固定又は可動式にすることができるフレーム又はテーブルであってもよい。サポート構造は、パターニングデバイスを、例えば、投影システムに対して所望の位置に確実に置くことができる。」
(イ)「【0034】
[0048] 図2に、本開示の一実施形態による装置を概略的に示す。図2の装置は、照明システムIL及び投影システムPSを含む第1のチャンバ101を含む。照明システムILは、放射源SOから受けた放射ビームを調節するように構成され、投影システムPSは、基板Wのターゲット部分上にパターン付与された放射ビームPBを投影するように構成される。第1のチャンバ101は、パターニングデバイスMAを支持するように構築されたパターニングデバイスサポートも含み、パターニングデバイスMAは、放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付与された放射ビームを形成することができる。第2のチャンバ102は基板テーブルを含むが、分かり易くするために、基板テーブルのうち基板Wのみを示す。
【0035】
[0049] 図2に、装置をどのように4つの異なる真空環境VE1からVE4に分割することができるかを示す。第1のチャンバ101は、パターニングデバイスステージを密閉する第1の真空環境VE1を規定するが、分かり易くするために、パターニングデバイスステージのうちパターニングデバイスMAのみを示す。第1のチャンバ101は、2つのさらなる真空環境、すなわち、照明システムILを収容するVE2と、投影システムPSを収容するVE3と、を規定する、分離構造103も含む。真空環境VE2及びVE3はさらに分割され得る。分離構造103は、投影ビームPBを照明システムILからパターニングデバイスMAへと通過させるための、またパターン付与された放射ビームをパターニングデバイスMAから投影システムPSへと通過させるための開口104を有するスリーブ105を含む。スリーブ105は、ガス流を下向きに(すなわち、パターニングデバイスから離れるように)押し流すように、また、概ね均一なガス流を維持してEUV放射強度の擾乱を回避するようにも機能する。スリーブは、パターニングデバイスMAに向かってテーパ付けされてよい可能性がある。第2のチャンバ102は、基板テーブル(分かり易くするために、基板テーブルのうち基板Wのみを示す)を含む真空環境VE4を規定する。真空環境VE1及びVE2は、それぞれの真空容器並びに真空ポンプVP1及びVP2によって形成及び維持され、それらの真空ポンプは複数の真空ポンプであってもよい。」
(ウ)「【0043】
[0057] 図4及び図5に、それぞれ、パターニングデバイスアセンブリの概略側面図及び概略平面図をより詳細に示す。図4に示すように、一実施形態では、1つ又は複数のガス供給ノズル200が、1つ又は複数のコネクタ201を介してガス供給源GSに接続され、ガス供給源GSから送られたガスを供給するように構築及び配置される。一実施形態では、複数のガスノズルが設けられる。ガスノズル200のうちの少なくとも1つを、パターニングデバイスMAの一方の側部に配置してよい。一実施形態では、ガスノズル200のうちの少なくとも1つがパターニングデバイスMAの一方の側部に配置され、ガスノズルのうちの別の少なくとも1つがパターニングデバイスMAの反対側の側部に配置される。すなわち、一実施形態では、ガス供給ノズル200は、複数のガス供給ノズルのうちの少なくとも1つが反射型パターニングデバイスのパターニング領域の一方の側部にあり、複数のガス供給ノズルのうちの別の少なくとも1つがパターニング領域の反対側の側部にあるように配置される。ガス供給ノズル200は、少なくとも1つのパターニングデバイスマスキングブレイドREBとパターニングデバイスの間の空間に、ガスを供給するように構成される。しかしながら、そのような構成における2つ(又はそれより多く)のガス供給ノズル200の使用は、制限することを意図していないことが理解されるべきである。一実施形態によれば、単一のガス供給ノズルをパターニングデバイスアセンブリ及び/又はリソグラフィ装置と共に設けてよく、また、フレームに結合して、反射型パターニングデバイスのパターニング領域の少なくとも一方の側部からガスを供給するように構築及び配置してよい。
【0044】
[0058] 図4の例示的実施形態では、ガスノズル200がパターニングデバイスMAの両側部に設けられ、パターニングデバイスMAの表面に対して概ね平行な方向、すなわち図中の矢印の方向で、実質的にパターニングデバイスMAとブレイドREB-X及びREB-Yとの間の空間内にガス(特に、水素、ヘリウム、窒素、酸素又はアルゴン)を注入することができるように配置される。一実施形態では、ノズル200はサポート構造MTに対して水平に延在し、パターニングデバイスMAの表面に対して概ね水平な方向で、空間にガスを供給するように構築及び配置される。ガス供給ノズル200は、例えば図4に示すように、少なくとも1つのパターニングデバイスマスキングブレイドREBの上方に設けることができる。」
(エ)「【0051】
[0065] ガス供給ノズル200は、リソグラフィ装置内のフレームに結合される。サポート構造MTは、フレームに対して移動可能である。すなわち、ガス供給ノズル200は、サポート構造MTから分離している。これによって、サポート構造MTがノズル200に対して、かつ/又はその逆に移動することが可能となる。
【0052】
[0066] 一実施形態では、ガス供給ノズル200は、別個のフレーム(図5には示さず)に結合される。一実施形態では、ガス供給ノズル200が結合されるフレームは、パターニングデバイスステージメトロロジフレームRS-MFである。一実施形態では、ガス供給ノズル200は、ベースフレームBFに結合される。一実施形態では、ガス供給ノズル200は、投影システムPS及び/又は1つ又は複数のセンサを保持するフレームから機械的に絶縁される。機械的絶縁は、ノズルから、投影システムPS及び/又は1つ又は複数のセンサを保持するフレームに到達する振動を実質的に防止することを含む。」
(オ)「【0064】
[0078] 図8?図13に示す実施形態によるガス供給ノズル200は、リソグラフィ装置内のフレームに結合されてよい。図14に、例えば図1のタイプのリソグラフィ装置における、ガス供給ノズル200及びパターニングデバイスアセンブリMTを有する例示的実施形態の仰観図を示す。サポート構造MTは、フレームに対して移動可能である。すなわち、ガス供給ノズル200は、サポート構造MTから分離されている。これによって、サポート構造MTがノズル200に対して、かつ/又はその逆に移動することが可能となる。
【0065】
[0079] 一実施形態では、図8?図13に示すガス供給ノズル200は、別個のフレーム(図示せず)に結合される。別の実施形態では、ガス供給ノズル200が結合されるフレームは、パターニングデバイスステージフレームRS-MFである。別の実施形態では、ガス供給ノズル200は、ベースフレームBFに結合される。」
(カ)「【0070】
[0084] 図面及び上記の説明は、全般に、複数のノズルを利用するシステムを図示及び説明しているが、リソグラフィ装置内で単一のノズルを実装及び使用してガスを供給してよいこともまた、本開示の範囲内である。本開示の一態様によれば、反射型パターニングデバイスを支持するように構築及び配置されたサポート構造を含むリソグラフィ装置が提供される。反射型パターニングデバイスは、照明ビームにパターンを付与してパターン付与された放射ビームを形成するように構成されている。この装置はまた、反射型パターニングデバイスによって反射されたパターン付与された放射ビームを受けるように構築及び配置され、かつこのパターン付与された放射ビームを基板上に投影するように構成された投影システムと、フレームであって、サポート構造がこのフレームに対して移動可能である、フレームとを含む。一実施形態では、少なくとも1つのガス供給ノズルがフレームに結合され、かつこのガス供給ノズルからガスを供給するように構築及び配置される。この少なくとも1つのガス供給ノズルは、反射型パターニングデバイスのパターニング領域の少なくとも一方の側部からガスを供給するように配置される。」
(キ)図1ないし3は次のとおりである。
【図1】


【図2】


【図3】


(4)上記(3)によれば、構成Bの、「ガス供給ノズル」が結合される「フレーム」は、「パターニングデバイスステージフレームRS-MF」、ないしは、「ベースフレームBF」であるとされる。
(このことは、平成30年9月18日付けの請求人提出の意見書「【意見の内容】」「(2)理由1、2」の欄の22?23行において、「なお、本発明の『フレーム』とは、明細書段落0052を参照しますと、『ベースフレームBF』または『メトロロジーフレームRS-MF』のことであります。」と主張するとおりである。)
しかしながら、上記「(3)」の記載、及び、当初明細書等の段落【0053】?【0063】、【0066】?【0069】、【0071】?【0079】及び図2、4?15をみても、「メトロロジーフレームRS-MF」が「投影システム」および/または「照明システム」に対して移動するように構成されることは記載されておらず、示唆する記載もない。
また、上記「(3)」「(エ)」の段落【0052】、及び、同「(オ)」の段落【0065】によれば、構成Bの、「ガス供給ノズル」が結合される「フレーム」は、「別個のフレーム」であってもよいとされる。
しかしながら、上記「(3)」の記載、及び、当初明細書等の段落【0053】?【0063】、【0066】?【0069】、【0071】?【0079】及び図2、4?15をみても、上記「(3)」「(エ)」の段落【0052】、及び、同「(オ)」の段落【0065】でいうところの「別個のフレーム」が「投影システム」および/または「照明システム」に対して移動するように構成されることは記載されておらず、示唆する記載もない。
同様に、上記「(3)」の記載、及び、当初明細書等の段落【0053】?【0063】、【0066】?【0069】、【0071】?【0079】及び図2、4?15をみても、「ガス供給ノズル」が、「投影システム」および/または「照明システム」に対して移動するように構成されることは記載されておらず、示唆する記載もない。
したがって、当初明細書等には、「前記ガス供給ノズルは、前記投影システムおよび/または前記照明システムに対して移動するように構成される」(上記「(1)」「構成C」)ことは記載されておらず、示唆する記載もないと認められる。

(5)以上の検討によれば、上記「前記ガス供給ノズルは、前記投影システムおよび/または前記照明システムに対して移動するように構成される」(構成C)との発明特定事項は、当初明細書等に記載されたものではない。
よって、本件補正により追加された「前記ガス供給ノズルは、前記投影システムおよび/または前記照明システムに対して移動するように構成される」(構成C)は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

3 独立特許要件について
(1)本件補正における、「前記投影システムと前記サポート構造との間の空隙へと、および/または、前記照明システムと前記サポート構造との間の空隙へと突出している」、「前記ガス供給ノズルは、前記投影システムおよび/または前記照明システムに対して移動するように構成される」は「ガス供給ノズル」について限定しており、当該補正は限定的減縮といえる。しかしながら、以下に検討するとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

(2)刊行物の記載
ア 原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2007/0285632号明細書(以下「引用文献」という。)には、下記の事項が記載されている(仮訳は当審で作成した。)。
(ア)「Referring to wafer processing equipment, FIG. 1 illustrates a portion of one type of lithographic exposure system 50.」(段落[0007])
(仮訳:ウェハ処理装置に関して、図1にリソグラフィ露出システム50の一例の一部分を示す。)

(イ)「Reticle 52 can be mounted via a reticle chuck 56 on a reticle stage 58. ・・・ Reticle stage 58 can be moveably coupled to a supporting reticle stage frame or base 60, which can be coupled to a main supporting frame 62 of lithography system 50.」(段落[0008])
(仮訳:レチクル52はレチクルステージ58にレチクルチャック56を介して取り付けることができる。・・・レチクルステージ58は、リソグラフィ露出システム50のメインサポートフレーム62に取り付けられるレチクルステージ支持フレームまたはベース60に移動可能に取り付けられる。)

(ウ)「A projection-optical system 64 and substrate 54 can be disposed in the path of reflected patterned beam from reticle 52. ・・・ Projection-optical system 64 can be coupled to a supporting projection-optical system frame 66, which can be coupled in fixed relation via vibration isolators 69 to main supporting frame 62.」(段落[0009])
(仮訳:投影光学システム64と基板54は、レチクル52で反射したパターン化されたビーム光路に配置される。・・・投影光学システム64は、防振装置69を介してメインサポートフレーム62に固定された、投影光学システム支持フレーム66に取り付けられる。)

(エ)「On the left side of aperture frame 116, in FIG. 5, is a left-facing gas port 118, which emits a flow of gas 120 to the left past part of reticle 52 and skirt 114. ・・・ Left-facing gas port 118 may be mounted to a reticle shield 124.」(段落[0047])
(仮訳:図5における、アパーチャーフレーム116の左側には、レチクル52の左側の部分と端部114に向けてガスの流れ120を放出する左側ガスポート118が配置される。・・・左側ガスポート118はレチクルシールド124に取り付け可能である。)

(オ)「Positioning of gas ports 118 may be fixed, as when a gas port is attached to fixed reticle shield 122, or moveable, as when a gas port is attached to a retractable reticle shield 124.」(段落[0050])
(仮訳:ガスポート118の位置は、ガスポートをレチクルシールド122に固定して取り付ける場合は固定となり、ガスポートを伸縮自在のレチクルシールド124に固定して取り付ける場合は移動可能となる。)

(カ)「The illumination beam 288 reflects from reticle 52 while acquiring an aerial image of the pattern portion defined in the illuminated portion of reticle 52. The resulting “patterned beam” is directed to an exposure-sensitive substrate 54, which upon exposure becomes imprinted with the pattern.」(段落[0066])
(仮訳:レチクル52で反射した照明ビーム288は、レチクル52上の照明した部分のパターンの空間像を得ている。結果として得られる「パターン化されたビーム」は、露光感光性の基板54に向けられ、露光して当該パターンが焼き付けられる。)

(キ)「Illumination beam 272 of EUV light emitted from illumination-optical system 268 may be reflected and focused by mirror 274, and reaches the reflective surface of reticle 52 via bending mirror 276.」(段落[0074])
(仮訳:照明光学システム268から放射されたEUV光の照明ビーム272は、ミラー274で反射するとともに焦点に集光され、曲げミラー276を介してレチクル52の反射面に達する。)

(ク)Fig.1、5及び10は次のものである。
Fig.1


Fig.5


Fig.10


(ケ)上記(ア)ないし(キ)の記載を踏まえて、上記(ク)の図1及び10を見ると、レチクル52は、投影光学システム64とレチクルステージ58の間に位置し、レチクル52の反射面74は投影光学システム64の方向にあるとともに投影光学システム64とレチクル52の間に空隙があり、レチクル52の他方の面はレチクルステージ58に接触していて空隙がないことが見てとれる。
また、上記(ア)ないし(キ)の記載を踏まえて、上記(ク)の図5を見ると、レチクル52の反射面74側の左右にはガスポート118があり、ガスポート118はレチクル52の反射面74の面の上にあることがみてとれる。

イ 引用発明
上記アによれば、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「レチクル52はレチクルステージ58にレチクルチャック56を介して取り付けることができ、前記レチクルステージ58は、リソグラフィ露出システム50のメインサポートフレーム62に取り付けられるレチクルステージ支持フレームまたはベース60に移動可能に取り付けられ(段落[0008])、
投影光学システム64と基板54は、レチクル52で反射したパターン化されたビーム光路に配置され、前記投影光学システム64は、防振装置69を介してメインサポートフレーム62に固定された、投影光学システム支持フレーム66に取り付けられ(段落[0009])、
アパーチャーフレーム116の左側には、レチクル52の左側の部分と端部114に向けてガスの流れ120を放出する左側ガスポート118が配置され、前記左側ガスポート118はレチクルシールド124に取り付け可能であり(段落[0047])、
ガスポート118の位置は、ガスポートをレチクルシールド122に固定して取り付ける場合は固定となり、ガスポートを伸縮自在のレチクルシールド124に固定して取り付ける場合は移動可能となり(段落[0050])、
前記レチクル52で反射した照明ビーム288は、レチクル52上の照明した部分のパターンの空間像を得ていて、結果として得られるパターン化されたビームは、露光感光性の基板54に向けられ、露光して当該パターンが焼き付けられ(段落[0066])、
照明光学システム268から放射されたEUV光の照明ビーム272は、ミラー274で反射するとともに焦点に集光され、曲げミラー276を介してレチクル52の反射面に達し(段落[0074])、
前記レチクル52は、投影光学システム64とレチクルステージ58の間に位置し、レチクル52の反射面74は投影光学システム64の方向にあるとともに投影光学システム64とレチクル52の間に空間があり、レチクル52の他方の面はレチクルステージ58に接触していて空間がなく、前記レチクル52の反射面74側の左右にはガスポート118があり、ガスポート118はレチクル52の反射面74の面の上にある(上記「ア」「(ケ)」)、
リソグラフィ露出システム50(段落[0007])。」

(3)対比・判断
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「(反射したパターン化されたビーム光となす)レチクル52」、「レチクルステージ58」、「投影光学システム64」、「基板54」、「パターン化されたビーム光」、「左側ガスポート118」、「照明光学システム268から放射されたEUV光の照明ビーム272」及び「リソグラフィ露出システム50」は、本願補正発明の「反射型パターニングデバイス」、「サポート構造」、「投影システム」、「基板」、「パターン付与された放射ビーム」、「ガス供給ノズル」、「照明システムからの照明ビーム」及び「リソグラフィ装置」にそれぞれ相当する。

(イ)引用発明の「レチクルステージ58」は、「レチクル52はレチクルステージ58にレチクルチャック56を介して取り付けることができ」るものであるから、「レチクルステージ58」は、「レチクル52」を「レチクルチャック56を介して取り付ける」ものであるといえる。
したがって、引用発明の「レチクル52はレチクルステージ58にレチクルチャック56を介して取り付けることができ」る「レチクルステージ58」は、本件補正発明の「反射型パターニングデバイスを支持するように構築及び配置されたサポート構造」に相当する。
また、引用発明の「レチクル52」は、「照明光学システム268から放射されたEUV光の照明ビーム272は、ミラー274で反射するとともに焦点に集光され、曲げミラー276を介してレチクル52の反射面に達」し、「レチクル52で反射したパターン化されたビーム光」をなすものであるから、「レチクル52」は、「照明光学システム268から放射されたEUV光の照明ビーム272」を「パターン化されたビーム光」に形成するように構成されているといえる。
したがって、引用発明の「照明光学システム268から放射されたEUV光の照明ビーム272は、ミラー274で反射するとともに焦点に集光され、曲げミラー276を介してレチクル52の反射面に達」し、「レチクル52で反射したパターン化されたビーム光」をなす「レチクル52」は、本件補正発明の「照明システムからの照明ビームにパターンを付与してパターン付与された放射ビームを形成するように構成される」「反射型パターニングデバイス」に相当する。
以上によれば、引用発明の「レチクル52はレチクルステージ58にレチクルチャック56を介して取り付けることができ」、「照明光学システム268から放射されたEUV光の照明ビーム272は、ミラー274で反射するとともに焦点に集光され、曲げミラー276を介してレチクル52の反射面に達」し、「レチクル52で反射したパターン化されたビーム光」をなす、「レチクルステージ58」は、本件補正発明の「反射型パターニングデバイスを支持するように構築及び配置されたサポート構造であって、前記反射型パターニングデバイスが、照明システムからの照明ビームにパターンを付与してパターン付与された放射ビームを形成するように構成される、サポート構造」に相当する。

(ウ)引用発明の「投影光学システム64」は、「投影光学システム64と基板54は、レチクル52で反射したパターン化されたビーム光路に配置され」、「前記レチクル52で反射した照明ビーム288は、レチクル52上の照明した部分のパターンの空間像を得ていて、結果として得られるパターン化されたビームは、露光感光性の基板54に向けられ、露光して当該パターンが焼き付けられ」るものであるから、「投影光学システム64」は、「レチクル52で反射したパターン化されたビーム光」を受け、かつ、「反射したパターン化されたビーム光」を「基板54」に投影するものであるといえる。
したがって、引用発明の「投影光学システム64と基板54は、レチクル52で反射したパターン化されたビーム光路に配置され」、「前記レチクル52で反射した照明ビーム288は、レチクル52上の照明した部分のパターンの空間像を得ていて、結果として得られるパターン化されたビームは、露光感光性の基板54に向けられ、露光して当該パターンが焼き付けられ」る「投影光学システム64」は、本件補正発明の「前記反射型パターニングデバイスによって反射された前記パターン付与された放射ビームを受けるように構築及び配置され、かつ、前記パターン付与された放射ビームを基板上に投影するように構成された投影システム」に相当する。

(エ)引用発明の「レチクルステージ58」は、「前記レチクルステージ58は、リソグラフィ露出システム50のメインサポートフレーム62に取り付けられるレチクルステージ支持フレームまたはベース60に移動可能に取り付けられ」るものであるから、「レチクルステージ58」が「メインサポートフレーム62」及び「レチクルステージ支持フレームまたはベース60」に対して移動可能であるといえる。
したがって、引用発明の「前記レチクルステージ58は、リソグラフィ露出システム50のメインサポートフレーム62に取り付けられるレチクルステージ支持フレームまたはベース60に移動可能に取り付けられ」る「レチクルステージ支持フレームまたはベース60」は、本願補正発明の「フレームであって、前記サポート構造が前記フレームに対して移動可能である、フレーム」に相当する。

(オ)引用発明の「左側ガスポート118」は、「アパーチャーフレーム116の左側には、レチクル52の左側の部分と端部114に向けてガスの流れ120を放出する左側ガスポート118が配置され、前記左側ガスポート118はレチクルシールド124に取り付け可能であり」、「ガスポート118の位置は、ガスポートをレチクルシールド122に固定して取り付ける場合は固定となり、ガスポートを伸縮自在のレチクルシールド124に固定して取り付ける場合は移動可能とな」るものであるから、「左側ガスポート118」は、「伸縮自在のレチクルシールド124に固定して取り付け」られた「左側ガスポート118」であって、レチクル52の左側の「左側ガスポート118」から「ガスの流れ120を放出する」ように構成され、「レチクル52の左側の部分と端部114に向けてガスの流れ120を放出」するように配置されているといえる。
したがって、引用発明の「アパーチャーフレーム116の左側には、レチクル52の左側の部分と端部114に向けてガスの流れ120を放出する左側ガスポート118が配置され、前記左側ガスポート118はレチクルシールド124に取り付け可能であり」、「ガスポート118の位置は、ガスポートをレチクルシールド122に固定して取り付ける場合は固定となり、ガスポートを伸縮自在のレチクルシールド124に固定して取り付ける場合は移動可能とな」る「左側ガスポート118」は、本願補正発明の「前記ガス供給ノズルからガスを供給するように構築及び配置され、前記反射型パターニングデバイスのパターニング領域の側部からガスを供給するように配置され」る「ガス供給ノズル」に相当する。
また、引用発明の「左側ガスポート118」は、「前記レチクル52は、投影光学システム64とレチクルステージ58の間に位置し、レチクル52の反射面74は投影光学システム64の方向にあるとともに投影光学システム64とレチクル52の間に空間があり、レチクル52の他方の面はレチクルステージ58に接触していて空間がなく、前記レチクル52の反射面74側の左右にはガスポート118があり、ガスポート118はレチクル52の反射面74の面の上にある」ものであるから、「投影光学システム64」と「レチクルステージ58」との空間に左右の「ガスポート118」が突出しているといえる。
以上によれば、引用発明の「アパーチャーフレーム116の左側には、レチクル52の左側の部分と端部114に向けてガスの流れ120を放出する左側ガスポート118が配置され、前記左側ガスポート118はレチクルシールド124に取り付け可能であり」、「ガスポート118の位置は、ガスポートをレチクルシールド122に固定して取り付ける場合は固定となり、ガスポートを伸縮自在のレチクルシールド124に固定して取り付ける場合は移動可能とな」り、「前記レチクル52は、投影光学システム64とレチクルステージ58の間に位置し、レチクル52の反射面74は投影光学システム64の方向にあるとともに投影光学システム64とレチクル52の間に空間があり、レチクル52の他方の面はレチクルステージ58に接触していて空間がなく、前記レチクル52の反射面74側の左右にはガスポート118があり、ガスポート118はレチクル52の反射面74の面の上にある」「左側ガスポート118」は、本願補正発明の「前記ガス供給ノズルからガスを供給するように構築及び配置され、前記反射型パターニングデバイスのパターニング領域の側部からガスを供給するように配置され、前記投影システムと前記サポート構造との間の空隙へと突出しているガス供給ノズル」に相当する。

(カ)引用発明の「ガスポート118」は、「左側ガスポート118はレチクルシールド124に取り付け可能であり」、「ガスポートを伸縮自在のレチクルシールド124に固定して取り付ける場合は移動可能とな」るものであるところ、当該「レチクルシールド124」の伸縮と「投影光学システム64」が同期すべき理由はない。
そうすると、「伸縮自在のレチクルシールド124に固定して取り付け」た「左側ガスポート118」は、「投影光学システム64」に関係なく伸縮して移動可能なものであるといえる。
したがって、引用発明の「左側ガスポート118はレチクルシールド124に取り付け可能であり」、「ガスポートを伸縮自在のレチクルシールド124に固定して取り付ける場合は移動可能とな」る「ガスポート118」は、本願補正発明の「前記投影システムに対して移動するように構成される」「ガス供給ノズル」に相当する

(キ)上記(ア)ないし(カ)によれば、本願補正発明と引用発明は、
「反射型パターニングデバイスを支持するように構築及び配置されたサポート構造であって、前記反射型パターニングデバイスが、照明システムからの照明ビームにパターンを付与してパターン付与された放射ビームを形成するように構成される、サポート構造と、
前記反射型パターニングデバイスによって反射された前記パターン付与された放射ビームを受けるように構築及び配置され、かつ、前記パターン付与された放射ビームを基板上に投影するように構成された投影システムと、
フレームであって、前記サポート構造が前記フレームに対して移動可能である、フレームと、
前記ガス供給ノズルからガスを供給するように構築及び配置され、前記反射型パターニングデバイスのパターニング領域の側部からガスを供給するように配置され、前記投影システムと前記サポート構造との間の空隙へと突出しているガス供給ノズルと、を備え、
前記ガス供給ノズルは、前記投影システムに対して移動するように構成されるリソグラフィ装置。」
の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

<相違点>
「ガス供給ノズル」が、本願補正発明では、「フレーム」に結合されるのに対し、引用発明では、「レチクルシールド124」に固定して取り付けられる点。

イ 判断
上記相違点について検討する。
引用発明の「レチクルシールド124」は、「リソグラフィ露出システム50」に伸縮自在に設けられているものであるところ、「レチクルシールド124」が空中に浮いた状態で設けられることはあり得ず、「レチクルシールド124」が「リソグラフィ露出システム50」の何らかの部材に結合した上で伸縮自在に設けられるものであることは、本願優先日当時の当業者にとって技術常識である。
ここで、上記「(2)」「ア」「(ク)」の図5を踏まえると、「レチクルシールド124」は、「リソグラフィ露出システム50」において「レチクル52」や「メトロロジーフレーム68」付近に配置されるものである。
また、上記「(2)」「ア」「(ク)」の図1を踏まえると、「レチクルシールド124」を結合し得る部材としては、位置関係から見て、「防振装置69」を介して「レチクルステージ支持フレームまたはベース60」に設けられている「レチクルステージ58」、「防振装置69」を介して「主支持フレーム62」に設けられている「メトロロジーフレーム68」及び「レチクルステージ支持フレームまたはベース60」が想定され得る。
しかしながら、伸縮することで振動を生じ得る「レチクルシールド124」を結合する先としては、「防振装置69」を介して「レチクルステージ支持フレームまたはベース60」に設けられている「レチクルステージ58」、あるいは、「防振装置69」を介して「主支持フレーム62」に設けられている「メトロロジーフレーム68」よりも、「レチクルステージ支持フレームまたはベース60」が適していることは当業者にとって明らかである。
したがって、引用発明において「(左側ガスポート118が取り付けられた)レチクルシールド124」を「レチクルステージ支持フレームまたはベース60」に結合することにより、上記相違点に係る本願補正発明の構成となすことは当業者が容易に想到し得ることである
よって、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 請求人の主張
(ア)審判請求人は、審判請求書の「【請求の理由】」、「3.本願発明が特許されるべき理由」、「3-3.本願発明と引用文献との対比」の13?27行において下記のとおり主張する。
「このように、本願のガス供給ノズルは、投影システム(PS)および/または照明システム(IL)に対して移動することを特徴とする構成となっております。
これに対し、引用文献1では、審査官のご認定の通り、下の図5に示されておりますようにガスポート118は、レチクルシールド122を介してメトロロジーフレーム68に固定されております。そして、引用文献1の図1に示されておりますように、メトロロジーフレーム68は、投影光学システムサポートフレーム66と、振動アイソレータ69を介して、メインサポートフレーム62に結合されております。さらに、引用文献1の投影光学システム64もまた、投影光学システムサポートフレーム66と、振動アイソレータ69を介して、メインサポートフレーム62に結合されております。これらを鑑みますと、引用文献1のガスポートが、投影光学システム64等に対して移動することは物理的に不可能であると思料致します。さらに、引用文献1のガスポート118は、低コンダクタンスシールを提供するために、レチクル52の近くに配置されることを前提としているため移動することはないものと考えます。このように、引用文献1のガスポートは本願のガス供給ノズルとは全く異なる構成を有しております。」

(イ)しかしながら、上記「ア」「(カ)」で検討したとおりであって、引用発明の「伸縮自在のレチクルシールド124に固定して取り付け」た「左側ガスポート118」は、「投影光学システム64」に関係なく伸縮して移動可能なものであるといえるから、上記(ア)のレチクルシールド122に固定して取り付けたガスポート118についてのみ主張する請求人の主張は採用できない。

(4)むすび(補正の却下の決定のむすび)
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正却下の決定についてのむすび
上記2の検討によれば、本件補正は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
上記3の検討によれば、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の各請求項に係る発明は、平成29年7月3日に提出の国際出願翻訳文による特許請求の範囲の請求項1ないし29に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2」[理由]「1 補正の内容」において、本件補正前のものとして示したとおりのものである。

2 刊行物の記載及び引用発明
前記「第2」[理由]「3」「(2)」のとおりである。

3 対比・判断
前記「第2」[理由]「1 補正の内容」のとおり、本件補正は、補正前の請求項1において、「照明ビーム」を「照明システムからの照明ビーム」と補正し、「配置されたガス供給ノズルと、」を「配置され、前記投影システムと前記サポート構造との間の空隙へと、および/または、前記照明システムと前記サポート構造との間の空隙へと突出しているガス供給ノズルと、を備え、
前記ガス供給ノズルは、前記投影システムおよび/または前記照明システムに対して移動するように構成される」と補正して、下線部に示す限定を付加するものである。
したがって、本願発明は、前記「第2」[理由]「3」「(3)」で検討した本願補正発明を特定するための事項である、「照明ビーム」に係り、「照明システムからの」との限定を省くとともに、「ガス供給ノズル」に係り、「前記投影システムと前記サポート構造との間の空隙へと、および/または、前記照明システムと前記サポート構造との間の空隙へと突出している」、及び、「前記ガス供給ノズルは、前記投影システムおよび/または前記照明システムに対して移動するように構成される」との限定を省いたものである。
これに対して、前記「第2」[理由]「3」「(3)」で検討したとおり、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
そうすると、上記限定を省いた本願発明も引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-09-04 
結審通知日 2019-09-05 
審決日 2019-09-19 
出願番号 特願2017-530011(P2017-530011)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03F)
P 1 8・ 575- Z (G03F)
P 1 8・ 561- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田口 孝明  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 松川 直樹
近藤 幸浩
発明の名称 パターニングデバイス環境を有するリソグラフィ装置  
代理人 内藤 和彦  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 江口 昭彦  
代理人 大貫 敏史  

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